2010年12月県議会 文教委員会 雑賀光夫委員の質問概要記録
12月14日
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《質問》 雑賀光夫 委員
 先日、紀美野町にある小川小学校で学習発表会があり見に行ってきた。私が行こうという気になったのは、地域で童謡の指導をしている童謡シニアマイスターである先輩教師から、「小川の公民館で、おばあちゃんと子どもが一緒に歌を歌っているので、見に来て」と言われたからである。
 小川小学校は、全校児童26人、1年生は欠学年という学校であるが、発表会では体育館が地域の人でいっぱいで、100人くらい見に来られていた。最近、「和歌山発!3つのステップで読解力をつける複式の国語科授業」という本を出し、全国的にも注目を浴びている。
 今、1年生が欠学年であるが、幸い来年は4人入学してくるのでほっとしている。このような小さい学校は、過疎化が進む中では統廃合もやむを得ない場合もあるが、教育委員会が以前出された学校の適正規模では、小学校は2学級、中学校は3学級で、小川小学校のような学校は更にそれより少ないので、できるだけ早く統合すべきだとも言われた時期もある。
 私は以前、本会議で、適正規模の学校よりも、むしろそれより小さい学校の方が学力が高いと言い、教育委員会からも、別の資料では確かにそのようであるという答弁をいただいたことがある。やはり地域に支えられている学校は教育委員会が支えていかなければならない。
 最近、「地域共育コミュニティ」と言われているが、地域の人々と子どもたちが一緒にやっているのを見ながら、地域共育コミュニティというのはこのようなものを目指しているのかなと思った。
 このような小さい学校を教育委員会はどのように評価し、またどう支えていくのか。

《答弁》 教育長
 小規模の学校は和歌山県では非常に多く、教員一人当たりの児童生徒数は全国でトップレベルである。
 全国的な状況として、大都市の方が学力水準が高く、へき地に行くほど低い傾向があるという報告が全国の教育委員長会議であった。しかし、和歌山県の場合は逆の方向になっており、へき地の学校が大変頑張っている。長年、和歌山県はへき地教育の研究大会に力を入れて継続をしているので、その成果があらわれてきているのではないかと思っている。

《要望》 雑賀光夫 委員
 しっかり支えていただきたい。
 これほど小さくなってくると、教育委員会が言わなくても、親が車で送ってまでも大きな学校に行かせたいという傾向が出てくることがある。しかし、小川小学校の学習発表会では、地域の方が100人ほども来ていた。
 地域の方が芝居をする一座もあった。残念ながら時間がなくて見られなかったが、元教育長の田尻さんが脚本を書いたそうである。こういう支えがあれば、うちの子も行かせたいと親御さんも思ってくれるのではないか。大変よい取り組みであり、しっかりと支えていただきたい。
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《質問》 雑賀光夫 委員
 中学校になると小規模校の一番の悩みは、運動部活動の問題である。
 中学校に行けば「野球がしたい」、「サッカーがしたい」という子どもや親もいる。ところが、小さい学校ではチームを作れないという問題があり、それで教育委員会では「通学区域制度の弾力的運用」という方針を出された。非常に特別な場合で、慎重に運用すると言われているのもよくわかるが、学校現場では同方針が出る前から部活動のために転校する傾向にあった。
 そこで何が起こるかというと、串本町での話であるが、元々小さい学校で男子が「野球がやりたい」と言ったら「僕も僕も」と言って男子ほとんどが大きい学校へ変わってしまい、女子のクラスになってしまったという話を聞くが、実情はどうか。

《答弁》 健康体育課長
 大島小学校の生徒が串本中学校へ行っているという状況だと思う。
 平成19年に大島小学校を卒業した生徒は男子2名、女子7名で、大島中学校へそのまま入学した生徒は男子0、女子6名である。その中で、男子2名は串本中学校の野球部に行っている。また、平成20年には男子4名、女子4名が大島小学校を卒業しており、大島中学校へ入学したのが、同じ男子4名、女子4名である。平成21年では、大島小学校は男子9名、女子7名で、大島中学校に入学したのは男子5名、女子7名である。部活から見ると、4名の男子生徒が串本中学校で野球部に入部している。

《質問》 雑賀光夫 委員
 3年前の場合は、2名だけの話であるが、女子だけのクラスになってしまっているという状況が起こっている。こういうことが更に進むことについて大変心配している。中学校時代であるので、特定のスポーツをやらなくても、別のスポーツで高校へ行き、大学へ行ったら優れた能力を発揮するという事例ももちろんあるが、しかし、やっぱり野球をやりたいという気持ちをどのように保障するかということも大事だと思う。
 確かに部活というのは、学校教育本来から言えば学習指導要領には位置付けられていない。しかし、指導要領に位置付けられている、いないにかかわらず、やはり部活というのは教育的に言うと非常に大事にされなければならないと昔から思っている。しかし、位置付けられていない部活のために学校の本体が揺れるのでは困るので、地域でそういう運動部を作り、中体連の試合にも出られるように保障してあげるというようなことをもっと進めてはどうか。

《答弁》 教育長
 この弾力化については、基本的には子どもたちの学習権の保障という観点を大事にするということと、弾力化する前にまず、その中学校が地元と協力して、希望するスポーツができるような条件整備等に努力をし、その前提に立って、なおかつそれが満たされない場合に市町村教育委員会と相談して学区以外のところに行くという措置をとることになる。
 大島小学校の場合、2つの面がある。平成20年に町が先に弾力化してよいということを決め、その基礎を作っており、そこからスタートしている。例えば、大島小学校から串本中学校へ行ってしまうと、元の大島中学校が細っていくという問題があるが、その裏側で、もしそれを止めたら、どうしても行きたいという親御さんは一家転住で島を出ていく。従って、弾力化した方が、子どもは串本中学校へ行くが生活は大島に残り、人口の流出を止めるという面もあり、その両面でその地域の市町村教育委員会がどういうふうに判断するかという点が非常に大事であると思っている。

《質問》 雑賀光夫 委員
 確かに、町としても様々な苦渋の選択をするのはよくわかる。だが、同時に、地域の中学校を守っていくためには、地域でそういうチームを作って、そこでも中体連の試合に出られることを保障していくことも検討したらどうか。

《答弁》 教育長
 この点は、中学校体育連盟の全国の規定が複雑に絡み合っている。
 この夏に文部科学省の副大臣がスポーツ関係の調査で和歌山県に来られ、そのとき、私から、中学校のスポーツ活動の在り方ということで、このことが一面では学校の先生方の負担を非常に重くしている、学校で抱えなければならないということで無理もある、一方で、地域で面倒を見ると言ってくれているのに地域の方々の指導では参加ができないことになっているために地域にお願いできない状況にもなっている、地域の熱心な指導者によっては、中学生のスポーツの足を引っ張っているのは中学校のクラブだと言う方もいる ― これはスポーツ振興審議会でもそういう意見が出た ― ということも副大臣に伝えて、是非とも中体連の在り方をもっと地域で生かせるような形にしてほしいということを訴えた。今のところ、副大臣が東京に戻られてからすぐ中体連の関係者に検討するように指示をしたと聞いている。時間がかかると思うが、これから何もかも学校で抱えるのではなくて、地域と連携しながら子どもの学習権を保障していくことが大事ではないかと思う。

《要望》 雑賀光夫 委員
 いろいろ研究しているようでありがたい。
 中学校の部活については、本来、教員の本務ではないのではないかという議論もあるが、歴史的に学校が抱えてきた中で、本務でなくても学校の教師も部活は大事にしなければならない。
 ヨーロッパでは学校の先生はそういうことをせず、全部、地域のスポーツクラブがやっているそうである。そういう議論なども踏まえて、いま教育長も考えているようであるが、学校、地域がお互いに協力して子どものスポーツに対する気持ちを支えてもらいたい。
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《質問》 雑賀光夫 委員
 国の動向にも係る問題であるが、少人数学級について。
 30人、35人とクラスサイズを小さくしていく問題で、民主党政権になり、一時少し前進を期待もした。文部科学省はかつて、学級規模を縮小しても効果がない、むしろ1クラスに複数の先生が入る方がよいということで、学級規模の縮小に消極的だった時期もあった。
 私も、複数の先生が入る方式は意味がないとは思っていない。それも1つの効果的な方法だと思っているが、やはり30人以下とクラスサイズを小さくすることの方が必要だというのは多くの方の意見であった。そういう点で、予算措置は別として文部科学省の学級サイズについての議論が大分変わってきたと思うが、その辺はどうか。

《答弁》 学校人事課長
 国の方でも、今回の概算要求で、35人学級、小学校1・2年生については最終的に30人学級にしていくという方向性を文部科学省から財務省に出されていた。
 メリットとしては、子どもの状況が把握しやすく、生徒一人一人に関わる時間が増える、丁寧な指導ができるということと、子どもたち一人一人の活動の機会、例えば実験や実習の機会が増えて教育的な効果があるのではとの議論がなされている。ただ、一方では、社会性を育てるという面で、ただ単に少人数にしたということで社会性が育つのかとの議論もある。例えば、友だちとの人間関係につまずいたとき、余りにも少ない人数では次の新たなる人間関係を築けないとか言われている。
 国の動向との御質問もあったのであわせてお答えするが、実は今日の読売新聞朝刊に、国の方の動きとして、小学校1・2年生の35人学級の政策コンテストでの動きとして、一部の報道であるが、見送るとの報道がされていた。まだ文部科学省から正式に報告をもらっていないが、文部科学省はきめ細かい教育指導につながるということで概算要求をしていたものの、財務省は、新聞報道をそのまま読み上げると、「少人数化と学力向上の因果関係は必ずしもない」ということで、40人学級でいいのではないかとの議論の中で今回は見送られたとの報道がなされた。ただ、一定の増額も行う予定だと付け加えた報道もあり、その辺を注視していく。

《要望》 雑賀光夫 委員
 文部科学省の審議会のホームページを見るといろんな資料が出されて、専門家を含めてクラスサイズを小さくした方がいいという議論もしてきている。そういうときに、財政的な理由で困難になると、効果がないとの議論を持ち出してそれを抑えるのは大変困る。
 教育委員会の方でも国に働きかけることを含めて、できれば県独自で単独措置もやり、クラスサイズを小さくできるよう頑張っていただくことを要望する

◇ 議案に対する採決
議案第166号「和歌山県体力開発センターの指定管理者の指定について」
議案第170号「平成22年度和歌山県一般会計補正予算
は、全会一致で原案可決

◇ 請願に対する採決
議請第7号「教育改革についての請願」は、継続審査すべきものと決定
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