2011年6月県議会 松坂英樹 一般質問 概要記録
2011年6月23日
1.震災・津波対策
(1)避難所と避難計画の見直し
(2)今年度の県内津波避難訓練について
(3)湯浅広港津波防波堤の効果と限界について周知を
(4)ダムやため池の震災対策と被害想定について
(5)津波防災教育センター「稲むらの火の館」の活用
   について

2.景観支障防止条例
(1)現行法での対応と、新「条例」の効果・実効性
   について

(2)条例にもとづく規則について
(3)廃屋撤去の補助制度について
(4)「景観」よりも防災・安全を第一目的に

3.有害鳥獣対策
(1)防護柵事業の増額補正対応を
(2)シカの管理捕獲について
(3)有害鳥獣捕獲における鳥獣保護区との関係
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1.震災・津波対策
《質問》 松坂英樹 県議
 通告にもとづき、早速質疑・一般般質問に入らせていただきます。
 最初に、震災・津波対策で質問をさせていただきます。先日の高田由一議員の質問でも紹介がありましたように、私ども共産党県議団など10名が、先月岩手県の大船渡市と陸前高田市に出かけ、震災ボランティア活動や救援物資を届ける活動を行ってまいりました。
 私は、側溝の泥上げのボランティアに参加しました。大船渡市のボランティアセンターでは市の社会福祉協議会が窓口と運営を担当し、各種団体で参加したみなさん、また個人でおいでになったみなさんが、当日の朝8時半に受付をして、各人の希望に基づいて、側溝の泥上げ、写真の修復、避難所の支援、物資の仕分け等々の活動にわかれて現場に向かいました。大船渡市は自然の良港として水産加工会社が多く立地していたのですが、その巨大な冷凍庫の倉庫群に収められていた、魚などの海産物が全部腐ってしまっているんですね。ですからテレビの映像からは伝わってこないたいへんな臭いの中で被災地の皆さんは苦労をされています。そして道路上のガレキは片付いているのですが、海から巻き上げられた泥がガレキとともに町中をおおい、家の床下や側溝で悪臭をはなっています。この泥は普通の土と違って、粒子の細かい粘土質のもので、首にまいたタオルを地面に落とすと、タオルについた泥は、いくらはらっても落ちないんですね。そのくらい細かい粒子ですから、一度乾燥すると埃となって空気中をただよい、臭いと埃っぽさはずっとついてまわるという状況でした。この泥を、まさに人海戦術、スコップですくいあげて土のうにつめてゆくのですが、これらの作業は重機ではできない、人の手でやらざるをえない仕事なんですね。町中で地響きを上げる重機の音を一方で聞きながら、気の遠くなるような範囲の側溝の泥上げにどれだけの人手がいるのかと思うと、ガレキの撤去などといっても、これは一筋縄ではいかないたいへんな仕事だと実感しました。
 また、和歌山からの救援物資を無料青空市という形で、地域の皆さんに直接お渡しする活動をしてきたのですが、震災から2ヶ月以上たったというのに、「はじめて救援物資をいただいた」という状況なんですね。避難所に避難していなくて、親戚や知人の家に身を寄せている被災者、家は無事だったものの働く場をすべて失った漁師の皆さんなど、こういった方々には救援物資が届けられる手立てがないのです。救援物資をお互いに譲り合い、相手を思いやって、励ましあう被災地の皆さんの姿に、本当に胸が熱くなりました。
 私は、こういった救援活動を日本全国の皆さんと力を合わせて息長く続けて行くとともに、東日本大震災の教訓を、地元和歌山の震災津波対策の強化に何としても生かして行くこと、このことを強く決意をしました。そこで本日の質問では、これまでの一般質問との重複をできるだけさけながら、以下5点にわたって震災・津波対策について質問をさせていただきます。

(1)避難所と避難計画の見直し
 第一点目に、避難所と避難計画の見直しの問題です。東日本大震災の津波の映像、また何もかも流された被災地の映像が報道されるのを見ると、有田の住民からも「あんな津波が来たらもうおしまいや」「今の避難所ではとうてい役に立たん」、また「ワシら足悪いのに、避難所まで遠くてとてもよう逃げやん」などという悲壮な感想が聞こえてきます。
 震災当日、和歌山県沿岸にも津波警報が発令されましたが、機能しなかった避難所や体制の不十分だった避難所の例が報告されています。住民からお聞きした一例を申し上げますと、毎年の避難訓練で歩いていって集合する民間施設の避難所に行ったが、業務中ですからと中に入れてもくれなかった、こんなことで避難所といえるのかとおっしゃいます。また、家の近所の避難所に着いて中へ上げてもらおうとすると、「ここは家族連れの方優先です、お一人の方は山手の避難所まで行ってください」と追い返されたといいます。また、ある公共施設では、屋外のベランダへ脱出できる扉は施錠されていて開けられなかった、こういった様々な問題点を行政も、住民も、あらためて気づかされたわけです。
 県は、市町村とともに短期対策として避難所と避難計画の見直しをすすめていますが、その進行状況はいかがでしょうか。お示しいただきたいと思います。


《答弁》 危機管理監
 県では、市町村とともに、これまでの避難場所が適切かどうか、従来の避難所運営至上主義的な発想ではなく、新しい緊急避難先の確保も含め、緊急点検・見直しを行っているところであります。
 見直された避難所、避難場所については、避難カードの全世帯配布により、県民一人一人が自覚できるよう、徹底してまいります。


(2)今年度の県内津波避難訓練について
《質問》 松坂英樹 県議
 次に、県内津波避難訓練について伺います。今年度も7月末に予定されている県内津波避難訓練は、東日本大震災を経験した直後の訓練ということで、これまでの延長線上ではない特別の意義があると思われます。市町村とすすめてきた避難場所の見直しなどに即した中身、県民の防災意識の高揚等に対応した中身となっているのでしょうか。以上2点は危機管理監から答弁を願います。


《答弁》 危機管理監
 津波避難訓練は、平成14年度から和歌山県単独で行っておりましたが、平成17年度以降は、東南海・南海地震で甚大な被害が予想される本県と三重県、徳島県、高知県の4県で構成する「4県東南海・南海地震防災連携協議会」で、共同で統一訓練日を設けて実施しております。
 今年度は7月31日日曜日が統一訓練日となっており、県内沿岸18市町が、防災行政無線や総合防災情報システムを使用した情報伝達訓練や消防・警察・自主防災組織と連携し、緊急点検での見直しや改めて指定した高台などの避難場所の活用も含めた避難訓練の実施などを予定しております。統一日の訓練参加者は現在約1万8千人あまりの予定で、昨年度の約3倍で過去最多の訓練参加者を予定してございます。
 県民の避難意識を高め、避難経路、避難場所を把握し正しい避難行動が取れるよう、より多くの県民が訓練に参加し、体験をしていただくよう、市町とともに呼びかけてまいりたいと考えております。


(3)湯浅広港津波防波堤の効果と限界について周知を
《質問》 松坂英樹 県議
 3点目に湯浅広港津波防波堤の効果と限界について周知をという点で伺います。今年度完成予定の湯浅広湾の津波防波堤は、過去に幾度も津波被害を受けてきた歴史を持つ広川町・湯浅町の住民にとって、湾の入り口で津波被害を抑える効果が期待され、完成が待たれているところです。しかしその一方で、この堤防の設計時の想定は歴史的にも規模の小さかった昭和南海地震の津波高をもとにしたものであり、東海・東南海・南海道3連動地震発生という現行の想定でも、この堤防を大きく越えて津波が押し寄せることとなっていますし、この高さ以上の見直しが行われることでしょう。
 人間がつくった構造物は、津波の威力を弱くし、到達を遅らせ、被害を抑えることはできました。しかし、これには限界があることがはっきりしたわけで、東日本大震災の教訓をふまえ、ハード対策を過信することのないようにしなければなりません。今年度完成する津波防波堤の効果と限界を、堤防の完成という節目にあたり、住民にわかりやすい形で、かつ正確に知らせてゆくべきではないでしょうか。県土整備部長よりお答え願います。


《答弁》 県土整備部長
 この津波防波堤は、昭和南海地震規模の津波を想定して設計されており、今年度完成予定で整備を進めているところでございます。
 東海・東南海・南海地震が同時発生した場合に想定される津波に対しては、後背地への浸水を完全に防ぐことはできませんが、津波防波堤が無く既設の堤防等の施設が機能しなかった場合に比べて、浸水面積で3割程度の低減効果があると見込まれています。
 今般の東北地方太平洋沖地震時の津波を踏まえましても、防波堤などのハード対策のみで被害を防ぐことは困難と考えられます。
 そのため、議員ご指摘のとおり、津波防波堤の効果や限界について周知することは重要と考えておりまして、完成の際には、記者発表や県ホームページ等によりまして、周知してまいります。


(4)ダムやため池の震災対策と被害想定について
《質問》 松坂英樹 県議
 4つ目に、ダムやため池の震災対策と被害想定について知事にお伺いします。先日の全県市町村長会議において、地震によるダムへの被災について「最悪のケースも想定しておくべきではないか」と問題提起されたのに対し、仁坂知事は「ダムについても想定外のことをシミュレーションしておく必要がある」と答えたと報道されています。これまでの県行政の姿勢を一歩前進させたものとして歓迎するものであります。
 私たち、有田川の流域住民にとっても、県営二川ダムのダム災害は建設当時からずっと問題視されてきました。二川ダムの位置する地形は、御荷鉾(みかぶ)構造線という四国から関東まで続く破砕帯が走る、非常にもろい地質の谷となっています。洪水による水害の問題とともに、ダムの耐震対策は大丈夫なのかという声が出されてきました。ダム本体の耐震性とともに、ダムの両脇の岩盤への亀裂や、ダム湖のまわりの山腹崩壊の危険性、ダムゲートの耐震対策も、現在の知見と技術水準で再点検・安全対策を講じる必要性があると考えます。
 また被害想定については、これまで県は「ダムからの水が押し寄せた場合どこまで浸水するのか」という流域住民や自治体からの問い合わせに対し、「ダムは安全です」「そういう想定はしていません」と、まるで相手にしないかのような答えをしてきたのですが、そういった姿勢を改め、最悪のことも考えたシミュレーションをして、住民と危機意識の共有を図ることが大切になってくると考えます。
 東日本大震災を契機に、今後、県内のダムや農業用のため池の震災対策や被害想定にどう取組んでゆくのか、ご答弁を願います。


《答弁》 知事
 二川ダムなど河川に設置されたダムにつきましては、綿密な地質調査や耐震設計に基づいて建設されておりまして、地震に対して十分な安全性を有しております。
 今回の東北地方太平洋沖地震とかあるいは兵庫県南部地震、たくさん地震が近年起こっておりますが、過去に我が国で発生した大規模地震においても、ダムの安全性に関わるような事態は発生しておりませんで、ダムの地震に対する安全性がそういう意味では確認されていると言ってもいいかと思います。
 それでもいつも点検しておくということは大事ですから、実はもう一度、当時の安全設計など現在の知見で再度チェックしておくようにと、これは少し時間がかかるもしれませんが、そういうように指示をしているところであります。一方で、今回の地震を契機に、仮定の議論として想定をはるかに上回る事態が生じた場合はどうするかというようなことをいつも考えておくということは、一般に大事なことだと思います。そういうことでございますので、仮定でダムが壊れたらどうなるかというようなことを、その下流の地形などを含めてシミュレーションしておくということを、これもまた少し時間がかかるかもしれませんが、防災・減災対策の総点検の一環として取り組むように考えているところであります。
 ため池に関しましては、規模の大きいため池等を対象に耐震診断を進めており、その診断結果を所有者となる関係市町等に情報提供し、市町等との協議により、県営ため池等整備事業などで対応していくようにしてございます。
 また、近年、農家の高齢化や担い手不足により、ため池管理に支障が出るおそれがございます。日常の点検管理によりため池の変異や漏水などを発見し、適切な補修・改修を行うことが防災上重要であることから、平成21年度より毎年5月を『ため池点検強化月間』と定めまして、地域ぐるみでの「ため池保全体制」の構築に向けた普及・啓発活動といったソフト対策に努めております。今後もハード、ソフトの両面から、ため池の震災対策に取り組んでまいりたいと考えております。


(5)津波防災教育センターの活用について
《質問》 松坂英樹 県議
 5点目に、津波防災教育センター「稲むらの火の館」の活用について危機管理監に伺います。震災から3ヶ月が経過し、広川町にある津波防災教育センター「稲むらの火の館」への来館者が増えてきています。館長さんにお話を伺いますと、従来の主流であった自治会等の団体に加えて5月の連休以降は家族連れが増加し、この6月は昨年の2倍の来館者数だといいます。また、親子やおじいちゃんおばあちゃんと孫たちが、家族で展示を熱心に学習する姿が見られ、今までは展示をスーッと眺めて歩いていたのが、ボタンを一つひとつ押して丁寧に見学し、防災グッズを見ながら話し合っているというのです。
 今年から「稲むらの火」の教科書への掲載もはじまったこともあり、県として今後とも、展示の充実、講演会や学習会など、津波防災教育センターの活用をいっそう図ってゆくべきだと考えますがいかがでしょうか。


《答弁》 危機管理監
 「津波防災教育センター」は、地震・津波に対する備えを学習、啓発する拠点として広川町が運営する施設であり、センター内には県有施設として、津波の破壊力を疑似体験できる3D津波映像シアターも設置しているところです。
 東日本大震災以降、入館者数は増加傾向にあり、本年4月からの「稲むらの火」の小学校教科書掲載の効果もあり、他府県からの問い合わせが増えております。
 広川町では、備蓄倉庫や一時避難所としても指定し、津波避難訓練でも利用しているほか、語り部、生け花などのボランティア団体にも開放し、地域に密着した運営がなされています。
 今後とも、昨年度行った災害文化伝承事業の展示などコンテンツの充実や地震・津波に関する講演会・学習会などの開催等、更なる啓発に努めてまいります。


2.景観支障防止条例
《質問》 松坂英樹 県議
 次に、2つ目の柱として、議案第79号、「建築物等の外観の維持保全及び景観支障状態の制限に関する条例案」について伺います。県は略称として「景観支障防止条例」と名づけているようですが、新聞報道などでは、廃屋・廃墟対策の条例として紹介されているように、広告看板や建物の建築規制ではなく、廃屋対策のための特別の条例案です。
 県内には空き家が数多く存在し、その活用対策とともに、廃屋・廃墟となってしまっている建物に対する住民の不安や相談は、地域のたいへん大きな行政課題となっています。ところが、住民や議員から相談がもちこまれても、これまで担当部署すらはっきりしてこなかったこの問題に対し、解決に向けて一石を投じようとする県の姿勢は評価をするものです。
 しかし、廃屋対策の基準が「景観」というのはいかがなものか、防災や安全というのが当たり前ではないかという疑問、また、この条例によって実効性ある廃屋・廃墟対策がすすむのかという問題、また一方で県民の権利侵害になりはしないか等、慎重に審議して県民の合意を得る必要がある問題だと考え、以下4点にわたって質問をさせていただきます。

(1)現行法での対応と、新「条例」の効果・実効性について
 まず第1点目に、現行法での対応と、新「条例」の効果・実効性について伺います。これだけ廃屋問題が住民から相談が寄せられてきたのに、なぜ現行法である建築基準法や民法などでの対応ができてこなかったのでしょうか。また全国的には、廃屋対策の県条例や市町村条例を制定した例があるものの、実際にその命令や代執行により廃屋を撤去した例がないというお話です。「伝家の宝刀」を作ってもぬけていないということになっています。そこで、現行法をフル活用する可能性と限界はどう検討されたのか。現行法で対応できなかった課題が、この条例を制定することによって対応できる根拠は何か、はたして実際に廃屋撤去が進むのかを答弁願います。また、条例制定後に発生した廃屋とともに、現在、既に廃屋になっているものへの対策は実際に進むのか。以上の点について答弁を願います。


《答弁》 県土整備部長
 現在は廃墟対策を目的とした法的規制がないため、住民からの苦情や相談については、主に市町村が窓口となって所有者等に強制力のない指導の範囲で対応している状態でございます。
 著しく保安上危険又は衛生上有害という観点においては、建築基準法により一定の法的措置ができますが、危険や有害の要因を取り除くことが目的であることから、立入禁止など最低限度の内容となり、除却命令を行うことは多くの場合困難となります。
 一方、本条例は県民の生活に密着した景観の保全を目的としており、当該目的達成のため既存のものも含めて除却を含めた命令が可能となり、これを厳格に運用してまいります。


(2)条例に基づく規則の詳細について
《質問》 松坂英樹 県議
 2点目に、条例に基づく規則について伺います。「景観」という言葉は、人や立場、主観によって判断がちがってくる可能性があります。「景観」にかかわる定義はどう解釈され、規則でどう定義されてゆくのかが重要になってきます。
 景観支障状態とは具体的にどういう規定をし、地域住民による要請の手続きはどう定められるのか、条例が県民の権利侵害とならないような手立て等をどう規則や条文に盛り込もうとしているのか。お示しをいただきたいと思います。


《答弁》 県土整備部長
 景観支障状態として規則で定める内容につきましては、屋根又は外壁が機能していない状態として、これらのいずれかが3分の1以上損壊している場合などを考えております。
 景観支障除去措置の要請については、対象となる建築物等から半径100メートル以内の周辺住民等の3分の2以上が共同で行うこととするよう考えております。
 なお、権利侵害とならないような手立てとしては、命令等の対象となる建築物等から現に使用されているものは除いており、また、命令等の発出についてもあらかじめ当事者や市町村の意見聴取を行い景観審議会に諮った上で慎重に判断することといたしております。


(3)廃屋撤去の補助制度について
《質問》 松坂英樹
 3つ目に、廃屋撤去の補助制度についての考え方を伺います。今回の条例案は、廃屋の撤去ということを自治体の事務として位置づけるということ、また、空き家の適正な管理を義務付けてそれに反する場合の対応を規定するという点では積極的な意義があると思います。しかし、実際に問題を解決しようとすれば、所有者の廃屋撤去にむけた意思がある場合とない場合によって対応はちがいますし、それぞれ資金力のあるなしによってもまたちがう。意思のあるなし、資力のあるなしできちんと整理して考える必要があるという議論が全国的にされています。
 所有者が所在不明の場合も含めて、撤去意思のないという場合は、資力にかかわらず行政処分による撤去、そして代執行費用は所有者に請求というのは手続きとして筋だと思います。
 一方で、廃屋問題の大部分は、そういった所有者不明であるとか悪質な放置であるというケースは一部であり、市町村や議員に持ち込まれる廃屋・廃墟問題の相談の多くは、所有者や相続人らが何とかしたいと思っているができずに放置しつづけて、結果として廃墟になっている場合が圧倒的に多いわけです。たとえば子や孫がよそに出て行っていて、なんとかしないとご近所に申し訳ないと思いながらも、今の住所での暮らしで手がいっぱいで余裕がない、「もうしばらくしてから」といいながら、どうしようもない状態にまでなっているなどというケースが多いのです。所有者に廃屋撤去の意思がないわけではないが、解決策がうまく見つからない場合が多いのです。この所有者に撤去意思のある場合の対応が、実は廃屋問題の解決の大部分を占める重要な部分だと考えます。
 所有者に撤去の意思があり、かつ資力がある場合は、任意の撤去を促す法的条例的な仕掛けが必要です。しかし撤去の意思はあるが資力がないという所有者に対しては、経済的支援による撤去等が必要となってくると思うのです。
 廃屋等の撤去を進めようとすれば、廃屋対応の意志はあるが財力のない所有者に対しての補助制度の創設こそが必要ではないか。条例にはこうした財政的措置を伴うような措置を、県や市町村が講ずることとするというようなことを定めてはおらず、ここに踏み出さない限り、廃屋撤去は現実的には進まないと考えますがいかがでしょうか。


《答弁》 県土整備部長
 廃墟の所有者には周辺の迷惑となる程度まで放置した道義的責任があると考えられ、また、補助を行うこととすると自主的な撤去が敬遠されることとなり、いわゆるモラルハザードを引き起こすことが懸念されるため、補助制度ではなく条例による規制を行うことが適切であると考えます。


(4)「景観」よりも防災・安全を第一目的にした廃屋対策条例とすべきではないか
《質問》 松坂英樹
 4点目に「景観」よりも防災・安全を第一目的にした廃屋対策条例とすべきではないかという点について、条例の看板というか大黒柱の考え方について伺います。これは最も根本的なことで、議会運営委員会や昨日の質問でも指摘されたことです。廃屋・廃墟問題に取組む動機とその目的を考えれば、防災とか、生活環境とか、安全という動機こそが、緊急性という点でも・重要性という点でも、公共的観点という点でも、一般的ではないでしょうか。そして「景観」というものは、はそれらとともに存在するひとつの指標、「外観」という客観的対応基準の一つとするとすることが、県民感情からみても妥当ではないでしょうか。
 「景観」よりも防災・安全を第一目的にした廃屋対策条例とすべきではないか、逆に言えばなぜそうしないのか、という点についてお答えを願います。以上4点は県土整備部長より答弁をお願いします。


《答弁》 県土整備部長
 今回の条例は、県民の生活に密着した景観の保全を目的としており、防災の観点を重複して入れることはできませんが、防災の観点からの廃墟対策についても、非常に重要な課題と認識しており、今後、別途検討してまいります。以上でございます。


《再質問》 松坂英樹 県議
 答弁をお聞きして感じたことが2つあります。一つは防災の観点からの廃墟対策は非常に重要だと、今後、別途検討したいという積極的なものでした。これは評価したい。しかし、この答弁はある意味、自己矛盾をしているのです。県は本条例を提案するにあたって、廃墟対策色々考えたが、防災や安全・衛生といったモノサシではあいまいで指導はできても撤去命令ができない、だから景観というモノサシで条例を考え出したのですと説明したじゃないですか。
 しかし、そういう色々こねくりまわした知恵を使ったことによって、「なんだ、防災のための廃屋撤去の条例じゃないのか」「景観をタテに行政が撤去命令まで出していいのか」というような議論が出てきてしまっているわけです。はじめから防災や生活・安全を主目的にした条例にすべきではないかという思いを改めて強くしました。
 そこで、もう少しつっこんで以下3点を県土整備部長に再質問します。

@条例の実効性について
 今回の条例で、空き家の適切な管理義務を定義し、それを守るよう促し、また守らない場合の対応を規定することは、それ自体は意義のあることだと思います。しかし、答弁であきらかになったように、この条例によって対策が講じられるのは極めて限定された場合のみです。屋根が3分の1落ちているというところまでいくケースは町中の廃屋を考えた場合、稀だと思います。既に廃屋となっているものについても条例の付則に付け足しているわけですが、代執行までいくのは極めて稀なケースではないか。言うこときかないと命令・代執行までいくよ、という抑止力にはなっても実効性がないのではないか。振興局単位で年数件、県内で年間数十件も廃屋撤去が進み、代執行にむけた撤去費用の財政的措置が毎年必要になるというぐらい事業がすすむのかどうか。正直なところをお答えください。


《再答弁》 県土整備部長
 どの程度、件数が想定されるのかということだと思いますけども、除却命令等への手続きにつきましては、周辺住民からの要請を受けて、それから開始されることになりますので、どれぐらいの件数が年間あるかといったことは、あらかじめ想定することは困難でございます。


《再質問》 松坂英樹 県議
A権利侵害のおそれはないかという問題です。そうならないようにしているという答弁でしたが、条例案では所有者が撤去に同意しない場合、異議申し立ての制度や、第三者機関による審議というようなものは条例・規則に規定されるようになっていませんが、それでいいとお考えですか。同意できないという意見を述べる機会だけは与えましょう、「反対意見は聞きおきます」ということで処理していいのでしょうか。


《再答弁》 県土整備部長
 除却命令を受けた所有者が除却することに不同意だった場合につきましては、行政不服審査法に基づきまして知事に異議申立を行うことができます。


《再質問》 松坂英樹 県議
B補助制度の質問と、防災・安全を第一目的にという質問をあわせて再質問します。補助を行うとモラルハザードになるという答弁でしたが、いささか乱暴な議論だと思います。政策的誘導はあってしかるべきです。それよりかえって、命令・代執行しか準備していない条例では、腐るまで放っておけば最後は行政がやってくれる、どうせあの会社からはお金はとれないとか金は払わなくていい、となるほうがモラルハザードですよ。
 補助制度などの支援なしでは、あとは市町村まかせとなり、結局ほとんど変化なしという結果となる恐れがあります。住民の身近な生活環境と相談・対応をになう基礎自治体と、防災や観光という広域的視野をもつ県が、実際に廃屋・廃墟を撤去することを促進する支援制度・補助制度の創設にむけても動かなければ、「めったに抜けない伝家の宝刀」を作るだけのことになりはしないでしょうか。
 防災の観点を別途検討するのもいいですが、景観目的の条例案だから重複して入れられないなんてことをいわずに、「非常に重要な課題」を、この条例案に盛り込むことはできませんか。


《再答弁》 県土整備部長
 補助制度につきましては、繰り返しになりますが、所有者にも廃墟となるまで放置した道義的責任があると考えられますし、また、こちらとしては、モラルハザードにも懸念されるということで、補助による支援は適切ではないと考えております。
 なお、本条例では対応できない廃墟への対策について、本条例には廃墟としてはならない旨の最低限の規範を設けておりまして、現在命令の対象とならない程度の廃墟については、今後適切な維持管理を行う必要が生じるため、廃墟化を防止する効果があると考えます。
 防災の観点からの廃墟対策につきましては、これも、先ほど申しましたけども、大変重要な課題と認識しているところでございますので、今後、別途検討させていただきたいと思います。


《再々質問》 松坂英樹 県議
 知事に再々質問をさせていただきます。
 部長の話ではどれくらいすすむのかとお聞きしましたが答えられないと、補助制度についてもなかなか難しい、防災観点と入れるのはこの条例をつくるうえでは難しい、という話の繰り返しだったわけです。
 今回、私が質問のなかで提案しているのは2つです。ひとつめは、常識的に考えれば防災の観点の方が大切だろうから、景観を看板にせずに、防災や安全を主たる目的に、景観もそれらにつぐ目的・基準の一つとしておりこんだ条例にした方がいいのではないですかということ。
 もうひとつは、命令・代執行までいくようなやっかいなケースだけを対象にするのではなく、広く任意の撤去がすすむような仕掛けを、例えば「市町村とともに措置を講ずることとする」などという条文を追加して支援制度・補助制度を検討しませんかということです。
 この2つの提案に対しての知事の御所見をお聞かせください。


《再々答弁》 知事
 その二点についてのご質問の根拠といいますか、になっておる松坂議員の先ほどの御議論は、前半と後半でちょっと矛盾しているような感じがいたします。つまり、どんどん進めろと言えばですね、それは、権利の侵害等々について、目をつぶらないといけないようなところがでてまいります。それをきちんとやろうと思ったらですね、それは慎重な手続きを経てですね、やっぱりやむを得ないなということで代執行までいって、最後はですね、代執行をやった費用からですね、なんといいますか、それによって例えば廃墟が撤去されたときに実は、更地になると価値が上がるんですね、そういうものまで差し引いてですね、その部分を請求するというとこまでやる訳です。従いまして、そういう二つの観点からですね、両方を配慮してやらないかんのに、一方で、はよやれと言ってですね、一方で慎重にやれと言って、言われたら、そんなことはできるかということになるのではないかと思います。
 その観点で、申し上げますと、実はあの防災の問題については、森議員の御質問に対して私は、今以上の答弁をさせていただきました。それはですね、条例を作るとか法律を作るとかいうのは、目的があってその目的を達成するために、現行法で例えばできないところを足していくというようなことになるかと思いますので、そういう点では、今回は景観という点でやりました。というのはですね、防災上なんの問題もなくても、普通、景観上あるいは都市利用上ですね困るというような場合が都市なんかには大分あります。そういう問題について、手出しができないので、手出しができるような法規範を作ったということでございます。
 一方、防災についてはですね、建築基準法の制度もあって、かなりの問題については、対応できる、だから同じような形でスパッと入れるというのは、多分難しかろうとは思います。しかしながらですね、建築基準法で対応できない可能性がないかどうか必死で今、考えておりまして、そういう問題がもしあるとすればですね、御指摘があったように、防災上あるいは、特に今回の津波対策上ですね、やらなきゃいけないのを、そういうできないというようなことがあったら、それはできるように、今回のノウハウを活かしてやっていくということを検討していこうと考えているところでございます。
 第二番目に、任意の撤去を進めたらどうかという点についてはですね、別に進めては悪いということでは、決してこれはございません。例えば、市町村がですね、政策目的で、これを進めるために補助金を作りたいということについてですね、別にそれは、むしろ奨励すべきことだと思います。ただ、同じ法律の中で、例えば、こういう法規範、こういう廃墟状態は悪いんですよということを言わないとですね、それを強制撤去してそれをその価値が上がった分の代金まで請求するというようなことは、多分おかしいと思うんですね、従って、先ほどモラルハザードと言っていたのは、もう少し詳しく説明すると、同じ法律の中で、やっぱり今の状態は、悪いんだから何とかしましょうと言ってるやつを補助金上げますからですね、どうですかと言うとですね、ちょっとおかしいんじゃないか。ですから、この条例の問題ではなくてですね、それぞれの市町村で、それぞれの政策目標で、目的をもとにして、ご検討いただければいい話ではないかと私は思います。


3.有害鳥獣対策
(1)防護柵事業の増額補正対応を
《質問》 松坂英樹 県議
 今年度の有害鳥獣対策予算は、県民の強い要望にこたえて大幅増額され、捕獲対策を重点としながら、防護と環境整備の事業をすすめるという方針となっています。有害捕獲に尽力をしていただいている猟友会の皆さんへの支援など、まだまだ充実していただきたい点はあるわけですが、県の有害鳥獣対策がどう進んでゆくのかが注目をされているところです。
 中でも、受益戸数が1戸からでもOKとなった防護柵の要件緩和は、強い県民の要望にこたえたもので歓迎をされています。これまで被害があっても事業化にふみきれなかった地域でも、組合を作って要望をまとめあげてきているところなどが多数出てきました。このことにより、県の予算の内示額を大きく超える要望が市町村に上がっている実態があります。県の防護柵事業の窓口は市町村ですから、その担当のところへ出かけまして、実際の状況をお聞きしてまいりました。
 有田川町では、県単防護柵事業は事業費ベースで、当初予算450万円を計上していましたが、6月補正予算で県の内示枠いっぱいの3300万円に増額補正をしました。その上あと1000万円程度の要望が見込まれているとのことですが、県の予算枠がもうないというので待っているとのことです。内容を聞いてみますと、当初予算では清水地域だけで見込んでいた事業要望が、金屋・吉備地域へと全町的に広がってきているとの状況です。
 湯浅町では、当初予算で2200万円の県の枠一杯に予算化していたものの、地域からすでに上がってきている要望は3000万円になっているとのこと。この背景としては、集落ごとの防護柵組合の組織を粘り強くつづけてきたものの、これまではなかなか事業化に踏み切れなかった。しかし、今年度、要件緩和で一気に地域がまとまってがんばろうという機運が高まり、それぞれの地域から要望が出てきた、そのどれもが切実で要望が強く、なんとかその要望に答えたい、町としても9月補正で対応をめざして県の予算づけを要望しているとのことでした。
 広川町は、今年も国費の防護柵事業に4200万円ほど取組む先進的な町ですが、ここも県単防護柵事業として当初約500万円の事業を予算化していたものの、あと100万円あまり要望が上がっていて、秋のミカンの実る時期までに防護柵を設置したいとの強い要望で、何とか補正で認めていただきたいとのお話でした。
 このように、要望の内容が、いずれもこれまでよりエリアが拡大したことによるもの、今まで辛抱してきたが要件緩和によってやっと事業化できると意気込んで要望を上げてきたもの、また年度末ではなくできるだけ早い時期に事業を追加していただいて秋の実りの時期に間に合わせたいなど、どれもが、たいへん切実で翌年回しにできない状況であると考えます。景気対策の公共事業がすすめてきたように、来年度事業の前倒しというような意味もこめてぜひ予算枠をひろげるべきではないでしょうか。市町村長を通じての増額要望も強いわけで、この際、防護柵事業の増額補正をすべきだと考えますが、農林水産部長いかがでしょうか。


《答弁》 農林水産部長
 防護柵事業につきましては、対前年比270%と予算を大幅に拡充し、また、利用しやすいように受益戸数2戸の事業要件を緩和いたしました。鳥獣被害の深刻さは十分に認識しており、市町村から更なる要望も伺っているため、現在、その把握に努めているところです。補正予算については、鳥獣害対策事業全体の進捗状況を踏まえ、今後判断してまいりたいと思います。


(2)シカの管理捕獲について
《質問》 松坂英樹 県議
 次にシカの管理捕獲についてです。和歌山県が今年はじめて取組んだシカの管理捕獲が4月から5月にわたって取組まれました。シカの生息数を見据えながら慎重かつ大胆にとりくんだ事業ですが、その状況と成果、さらに今後の見通しについてお示し下さい。


《答弁》 農林水産部長
 シカの管理捕獲についてですが、増えすぎた個体数を調整するため、さる4月1日から5月20日まで、県下全域で1,500頭を目標に捕獲を実施いたしました。その結果、ほぼ目標頭数を達成でき、地域からは現時点では被害防止効果が現れているとの声を聞いております。
 引き続き狩猟や有害捕獲と併せて、管理捕獲を実施し、増加しているシカ被害の軽減に取り組んでまいります。


(3)有害鳥獣捕獲における鳥獣保護区との関係
《質問》 松坂英樹 県議
 最後に、有害鳥獣捕獲における鳥獣保護区との関係について質問をさせていただきます。イノシシやシカなどの個体数が爆発的に増加しているということを肌身で感じていることから、県民の中からは「鳥獣保護区の指定を見直すべきではないか」「保護区指定により有害捕獲がすすまないのでは」などの疑問や意見が出されています。
 鳥獣保護区は、野生動物の生態を保護するとともに、市街地や農地などでの安全対策として狩猟を規制しているものですが、有害鳥獣捕獲を進めてゆく上で鳥獣保護区が壁にはなってはいないのでしょうか。
 「鳥獣保護区」の指定や、10年ごとに行われている更新の手続き、また廃止をする場合などにあたって、地域の実情をふまえた協議というものはどうすすめられているのか。また、狩猟制限と有害捕獲は別のものであり、有害対策はすすめられ成果を上げていると認識していますが、「有害捕獲」やまた「シカの管理捕獲」は鳥獣保護区とそれ以外の一般の区域で取組みに差はあるのでしょうか。


《答弁》 農林水産部長
 鳥獣保護区の指定等については、知事は市町村や地元自治会などの意見を聴取することになっており、有害鳥獣による被害状況を踏まえた意見をいただいております。
 被害が発生した場合は、鳥獣保護区内においても県との協議の上、一般地域と同様に有害鳥獣対策ができることとしており、有害鳥獣捕獲や管理捕獲を実施し、成果をあげているところです。

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 2011年6月県議会、松坂英樹 一般質問=6月23日

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