2011年6月県議会 奥村規子 一般質問 概要記録
2011年6月24日
1.産業廃棄物最終処分場の問題について
(1)第二次和歌山県廃棄物処理計画の成果と
   問題点及び次期計画の課題と対策について

(2)紀ノ川産業の取り消し処分に至った問題と
   県の責任いついて

(3)紀ノ川産業に対する今後の対応について
(4)和歌山市に県下最大の最終処分場が
   計画されていることについて

2.介護保険法改定について
(1)改定された新介護保険法をどのように受けとめているか
(2)介護予防・日常生活支援総合事業の創設で利用者・事業者への影響について
(3)介護・看護人材の確保の取り組み

3.高すぎる国保料(税)滞納者への対応の問題について
(1)国保の広域化について
(2)国保料(税)の滞納処分のやり方について
(3)収納活動について

4.要援護者の避難について
(1)災害に強いまちは福祉が行き届いたまちであることについて
(2)災害に際して必要な情報を得ることができるか
(3)震災時に迅速、的確な対応を図るための体制整備について

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1.産業廃棄物最終処分場の問題について
《質問》 奥村規子 県議
 議長のお許しを得ましたので通告に従って、一般質問に入らせていただきます。4点にわたって質問いたします。
 まず最初に産業廃棄物最終処分場の問題についてお伺いします。
 最終処分場には管理型、遮断型、安定型の3つの種類があります。安定型最終処分場はそのまま埋め立て処分しても環境保全上支障のないとされる廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラス・陶磁器くず、瓦礫を埋め立て処分するもので、遮水シートを設ける必要がなく素堀りの穴に埋め立てるものです。廃プラスチック類や金属くず、建材廃材などに含まれている有害物質や、「安定5品目」に紛れて持ち込まれる有害物質が雨水や地下水中に溶け込み、地下水汚染や土壌汚染などの環境汚染をもたらすおそれがあります。
 有害物質等を処分する管理型処分場については遮水シート等の破損や汚水施設の不備等から地下水汚染をもたらすおそれがあります。また有害物質を外部から完全に遮断するとされる遮断型処分場も地盤が軟弱な土地や活断層があるような場所に設置された施設の場合には周囲の囲みや堰堤(えんてい)、コンクリート槽などの破損等により有害な廃棄物が地下や公共用水域に流出するおそれがあります。このように最終処分場は何れも決して安全な施設とはいえないのが実情です。全国各地で産廃の施設が周辺の環境を汚染している問題や処理施設建設の是非をめぐって業者、行政、住民の間で紛争が絶えません。県はこれまで12ヶ所の安定型処分場を許可して来ました。そのうち10ヶ所は紀の川市につくられています。先にのべたようにさまざまな環境汚染を引き起こさないため許可する際の審査、適正処理への監視での県の責任が厳しく問われるところです。この点で今回、不法投棄によって処分場設置許可を取り消した紀ノ川産業の問題についてそれがどうだったのかお聞きしたいと思います。現状はこの写真のようになっています。野ざらしの状態で周辺には悪臭がかんじられます。
 現状をふまえ、そこでまず知事にお尋ねします。

(1)第二次和歌山県廃棄物処理計画の成果と問題点及び次期計画の課題と対策について
産業廃棄物処理についての県の基本的な考え方、具体的には第二次和歌山県廃棄物処理計画の成果と問題点についてどのように認識されているのか、平成23年度からの計画についてそれらを踏まえてどのように生かしてゆくのか基本的見解をお聞きします。
 さらに産廃処分場計画について周辺の住民の同意をどう考えるか、和歌山市の今回のことでは住民の方から、また、紀ノ川産業のことでの住民の不安の声を、知事としてどのように受け止めておられるのかお尋ねします。


《答弁》 知事
 まず、第二次和歌山県廃棄物処理計画の成果と問題点及び次期計画の課題と対策についてお答え申し上げます。
 平成19年3月に第2次廃棄物処理計画を策定いたしました。
 廃棄物の排出量の抑制と再生利用率の向上及び最終処分量の減量化について、平成22年度の数値目標を掲げた取り組みを推進し、また、県内における廃棄物処理施設の確保、不法投棄対策等の推進、災害廃棄物処理体制の構築等に取り組んで参りました。
 数値目標につきましては、再生利用率と最終処分量は目標を達成していない状況にありまして、廃棄物の排出抑制、再使用、再生利用という3Rの取り組みをより一層推進していく必要があると考えております。
 今後、課題を整理したうえで、循環型社会を構築するために必要な施策をまとめ、次期計画を策定して参りたいと考えております。
 次に廃棄物処分場であります。
 廃棄物処分場は適性に排出物を処理・処分するということが原則であります。
 これは排出事業者が法規制をきちんと守ってもらわないといけないのでありますが、そのうえで、本県では廃棄物最終処分場が不足しているため、県内に最終処分場を確保することが必要と考えております。
 最終処分場確保にあたっては、県民の生活環境の保全を図り、住民の意見を聞きながら廃棄物処理法にのっとり対応してまいります。


(2)紀ノ川産業の取り消し処分に至った問題と県の責任いついて
《質問》 奥村規子 県議
 次に環境生活部長にお聞きします。※写真をご覧下さい。取り消し処分を受けた紀ノ川産業の処分場の一部の写真です。野ざらしの状態で周辺には悪臭が感じられます。
 紀ノ川産業の取り消し処分に至った問題と県の監督責任をどのように捉えているか。申請、許認可での問題、許可品目以外の混入物防止策、維持管理の実施状況など、どうであったか。


《答弁》 環境生活部長
 紀ノ川産業に係る産業廃棄物処理施設の設置許可及び処理量の許可につきましては、廃棄物処理法の許可基準に基づき、施設及び事業者の能力等を厳格に審査し許可したところであります。
 許可後においては許可品目以外の廃棄物の混入を防ぐための展開検査の徹底や浸透水の水質管理などの指導及び監視を適切に実施してきたところでございます。
 こうしたなか、事業者が産業廃棄物を不法投棄したことにより、不法投棄の行為者に対して直ちに告発を行い、許可の取り消し処分を行ったところです。


(3)紀ノ川産業に対する今後の対応について
《質問》 奥村規子 県議
 紀ノ川産業に対する今後の対応についてお聞きします。県は業者などに対し告訴した裁判の現状はどうなっているのですか。埋立地の処理などどのように考えているのか、また取り消し処分の2月以来廃プラなど野ざらし状態の対策に県はどのように目処を立てられるのかお聞きします。


《答弁》 環境生活部長
 今後は廃棄物処理法に基づき、不法投棄した廃棄物の撤去及び処分場における廃棄物の飛散防止や悪臭対策など、事業者等に対し必要な措置を命じ、県としても地権者等と協議しながら生活環境の保全に努めてまいります。
 なお、裁判の状況については現在、審理がすすんでいるところです。


(4)和歌山市に県下最大の最終処分場が計画されていることについて
《質問》 奥村規子 県議
 和歌山市に県内最大の最終処分場、紀ノ川以北の滝畑・上黒谷地域に建設計画の報道がありました。そのような計画はありますか。住民不安に応える点からどのように把握し和歌山市との連携をどのようにすすめられるのかお答え下さい。


《答弁》 環境生活部長
 和歌山市に県下最大の最終処分場が計画されていることについてでございますが、和歌山市において産業廃棄物最終処分場の計画があることは承知しております。
 当処理施設の設置については廃棄物処理法上、許可権は和歌山市にあります。
 この計画は、県内における産業廃棄物の処理体制の構築に大きく影響するものであると考えられますので、県としても情報収集に務めてまいります。


《再質問》 奥村規子 県議
 知事の答弁の中で、「産業廃棄物は排出事業者の責任において適正に処理・処分することが原則」ということだと思いますが、「排出事業者」と言われたのかどうか確認をしたいと思います。
 答弁の中で、和歌山市の計画については承知をしているということでした。この許可権が和歌山市にあるのは私も分かっているのですが、県内における産業廃棄物処理体制の構築に大きく影響するものという答弁でしたので、ぜひしっかりと県としても対応していただきたいと思います。
 また、紀ノ川産業の対策についてはメドが明確に示されていなかったように思い、不十分な答弁だったと思います。それについて何点か再度質問をさせていただきます。
 紀ノ川産業は、皆さんの手もとの写真でもご覧いただけますにように、廃棄物が野ざらしの状態にあります。先ほどの答弁をお聞きして感じたことですが、許可時点ではもちろん、事業所として欠格者ではない方々のもとですすめられたと思います。しかし先ほど、「今裁判中です」という状況の報告しかありませんでしたが、なぜこのようなことに至るのかという明確な答弁がなかったと思います。その点で再度、答弁をよろしくお願いします。
 第2次計画の実行中に起こったこの問題は、これからもまた起こりうることではないかと思います。こういったことをどうやってクリアーしていくのかお聞きしたいと思います。
 紀ノ川産業の野ざらしの現状は、本当に住民にとっても、観光をすすめる和歌山県にとっても非常に問題だと思うのです。地域環境にとって深刻な事態だと私は受け止めています。住民生活と環境を守ることが第一の責任だと思いますが、それについて知事はどのように臨んでいかれるのか、再度質問をしたいと思います。
 また、野ざらし状態の解決に向けて、県行政としての対応について二つの点でおうかがいいたします。
 一つは、捜査の進展を見守りつつも、県として事業者らに改善命令を求めることは当然だと私も思います。その間、野ざらし状態には何ら手をつけず放置し続けていることになりますが、これで監督責任を果たしていると言えるのでしょうか。
 二つ目は、事業者らが改善命令に従わない場合、その先はどうしていくのか。行政代執行も当然視野に入っていると思いますが、県として責任ある答弁をよろしくお願いします。


《再答弁》 知事
 議員のご質問が誰に対してなされたものか、ちょっとよく判らなかったので、推測でお答えさせて頂きます。
 まず、産業廃棄物は排出事業者に責任と原則、というような所を正確に言えということだったと思うんですが、私が申し上げましたのは、今議員がお口になされたこととちょっと違いまして、申し上げたことをもう一回言いますと、産業廃棄物は適正に処理・処分することが原則であります。排出事業者が法規制をきちんと守ってもらわないといかんわけであります。という風に申し上げたわけであります。その上でと言って、次に続けた訳であります。
 それから、明らかに知事答えなさいと言われたことにつきまして申し上げますと、野ざらし状態というのはよくないというのは当然であります。そのために、我々は、原状回復命令を出したりして、1日も早くこの状況を脱すると、きちんと元に戻すと、正しく戻すということが大事だと思います。

《再答弁》 環境生活部長
 紀ノ川産業に係る産業廃棄物処理施設の設置許可及び処理量の許可につきましては、廃棄物処理法の許可基準に基づき、施設及び事業者の能力等を厳格に審査し許可したところであります。
 許可後においては許可品目以外の廃棄物の混入を防ぐための展開検査の徹底や浸透水の水質管理などの指導及び監視を適切に実施してきたところでございます。
 こうしたなか、事業者が産業廃棄物を不法投棄したことにより、不法投棄の行為者に対して直ちに告発を行い、許可の取り消し処分を行ったところです。
 今後は廃棄物処理法に基づき、不法投棄した廃棄物の撤去及び処分場における廃棄物の飛散防止や悪臭対策など、事業者等に対し必要な措置を命じ、県としても地権者等と協議しながら生活環境の保全に努めてまいります。
 なお、裁判の状況については現在、審理がすすんでいるところです。


《要望》 奥村規子 県議
 私は、野ざらし状態を早く覆土していくうえで、何が問題になっているのかをもっと明らかにしていかなければいけないと思っています。
 事業所に対し、いろんな書類や審査等が適切に行なわれて許可が出されてきたわけだと思いますが、この紀ノ川産業に対しては今まで行政指導が8回され、その後にこういった不法投棄がありました。これまで適正に指導してきたと言われましたが、こういった状況下で県がどのように監視や指導をするのか、なかなか私たち県民に明らかに、また安心できるようになっていないのではないかと思います。
 紀ノ川産業の野ざらし状態に、県民にとって安全・安心にどうしていくのか、まだはっきりとした答弁でなかったと思います。きわめて無責任だなと私は感じています。そして、住民の皆さんがこれから安心できるように、今度の第3次計画について考えていただくことを強く要望します。


2.介護保険法改定について
《質問》 奥村規子 県議
 2点目は介護保険法改定についてお聞きします。
 先日きわめて短時間の国会審議で介護保険法改定案が成立しました。法改定は「要支援」と認定された「軽度者」への介護サービス切り下げを打ち出しています。「介護予防・日常生活支援総合事業」(以下総合事業という)を創設し、市町村の判断で要支援者のうちの一定部分を総合事業に移すことを可能にします。
 総合事業にはサービスの質を担保する基準がなく専門職以外に担わせて費用を低く抑えられる仕組みです。国は将来「軽度者」を介護保険から完全にはずす方向を検討しており「総合事業」は第一歩と考えられます。また介護保険を重度者向けに「重点化」することで「医療から介護へ」「入院から在宅へ」の流れを進めるものです。長期療養患者が入る介護療養病床の廃止については廃止期限を2017年度末まで6年延長するものの病床を維持するのではなく報酬を減らして廃止をすすめる方向です。
 在宅での重度者の受け皿として法案に盛り込まれたのが巡回型訪問介護・看護です。これを高齢者住宅とセットで整備すれば特養ホームの待機者解消も図れるとしています。
 しかし今でも介護・看護の人材不足で現場は困っています。新設される巡回型訪問介護・看護が成り立つか疑問を持つところです。
 特別養護老人ホームには低所得者向けに食費と居住費の軽減がありますが高齢者住宅には家賃補助もなく低所得者は入れません。これでは病院から押し出され特養待ちで入れない高齢者の在宅生活の安心は保障されません。法案は国にとって安上がりな医療・介護の提供体制をつくるものとなっています。
 そこでお聞きします。
(1)改定された新介護保険法をどのように受けとめているか
 県として介護保険法改定をどのように受け止めていますか。


《答弁》 福祉保健部長
 今回の介護保険法改正の主な内容といたしましては、高齢者が介護が必要な状態になっても可能な限り地域で暮らし続けられる地域包括ケアシステムの実現のため、在宅生活を24時間対応で支える「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」や、訪問看護と小規模多機能型居住介護を同一の事業者で運営できる「複合型サービス」などの新たなサービスが設けられております。
 また、市町村の介護保険財政の不足に備えて県に設置されている財政安定化基金の一部を取り崩して保険料軽減に活用可能とするなど保険料上昇抑制策も盛り込まれております。
 今回は制度の大きな改正ではございませんが、地域包括ケアシステム構築に向けた取り組みをすすめるため、県といたしましても積極的に対応してまいりたいと考えております。


(2)介護予防・日常生活支援総合事業の創設で利用者・事業者への影響について
《質問》 奥村規子 県議
 介護予防・日常生活支援総合事業の創設による利用者・事業者への影響をどのように考えますか。


《答弁》 福祉保健部長
 当事業は今回の介護保険法改正であらたに創設されたもので、要支援の方を対象として市町村の判断により利用者の状態や意向に応じて介護保険の予防給付、または新たな介護予防、日常生活支援の総合サービスを提供します。
 詳細についてはまだ国から示されておりませんが、当事業の実施により利用者に対するサービスが低下したり、小規模な事業所の経営等に影響が出ないように配慮することを、市町村に指導・助言してまいりたいと考えてございます。


(3)介護・看護人材の確保の取り組み
《質問》 奥村規子 県議
 介護・看護の人材確保の取り組みについてお答え下さい。


《答弁》 福祉保健部長
 これまで新規就業を支援する事業や就職相談会、介護体験教室などを実施するとともに、専門的な研修を充実させることで良質なサービスを提供することはもとより、介護職員が仕事にやりがいを感じ、職場に定着できるよう支援しているところです。
 また併せて、介護職員の処遇改善のため、平成21年度から国の介護職員処遇改善交付金を活用し、貸金引き上げのための資金を交付しておりますが、今年度限りの措置となっていることから、来年度以降も引き続き実施されるよう、国に対して要望しているところです。
 また看護職員の確保につきましても、第7次看護職員需給見通しの状況をふまえ、養成力の確保・就業促進・離職防止・資質向上を柱として量及び質の両面にわたる確保対策をすすめているところです。
 いずれにいたしましても県としては、介護と看護人材の不足が続いていることから、県内事業者や関係団体等と連携しながら、人材の確保によりいっそう取り組んでまいりたいと考えています。


3.高すぎる国保料(税)滞納者への対応の問題について
《質問》 奥村規子 県議
 3点目は高すぎる国保料(税)の滞納者への対応の問題についてです。
 国民健康保険料(税)が高すぎる問題です。保険料(税)の滞納世帯は全国で436万人、県内では2010年6月1日時点で、30261世帯、加入世帯の16.8%となっています。
 国民健康保険では失業者、年金生活者など低所得者の加入者の割合が増えてきています。それらの人を含めて国民全員に公的に医療を保障するのが国保制度です。もともと国が財政責任を果たさなければ成り立たない制度ですが、国は国保への国庫負担割合を減らして、保険料を高騰させ、いまは支払い能力を超える高さになっているのではないでしょうか。しかし国は国庫負担を元に戻すことをせず、2005年の通達では「収納率向上」にむけて、滞納者の保険証とりあげ、財産調査の実施、預貯金・給与・生命保険の差し押さえなどを例示して、市町村に保険料(税)滞納への制裁へ徴収対策のみ強化の号令をかけました。この後全国的に滞納への差し押さえが広がりますが、和歌山県内の市町村で実際差し押さえが増えてきたのは、2006年地方税回収機構設立が契機となっています。和歌山は全国に先駆けて地方税回収機構をつくり、国保料(税)の滞納も対象に含めました。住民の医療保障に何ら責任を持たず、徴税だけを機械的におこなう、回収機構に、市町村職員が派遣されて、回収機構で差し押さえ、財産調査、公売等の滞納処分の業務を繰り返し行い、そのことで、住民の生活をまったく無視した滞納処分のノウハウを習得するわけです。市町村で担当しているときは、滞納者の督促をしても払えないと、分納などの相談にのり、また生活そのものの支援を考える仕事をしていた職員が、このノウハウを習得し、そのあと自治体に戻ってから、そのノウハウを自治体に持ち込む、自治体でも当然のように差し押さえしていく、こういうしくみになっています。
 たとえば、橋本市では国保税の滞納世帯に対し2009年度212世帯が差し押さえられました。なかにはパート代金として1か月分の7万円が振り込まれると、預金として全額差し押さえられた。障害のある人が生活苦で親戚に頼み込んで、振り込んでもらった5万円も、預金ということで差し押さえられた。振り込まれた給料の全額18万円が差し押さえられた。と言うケースもあります。給料のうち、生計費は差し押さえが禁止されていますが、振込された場合は預金とみなして差し押さえる、そういう脱法的なことがやられています。
 岩出市では、2008年度は2件21万円、09年度27件280万円、10年度141件3800万円と差し押さえ件数、金額とも急増しています。
 和歌山市では、2009年度159世帯を差し押さえしました。財産調査したのは570世帯、うち350世帯が3ヶ月短期保険証の世帯で、苦労しながら分納している人々を狙い撃ちした調査でした。老後のために民間保険で積み立てている個人年金を差し押さえようとし、この人からの抗議で差し押さえを撤回しています。
 海南市は2008年度預貯金差し押さえは439件にのぼっています。
 住民税などの滞納も、生活実態をみないで、強権的に差し押さえることは問題です。さらに国保料(税)は、税以上に低所得者に重い負担となっており、余計に深刻な問題となっています。税金は生計費は非課税となりますが、国保料(税)はそうではありません。
 和歌山市の2010年度国保料率でみますと、年金収入180万円夫婦2人くらしの方、所得税、住民税は非課税ですが、国保料は2割減免で111930円です。3人世帯で所得が100万円ですと税は非課税ですが、国保料は2割減免で223830円です。
 こうした国保料は、支払い能力を超えるものではないでしょうか。それが払えないで滞納したとき、機械的に差し押さえし、滞納処分することは、国税徴収法にありますが、「生活に困窮する場合は差し押さえてはならない」とする規定にももとるものではないでしょうか。
 県は昨年年末につくった「国保広域化等支援方針」では、収納対策について「機構が実施している3ヶ月の短期スタッフ職員制度、併任派遣制度やコンサルティング制度を活用し、各市町村担当職員の徴収技術の向上を図る」としています。これは市町村に回収機構のやり方を広げてこうした機械的な滞納処分をさらにいっそうすすめる方針ではありませんか。
 こうしたことから、福祉保健部長にお尋ねいたします。

(1)国保の広域化について
 国保広域化等支援方針は、先に述べた収納対策を進めるとともに、徴収率目標を定め、市町村の一般会計からの法定外繰り入れをやめること、国保会計赤字の解消年度を明確にすること、などを決めています。この広域化等支援方針について、どう考えているか。


《答弁》 福祉保健部長
 国民健康保険には小規模な町村では保険財政が不安定になりやすいこと、また市町村ごとに保険料が大きく異なり被保険者間に不公平があるという問題があります。
 平成22年12月、県では市町村国保の事業運営の広域化等により、保険財政の安定化、保険料の平準化等を推進するために市町村国保広域化等支援方針を策定いたしました。
 しかし、市町村国保には高齢者や低所得者が多く、財政基盤が脆弱であり、所得と比べて保険料が高いという構造的な問題があります。
 県といたしましては、国の責任でこの間題を解決し、国庫負担による保険財政基盤強化策等のいっそうの充実を図るよう、他府県と連携しながら引き続き国に働きかけてまいります。


(2)国保料(税)の滞納処分のやり方について
(3)収納活動について
《質問》 奥村規子 県議
 地方税回収機構のやり方を市町村に広げるやり方はやめるべきではないか。この間市町村で増えてきている、生活を脅かすような差し押さえを中止するよう、指導すべきではないか。
 住民の生活実態をよく聞き、親身に対応する収納活動に転換すべきではないか。


《答弁》 福祉保健部長
 保険料の収納確保は、保険制度を維持するうえで、また被保険者間の負担の公平を図る観点からも重要な課題となっております。
 県としましては、滞納者の収入や生活状況等を把握し、必要に応じて保険料の分割納付や減免を行うなど、きめ細かな納付相談を行うよう市町村を指導しています。
 このような取り組みのうえで、所得や資産等があるにも関わらず保険料を納付する誠実な意思が認められない者については、地方税法と国税徴収法の例により、市町村が滞納処分を実施しています。
 滞納処分については、国保料と住民税その他の税目で異なる連用が行えるものではなく、市町村が公平、公正に実施しているものと理解していますが、県としましても国保料に係る差し押さえ等の状況について、把握に努めてまいります。


《要望》 奥村規子 県議
 福祉保健部長から、まず実態を見ていただくといった答弁をいただきました。各市町村の徴収の仕方や、住民の方の思いも含め、ぜひ実態調査をしていただきたいと思います。
 生存権を損なうような差し押さえといったことになっていないか、そのこともあわせてよろしくお願いします。


4.要援護者の避難について
《質問》 奥村規子 県議
 最後4点目は要援護者の避難についてです。
 未曾有の大災害となった東日本大震災と東電福島原発の重大事故から3ヶ月半近くなります。被災された皆様に本当にこころから深い哀悼とお見舞いを申し上げます。
 被災された皆様にとって迫り繰る大津波の恐怖や言い尽くせない深い心の傷など言葉にさえ出せない状況がまだまだ続いています。県民の皆様も心を痛められていることと思います。私自身大きなことは出来ませんが被災地に心を寄せながらわが町の防災と福祉のまちづくりを考え一歩一歩実現してゆくことだと思います。松坂県議や高田県議が被災地に物資など届け、ボランティア活動に参加すると言うことなのでいっしょに参加させてもらいました。片道20時間、往復5000キロ行き先は岩手県大船渡市と陸前高田市でした。街ごと流された光景は目の前にあってもまだ受け止められるものではありませんでした。海の静けさが余計に信じられなくさせられています。しかし、一日だけですが社協のボランティアセンターを通して大船渡市北小学校の避難所のお世話係を担当させていただき、地元の方々のお話をうかがう中で大津波の恐怖が伝わってきました。とにかく逃げることが大事と言われた言葉がとても印象的でした。その言葉を荷台に積み和歌山に戻ってきました。
 そこで2010年度6月議会でも質問させていただきましたが避難体制の問題について再度取り上げたいと思います。
 県の地域防災計画震災対策の策定計画は1、東海・東南海・南海地震同時発生2、中央構造線による地震3、田辺市内陸直下の地震を想定しています。
 この想定についても見直しの検討が進められていますが、要援護者の避難の課題は県全体で取り組まなければなりません。
 そこでこの課題を進めてゆくためにもまず知事にお尋ねします。

(1)災害に強いまちは福祉が行き届いたまちであることについて
 障害者が災害時だけでなく日常の暮らしの中で絶えずお世話になったときや手を煩わすような場面で「すみません」と言う気持ちをもったり、口につく言葉になっています。障害があっても普通に暮らせる社会のあり方として、福祉が行き届いていること、それが災害に強い街づくりになると考えるが知事のお考えをお聞かせ下さい。


《答弁》 知事
 「災害につよいまち」は、単にハード面を強化することだけで作られるものではなくて、地域における住民どうしの支え合いや助け合いなどソフト面の充実が相まって作られるものであると考えております。
 地域には様々な課題を抱えた住民が生活しており、誰もが安心して自分らしい生活を送るためには、支援を必要としている住民を決して見逃さずに、適切な支援につなげていくことが求められます。
 このため、県では、昨年3月に「地域福祉推進計画」を改定し、住民、地域で活動する多様な組織、行政が主体的に連携する「新しい支え合い」の仕組みを地域に構築することにより、「支え合いのふるさとづくり」を推進しており、昨年1月からは、地域見守り協力員制度というのを作りまして、これにも取り組んでおります。
 こうした取組は、平時のみならず、災害時にも力を発揮するものと思いますし、逆に、災害時要援護者の避難支援プランの作成を通じて、要援護者と避難支援者との関係ができて日頃から要援護者の見守りが行なわれることもあると思います。
 ただし、特に津波の避難には時間の概念が大変でございます。そういう意味で家族とか近くの人が助ける仕組みをこの際作っておくということが大事であります。
 要援護者の避難対策は、防災・減災対策の中でも重要な位置を占めるものであり、地域福祉を推進することにより要援護者の避難対策がより充実したものとなるように、市町村と連携しながらしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。


(2)災害に際して必要な情報を得ることができるか
《質問》 奥村規子 県議
 次に福祉保健部長にお尋ねします。
 災害に際してどのような障害があっても誰もが必要な情報を得ることが必要です。
 東日本の大震災時に当県においても避難指示、避難勧告が出されましたがそうした情報の伝達手段はどうなっていますか。


《答弁》 福祉保健部長
 要援護者に対して災害時に必要な情報を伝達する媒体としましては、防災行政無線、ラジオ、テレビをはじめ、「防災わかやまメール配信サービス」、ファックス等がありますが、要援護者の身体の状態等により対応できる媒体が異なってきます。
 また、より早く確実に伝達するためには複数の媒体を活用することも必要となりますが、携帯電話等の機器の保有状況、また停電時にも対応可能か等を考慮すれば、最終的には要援護者一人ひとりの「避難支援プラン」を作成し、誰が、どのような流れで、どのような方法で、どういうことに留意して情報伝達を行うのかを定めておくことが最も重要であると考えております。


(3)震災時に迅速、的確な対応を図るための体制整備について
《質問》 奥村規子 県議
 震災時に迅速、的確な対応を図るための体制整備については市町村の要援護者の把握状況や避難支援プランの策定状況についてお聞かせください。


《答弁》 福祉保健部長
 平成19年の国からの通知に基づき、平成20年6月に「和歌山県災害時要援護者支援マニュアル」を策定し、市町村において「避難行動要支援者」の登録及び「避難支援プラン」の作成をすすめるよう働きかけてきたところです。
 その結果、平成21年3月末現在、個別計画の作成に着手していた市町村は13市町にとどまっておりましたが、本年4月1日現在では26市町で作成に着手しております。
 また、このたび県内市町村における要支援者の登録の状況を調べたところ、現在要支援者の登録者数は約1万8千人で、うち約3割の方について個別計画が作成されております。
 県といたしましては、全市町村において要支援者の登録及び個別計画の作成を早急にすすめるとともに、民生委員・児童委員はじめ地域住民の協力を得ながら、さらなる要支援者の把握を促進するよう引き続き働きかけてまいりたいと考えてございます。


(要望) 奥村規子 県議
 知事も、地域福祉が非常に大事であると言われました。私も、いろんな情報伝達が機械的にできたとしても、本当に要援護者の一人ひとりが災害から救われる体制をどうしていくかが非常に大事なことだと思い、質問をさせていただきました。
 先日、障がいのある方や65歳以上の要援護が必要な方がどれだけいらっしゃるのかとおうかがいしたら、重複している障がいの方もありますが、10万人近くいらっしゃるということです。実際には10万人近い7万人、8万人いらっしゃるのか、そういった全体的な状況もぜひ掴んでいただきたいと思います。
 そういうなかで、施策として福祉が行き届いた町をどうすすめていくのかを、ただ単に福祉部門だけではなく、県庁全庁あげてすすめていただきたいと思います。

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