2011年6月県議会 文教委員会 雑賀光夫委員の質問概要記録
 627日(月)
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《質問》 雑賀光夫 委員
 最初に、総務課長の説明の中にあった学校の耐震対策について。
 これは、特に小中学校についてはまだ低いのでより一層早期に耐震化を図るという、今までのテンポをさらに上げるという意味だと思う。最近の報道でも、文部科学省が急ぐように言っていると聞いたが、その点、市町村が耐震化をやりやすいようにするための予算的な措置はあるのか。

《答弁》 教育総務課長
 これについては、国の補助制度がある。その制度の中にIs値というものがあり、その数値が0.3未満で、かつ、コンクリート強度が低い建物の建替えが2分の1、それ以外の0.3未満の建替えは3分の1、そして既存校舎の地震補強は、0.3未満が3分の2、0.3以上は2分の1の補助となっている。

《要望》 雑賀光夫 委員
 「こういう時期であるので急ぎなさい」と言うのは簡単であるが、それに対して予算的な措置がないとなかなか進みにくい。今言われたのは従来からの説明だと思うが、国に対しても「早くやるための予算措置をしてください」ということを強く言っていただきたい。
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《質問》 雑賀光夫 委員
 高等学校再編整備であるが、和歌山県立高等学校再編整備第2期(前期)実施プログラムが去年3月に出て今実施されているが、全体としてどのようになっているか。

《答弁》 教育総務課長
 特別支援学校の過大規模化の対応として新設特別支援学校を現和歌山西高等学校の敷地に造るということで、平成24年度の開校を目指している。
 和歌山西高等学校と和歌山北高等学校の統合についても、平成24年度開校を目指して進めている。
 定時制・通信制については、県内どの地域からでも学びやすい体制づくりとして進めるため3拠点校を造るということである。その中で、平成23年度に南紀高等学校に通信制課程を設置している。また、青陵高等学校と陵雲高等学校については、平成24年度に統合したいと考えている。

《質問》 雑賀光夫 委員
 和歌山西高等学校と和歌山北高等学校の統合と特別支援学校の設置については、特に特別支援学校の過大規模化の解消策としてありがたい。しかし、校舎の整備が追いつかず、統合するものの北校舎のままで学習と聞くが、どうか。

《答弁》 教育総務課長
 和歌山西高等学校と和歌山北高等学校の統合は、まず24年度に統合するが、現状のまま学習し、平成24年度、25年度は、特別支援学校の工事もあり、西高等学校のグランドがそのまま使いがたいという状況もあり、2年間は北高等学校に体育科を置き、平成26年度から西高等学校の位置へ体育科を移すという計画である。工事は特に遅れてはいないので順調に進むと考えている。

《要望》 雑賀光夫 委員
 予算の少ない中でやり繰りしながら進めていただいているが、統合したものの校舎2つということで先生方の負担もあるので急いでいただきたい。

《質問》 雑賀光夫 委員
 定時制・通信制は青陵高等学校と陵雲高等学校が統合してきのくに青雲高等学校になるということであるが、定時制と通信制が統合して1つになるというのはどういうイメージなのか。

《答弁》 教育総務課長
 青陵高等学校と陵雲高等学校は、施設としていうと、真ん中に廊下があって、そこで分かれているという状況である。施設面では、校長室や他にも幾つか自由な部分ができるので、他の教室に使っていただけるという形になっている。

《質問》 雑賀光夫 委員
 子どもたちにとって、定時制・通信制で学ぶことによる変化はあるのか。

《答弁》 学校指導課長
 定時制・通信制のそれぞれの特性を生かしながら互いに授業を互換することができるし、リカレント教育や生涯学習の観点からも学習の幅を広げていけると考えている。

《質問》 雑賀光夫 委員
 実際に通信制で学ぼうとする子ども、あるいは定時制で学ぼうとする子どもにとって、これから自分が通う学校と従来の制度で先輩が通っていた学校とで違いはあるのか。

《答弁》 学校指導課長
 現状でも、通信制・定時制を併置している学校として紀の川高等学校がある。定時制の時間割で学習するスタイルと通信制という幅の広い枠組みで学ぶ学習スタイルを互いのライフスタイルやペースにうまく合わせることにより早く学習を終えていける可能性もあるし、より学習の幅を広げていける可能性もあると考えている。

《要望》 雑賀光夫 委員
 地元の皆さんからどう変わるのかという疑問や質問があるので、中学校に対してもよく説明してほしい。

《質問》 雑賀光夫 委員
 紀の川高等学校の定時制・通信制については、今までのプログラムでは伊都高等学校の名前が上がってきていなかったが、新しいことが検討されているようなことを現場から聞く。第2期プログラム以外に新しい検討をされているようなことがあるのか。

《答弁》 教育総務課長
 伊都地方については、生徒減の著しい地域として高等学校の再編整備等について検討している。
 伊都高等学校については、全日制ではなく、新しいタイプの学校ということも視野に入れ、学校に検討をお願いしている。また、定時制・通信制の高等学校である紀の川高等学校との統合も1つの案として検討しており、両校の関係者とも協議して進めていきたい。

《要望》 雑賀光夫 委員
 高等学校の統合ということでは、私の地元の海南高等学校と大成高等学校の統合で藤山議員とともに苦労したことがあるが、いろいろ意見があると思うので、地元の意見はしっかりと聞いていただきたい。
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《質問》 雑賀光夫 委員
 総務課長の報告で、きのくに教育協議会の報告をいただいたという話が一言だけあった。 これについては、私も端から端まで全部読んだわけではないが、かなり一生懸命読んだ。
 これまでの様々なきのくに教育協議会の報告もあるし、あるいは義務教育ニュービジョン研究会議の報告等、いろいろな人を集めて行った報告があるが、今度のきのくに教育協議会の報告については、ちょっと一味違うなという感じを持っている。事務局を担当された皆さんの立場から言って、今度のきのくに教育協議会はどういう特徴を持っているのか。

《答弁》 学校教育局長
 報告書が今までとどう違うかという御質問については、大きく2点あった。
 1点は、今までの協議は、皆さん方とロの字型になって言い合ってまとめるというスタイルだったが、今回、2年間にわたって長時間、細部にわたって議論してきたということもあって、小グループに分かれて議論してきた。そんな形態をとって、全体の半数回以上、議論してきた。
 もう1点は、報告書については、事務局の方で皆さんの意見を取りまとめて案のようなものを提示していくというのが通常のやり方であるが、今回の場合は、委員長からの御提案で、委員さん方による起草委員会をつくって議論したこともあり、多くの皆さん方の生の声が反映されてきている。そういう意味で、読まれた感想もこれまでと違うのかなと思う。

《質問》 雑賀光夫 委員
 私がこれまでと一味違うと感じたのは、経済団体、地教委、校長、PTA、教職員組合と、いろいろな人が集まって議論されたという点と、13回の会議があって、単に事務局がまとめてこれでいいかというのではなく、委員による起草委員会を開いてまとめられているという点。
 今度の「きのくに教育協議会」は、10年ほど前から、高校の通学区域の撤廃であるとか中高一貫の県立校であるとか、いろいろな教育改革なるものがなされて、この文教委員会でも、本会議でも、これでよかったのかという意見も含めて、いろいろな意見が出始めていた時期に開かれ、しかも相当な時間をかけてやられただけに、注目しながら見ていた。
 委員による起草委員会というのは、これまでの報告書にはなかったように思う。私は、これまでもこういう報告書にいろいろ辛口の意見を言ったことがある。例えば、中高一貫の教育懇談会というのもあったが、あのとき、私は、委員の中に何人も知っている人がいたので、直接電話をして中高連携というのが皆さんの意見だったのかと聞いたら、中高連携の話が多かったのではないかという話だった。
 小中学校の統合の問題を協議するニュービジョン研究会についても、建前上は教育のあり方を議論するとなっているが、実際につけている資料は予算削減のために学校統合に誘導するだけの報告書ではないかと辛口の批判をしたこともあった。
 しかし、今回は少し違ったと思う。その中で特に注目をされたのがシステムの問題、学区制の問題と中高一貫の問題で、これが13回の議論の中で3回話し合われている。
 学区制の問題についてはいろいろな意見があるが、その中で、今まで学区制を撤廃するまでは思っていなかったような格差という深刻な問題が起こってきたというのは、委員さん方の一致した意見であると言われている。具体的には、どういうことが問題であると議論されたのか。

《答弁》 学校教育局長
 例えば、学力格差の問題が学区制を撤廃したことによって拡大したという議論ではなく、平成10年を過ぎたころから学区制の議論をしてきたが、このときに、学力格差やそれに伴う教育の格差、いわゆる二極化ということはそれほど社会の中で大きく言われていなかった。今であればそのことをもっと意識するかもしれないが、10年前には今ほど意識しなかったというような議論があった。
 それから、共通して言えるのは、いずれにしても、それが学区制とどう関わっているかということは別にして、学力の格差というのは教育の問題だけではいかないところもあるが、取り組んでいかなければならないだろうということで意見の一致を見た。

《質問》 雑賀光夫 委員
 すぐに学区制をどうこうというのは難しいと思うが、十分な検討をお願いしたい。
 それから、中高一貫の問題が非常に議論になったところで、周りの中学校に与える影響も議会の中でいろいろと議論されてきた。その中でも注目したのは、中高一貫を導入するとき、私学には中高一貫があり、お金のある子どもは私学に行けるが、そうではない子どもは行けない、だから公立にも中高一貫が要るという議論もあったと思う。しかし、この報告書の中では、実はそうではなく、経済格差が学力格差となっていく中で、県立の中高一貫校に行っているのは経済的に恵まれた生徒となっているという傾向が指摘されている。
 今後、中高一貫で指摘された問題については、教育委員会としてどういう手順で対応していくつもりか。

《答弁》 教育長
 中高一貫については、平成6年に宮崎県で初めて五ヶ瀬で開校したが、あのときの校長は私の友達である。私も、私学へ行って中高一貫を体験もしているが、経済的な格差もあり、中学校の教育が非常に難しい。下手をすれば余り効果が上がらないケースもあるし、やり方によってはうまくいくケースもある。中高一貫は、経済的な問題は別にして、本当に効果があるかどうかというのは、施策の上でも学校指導の上でも、相当慎重に考えていかなければならないと思っている。
 定数の問題についても、全国的に見てばらばらである。そういう実態から、私自身が私学にいて、中高一貫のあり方について、カリキュラムを全面的に見直しも行ったが、なかなか効果が見えにくかったものの、最近やっと定着してきた。
 いずれにしても、私自身、中高一貫に関して思うのは、今回の報告書の評価にもなるが、生徒数が減少する中で、地域の実態、公立中学校の実態もきちんと踏まえ、幅広い意見を聞かないといけない。県立中学校で作ったということは、教育委員会が公の権力でもって自由と選択の権利を与えたということである。今度は、それを公の権力で奪うということになるので、当然、地域住民の方々の意見なり意思を踏まえていかなければならない。
 私自身、全国の状況や結果・効果、地域の声をしっかり受け止めるところからスタートして、私が「誇れる学校」とよく言っているように、小・中・高含めて地域が本当に誇れる学校をつくるためにはどうすればよいのかということをしっかり考えていかなければならない。
 明治5年に小学校の学制が公布されたことはご存じであるが、その3年前の明治2年に京都が学区制を敷いて小学校を64校作っている。地域が学校を支えるという土壌が京都にはある。私は、それを和歌山でも根づかせたい。それぞれの地域を大事にするような学校でなければ、本当の意味での教育にならないのではないかと思っている。
 そういう意味で、具体的にはまだ申し上げられないが、まず地域の声をしっかり受け止め、その中で地域の実情をしっかりとらえる。また、それが小学校とどうリンクするのか、小学校が活性化しているのかということも含めて、改めて県立中学校に関して考えていきたい。

《質問》 雑賀光夫 委員
 一人ひとりの子どもにとっては学校が選択できてよいが、それが教育全体にとってゆがみをもたらすということになってきたときに、それを元に戻すことは大変である。
 教育を支える地域をどうするのかという問題について、前の教育長は「コミュニティ」という言葉をよく使っていたが、この報告書を読んでみると、改めて、地域づくりの問題、地域と学校という問題、教育観の問題も含めて、非常に示唆に富んだ報告書であると思う。この報告書をどのくらい配布して、どういうように使われているかわからない。もちろん、インターネットでも誰でも見られると思うが、この中身についてもっと議論する場を設けてはどうかと思うが、教育長、どうか。

《答弁》 教育長
 今の御指摘に私も同感である。
 報告書の29ページに「『地域の子どもは地域で育てる』という竃金(かまどきん)の精神」というのがある。発想は大変すばらしく、京都では、子どもを真ん中に据えて地域と学校を育てていくということが基本的な流れである。「堀川の奇跡」というのも、そういう教育の風土がそうさせたのでなないかと思う。京都からこの国の教育を変えるという気概を持っている。
 私が今回いろいろなところで申しているのは、和歌山にもすばらしいDNAがあるので、それを教育の面で火をつければよい。まず、ふるさと、地域で安心して子どもたちを育てていくためには、県立中学校がどうあるべきか、地域の学校をどうしていくのかという観点から学校づくりをしていきたい。そのためには、「国を興すのは教育である。それは和歌山からだ」という気概を持って進めたい。
 そして、本当に今のままでいいのかということについて、募集定員を含めて、まず地域の声を聞いて施策に反映させれば和歌山の教育は変わっていくと思っている。

《要望》 雑賀光夫 委員
 竃金(かまどきん)なども、私どもも一緒に勉強していきたいので、よろしくお願いしたい。
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◇ 議案に対する採決
議案第82号 和歌山県民交流プラザ和歌山ビッグ愛・ビッグホエール設置及び管理条例の一部を
       改正する条例

は、賛成多数で原案可決
議案第74号 平成23年度和歌山県一般会計補正予算
議案第80号 教育職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
議案第81号 市町村立学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
議案第83号 和歌山県立中学校及び高等学校設置条例の一部を改正する条例
は、全会一致で原案可決
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