2011年6月県議会 高田由一 一般質問 概要記録
2011年6月21日
1.東日本大震災への支援と防災対策
(1)被災地支援について
・県からの支援の実績
・今後の計画
(2)防災情報の周知について
・エリアメールの効果
・防災無線の戸別受信機の要望
(3)防災計画の見直しにあたって
(4)津波からの緊急避難場所の確保
・避難路の整備
・避難誘導灯の新設
・ブロック塀対策
・高速道路への避難路
(5)県立白浜なぎさホームの移転について
・移転の経過
・このままの移転でよいのか
2.原発計画と自然エネルギーの推進
(1)関電の原発立地計画の断念を
(2)自然エネルギーの推進について
(3)電力移出県等交付金について
3.「緑の雇用」の今後について
(1)「緑の雇用」の実績と成果
(2)国の補助金について
(3)現場作業員への技術研修
(4)県の情報収集と指導および反省
4.県道の道路改良と事業推進
(1)田辺白浜線の拡幅
(2)すさみ古座線の拡幅
(3)日置川大塔線の拡幅
(4)白浜温泉線(フラワーライン)の事業推進と津波対策
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1.東日本大震災への支援と防災対策
《質問》 高田由一 県議
議長のお許しをえましたので、通告にしたがい一般質問をいたします。
東日本大震災は未曽有の災害となりました。亡くなられた方へのご冥福をお祈りするとともに、被災されたみなさまに心からのお見舞いを申し上げます。私たち共産党の県議団は10名からなる救援隊を組織して、5月22日から26日まで2泊5日という強行日程で岩手県陸前高田市と大船渡市に救援ボランティアにいってまいりました。この間、私たちの呼びかけに応えて、募金や物資の提供にご協力いただきましたみなさまにこの場をお借りしまして厚く御礼申し上げます。私たちは2トンのトラックに和歌山の夏ミカンや梅干しその他の物資を満載にして走りっぱなしで約20時間かけて到着。何とか難をのがれた現地の共産党事務所に雑魚寝をしながら泥かきや物資の仕分け、写真の洗浄などのお手伝いをしました。同時に独自の取り組みとして無料の青空市を開催し物資を配布いたしました。現地は生鮮食料が不足をしていますから和歌山の夏ミカンはたいそう喜ばれました。こうした救援活動はとても1回で終わるようなものではありません。今後、長期にわたってきめ細やかな生活再建へむけてのお手伝いが必要だと感じました。とくに被災されたみなさんは生活再建へむけて必死でありホッできる場所と時間がありません。だからこそ、東北ががんばるのではなく、被災していない私たちががんばらなあかんと感じた次第です。このような経験から今回は質問させていただきます。
(1)被災地支援について
・県からの支援の実績
・今後の計画
まず最初に被災地支援についてうかがいます。関西広域連合の分担で現在、和歌山県は岩手県への支援を担当しています。担当課にうかがいますと初期に避難所へ救援に入った県職員に対し、別れ際に避難所のみなさんが送別会をしてくれた例もあるなど、すばやい和歌山県の取り組みに対して高い評価をいただいているとの話もうかがっております。そこでこれまでの和歌山県の被災地支援の取り組み経過と実績を知事の方からお聞かせ願いたいと思います。
また、今後も継続的な支援が必要となっていますが、支援する側とされる側の人間的なつながりを作っていくためにも地域密着型の支援がますます必要になってくると考えていますが、県だけでなく市町村間の相互支援、ペアリング支援ということも言われています。こうした点について今後の取り組み方向について知事にうかがいます。
《答弁》 知事
発災直後から、大阪府とともにいち早く職員を派遣し、岩手県現地事務所を開設いたしました。
現地事務所は、災害復旧支援、避難所支援、災害ボランティア、仮設住宅等の布団の提供等の支援活動の拠点でありまして、この活動をもとに現在まで全体で延べ約1,200人を超える県職員派遣を行っております。
現地事務所は、岩手県庁や関係機関とダイレクトに接触することで、顔の見える、きめ細かな支援が行える体制を取っておりまして、当面2名体制で継続していきます。
また、市町村間の相互応援は、迅速な対応が期待できるため、意義のあることと考えておりまして、さらに促進するよう助言してまいりたいと考えております。
(2)防災情報の周知について
・エリアメールの効果
・防災無線の戸別受信機の要望
《質問》 高田由一 県議
ここからは和歌山県内の防災対策について順次、危機管理監に答弁をお願いしたいと思います。最初に防災情報の周知についてうかがいます。
このたび県では携帯電話会社と提携して、エリアメールという災害情報の発信に取り組むことになりました。このエリアメール、一般の県民はもちろん、町役場へいきましてもどういうものか知っている方はたいへん少ない。ぜひ、この議場でその効果をお示し願いたいと思います。また、停電時の対策はどうなのか、障害をもった方への対応もできるのか、などあわせて答弁をお願いします。
さらに、西牟婁郡では防災無線の放送が聞こえにくいという苦情が多く寄せられます。各家庭に戸別の受信機を設置してほしいという要望も高いわけですが、今後どのように対処されていこうとしているのか答弁をお願いします。
《答弁》 危機管理監
エリアメールは、通常のメールとは違い、県から情報発信すれば瞬時に送信エリアの携帯電話が受信する仕組みとなっております。
特徴は、事前に携帯電話のアドレスを登録する必要がなく、受信したメールは保存されるため、後に確認することができます。
バイブレーションや音声読み上げなどの機能も使用できるため、障がい者の方々にも認知いただけるところでございます。
また、観光客などにも配信されることから、大津波、津波警報や注意報など緊急情報が周知できると期待しているところであります。
停電時には、直ちに通信が途切れることなく一定期間通じると聞いており、今年度の対策として無停電化、バッテリーの24時間化の対策を講じると聞いております。
防災行政無線につきましては市町村が設置、運用を行っており、屋外スピーカーの設置や戸別受信機等の配備については、効果的に情報が伝わるよう市町村が計画しております。戸別受信機や防災ラジオについては、県内市町村で約4万4千台配置されており、主に屋外スピーカーの聞こえない地域の世帯や社会福祉施設、防災拠点、避難施設等に設置されております。
今後とも、災害情報が迅速かつ確実に伝えられるよう、様々な情報手段、伝達手段を研究し、積極的に進めてまいります。
《要望》 高田由一 県議
エリアメールの詳しい説明では、24時間電源が切れてもバッテリーで対応できるとうかがい安心したのと同時に、障がいを持ったかたにもきちんと情報が伝わる可能性があるということで、たいへん有益な手段だということが分かりました。
やはり地域では戸別の防災無線設置の要望が強いわけですが、エリアメールの普及にも取り組みながら勘案していただき、県のほうでしっかりと情報伝達の推進をしていただきたいと思います。
(3)防災計画の見直しにあたって
《質問》 高田由一 県議
つぎに防災計画の見直しについてうかがいます。このことについては今回の東日本の地震をうけて東海・東南海・南海地震の連動型地震についての被害想定も国の方で見直しがされております。この点で私が心配しているのはこれまではあまりにもコンピューターによる津波予想が優先されていて、過去の文献調査や津波被害の痕跡調査が費用の面もあり、十分なされていなかったことです。今回の東北での地震についても一部の専門家は、過去の文献から貞観地震という西暦800年代の地震・津波被害を警告しておりました。こうしたこともふまえ今度の見直しにはぜひ過去の文献調査や津波の痕跡調査もふまえたものにしていただきたいとおもうのですがいかがでしょうか。答弁をお願いします。
《答弁》 危機管理監
過去の文献調査や過去の津波の痕跡調査は、重要であるということは認識しております。
今後、中央防災会議において東海・東南海・南海地震等にかかる専門調査会が設置され、研究者による調査について、その中で検証されると聞いておりますので、専門調査会での検討について注視してまいります。
(4)津波からの緊急避難場所の確保
・避難路の整備
・避難誘導灯の新設
・ブロック塀対策
《質問》 高田由一 県議
つぎに津波からの緊急避難場所の確保についてうかがいます。
今後起こるであろう南海の巨大地震はいつくるかわかりません。ですから今大切なことは、津波から緊急避難できる場所を一刻も早く確保することです。その点で、海岸近くの家で裏山があるにもかかわらず避難できる道がないと嘆いているお年寄りのお話も聞きました。今後、避難路の整備についてどのようにすすめられていくのか答弁をお願いします。
また、夜間、停電時の避難誘導についてもかねてから心配の声があがっています。いま道路を照らす照明は国道は国、県道は県の設置となっていますが、日常もっともよく使う市町村道には道路照明はありません。あとは町内会や自治会が設置する防犯等のみです。いずれにしてもこうした道路照明や防犯等は停電時には役にたちません。避難のときに威力を発揮する避難誘導灯の設置をすすめていくお考えはないでしょうか。答弁をお願いします。
さらに避難のときに妨げになるブロック塀の対策は現在どうなっているのか。現状と今後の取り組みについて答弁を求めるものです。
《答弁》 危機管理監
現在、避難所等の緊急点検を行っており、新たな緊急避難先の確保のためには避難路・避難誘導灯の整備が必要であると考えます。
また、ブロック塀の安全対策につきましては、平成22年度から実施している県民減災運動推進事業のなかで、木造住宅耐震化・家具の固定とともに、減災効果が高い対策として位置付けて推進をしております。
県では、これら対策に係る市町村事業への支援を行っているところでございます。
・高速道路への避難路
《質問》 高田由一 県議
また、いま田辺以南では高速道路が建設中であります。例えば白浜町の富田地域では津波に対して、また、明治の水害のような大水害に対しても高速道路が避難場所のひとつになると考えられます。高速道路にも駆けあがれるような避難路を整備するべきだと思いますがいかがでしょうか。この項目のみ県土整備部長の答弁をお願いします。
《答弁》 県土整備部長
高速道路への避難路についてでございますが、議員御指摘のように、先の東日本大震災では、高速道路が救援・復旧ルートとして効果を発揮したことに加え、津波襲来時に住民が高速道路の法面を駆け上がり一時避難したことにより、多くの人命が救われたと報告されております。
こうしたことを踏まえ、近畿自動車道紀勢線の事業中区間等においても、高速道路への避難路の設置や、避難場所としての活用などについて、国や関係機関に働きかけてまいります。
(5)県立白浜なぎさホームの移転について
・移転の経過
・このままの移転でよいのか
《質問》 高田由一 県議
この防災対策の最後に県立白浜なぎさホームの移転についてうかがいます。
この白浜なぎさホームは県立の母子寮で現在、白浜町湯崎にあります。このホームが今度、白浜町の寒さ浦という元の白浜警察があった場所に移転されようとしています。ところがこの移転場所というのは、この津波浸水予想図にもあるように入り組んだ深い湾になっていて現在の想定でも5メートル近い浸水が予想される場所です。住民からは警察も高台に移転したのになんで小さい子どもたちもたくさんいる母子寮をここにもってくるんだろうと、素朴な疑問の声、心配の声があがっております。いま移転工事はこれから基礎の部分にとりかかろうかという段階ですが、やはり3月の津波を目の当たりにした今、もう一度、考え直す必要があるのではないでしょうか。そこでうかがいます。現在の移転場所に決定した理由と経過を答弁願います。また、新しい施設をつくったは、被害想定見直しでもっと高い津波がくるかもしれないとなったら本当に何をやっているのかわかりません。現在、予算執行中ですが、まだ間に合います。どうか考え直していただけないでしょうか。福祉保健部長の答弁をお願いします。
《答弁》 福祉保健部長
県立白浜なぎさホームの移転先の選定につきましては、白浜町にご協力をいただき進めてまいりました。
白浜町から提示された複数の候補地の中から、断層の影響が懸念される土地などを除き、検討した結果、現在の建設地に決定をいたしました。
移転先が、津波ハザードマップにおいて3乃至5mの津波浸水が予想されている土地であることから、当初から鉄筋コンクリート造3階建としておりましたが、さらに、今般の東日本大震災の被害状況に鑑み、想定の2倍の高さの津波浸水にも耐えうる避難場所を屋上に設置するなど、逃げ遅れた地域住民の方々や観光客も避難できるよう、津波避難ビルとしての役割を果たすことができる設計としております。
津波浸水の予想される地域に本施設のような津波避難ビルを整備することは、地域住民等の避難場所の選択肢を増やし、大きな減災効果があるものと考えております。
こうしたことから、本施設の建設につきましては、地域の方々からも強く切望されているところでありまして、予定通り事業を進めてまいりたいと考えてございます。
《再質問》 高田由一 県議
部長の答弁では、町に協力を依頼して提示された候補地の中から断層のないところを選んだということですが、断層がなくても津波が心配なんです。なぜこの移転先を選んだのかという積極的な理由が見えないということを申し上げます。
ご承知かと思いますが、移転先の地名は先ほども申し上げましたとおり、白浜町「寒さ浦」です。「浦」という字は陸地に付く地名ではなく、海だったところです。地元の人は、なぎさホームが移転されようとしているまさにその場所で昔はよく磯ものを拾ったと言われます。埋め立てて造った土地です。
先だって現場も見てきました。水が出て大変な工事になっていると聞いています。地盤改良し今の技術を使えばそういう場所へも十分建てられるとは思いますが、それにしてもやはり、わざわざなぜそこへ建てるのかというのが近所のみなさん、また町民のみなさんの率直な感情なんです。
なぜそこに移転したのか、そこがいいと思ったから移転したのではないのですか。その点をしっかり答弁をもう一度いただきたいと思います。
《再答弁》 福祉保健部長
移転につきましては、以前から白浜町と十分協議を進めてまいりまして、最終4箇所に候補地をしぼりました。
その4箇所の中で、先ほども答弁させていただきましたが、一部断層の影響が懸念される土地というのがございましたので、ここは排除いたしました。
それからあと、道路から容易に施設内を見通すことができるという、母子の寮でプライバシーが損なわれるというようなこともございましたので、そこも排除いたしました。
最終、現在のところがベストということで決定をし、なおかつ先ほども答弁をいたしましたが、被災がございましたので、再度変更設計をいたしまして、そういう津波に対応する施設としたところでございます。
《要望》 高田由一 県議
地元の理解を得るためにも避難タワーをつくるというのは本当にいいことだと思います。けれども※地図にもありますように、寒さ浦という地域は谷あいになったところに海が入りくんできていて、谷あいの両側は地元の方々の宅地になっています。先日総合防災課に聞きましたら、津波からはより高い所へ逃げるというのが今の流れだそうです。ですから、わざわざそこの津波避難ビルへ逃げなくてもいいのではないかと。ただ、逃げ遅れた方のためにそういう所があるということでは、それは大事だと思います。しかし繰り返しになりますが、わざわざなぜかということなんです。
被害想定見直しで、地図の赤い所が紫色になったりそれ以上になったりするのを私は大変恐れておりますし、先ほどの地盤の問題もございます。こういう予算がついた時点ではございますが、ぜひともご賢察をいただいて再度の見直しを要望いたします。
2.原発計画と自然エネルギーの推進
《質問》 高田由一 県議
つぎに原発計画と自然エネルギーの推進についてうかがいます。
今回の福島第一原発での事故は、日本と世界に大きな衝撃をあたえるとともに、原発に依存したエネルギー政策をこのままつづけていいのかという問題を投げかけています。ご承知のようにドイツでは2022年までに現在17基ある原発を全廃することを政府の方針としてきめました。イタリアでも国民投票で原発推進をしないことが決まりました。我が国でも原発依存から抜け出そうという議論をすすめていくときです。
原発で事故があった場合は、ほかの事故にはみられない異質の危険があることがこんどの福島での事故で明らかになりました。社会的には地域社会そのもの、日本経済全体を破壊しています。空間的には大気、土壌、水すべて汚染しつくします。時間的には何万年という将来にわたって人間の命と健康を脅かしつづけるのです。すでに原発ででた使用済み核燃料は1万トンを大きく超えています。それらに含まれる死の灰などをこれから人間のすむ環境から放射能が消えるまで何万年というきわめて長期間にわたって隔離しつづけなければならないのです。何万年とはどういう時間単位でしょうか。1万年前で日本の縄文時代です。縄文人の文化や言語が現在まで伝わっていないように、現在のわれわれの生活や言語が1万年たって伝わっているとは到底、思えないわけです。そのことを考えただけでもこれ以上、この原発にたよることはやめにしないと子孫に対する犯罪になると思います。
もちろん私たち日本共産党もいますぐ原発を全廃すれば電力需要の問題があるのでそれは非現実的だというのはわかっています。それゆえ先日発表した政策では、5〜10年以内に原発をゼロにするプログラムを制定することを求めているのであります。
ではどのような方法でそれを達成するのかといえば、地球温暖化の問題もあり安易に火力や石炭による発電に置き換えるというやり方をとるべきでないのはあきらかです。私は自然エネルギーの推進と低エネルギー社会への転換が大切だと考えています。これは何も無謀な計画ではありません。現在、日本の総発電量にしめる原発の割合は25パーセントといわれています。たとえば今後5〜10年のあいだに電力消費量を1割削減、そして現在の自然エネルギーによる電力を2.5倍程度に引き上げることができるなら原発による発電量をカバーすることができるのです。
現在、原発をのぞいた総発電量は、あのバブルのときの1990年の原発もふくめた総発電量と同じといわれています。つまり今かりに原発がなくても1990年、今から20年前の電力使用状況なら今でも十分、対応できるわけです。夏場の電力消費のピーク時への対応は知事もすすめられているように必要ですが、原発からの撤退は無理な課題ではないと思います。
以上のような基本的な見解を述べたうえで質問いたします。
(1)関電の原発立地計画の断念を
まず関西電力が和歌山県内に計画している日高、日置川の原発計画であります。この二つの計画についてはすでに国の原発推進計画である重要電源開発地点からはずされており、私たちも安心していたのです。ところが3月11日の東日本の震災と原発事故がおこってから関西電力の社長が記者会見した新聞記事のなかに「和歌山県日高町、白浜町を立地候補地と位置付けている」という記事がでて私たちもびっくりしました。そういうこともあって先日、原発についての申し入れで関西電力本社を訪れました。私が、「日高と日置川の原発はまだ計画しているんですか」ときいたとき、原子燃料サイクル部長さんは「紀伊半島にもやりたいことはやりたいが、地元の意向もあるのでいまはどうのこうの言える状況じゃない」と答えられていました。やはりまだあきらめてなかったのです。
和歌山県での原発計画は私、調べましたが1967年、昭和42年にさかのぼります。日高町への建設計画にはじまったわけですが、当時の知事は大橋正雄さんでした。その大橋知事さんは県議会での質問にたいして「火力よりも公害がすくない」、「原子力そのものに公害はない」、「積極的にとりくむ」、「地元の納得をえられるなかで誘致の方向にすすんでいきたい」などの答弁をして原発建設に積極的な態度でおられたようです。その後、住民の反対運動が大きく盛り上がるなか、1971年に大橋さんが県議会答弁で述べられたのが、いわゆる3原則です。つまり原発の問題について県は、「適地性、安全性、地元同意の3原則を前提に地域振興の立場でとりくむ」という聞いたことのある議員さんも多いと思いますが、有名な答弁になったわけです。以来、県議会で原発問題を質問されると歴代知事は、仮谷さん、西口さん含め、この答弁を繰り返し答弁するだけでした。何回、再質問しても同じ答弁。最後にこの答弁を原発問題でされたのが1999年、平成11年9月議会での西口知事さんの答弁でした。質問者は私、高田でありました。よくまあ30年間も同じ答弁をくりかえしたなあと変な感心をしたものでした。
また、議会での論戦とは別に県の長期計画にも原発は位置付けられてきました。たとえば、仮谷知事の時代の第4次長期計画「新世紀の国21」では原発の推進を明確に書いています。この第4次長期計画の139ページにこう書いてあります。
「県としては適地性、安全性、地元の同意という3原則を堅持し、立地地域を総合的に整備し、住民の福祉と地域振興の立場から、原子力発電所等の電源立地を促進する」。
もちろんその後の長期計画については、住民運動もあり原発推進はかかれていませんが、当面、実現の見通しがないから書かれなかったのです。もちろん「今後は原発に頼らない」とか、「原発を推進しようとしたのはまちがいだった」などの反省の言葉は何ひとつかかれていません。
こういう状況を振り返るなら、結局、いま和歌山県に原発を立地させていないのは誰の功績でもない、住民運動の力でがんばってきたからに他ならない訳です。実際、3原則のうち唯一の防波堤は3つめの住民同意だけでした。これが崩れていれば和歌山はまさに原発銀座になっていたのです。
そこで知事にうかがいます。この際、従来の答弁をこえて、和歌山県には原発はつくらせない、関西電力は計画を断念せよとこの場で表明していただけないでしょうか。1971年、当時の大橋知事が答弁して以来、40年間がんこに続いてきた従来の立場を見直す答弁をぜひお願いします。
《答弁》 知事
就任依頼、今まで関西電力から、県に対して、あるいは私に対して、原子力発電所の建設の申し入れを受けたことはありません。
ただ、東京電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえれば、現状では原発の立地は難しいかと思います。
《再質問》 高田由一 県議
知事が従来の三原則という答弁を繰り返さなかったのでほっといたしました。
ですが、「現状では原発の計画は大変難しいと思う」ということですけれども、現状では大変難しいというのは、福島の事故もあり客観的な状況がこうだから難しいのか、それとも知事ご自身の判断として「もう原発はやめよう」という判断にもとづいて難しいと言われているのか、そのあたりをもう一度ご答弁いただきたいと思います。
きのう、大阪市の平松市長さんが関電に行かれまして、大阪にはもちろん原発計画はありませんが、「脱原発にしていこう」という提案をされたとうかがっています。この点で、もう少し踏み込んだ対応ということで答弁していただきたいと思います。
《再答弁》 知事
まず第一に、案件はありませんということと、それから、現状ではそういうものを造ろうとしてもなかなか難しいんじゃないかというふうな状況をご説明したまででございます。
《要望》 高田由一 県議
原発の問題について知事にもう一度聞いて、同じことを言われても仕方ないのでもう聞きませんが、やはり知事としてこういう方向でやろうという積極的なアクション、提言をされていくべき時ではないかと思います。今回はそのことをぜひ要望しておきます。
(2)自然エネルギーの推進について
《質問》 高田由一 県議
つぎに自然エネルギーの推進についてうかがいます。
このことについては知事も積極的に発言していただいていることはたいへん、ありがたいと思っております。なかでも日照量の多い和歌山県の特性をいかした住宅用太陽光発電についてはその普及をはかるため、自然エネルギー発電の全量買取制度の単価のアップ、ならびに家庭における初期負担が不要となるような制度をつくるよう国に要望していただいていることは非常に重要だと私も考えています。
こうした自然エネルギーの導入促進について知事の考えをおしめしください。
《答弁》 知事
メガソーラーの誘致活動や木質バイオマス利用の普及活動などに努めているところであり、現在、国に対しましても、東日本大震災の被災状況を踏まえ、再生可能エネルギーの導入を更に加速化するため、一定期間における全量買取単価の上積みを要望しております。
(3)電力移出県等交付金について
《質問》 高田由一 県議
この項目の最後に電力移出県等交付金のことについてうかがいます。
私はかねてからこの問題をとりあげてきましたが、この交付金は和歌山県が火力発電所を中心に県民の需要を大きく上回る電力を他府県に移出しているので、そのご褒美といってはなんですが、国から年間3億円程度交付されているものです。残念ながら今年は交付の基準に該当しなかったようでありますが、普段はもらっている貴重な財源であります。地方交付税がどうなろうがきちんと満額交付されるもので、これまでは企業誘致などに使われてきました。私はこの機会にその使い方を見直すことを求めます。県内の発電はそれなりに大きな環境への負担がかかっています。ですからその発電によって得られた交付金は自然エネルギーの推進にこそ使うべきだとおもうのですが、関係部長の答弁を求めます。
《答弁》 商工観光労働部長
電力移出県等交付金は、公共用の施設整備、住民の利便性向上及び産業振興に寄与する事業を促進することで地域住民の福祉の向上を図り、これにより発電用施設の設置及び運転の円滑化に資することを目的としております。これまで本県では、産業振興のための企業誘致活動事業や、県内の中小企業等を支援するために県工業技術センターの機器整備などに活用してまいりました。
今後の交付金の使用につきましては、引き続き産業振興など交付目的に資するよう自然エネルギーの普及への使用も含めて検討してまいります。
《要望》 高田由一 県議
電力移出県等交付金についての答弁に「自然エネルギーへの活用」ということも文言に入れていただきました。自然エネルギーの普及はそのこと自体と同時に、県内に雇用を創出することにもつながっていくと私は考えております。まさのその点で電力移出県等交付金は目的に合致すると思いますので、ぜひとも力を入れて推進していただきたいと思います。
3.「緑の雇用」の今後について
(1)「緑の雇用」の実績と成果
《質問》 高田由一 県議
つぎに緑の雇用事業についてうかがいます。この緑の雇用事業は前知事が提唱し、その後国の事業として継承されています。
まず、この事業のこれまでの実績をお示し願います。これまで県外から何人の方がきて、そのうち何人の方が定着しているのか。また、これまで国、県あわせてどれだけの補助金が支出されたのか。そして数字だけではなくどのような事業効果があったのか農林水産部長に答弁を求めます。
《答弁》 農林水産部長
線の雇用事業により、これまで県外から本県に約460名の方々が就業され、この内、引き続き県内で就業されている方々は、その52%、約240名となっております。
(2)国の補助金について
(3)現場作業員への技術研修
《質問》 高田由一 県議
その事業で本宮町森林組合に雇われていた9名の比較的若い労働者たちが解雇されるという事態がおこりました。作業員の半数という大量解雇であります。組合は本人了解のうえでの退職といっていますが、本人たちが記者会見までして納得していないといっているのですからわたしはあえて解雇という言葉を使いたいと思います。県の推進してきた事業にのって補助金ももらったうえで10年ちかく働いてきた人を一度に大量解雇しようというのですからよほどの理由があるのではないかと思いました。
ところが先日の地方新聞をみると、その主な理由は、間伐事業にかかる国の補助金の削減だといいます。また、解雇された方々にお話しをうかがうと東日本大震災の影響で国の補助金が大きく削減されるから経営がたいへんになると説明されたと一様に証言されています。
そこで農林水産部長にうかがいます。そのような国の補助金の大幅な削減も推測されると組合側は言っているようですが、そのような事実はあるのかどうか、お答え願います。
さらに言うなら、その補助金カットの原因は作業員の技術、つまり今求められている搬出間伐の技術がない人が多いからだといわれているそうですが、緑の雇用の方々はほんとうに技術の低い人たちだったのでしょうか。中には県の森林組合連合会から技術的に表彰された方もいるとうかがいました。これまでも県は林業労働力確保支援センターなどで高性能林業機械の操作や林道の開設などについてしっかり研修してきたのではありませんか。この点についても答弁をお願いします。
《答弁》 農林水産部長
平成15年度から平成22年度までの8年間に、地元での雇用者も含め、本県では、緑の雇用事業に約23億円の補助金を活用し、林業担い手の確保とその技術向上を図ってきたところです。
本年度の国の間伐事業に関しましては、搬出間伐を中心とするものに事業内容が見直されたものの、補助金総額は、ほぼ前年度と同額を確保できる見通しとなっております。
県といたしましては、低コスト林業を推進する中で、こうした事業を有効に括用して搬出間伐を進めており、搬出間伐の促進に向けた作業道整備や林業機械操作の技術研修などについても、積極的に実施してきたところです。
(4)県の情報収集と指導および反省
《質問》 高田由一 県議
そして部長、私がもっとも言いたいのは、このような大量解雇にいたる間に、県行政に対して組合から相談を受けていなかったのか、県として情報収集はどうなっていたのかということであります。いったい県がこのような動きを知ったのはいつだったのか、それに対して今日までどのような指導をしてきたのか、反省点は何だったのか。答弁をお願いします。
《答弁》 農林水産部長
森林組合に対しては、これまでも情報の収集・指導を行ってまいりましたが、今回の本宮町の案件については、第1報を知った4月中旬以降、双方からの聞き取りや、双方交えての話し合いの場に出席するなどし、事実関係の把握に努めているところです。
結果的に、事前の対応に至らなかったことから、今後は森林組合との一層の連携強化を図り、組合指導の充実に努めてまいります。
《要望》 高田由一 県議
農林水産部長から、国からの補助金の削減はないというはっきりした答弁がございました。であるなら私はどう見ても、解雇されたみなさんに道理があると思いました。
この問題は確かに労使間の問題でもあり、解決のためには当事者間の話し合いが今後大切になってきます。ですが県政としては、補助事業に23億円を投入してきたなかでせっかく定着してきた方々を、このまま放り出していいのかということが問われると思います。なかにはすでに和歌山を離れた方も数名いらっしゃるとうかがいました。
一方で、先日聞き取りをさせてもらいましたら解雇された方でも、「私たちは仕事がかわったとしてもこの本宮の地元の集落に残って、ここで仕事と子育てを続けたい」と言われるご家族も複数いらっしゃいます。こういうことがあっても、まさに和歌山県民以上ともいうぐらい和歌山県や本宮町を愛してくれているその言葉に、私はたいへんありがたい話だと思いました。本当にいい方たちに来ていただいたと思います。
知事が先だって記者会見でお話されていましたが、県政の先頭に立って救済のほうにも全力を注いでいただくことを強く要望をしておきます。
4.県道の道路改良と事業推進
(1)田辺白浜線の拡幅
(2)すさみ古座線の拡幅
(3)日置川大塔線の拡幅
《質問》 高田由一 県議
最後に県道の道路改良と事業推進についてうかがいます。
1番目の県道田辺白浜線については、白浜町堅田地内堅田上の交差点から郵便橋方面にかけて、とくにJR紀勢線踏切の前後が狭く、朝夕の交通量の多いときには自転車で通学する高校生も重なり大変、危険な状況です。ぜひ拡幅を早急にお願いします。
2番目のすさみ古座線についてはすさみから小河内間、とくに雫の滝付近がせまく行き違いが困難です。地域からの要望も強くぜひ、実現をお願いします。
3番目の日置川大塔線とくに玉伝口から市鹿野間の拡幅については従来から地元要望もだされ県当局も御苦労いただいていると聞いております。
以上の3点の箇所については長年の要望事項です。ある地域では、車一台かわせる待避所をつくってくれるだけでいいのに、いったい県は何をしやるんな、もう田舎には人は住むなということか、と厳しいご意見をうかがうこともしばしばです。私も同感です。別に予算の大きくかかる立派な道をつくれといっているのではない、毎日の生活の支障になっている部分だけでもというささやかな住民の願いにどうやってこたえるのかは知恵と工夫をつくして取り組んでいただきたいのです。過疎地にくらす住民の声にどうこたえるのか。県土整備部長の決意のこもった答弁をお願いいたします。
《答弁》 県土整備部長
@県道田辺白浜線ですが、白浜町堅田上〜郵便橋間において、議員ご指摘のように、JR踏切の前後、上富田町と白浜町に跨る約200mの区間で、特に狭隘という程ではありませんが、2車線が確保できていない区間が残っております。当該区間につきましては、要望もございますことから、白浜町の地籍調査の見通しなども勘案し、今後、地元町とも相談してまいります。
A県道すさみ古座線ですが、すさみ町周参見から小河内地内の未改良区間約5km間において、平成16年度から現道対策を実施しております。現在、その内、特に交通の支障となっていた約1.3kmが完成しており、残る区間の事業推進に引き続き努めてまいります。
B県道日置川大塔線ですが、白浜町玉伝口から市鹿野間において、平成21年度まで現道対策を実施しておりました。今後も、地元協力が整えば、住民の意見をお聞きしながら、狭隘な箇所の現道対策を検討してまいります。
《要望》 高田由一 県議
県土整備部長、一点目の県道田辺白浜線は一部2車線になってない区間があって“とくに狭隘でない”と言われましたが、“とくに狭隘”なんです。一度あそこの出っ張った所を見ていただきたいと思います。本当に危ないんです。ですからこれだけ地元から要望があがっているわけで、そのご認識は変えられたほうがいいと思います。
(4)白浜温泉線(フラワーライン)の事業推進と津波対策
《質問》 高田由一 県議
白浜温泉線の新しい区間いわゆるフラワーライン線については高速道路のアクセス道路でもあり早急な事業進捗を求めるとともに、津波避難の際にも役立つような構造にしていただくよう求めるものであります。答弁をお願いします。
《答弁》 県土整備部長
県道白浜温泉線の事業推進についてでございますが、国道42号と白浜空港を結ぶ約4.4kmの事業区間の内、富田川から県道栄岩崎線までの高架区間において、工事を進めております。
今年度から富田川に架かる橋梁工事及び才野地区の測量・設計を行ってまいります。
なお、高架区間への津波等緊急時における避難についても、接続する県道などから自転車や徒歩で進入することが出来るようになっております。
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