2011年12月県議会 高田由一 一般質問 概要記録
2011年12月8日
1.安全・安心の学校給食のために
(1)給食の放射能の長期モニタリング実施を

2.紀の国森づくり税
(1)特定目的のための税について
(2)基金事業についての提言

3.地方税の徴収について
(1)徴収猶予制度の周知
  ・地方税法第15条の適用について
  ・県税事務所での掲示
  ・猶予申請書を窓口に
(2)和歌山地方税回収機構について
  ・機構設立の効果
  ・県からの支援について
  ・市町村からの移管について
(3)滞納処分のあり方
  ・滞納整理の流れ
  ・差押の順序

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《質問》高田由一 県議
 議長のお許しをいただきましたので、一般質問をさせていただきます。
 本日12月8日は、太平洋戦争の開戦記念日です。戦争犠牲者の方に
思いを馳せながら、また、ただ今の平和を本当に大切にする思いで一般
質問してまいりたいと思います。


1.安全・安心の学校給食のために
(1)給食の放射能の長期モニタリング実施を
 最初に、安全・安心の学校給食のため、放射能の長期モニタリング調査の実施についてうかがいます。
 昨日も粉ミルクからキログラムあたり最大30ベクレルもの放射性物質が検出されたとの報道がありました。福島原発事故による放射能汚染から、子どもと国民の健康を守る対策はますます重要性を増しています。私たち日本共産党でもその対策を求めた政策を8月に発表しましたが、国の責任で都道府県がおこなっている食品検査体制を抜本的に強化せよと求めています。
 そうしたなか文部科学省がこのたびの第3次補正予算で学校給食検査設備の補助事業をつくり、いまのところ東日本の17県に限定されていますが、給食用食材の放射線検査器購入を補助することになりました。
 食品に対する放射能汚染、なかでも子どもたちの食べるものへの心配の声が大きくなっているのは当然であります。現在、食品への暫定規制値の見直し作業が政府においても行われているようですが、そのなかで年齢別に規制値を設定することの狙いも、より影響を受けやすい子どもたちへの心配からであります。だだし、日本の食品の暫定規制値は、前議会で藤本議員が指摘されましたように国際基準とはかい離があります。私は、放射能の人体への影響については今後の知見が蓄積されていくなかで、さらなる見直しや改善がなされていくだろうと考えています。そうであるからこそ、基礎的な調査データの蓄積が大切になってくると思います。
 いまの基準では大丈夫でも将来はわからない。基準以下だからすべてオーケーではなしに、「現時点の知見では影響は考えられない」というのが正確ではないでしょうか。先日、県が主催した食の安全シンポジウムに行った方からも、「県や学者が安全、安全と言えば言うほど不安になる」との感想が何人かから寄せられました。安心や安全というのは行政が上から押し付けるものではないはずです。原発もあれだけ行政、電力会社も一体となって安全だといってきたことです。安心は住民の心からの理解のうえになりたつものです。そのためには実際に検査を行うこと、そして長期にデータを蓄積して放射能の変化を見ていくことが必要になると思います。
 そこで今回は学校給食にしぼって質問いたします。神奈川県の横須賀市や綾瀬市の取り組みでは、検食のために保存している調理済みの給食そのものを1週間ごとまとめて精密な測定をしています。そうすることで手間も費用もあまりかからないようです。幸いというか、先日の補正予算で購入した環境衛生研究センターの高性能測定器は、まだ検査に余裕があるようなので、教育委員会としても給食の放射能の長期モニタリング調査にむけて検討を始められてはいかがでしょうか。教育長の答弁をお願いします。


《答弁》教育長
 学校給食につきましては、本県では以前から地場産物の活用を推進しているところであり、食材は県内産をはじめ市場に流通している食品を購入しており、安全なものであると認識いたしております。
 議員ご指摘の横須賀市・綾瀬市の取組だけでなく、近隣県の状況などの情報を収集するとともに、現在県が実施しているモニタリング検査の結果等を踏まえながら、安全性に懸念があると判明した場合には、学校給食の食材としてその品目を除外するなど、市町村教育委員会と連携を図りながら、今後とも安全・安心な学校給食の実施に努めてまいります。


要望》高田由一 県議
 私は、原発事故で出された放射性物質とのたたかいは本当に長期戦になると思います。セシウム137は半減期が30年ですから、今後少なくとも100年以上は監視が必要です。
 私は、いずれ全国でこの監視体制が必要になると思います。データというのは長期にきちんと把握しておくのが大事ですから、和歌山が先頭を切ってやるぐらいの決意で今後検討されることを要望したいと思います。よろしくお願いします。


2.紀の国森づくり税
《質問》高田由一 県議
 つぎに紀の国森づくり税についてうかがいます。今議会に森づくり税を5年間延長する条例案が提案されていますが、庶民増税が重なるこの時期に住民税の均等割というほとんどの県民が納税せざるをえない税について超過課税を継続することがはたして妥当なのでしょうか。
 ご承知のように、開会中の国会で東日本大震災の復興財源を調達するための増税が決められました。これにともなって所得税や住民税など庶民増税を中心に11.2兆円の増税を行おうとしています。ところが野田政権はその一方で法人税減税はこの大震災のもとでも財界にいわれるまま予定通り実施し、総額12兆円もの減税になります。11兆円の庶民増税、12兆円の法人税減税、つまり差引で庶民増税はすべて法人税減税で消えてしまいます。復興のための財源という言い訳は通用しないと思います。
 また、国民への増税期間は25年にもおよぶものになります。しかも住民税の均等割に一律1,000円上乗せするというのは平成35年まで続くのです。
 本気で復興財源を求めるのなら、法人税減税の見直しと証券優遇税制の減税をもとに戻すだけで、15年間で25兆円を超える財源がうまれます。庶民増税なしに復興財源を確保することは可能だと考えます。
 このたびの森づくり税の延長提案はまさにこうした庶民増税と重なって提案されているのです。
 お配りした資料「個人県民税(均等割額)の今後の推移」をご覧になっていただきたいと思います。平成18年までは住民税均等割の負担は4,000円だったものが、平成26〜28年までは森づくり税と復興加算を両方乗せられまして5,500円、平成29年からは森づくり税をやめたとしても5,000円という金額になってくるわけで、いずれにしても平成35年までの上乗せが続くということになります。
 ここで紀の国森づくり税に対して県がおこなった県民アンケートについてみますと、平成22年、実施から3年目のアンケートですが、県民3,000人のうち約65%がアンケートを見て森づくり税について初めて知ったという結果となっています。
 こうした状況を考えるなら、私は紀の国森づくり税が県民に根付いたとは言えず、また低所得者ほどますます負担増となることから、この5年間延長には反対の立場を取らざるをえません。
 ただ、この森づくり税を財源にした基金事業ですが、そのなかには、子どもたちの森へのふれあいや、貴重な自然を保護するために自治体が森を買い取る公有林化など、すべての県民にとって有意義な事業もあったと思います。そうであるからこそ、私は県民全体が利益を得られるような事業については、森づくり税のような特定目的のための税ではなく、広く一般の税財源から事業を行っていくべきだと考えています。

(1)特定目的のための税について
 こうした見解を述べたうえで知事におたずねします。
 いくらすべて県民のために有意義な事業だからといって、何か課題があるたびに特定目的のための税をつくって、広くあまねく負担してもらうということになれば、まさに今回の復興増税のように、その増税が受け入れられなければその分野の県民福祉はがまんしてもらうしかないという事態になりかねません。私はそうした事業については一般の財源で負担することこそ公平な税行政であると考えるのですが、知事のご見解をお示しください。


《答弁》知事
 和歌山県は、県土の約8割が森林でありまして、その森林は我々県民に多くの恵みを与えてくれ、特に、水源のかん養、県土の保全、地球温暖化防止等に欠かせないものであります。
 これら公益的機能を有する森林から全ての県民が恩恵を受けているという認識に立って、県民の貴重、な財産として守り育て、次世代に引き継いでいくことは大切なことであり、県民総参加で行った全国植樹祭によっても、全ての県民がふるさとの森を大切にする気運を大いに持ってもらったと思います。
 「紀の国森づくり税」については、施行以来、県民の皆様方に自ら税の負担をいただきまして、使う方は4年間で228事業、5万人もの多くの県民に自ら事業へ参画していただいたところであります。
 こうした県民の納税と事業参画により、この税の基本理念が浸透し、森林を守り育てる貴重な財源であると県民に理解されたものと認識しております。
 県民の総意により、大切な森林を守り、間伐等も含めた森林の育成・保全等をより一層推進していくという、超過課税である「紀の国森づくり税」の趣旨を御理解いただき、引き続き、税条例の延長をお願いする次第でございます。


《要望》高田由一 県議
 森林を守り、森を大切にするという点では認識が一致していると思いますが、どこに財源を求めるかという点で見解が違うわけです。皆さんが恩恵を受けることだからこそ、やはり一般の県行政の財政から支出をしていく方向で考えていただきたいと思います。


(2)基金事業についての提言
《質問》高田由一 県議
 つぎに農林水産部長にうかがいます。
 お配りした資料「紀の国森づくり基金活用事業費の推移」をご覧下さい。ここにもあるように森づくり基金による事業は、公募事業も減少し、県が実施する施策も昨年からは植樹祭関連の事業があったためかなり高いレベルを維持していますが、率直にいって使いあぐねている実態です。平成22年度末では3億9000万円近い残高となっています。森づくり税の約1年半分ぐらいです。
 知事は、さきの9月議会で中村議員の質問に対し、間伐事業を強めていくことを示されましたが、私は間伐事業自体は大切だと思いますし、これを使うこと自体は反対ではありませんが、税の性格上、これまでやってきた公共事業での間伐や林業施策のうえでの間伐とは一線を画す必要があると考えています。これまでの成果や反省点とともに今後、実施されていくであろう森づくり基金を使った間伐事業について、どのようにお考えなのか、答弁をお願いします。


《答弁》農林水産部長
 まず、紀の国森づくり基金事業の実績を申し上げます。
 一般県民の方々にご提案をいただく公募事業などにより、県内に約400ヘクタールの多様な森林の造成等が実施できました。
 また、森林の公的管理を進める事業では、保全すべき貴重な森林約400ヘクタールの公有林化を進めることができました。
 さらに、小中学生を対象として森林体験などを行う緑育事業におきましては、平成19年度当初の参加児童数300人が、昨年、平成22年度には約3,000人にまで拡大するなど、子ども達にも森林への理解が深まりました。
 一方、間伐などの森林整備が期待したほど進まなかったということについては、私どもも認識しております。これは、間伐作業には専門的な技術が必要であることから、公募事業等では取組が難しかったのであろうと考えております。
 このため、間伐事業については、新たに県が主体的に実施する方向で検討を進めております。この中で、公共事業の間伐との線引きについてでございますが、以下の3点を条件とすることを検討しているところであります。1点目は採算性が低いなどの理由により森林所有者の努力では間伐が進みにくい、進まない森林であること。2点目は将来、広葉樹との混交林化を視野に入れた森林整備を行うこと。3点目は事業実施後、少なくとも20年間は皆伐を行わないことを義務づけること。
 以上の3点でございます。


《質問》高田由一 県議
 また、私はこの森づくり基金を使ったこれまでの事業でもっとも意義深いと思ったのは、貴重な自然を残していくための森の買取り、つまり公有林化であります。残念ながらこれまでは古座川町の約400ヘクタールの森の買取り、事業費でいえば3000万円だけにとどまっていますが、使いあぐねている残額もふくめて思い切ってこうした取り組みをすすめてはいかがでしょうか。部長の答弁を求めます。


《答弁》農林水産部長
 森林の公有林化については、県としても貴重な森林資源や生態系を保存することは、県民の財産を守るという視点で重要であると認識しており、引き続き積極的に取り組む所存でございます。
 今後とも、紀の国森づくり基金事業の活用については、県民が広く参加し、森林への理解を深めるとともに、森林の働きを高めることにより、県民の共通の財産である森林の健全な育成に資するように取り組んでいく所存でございます。


3.地方税の徴収について
(1)徴収猶予制度の周知
《質問》高田由一 県議
 台風12号による被災者のうち自宅が被害をうけた人は、その被害の程度に応じて被災者生活再建支援法の適用となります。また、各種税金の減免制度が利用できることは御承知のとおりであります。しかし、被災地では、直接、自宅が被災していなくても事業や商売の売り上げが激減している例もあります。また、災害がなくとも家族の病気や盗難などで収入が急に得られなくなる事態というのは当然おこりうることです。そんなときに期限がきた税金の納税を一時、猶予してもらえる制度が地方税法15条に定める納税猶予の制度であります。
 読みますと、その対象となるのは、
1.納税者又は特別徴収義務者がその財産につき、震災、風水害、火災その他の災害を受け、又は盗難にかかったとき。
2.納税者若しくは特別徴収義務者又はこれらの者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したとき。
3.納税者又は特別徴収義務者がその事業を廃止し、又は休止したとき。
4.納税者又は特別徴収義務者がその事業につき著しい損失を受けたとき。
5.前各号の一に該当する事実に類する事実があつたとき。
と法律には書き込まれています。
 例えば那智勝浦町では先日、農林水産委員会でも那智大社裏山の治山事業について視察にいきましたが、那智の滝周辺のおみやげ屋さんは直接の被害はなかったものの、道路が通れませんでしたからお客がまったくなく、売り上げがゼロの日が続きました。
 また、ある森林組合では事務所自体が流されたものですから、山仕事を受けることができず、日雇いの山林労働者は収入が途絶えました。直接は被災していないものの収入の面で大きな損失がある。こうしたときにこそ地方税法15条の適用がなされるべきです。
 しかし実際、被災地の現場では、その制度についてみなが知っているという状況にはないようです。私に相談のあった事例では、借地で栽培していたシイタケが流され、現金収入がなくなった方がいました。役場は固定資産税については減免の申請をしてくれ、国保税も一応、減免の申請を受け付けるも、生活保護基準以下の収入でないと適用されないとの説明だったそうです。やはりこのときも、現金収入が途絶えたなら、税そのものの徴収が猶予できる地方税法15条の説明をすべきでなかったかと思います。

・地方税法第15条の適用について
 こうした状況があるなかでいくつか質問します。
 最初に地方税法15条の適用についてです。議場に、いま県の窓口などにおいているパンフレットをお配りしています。「台風12号により損害を受けた場合の県税の主な減免措置等」というタイトルです。さきほど紹介した地方税法15条の徴収猶予という点では、パンフレットの一番下の方に徴収猶予という欄があり、「台風12号により財産が被災したために、納税者等がその徴収金を一時に納税することができないと認められるときは、納税を猶予することができます」と書いています。ですが、「台風12号により財産が被災したために」と書いてあるために、本人は直接、被害を受けてない場合は対象にならないと考える人がいても当然でありますし、そういう解釈の方がおられました。
 そこで確認の意味でおうかがいします。総務部長、直接、台風被害にあおうがそうでなかろうが、地方税法15条の徴収猶予の適用は可能だと思いますが答弁をお願いします。


《答弁》総務部長
 地方税法第15条の徴収猶予制度は、納税者が災害を受けたこと等により県税を一時に納付できない場合において、納税者に納税資金調達の時間的余裕を与えるための制度であります。
 納税者が直接災害を受けた場合のほか、例えば取引先が災害等を受けたことにより債権回収が困難と認められる場合において県税を一時に納付できないとき等、法定の要件に該当する場合に適用されるものでございます。


・県税事務所での掲示
《質問》高田由一 県議
 お答えいただいたとおり適用できると思います。
 つぎに税務窓口での周知や掲示についてうかがいます。
 県税事務所にいきますと、地方税法15条があることを周知するポスターや掲示が、私はだいぶん見回してみましたが見当たりません。また、申請書も窓口には置いていません。県税事務所や県下の市町村の窓口にこうした掲示があるかどうか、答弁をお願いします。


《答弁》総務部長
 徴収猶予制度につきましては、県税事務所等に相談窓口を設置し、納税者の方々の相談に応じるとともに、県ホームページへの掲載や納税通知書等にリーフレットを同封するなどにより、申告等の期限延長、減免などの被災者に対する軽減措置と併せ、その周知に努めたところでございます。
 次に、市町村の関係ですが、市町村税に係る徴収猶予及びこれについての周知につきましては、県から市町村に対して、徴収猶予等の納税緩和措置を講じるなど適切に対応するよう助言したところでございます。
 これを受け、市町村においては、納税相談の際等に、個々の納税者の状況に応じて、適切に対応しているものと認識しております。


《要望》高田由一 県議
 窓口には置いていないが、周知の際にリーフレットを付けるなどしているということでした。私はやはり災害を受けて、住民生活が大変な時期こそこういった周知を徹底することが大事だと思います。
 先だっても、ある県税事務所へ伺いました。そして徴収猶予の制度が知らされていないかと見たのですが、一番目立つのは玄関入り口に車のタイヤを置いて、税金を滞納しますと自動車へのタイヤロックや差押をしますというものがドンとあって、肝心の、今こういう時期だからこそ本当に見てほしい徴収猶予制度についてはどこを探してもない。私はこれはおかしいと思う。少なくともタイヤを展示して目立つぐらい、「15条の適用もできます、困った人は相談してください」と言うことが県の心ある税行政ではないですか。
 私はその改善を強く要望します。


・猶予申請書を窓口に
《質問》高田由一 県議
 経済的にも不況にあえぐなかでの今回の災害です。これを契機にこの地方税法15条の周知をきちんと県民におこない、窓口には申請書を置くという具体的な対応を求めたいと思います。これについて総務部長、答弁をお願いします。


《答弁》総務部長
 徴収猶予制度の適用につきましては、災害等により一時に納付することができない事情について個々具体的に適用要件を確認する必要があるため、相談窓口において、納税者の被災状況等を確認の上、申請手続の案内も含め適切に対応してまいりたいと考えております。
 市町村に対しましても、個々の滞納者の状況等を把握した上で適切に対応するよう、引き続き助言してまいります。


《要望》高田由一 県議
 適切に対応していくというご答弁でしたが、私は15条の申請をしてもみんながみんな適用になることは、なかなか難しい面もあると思います。
 しかし、「そういう制度があるんだな、うちの事例では使えないか」と気付いてくれることこそ大事なことだと思います。まずポスターでお知らせして申請書も窓口に置いて、「これ何やろうな」と気付いてもらうことから始めていただくことを強く要望します。


(2)和歌山地方税回収機構について
《質問》高田由一 県議
 つぎに和歌山地方税回収機構についてうかがいます。この機構は御承知のように市町村から徴収困難な滞納事案を引き受け、専門的に滞納整理をすすめるもので平成18年に県内全市町村が参加してできた一部事務組合であります。事務組合ですから定期的に組合議会も開かれています。
 この回収機構ではこれまで滞納者の8割以上について差押等の滞納処分を実施し、その数は昨年度1690件にものぼりました。また、そうした具体的な仕事とともに強力に推進しているのが、市町村に対し差押や公売の手法を伝えるコンサルティング業務、そして市町村から3カ月の短期研修として職員を受け入れ、実際に差押や捜索などの普段、経験しないような業務を体験させることなどを行っています。その結果、市町村における差押などの滞納処分はこの間、急激に増えています。ただしどの市町村でも一律に増えているというのではなく、特定の市や町が非常に増えているという状況です。例えば、年間200件以上を差押えている市町村は昨年度の数字で和歌山市3594件、海南市269件、橋本市517件、田辺市567件、紀の川市694件、岩出市505件、かつらぎ町200件、そして私のすむ白浜町233件です。
 このように全国的に徴税が強化されるなかで住民から悲鳴があがっています。他県の事例ですが、昨年1月、千葉県では地方税の滞納を理由に、役場から年金を差し押さえられた77歳の男性が孤独死しているのが発見されました。なくなった男性は一昨年10月、銀行口座に振り込まれた年金を役場に差し押さえられ、生活に困っていることを役場に訴えたんです。訴えても取り合ってもらえませんでした。その後、12月の年金も役場が差押えました。鴨川警察署によると死因は餓死で所持金は110円だったということであります。この事件はその後、日本共産党の佐々木衆議院議員が国会で取り上げ、当時の渡辺総務副大臣は「非人道的な徴収はあってはならない」と答弁をされました。
 和歌山県内でもそうした事件はいつおこってもおかしくない状態だと私は思います。たとえば橋本市では以前、住民だった86歳の男性の年金を差押ました。手紙を6回ほど送ったが返事がなかったということで差し押さえたらしいですが、その方は認知症もすすみなかなか手紙の内容を理解できなかったようです。でも通帳に現金がなくなり「もう死にたい」と言ったそうです。ほかの市や町でもこうした相談が私どものところへ多数、寄せられています。こうした状況は、県地方税回収機構ができてから、顕著にすすんできたところです。
 そうした状況があることを前提にして総務部長にいくつか質問いたします。

・機構設立の効果
 まず、地方税回収機構の設立時の目標である全国平均の徴収率をめざすという点で効果はどうだったのでしょうか。


《答弁》総務部長
 平成22年度の徴収率は91.5%で、平成17年度と比較いたしますと4.5ポイント改善しております。
 平成17年度には5.7ポイント差がありました全国平均とは、平成21年度では2.5ポイント差に縮小しております。
 このように、地方税回収機構は徴収率の向上という点で大きな効果を発揮しているところでございます。


《要望》高田由一
 全国平均にしたいというのはある意味わかりますが、やはり各県の県民生活の状況はそれぞれ違いがあると思います。その平均の数字を追うこと自体が果たして妥当なのか。税は先ほどの住民税均等割とか、高い国保税とか、低所得の人ほど重くなってきています。そのことを考えれば、全国平均の数字を追い求めること自体が自己目的化すれば本末転倒になってしまうと思います。ぜひ改善をしていただきたいと思います。


・県からの支援について
《質問》高田由一 県議
 平成27年まで回収機構を存続させることになっていますが、現状の毎年2500万円の県の補助金が支出され、4名の県職員派遣というのが続けられています。こういうことはこれからも続けていかれるのでしょうか。


《答弁》総務部長
 補助金の交付及び県職員の派遣につきましては、機構の円滑な運営、個人県民税を含めた地方税の税収確保を図るため、引き続き必要と認識しております。
 それと併せまして、機構若しくは県から市町村への支援策といたしまして、滞納処分の厳正な実施だけではなく、個々の滞納者の状況に応じて、適切に納税緩和措置を講じるよう、支援しているところでございまして、厳正な滞納処分と併せて、個々の滞納者の事情に応じた滞納処分を実施しているところでございます。


《要望》高田由一
 機構への派遣ですが、数ある機構の中でもかなり高い県負担になっています。三重県では平成21年は0円ということもあります。この機会にあり方も見直していくことを要望します。


・市町村からの移管について
《質問》高田由一 県議
 市町村から機構に移管しやすい案件のみが移管されているのではないかという心配があります。ここに平成20年9月の機構議会議事録があります。ある町長さんですが、「特定の滞納者についてまだ機構に引き継がれていないものがあり、町議会で言われることがあるのだが、他の団体にも滞納があってそれをどうするかということがありますか」というご質問をされています。私はこの質問や、あちこちから色んな噂も聞くにつけ、本当に困難な事例がきちんと移管されているのか。定められた移管基準のとおりに運用されているのかと心配したわけですが、いかかでしょうか。


《答弁》総務部長
 市町村から和歌山地方税回収機構への移管事案につきましては、移管基準に基づき、市町村において滞納額や滞納者の状況等を踏まえて選定されており、適切に移管されているものと認識しております。


《要望》高田由一
 先ほど、法的な処理だけでなくきちんと滞納者への対応もやっていくと部長の答弁にありました。
 私は行き過ぎた徴税にならないことを願っていますし、県からも回収機構や市町村にご指導いただけますよう求めます。


(3)滞納処分のあり方
《質問》高田由一 県議
 次に県税の滞納で差し押さえをうけた白浜町Sさんの事例を参考に質問いたします。
 Sさんは長年、商売をされてきた方です。そのSさんから相談をうけました。平成18年分の個人事業税の延滞金22,700円が滞納になっていました。それで今年の春先まで紀南県税事務所から督促の電話や訪問がありました。2月には納付書も発行してもらって支払の約束をしていました。しかし払わずにいたところ、突然、6月29日付けの差押書が公売予告通知書とともに送られてきたということです。見るとSさん名義の不動産がすべて差押えられています。営業用の店舗まで押さえています。その後、平成18年の個人事業税滞納分22,700円をすぐに納めたので公売に至らずにすんだわけですが、お話を聞くと、「不動産を全部差し押さえるならどうして事前にちょっと声をかけてくれなかったのか。こんな事態になるとは思っていなかった。」ということであります。土地だけで1,000平方メートルもの差押。びっくりした金融機関から「どうしたのか」との問い合わせがあったといいます。営業用の店舗まで押さえられていますから、もし公売されていたら商売を廃業しなければならないところでした。
 こうした相談があったので以下、総務部長に質問いたします。

・滞納整理の流れ
 一般的に県税を滞納した場合、不動産が差押となるまでの滞納整理の流れをお答えください。


《答弁》総務部長
 県税につきましては、税負担の公平の確保の観点から、地方税法及び国税徴収法の規定に基づき、適正かつ公平な徴収が必要であると考えております。
 このため、納税者が県税を滞納した場合、督促状を送付後、一般的には文書及び電話催告等を行い、早期の納税の履行を促すとともに、一方で納付の資力があるにもかかわらず催告に応じない等の滞納者につきましては、納期内納税者との公平の確保を図るため、不動産の差押え等の厳正な処分を行うこととしております。


《再質問》高田由一
 差押という重大な行いの前に文書を出したり電話をしたりする必要はないのか。この方の場合、3ヶ月ぐらいは直接の対応がなかったと言っています。差押の前に文書を出したり電話をしたり、訪問したりという必要性はないのでしょうか。
 このことをもう一度答弁お願いします。


《再答弁》総務部長
 御質問の事例について、個々の事案についてお答えするのは差し控えさせていただきますが、御質問の中で触れられている状況について整理しますと、2月に納付の約束をされており、その後、電話や訪問面談による督促も行ってございます。
 そうした中で、納付の約束が守られなかったということでございまして、6月末に差押えを行ったものであります。その経緯につきましては、議員が御質問で触れられている通りでございまして、こういう前提に立ちますと、今回の滞納処分も適切であったものと考えております。
 今後とも、滞納者の納付資力の状況の把握に努めまして、適切な滞納処分に努めてまいりたいと考えております。


《要望》高田由一
 個々の事例ということではなく、最初に文章が送られて、ずいぶん経ってから差押えられたということですから、その間に一言声をかけていただけたら解決したと思います。
 ぜひそういう対応をお願いしたいと思います。


・差押の順序
《質問》高田由一 県議
 不動産ではなく、銀行預金など換価しやすいものから差押えるのが通常のやり方ではないかと思いますが、何か手続き上の流れがあるのでしょうか。


《答弁》総務部長
 銀行預金等の債権につきましては、不動産と異なり公示制度がないことから発見できない場合も多く、また、差押えの対象としてどのような財産を選択するかは、法令の定めはなく、徴収職員の合理的判断に委ねられております。
 これらの点を踏まえ、滞納処分にあっては、滞納税の消滅時効の中断や税債権の保全等の差押えの効果のほか、滞納者に対して自主納税を促す心理的効果等についても十分に勘案し、適切に処分を行っているところでございます。


《再質問》高田由一 県議
 どのような財産を選択するかは定めがないので徴収職員の合理的判断に委ねられているということと、滞納者に対しても自主納税を促す心理効果があると言われました。
 先だっていただいた資料のひとつ「平成23年度徴収対策について」の中で、早期に差押しなさいとして、預金や給与、生命保険、賃料等、早期収入確保ができる財産の差押えを優先するという運用が書かれています。先ほどの部長の答弁では職員の合理的判断に委ねていると言われましたが、恣意的な運用になってしまわないかと心配しています。一方で部内の資料では、早期に収入確保できる財産の差押を優先しなさいと書いているし、心理的効果なども考えてやると言われた。どちらが具体的な事例として普段行なわれているのでしょうか。


《再答弁》総務部長
 一般論で申し上げますと、今回、延滞金22,700円ということでございますので、仮に銀行預金等の債権を発見できておれば、預金債権の方で対応しておったかと思います。
 さらに、不動産の差押えについてですが、不動産については差押えを受けましても、公売されない限りは生活や営業に差し支えないということでございまして、動産のように占有が移るものと異なりまして、動産、不動産という点では、通常は不動産を優先的に差押えさせていただくというものです。
 大半の県民の皆様には、納期内納付をしていただいておりますし、あと生活が厳しくても分納等によって納税努力を続けていただいておる納税者の方も多くいらっしゃいます。滞納処分については、厳正な処分を行ってまいるという基本方針でございますので、その点、御理解いただきたいと思います。


《要望》高田由一 県議
 たしかに22,700円ですから放って置かずに払わないといけないとは思います。しかし、それだけしか見ていない。木を見て森を見ていないことになりはしないか。県としては自分の守備範囲の県税の部分、滞納22,700円についてはたしかに見ています。でもこの方は事業をしていますから、国税も消費税も何十万円と納められています。もし気が付かないまま公売されていたら、本当に大変な事態になっていたと思います。
 この問題の最後に、国税庁の税務運営方針の一部を読ませていただきます。
 「納税者と一体となって税務を運営していくには、税務官庁を納税者にとって近づきやすいところにしなければならない。そのためには、納税者に対して親切な態度で接し、不便を掛けないように努めるとともに、納税者の苦情あるいは不満は積極的に解決に努めなければならない。また、納税者の主張に十分耳を傾けいやしくも一方的であるという批判を受けることかないよう、細心の注意を払わなければならない。」(第一 総論 1税務運営の基本的考え方 (1)納税者が自ら進んで適正な申告と納税を行なうような態勢にすること)
と述べられています。これは地方税にも当てはまることです。ぜひ、この税務運営方針の理念に基づいた税行政を執行されていくことを望みまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。


知事の答弁を聞く、高田由一県議(右側)=12月8日

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2011年12月県議会、高田由一 一般質問=12月8日
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