和議第58号
        集団的消費者被害回復に係る訴訟制度の創設に関する意見書(案)

 平成22年度の消費生活相談件数は、全国で約89万件で、県内でも約5,700件と、依然として高い水準にある。特に高齢者からの相談件数は増加傾向にあり、被害金額も高額になる等、深刻な状況にある。
 一方、現在の訴訟制度の利用には相応の費用と労力が必要であり、情報力や交渉力で劣る消費者が、自ら訴訟を提起して被害回復を図ることは困難な場合が多い。また、これまでの消費者団体訴訟制度では、適格消費者団体に損害金等の請求権を認めていないため、消費者の被害救済には必ずしも結びついていない課題を有していた。
 そこで、こうした現状を踏まえ、消費者のための新たな訴訟制度の法案化が消費者庁において準備されている。
 この制度案は、訴訟手続きを二段階に区分し、共通争点を有し、多数発生している消費者被害を対象として、内閣総理大臣が認定する特定適格消費者団体が訴訟を提起し、一段階目の訴訟で共通争点の審理を行い、事業者側の法的責任が認められた場合に、二段階目で個々の被害者が参加し、簡易な手続きで被害額を確定し、被害回復を図るという仕組みになっている。
 そのため、被害者である消費者は、自ら訴訟を提起する必要は無く、事業者の法的責任が確定した段階で被害回復を申し出て、裁判に加わることで救済への道が開かれるという、消費者にとって労力の面でも費用の面でも現行制度より負担が軽減される画期的な制度である。
 よって、本県議会は、国及び政府に対し、消費者庁及び消費者委員会設置法附則第6項の趣旨にのっとり、次の事項を実現するよう強く要望する。

1 現在、消費者庁において準備されている集団的消費者被害回復に係る訴訟制度について、平成24年通常国会の審議、議決を経て、早期にその創設を図ること。
2 同制度の実効性を確保する観点から、手続き追行主体となる特定適格消費者団体への必要な支援を具体化すること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

  平成24年3月16日

          様
                                         和歌山県議会議長 新島 雄

                                                    (提 出 者)
                                                     中村 裕一
                                                     長坂 隆司
                                                     雑賀 光夫
                                                     角田 秀樹
                                                     山下 大輔
(意見書提出先)
 衆議院議長
 参議院議長
 内閣総理大臣
 内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)