2012年2月県議会
松坂英樹一般質問
 概要記録
201

1.新年度防災対策予算
(1)まけるな!!和歌山パワーアップ事業
(2)災害時要援護者対策

2.みかん対策
(1)2011年産みかんの生産販売状況
(2)「YN26」「きゅうき」など新品種の普及
(3)機能性成分に着目した今後の新品種開発と販売戦略
(4)果樹・みかん農家の後継者対策

3.県消防学校移転整備
(1)移転整備の基本的な考え方について

4.JRの利便性向上へ
(1)新型特急「くろしお」車両導入とダイヤ改正
(2)駅のバリアフリー化など利便性向上

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1.新年度防災対策予算
《質問》松坂英樹 県議
 通告にしたがい、分割方式で一般質問をさせていただきます。
 まず最初に、新年度防災対策予算についてお伺いします。

 昨年3月の東日本大震災、9月の紀州大水害をふまえて、新年度予算における大きな柱として災害からの復興と防災対策が位置づけられました。これまでの緊急対策に加えて、新年度では、国の震源域や被害想定見直しにあわせた対応や対策、そして何よりも県民・地域のみなさんといっしょになった地道な日ごろの取組みにより、防災意識と備えをしっかりと整えてゆく必要があると考えます。
 先月25日には、広川町の町民体育館で「津波防災シンポジウムin広川町」が開催され、広い会場一杯の住民が参加し、関心の高さを物語っていました。
 地元パネラーによるパネルディスカッションに続き、関西大学の河田教授からは、「百年後のふるさとを守る」と題して、地震・津波対策の最新の到達点にもとづいて講演をいただきました。東海・東南海・南海地震の想定震源域が、2003年の中央防災会議で示された宝永地震モデルを基本としたものから範囲と規模が拡大され、和歌山市近くまでが震源域の可能性がある地域として考えられていること、さらにそれ加えて、地震のエネルギーは小さくても大きな津波を発生させる「津波地震を検討する震源域」、この領域も示されました。これらに基づく新しい津波想定の報告が近く国から発表されることになっています。
 興味深かったのは、東北での津波からの生存者4400名の避難実態調査のデータでした。実際に避難できたのが平均すると、徒歩ではわずか11分440mあまり、車でも16分2.4キロ余りしか移動できていなくて、そのスピードは徒歩で時速2.3キロ、車でも9キロしか出ていないということです。生き延びた方でも思うように避難できなかったのです。もちろん多くの方が車で逃げる途中で渋滞や通行不能により津波にのまれて亡くなっていますから、車は条件の許す限られた場合のみにしか使えないのは当然です。いざというときには、日ごろの歩くスピードの半分でしか避難できない、車もあてにできないということでした。
 そして、「稲むらの火」の地元、広川町民にむけて紹介されたのは地震予知の先駆者であった今村博士の文書でした。昭和南海地震の前、今村博士は南海地震が来ることに警鐘を鳴らし続けたのですが、戦中・戦後の混乱期にあってその警告が生かされずに、「稲むらの火」の地元である広村でも被害が出てしまったのです。広村に対して、様々なアドバイスや警告を発していたけれども被害を防ぐことができなかった、そんな万感の想いのこもった文章を紹介されていました。
 そしてその文書の結びに記された言葉、「およそ災害は忘れたころにやってくるといわれているけれども、忘れない・知っているだけでは災害は防げるものでもなく、避けられるものでもない。要はこれを防備することである」このことを強調されました。
 あわせて東日本大震災での教訓である「避難所に来て顔をあわせたのは、常々訓練に来ていた人ばかりであった。日ごろやっていることしかできない」んだ、こういった一言ひとことが、参加者に強い感動を与えたシンポジウムとなりました。
 またこのほど県は、「地震・津波に関する県民意識調査」の結果を発表しました。この意識調査は東日本大震災後の夏に、改めて調査をしたものです。
 これによると、昨年の3月11日には、約8割の人が大津波警報などを聞いていて、6割の人が市町村からの避難の呼びかけも聞いていたにもかかわらず、実際に避難した人は16.8%しかなかったという数字が出ています。また、気になったのは東日本大震災を経験して、東南海・南海地震への関心や避難行動に関する意識が大きく上がっている一方で、東北では地震の揺れが少なかったせいか、家具の固定に関しては数字がぜんぜん伸びていないということにも注意と対策を考える必要があると感じています。
 こういった新しい状況や県民の実態をふまえ、新年度においては県として広域自治体としての防災対策に主体的に取組むとともに、住民の身近なところで避難計画や対策にあたる県内市町村と、しっかり連携して取組むことが重要です。今回の質問では、市町村や地域との連携の部分に焦点を当てて新年度防災対策予算について質問をさせていただきます。

(1)まけるな!!和歌山 パワーアップ事業
 まず第一点目には、「まけるな!!和歌山パワーアップ」事業についてです。これは市町村が避難路の整備や家具の転倒防止対策などに取組むときにその半額を補助する事業で、今年度は東日本大震災を踏まえて当初予算の5000万円から1億円の補正予算を加え、避難場所や避難路の見直しなど緊急性の高いものに取り組みました。さらに新年度では、当初予算から2億円の枠をもうけて、引き続き市町村とともに取組むとされています。
 新年度予算を提案するにあたり、今年度補正予算での緊急的取組みの到達点と課題はどうか。新年度では市町村とともにどういう角度でさらなる取組みを進めるのか。お示しをいただきたいと思います。


《答弁》 危機管理監
 県といたしましては、東日本大震災をふまえた「防災・減災対策の総点検」のなかで、避難場所の見直しを市町村とともに実施し、避難の方向性を明確にしてまいりましたが、そこで必要となった防災対策事業を進める市町村への支援として、23年度9月補正においては、1億円の増額補正を行いました。
 早急な実施が必要となった事業は、避難路整備や避難誘導灯・表示板の設置などの避難対策や、避難の前提となる家具等の固定といった災害から逃げ切るための対策でございます。
 特に耐震化や家具固定などの身の回りの対策については、実数では伸びておりますが、津波被害の印象が非常に強烈であったためか、県民意識調査においては特段の変化が無く、課題と感じているところでございます。
 避難対策・身の回りの対策について、24年度においても、引き続き重点的に支援し、早期実施を促したいと考えてございます。
 加えて、24年度では、紀伊半島大水害の教訓を踏まえ、台風12号緊急対策として孤立集落への通信手段整備及び被災可能性の高い福祉関係施設への防災行政無線端末の整備を補助対象事業に追加し、取り組んでまいります。
 今後とも、県民の避難・救助対策や地域の減災対策について早期取組を推進するため、市町村を総合的に支援してまいりたいと考えてございます。


(2)災害時要援護者避難対策
《質問》松坂英樹 県議
 次に災害時要援護者避難対策についてお伺いします。高齢化がすすむ地域の中では、「避難所やから小学校まで逃げよと言われても、とてもワタシらよういかん」「ほとんど寝てばっかりのおじいちゃんほったらかしてよう逃げん」などの声も聞こえてきます。建前では避難場所へ逃げることになっていても、これでは実際に避難行動には結びつきません。体の不自由な高齢者をはじめとする、災害時要援護者の避難対策をしっかり準備することは、地域における避難対策の取組みの本気度が問われる課題だと考えます。
 福祉避難所の指定が少ない、対応人数が足りない、このことも課題となっています。こういった課題への対応を本格化させるためにも、地域とともに個別支援計画をどう作り上げるかが重要なカギとなります。
 県の新年度予算では新規事業として災害時要援護者避難対策の推進策を予算化されていますが、災害時要援護者の個別計画の策定など、この課題をどう支援してゆくのかお示しいただきたいと思います。


《答弁》 危機管理監
 災害時の要援護者対策につきましては、災害時要援護者避難支援プランの個別計画策定を市町村と連携して進めてございます。現在、9市町で個別計画を策定しており、17市町が策定に取り組んでおるところでございます。
 この計画は地域で要援護者を支援していただく共助の取り組みであり、要援護者への情報伝達、安否確認や避難行動支援を実施するために、支援者を確定することが重要になりますが、個人情報の問題や自治会・自主防災組織等での支援者確保が困難であるため、取り組みが遅れているのが現状でございます。
 新政策「災害時要援護者を支える地域支援」事業においては、支援者の重要性を明確にし、要援護者の避難支援を行う支援者の行動指針となるよう、支援者活動マニュアルの策定を行います。また、地域での支援活動に必要なリヤカーや車椅子等資機材の整備について、市町村と共に支援を行ってまいります。
 以上の取り組みにより、関係部局や市町村と連携をして、支援者や支援に取り組む地域をサポートし、要援護者の方が避難出来る体制づくりを促進してまいります。


《要望》松坂英樹 県議
 防災関係のご答弁をいただきました。今年度の補正予算では、主に避難関係の緊急対策に取組んでいただいたわけですが、スピード感を持って取組む避難場所の指定見直しとは対照的に、地域の避難路を住民の意見を元に整備するというような事業は、住民の中でよくもんで、意識の高まりとあいまってやっと実現するものもあるわけですから、ぜひ一定の期間を見ながら面的に取り組みを広げていっていただきたいと要望しておきます。
 そしてもう一つ、家具固定の問題です。質問でも少しふれさせていただきましたが、家具の転倒防止、家具固定がなかなか進みにくいんですね。わかっているだけでは進まないし、市町村が補助事業を組んだらドンドン進むという単純なものでもありません。しかし、災害時要援護者や高齢者世帯などにはぜひ家具固定を支援する行政の施策が必要だと考えます。そして一般の家庭にもぜひ地震対策の最も効果的な一歩として広げていきたいものです。
 現在、和歌山県内30市町村のうち、家具の固定事業に取組んでいるのは13市町にとどまっています。ぜひ市町村にも、県の事業も活用していただいて施策がすすむよう、これまで以上に働きかけを強めていただけますよう要望しておきます。


2.みかん対策
《質問》松坂英樹 県議
 次にみかん対策の質問にうつります。先日、NHKのBS番組で「ウンシュウミカン 進化する“コタツみかん”」と題した番組が放送されました。温州みかんの品種改良の歴史や全国的な産地の特徴、これからのみかんの「進化」にむけた研究も紹介するなかなか面白い番組でした。
 この中で、みかんの有力産地の条件として、水はけのよい「秩父帯」とよばれる地層、これが和歌山・愛媛・静岡という産地に共通して存在するということや、現在、機能性成分をより多く含むみかんの開発・研究がすすめられている様子が報道されていました。
 この番組を見て、和歌山県という地域の持つ地理的、気候的、地質的条件はすばらしい、このポテンシャルを大いに生かし発揮させて、食料の世紀と呼ばれる21世紀、健康を保ち増進する果物の生産県として一層がんばりがいがあるんだと確信を持ちました。
 一方で、みかん農家の現実は、表年に安値を繰り返しながら長引く価格低迷と、農業で食べていけないという後継者難で、展望がなかなか見えない状況にあります。私は今議会においても、みかん対策について4点の質問をさせていただきます。

(1)2011年産みかんの生産・販売状況
 2011年産みかんは、梅雨明け後や秋の高温、また雨が多かったりと、気象変動によるきびしい気候条件により、害虫の発生による品質低下や、サイズの大きいみかんが多くできてしまい、生産・販売ともに苦労が多かったと聞いています。価格的には、安値に泣かされたこの間の表年よりは持ち直したという状況だそうです。
 また、販売面でも行政と生産者の取組みが様々な形で努力が続けられてレベルアップしてきたこととあわせ、首都圏での露出や販売量も増加し、和歌山県産みかんの販売量が昨年の2倍になった東京の市場も報告されています。
 私は、和歌山県産みかんの全国的ブランド力アップのためにも、長くお世話になっている京阪神市場に主軸をおきながら、首都圏の市場にも果敢に攻めるという戦略が大切だと訴えてきましたが、関係者のみなさんのご努力が実を結びつつある状況だと思います。
 まず第1点目に、2011年産みかんの生産・販売状況はどのような状況であったのかお示しいただきたいと思います。


《答弁》 農林水産部長
 2011年産みかんについては、表年であったものの生理落果が多く、台風や秋雨の影響で傷果や大玉果等が多かったため、出荷量は前年比118%、同じ表年である2009年産に比べて92%の出荷量となっております。
 こうした中で、県はJAグループとともに厳選出荷を推進し、単価については、186円/kgと前年度の80%、2009年産に比べて130%の単価で取引が行われております。


(2)「YN26」「きゅうき」など新品種の普及
《質問》松坂英樹 県議
 次に、生産者からの要望の強い、新品種の開発・普及の問題です。和歌山らしい魅力的な新品種をめざしてきた成果として、県果樹試験場と地元農家の協力により、「YN26」「きゅうき」などが生み出され、普及に期待の声がよせられています。今後、これら新品種の普及のスケジュールや手立てはどうか、お答えください。


《答弁》 農林水産部長
 ゆら早生から育成された「YN26」につきましては、9月下旬から出荷でき、食味が良いのが特徴で、本年1月に品種登録がなされ、今春から苗木が販売される予定でございます。
 また、向山温州の変異と言われている「きゅうき」につきましては、12月から出荷できる浮き皮の少ないみかんで、昨年3月に品種登録の申請を行い、2014年(平成26年)からの苗木販売に向けて、現在、増殖に努めているところでございます。
 今後、極早生から晩生までの県オリジナル品種によるシリーズ出荷を推進するため、県単独事業の「果樹産地再生緊急対策事業」などにより、これら品種への改植の支援を行い、早期の産地化を図ってまいる所存でございます。


(3)機能性成分に着目した今後の新品種開発と販売戦略
《質問》松坂英樹 県議
 続いて機能性成分に着目した今後の新品種開発と販売戦略についてお伺いします。みかんの持つ機能性成分については、有名になったβ―クリプトキサンチンの抗がん作用、そしてメタボ防止や成人病予防にも効果があるなどの報告がされ、健康ブームともあいまって消費者の関心をよんでいます。
 現在は、こうした機能性成分を、より多く含むみかんを開発するとか、これまでにない新しい機能性成分を品種改良によって取り込むなどの研究がすすめられているようです。今後、こうした機能性成分に着目した新品種開発がいっそう求められてくると思いますが、県として新品種開発と販売戦略をどう展開してゆくのか。ご答弁を願います。


《答弁》 農林水産部長
 県ではこれまでも、βクリプトキサンチンの発がん抑制効果等、みかんの持つ様々な効果をPRするとともに、現在、果樹試験場では、花粉症に効果があると言われているジャバラを親にした新品種の育成に着手しているところでございます。
 さらに、2012年度は、県オリジナル品種の開発など、産地から要望の高い試験研究を重点化するための予算を今議会にお願いしているところでございます。
 また、昨年11月には、JAグループと連携し、首都圏のメディア関係者を対象に、みかんや柿など県産果実の機能性に関するフォーラムを開催いたしました。
 健康志向が高まる中で、果実の需要拡大を図る一つの方策として、今後とも、新品種の育成を重点的に実施するとともに、機能性成分に着目した販売戦略を推進してまいる所存でございます。


(4)果樹・みかん農家の後継者対策について
《質問》松坂英樹 県議
 4点目に、果樹・みかん農家の後継者対策について伺います。
わたくしどもはこれまでも、農業後継者対策としては、事業が軌道に乗るまでの所得保障対策など様々な支援が必要であり、農家に生まれた青年はもとより、Uターン・Iターン、退職者など、農業をやりたい人は皆後継者だとして、抜本的な後継者対策で日本農業を守ろうと訴えてきました。
 和歌山県としても様々な施策に取組んできているわけですが、県試験場の技術成果発表会の資料を見せていただくと、新規収納者の経営課題とニーズについての報告がされていました。
 就農前の不安や課題としては、「所得・収益性の低さ」や「知識・技能の習得」が多く出されているとともに、資金と農地の確保が課題となっています。そして実際に就農した後の意識や課題としては、収入についての不満が強いものの、農家出身者と非農家出身者の間でほとんどの項目で差がなくなっており、10年経過すれば収益の差もほとんどないという状態だと報告されています。うまく軌道に乗れば、順調にがんばっておられるんですね。
 後継者対策をすすめるためには、新規就農者のニーズに細やかにしっかりとこたえてゆくことが大切であり、農業後継者対策をいっそう強化する必要があると考えさせられました。
 県として、農業後継者対策の実績・評価はどうか、そして今後の取組みについてどう考えているかお示しいただきたいと思います。特に果樹は本県農業の柱でもあることから、果樹・みかん農家の後継者対策について答弁を求めます。


《答弁》 農林水産部長
 果樹・みかん農家の後継者対策につきましては、県では、農業大学校や就農支援センターにおいて、新規就農希望者に対して農業技術研修を実施しております。
 就農初期における経営安定のため、「新農業人あんしん自立支援事業」において、就農奨励金や無利子の生活安定資金、農地無償一時貸付等の支援を行っております。
 また、平成21年度から実施している「和歌山で農業しませんかプロジェクト」により、新規就農者の確保に努めております。
 これらの対策により、最近2年間の新規就農者数は、平成21年度が193名、22年度が180名の2年間で計373名であり、その内みかん等の果樹を基幹品目とする就農者は約半数の191名、それ以前の5年間と比較しますと、最近2年間の新規就農者数は、年間で約50名の増加となっております。
 今後、県としましては、技術研修の更なる充実に向けた就農支援センターでの社会人課程と、JAと連携したトレーニングファームを新たに開設するとともに、国の支援制度等も積極的に活用して、新規就農者の確保と就農定着を促進して参りたいと考えております。


《要望》松坂英樹 県議
 部長からお示しいただいた答弁では、新品種「YN26」の品種登録が完了したことや、「きゅうき」が非常に有望で再来年ですか苗木販売にむけて取組んでいるということでした。「YN26」という品種名だけでは味気ないので、新年度にはニックネーム商標登録を考えているそうですが、ぜひいい名前をつけてほしいものです。
 また、機能性成分に着目という点では、花粉症に効果のあるジャバラを親にした取組みが出されましたが、この効果は一般的によく知られていますし、何よりも和歌山県らしいインパクトのあるものだと思います。ぜひ力を入れていただきたいと思います。
 後継者対策や身近な基盤整備などとも合わせ、果樹王国和歌山県として、いっそうのミカン対策強化を要望しておきます。


3.県消防学校移転整備について
(1)移転整備の基本的な考え方について
《質問》松坂英樹 県議
 次に3つ目の質問である県消防学校移転整備についてお伺いします。新年度予算では、老朽化し手狭な県消防学校がかかえる課題を解決するため、現在の和歌山市冬野からコスモパーク加太への移転新築に向けた予算が計上されています。
 これまでも県内消防長会からも要望が出されていたように、専門的な訓練や資格の取得という点から見れば課題がありました。
 水難事故に対応する潜水隊員として業務にあたろうとすれば、潜水の講習・資格が必要になります。交通事故や災害時にレスキュー車・救助工作車についているクレーンを使おうと思えば、クレーンや玉掛けの免許が必要になります。ところがこの専門的な訓練が設備や規模の制約もあって要望にこたえられず、遠く県外の消防学校へ行っている実態もあるわけです。
 長い海岸線や河川、ダムを持ち、自然災害の多い和歌山県として、大規模災害への備えや救急救命活動の高度化などに対応できるよう、県消防学校の整備充実が期待されてきました。時代の求める消防職員の養成とともに、地域の消防団員や企業団体の消防組織など、地域社会の防災力向上にむけて取組みを一層強める必要があると考えます。
 県として、和歌山県消防学校の果たすべき役割と機能についてどのように考え、施設の移転整備によりどう対応しようとしているのか。消防学校の移転整備の基本的な考え方・構想について知事の答弁を求めます。


《答弁》 知事
 現在の消防学校は、消防職団員をはじめ、自衛消防隊等が初任教育や専門的な専科教育、訓練を受け、知識や技術を修得する機関として昭和52年に開校いたしました。
 以来、本年度末までに約20,000人を超える消防職団員等に対して各種教育・訓練を実施し、人材の育成に努めてまいりました。
 しかし、ご指摘のように消防業務の複雑化・高度化に伴い、新たな消防需要に十分対応できる消防職団員等を育成するとともに、大規模地震に備え、耐震化対策を講じた消防学校の移転整備が早急に取り組まなければならない重要な課題と認識しております。
 これらの課題を踏まえまして、新たな消防学校の移転整備に向けての基本的な考え方は、「東海・東南海・南海地震等の大規模災害や救急業務の高度化に対応できる教育・訓練施設の整備」、あるいは「女性消防職員を受け入れることができるような施設規模の確保」、「消防学校の施設等基準に基づく施設・設備の充実」、そういうものだと思います。
 そこで、県民の尊い生命や財産を守るため、消防職団員等が高度で専門的な知識や技術を修得するとともに、消防精神の涵養並びに体力の向上が図れるような教育・訓練の環境が整った移転整備を計画的に、これから推進してまいりたいと考えております。


《要望》松坂英樹 県議
 知事からは、移転整備の基本的な考えとともに重要課題として計画的にすすめてゆくとの答弁がありました。
 コスモパーク加太の防災用地の一部を活用ということで、かなりな規模の施設となるわけで、事業総額をおさえながらも、求められる機能と能力をしっかりとそなえた施設となるよう、消防学校の現場や、研修を受ける立場の消防職員・消防団員等のみなさんの要望にもよく耳を傾けて、計画的に整備をすすめていただけますよう要望しておきます。


4.JRの利便性向上へ
(1)新型特急「くろしお」車両導入とダイヤ改正
《質問》松坂英樹 県議
 最後にJRの利便性向上へという柱で質問をさせていただきます。2012年春のダイヤ改正と合わせて、この3月17日からJRきのくに線の「特急くろしお」に新型特急車両が導入されます。去る2月25日には展示会が和歌山駅・海南駅・田辺駅で開催され、3月4日には和歌山田辺間で試乗会が行われたところです。私も和歌山駅での展示会に出向き、新型「くろしお」車両を見てまいりました。ゆったりとした客車やバリアフリーにも配慮された新型車両を一目見ようと大勢の家族連れや鉄道ファンが来場していました。
 これまでの現行車両はかなり古く、加えて振り子式ゆえの激しいゆれが苦手だという声も多かっただけに、きのくに線特急のイメージは一新されることだと思います。利用者の快適性向上とともに、観光面においても、和歌山県の台風災害からの復興の呼び水として期待するものですが、新型車両導入と新ダイヤによる効果についてお答え下さい。


《答弁》 企画部長
 JR西日本が、3月17日のダイヤ改正に伴いまして、導入いたします新型車両の特長につきましては、客席の足元スペースの拡大、女性専用トイレや車椅子対応多機能トイレの設置、さらには授乳時や気分が悪くなった方々にお使い頂くための多目的室の完備などが施されており、利用される方々がより快適に、和歌山の鉄道の旅を楽しんで頂けるものと考えております。
 また、このダイヤ改正では、朝夕のビジネス利用に配慮するとともに、昼間は観光地への速達性を向上させるため、特急の停車駅が見直されることにより、利便性が向上し、復興支援にもつながるものと期待しているところでございます。


(2)駅のバリアフリー化など利便性向上
《質問》松坂英樹 県議
 最後に駅のバリアフリー化など利便性向上にむけた取組みについてお伺いします。新年度予算では、和歌山市駅と箕島駅のエレベータ設置にむけた予算が計上されているのを歓迎したいと思います。これまでも、駅ホームの段差解消、エレベータの設置や点字ブロックの整備などを求めてまいりましたが、こういった公共交通・地域交通の改善がいっそう広がってゆくよう願うものです。
 JR湯浅駅ではこの間、歴史的な町並みが伝統的建造物群として指定を受けたことにより、観光客の利用が増えてきている一方で、駅の売店が閉鎖されたり、窓口駅員不在の時間帯が出てきたりと、利用者から困惑の声もお聞きしています。湯浅駅もこの間、点字ブロックや手すりの整備などをすすめていただきましたが、改札を入るとすぐにホームへの階段が立ちはだかり、横にあるスロープも傾斜がきつくて長く、車椅子では介助なしに上ることができません。駅前地域の商店街のみなさんや湯浅町も駅のバリアフリー化や活性化をめざし働きかけを強めているようです。
 JR駅舎のバリアフリー化や利用客の利便性向上にむけ、今後県としてどう取組んでゆくのか。以上2点について企画部長の答弁をお願いします。


《答弁》 企画部長
 鉄道駅のバリアフリー化に関しましては、国が定める「移動等円滑化の促進に関する基本方針」において、「1日当たりの平均的な利用者数が3千人以上である鉄道駅については、平成32年度までに、エレベーターや障害者対応型便所の設置など、移動等円滑化を可能な限り実施する」とされています。
 本県におきましては、利用者数3千人以上の16駅のうち、既に9駅が完了しており、来年度は南海和歌山市駅とJR箕島駅のバリアフリー化に向けた予算を計上しています。
 今後とも、県内の利用者数が3千人以上の駅やそれ未満でも特急が停車したり、観光の拠点となる駅など、いわゆる地域拠点駅を中心に、地元市町及び鉄道事業者と連携のうえ、バリアフリー化を推進してまいりたいと考えています。
 また、駅の利便性向上につきましては、駅と目的地をつなぐ二次的な交通体系の整備や観光案内所の併設による駅機能の充実などに取り組んでまいります。


《要望》松坂英樹 県議
 ご答弁をいただきました。駅のバリアフリー化にむけた状況と方向性、駅機能の充実という点でもお答えをいただきました。
 湯浅駅に関していえば、この駅が湯浅の街中にあるという条件からも、藤並駅や広川ビーチ駅などと比較して、高齢者や交通弱者の方々の利用が多いのが特徴です。それだけに、歴史的な町並みを楽しんでいただく観光面とも合わせて、この取組みがすすむよう、住民のみなさんや湯浅町ともよく連携して取組みを強めていただけますよう要望します。
 またもう一点要望ですが、駅舎のトイレの問題です。以前JRは、きのくに線でトイレ無し列車をふやそうとして、県民の強い批判を受け議会でも取り上げられました。今ではすべの列車にトイレが付けられて、ハンディーのある方をふくめ喜ばれていますが、こんどは電車にトイレを付けたから駅のトイレはもう改修しませんというのが方針だというんですね。やってほしければ市町村でやって下さいということなんです。
 公共交通という点では行政もしっかり支援もしながらですが、JRにも働きかけて、いっしょになって駅の利便性向上に取組み、乗客も増やしていってほしいということを最後に要望いたしまして、私の一般質問を終了させていただきます。ありがとうございました。


  知事の答弁を聞く、松坂英樹県議=3月6日

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