2012年2月県議会 文教委員会 雑賀光夫委員の質問概要記録
2月24日(金)補正予算等議案
議案に対する採決
議案第17号 平成23年度和歌山県一般会計補正予算
議案第21号 平成23年度和歌山県修学奨励金特別会計補正予算
議案第59号 和歌山県修学奨励金貸与条例の一部を改正する条例
は、全会一致で原案可決
3月13日(火)付託議案等
《質問》雑賀光夫 委員
手元に「中学生のための放射線副読本」を配らせてもらっているが、小・中・高それぞれと教師用の指導書が作られている。これが配られるようになった経過と、どのくらい学校現場に配られるようになっているのか伺いたい。
《答弁》 学校指導課長
この冊子は、委員御指摘のように小・中・高等学校の3分冊になっており、児童生徒用と教職員用となっている。これは、今般の福島第1原子力発電所の事故において放射線というものが大きく社会問題となり、そのことについて、児童生徒に対して、不安を抱くことなく正しく理解できるようにということで作られたと伺っている。
県内への配付については、先に文部科学省から各学校に見本本が送られ、後に県が希望する学校の集約を行い、配付することとなっている。
公立学校では、幼稚園で29園、小学校で195校、中学校で101校、高等学校の全日制で22校、分校で4校、定時制で7校、特別支援学校で9校が希望し、必要冊数を送ることになっている。
《質問》雑賀光夫 委員
今まで、文部科学省が作った資料が希望する学校に直接配られることはあったのか。
《答弁》 学校指導課長
小学校の外国語活動が導入される際に、こういうテキストが希望冊数分配られるということがあった。それ以外に、原子力エネルギー関係では、今回が初めてではないかと認識している。
《質問》雑賀光夫 委員
これまで原子力関係の副読本では、「わくわく原子ランド」、「チャレンジ原子力ワールド」などが文部科学省から出されたと聞いているが、それについて和歌山で使用した例はあるのか。
《答弁》 学校指導課長
このようなものは国の方からリーフレットの形で各学校に配られたが、具体的にどのように使用されたかということは、私どもでは承知していない。
《質問》雑賀光夫 委員
かなりの冊数が送られてきたのか。
《答弁》 学校指導課長
配付された冊数については、今のところ手元に数値を持っていない。
《質問》雑賀光夫 委員
かつてのものについては、「大きな津波が来ても原発は大丈夫ですよ」、「原子炉というのは5重の防壁で守られているから絶対に放射能は漏れませんよ」という安全神話を宣伝するものであったと、国会の論議でも批判されている。
それが中止になったわけで、余り使われていなければいいが。
もう1つ聞きたいのは、原子力に関する教育支援事業交付金というお金があるが、私はかつて決算特別委員会で「これの使い方はどうか」と聞いたら、それは、「理科の備品を買ったり、風力や太陽光発電などをやってその発電量を量ったりするようにしたり、環境教育にも使われている」ということで、いいなと思ったことがある。ところが、昨年の4月28日に文部科学大臣から風評被害等の正しい理解のためにこの交付金を使ってほしいという通知もあったと聞いているが、この通知を受けて今年度の予算での使い方はどうなっているか。
《答弁》 学校指導課長
国から通達があったが、本県では、先ほど委員御指摘のように、エネルギー教育に関する理科備品の充実やエネルギー施設への生徒の見学、風力・太陽光発電システムの設置等にこの費用を活用している。
《質問》雑賀光夫 委員
それはそれで結構だと思う。
今、原発事故があって、放射能、放射線に対する不安もある。その問題を正しく受け止める教育が大事だと思う。
私は、この点で、2つの面があると思う。原爆や第五福竜丸事件、そして、このたびの原発事故があった。そこで、1つは、大量の放射線を浴びたときの恐ろしさをきちんと教えなくてはならない。いま1つの面は、放射線というのは自然界にもあるし、それに、レントゲンなど医療としても使われているから、そうしたこともきちんと教える。そういうことを、原子力の安全を研究している科学者は「理性的に怖がらなくてはならない」と言っている。私もこれが大事だと思う。そうでないと、風評被害も生む。こういうことについて、教育長はどう考えるか。
《答弁》 教育長
委員御指摘のとおりだと、私も思っている。
今回こうしたテキストを配付されるということは、このテキストを通じて、原発の実態、あるいは放射能の実態、あるいは人間に与える健康被害、医療の面での有効活用等、こういうすべての面で、きちんとした基礎知識を持つことが大切である。こうしたことに基づいて、最終的に国民的な判断が下ると思うが、教育委員会としては、子どもたちに今回の放射能、原発事故についての正しい知識を与えながら、きちんとした成果となるように教育を進めていきたいと思っている。
《質問》雑賀光夫 委員
今申し上げたように、放射線を大量に浴びたときの恐ろしさという問題と、風評被害を起こさないように正確な知識を伝えるということであるが、私は正しいことであっても、一面だけを言ったら、それは間違った認識になると思う。
まず、かつては原子力読本だったが、今回の読本は放射線と限って書いている。めくってもらうと、3ページから「不思議な放射線の世界」、それから「太古の昔から自然界に存在する放射線」。放射線はどこにでもあるんだよ、決して原発や原爆だけでないんだよと4ページも書いている。これは全く正しいことであり、間違ったことではない。それから、「放射線とは」という基礎知識を書いている。これも、決して間違ったことではない。「放射線の単位や半減期について」、そして「色々な放射線測定器」が紹介されている。これも間違ったものではない。
その次に、「放射線・放射能の歴史」というコラムがある。]線の発見からキュリー夫人の研究などが紹介されている。私がちょっと違和感を持ったのは、こういうふうに放射線・放射能の研究が進んできたら、この延長線上で、悪魔の兵器と言われる原爆につながったという問題、あるいは原子力発電が期待されたが、このような事故が起こってしまったという問題に触れるだろうと思ったが、それに触れていない。それなりの言い訳はあると思うが、教育長はどんな印象を持っているか。
《答弁》 教育長
私も、昨日拝見した。
私も、広島で原爆の体験ということで、友人をたくさん亡くした。この放射線について、私たちも意外と正しい知識を持っていなかったと、私の反省も含めてそう思う。これをどのように活用していくか、これからの原子力のあり方について、きちんと子どもたちに考えさせる教材として活用されるといいのではないかと思っている。
《質問》雑賀光夫 委員
私の聞いたことへの答えになっていないが、まあいいでしょう。
延長線上に当然あるべき原発や原爆には触れていない。文部科学省の答弁を私が行うとしたら、「原子力の読本ではなくて放射線の読本なので、放射線の研究についてだけ書いている」と答えるのが正解だと思う。逃げ方も作っているなと思ったが、教育長はそのような答えをされなかった。
次のページだが、「放射線は、体を通り抜けるため、体にとどまることなく、放射線を受けたことが原因で人やものが放射線を出すようになることはありません」、これは全く正しい。いつかだめな大臣が「放射能をつけてやる」と言ったと大問題になったが、そんなばかな話はない。通り抜けるだけだ。だが、その放射線が通り抜けるときに細胞や遺伝子に傷をつけることがある。だから、妊婦の場合は、レントゲンの撮影は避けろとなる。お医者さんがレントゲン撮影するときに、「妊娠していませんか」と聞くわけである。そういうことについては触れていない。通り抜けるだけだから大丈夫だよと書いている。
その次に、「万一、汚染してしまった場合は、シャワーを浴びたり洗濯をしたりすれば洗い流すことができます」。こんな単純なことなんだろうかという印象を持った。さらに印象だけ申し上げると、この下の挿し絵も、平気な顔をして、内部被爆する水を飲んでいる。
次のページに行くと、「自然の中にある放射線物質」。これは、初めの3ページにかけて書いたものをわざわざと丁寧に取り出している。しかも資料の出典を見ると、安全神話を宣伝していた研究協会のようなところから出ている。「放射能から身を守るには、離れたらよろしい。遮断すればよろしい。時間がくれば減ります」と書いてある。
次に、放射線と健康の関係について。16ページで、放射線とがんの関係について、「1,000人の内およそ300人が普通発生するがんの数です。100ミリシーベルトの放射線を受けると5人増える。305人になる」と書いている。こういうのは、今、科学的知見として言われている。間違ったことは言っていない。そして、「がんは、色々な原因で起こっていることが分かっています。喫煙、食事・食習慣、ウイルス、大気汚染などについて注意することは大事ですが、これらと同様に原因の1つとして考えられる放射線についても受ける量をできるだけ少なくすることが大切です」と書いているが、これも間違ったことではない。決して放射線だけでがんが起こるのではなく、たばこの方ががんになる確率は大きいかもしれない。しかし、こういう説明をずっと見たら、結局、放射線というのはそんなに怖いものではないのだということを強調する説明になっていると思う。
次のページでは、「暮らしや産業での放射線利用」。それから、仏像の中身を調べるということは、初めのところで大きく取り上げているのに、ここでもわざわざページをとって書いている。
「放射線の管理・防護」というところで、ここはかつて「津波が来ても大丈夫です。5重の防護で守られています」と書いていたところだが、今度はそうはいかないので、「モニタリングをしているので大丈夫です」と書いている。
次のページについて、教育長に感想を聞く。「非常時における放射線物質に対する防護」の中に、「原子力発電所や放射性物質を扱う施設などの事故により、放射性物質が風に乗って飛んで来ることもあります。その際、長袖の服を着たりマスクをしたりすることにより、体に付いたり吸い込んだりすることを防ぐことができます。屋内へ入り、ドアや窓を閉めたりエアコンや換気扇の使用を控えたりすることも大切です。なお、放射性物質は、顔や手に付いても洗い流すことかできます。その後、時間がたてば放射性物質は地面に落ちるなどして、空気中に含まれる量が少なくなっていきます。そうすれば、マスクをしなくてもよくなります」と書いている。そのこと自体は、原発事故から30キロ圏外の話ですと、恐らく説明するのだろう。しかし、全体として、放射能の問題は、大量に浴びたら危険だという問題と、過剰な反応になってはいけない、正確な知識を持たないといけないという2つのことをしっかりと押さえないと、一方だけを強調したのでは誤った認識になると私は思いながら読んだ。教育長、この説明を見てどう思うか。
《答弁》 教育長
この冊子については、現在科学的に考えられる範囲で、いたずらに風評被害を起こしたり、あるいは現在の段階で安全に対応できるぎりぎりの線で説明されているのではないかと思う。そういう観点から、受け止め方というのはいろいろあると思うが、国が指針として出しているのは、放射能に対して現時点での正確な認識を持ってほしいという意図だと思っている。
《質問》雑賀光夫 委員
書いていること1つ1つが正しいことでも、一面だけの情報を伝えれば、それは誤った情報になって、そして原発を持ち続けるための世論誘導になっていると私は思う。
それでは、この資料配付のための費用負担はどうなっているのか。
《答弁》 学校指導課長
この資料の配付については、国から直接送られるので、国の方の費用で対応されると考えている。
《質問》雑賀光夫 委員
来年度予算に入っているのであれば、予算に反対しなければと思っていた。
学校現場で「この副読本の使い方は、どうなるんでしょうか」、「どう使ったらいいんでしょうか」と質問もあるのではと思うが、どうするのか。
《答弁》 学校指導課長
基本的には、こういう原子力、エネルギーに関する内容についての学習は学習指導要領に定められているので、それに基づいた指導が行われていくと考えている。
一番詳しい記述があるのは中学校の理科の1分野の教科書で、3年生で習うところで出てくるが、そういったところでは、原子力や放射線の利用ということもかなり具体的に扱われている。こういった内容について、補足説明をする資料として活用できていくのではないかと考えている。
小学校では社会科、高校では理科などでエネルギーの学習もするので、そういったものと関連付けた指導が行われるものであると考えている。
《意見》雑賀光夫 委員
私の考えだけを申し上げておくと、このままの内容で子どもたちに学習させることは、書いていること1つ1つが間違っているというわけではないが、一面だけの情報を与えるということは、正しい情報とは言えない。誤った情報になる。そして、お蔵入りさせることも1つの方法だろうと思うが、これを子どもに持って帰らせる学校もあるかと思う。子どもに持って帰らせて、原子力の問題、放射能の問題を心配して親が見たら、「これは一体なんですか」と地域から声が噴き上がるのではないかと思う。
そういう点で、もし使う場合は、私が最初に申し上げた、原爆の問題、第五福竜丸の問題、大量の放射線を浴びて亡くなった久保山愛吉さんの話、原発事故の問題、そういう問題も教えて、同時に放射線を少しでも浴びたことですぐにがんになるわけではないし、そして体が放射能を帯びたり、他の子どもに影響するとした誤解からいじめにつながってはいけないということもきちんと教えなければいけない。
今、これだけ全国的に、福島原発の事故をめぐって日本中で原子力の問題を考えようというときに、国民に対して正しい知識を伝える、正しい情報を伝える、そして子どもたちにも正しい情報を伝えることが非常に大事であると思っている。
以上、意見として申し上げる。
議案に対する採決
議案第56号 教育職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
議案第57号 市町村立学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
議案第58号 和歌山県立図書館協議会条例の一部を改正する条例
議案第60号 和歌山県博物館協議会条例の一部を改正する条例
議案第61号 和歌山県立学校等職員定数条例の一部を改正する条例
は、全会一致で原案可決