2012年2月県議会
雑賀光夫 一般質問 概要記録
2012年3月7日

1.日中国交回復40周年にあたって
(1)南方熊楠と孫文の出会いの地を日中友好のシンボルに
(2)中国をはじめとする外国人観光客の誘致について

2.同和行政の終結について
(1)子ども会補助金について
 @ 子ども会の種類、地域によっての補助金の大きな違い
 A 廃止されたはずの「同和行政」の名残ではないか
 B 「同和行政」をつづける施策に補助金を出すのか
 C 「外部監査」の指摘を受けて和歌山市と協議は?
    この補助金制度をあらためてはどうか

 D 以上のやりとりを踏まえて知事はどう考えるか
(2)「同和教育基本方針」廃止について
 @ 状況が変わったもとで、「同和教育基本方針」は廃止を
 A 「人権教育基本方針」では対応できない人権課題はあるのか
(3)「和歌山の部落史」について

3.低周波被害と自然エネルギー開発
(1)由良町での低周波被害の訴えについて
(2)風力発電による健康被害の訴えの全国状況認識
(3)因果関係が疑われる場合は、業者は誠実な態度を
(4)木質バイオマス普及への支援について
(5)部課を縦断した問題への対応と自然エネルギー推進の体制について

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1.日中国交回復40周年にあたって
《質問》雑賀光夫 県議
 議長のお許しを得ましたので、質問に入らせていただきます。
 第一の柱は、日中国交回復40周年にあたって、日中友好の推進です。
 私は、県議会に出させていただいて間もなく、和歌浦観光について申し上げたことがあります。それは、和歌浦という地は、多くの歴史的・文化的遺産をもっているということを踏まえたものでした。まず万葉の地です。さらに江戸時代にこの地を訪れた松尾芭蕉は、「行く春を和歌の浦にておいつきたり」の句を残しています。文豪・夏目漱石との関係もお話しました。
 その和歌浦は、知の巨人・南方熊楠と中国の国父といわれる孫文が再会し、旧交をあたためた地であります。南方熊楠は、ロンドンに渡っていた当時、亡命中の孫文と、大英博物館で知り合い、三日をおかず語り合いました。
 その後、日本に亡命した孫文は熊楠に会いたいと和歌山にやってきた。芦辺屋という料理旅館で二人は、旧交を温めたのでした。
 南方熊楠にとって、孫文というのは、特別な存在です。医者でもあった孫文は、熊楠のために亡命先で粘菌を採集して送ってきたこともある。中国革命が成功したら、中国に植物園を作りたいという夢を語り合ったといいます。昨年は、孫文がひきいた辛亥革命100年の年でした。
 神戸にある孫文記念館からは「孫文と南方熊楠」という立派なパンフレットがつくられています。
 私は、県議会質問で、「熊楠と孫文の再会の地を、日中友好のシンボルにし、中国からの観光客にも来ていただくようにしたらどうか」と提案したのでした。
 このたび、芦辺屋跡に「再会の地」であることを示す案内板が設置されます。それにあわせて、「記念のつどい」が開かれます。
 お手元にお配りしているパンフレットは、この集会への案内もかねて、日中友好協会和歌山県連として、中国在大阪総領事館を訪問し、昨年末着任されたばかりの劉毅仁(りゅうきじん)総領事と懇談したときの記録です。
 案内板設置への運動の経過とともに、私たち日中友好運動のスタンスも明らかにしております。
 私たちの日中友好運動は、第一に、日本の侵略戦争の反省に立って、日中不再戦ということを基本においています。
 第二に、対等平等の友好関係。かつて中国の文化大革命の時代に、毛沢東語録をふりかざして、日中友好をすすめる団体もあったなかで、そういうことは、断固として拒否してきた団体であります。
 現在、日本と中国の間には、領土問題など意見の違いがある。意見の違いを友好のさまたげにしないが、いうべきことは堂々と言う。
 私は、懇談の最後に、「私たちは友好の基礎に、日本国憲法9条の精神を置きたいと考えている。そうなれば、中国も今のように軍事力増強は必要ないではないか」と申し上げたことをパンフレットに紹介しています。
 この訪問では、総領事からは、掲示板ができる記念の集いには、必ず代表が参加すること、日中国交回復40周年の今年は、中国からも多くの人が関西にくるだろうという見通しも語られました。
 そこでお伺いします。
(1)南方熊楠と孫文の出会いの地を日中友好のシンボルに
 第一に、日中国交回復40周年の年、孫文・熊楠の出会いの地を、日中友好のシンボルとして大事にしていきたいという私たちの考えについて、知事はどう思われるでしょうか。


《答弁》 知事
 本年は日中国交正常化40周年の記念すべき年にあたりますけれども、その間両国は経済交流や人的交流を積み重ね、今では中国が日本にとって最大の貿易相手国になるなど、お互いに不可欠の存在となっております。
 本県と、とりわけ山東省とは友好提携に基づきまして、経済や観光、あるいは環境の協力など幅広い分野で協力関係を築いております。
 民間レベルでは、唐の僧為光(いこう)上人により開かれた紀三井寺に、当時の中日友好協会会長廖承志(りょうしょうし)さんの揮毫による「中日友好千年萬年」と記された記念碑が建立されておりまして毎年両国の関係者による顕彰式典が開催されるなど、積極的に交流を進めているところであります。
 加えて、議員ご紹介のとおり、郷土和歌山が世界に誇る博物学者「南方熊楠」と中国革命の父「孫文」が、旧交を温めようと再会を果たした場所が和歌浦にある訳でございます。
 これらを有効に活用いたしまして、和歌山と中国の関係に厚みを増していきたいと思っております。


(2)中国をはじめとする外国人観光客の誘致について
《質問》雑賀光夫 県議
 第二に、当初予算の説明でも、中国をふくめて多くの観光客を迎え入れることが強調されています。孫文・熊楠の出会いの地でもあり中国文化とゆかりの深い和歌浦を含めて和歌山県内に中国をはじめ外国人観光客を呼び込むことで、どういう構想をお持ちでしょうか。商工観光労働部長からお答え下さい。


《答弁》 商工観光労働部長
 中国をはじめとする外国人観光客の誘致への取り組みについてお答えします。
 海外からの観光客の誘致は、本県の観光振興のための大きな柱の1つであり、県としましては、誘致対象となっている国ごとの嗜好を踏まえた効果的かつ積極的な誘客活動を展開しているところです。
 昨年は、東日本大震災やそれに伴う福島第一原子力発電所事故の影響等によりインバウンドにとって厳しい状況下にありましたが、少しずつ回復の兆しもみえつつあります。
 新年度においては、南紀白浜空港を活用し、中国などアジア地域を対象としたチャーター便の更なる誘致に取り組むとともに、外国人観光客が快適かつ安全に県内を周遊できるよう多言語案内板の整備・充実や外国人対応能力向上研修の実施など受入環境の整備を図ることとしており、中国をはじめとする外国人観光客の増加に向けて積極的に取り組んでまいります。


2.同和行政の終結について
(1)子ども会補助金について
@ 子ども会の種類、地域によっての補助金の大きな違い
《質問》雑賀光夫 県議
 第二の柱は、これまでも何度か取り上げてきた、同和行政の終結という問題です。
 まず、お手元に子ども会補助金の表があります。
 「地域総合子ども会」と「地域集団子ども会」という二つの子ども会施策があります。「地域総合」の中でも、和歌山市のDという子ども会の年間補助金は、500万円です。ところが、「地域集団」という子ども会補助金は、年間6万円です。
 「地域総合子ども会」でも、和歌山市と他郡市では、かなり大きな開きがあります。有田市の子ども会は、50万円です。どうして、こうした開きが生まれるのでしょうか。


《答弁》 環境生活部長
 地域子ども会活動支援事業としまして「地域総合活動」と「地域集団活動」の2種類の補助制度があります。
 「地域総合活動」とは、年間活動日数が50日以上、かつ活動内容が「学習活動」、「体験活動」、「交流活動」、「指導者養成」の4種のすべての活動を行う子ども会に年56万円を上限に、県がその1/2以内を市町村に補助しているものです。一方、活動日数が50日に満たずとも、年間12日以上行われ、4つのうち2つ以上の活動を行う子ども会に対して、「地域集団活動」として、年間12万円を上限に同様の補助をすることとしております。
 議員御指摘のD地域には、それぞれ独立した10の子ども会があり、和歌山市が活動内容を評価し、補助しているものです。同市は1子ども会に対する「地域総合活動」の上限を50万円としており、各子ども会に対し50万円を交付しています。50万円交付を受ける子ども会が10子ども会となれば500万円となります。一方、同市の「地域集団活動」子ども会については、市は上限を県の要綱で定める上限の半分の6万円としておりまして、年間6万円が交付されております。
 また、有田市の子ども会は、同市の定める上限50万円が支給されており、和歌山市と同じであります。


A 廃止されたはずの「同和行政」の名残ではないか
《質問》雑賀光夫 県議
 お答えいただいたように、二つの種類の子ども会では、補助金の基礎がちがう。その上に、たくさんの子ども会があるということで申請すれば、500万円もの予算が下りる仕組みになっています。
 これは、ゆがんだ同和行政を引きずったものではないかと前から申し上げてきたのですが、同和行政ではないのですか。


《答弁》 環境生活部長
 交付基準を満たせば県内のどの地域の子ども会活動にも予算の範囲内で補助するもので、対象が旧同和地区内にあるかどうかは問うておりません。


B 「同和行政」をつづける施策に補助金を出すのか
《質問》雑賀光夫 県議
 これは旧同和地区であるかどうかに関係ない、同和行政ではないというお答えであります。
 ところが、どうみても法外の補助金が、とくに和歌山市の特定の子ども会に出されている。このことが、和歌山市の平成21年「外部監査」でとりあげられました。
 外部監査人は、「県からの補助金と市からの補助金を合わせると全額補助されていることになっている。」「これでは経費削減のための自助努力のインセンティブが働かない」という趣旨の指摘をした。
 和歌山市はそれにたいして「同和問題の解決は、行政の責務であるとの考えにより…『市長が特に必要と認めるもの』であり補助率についての100分の100の交付金になっております。また、各子ども会の自主財源もほとんどありません」と説明している。そのことをご存知でしょうか。
 県では、同和行政でなく一般行政だと言っている。ところが、和歌山市は、「同和行政です」と説明している。これを、補助金を出している立場から、どう考えますか。


《答弁》 環境生活部長
 和歌山市の「外部監査」に対する説明は承知しております。
 県は、基準を満たせば予算の範囲内で市町村に交付するもので、どの団体に補助するかにつきましては市町村が判断しているものです。


《コメント》雑賀光夫 県議
 要綱にそって補助金を出していると言っているけれども、県の方では一般行政としての補助金だといっている。ところが、和歌山市は、同和行政だと言ってこの補助金を受けている。おかしいのではないかという指摘をして、つぎにいきたいとおもいます。

C 「外部監査」の指摘を受けて和歌山市と協議は? この補助金制度をあらためてはどうか
《質問》雑賀光夫 県議
 ここで申し上げる同和行政というのは、「同対審答申」と「同和対策事業特別措置法」にもとづく行政施策を指しています。
 旧身分の線引きというものは、国民の中にあってはならないものです。しかし、かつては、同和地区内外の生活・教育などの格差は、あまりにも大きかった。そこで、地域の線引きをしてでも、特別な行政施策をあえてしました。そのことについての国民的合意が「同対審答申」であり、その法制化が「特別措置法」でした。多くの予算がつぎ込まれましたが、そのことは大きな意義があったと思います。しかし、その結果、あることころまで格差が小さくなると、「線引き行政」をすることの弊害が大きくなる段階にきました。同和施策を利権にしようとする団体が現れたことが、その弊害をさらに大きくしました。
 そこで特別行政としての同和行政は、廃止されたのです。
 そのことを無視して今なお同和行政をつづけるという和歌山市の考え方も問題ですが、県の施策が、和歌山市のやりかたを許すような、制度的枠組みを作っていることも大きな問題です。
 「地域総合」「地域集団」という補助金の大きな格差をつくっていること、「地域総合」の方は、人数さえ登録すれば、10もの子ども会があることにして、そこに補助金が出る仕組みであります。
 和歌山市の外部監査でも「補助対象要件を満たす子ども会を多く作るために、作為的に子ども会を設けることを可能にしており、制度の趣旨から考えて妥当とはいえない」と指摘しています。また、「領収書等を確認したところ、A地区全体でとりまとめて提出されていた。」実績報告も「一字一句同一になっていることも、個々の子ども会には活動の実態がないことを裏づけるものである」としております。
 このことは、私も県議会の質問で指摘しました。たとえば子ども会のスキー行事にいったという報告がある。9つの子ども会すべての事業報告も予算報告も端数までおなじ文言・数字になっていた。これは虚偽報告ではないか。県としても行政監査してくださいとお願いした。そのことを、和歌山市の監査人が指摘したわけであります。県の制度が和歌山市のそういう問題のある運営を許す枠組みになっていると思います。
 そこで質問ですが、和歌山市は「外部監査」の指摘に対して、「県と協議する」と答えていますが、和歌山市からの協議はあったのでしょうか。
 また、このシステムを改めるつもりはありませんか。


《答弁》 環境生活部長
 和歌山市から「外部監査」を受けての協議の申し出は、現在までありませんので、どのような内容なのかも私どもは把握をしておりません。
 なお、県としましては、組織的、継続的な子供たちの集団活動を通じて、子供の健やかな育成を推進している市町村に対して、引き続きこの補助金を通じて支援をしていきたいと考えております。


《再質問》雑賀光夫 県議
 「和歌山市から協議の申し入れはなかった」ということはわかりました。
 このシステムはまだつづけるというお考えのようですから、再度おうかがいします。
 和歌山市の監査人の指摘は、「実績報告は、逆に実態がないことをうらづける」虚偽の報告であることを指摘しているのです。補助金を出した県として、それでも書類さえととのえば補助金は出し続けるのでしょうか。
 事実上1つの子ども会に年間500万円の補助金がだされている。いっぽう、親子クラブなど他の子ども会には、6万円であったり、15万円であったりの補助金しか出されていないという実態がある。部長は、こんな状態が、不自然だとおもわないのでしょうか。


《再答弁》 環境生活部長
 まず、補助金は出し続けるのかというご質問ですけれども、和歌山市に対してもヒアリングや検査を行い適正に執行するよう指導をしているところです。今後も申請が出された時には、要綱に基づき適切に処理してまいります。
 ご指摘の補助金は、それぞれの要綱・要領に基づき市町村に補助するものですが、対象とする団体の設立の趣旨や活動内容に応じ、別の制度となっております。どの制度を活用するかにつきましては、市町村において十分検討されているものと考えています。


《コメント》雑賀光夫 県議
 特定の子ども会に500万円という法外な補助金が出される。そうすると、その子ども会に所属する子どもたちは幸せになるのでしょうか。決してそうではありません。運動会をすれば、山ほど賞品やお土産をもらってくるという話がだされたことがあります。ありあまる補助金まかせに贅沢なことも会運営をして、こどもたちが幸せになるはずがない。

D 以上のやりとりを踏まえて知事はどう考えるか
《質問》雑賀光夫 県議
 以上のやりとりを踏まえて、知事はどういう感想をお持ちでしょうか。


《答弁》 知事
 やりとりを踏まえての感想ですが、その前にこの資料を拝見いたしますと、500万円という所にマルが書いてありまして、字も大きいし目立つんですけれども、ところが他の所も400万円とかいろいろあるようで、なんでここだけマルしたりするのかなというのが私はよくわからなくて、少なくとも議論の所だけであれば、そんなに問題にすることなのかなという感じがします。
 子ども会活動は、保護者や指導者のもと地域の子どもの健全育成を目的として異なる年代の子どもたちが集まり活動するもので、地域の連帯意識を育て、校外における様々な遊びや、学習を通した子どもたちの健やかな成長を目的とする有意義な活動であると認識しております。
 県としては、先ほど環境生活部長が答えたルールに従い適正に対処しておりますし、また、そうしなければいけないというふうに考えております。


《コメント》雑賀光夫 県議
 このやりとりは議事録となって、私はそれをパンフレットにして皆さんにお配りします。県民のみなさんは、県当局の説明に納得するとは思いません。仁坂知事は、私よりどちらかといえば右よりだと思いますから、私とは意見が違う問題もございます。しかし、今日議論した問題で、知事は、十分に理性的・合理的な判断をできるかただと思っています。二期目になるのですから、今期の間に、けりをお付けになるように期待いたします。

(2)「同和教育基本方針」廃止について
《質問》雑賀光夫 県議
 次に、「同和教育基本方針」について教育長にお伺いいたします。時間の関係で二つの項目について、あわせて答弁をおねがいします。
@ 状況が変わったもとで、「同和教育基本方針」は廃止を
 「和歌山県同和教育基本方針」というものは、昭和48年(1973年)に制定されたもので、先に申し上げた、同対審答申と特別措置法の趣旨にのっとることがその前文で明記されているものです。その時代には、大きな意味のあるものでした。しかし、時代はすすみ、同和問題をめぐる状況は変わりました。
 こうした状況のなかで、「和歌山県同和教育基本方針」は廃止するのが適当であると思います。
A 「人権教育基本方針」では対応できない人権課題はあるのか
 続けてお伺いします。教育委員会は、「人権教育基本方針」というものをもっています。その前文で、同和教育が果たした役割について高らかに謳いあげています。同和問題の残された課題も含めて、人権教育方針は、十分対応できるものになっていると思うのですが、人権教育基本方針では対応できない、同和教育基本方針でなくては対応できない人権課題があるのでしょうか。


《答弁》 教育長
 「同和教育基本方針」に関わって二点、合わせてお答えしたいと思います。
 これまで多くの県民の方々の努力によりまして、同和問題は解決に向けて大きな成果を上げてまいりました。しかしながら、依然として、差別事件等の発生や地域や学校によっては、児童生徒の学力や生活面などに課題が残されている状況がございます。教育委員会といたしましては、教育の果たす役割を重く受け止め、「和歌山県同和教育基本方針」の理念に基づき、同和問題の解決に向け、必要な取組を推進していくことを基本認識といたしております。
 なお、教育委員会では、現在、幅広い観点から総合的に人権教育を推進するため、その指針となる「和歌山県人権教育基本方針」の具現化に向けた、様々な取組を行っているところでございます。
 「和歌山県同和教育基本方針」につきましては、先程、申し上げましたように、依然として残されている、同和問題の解決に向けた取組を進める上で、重要な理念を示したものであると捉えておりまして、今後とも、その理念に基づいた取組を進めていく必要があると考えております。


《再質問》雑賀光夫 県議
 私がお聞きしたことの答弁になっていません。人権教育方針で対応できない人権課題があるのかないのか、お答え下さい。


《再答弁》 教育長
 再度、お答えいたします。先程、申し上げましたけれども、現在、依然として、同和問題の解決に向けた、様々な課題が残っている状況でございますので、「和歌山県同和教育基本方針」の理念に基づいた取組を進めていく必要があると考えてございます。


《再々質問》雑賀光夫 県議
 私も改めて「同和教育基本方針」と「人権教育基本方針」を読み返してみました。「人権教育基本方針」というものは「同和教育基本方針」の伝統成果というものを高らかに謳いあげ、その精神を受け継いでいる。同時にその様々な課題の中に、同和ということもあげて書いている。
 ですから「人権教育基本方針」で対応できない課題があるのかどうかという質問については、まだお答えになっていないと思いますが、いかがでしょうか。


《再々答弁》 教育長
 先程来、申し上げておりますように、今なお、同和問題を含む差別事象が発生している状況をきちんと、我々としては受け止めてございます。そうした観点で「人権教育基本方針」を含めて現在、「同和教育基本方針」の理念そのものを大事にしながら、同和問題の解決を進めていきたいというのが私どもの基本的な考え方でございます。


《コメント》雑賀光夫 県議
 まったく答えになっていません。私の質問には答えようがなかったと解釈しておきたいと思います。
 「同和教育基本方針」は「教育上の特別の配慮」という項を起こしています。それは、廃止された「特別措置法」の考え方です。私は、県議会で、高校入試にあたって、旧同和地区関係生徒に「地区」「子ども会」などという、同和地区出身であることを示す「特別内申」が行われていたことの重大な問題を指摘しました。それは「基本方針」の下でも賛否意見があると思いますが、過去の同和特別行政をひきずっているから、こうした問題が起こったともいえると思います。ですから、こうしてしつこく「同和教育基本方針」の廃止を訴えるのです。


(3)「和歌山の部落史」について
《質問》雑賀光夫 県議
 第三に、「和歌山の部落史」についてお伺いします
 「和歌山の部落史」が企画されたとき、新しい企画であり、10年もの長い間、予算を投入する企画でありながら、予算説明がされない不明朗さを指摘しました。「部落史」ということを切り取った歴史研究が必要なのか、税金を投入することが適当なのかについての疑問を表明しました。(04年6月及び05年2月)
 補正予算では減額補正もありましたが、「和歌山の部落史」の事業は、どう進んでいるのか。当初の計画と比べてどうなのか。期間内にできあがるのか。企画部長にお伺いいたします。


《答弁》 企画部長
 「和歌山の部落史」につきましては、総事業費2億1250万円で平成26年度までに史料編4巻、本文編3巻の発刊が予定されていました。
 しかし、高野山文書など部落史に関わる史料が多数収集されましたことから、史料編6巻、本文編1巻に計画変更されました。
 そのうち、これまで史料編が2巻発刊されており、残りの史料編4巻、本文編1巻につきましては、当初計画通り平成26年度までに発刊される見込みとなっております。
 また、事業費につきましては、支出経費の圧縮が図られ、当初の予定より縮減されてきております。
 今後とも、社団法人和歌山人権研究所に対し、発刊が計画通り進められるよう、適切な進行管理を行ってまいります。


《コメント》雑賀光夫 県議
 ここに出来上がった分をお借りしてきましたが、当初の計画通りなら、1冊1万8千円の本に一冊あたり6万円程度の補助ということになります。専門家しか読まない本ではないでしょうか。
 研究者のみなさんの中には、これまで秘蔵されていた高野山文書が公開されるのでよろこばれる方もいらっしゃる。通史3冊が1冊になって、資料編がふやされるという。いっそのこと、資料編だけでもいいとおもいます。県民負担は、さらに圧縮していただきたいと思います。
 高野山には、こうした資料を研究者に公開していただけるようにお願いしたいと思います。


3.低周波被害と自然エネルギー開発
《質問》雑賀光夫 県議
 第三の柱として、風力発電による低周波被害と自然エネルギー開発についてお伺いします。
 私たち共産党は、「原発からの撤退」を進める立場から、自然エネルギーの思い切った開発が必要だと考えています。その中には、太陽光、小水力、風力、バイオマス、地熱、潮力などがあります。
 風力発電もその重要な一つですが、全国で低周波被害が報告されています。私も、県議会で海南市・下津町での被害の訴えを紹介しました。あの質問をきっかけに、全国的なネットワークから情報が寄せられるようになりました。その中で、由良町に低周波被害で苦しんでいる方がおられるという情報がはいって、お会いしてまいりました。
 低周波被害と言うのは、個人差がありますから、周りの方の理解がえられず、被害者は聞いてもらえそうなところにどこにでも訴える。それで、全国ネットから、私に情報がよせられたのです。どこに相談していいのか分からないで苦しんでいる被害者が、由良にも何人かいらっしゃるし、そのほかにもおられるかもしれません。

 昨夜、そのネットワークからメールがとどきました。
 「和歌山県議会ライブ中継」という表題です。
 「ライブ中継は、現在視聴しています。時々、和歌山弁が聞けて、ローカル色豊かなライブです。開かれた和歌山を楽しんでいます」
 「明日の一般質問を、全国から注視していると思います。午後1時からと連絡しています。良い一般質問となりますよう、心から願っています。頑張ってください」
 全国から注視されているとおもうと緊張しますが、予定原稿にもどって質問をつづけます。

 そういう中で、将来的に風力発電をすすめる上でも、この問題に行政としても正面から向き合う必要があると思います。そこでお伺いします。
(1)由良町での低周波被害の訴えについて
 まず出発点は、風力発電風車周辺で、健康被害の訴えがあるかどうか、それをつかむ問題です。これは、保健所の仕事です。私のところに由良町の方からも健康被害の訴えがあるのですが、県行政としてそういう訴えを把握しておられるでしょうか。福祉保健部長にお伺いいたします。


《答弁》 福祉保健部長
 御坊保健所では、由良町畑地区在住の方から、夜中眠れない、耳が痛くなる等の相談があったことを受けて、現況の把握に努めています。
 今後とも、地域の方からの健康相談については、保健所が実施するクリニックやこころの健康相談等で対応していきたいと考えていますが、現在のところ、健康被害と風力発電の因果関係が明らかになっていないため、国等でしっかりと調査を行うことが重要であると考えています。


(2)風力発電による健康被害の訴えの全国状況認識
《質問》雑賀光夫 県議
 福祉保健部長から、被害の訴えの一端が紹介されました。いま、全国で風力発電の周辺で、被害の訴えが多発していることをご存知でしょう。環境生活部長はどういう状況認識をお持ちでしょうか。


《答弁》 環境生活部長
 平成22年に国が行いました苦情等の発生状況調査によりますと、全国389箇所の風力発電所のうち、騒音・低周波音の苦情が寄せられたか、要望書が提出されたことがあるものは64箇所と把握しております。
 風力発電施設からの低周波音の影響につきましては、客観的かつ適切な評価及び対策ができますよう、環境基準の早期設定に向け、政府提案を現在行っているところです。


《コメント》雑賀光夫 県議
 苦情や要望が出された箇所数をお答えいただいたのですが、その一箇所、一箇所での血の出るような被害者の叫びをうけとっていただいているのかという思いがいたします。
 下津でも低周波の測定をやっていただいているわけですが、環境省が規制基準をもっていない、あるいは参照値という数値を下回っているため、企業に対する規制や指導はできないと言う説明が返ってきます。そこで「環境基準の早期設定」を政府に提案しておられる。それはそれでけっこうです。
 しかし、このたびの由良での被害の訴えの心配をしていただいている成蹊大学理工学部の岡田健先生から、レポートが送られてきました。その一つの冒頭に次のようにかかれています。
 「風車周辺の住民に発生する生理的障害は風車が停止するとその疾患も消失することから風車の稼動が原因であることは疑う余地もない」目からうろこという思いがしました。
 低周波の測定は、環境問題の研究としては大切ですが、被害者にとっては、低周波であるか、高周波であるかは関係ない。風車が動いているとき症状があり、風車がなければ症状がないということで、因果関係は明らかです。ところが、低周波との因果関係が明確にならないと行政は対応できないと言うことになっているところに落とし穴があることに気づきました。そのことを指摘して、次に行きます。

(3)因果関係が疑われる場合は、業者は誠実な態度を
《質問》雑賀光夫 県議
 県内では56基の風力発電が稼動しており、さらに89基の計画があるとお聞きしています。発電能力では、3倍に近くなる。そのなかに海南市と有田市のあいだで、風力発電を計画している安藤建設という会社があります。この会社は、「風車を建設して、気分が悪くなる方がいらっしゃれば、医学的根拠は別として事業者の責任で考えるべき」と文書で住民に説明しています。
 ところで私が取り上げた下津町の健康被害では、被害者は住居を移しています。そこでは症状はでません。そこから車でみかん畑に通うという、大変な経済負担も強いられていますが、風力発電会社は、被害者の経済負担にさえも、対応しようとはしていません。
 
現に風車が動いているところでも「風力発電の稼動が原因である健康被害には、医学的根拠はべつとして、誠実に対応する」という態度を、風力発電会社に求めたいと思うのですが、商工観光労働部長は、どうお考えでしょうか。


《答弁》 商工観光労働部長
 議員お話しの海南市と有田市の間で風力発電事業を行っている企業は、県とともに測定を継続して行い、その都度、関係者に説明するなどの対応を行っていることを承知しておりますが、一般的には、風力発電と健康被害との因果関係が明らかにならない段階で、企業が対応するのは難しいのではないかと考えます。
 いずれにしましても、それぞれの企業が自社のコンプライアンスにのっとって誠実に対応されていくものと考えておりますが、県としましては、今後とも企業の対応を十分に注視してまいります。


《コメント》雑賀光夫 県議
 「因果関係が明らかにならない」とおっしゃいますが、低周波との因果関係は、環境省が基準をつくっていないために、規制できない。しかし、風力発電風車が設置されて、健康被害がおこった。風車から離れれば症状はなくなるという意味では「因果関係」は明らかです。住民に対する責任をもつという立場をはっきりさせれば、会社は株主への説明責任はつけられるはずです。わざわざ問題を難しくして、コンプライアンスに逃げ込んでいると思えてなりません。後ほど、知事にしっかりした対応する構えをお願いしますので、次へ行きます。

(4)木質バイオマス普及への支援について
《質問》雑賀光夫 県議
 さまざまな自然エネルギーを追求していかなくてはなりません。その中で、「紀州木の国」といわれる和歌山で、バイオマスについての先進的な取り組みがあります。先日、共産党県議団で、森林組合でも力を入れている木質パウダーのとりくみを見せていただいてきました。木質パウダーの工場は御坊市にあります。全国的に木質ペレットストーブというのはよくあるのですが、木質パウダーも方は、石油やガスと同じように瞬時に火をつけたり消したりすることができるという利点があります。また、蚊取り線香の材料にもつかわれ、蚊取り線香会社は、それを加工してさまざまな用途に販売している。「いくらでも持ってきてくれれば引き取る」と言われているそうです。
 県としていっそうの支援をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。商工観光労働部長にお伺いいたします。


《答弁》 商工観光労働部長
 木質バイオマス普及への支援についてですが、平成21年度に、県森林組合連合会御坊事業所に設置した木質パウダー製造施設に対して、事業費6383万4千円のうち、県では1461万4千円を補助しております。
 これは、議員お話しのとおり、木質パウダーという先進的な取組に対して、県内の木質バイオマス利用推進の呼び水となるよう支援したものです。
 再生可能エネルギーが普及するためには、事業として成立するよう様々な面で支援していくことが大事だと考えておりますので、今後とも、国に対する働きかけはもとより、日高川町、県森林組合連合会、及び地元森林組合と一緒になって、原料の搬出コストの削減や木質パウダーの新たな用途を探るなど、共に汗をかき知恵を出しながら事業を支援してまいります。


(5)部課を縦断した問題への対応と自然エネルギー推進の体制について
《質問》雑賀光夫 県議
 私は、昨年9月の県議会で、自然エネルギーの開発が急がれるとき、県の施策はバラバラではないかと申し上げ、知事は、「商工観光労働部で一括してやっている」とお答えになりました。私は、さらに突っ込んだ総合体制が必要だと感じています。
 私たちは原発を再稼動させないという立場です。現に再稼動が困難な状況がうまれています。自然エネルギー全量買取制度7月開始の中で、自然エネルギー事業が広がりつつあると思います。県の総合的な開発・普及のとりくみは、どうなっているのでしょうか。自然エネルギー開発、和歌山県でのその可能性を追求する、そのために被害の訴えにも対応する、そういう部課を横断したようプロジェクトを立ち上げる必要があると思うのです。県庁の職員は優秀です。体制をとってその任務をはっきりさせれば、私の期待に応えてもらえると思うのです。知事、いかがでしょうか。


《答弁》 知事
 本県は全国有数の日射量を誇り、未利用地も都会に比べ多く、森林資源も豊富など自然エネルギーの開発には適していると思います。この問題は大変大事でございますので、明確なミッションを与えて産業技術政策課に主管をさせております。もちろん、様々な問題が生じまして、産業技術政策課だけで権限的に取り扱えないこともございますので、それは皆集まって、それぞれ役割分担をしながらやっておるわけでございます。
 9月議会でも申し上げましたように、自然エネルギーについては既に商工観光労働部産業技術政策課が一元的な窓口になっており、これを作っていなかったことが若干問題ではありましたが、最近ではきちんと作っておりまして、御指摘の点も踏まえて、様々な事象に対して関係部局を横断した形で対応を行っているところでありまして、私もしっかり見張って、全庁的連携を欠くことがないようにしたいと考えております。


《要望》雑賀光夫 県議
 原発が再開できないかもしれない。その特別なときです。自然エネルギーの開発も、低周波被害への対応も、まだまだこれからです。
 静岡県は、危険な浜岡原発の操業が、とりあえずストップされました。そこで自然エネルギーですが、伊豆半島は、風力発電の適地のようですが、低周波被害が問題になります。そこで、風力発電をはじめとする自然エネルギーについての有識者会議を開いています。一年にも足りない期間で、十分な結論が出るわけではありませんが、それなりに県民的論議の材料を提供しています。
 そこでの有識者は、風力発電根の期待や可能性とともに、風力発電には、低周波による健康被害の訴えがあるという問題を、共通して直視しています。
 将来的に風力発電をすすめる上でも、この問題に行政としても正面から向き合う必要があるという最初に申し上げたことを申し上げ、被害を訴える方の声に、知事を先頭に行政全体で応えていただけるようにお願いして、質問を終わります。ありがとうございました。



  知事の答弁を聞く、雑賀光夫県議=3月7日

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2012年2月県議会、雑賀光夫 一般質問=3月7日
2012年2月県議会、雑賀光夫 一般質問=3月7日