和議第86号
司法の場における発達障害者への適切な対応を求める意見書(案)
平成24年7月30日、大阪地方裁判所において、アスペルガー症候群と精神鑑定された被告の殺人事件で、検察官の求刑(懲役16年)を上回る殺人罪の有期懲役刑の上限となる懲役20年の判決が言い渡された。判決文においては、被告人にはアスペルガー症候群の影響があるものの未だ十分な反省に至っておらず、また、アスペルガー症候群に対応できる社会内の受け皿がない状況の下では再犯のおそれが更に強く心配されることから、許される限り長期間刑務所に収容することで内省を深めさせる必要があり、そうすることが社会秩序の維持に資するとするものであった。
この判決においては、アスペルガー症候群をはじめとする発達障害者の特性が正しく理解されず、司法の場における量刑決定までの過程において適切な対応がなされていないという大きな問題を有するとともに、発達障害者に対する偏見や差別を助長するおそれがあるとの意見も寄せられている。
よって、国においては、発達障害者に対する適正な裁判が行われるような制度を確立されるとともに、事件を起こした被告の社会復帰に向けた支援体制を構築するため、次の措置を講じられるよう強く要望する。
記
1 適正な裁判が行われるための対応
(1) 捜査段階における心理・福祉等の専門家等による立会い
(2) 取り調べにおける可視化
(3) 公判段階における適正な手続きの確保
(4) 司法・警察関係者の発達障害に対する理解の促進
2 事件を起こした被告への対応
(1) 受刑中の発達障害者の特性に応じた処遇プログラムの提供
(2) 専門的な医療施設の設置
(3) 社会復帰を想定した支援体制の構築
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成24年 9月28日
和歌山県議会議長 山下 直也
(提 出 者)
大沢広太郎
長坂 隆司
雑賀 光夫
角田 秀樹
山下 大輔
(意見書提出先)
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣
法務大臣
財務大臣
厚生労働大臣
国家公安委員会委員長