2012年9月県議会 高田由一 一般質問 概要記録
2012年9月24日
議会中継録画
1.紀の国森づくり基金活用事業について
(1)調査結果と今後の対応
(2)県当局の姿勢について
(3)事業のあり方
  ・紀南病院の例
  ・芳養漁港の例
(4)今年度事業について
(5)反省点と今後の事業のあり方

2.津波からの避難対策
(1)内閣府の新規定
(2)避難路整備
(3)自主防災組織について
(4)観光地の課題
(5)新しい特別措置法へむけて(要望)

3.木造住宅の耐震化推進
(1)予算の執行状況
(2)現地見学会について
(3)耐震診断後のフォロー

4.過疎地でのガソリンスタンド問題
(1)ガソリンスタンドの数と対策
(2)支援策

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1.紀の国森づくり基金活用事業について
《質問》高田由一 県議
 地方紙での報道をきっかけに紀の国森づくり基金活用事業の補助金をめぐって不適正な使用があるのではないかと指摘をされております。
 7月26日つけの紀伊民報では、田辺市の宮田元市議が関与した8団体が平成19年からこれまでに3700万円あまりの県補助金を受け取り、そのうち2800万円がある福祉団体に苗木代などとして領収されたことになっているが、実際その福祉団体に入ったお金は530万円程度で、残りの2300万円が使途不明になっているというものです。
 また、8月9日つけの同紙では、関連団体のうち紀南ユネスコ協会という団体で、協会の役員も承知していないのに、県の森づくり基金活用事業の補助金を受けていたことを報道。内部調査の結果、前会長の宮田元市議が、公印を勝手につかって事務手続きをしたことが判明、謝罪の記者会見を行ったものです。
 これらのことを見るだけでも、宮田元市議が自らが関与する団体さえ欺き、嘘の領収書を使って実績報告をでっちあげた補助金不正請求事件だといわざるをえません。
 現在、県もこの件について調査中ということですが、最初に問題を指摘されたのが7月下旬ですからもう2か月が経とうとしています。県民、市民からは「いったいどうなってるんな」と憤りの声が聞かれます。

(1)調査結果と今後の対応
 そこでまず、一番目、この事件に関しての調査結果と今後の対応について農林水産部長の答弁をお願いします。


《答弁》 農林水産部長
 本件については、7月下旬から調査に着手し、平成19年度から23年度の5年間に、6団体2実行委員会に対して、「紀の国森づくり基金活用事業」と「緑の募金事業」で交付した3880万円を対象に、補助金交付団体からの聞き取りや、領収書発行者など関係取引先への問い合わせ等を行った結果、実績報告書に記載された苗木の購入内容と実際の取り引きとの相違や、こうして捻出された財源の流用等、不適正な支出がなされていたことが明らかになりました。
 苗木の購入先とされている福祉団体については、関係団体からの要請で苗木の育成を行い、その代価として金銭を受け取っていたとお聞きしております。
 関係書類が非常に多いため、分析に時間を要しておりますが、不適正支出については、県補助金等交付規則に照らして厳正に対処するとともに、再発の防止に必要な対策を講じてまいりたいと考えております。


《再質問》高田由一 県議
 答弁をいただきましたが、部長の答弁の中に、苗木代は育成することに対する対価として受け取っておられるといいましたが、私どものその団体への取材でも「苗木は販売していない」と言われておりますし、だいたい福祉法人としての会計処理は、寄付金扱いで処理をされています。県の出した補助金が福祉団体への寄付金に化けている。これはおかしいと思います。
 部長に再度、うかがいます。この森づくり事業の事業実施要領のどこを見ても苗木の育成をするために補助金がだせるとは書いていません。苗木の購入はできても、苗木の育成経費は出せません、私はそう思うのですが、部長、ご見解をお願いします。


《再答弁》 農林水産部長
 市場価格とは、市場における需要と供給のバランスで決まりますか、本来、経済学的にサービスや財の適正価格は、それを提供するためのコストに利潤を加えたものでございます。苗木を提供するには、当然、苗木の育成が必要であり、資材費、あるいは、原材料費として苗木の購入が認められるのであれば、苗木の育成費用は認められてしかるべきと考えます。


《意見》高田由一 県議
 答弁をいただきましたが、部長のご見解には同意をしかねます。私は、これからもぜひそのあたりを含めて、しっかり調査をしていただいた上で結論を出されることを求めたいと思います。


(2)県当局の姿勢について
《質問》高田由一 県議
 つぎに県当局の姿勢についてうかがいます。
 紀の国森づくり基金活用事業は、市町村や民間団体などから公募事業について申込みがあった際、学識経験者などからなる運営委員会を開いて、その事業がこの基金の目的に適当かどうかを判断して、事業採択することにいなっています。実は、この宮田元市議の関連団体の事業はずいぶん以前からこの運営委員会でも問題になってきた経過がございます。
 例えば平成21年3月の運営委員会では、この関与する4団体の補助金申請がでていましたが、最初の評点では不合格になっていたんです。なぜなら一か所のまとまった土地を4分割して4つの団体がそれぞれ実施する。だから本当なら一団体200万円の補助金の上限があるわけですが、それを4団体で申請するのでかける4、800万円を同一の箇所で使う計画になっていたからです。結局その後、事務局の県が再度、運営委員会を開くのではなく、個別に運営委員さんを回って持ち回りの審議でようやく合格点になったという経過があります。そのときの運営委員会の議事録をひもときますと、次のような議論がでています。

 「1人の方が4つの団体をほぼ代表してるような形でお話になって、そして、全てを指導して、金が足らなんだら私の方から助けますよ、余ったらその金をこっちにもらいますよと、そういうようなお話になったように記憶しているわけです。そういうのを認めていった場合に、例えばそういうのを10個作った場合ね、例えば150万円を10個つくったら15,000千円できると、そういうものを今後のことも考えて対処すべきや。私はどっちかというと印象としては脱法的な行為と違うかというふうに考えている。」そういう委員のご意見や、また他の委員はこのように述べています。

 「その(福祉団体)に少しでも経済活動をさせてあげたいために、ドングリを提供して苗木にしてもらい、400円くらいで買う。それ普通だったらもっと安くてもいいけれど、400円で買う、それはそれで支援であると、そういう善意は信じたい。もう一つ・・・、1m四方に3本も広葉樹を植えるんやったら、・・・それだけ植えてしまうと針葉樹の比じゃないくらい地面に日光が当たらなくなって、真っ暗な森になるんと違うんかなと、・・・ちょっと余りにも人任せで、この税金をもらうということに対して、責任感がないように思われます。」

 以上のような議論がされています。
 また平成22年の運営委員会では、高速道路の田辺インターチェンジ付近の法面を緑化するために補助金を申請していますが、これも前年度と同じように4団体で同一箇所をやるということでやはり最初の評点では、不合格になっているんですが、県の事務局得意の持ち回り決済をやりましてなんとか合格になります。そのときの議事録でもきびしい意見がでてるんです。読みます。

 「基本的に高速道路が管理せなあかん土地に、県民の税金を使って、県民が納得するんかな」、「違和感あるわな」、「何でそんな高速道路が管理せなあかんとこへ、おれらの金使われるんよと。それやったらもっと山に行ってよとかとなったときに、どう答えられるかといったら、ちょっと問題ですよね。」あるいは、

 「純粋に23点以下の評点については切るんやったらきるで、また改めて募集もするんやからそれでええのとちがうんですか」。

 以上のような議論が運営委員会であったわけです。結局、点数としては不合格だったものが、持ち回りで合格ということに後日なったんです。ただ私はこの高速道路の案件がさらにひどいのは、いったん高速道路の法面緑化で事業申請しておいて、結局のちに、土地の岩盤が硬くて苗を植えられないということがわかって、また得意の持ち回り決済をしまして、紀南病院の法面を4分割して緑化する事業に変えてしまっているんです。現場も高速道路の法面の現場も確認をしないで申請しておいて、岩が硬くて植えられない場所でした、だから場所を変えます、そんないいかげんな申請を認めてきたから、今回のようなことにつながるんじゃありませんか。
 そのようなやり方で紀南病院の場合ですと2年間の間に1350万円あまりの補助金が法面緑化のためだけにつぎ込まれております(資料1)。お配りしている上の地図ですが、これは紀南病院の敷地の周辺を緑化した地図なんですが、濃い青い色で塗ったところが、県の森づくり税の基金でやったところで、あと市の事業とか、緑の募金事業とかも含めてですね、ここに同一といわれる団体が集中してここを緑化した様子がわかると思います。
 私は昨年の12月議会で紀の国森づくり税の延長問題で議論をしましたが、この時、この基金の活用について残高が増え続け、使いあぐねている状態ではないかと指摘しましたが、まさにこの基金を使った実績をあげたいという県当局の姿勢が見えていたのではないでしょうか。そこへつけこまれたのではないでしょうか。
 こうした県当局の姿勢が今回の問題の背景にあったのではありませんか。部長の答弁をお願いします。


《答弁》 農林水産部長
 県が公開している基金運営委員会の議事録では、委員の間で、不適正な支出がなされた今回の案件について、色々な問題点を指摘して採択に反対する意見と、県民総参加という観点からできるだけ改善措置を講じながらでも森づくりに参画していただきたいという意見が括抗しております。
 実績をあげたいという県当局の姿勢が問題の背景にあるのではとのご指摘でありますが、県の職員には、森づくりが進むことは良いことであるという思いや、森林を県民の財産として守り育て、次の世代に引き継いでいくという紀の国森づくり基金条例の設置目的に忠実であろうとする姿勢、あるいは、林野行政に従事する職員としての森への熱い思いがございます。しかし、採択の基準を逸脱してまでも、意味のない森づくりをしようとする職員はいないし、これまでも存在しなかったと信じております。


《意見》高田由一 県議
 答弁をいただきましたけれど、私は職員のみなさんがまじめに仕事をこなそうとしていることは、承知しているつもりですが、この運営委員会の議事録、記録をよめば、それぞれの運営委員さんの真摯な指摘や疑問にきちんと対応していれば、今回のようなことにはつながらなかったと私は考えます。
 このことは指摘しておきます。


(3)事業のあり方
  ・紀南病院の例
《質問》高田由一 県議
 次、3点目。3点目は、この基金活用事業が、そもそも事業のあり方としてどうだったかという問題です。
 実は今回の宮田元市議がかかわった団体の事業は、さきの紀南病院のように大半がこの公共用地を基金で緑化するという内容になっています。そうした事業は私は、もともと県でやっている緑の募金事業といって県民からの寄付金をもとにつくった緑化事業が受け持つ範囲ではなかったでしょうか。
 そこに森づくり基金を投入することは、これは本来の事業趣旨からいって逸脱していたのではないでしょうか。
 実はここに森づくり基金の募集要項がございますが、ここにもはっきり書かれています。事業の実施場所は森林法第2条にさだめる民有林で行うというふうに書いています。森林で行いなさいと、森林が対象の事業なんです。紀南病院を開発したところの山を削ったところの敷地がですね、私は森林ではないと思うんです。本来、事業の要領からいっても対象外のことをやってきてしまったのではないかと思うのですが、部長の見解をお聞かせ下さい。


《答弁》 農林水産部長
 紀南病院の件につきましては、紀の国森づくり基金活用事業公募要領での「森をつくる・まもる」事業の実施場所は、森林法第2条の民有林となっております。同条第1項では、主として農地または住宅地、もしくはこれに準ずる土地及びこれらの上の立木竹は除くものの、森林の集団的な生育に供される土地、すなわち、伐採跡地等で現に立木竹が生育していなくても、これから木竹の集団的な生育に供されるなら森林と位置づけられております。
 また、同条の第3項では、民有林とは国有林以外の森林をいうと規定されており、要領上、問題はございません。


《意見》高田由一 県議
 私はこの要領を常識的にみて逸脱していると思います。たとえばですね、これは岐阜県の資料にあったんですが、森林として取り扱わないものというのがあって、岐阜県も同じような事業をしているんですが。
 その中には、りんご畑やミカン畑、これは当たり前ですけれど、公園や公共施設等の敷地は、これは森林として取り扱わないと、こういう風に書いています。そういうことも申し述べておきたいと思いますので、私は農林水産部長のおっしゃる紀南病院の敷地、法面は森林ではないと思っております。


  ・芳養漁港の例
《質問》高田由一 県議
 では次に芳養漁港のことについてうかがいます。森づくり基金の公募要領では他の補助金を活用できるところは、この基金事業では対象としないことになっているんです。これはあたりまえのことです。他の補助金を使ってやるんですから。しかし私が調べたうち、たとえば田辺市が補助事業で整備した芳養漁港の事業がありますが、資料2をご覧になっていただいたらわかるようにその緑色のところを植栽するということで、本来、漁港事業のメニューの中で最初から緑化する計画になっていますし、現にやっているところもあります。ところがこの一部が、というか大半が、無理やりこの森づくり基金を使って緑化しているんです。これは事業実施要領に違反することではないですか、おかしくはありませんか。答弁をお願いします。


《答弁》 農林水産部長
 芳養漁港の件につきましては、地元市を事務局とする実行委員会から、単なる緑化事業ではなく、多くの市民が参加する植樹活動の場としたいとの要望があり、基金事業となったものでございます。


《意見》高田由一 県議
 答弁をいただきましたが、市民のみなさんがたくさん参加されるのはいいんですけど、いずれにしても他の補助金を受けたり、海岸を埋め立てて漁港整備をした場所が森林ではないと思われませんか。
 私は森づくり基金の要領が、森をつくる事業の対象を森林に限っていることは、当初からの議論があったからだと考えています。もともと公園などの緑化事業は、緑の募金事業で集まった寄付金をもとに実施されていました。森づくり税ができたときその棲み分けをどうするのかという議論になったとき、緑の募金は地域の緑化活動を支援する、森づくり税は森林整備を担うとなったからです。それは、県自らがつくった「『緑の募金』と『紀の国森づくり税』の違いについて」というパンフレットにも書かれています。
 私は県が自ら定めた要綱や要領をも軽視して事業を行ってきた結果が今回の事件につながってきたということを指摘したいと思います。


(4)今年度事業について
《質問》高田由一 県議
 4番目に、問題になった関連団体への補助事業が今年度も予定されていますが、今後、どう対処されるおつもりですか。


《答弁》 農林水産部長
 平成24年度においては、元市議が関係する1団体と1実行委員会から、各1事業、合計2事業が採択されております。
 跡の浦港防風防潮樹林造成事業につきましては、6月下旬に事業が実施され、7月12日付けで実績報告が提出されておりますが、事件の発覚に伴い、補助金は交付しておりません。
 現在、調査中の不正支出の処理方法が決まれば、それに準じて取り扱う方針でございます。
 それから、田辺市ごみ処理場法面樹林造成事業につきましては、6月5日に交付決定を行いましたが、今日現在において、事業はなされておりません。
 一部の関係の方々からは、辞退の方向で検討していると聞いております。


(5)反省点と今後の事業のあり方
《質問》高田由一 県議
 最後に知事に今回の反省点と今後の事業のあり方をどう見直すのか、ご見解をうかがいます。


《答弁》 仁坂知事
 森林を県民の財産として守り育て、次の世代に引き継いで行くことを目的とした「紀の国森づくり税条例」及び「紀の国森づくり基金条例」に基づき、平成19年度から「紀の国森づくり基金活用事業」を実施しております。
 県民の理解と協力のもとに森林環境の保全と森林と共生する文化の創造を目指して行われるという、非常に良い事業であるにもかかわらず、このような不適正な支出がなされていたのは非常に残念なことであります。
 担当課に徹底した調査を指示しておりまして、調査の結果、明らかとなるであろう問題点を修正して、今後こういうことがないように事業を進めて参りたいと考えてございます。


《意見》高田由一 県議
 答弁をいただきましたが、私はこの問題は明らかに補助金の不正請求だと思います。最初に紀南ユネスコ協会のことを紹介しましたが、宮田元市議が勝手に公印を使って書類を偽造して補助金を請求したのです。そのなかの偽造した書類には田辺市や地権者と同意書や協定書も作って申請しています。その同意書や協定書がないと補助金は受けられなからです。紀南ユネスコ協会だけでなく、市役所も地権者もだまして協定書をつくってそれで補助金を受け取っている、これは立派な不正請求ではないかと思います。
 私は県警への告発も含めて県が腹をくくって対応されることを求めてこの質問を終わりたいと思います。


2.津波からの避難対策
《質問》高田由一 県議
 まず南海トラフの巨大地震による津波想定についてうかがいます。内閣府は8月末に津波高や到達時間、被害想定などを発表しましたが、沿岸の市町では驚きをもってこの数字を受け止めています。
 例えばすさみ町でいえば、津波高は20メートルとなっていますが、地元へいくと内陸部であれ標高で20メートルまでは全部水没するという感覚でとらえられていて、これじゃ逃げられんなあという人が多いんです。しかし、政府の想定は海岸へ到達する津波の高さであって、実際、内陸部へどのように到達するのかはまさにいま県が作業していただいている結果をまたねばわからないわけです。

(1)内閣府の新規定
 そこでまず、今回の津波の新想定とはどういうものであるのか。従来の想定と単純に比較できるのか。現時点ではどう解釈すればよいのか。詳細なデータはいつ届けられるのか。また、県としていつごろを目途にハザードマップなどに具体化していくのかなどについて危機管理官の答弁をお願いします。


《答弁》 危機管理監
 今回公表された被害想定は、現時点の最新の科学的知見に基づき、発生しうる最大クラスの地震・津波を推計したものであり、発生頻度は極めて低いものです。
 また、これまで本県が取り組んできた東海・東南海・南海地震は、それぞれの発生確率が60%以上と示されているのに対し、今回の南海トラフの巨大地震は、発生時期は予測することができず、次に南海トラフ沿いで起きる地震・津波を予測したものでもないということであります。
 県としては、4月に地震・津波被害想定検討委員会を設置し、国からのデータ提供を待つのではなく、できるところから県独自のより詳細な被害想定の策定に取り組んでいるところです。
 今後、この被害想定を行うにあたり、国から提供される詳細データが必要となりますが、現時点では、年末までに提供されると聞いているところであり、年度末を目途に、詳細な津波浸水予測、被害想定等を策定する予定です。
 その後、各市町村に対し、できるだけ早く津波浸水予測のデータを提供し、市町村が作成するハザードマップを支援して参ります。


(2)避難路整備
《質問》高田由一 県議
 今回の被害想定をうけて、何よりもまず取り組まねばならないのは、いかに逃げるか、避難路や避難場所を整備するかに当面は力を集中しなければならないと思います。そこで今年度、これらの整備についてどのように推進していくのか答弁をお願いします。


《答弁》 危機管理監
 津波から命を守るためには、逃げることが最も重要です。
 そして、住民が、安全かつ迅速に逃げるために、普段から避難訓練に参加することや、避難路の整備、避難先の確保が大切であります。
 今年の7月29日に実施した4県統一津波避難訓練には、2万人を超える参加者があり、毎年参加者が増加しています。市町で独自に実施する避難訓練への参加者を含めると今年度は、5万人を超える見込みであります。
 市町村が実施する避難路整備に対しては、県のパワーアップ補助金や国の緊急防災・減災事業によって積極的に支援しているところであり、昨年と比較すると既に3倍を超えており、市町村は積極的に避難路整備を進めているところであります。
 また、市町村では、避難路の整備や津波避難ビルの指定等によって避難先の確保を図っており、津波の避難先については、昨年に比べ182箇所増加し、1,515箇所となっています。
 避難路整備や津波避難タワー整備は、国の緊急防災・減災事業の対象となっているところですが、地方の要望額が当初の想定額を大幅に上回り、今後の不足が懸念されている中、本県としても、国に対して、十分な財源確保を強く要望しているところであります。
 県としては、市町村の津波から命を守る避難路の整備等に対して引き続き積極的に支援して参ります。


(3)自主防災組織について
《質問》高田由一 県議
 つぎに避難路を具体的に整備するには、自主防災組織での議論が不可欠です。そもそも避難対象地域のなかでどれくらい自主防災組織が結成されているか。答弁をお願いします。
 あわせて防災リーダーをどのように養成していくのか、避難訓練など実際の活動をどうサポートしようとしているのかについてもお答えください。


《答弁》 危機管理監
 自主防災組織の組織率としましては、平成23年度調査において、和歌山県では、80.5%となっており、うち沿岸18市町では、87.5%になっています。
 防災リーダーの養成と活動支援につきましては、例えば、平成17年度から、企業や地域での防災活動のリーダーとして活動する地域防災リーダー育成講座「紀の国防災人づくり塾」を開講し、人材育成の面で支援しているところです。
 平成23年度から、市町村が推薦する地区において、実際の活動を支援し、そこでの活動事例を広く紹介するなど、自主防災組織がどのような活動をしたら良いか、「自主防災組織活性化事業」によるモデル的活動を通じて支援しているところです。
 県としては、以上のような事業を通じて、自主防災組織の組織率向上やその活動が活発に行われる環境になるよう、市町村に対して支援をして参ります。


(4)観光地の課題
《質問》高田由一 県議
 ご答弁をいただきました。本当に自主防災組織は防災の要だと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。つぎに観光地の課題についてうかがいます。津波避難の際、観光地には住民ではない多くのお客さんがきており、その避難をどうするかという独自の課題があります。
 白浜でいえば夏場、宿泊客で8,000人の人口増となることもあります。海水浴客などをいれれば相当な数になります。お客さんも住民との立場で考えるなら、情報伝達、避難路や避難場所を考えなければなりません。県として今後、どのように対策を推進していくか答弁をお願いします。
 また対策を考えるときとくに夏の白浜では自動車の集中で歩いても避難できない状態になる可能性が高いと思います。どのような対策が考えられるか、あわせて答弁をお願いします。


《答弁》 危機管理監
 本県を訪れた観光客等の皆様に対して、防災行政無線、エリアメール及び緊急速報メール等複数の手段を用いて防災情報を伝達するよう務めています。
 避難先については、スマートフォンのアプリケーションやYahooサイトを利用して、誰でも一番近い避難先の安全レベル等を知ることができるようになっており、スマートフォンを利用した場合、避難先まで案内してくれる機能も備えています。これらの情報伝達手段を観光協会、旅館組合や交通機関と共に普及を図って参ります。
 次に、自動車が集中する観光地での対策についてでありますが、津波からの避難は、徒歩避難が原則であることに変わりありません。
 自動車の運転手は、避難の妨げにならないように、可能な限り道路外へ駐車し徒歩避難することや、やむを得ず道路に駐車して避難する場合には緊急車両等の通行の妨げとならないよう配慮し、ドアロックはせずにエンジンキーは付けたままとすること等を周知して参ります。


《要望》高田由一 県議
 答弁をいただきましたが、車できたお客さんへの周知はまだまだやと思います。夏の白浜の状況を考えたらですね、そんなに行儀よく車を置いて行ってくれる方は多くないと思っているんですが、今後、ぜひ地元とも協力しながらすすめていっていただきたいと思います。
 私は、以前、白浜で旧白浜空港を利用したパークアンドライド型の観光地づくりを提案したことがあります。近いうち高速道路も白浜インターができ、ますます自動車混雑への対策が求められます。空港を利用して旧空港ですね、空港を利用して駐車してもらい、乗って楽しめる別な交通手段でゆったり観光してもらうというものですが、これは今日、災害対策としても必要ではないかと感じています。災害のときには避難の妨げになるこの自動車を、高台の空港へ駐車しておけば、もし津波などが起こっても車は生き残るわけです。そうすればいまの車は、暖房あり冷房あり、情報機器もついていますから、これほどプライバシーの確保される仮設避難所はないと思うんです。わざわざお客さん用の避難所を確保しなくてもいいし、道路が健全なら速やかに居住地に帰っていただけることにもつながると思います。こうしたことについても今後、ぜひ地元といっしょになって検討していただきたいと思います。


(5)新しい特別措置法へむけて(要望)
 また、県では新年度への政府要望で巨大地震への新たな特別措置法を求めています。中村議員も触れられましたが、宿泊施設など民間事業者の耐震化はなかなか進んでいません。私は新しい特別措置法のなかでそうした点についても積極的な国の支援がえられるよう盛り込んでいくことも政府にあわせて要望していただきたいと思います。これは要望です。


3.木造住宅の耐震化推進
《質問》高田由一 県議
 つぎに木造住宅の耐震化の推進についてうかがいます。
 木造住宅耐震化の補助金ができてから来年度で10年をむかえようとしています。しかしその実績は、昨年度までに9761戸の耐震診断が実施されたものの、耐震改修まですすんだのは567戸です。この間、予算的には2180戸分を確保したわけですから約4分の一の執行にとどまっているということです。
 今年度も予算的には充実させ300戸分を用意していますが、これを本当に使いきるぐらいの取り組みが必要です。そんななか先日、高知県での取り組みをうかがいましたが、事業費のうち最大90万円は補助しますというキャンペーンをやっていまして、平成22年度では前年度の2倍にあたる719戸が改修されたそうです。和歌山県が8年かけて積み上げてきた実績をたった1年で上回っている状況です。これは私はただ単に高い補助額だけの問題ではなく全体の取り組みがあってこその実績だと思います。


(1)予算の執行状況
 そこで今年度も半ばにかかろうとしていますが、現在までの耐震診断、改修の予算の執行状況を県土整備部長、答弁してください。


《答弁》 県土整備部長
 今年度は、8月までの実績としまして、耐震診断は361戸、耐震改修は61戸となっており、改修におきましては、昨年度の同時期の16戸を大きく上回っている状況でございます。


(2)現地見学会について
《質問》高田由一 県議
 昨年度にくらべてかなり進んでいることを評価したいと思います。そのうえで、まだまだ県民への宣伝が不足していると思いますので、補助をうけた住宅の協力を得ていろいろな県民に耐震工事を見てもらうために現地見学会的なものを地域でできないものでしょうか。答弁をお願いします。


《答弁》 県土整備部長
 耐震改修の現場は、新築工事と違い、生活しながらの工事であり、入居者の同意が得られにくいため、現地見学会の開催は困難と考えます。
 しかしながら、これに代わるものとして、耐震改修中であることがわかるような、工事用看板を現場に掲げ、近隣住民の方々に周知する取り組みを実施しております。
 また、県政おはなし講座や市町村等と連携した地域での耐震説明会の中で、実際に改修した住宅の事例を写真や図面を使って、県民の方々にわかりやすく、ご紹介するなどの取り組みを行っております。


《意見》高田由一 県議
 近所のおうちでやっていても、なかなか見に行けないという遠慮がありますので、ぜひ検討してみてください。


(3)耐震診断後のフォロー
《質問》高田由一 県議
 つぎに耐震診断の後のフォローについてうかがいます。耐震診断で1.0未満となったにも関わらず、改修にまでいたらなかった例はどのくらいあるのでしょうか。その理由はなんでしょうか。また、その方々へのフォローはどうされているのか。答弁をお願いします。


《答弁》 県土整備部長
 平成23年度までに、耐震診断済の結果、耐震改修が必要な構造評点が1.0未満であった住宅は、9,084戸であり、そのうち補助金を活用して耐震改修を実施した住宅は、567戸となっております。
 耐震診断に比べて、耐震改修の実績が少ない理由は、平成18年2月に実施したアンケート調査によりますと、どのような工法で、費用はいくらになるのか、どの業者に頼めば良いのかなどを不安視される方が多くおられました。
 このようなことから、市町村では、過去に耐震診断を実施した方に対して、具体的な工法や、概算費用、相談窓口などを説明したパンフレット等の送付を行っているほか、県としましては、高齢者の方などを対象に、耐震改修の専門家を派遣し、個別の相談や改修計画の提案などを無料で実施しているところでございます。今後も、市町村や建築関係団体と連携し、より一層、住宅の耐震化促進のために取り組んでまいります。


《要望》高田由一 県議
 私たち共産党県議団は以前から一般的な住宅リフォーム助成制度を訴えてきました。耐震改修をしている現場の大工さんたちに聞きましても、いったん古い家をいじりだしたらなかなか耐震補強のとこだけ修理して、はい終わりにならん。補助がでない部分でもようさんお金がいる、とのことです。そうした声にこたえるためにも今一度、住宅リフォーム助成制度の検討もしていただけるよう要望いたします。


4.過疎地でのガソリンスタンド問題
《質問》高田由一 県議
 現在、ガソリンや灯油など石油製品の販売業については、し烈な価格競争やセルフ式スタンドの増加で非常に苦しい状況が続いています。また消防法の改正で地下タンクの油漏れ規制が大幅に強化され来年1月末を期限に、埋めてから40年以上経過した古いタンクについては改修工事をしなくてはなりません。改修には経済産業省の補助金もあるようですが、なかなか進んでいないというのが実情です。


(1)ガソリンスタンドの数と対策
 そこで県内のガソリンスタンドの数はここ3年間でどのように変化してきているのか。また、改修が必要な地下タンクに対してどれくらい改修が進んでいるのか。危機管理官に答弁をお願いします。


《答弁》 危機管理監
 県内のガソリンスタンド数は、平成21年度末で509施設、平成22年度末で488施設、平成23年度末で469施設、年々減少しております。
 また、本年7月末現在、ガソリンスタンドを含む給油取扱所で、流出事故防止対策が必要となるタンク数は495基あり、そのうち措置済みのものは110基で、残り385基については、法期限までに対策が講じられるよう、引き続き、各消防本部と連携して事業者を指導して参ります。


(2)支援策
《質問》高田由一 県議
 今の時点で約1/4の改修、なかなか進んでいません。そこでもしこのまま来年1月末の期限がくれば、とくに過疎地ではガソリンスタンドがなくなっていくことになりかねません。すでに経済産業省では平成22年に過疎地の石油製品供給について調査事業をしていますが、そのなかでも先進的な事例として自治体や住民がスタンドの経営を事業化したという話もでています。今後、継続にむけての様々な方法がでてくると思いますが、ただ私が心配しているのは、来年になってみなさんいっせいに、さあやめましょうということではこれは地域住民にとってたいへんなことになるわけです。
 地域の要望をうまくとりまとめて様々な支援策を考えるのは過疎対策のメニューだと考えますが、過疎地のスタンド経営者の意向もつかみながら、ガソリンスタンドがなくなるかもしれない地域にどのような支援策をしていくのか企画部長の答弁をお願いします。


《答弁》 企画部長
 ガソリンスタンドの撤退につきましては、過疎地域住民にとりまして自動車用のガソリンや農業機械の軽油、また、冬場の灯油などの確保が困難になり、日常生活に著しく支障を来たす恐れがあると認識しております。
 過疎地域の16市町村では、この間題について現在のところは特に問題はないと聞いております。
 ただその中には、地域からの要望により国の制度や市町村の補助を活用してタンクを改修し、存続している事例も見受けられます。
 県といたしましては、今後とも地域における動向を見極めながら、国の制度の活用を促すとともに、地域独自に燃料の確保や配送などの取組が行われる場合は産業対策や生活対策といった複合的な事業を組み合わせる「過疎集落支援総合対策事業」等の適用などできないか検討してまいります。


《要望》高田由一 県議
 答弁がありましたが、市町村ではとくにいま問題ないという把握でしたが、実はこれから問題がおこってくるんです。例えば、旧日置川町の日置川沿いですが、2軒のお店の方に話をうかがうとこの9月あるいは来年に閉めるかもと言っておられます。あの奥に深い日置川流域に燃料をいれるところが一軒もなくなるということが、すぐにでも起きるのです。こんなことは行政には事前にいちいち相談しませんから役場は知らないわけです。でも閉めたら地域住民が困ることになるのは明らかです。災害時には孤立する集落ばかりですから、本当に危機管理という点でもたいへんな問題だと私は思います。ぜひ、これは知事にもがんばっていただいて、なんとかこの過疎集落の問題に取り組んでいただけますよう要望して終わります。


 農林水産部長の答弁を聞く、高田由一県議(右下)=9月24日、和歌山県議会 2012年9月議会   高田由一プロフィール、質問一覧
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2012年9月和歌山県議会 高田由一 一般質問=9月24日
2012年9月和歌山県議会 高田由一 一般質問=9月24日