2012年12月県議会
 松坂英樹一般質問 概要記録
 議会中継録画

2012年12月1

1.みかん対策
(1)安値が続くみかんの価格形成について
(2)販売促進強化の取り組み
(3)気象変動や自然災害による被害への対応
(4)高品質化・厳選出荷の取り組み
(5)新品種の普及状況と今後の展望・課題

2.河川とダムの防災対策
(1)砂利採取許可方針見直しについて
(2)台風12号災害をふまえたダムの操作改善
(3)県管理河川の河川整備計画見直し

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1.みかん対策
(1)安値が続くみかんの価格形成について
《質問》松坂英樹 県議
 通告に従い一般質問をさせていただきます。まずみかん対
策についての質問です。以下5つの項目について、順次、農
林水産部長にお尋ねをします。

 今年はみかんの裏年にあたります。一昔前までは、表年は
安値で裏年は高値だと言われましたが、この10年ほどのみかん価格を振り返ってみますと、残念ながら価格は安値安定の傾向が続いています。ある農家の方は、「よかったのは10年のうち2年だけ。あとの6年は採算ギリギリ。2年は採算割れだ」とおっしゃいます。苦労してみかんづくりをしている生産者の期待にかなわず、再生産にみあう価格にはなかなかおぼつかないという厳しい状況です。

 安値が続くこの背景としては、長引く消費不況、国民生活のきびしさが大きく影響しているのに加え、全国的には極早生の量が多くなってきていて価格でも足をひっぱるなど、出荷時期や市場の流通量の変化にともない価格形成の要因も変わってきていると考えます。そこでまず第一点目の質問です。県として、和歌山県産みかんの販売価格・価格形成の状況をどう考えているか。今年のみかん生産販売状況と合わせて、農林水産部長よりご答弁を願います。


《答弁》 農林水産部長
 平成24年産みかんは裏年にあたり、生産量は対前年比88%の16万トンを見込んでおります。価格は、極早生、早生、中生(なかて)を合わせた12月14日までの平均でキロ当たり196円と、残念ながら再生産価格を下回っている状況です。
 特に、9月、10月出荷の極早生みかんは、ブドウや梨などの他の果樹との競合や九州産地の出荷量が増えたことにより、需給バランスがくずれて、キロ当たり170円と昨年同様に安値となっておりますが、県のオリジナル品種の極早生品種である「ゆら早生」は、それよりも20円高いキロ当たり190円で取引されております。
 県では、これまで、極早生の不良系統を「ゆら早生」や「田口早生」に転換するなど、極早生の比率を下げて優良なオリジナル品種への改植を推進しているところでございまして、今後も、これら品種の産地拡大を通じて、市場価格の向上を図ってまいる所存でございます。


《要望》松坂英樹 県議
 答弁をいただきました。裏年である今年でさえ、再生産価格を下回る状況であるという厳しい状況が報告されました。これでは農家が経営の展望を持てません。出荷の遅れが他の果物との競合という結果になったりと、何かしらの要因がことごとく安値の引き金になっているというつらい状況です。
では、どうやってこの状況を好転させてゆくのか。デフレ不況の克服、国民生活の向上という国政の課題とともに、産地としてもこういう状況をうちやぶるべく懸命の努力を続ける必要があると感じています。和歌山県オリジナル品種のお話もありました。こうした数々の打開策を積み重ねて価格形成につなげてゆかなければなりません。この問題意識から以下の質問に移らせていただきます。


(2)販売促進強化の取り組み
《質問》松坂英樹 県議
 2問目の販売促進強化の取り組みについて伺います。
 去る11月23日から25日にかけて取り組まれた、首都圏での和歌山県産農産物のキャンペーンに参加をさせていただきました。これまでこういったトップセールスなどの取り組みは、県が主催した年、生産者団体が主催した年など、色々試行錯誤や工夫を続けてこられたわけですが、今年度からは県・生産団体が協議会を作って共同で取り組むようになっています。
 今年は、有楽町の駅前広場という良い立地条件でのイベントとなっていました。また午後に開催された、果物の機能性食品としての価値に着目したフォーラム、パネルディスカッションにも参加しましたが、これまで5大栄養素といわれていたものに加えて、果物にはすばらしい機能性食品としての役割があることが専門家のみなさんから紹介されました。こうした取り組みを一層広げることが、みかんを始めとする和歌山県産の果実の消費拡大・販売強化に大きな役割を果たすものだと期待をするものです。
 私はこれまでも、みかんの販売強化の取り組みとして、お世話になってきた京阪神市場を大事にしながら、加えて首都圏にも果敢に攻めてゆくことが全国区でのブランド力アップにかかせないと、この議場での初質問以来、訴えてきました。
 和歌山県産みかんの販売強化の取り組み状況はどうか。また、首都圏、特に首都東京での和歌山県産みかんのシェアは上がってきているのか。これらの点についてご答弁を願います。


《答弁》 農林水産部長
 県では、JAグループとも協働して、様々な趣向をこらして首都圏を中心にPR活動を行ってきましたが、今年度につきましては双方それぞれの強みを発揮しやすいよう、新たに「和歌山ブランド向上対策推進会議」を起ち上げ、タッグを組んで、PRや販路開拓に取り組んでいるところであります。
 質問にございましたように、11月23日から3日間、東京有楽町周辺における首都圏イベントでは、果物の機能性に関する第一人者をお招きしてフォーラムを開催するなど、美味しさだけでなく、機能性にもスポットを当てる切り口で、PR活動を行いました。
 また、直接消費者に訴えかける「和歌山フェア」を、東京・大阪・名古屋の3大都市の百貨店や大型スーパーで開催し、梅・みかん・柿を中心に旬の食材をPRいたしましたが、フェアにおいては、「わかやまポンチづくり」や「『わかぱん』との撮影会」などの消費者参加型イベントも行い、より和歌山県の食材を身近に感じて頂ける販売促進活動を展開したところでございます。
 こうした取組もあって、東京都中央卸売市場での取扱実績による和歌山県産みかんのシェアは、平成19年の21億6千万円、7.9%から、平成23年には278千万円、10.5%と2.6ポイント上昇したところでございます。


《要望》松坂英樹 県議
 販売強化の取り組み、また首都東京の市場でのシェアが7.9%から10.5%へと4年間で2.6ポイントアップという答弁でした。割合でいうと3割アップということになると思います。この東京都の市場扱い量の半分をしめる「首都東京の台所」大田市場、ここでも和歌山県産みかんの取り扱いが、9年前と昨年との比較で5.7%から9.8%へと、1.7倍の伸びを示しています。
 みかんの生産日本一といいながら、東京のど真ん中ではわずか5%のシェアでしかなく、探さないとみつからないという程度だったものが、ようやく一角にくいこんできたという状況だと思います。
 大田市場でも東京全体でも伸びてきている。この間の、県や生産者の努力に敬意を表するとともに、果樹王国和歌山として、もっともっと露出を大きく、注目を集める戦略的な販売促進の強化に、一層取り組むよう求めるものです。


(3)気象変動や自然災害による被害への対応
《質問》松坂英樹 県議
 次に、気象変動や自然災害による被害への対応をお尋ねします。地球温暖化や異常気象の問題などが指摘され続け、雨はなかなか降らないと思えば、降るときには集中豪雨のような雨が降ります。今や平年並みという年はないというぐらいの状況です。昨年は6月の生理落果がものすごく多くて大玉傾向でした。今年は一転して小玉傾向で収穫をすすめる農家からも「なんと細かいみかんばっかりやのう」というため息が聞こえてきます。また収穫最盛期のこの間、3日にあけず雨がふり、収穫がずいぶんずれこみました。
 こうした雨の降り方の変化は特に気になります。今年は4月から6月にかけて雨がほとんど降らず、「夏の灌水ではなく、なんと5月に水やりせんなんてなぁ」と、生産者はたいへん苦労されました。
 気温にしても降水量にしても、徳農家のみなさんでさえ、過去の経験が通じないほどの気象変動が顕著になってきています。
 また先日、収穫直前の11月という季節外れのヒョウによる被害が出ました。広川町をはじめ有田川町・日高川町・御坊市にかけて1億2千万円ほどの被害が報告されています。私は、最も被害のひどかった広川町の前田地区の畑へ早速伺い、状況をお聞きしましたが、10円玉より小さいぐらいという大きなヒョウが、強風とともに大量に降ってきたそうです。農産物はもとより、ヒョウによって、農業用ハウスや駐車場の屋根に穴があいたりする被害や、また雨交じりに大量に降ったために、倉庫のトユがヒョウで詰まってあふれ、屋根から雨漏りして倉庫の中のコメが水浸しになったりと、たいへんな被害があることをお聞きしました。
 収穫前で色づき始めていたみかんは、穴が開いたり、こすれて傷が入ったりと大打撃で、伺った畑はほぼ全滅状態でした。先日、その畑に再度調査に出かけましたが、農家の方は、「収穫してテボに入れられるみかんはほとんど無い。おおかたハサミで落として畑へ捨てやんなん」と嘆いておられました。ヒョウにあたったすぐには分からない傷も、後々から影響が出てきたり水腐りになったりと、ヒョウが降った畑のみかんは、収穫後も選別にたいへん苦労しているそうです。
 このヒョウ被害を受けた農作物への被害については、農業共済での対応しかないということですが、その農業共済も加入している畑の割合はたいへん低く、また加入していても給付金は翌年からの掛け金にあてている所も多いなど、「共済も実際はあてにならんのよ」という声をお聞きしました。
 ただでさえ低価格に悩むみかん農家ですが、こうした温暖化や降雨量など気象変動への対応、また自然災害による被害対策を県としてどう考えているかご答弁願います。


《答弁》 農林水産部長
 気象変動や自然災害に強い産地づくりを推進するため、県では、これまで、防霜ファンや防風ネットなどの施設整備をはじめ、マルチ・点滴かん水の導入に対し、支援をしてきたところであります。
 災害への備えとして、農家の減収を補てんする農業共済制度がありますが、加入率が低いので、今後、より一層の加入推進に努めてまいる所存でございます。
 また、災害の発生時には共済金が迅速に支払われるよう、これまでも働きかけは行ってまいりましたが、今後も、農業共済組合に対し働きかけるとともに、被害が広範囲かつ甚大な場合は、既存の融資制度に工夫を凝らすなど、農家の経営安定のための支援を行ってまいる所存でございます。


《要望》松坂英樹 県議
 答弁をいただきましたが、この問題、今後のみかん作り、県内果樹農家にとってもカギとなる問題だと考えています。
 1年1作しかない作物が被害を受けると、本当に経済的ダメージは大きいんですね。共済制度はもっと入りやすく、おかげになるものとなるよう、改善を求めるものです。そして災害時の支援策を、市町村や生産者団体などとも力合わせて、検討していっていただくよう要望しておきます。


(4)高品質化・厳選出荷の取り組み
《質問》松坂英樹 県議
 4点目の質問は、みかんの高品質化・厳選出荷の取り組みについて伺います。和歌山県産みかんのブランド力アップと価格形成・高単価をかちとるには、高品質化・厳選出荷の取り組みはかかせないものです。他県でもこの点では様々な工夫や努力がされているようですが、和歌山県としてどのように取り組み、今後取り組んでゆこうとしているのか。ご答弁を願います。


《答弁》 農林水産部長
 みかん農家の所得向上には、高品質生産や厳選出荷が必要不可欠であると考えております。
 高品質化対策として、優良なオリジナル品種への改植をはじめ、マルチ栽培や点滴かん水装置の導入に支援してきたところで、引き続き、今後も推進してまいる所存でございます。
 また、厳選出荷につきましては、味を重視する消費者ニーズに対応するため光センサー選果機の導入を支援し、現在では系統出荷量の91%にまで普及しております。全国果実生産出荷安定協議会が定める時期別糖度の目標である9月:9度以上、10月:10度以上、11月以降:11度以上の基準に基づく出荷の徹底をJAに指導しているところでございます。
 今後、こうした高品質化・厳選出荷の取組に加え、JAとの連携を密にし、適地での栽培や優良品種への転換をさらに促進させてまいります。


《要望》松坂英樹 県議
 さきほどヒョウ被害の話もしました、また暖冬の時には果実の痛みが出たり、気象条件や病害虫など、こういった様々な要因をのりこえて、消費者のみなさんに、やっぱり和歌山のみかんは美味しいと、すばらしいと言ってもらえるモノをお届けすることが大切です。
 厳選出荷については、愛媛県などは選別の強化に取り組んだ歴史も長いと聞いています。畑でいいみかんを作るのはもちろん、選別や出荷体制などについても、広く生産者の皆さんとも、充分に相談して、その支援を強めていただくよう強く要望をさせていただきます。


(5)新品種の普及状況と今後の展望・課題
《質問》松坂英樹 県議
 みかん対策の最後に、新品種の普及状況と今後の展望・課題について質問します。
 この間、みかん生産農家のみなさんと県果樹試験場が力を合わせて、和歌山らしい魅力的な新品種の開発に取り組んでこられました。そのいくつかが成果となり、次々と芽を出そうとしているのをたいへんうれしく思います。
 出荷が集中し価格が低下する時期をさけ、ドカスカなく、コンスタントに魅力的なみかんが出荷できる産地づくりが大切です。これまで11月末の早生の時期に市場がダブついていたのが、今は10月に九州産の極早生が集中してダブつきが出ています。
 この極早生の時期には和歌山の「おいしい」極早生をアピールする。また主力である早生品種に続いて、12月の主力となる浮皮の少ない中生のみかんを育てる。そして12月末から年明けにむけて、ジョウノウのうすい、フクロごと食べられる、早生の完熟のようなしっかりとした味の、こういうおいしい和歌山のみかんが出荷できれば、「年が明けたら静岡ひとり勝ち」という昨今の状況も打ち破れます。優れた品種のリレー出荷により、こうした展望を開いてゆくことが期待されています。
 新品種の普及については、品種の特徴や適地適作、販売戦略をよくふまえながらも、スピード感のあるアピールや、ていねいな普及が大事だと考えますが、新品種の普及状況と今後の展望・課題についてどう考えているか、ご答弁を願います。


《答弁》 農林水産部長
 県では、他産地との差別化を図り、農家所得を向上させるため、極早生―早生―中生―晩生(おくて)のオリジナル品種によるシリーズ出荷に向けた取組を展開してまいりました。
 現在、極早生みかんの「ゆら早生」は226ha、早生みかんの「田口早生」は148haで栽培されております。
 また、ゆら早生から育成された「YN26」は今春から苗木の供給が始まり、需要の高まる12月以降の販売が可能な中生品種の「きゅうき」は、平成26年からの苗木販売に向けて、現在、鋭意、増殖を進めているところであります。
 晩生品種についても、県果樹試験場で優良系統の選抜をしているところです。
 今後も、県単独事業である果樹産地再生緊急対策事業などによりまして、これら品種への改植の支援を行い、早期の産地化を図ってまいる所存でございます。


《要望》松坂英樹 県議
 「味の決め手の8割は品種だ」こんなふうに言われているそうです。他県にまけない、和歌山らしいオリジナル品種のリレー出荷をめざし、「YN26」や「きゅうき」への農家の期待、市場関係者の期待もたいへん高いようです。
 また、晩生品種の研究についてもふれられました。今後いっそう県として、研究機関、普及、そして生産者のチームワークが生かされるよう、みかん対策の強化に努めていただくよう要望するものです。
 おいしい和歌山県産みかんの栽培は、熱心な徳農家と呼ばれるみなさんから、兼業農家のみなさんまで、農業をやりたい方はみんな和歌山県の農業の担い手です。こういう厚みのある農業の展望を和歌山の農業でも、日本農業にも切り開いてゆく、そんな支援ができるよう、県としての役割を果たしていただくよう要望して、みかん対策の質問を終わります。


2.河川とダムの防災対策
(1)砂利採取許可方針見直しについて
《質問》松坂英樹 県議
 次に、二つ目の柱である、河川とダムの防災対策についての質問に移らせていただきます。以下3点について、順次、県土整備部長にお伺いします。
 このほど県は、河川に堆積した土砂撤去により防災対策効果を上げようと、砂利採取事業の許可範囲の見直しを発表しました。
 この間私どもも、堆積がすすんで危険な河川の土砂の撤去とともに、採取された砂利を、台風災害からの復興と防災対策工事の骨材として活用することを求めてきたことから、この事業が効果を発揮できるよう大いに期待するものです。そこで、今回の見直し内容と方向性をご答弁いただきたいと思います。
 また一方で、この砂利採取事業に関しては、過去には利権の温床となったり、もうけ優先で過度な採掘が行われたりなどの問題があったために、一部区域を除いて原則禁止の制限措置が取られた歴史があります。
 今回の制限見直しによる事業開始にあたっては、事業者に採取を許可する際には公明正大な仕組みで、かつ県がしっかりと砂利採取をコントロールできるようなものとなるよう、合わせて求めるものですがいかがでしょうか。


《答弁》 県土整備部長
 今回の許可方針の見直しは、治水安全度の向上にも繋がることを期待し、堆積土砂の効率的な撤去を目的としております。
 新しい許可方針の運用にあたっては、採取計画等を総合的に評価して採取業者を選定するなど、公平性や透明性の確保に向けた仕組みを検討しております。
 採取方法については、河川構造物等から十分な保安距離を保ち、水面から50センチメートル以上の高さで掘削させるなど、河川の維持管理上の支障が生じないよう規制していきます。
 併せて、騒音防止や粉じん対策、汚濁水対策等の公害防止対策も求めるなど、十分な策を講じてまいります。


《要望》松坂英樹 県議
 答弁をいただきました。この砂利採取による防災対策前進が、絵に描いた餅に終わらないようにすることが大切だと考えます。県内の河川で12号台風による堆積土砂撤去事業の業者を募集しましたが、富田川などで事業化がうまくスタートできた一方で、日高川では応募業者がとうとう現れませんでした。
 砂利採取によって製品化された川砂利が、災害からの復興と防災対策工事の骨材として大いに利用されるよう、この川砂利を使ったら有利になるというようなインセンティブを働かせるよう検討を求めるものです。和歌山県は、災害からの復興と防災対策を、地域の経済効果も含めてしっかりと組み立てたと評価されるよう、この点は強く要望をしておきます。


(2)台風12号災害をふまえたダムの操作改善
《質問》松坂英樹 県議
 次に昨年の台風12号災害をふまえたダムの操作改善について伺います。昨年の台風災害では、県営ダムで一番設計の新しい椿山ダムでさえ、ダム湖が満水になり洪水調整ができなくなる事態となりました。
 私自身の認識も、有田川の二川ダムのような、発電優先で水を貯めがちなダムと比べれば、設計の新しい椿山ダムは治水能力も比較的高いと思っていただけに、ダムの設計を超えた超過洪水というものは必ず起きると、衝撃を受けた大災害でした。
 歴史的な豪雨だった12号台風災害ですが、この大雨がこの先100年めったにおこらないというものではありません。この先こうした豪雨がいつおそってくるかわからないし、その確率が飛躍的に高くなっているのが、昨今の気象条件です。
 深刻な被害が出た日高川流域ですが、今回の災害を契機に、日高川町をはじめ住民からは椿山ダムの操作改善を求める声が出されています。
 この間県は、関西電力との間で発電用利水容量を事前に放流するというダム操作改善に合意し、早速今年の出水期から適用されています。しかし、二川ダムや七川ダムと比較すれば、椿山ダムにおいては利水容量を活用した治水能力向上は限定的であるゆえに、これに加えて操作規則そのものの改善を求めるというものです。
 具体的にいうと、ダムの設計を超える豪雨が予想される場合には、あらかじめ計画した放流量までは貯水せずに放流して貯水容量を温存し、それ以上の洪水をカットするように操作を変更すべきだという考え方です。こういう提案が、県にも伝えられていると思いますが、県はどう考えますか。
 私はこれまでも、議会の場でダム操作規定の改善を訴えてきました。県は大雨が予想された時、ダム水位をあらかじめ操作規定よりも低くして洪水にそなえる運用改善を七川ダム、二川ダムで実施してきました。また、電力会社との合意による利水容量の活用も、操作規則そのものではなく、例外的な運用の一部として位置付けました。これらダム水位や放流タイミングの改善は、治水能力を上げるためにプラスになる積極的なものです。しかし肝心の操作規則、ダム設計時の雨量想定とゲート操作、これは依然としてそのままなんですよね。
 どの程度の雨でダムが一杯になってしまい、「ただし書き操作」といわれる非常時の操作になってしまうのか。この肝心の所を見直してはいないんですね。ダム設計時の洪水パターンは、単純な、あくまでも限定的なシミュレーションです。その雨量や降雨パターンも近年の気象状況の変化により様変わりしているのです。
設計どおりの洪水調整で今日的な気象条件に見合っているのかどうか。設計時の想定を超える雨量が気象予想された時の操作のあり方はどうあるべきか。今のままでいいのか。また、単純な一山パターンの雨だけでなく二山目が来るとわかった時の操作はどうするのか。こういったことをきちんと操作則定として検討し位置付けるべきではないでしょうか。
このような観点から、こういった点で操作規則のあり方を根本的に再検討するよう求めるものですが、部長いかがでしょうか。


《答弁》 県土整備部長
 ダムの洪水調節方法は、下流の河川改修の進捗状況や背後地の利用状況等を勘案し確実に効果が発揮されるよう定めています。
 ご提案の方法では、大規模洪水が予測された時には、ダム下流で被害が発生する流量となった場合でも、洪水調整されることなく洪水初期の段階から被害が発生することになります。
 したがって、避難時間が確保できなくなることや、大規模洪水にならなかった場合に、本来ダムで守られるはずの生命・財産を危険にさらすことになるなどの理由により、現状では、ご提案の方法を採用し、操作規則に位置付けることはできません。
 県としては、これまでの操作方法に加え、6月から始めた計画の規模を超える洪水が予測されたときに、利水部分も含めあらかじめ可能な限りダムの貯水位低下を図り、治水機能の向上を図る新運用や、早期避難を促す情報伝達等による対応が適切であると考えております。


《要望》松坂英樹 県議
 住民からのダム操作改善の提案については論外だと、むずかしいと、いう考えのようです。操作規定本体の見直しそのものについても、必要に応じて見直すという従来の答弁の域を出ていないと感じました。これではダメだと思うんですね。
 答弁にありましたように、大きな洪水に焦点をしぼれば中小の洪水がおきてしまう、中小の洪水に照準を合わせれば大洪水を防ぐことはできない。あちらをたてれば、こちらが立たずというジレンマがある。これが今までの操作規則に対する考え方だと思います。
 しかし、このまま立ち止まってしまい思考停止してはいけないんだと思うのです。大災害の経験をしっかりと生かし、気象予測など今日的知見を生かして、この壁を超えないといけないと思うのです。1本の操作規則で対応できないなら複線化をするとか、知恵を出すべきです。
 この問題では、県庁内部での検討はもちろん大事ですが、ダムのはたすべき役割・あり方をめぐる全国的な問題でもあり、かつ流域の特性・ダムの形状など個別の条件が違う問題でもあります。
 ここはぜひ、大学の研究者や国とも連携をとりながら、調査・研究のための予算もつけて研究されるよう提案し、要望とさせていただきます。


(3)県管理河川の河川整備計画見直し
《質問》松坂英樹 県議
 この質問の最後に、県管理河川の河川整備計画見直しについてお伺いします。日高川の椿山ダムのすぐ下流となる旧美山村地域では多くの橋や護岸が被災しました。これらの災害は、急峻で曲がりくねった川の形に加え、ダムのただし書き放流によるエネルギーが合わさって引き起こされた災害だと考えています。また、中流域の旧中津村地域でも、破堤や越流など大きな被害が続出しました。
 住民の中からは、ダム建設により安全神話が強調された結果として、ダム建設後は、ダム直下や中流域の河川整備が遅々としてすすんでこなかったという声が上がっています。
河川の整備計画では、おおむね下流部の築堤区間の整備に焦点があたっています。洪水がおこった際の被害想定からすれば堤防の強化は重要でありますが、だからといって中・上流域の弱い部分の整備がおろそかになってもいけません。
 今回の台風災害をうけて、那智川では河川整備計画を全面的に見直すこととなりました。この際、県管理河川の河川整備計画を総点検・再検討し、下流の築堤区間だけでなく中流部やダム直下、またダム上流部も含め、全体を見通した整備計画となるよう見直すべきではないでしょうか。答弁を求めます。


《答弁》 県土整備部長
 河川整備計画は、河川の下流から上流までの県管理区間全てを対象にしております。このうち、現況の流下能力や背後地の利用状況、過去の浸水実績等を考慮し、概ね20年から30年間で「計画的に工事を実施する区間」を設定しております。
 すでに整備計画を策定している河川については、昨年の台風12号被害に対する改良復旧事業等を踏まえ、必要に応じ「計画的に工事を実施する区間」の変更等、整備計画の見直しを行ってまいります。


《要望》松坂英樹 県議
 部長からは、河川整備計画は本来流域全体を見据えたものであるとの答弁でした。河川の予算のボリュームの関係もありますから、全部いっぺんに進まないのは百も承知の上ですが、中流域での河川や堤防改修の要望を伝えても、「ここは河川の堤防ではありませんから・・・」などとなかなか事業化されなかった、進まなかった現実があるのです。
 日高川、有田川についても、すでに河川整備基本方針ができています。これに基づき、どこからどう整備をすすめるのかという整備計画を住民の意見を取り入れて策定するのが新河川法の精神です。
 12号台風災害をふまえ、流域住民の意見をしっかりと汲み上るよう充分な議論の場をもうけて、整備計画を練り上げてゆくよう要望をして、今回の質問を終わります。


  県土整備部長の答弁を聞く、松坂英樹県議(右)=12月18日、和歌山県議会

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2012年12月和歌山県議会 松坂英樹 一般質問=12月18日
2012年12月和歌山県議会 松坂英樹 一般質問=12月18日