2012年12月県議会
奥村規子一般質問 概要記録
議会中継録画
2012年12月19日
1.救急医療体制について
(1)医師不足の実態と解消の見通し
(2)看護師不足の現状と強化すべき取り組み
(3)初期救急の現状と次期保健医療計画における救急医療体制
2.介護保険制度について
(1)2012年の介護保険法改定・介護報酬改定の影響について
・介護保険料の大幅値上げ
・生活援助の見直し
・介護職員の処遇
(2)介護職員が行う医療行為の「法制化」について
3.県営住宅の家賃について
(1)建て替えに伴う家賃値上げの状況と対応
(2)低所得者の家賃減免制度の拡充について
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1.救急医療体制について
(1)医師不足の実態と解消の見通し
《質問》奥村規子 県議
議長のお許しを得ましたので3つの項目について質問いたします。
第1項目と第2項目は分割方式で第3項目は1問1答方式でお願いいたします。
最初に救急医療体制についておたずねいたします。
現在、救急医療体制は救急病院・救急診療所の告示制度に加え、基本的には初期、2次、3次救急医療機関の機能分担になっています。
私は今回、和歌山圏域をはじめ田辺、新宮圏域内5箇所の医療機関を訪問させていただきました。それぞれの病院は救急告示病院となっており、そのうち24時間体制で脳卒中や心筋梗塞・頭部損傷などの重篤救急患者を受け入れ、高度の診療を提供する3次救急まで担っている医療機関は3箇所で、休日や夜間における入院治療を要する重症救急患者など2次救急を受け入れている医療機関は1箇所です。
平成23年の県内の救急搬送人員は46,163人で平均毎日126.5人が搬送されています。これは前年より増加しています。
救急医療は、それぞれの医療現場の医師や看護師などのスタッフの奮闘に支えられ、県民の安心・安全に直結していることがよくわかりました。同時に医師不足、看護師不足の実態を痛感したところです。労働組合からは依然として医師の労働は一ヶ月の超過勤務が100時間オーバーになっていることもあると聞いています。
県としても医師不足が全国的に問題となる中、これまでさまざまな施策が講じられてきましたが、現在医師不足の実態をどのように認識し今後の確保の見通しをどのように考えているのか、福祉保健部長にお聞きいたします。
《答弁》 福祉保健部長
救急医療をはじめ、本県の医療提供体制につきましては、議員ご指摘のとおり、多くの医師や看護師などの献身的なご努力により支えて頂いております。
県では、医師不足解消の抜本的対策として、和歌山県立医科大学の入学定員を従来の60名から100名へと大幅に増員するとともに、近畿大学医学部にも和歌山県枠を設置いたしました。
また、ドクターバンク制度や産科などの不足診療科の医師を確保するための修学資金の他、救急医療などを担う勤務医の処遇改善など、様々な対策を講じて参りました。
昨年4月には、入学定員の増員に伴う若手医師が将来、県内各地で活躍できる環境を整備するため、和歌山県立医科大学内に地域医療支援センターを設置したところであり、定員の増員効果が現れる平成26年以降には、着実に医師の充足が進んでいくものと考えてございます。
(2)看護師不足の現状と強化すべき取り組み
《質問》奥村規子 県議
看護師不足についても依然として深刻です。ある医療機関では救命センターを持ちながら、後方ベッドとしての一般病棟では7対1の看護体制がとれず、看護師確保に四苦八苦しています。それでも看護体制が厳しい中でも、実習病院として後輩の育成に努力されいっそう過重労働となっている現状を感じました。
決してゆとりがある中で学生自身も学べる環境ではありません。したがって、実習病院に新卒生が入職する数も年度によっては、ごくわずかの時もあり、看護師確保の困難さをうかがうことができました。新卒生の県内定着率はいかがでしょうか。また、子どもが小学校に入学する時期に看護師が離職するケースもあり、看護師のみなさんから「学童保育」を充実させてほしいと強い希望が出ています。放課後児童クラブの拡充など安心して働ける環境整備など強化する必要があると考えますがいかがでしょうか。福祉保健部長お答え下さい。
《答弁》 福祉保健部長
看護師等学校養成所の卒業生の県内定着率につきましては、看護師3年課程において約8割であり、全国平均程度を維持しています。
また、看護職員が働き続けられる環境の整備につきましては、病院内保育所の設置や運営の支援に取り組んでいるところです。
併せて、看護職員に限ったことではございませんが、学校の余裕教室等で実施されている放課後児童クラブについても、設置箇所数の増加を図り、子育て環境の整備に努めているところでございます。
さらに、より安全で質の高い看護が求められている中、新たな看護基準の導入により、今後、ますます看護職員の需要の増加が見込まれることから、現在、養成所のない日高地方においては、看護専門学校の新設を支援するなど、県内の看護職員の確保に積極的に努めているところです。
今後とも、養成力確保・就業促進・離職防止・資質向上を4本柱に、量と質の両面にわたる看護職員の確保対策に取り組んでまいります。
(3)初期救急の現状と次期保健医療計画における救急医療体制
《質問》奥村規子 県議
次に初期救急の現状と次期保健医療計画における救急医療体制についてお尋ねします。
各病院の救急受け入れ患者の実態をお聞きしますと2次・3次機能を持つ医療機関でありながら相当な数の初期救急患者の受け入れも行っています。そのために1医療機関で昨年の救急患者33,333名(1日平均90名余り)の受け入れを行っているところもありました。現保健医療計画においては初期・2次・3次の機能分担と連携を進めてゆくことになっていますが、次期保健医療計画において今後どのように考えられているでしょうか、初期救急の現状と次期保健医療計画における救急医療体制についてお尋ねいたします。
福祉保健部長お答え下さい。
《答弁》 福祉保健部長
初期救急医療体制の現状につきましては、比較的症状の軽い患者が休日、夜間に地域の病院に集中し、病院勤務医に過剰な負担をかけている傾向があります。
このため、比較的症状の軽い方には、まずは地域の開業医で受診いただくため、救急医療情報センターにおける医療機関の紹介や、子ども救急相談ダイヤル(♯8000)を通じた適切な診療の働きかけにより、救急医療体制の堅持に向けて取り組んでいるところです。
次期保健医療計画においても、救急患者の症状に応じて医療機関が役割分担及び連携して、救急医療を提供できる体制づくりを引き続き推進するとともに、県民の皆様にも救急医療を正しく利用してもらうよう啓発することとしております。
2.介護保険制度について
(1)2012年の介護保険法改定・介護報酬改定の影響について
・介護保険料の大幅値上げ
《質問》奥村規子 県議
二つ目は、介護保険制度についてお聞きします。
最初に2012年の介護保険法改定と介護報酬改定の影響についてお尋ねいたします。
まず、介護保険料の大幅値上げについてお聞きします。
今回の制度の見直しで和歌山市の場合、65歳以上の方の介護保険料基準額は年間69,750円になります。第1段階(世帯全員が市民税非課税で、老齢福祉年金を受けている人)でも年間34,870円納めなければなりません。前々回の改定から6,310円も引き上げられています。多くの方から悲鳴の声が上がっていますがどのように受け止めていますか。
《答弁》 福祉保健部長
今回の改定では、高齢化に伴う介護保険給付費等が増加したため、高齢者の介護保険料基準額の県平均が月額5,501円となり、前期に比べて18.9%増加しました。
県としては、本年6月の政府提案で、介護保険料の軽減のため、国の負担割合の引き上げを提案したところであり、今後も関係者の意見をお聞きしながら、制度改正を行う国の動きに注視して必要な提案・要望を行ってまいります。
・生活援助の見直し
《質問》奥村規子 県議
今回の改定で特に生活援助の見直しがされました。これまでの「30分以上60分未満」、「60分以上」という時間区分が「20分」「45分」の時間軸を基本に「20分以上45分未満」と「45分以上」に再編され、介護報酬が2割近くも引き下げられています。利用者や事業所の方々など、介護現場で困っていることがないでしょうか、時間短縮によって、利用者のみなさんにとって深刻な生活後退が生じているのではないでしょうか。
《答弁》 福祉保健部長
生活援助の見直しについては、利用者から、訪問介護の時間区分変更により、事業者から生活援助サービスの提供時間を60分から45分に変更してほしいと言われ、サービスの提供時間の短縮で日常生活に影響が生じるといったお話もお聞きしています。
このため、事業者に対して、一律に提供時間を短縮するのではなく、利用者のニーズを再度見直した上で、必要な量のサービスを提供するよう指導しているところです。
・介護職員の処遇
《質問》奥村規子
介護職員の処遇改善交付金が介護報酬に組み込まれ、処遇改善加算が新設されましたが介護職員のみなさんの処遇改善につながっているでしょうか。
福祉保健部長お答えください。
《答弁》 福祉保健部長
介護職員の処遇改善については、今年度から介護報酬において「介護職員処遇改善加算」が創設され、昨年まで実施していた処遇改善交付金と同程度の15,000円の賃金引き上げ効果が見込まれています。そのため、できるだけ多くの事業所等において活用されるよう、積極的に呼びかけているところです。
(2)介護職員が行う医療行為の「法制化」について
《質問》奥村規子 県議
次に、介護職員が行う医療行為の「法制化」についてお聞きします。
昨年、社会福祉士法及び介護福祉士法「改正」によって痰の吸引、経管栄養が介護職の業務として、法律上「容認」されました。しかし、具体的な取り組みは都道府県にすべて丸投げされています。県としてどのように受け止めていますか。福祉保健部長お答え下さい。
《答弁》 福祉保健部長
社会福祉士及び介護福祉士法の改正により、今年度から、一定の研修を受けた介護職員は、安全体制が確保された施設などにおいて、たん吸引など定められた範囲内の医療行為ができるようになったところです。
そのため、県では、昨年度から、講義、演習及び実地研修で構成する、たん吸引等の研修を実施しています。
また、施設等に対しては、医師・看護師等による連携など、利用者及び介護職員の双方に安心なケアを提供できる体制を確保するよう指導しているところであり、今後もより一層、安全な介護サービスの実施に向けて、取り組んでまいりたいと考えてございます。
《要望》奥村規子 県議
介護保険料が負担能力を超える高さになっていることについては、これまでも訴えてきました。
何より必要なのは国の負担割合を引き上げることで、県としても要望しているということで、ぜひ強く求めていただきたいと思います。
同時に昨年度までの介護保険安定化基金を取り崩して国、県、市町村にそれぞれ3分の1ずつ返されました。県の分は基金に積み立てられましたが、これを保険料軽減に使うため、県としての減免制度をぜひ検討していただきたいと思います。
生活援助サービスは、時間が短縮されたことで、ヘルパーさんが調理する時間がなくコンビニ弁当にした、一緒に買い物に行けない、ゆっくり話すひまもないことで体調変化が気づきにくくなった、などのさまざまな問題がおこっています。訪問介護は利用者の在宅生活には欠かせない援助であり、ヘルパーさんはかけがえのない存在、いのちと暮らしを守る「命綱」ともいえる存在です。県は必要な量のサービスを拉供するよう指導しているということですが、時間を短縮しない生活援助をおこなえば、その事業所が経営的にやっていけないという問題にもなります。こうした現場の問題を掌握し、ぜひ生活援助の短縮を早急に見直すよう、国に働きかけていただきたいと思います。
介護職員の処遇改善は昨年度の交付金が今年からは介護報酬の加算に変更されたわけで、そのことで実際の待遇がどうなっているか、ぜひ実態を把握していただきたいと思います。
介謹職員の医療行為「法制化」については、そもそも医療行為は専門的訓練を受けた医療職がおこなうべきであり、医療も介護も体制の整備をはかることこそ求められていることです。その立場でとりくんでいただくと同時に、この問題では県がおこなう研修を拡充して保障することを要望いたします。
3.県営住宅の家賃について
(1)建て替えに伴う家賃値上げの状況と対応
《質問》奥村規子 県議
三つ目、県営住宅における家賃問題について、お尋ねいたします。
そもそも公営住宅は憲法25条で明記されている人間らしく生きる権利=生存権を保障する制度として、公営住宅法に基づいて、国や自治体がその整備に責任を負う住宅です。公営住宅法では、安い家賃で良質な住宅を低所得者に賃貸すること、また地方公共団体は、低額所得者の住宅不足を緩和するため必要があると認めるときは、公営住宅の供給を行わなければならない、と定めています。
この県営住宅の建て替えによる家賃の値上がりで不安が広がっています。川永団地では建て替えにともないニューかわなが団地に転居する人や、建て替え後の団地に再入居する人がいます。しかし新築されたことや広くなることで、家賃があがるため、特に高齢の人にとっては、住み続けられない問題がおこっています。家賃値上げに傾斜をつけるということですが、それも高齢者には大変です。
建て替えに伴う家賃値上げの状況はどうなっていますか。また県としてはどのような対応をされていますか。県土整備部長におたずねします。
《答弁》 県土整備部長
県営住宅の家賃につきましては、公営住宅法により、入居者の収入、立地条件、規模、設備状況、及び建設時からの経過年数に応じて定められており、建て替え後の家賃算定についても同様に行われます。
建て替え事業に伴う家賃値上げの状況につきましては、設備が充実、例えば風呂がなかったところに風呂を設置するといったことなどにより、以前に比べ家賃が上昇しております。
対応策としましては、家賃の激変緩和の特例措置として、5年間の傾斜家賃を実施するとともに、建て替え後の家賃上昇を抑えるため、面積の小さい住宅を増やしております。
(2)低所得者の家賃減免制度の拡充について
《質問》奥村規子 県議
次に低所得者への家賃減免制度についておうかがいします。この減免制度が拡充されれば、建て替えに伴う家賃値上げも軽減されると思いますので、この点からも拡充を要求したいと思います。
公営住宅家賃の算定基礎となるのは、公営住宅法施行令で決められた政令月収、つまり収入から給与所得控除や年金控除をひいた額の月割所得です。この政令月収が10万4千円以下では家賃算定基礎額が34,400円となり、そのあと政令月収が増えれば上がっていくしくみですが、10万4千円以下の部分が一律となっているため、このなかでの収入の幅が広く、低所得の人も一律の家賃となっています。老齢基礎年金の方は、月約65,500円の年金ですが、政令月収はゼロとなります。それでも34,400円が家賃算定基礎となります。
この収入分位のなかで低所得の人には家賃の減額が必要だと考えます。
和歌山県の場合、減額対象は収入そのものが生活保護法における最低生活費と比較して、0.3以下である場合は5割減額、0.5以下で3割減額、0.5から1以下では1割減額となっています。先ほどの老齢基礎年金の一人くらしの人の場合は、生活保護基準のおおよそ9割程度であり、1割減額となります。収入がゼロでも5割、最低生活費の半分というと月3万5千円程度の年金の方で3割減額です。月2万とか3万の収入ではそもそも生活できませんから、この減免というのは、実質的にはほとんど活用されない制度ではないでしょうか。
しかし、たとえば北海道の住宅家賃減免規定では、政令月収7万1千円以下で減額対象となります。1万3千円以下では最低負担額3,500円の家賃となります。老齢基礎年金の方なら家賃は3,500円です。北海道の場合、入居者の約7割が10万4千円以下の層であり、そのなかで7万1千円以下で減額対象となる人は3分の1だということです。
奈良県の県営住宅の家賃の減額規定も政令月収により決められています。政令月収4万円未満なら6割減額、5万2千円未満なら4割減額、となっています。
和歌山市の市営住宅家賃の減免規定をみても、政令月収1万円以下の場合5割減額などで、やはり政令月収が基準になっています。
和歌山県としても、生活保護の最低基準を下回る世帯だけではなく、段階的な政令月収による減額制度を設けなければ、住み続けるために必要な家賃減免にはならないのではないか考えますが、いかがでしょうか。
また県公営住宅条例に家賃の減免又は徴収猶予について定めながら、要綱では基本方針として、まず生活保護法の住宅扶助受給の意思を確認し、次に低家賃住宅への住宅交換を指示し、その上で減免等の措置を講ずる、とあります。つまり、家賃が払えなくなれば、生活保護で対応し、受給できない場合は、低家賃の住宅にうつることを指示する。その上で減免するというものですから、この家賃減免を受けようと思えば、まず安い住宅にうつることが条件となってくるわけです。これはおかしいのではないでしょうか。
そこで、県知事に、県の低所得者減免の対象のせまさについて、どうお考えか、拡充する考えはないか、お尋ねいたします。
《答弁》 仁坂知事
安全で健康的な住まいを提供するのが、我々県の仕事でありまして、一方、適正な家賃を徴収することで民間住宅賃貸者やあるいは自分の家にお住まいの人とのバランスを考えて、また、財政の維持継続性も考えて、県営住宅を適正に維持管理していかなければなりません。
他方、公営住宅の性格上、全員一律の家賃ではなくて応能の原則を適用して、所得の低い人には低額な家賃で提供している面もございます。
建て替え後の県営住宅は、施設も良くなり住み心地が良くなっており、先に申し上げましたような理由で便益に応じた負担をして頂かないといけませんから、家賃も上がることとなります。
この場合も、一律に上げるのではなくて、やはり先程言いましたような応能応益により、所得に応じて家賃を設定している訳でございます。
このようにきめ細かく定めた家賃でも、様々な事情で負担できない方々には、近隣の低額家賃の県営住宅への移転や家賃の減免制度の活用を提案するなど、個々の状況に応じた対応を行っておりまして、奥村議員の提案のような減免制度の拡充はできないし、またやるべきではないとそんな風に思います。
もし、これを強行いたしますと、例えば民間アパートを提供して生計を支えているような人が、過剰に圧迫されるということも起こるでしょうし、あるいは自分の持家をもっておられる人も必ずしも賛沢なあるいは豪華な家に住んでいる方ばかりとは限りません。
そういう方に対して、不公平感を与えるのもまた、いかがかということでございます。ということで、現状でよろしいんではないか、そんな風に考えております。
《要望》奥村規子 県議
公営住宅が低所得の方に対し、低廉な家賃で賃貸住宅を提供するものだということも答えられました。家賃は所得に応じた応能応益制度ということですが、この応能というところが、問題です。先ほどもいいましたが、政令月収10万4千円までが一律だということで、低所得者の部分が応能になっていない。低所得の人には大変多い家賃負担になっているので、ここを都道府県の減免制度で応能負担にすべきだと思うわけです。だから北海道や他県では、政令月収の一定部分までを減免している。和歌山県の場合は最低生活費までが対象ですから、政令月収でいえばゼロ円の人しか対象にならないわけです。この制度拡充を再度要望します。