2013年2月県議会
雑賀光夫 一般質問 概要記録
2013年3月7日 議会中継録画

1.教育問題について
(1)体罰問題について
  ・体罰の実態認識−「体罰自殺」以後、
   どういう取り組みをしたか

  ・教育論を含めた指導−配布した「体罰パンフ」への感想
  ・体罰を見すごさない教育現場のために
  ・運動部活動の指導の改善
  ・知事の体罰問題のとらえ方
(2)「県学力調査」再開にあたって
  ・「全国学力調査」と「県学習到達度調査」の関係はどうか
  ・「県学力調査検証委員会」報告との関係は
(3)教育行政が真剣に取り組むべきこと−教職員定数確保

2.風力発電低周波被害をめぐって
(1)下津町大窪地区と由良町畑地区の風力発電施設の経過と現状
(2)被害の訴えの把握
(3)「日本気象協会」というのはいかなる組織か
(4)県が参加して環境調査を
  ・県が参加してこそ二つの風力発電会社と連携した測定ができる
  ・住民の健康異常との関連をつかむ測定を
(5)県が参加して住民の健康調査を
(6)被害者の救済と被害拡大を止めるために

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《質問》雑賀光夫 県議
 議長のお許しを得ましたので、質問にはいらせていただきます。
 その前に、昨日、米軍機オスプレイの低空飛行訓練で、中村議員から緊急質問がおこなわれ、知事から、顛末の報告がありました。
 私たち日本共産党県議団は、欠陥機であるオスプレイの飛行訓練には反対であること、知事も飛行訓練中止を訴えるべきであるという申し入れを昨日させていただいたことを、ここに報告させていただきたいと思います。
 では、通告に従って、質問に入らせていただきます。

1.教育問題について
(1)体罰問題について
 第一の柱は、教育問題です。
 まず、体罰問題についてお伺いいたします。
 体罰を苦にして自殺した高校生の問題。「どうしてこの国では、子どもが死をもって抗議するまで、教育問題がまともに議論されないのだろうか」…暗澹とした気持ちにもなります。
 しかし、和歌山県の教職員は、そんな事件が起こる前に「体罰は教育ではない」「体罰をやめよう」という議論をしてきました。その中心になったのが、和歌山県国民教育研究所事務局長をなさっていた岩尾靖弘先生(故人)でした。
 私が和教組書記長だった1980年代に、教職員組合を中心にした議論をまとめたものが、「遺稿集」(ロマンを語る)に収録されています。1984年8月25日から翌年の2月まで、教職員組合の機関紙「和教時報」に連載されたものです。それをパンフレットにして議場にお配りしています。
 そのころも学校現場では、「体罰なしに荒れた子どもを押さえ込めるのか」「ある程度の体罰は、愛のムチといえるのではないか」などいろいろな意見がありました。私も体罰をしてしまった未熟な教師の時代の経験をふりかえりながらみなさんと論議したものです。私が体罰をしてしまった経験については、2007年9月の県議会本会議の場で、申し上げたことがあります。
 さまざまな議論をふまえながら岩尾先生は「何故、体罰など力で押さえ込むやり方が教育とはいえないのか」を説得的に書かれています。
 30ページを開いてみますと、体罰をしたことによって子どもが立ち直る場合もある、そこで教師が陥ってしまう落とし穴ということも書かれている。
 このパンフレットを配ってみなさんとお話ししていたら、年配の先生が言い出しました。
 「あのころ、わしのいた中学校で体の大きい体育の先生が子どもを殴ろうとしたとき、体の小さい女の先生がその腰にとりついて『体罰はいけない』と止めたことがあったよ」その女の先生の勇気、その女の先生が止めに入れた学校の民主的な空気、「体罰否定」の職場論議があったからです。それこそが子どもが生き生きと育つ学校だと思います。
 ところが、今にいたるも「ある程度の体罰は必要だ」というような俗論があります。
 2月2日に御坊市で教育研究大会が開かれました。その集会で知事が挨拶して、教育委員会が「体罰否定」の通達を出したことに「少し異議を申し上げます」とご発言になった。教育的情熱のあまり体罰をしてしまった先生もいるのではないか、その情熱をそぎはしないかと心配するということのようです。誤解を生みやすい発言ですが、体罰を容認しているわけではありません。知事がそんな心配をしなくてもいいような教育論に立った体罰否定の指導を、教育委員会がしなくてはならないと思います。
 教育長にお伺いいたします。

・体罰の実態認識−「体罰自殺」以後、どういう取り組みをしたか
 和歌山県内での、体罰の実態をどうとらえ、体罰について、どういう立場で通達をおだしになったのでしょうか。またどういう調査をなさっているのでしょうか。


《答弁》 教育長
 体罰の実態につきましては、大変遺憾なことではございますけど、悪質な体罰事案として、県教育委員会に報告され、懲戒処分を行った事案が、この5年間に3件ございます。
 県教育委員会では、今回の大阪市立高校の事件を受け、本県でこのような痛ましい事件を決して起こさせないという強い想いのもと、事件公表日の翌日の1月9日に、県内全ての公立学校に対し、体罰の禁止について通知いたしました。
 また、体罰の実態を把握し、体罰の禁止を徹底するために、県内全ての公立学校の児童生徒、教員及び保護者を対象にした調査を実施しております。
 現在、各学校では、調査や寄せられた相談をもとに、体罰についての事実確認を行い、その結果を3月8日までに県教育委員会に提出することといたしております。


・教育論を含めた指導−配布した「体罰パンフ」への感想
《質問》雑賀光夫 県議
 体罰については「愛のムチ論」というものがある。こうしたなかで、教育論的にも、法律論的にも、「なぜ体罰はいけないのか」ということを明らかにしなければ、体罰容認論が復活することになりかねないと思います。
 教育委員会として、教育論も含めた「体罰はゆるされない」という指導文書を出されたことがありますか。お配りしたパンフレットを読んで、どういう感想をお持ちでしょうか。


《答弁》 教育長
 議員御指摘のような性質の指導文書については出していませんが、県教育員会といたしましては、子どもに対して絶えず、愛情と情熱を持って指導にあたるとともに、様々な指導をした後に、きめ細かな手立てを行うことを念頭におき、子どもとしっかりと向き合うよう、県立学校長会や市町村教育長会等の機会を捉えて指導しているところであります。
 議員ご提示のパンフレットにつきましては、体罰によらず、子どもとの間に温かい人間的なつながりをつくり上げていく必要があるなど、共感する部分もあります。


・体罰を見すごさない教育現場のために
《質問》雑賀光夫 県議
 「体罰を見過ごさない教育現場」というものが大切だと思います。強い運動部の指導者がやっていることに口だしできない、あるいは、生徒指導を体力のある先生に頼っているから、その先生の体罰に口を出せないという状況もたくさん知っています。だからこそ、小柄な女の先生が大きな先生にとりついて体罰を止めたという話を聞くと、私には感動的であるわけです。
 自由で民主的な学校現場でこそ、体罰をなくすことができると考えます。
 教育長も、学校現場におられたころ、自分自身で体罰をしてしまったり、学校内で「体罰」があるのを知りながらとめられなかったというような、つらい経験はないのでしょうか。「体罰を見逃さない教育現場」づくりのために、どういうことが必要だとお考えでしょうか。


《答弁》 教育長
 私も、学校現場に勤務している時には、体罰の場面に遭遇した経験がございます。
 ある高等学校の生徒が、修学旅行を直前に控え、注意していたにもかかわらずバイクに乗り、事故を起こし亡くなりました。クラス全員でその生徒のお葬式にお参りに行く日、ある生徒が喫煙をしたことがわかりました。そのことで、担任教諭はその子に涙を流しながら、「何故、この事態を理解できないのか」と思い、体罰を加えました。体罰をした教員も、受けた生徒も、また、周囲の生徒も皆互いに泣いていました。これも体罰には違いないのですが、つらく複雑な思いをする場面でした。
 体罰の問題を解決するためには、子どもといかに向き合うかを自らに厳しく問い返しながら、どこまでも子どもに深い愛情と熱い思いを持って指導にあたることが重要であり、教職員がこうした共通理解を持ちながら、日々指導にあたることが、体罰を見逃さない学校につながると考えております。


《コメント》雑賀光夫 県議
 私は、教師というものは若い頃、たくさんの失敗をしながら成長してきていると思います。岩波新書に金沢嘉一「ある小学校長の思い出」という有名な本がありますが、若い頃、一生懸命やった。しかし、それはできる子を上の学校にいいかせる教育であったということを悔恨をこめて書いています。
 体罰をふくめて、自分の未熟なときのことをかくして、きれい事を言っては教育論議がふかまりません。
 教育長がお話になったようなこともありますが、その話はそれでけっこうですが、長い教師生活をしていれば、運動部活動や生徒指導で、やむにやまれぬ気持ちで体罰をしてしまったという枠を超えた、もっと見るに堪えないような体罰に胸を痛めたこともあると思うのですが、これ以上ここで語れというのは、やめておきましょう。

・運動部活動の指導の改善
《質問》雑賀光夫 県議
 体罰問題である会合でおはなししましたら、あるお母さんから話が出ました。「体罰でないんやけど、うちの子が少年サッカーに入っていたころ、合宿へついていった。指導者は笛を吹いて、暑い中で走らせてばかりしている。親は心配やが口出しもできずにつらかった」という話をされていました。
 私は、かつて「運動部活動のありかた」を取り上げたとき、教育委員会保体課が中心になってつくった「運動部活動指導資料」というものを紹介したこともあります。角谷整形の先生なども加わってつくったものです。スポーツ界でも体罰が問題になったこともあって、改めて読み返してみました。
 高校の強い運動部にはいると、一年生は早く来てグランド整備とボール拾いをする。それに耐える根性のあるものだけが残ればいいと言う考えがある。
 下級生は、グラウンドの向こうを先輩が通ると「おはようございます」と大声で叫ぶ習慣がある。
 こういう問題をどう考えるべきかということまで、説得的に書いている。
 合宿で走らせるというお母さんの話に引きつけていえば、「合宿で走らせても急に体力がつくわけではない。合宿の機会は、スキルの向上をはかるべきである」と書いてありました、なるほどと思いました。
 大変よくできたものだということをよく申し上げるのですが、もっとお使いになってはいかがでしょうか。


《答弁》 教育長
 議員ご指摘の「運動部活動指導資料」につきましては、部活動を指導するうえで、大変役立つものであると考えています。
 現在、その資料をもとに、新しい指導の観点も加えながら、より効果的な指導ができるよう、新たな「指導の手引き書」を作成しているところであり、その活用を徹底してまいります。
 さらに、部活動の活性化を図るとともに、生徒が安心して自分の目標に向かうため、保護者や地域の方々にも見守ってもらえるような「開かれた部」の運営を行うよう各学校を指導してまいります。


・知事の体罰問題のとらえ方
《質問》雑賀光夫 県議
 次に、知事にもお伺いします。
 「教育的情熱をそぐことにならないのか心配だ」という心配をされたそうですが、知事の発言を善意にとれば、私がパンフレットを配って教育論としても「なぜ体罰がいけないのか」を明らかにしなくてはならない、一片の通達ではだめだと言っていることと、重なり合うのではないかとも思うのですが、お配りしたパンフレットへの感想も含めてお伺いしたいと思います。


《答弁》 仁坂知事
 体罰は決して許されない行為でございます。
 教育には、「教えよう」あるいは「子どもを良くしよう」という情熱で子どもに向き合うことが必要であると思います。
 しかし、いくら情熱があっても、良くしてやろうと思っても、無理矢理体罰で子どもに言うことを聞かせるということは愚策であると、私は思います。やはり、子ども達が心の中で納得し、それから共感するということがないと、教育の効果は上がらないと私は思います。
 教育委員会の点につきまして、議員御指摘のあった点については、「体罰はいけない」ということを通達するだけで過ごしていないか。それで事態は良くなるのか。ひょっとしたら、これは処分されるということで、子どもに情熱をもって向き合うことから逃げる教師が出て来ないか、というようなことを、やはり考えておかないといけないのではないか、そんな風に思った訳です。
 教育委員会は、単に通知文書を出すだけで終わらせずに、体罰に頼らない教育をするにはどうしたら良いかと、日頃から教師に対して指導していくことを大切にしてもらいたいと考えております。体罰はいけないのですよ、ということと共に、どうやって子ども達を高めていくか、体罰などに頬らないで立派な教育をやるにはどうしたら良いか、そういうことを皆で追究しなくてはいけないという風に思います。
 さらに、それでも事が起こった時には、形式的に、例えば体罰をした教師を処分して終わりということではなくて、何故そんなことが起こったのか、あるいは再発はどうしたら防止出来るのか、県教育委員会や市町村教育委員会、それから県当局も学校と一緒になって、総力を挙げて取り組まなければいけないという風に思います。
 パンフレットの件ですが、以上のようなことを唱える意見は多数あります。本パンフレットも、そのような種類だと思います。しかし、終わりの方で「一発殴られた方がすっきりする」うんぬんと書いてあるところがありまして、そういうのは先程の私の発言が誤解されかねないような、発言の一部をつまんで報じられることがよくある現代の世相から見ると、危ないなという風に思いました。


《コメント》雑賀光夫 県議
 教育問題では、なによりも自由な討論が大切です。そういう意味で、私も知事の発言にも、揚げ足をとるようなことはせずに、議論をさせていただきました。


(2)「県学力調査」再開にあたって
《質問》雑賀光夫 県議
 第2は、当初予算で県独自の「学習到達度調査」をおこなおうとしている問題です。
 県の学力調査は、私が県議会に出させてもらった直後からはじまりました。当時、高校学区撤廃につづいて中高一貫の県立校導入とあわせて、この学力調査の問題をめぐって当時の教育長と論戦を交わしたのを思い出します。いま、高校学区撤廃はこれでよかったのかという声が広がり始め、中高一貫の県立中学校についても、とくに地方では、周りの公立中学校へのマイナスの影響が指摘されています。学力診断は、その後、文部科学省による学力調査がはじまり、県の調査は一休みしていたのですが、再開するということです。

・「全国学力調査」と「県学習到達度調査」の関係はどう
 県学力調査は、「国の動向をみながら」とこれまで表明してこられたと思うのですが、国の学力調査とは、どういう関係にあるのでしょうか。


《答弁》 教育長
 今回、計画しております学習到達度調査は、小学校4年・5年・6年生と中学校1年・2年生を対象に、12月の実施を予定しております。
 この調査は、今年度までの全国学力テストにおいて、本県の子どもたちの学力が全国平均を下回る状況にあり、この結果を県教育委員会として厳しく受けとめ、その責任をしっかりと果たす意味で実施するものです。
 したがって、この調査は、本県の子どもたちの学力を向上させることが目的であり、これにより児童生徒一人ひとりの学習状況を正確に把握した上で、個々の課題にあわせた指導を行い、その学年で学習する内容を確実に身に付けさせたいと考えております。
 変化の激しいこれからの時代を担う和歌山の子どもたちに、生き抜く力の根幹をなす学力を身に付けさせることは、県教育委員会としての責務であり、こうしたねらいをもった本調査は、学力や学習状況の実態調査を主たる目的とした国の調査とは異なると考えております。


・「県学力調査検証委員会」報告との関係は
《質問》雑賀光夫 県議
 第二に、平成22年2月に「和歌山県学力調査検証委員会」から「平成23年度及び24年度以降の県学力診断テストのあり方について」という報告書が出されています。委員長は当時和歌山大学教育学部長であった松浦善満先生であり、この報報告書3ページに「全国学力・学習状況調査が、本県の目的とする学力調査として十分活用できるのであれば、まずその活用を検討することが必要である」と書いている。つまり、国の学力調査があるのに、そのデーターで、目的を達せられるのなら、費用も子どもへの負担をかけて独自の学力調査をしなくてもいいということであります。
 教育長にお伺いいたします。政策変更にあたって、「検証委員会」にははかられたのかどうか。お答えください。


《答弁》 教育長
 本県では、平成15年度から県学力診断テストを実施してきましたが、これと同様の目的をもった全国学力テストが始まったことから、これらの2つのテストのあり方等を検討するため、議員ご指摘の検証委員会を設置したところです。
 今回、新たに実施する学習到達度調査は、先ほど申しあげました目的で行うものであることから、検証委員会を改めて設けることはしておりません。


《コメント》雑賀光夫 県議
 こんどの県の「学習到達度調査」は、かつての県の「学力調査」とも国の「学力調査」とも性格や目的が違うといわれたいようですが、「子どもたちの学力を向上させる」調査と「学力や学習状況の実態把握」のための調査などというものを、区別できるはずがありません。言葉のごまかしであると申し上げておきたい。
 22年に「報告」を出した「検証委員会」は、「学力診断テスト」という特定のテストでなく、もっと広い意味での「学力調査」の検証を課題としておりました。
 このたび、「全国学力・学習状況調査」は、従来の30%の抽出調査でなく、悉皆調査としておこなわれるとおききしました。それなら、なおさら県独自の「学力調査は必要ないというのが、「検証委員会」の立場ではないでしょうか。
 たしかに「検証委員会」は、一年任期のものですが、「報告」では、「24年度以降」のことについて答申し、「ひきつづき検証したい」といっています。そんな専門的な議論も無視して、「調査の性格がちがう」などといって、思いつきで「テスト」を持ち込まれては、学校現場はかなわない。特に6年生は、国・県のテストが重なる。学校現場の意見を聞いて、よく検討されるよう、要望しておきます。


(3)教育行政が真剣に取り組むべきこと−教職員定数確保
《要望》雑賀光夫 県議
 いま、「体罰」「いじめ」などたくさんの問題をかかえている学校で「学力向上」のために県教育委員会がなすべき最大のことは、人的配置だろうと思います。
 35人学級のための国の予算措置がなされない中で学校現場に混乱が生じるのではないかと心配しております。定数内講師の問題も繰り返し指摘してまいりました。
 教育行政が力を入れるべき最大の課題は、教職員定数の確保であることを申し上げておきたいと思います。


2.風力発電低周波被害をめぐって
《質問》雑賀光夫 県議
 私は、2010年の9月県議会以来、なんどか風力発電に伴う低周波被害について、この県議会でとりあげてまいりました。
 最初は、海南市下津町の大窪という地域での被害の訴えでした。その後、由良町での被害の訴えを聞き、昨年2月の県議会でとりあげました。その後、何度か由良町にも出向き、住民の皆さんとお話しする中で、被害の深刻さを実感いたしました。
 低周波被害と言うのは、個人差がありますから、感じる人と感じない人がいます。私などは、なかなか感じられません。下津町大窪では、被害を訴える方は、少数です。下津町では、私が問題をとりあげたことをきっかけにして、何度かの低周波の測定をしていただきました。
 ところが、由良町に行ってみると、いたるところで被害の訴えを聞くわけです。
 そこで、質問いたします。

(1)下津町大窪地区と由良町畑地区の風力発電施設の経過と現状
 下津町大窪で少数の被害の訴えがあり、由良町畑地区で被害の訴えが多発しているわけですが、それぞれの地域には、いつから、どれだけの大きさの風車が稼動し始めたのでしょうか。


《答弁》 商工観光労働部長
 海南市下津町大窪地域では、株式会社ユーラスエナジー有田川が平成21年10月から有田川ウインドファームとして、1,300kWの風車10基で稼働し、由良町畑地域では、株式会社広川明神山風力発電所が平成20年10月から広川明神山風力発電所として、1,000kWの風車16基で、また、由良風力開発株式会社が平成23年9月から由良風力発電所として、2,000kWの風車5基でそれぞれ稼働しております。


(2)被害の訴えの把握
《質問》雑賀光夫 県議
 では、健康被害の訴えが、いつから出始めたのかをお伺いしたいと思います。下津町大窪、由良町畑地区で、健康被害の訴えは、いつから、何件ありますか?また、県内の他の地域で風車にかかわる被害の報告はありますか。
 福祉保健部長から、おこたえ下さい。


《答弁》 福祉保健部長
 風力発電に係る健康相談については、保健所が実施するクリニックなどで対応しております。
 具体的には、海南保健所で、平成22年9月以降、海南市下津町にて体調不良を訴えられている2名の方の健康相談を実施しています。
 また、御坊保健所でも、平成24年3月以降、由良町畑地区の方など、3名の方からの騒音・低周波についての健康相談を実施しています。
 その他の地域につきましては、現在のところ、体調不良を訴えている方の報告は受けておりません。


《コメント》雑賀光夫 県議
 健康被害を感じても、普通はお医者さんへいく。個人の健康不安は、保健所ではつかみにくいのです。
 私から整理して申し上げます。下津町の大窪では、ユーラスエナジーの風車が稼動し始めたのが平成21年10月ですが、最初に被害を訴えた女性は翌年1月には耳鳴りを感じるなどして、二重サッシなどを入れたがかえって苦しくなり、半年後には転居しています。もうひとりの方のケースは、和歌山市に転居された。少人数であっても、被害を感じる方にはたいへんな苦しみです。
 由良町畑地区の場合、平成20年10月に広川明神山風力発電が操業をはじめました。最初に訴えをされたTさんは、その年の11月から胃が重いなどの異常を感じたといいます。さらに平成23年9月に2000KWの由良風力発電風車が稼動しました。Tさんの症状は激変しました。その年の年11月からヒューンヒューンの騒音で耳が痛くなる、ズンズンズンズンの振動が、畳の下から天井から感じるようになります。そして翌年1月8日の畑地区集会が開かれ、被害の声があがっています。この年の二月県議会で、私は由良の低周波被害をとりあげた。福祉保健部長がお答になった3人の健康被害の相談というのは、この後のことになります。先ほど藤本議員がお配りになった資料のように、騒音被害、低周波被害をふくめて異常を訴えている方が10数名から20名近くおられるといわれます。
 保健所は、地域のすみずみまで健康異常をキャッチするネットワークをもってはいませんから、キャッチがおそくなったことは責めません。
 しかし、そういう問題があることを知ったらほうっておいてはいけない。とくに、由良町の畑地区では、状況は深刻です。何をしなくてはならないのかは追って申し上げます。


(3)「日本気象協会」というのはいかなる組織か
《質問》雑賀光夫 県議
 公害問題の歴史を振り返ってみれば、そこには長い戦いが必要でした。
 国の基準によって規制するには時間がかかります。それでも、必要なデーターを積み重ねなくてはなりません。もうひとつは、国の基準を待つことなく、住民が協定などを武器に業者を規制することをめざします。そのために、県などの行政は、住民の便宜をはからなくてはなりません。
 「測定」というものも、測定したらただちに風車を止められるような数値が獲られるかどうかでなく、測定値をつみかさねなくてはならない。そんな立場から測定方法についての質問や提案をいたします。
 第一は、由良町での風力発電業者が日本気象協会に委託しておこなった調査が、町民の間に不信感を生んでいるという問題があります。
 「日本気象協会」というところは、測定機器をもっていて測定の専門家ではありましょうが、低周波の身体への影響を判定するところではありません。ところが、住民に配られた測定結果報告には、「身体への影響はありません」という「判定」のようなコメントがつけられていました。
まず、環境生活部長にお伺いしたいのですが、日本気象協会という組織は、測定結果が身体に影響があるかどうかまで判定するような組織なのでしょうか。


《答弁》 環境生活部長
 一般財団法人日本気象協会は、気象関係の業務に加えまして、音圧レベルや濃度レベル等、環境に係る計量証明事業の登録を受けまして全国で測定業務も行っている組織でございます。


《コメント》雑賀光夫 県議
 その通りだと思います。
 風力発電会社から依頼された「気象協会」は、風力発電会社の意をくんで、住民への説得まで買って出たわけです。これでは、住民のみなさんの不信は当然です。


(4)県が参加して環境調査を
・県が参加してこそ二つの風力発電会社と連携した測定ができる
《質問》雑賀光夫 県議
 ところで、下津町大窪では、県と業者が共同して、風車を止めたり動かしたりして、測定をおこなっています。先日、3月3日の区民集会には、県の職員においでいただいて、過去8回の測定結果が報告されたと聞いています。
 しかし、さらに被害が激しい由良町畑地区では、二つの風力発電会社、2000KWのもの5基と1000KWのもの16基がずらりとならんでいる。それなのに県が測定にかかわっていない。由良風力発電所が気象協会に依頼した測定では、広川明神山風力発電所は、風車をとめたり動かしたりして測定に協力すると言うようなことはしていないわけです。
 地元には、「せめて、由良町でも、県が加わって下津大窪並みの測定をしてほしい」という声があります。ぜひこの声に応えてほしいと考えますが、環境生活部長、いかがでしょうか。


《答弁》 環境生活部長
 由良町での調査につきましては、これまでも、由良町、地元区及び事業者との話し合いがなされ、また、測定につきましても現に事業者において実施されている状況でございます。
 なお、本来は、当事者である事業者が実施すべきものであると考えておりますけれども、由良町、地元区及び事業者とよく相談したうえで、必要な対応について検討してまいります。


《コメント》雑賀光夫 県議
 県として調査に協力することにはやぶさかではない。
 しかし、由良町、地元区および事業者で話し合いがなされているので、頭越しにやるわけにもいかない。県からも地元に話しもして、一緒に測定も含め検討していただけるということだと思います。よろしくお願いします。


・住民の健康異常との関連をつかむ測定を
《質問》雑賀光夫 県議
 第三の提案は、低周波の測定は、体調異常を感じるときと感じない時のそれぞれについておこなって、体調異常との因果関係を検出すべきだと考えます。
 被害の訴えの多い地区に測定機械をもちこみ、住民の健康異常と低周波の関係を検証できるような測定をおこなうべきだろうと思います。
 そうした測定をやっていただけないでしょうか。


《答弁》 環境生活部長
 被害を訴えている方の声をよく聞きまして、専門家とも話し合って、もっとも合理的な方法で実施すべきものと考えております。


《コメント》雑賀光夫 県議
 この点も、地元から要望があれば、のりだすことにやぶさかではないと受け取らせていただきたいと思います。


(5)県が参加して住民の健康調査を
《質問》雑賀光夫 県議
 低周波測定とはちがった面からの、問題解明の方法の一つは、住民の健康調査であります。住民から健康異常の訴えがあるのをまっているという受身の立場でなく、保健所からこの問題に焦点を当てて、一定の低周波被害とおぼしき訴えがある地域では、とくに住民からその希望が出された場合には、積極的に住民の健康についてききとり・血圧などの調査をされてはどうかと思います。調査項目は、私は素人ですから専門家のみなさんが住民のみなさんの声を聞いていただけばいいと思うのですが、福祉保健部長、いかがでしょうか。


《答弁》 福祉保健部長
 由良町では、風力発電に係る健康問題について、町で相談を受ける旨、地域住民に説明されております。保健所としては、引き続きクリニックなどで対応を行うとともに、町が行う健康相談に協力してまいります。
 なお、地元や事業者等が、地域住民の方々の健康状況に関する調査などを実施する場合は、関係機関・関係部局と連携のもと、協力してまいります。


《コメント》雑賀光夫 県議
 「待ち」の姿勢ではだめです。
 ただ、「地元や事業者等により健康調査等が実施される場合は協力する」とお答えになりましたので、地元自治会などが健康調査を実施することになれば、ご協力いただけるということですから、よろしくお願いします。


(6)被害者の救済と被害拡大を止めるために
《質問》雑賀光夫 県議
 最後に知事におうかがいいたします。いま、由良町の畑地区は、全国的にも注目される風力発電低周波被害地域になっていると思います。原因究明がすすめられ、その原因をとりのぞく技術進歩がないかぎり、新しい風車の建設はひかえるべきだし、現行の風車もとめることが必要だと思います。
 被害者を救済するために、また、被害を大きくしないために何ができるのか。知事のところへも地域住民の方から要望が届いていると思います。知事のご見解をお伺いします。


《答弁》 仁坂知事
 電源の確保という観点から、自然エネルギーへの取り組みは大変重要だと認識しております。その中でも風力発電は、原子力発電は止めるべきだという意見の人からは救世主のように思われているわけでありますが、ところがこれもまた不都合な事実、あるいはリスクがあるかもしれないというのは議員ご指摘の例でも語られているところであります。
 事業者が、環境影響評価法や自然公園法など関係法令を遵守し、地元の理解が得られるよう十分な説明を行った上で事業を実施するべきものであるということは当然でありますが、しかし、それでもそのような不都合な事実があってはいけないということで、風力発電に係る健康相談については、地元市町と連携し、保健所において対応してきたところであります。
 風力発電施設からの低周波音、あるいはその他の色々な音とかそういう点について、私は早期に科学的に客観的な基準を設定することが必要と思っておりますが、多くの知見を集めてこれを行う必要がありますから、そうなると国しかできません。そこで、平成23年度と平成24年度の2ヵ年にわたり政府提案を行ったところでありまして、検討もかなり進んでいると理解しております。
 現状では風力発電に係る課題については、地元区、町と事業者が協議の上で対応すべきものと考えておりますが、県としてもよく調べて、よく考えて地元自治体等に対しては必要な協力を行っていきたいと考えております。


《コメント》雑賀光夫 県議
 風力発電について、私も自然エネルギーの一つとして期待していました。しかし、これだけ被害の訴えがあるものをほうっておくことができません。
 いま、地元の「由良町の風力発電を考える会」から出されている要望というのは、すぐに風車をとめてしまえということでなく、「夜間停止・低速運転の試験実施」それとあわせた、騒音・低周波の測定や健康状態の把握という、きわめてささやかな要求です。ぜひとも誠実にお答えいただきたい。
 風力発電被害について、地元・業者・そして国にまるなげしてというのでは困ります。知事は、低周波被害に苦しむ方の訴えを直接お聞きになったことがないのはないでしょうか。 直接お会いになって、苦しみの状況を生でお聞きいただくこと要望しておきます。
 以上で、私の一般質問をおわります。ありがとうございました。


 西下教育長の答弁を聞く、雑賀光夫県議(右)=3月7日、和歌山県議会
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2013年和歌山県議会 雑賀光夫 一般質問
2013年2月和歌山県議会 雑賀光夫 一般質問