2013年9月県議会
松坂英樹 一般質問 概要記録
2013年9月20日 議会中継録画

1.和歌山県がなくなる「道州制」について
(1)「道州制」と関西広域連合
(2)「道州制」と「大阪都構想」
(3)和歌山県がなくなる「道州制」について

2.教育問題
(1)高校授業料「無償化」への所得制限
(2)少人数学級の充実

3.みかん対策
(1)2013年産みかんの生育状況と課題・対応
(2)機能性成分に注目した販売促進と品種開発
(3)ジュースなど加工食品の強化方向

4.有害鳥獣対策
(1)被害状況の推移と現状
(2)シカの管理捕獲の効果と課題
(3)捕獲対策の方向性

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1.和歌山県がなくなる「道州制」について
《質問》松坂英樹 県議
 通告にもとづき、以下4つの項目で一般質問をさせていただきます。最初に、和歌山県がなくなる「道州制」についてお尋ねします。
 いま国会では、都道府県を廃止し、自治体の広域化を強制的に進める道州制への動きがたいへん急となってきています。政府与党は、道州制の導入推進を政権合意文書に盛り込み、「道州制推進基本法案」を先の国会へ議員立法で提出しようと進めてきました。
 その一方で、全国町村会や全国知事会など地方6団体はじめ、各界から反対、慎重の意見が出されたため、法案提出は先送りされ、選挙後の次期臨時国会での提出がねらわれています。
 道州制については、時の政府、自民党、民主党、維新の会、財界など様々な立場から推進が叫ばれてきました。「新しい国づくり」「究極の構造改革」などとして、国のやるべき仕事を外交・防衛など非常に狭い分野に限定し、医療・介護・教育などの仕事は「権限移譲」の名のもとに、道・州や基礎自治体に押し付ける「国家の大リストラ」ともいうべきものです。
 財界は道州の役割として、行革でひねり出した財源を中心部への産業基盤整備に集中することを露骨に求め、経団連も緊急提言を発表し道州制基本法成立への取り組み加速を求めています。
 日本共産党県議団は、この道州制推進は、国の責任を放棄し、地方自治を破壊するものだと批判してまいりました。
 政府与党の「道州制基本法案」では、道州制への移行スケジュールが示され、基本法案成立後に道州制国民会議に諮問をおこない、その国民会議は諮問を受けた後3年以内に答申をする、そして答申にもとづき2年を目途に法整備しなければならないなどと、合計5年程度で道州制の導入を目指すと、スタートさえすればとんとん拍子に話が進められてゆきかねない、そういう重大な情勢となってきたわけです。これには全国町村会など地方からの反発があり、参議院選挙に配慮して期限を明記しなくなったものの、方向はまさにここをめざして進んでいるわけです。5年後に道州制となれば、2年後の和歌山国体のときには和歌山県は存在するが、7年後の東京オリンピックのときには和歌山県はもうなくなっているのか?という、すぐ近い将来の話でして、えっ?もうそんなことになっているの?という話だと言えると思います。
 この重大問題、国会での動きだと放置せず、県議会としてもしっかりと議論する必要があると考え、以下、仁坂知事に、現在政府が進めている「道州制」への所見を順次お伺いしてまいります。
(1)「道州制」と関西広域連合
 まず、一点目に「道州制」と関西広域連合についてです。関西広域連合については、知事はこれまでの議会答弁でも「府県の存続を前提」としている、「道州制を前提とするものではない」という認識を示されてきました。ところが政府は今回、はっきりと「都道府県を廃止し、全国の区域をわけて道州を設置する」ということを明記した法案を出すわけです。この「道州制」の急展開について、関西広域連合ではどう議論され、知事はこの「道州制」の動きと関西広域連合の関係をどう考えているのか。まずこの点についてご答弁を願います。

《答弁》 仁坂知事
 関西広域連合は府県との併存を前提としたものであるのに対しまして、道州制は府県の廃止を前提とした組織であります。また、広域連合は地方自治法に基づく組織でありますが、道州制の実現には新たな法律の制定が必要となるなど、設置根拠も異なる組織であります。このように、広域連合がそのまま道州に転化しないということは明らかでありまして、関西広域連合設立に際しての前提となっております。また、本県が広域連合への参加の議決を頂いた平成22年9月の県議会においても、その旨の付帯決議を頂いております。
 現在、与党において道州制導入を推進するということになっておりますが、道州制の具体的な制度内容、これは必ずしも明らかではなくて、関西広域連合においても、色々な議論がありますが、私はムードとかあるいは行きがかりとか政党間の対立軸とかの理由で大事な地方自治制度が軽率に変わってしまうことについては困るというふうに思いますし、関西広域連合の他の諸君も同じように思っているというふうに思います。
 自民党及び公明党による道州制基本法案の骨子案が発表されていますが、今のところ道州制に係る重要事項や制度設計を「道州制国民会議」に検討をさせるというような内容にとどまっておるということでございます。
 従って、関西広域連合では制度の根幹について明確にしたうえで、国民会議での調査審議を行うように自民党及び公明党に対して4月に申し入れを行ったところであります。制度の根幹というのはどんなふうなのがいいと思っているんだけど検討してくれと、こういうことでございます。
 さらに、政府が進める道州制について、その課題・問題点を指摘していくため、関西広域連合の中でも「道州制のあり方研究会」を立ち上げて独自に検討を行っているところであります。
 道州制をめぐって、関西広域連合の委員の中の議論もちょっとご紹介いたしますと、県が道州に統合されて、その道州が国の出先機関となってしまっては困ると、これをいわば悪口的に「中央集権型道州制」と言うんですけども、これは困るというような議論があります。
 一方では、その割には出先機関を移譲せよという意見が強くて、それをパッとうまく利用されると、そういうことになるなという所については懸念があるということであります。
 ある委員は連邦制がよろしいというようなことを言っておられますが、何でも別々の制度を作れば、世界の中の日本の地盤沈下が起こると、私なんかは思います。そうでなくても、世界は今、統合化に向けて、結構動いているんで大丈夫かなと思います。
 このように我々の中でも議論が収れんしておりませんし、ましてや日本全体ではそういう状態だと思います。まずはムードだけではなくて、しっかりとした設計が必要なので、道州制基本法案の国会への提出時期については我々もあまりよく分かっておりませんけれども、中味の議論をしっかりしようということをタイミングを失することなく、我々としても指摘を行っていくべきではないかとそんなふうに思っております。

《コメント》松坂英樹 県議
 答弁は、広域連合としても、国主導で一気にすすむことに懸念をしているというお話でした。課題や問題点も指摘していくということだったと思います。
 知事は、本県議会での「広域連合は、そのまま道州に転化するものではないこと」という付帯決議にもふれられましたが、そういう経過からしても、「このまま進むのはちょっと待った」という内容であるということだと思います。
 では、こんどは角度をかえて、大阪のことだと考えていたら大阪だけで収まらなくなっている「大阪都構想」との関係をお尋ねします。

(2)「道州制」と「大阪都構想」
《質問》松坂英樹 県議
 ただいま選挙が行われている堺市長選挙でも、この「大阪都構想」が大争点となっています。維新の会と大阪・府市が強行にすすめようとしている「大阪都構想」は、当初2重行政の解消等を掲げていたわけですが、「大阪市と堺市だけでなく周辺10市ぐらいを合併し、尼崎や西宮をこえて神戸まで特別区にしたい」と近隣府県の自治体も大阪都に組み込む構想を示し、「道州制に至るプロセスの中に大阪都構想がある」として、「都構想」は「関西州」への地ならしであり、道州制へと突き進む姿勢であることがあらわになってきています。
 このような新たな状況が見えてくる中で、知事は「道州制」と「大阪都構想」との関係については、どう考えておられますか。ご所見をお示し下さい。

《答弁》 仁坂知事
 一言で言うと、何の関係もないというのが答えでございますが、大阪府と大阪市は、大阪市を廃止して5から7の特別区に再編する「大阪都構想」を具体的に設計して、それを公表しているわけです。これは報道でありますけれども、府市議会の議決とか住民投票を経て、早ければ平成27年4月からの移行を目指すというふうにしているようであります。
 一般に政令市、政令指定都市というのですけど、中核市というような制度がたくさんありまして、先ほどの道州制の観点からいうと、もうちょっと統合しようという議論が一方である中で、実はその47もある都道府県の権限をさらにそこだけに移すというようなことが制度としてあるわけであります。すなわち、これは分割の思想だなというふうに思います。
 しかし、どうしても一部だけ権限を移すということで、手を引いてしまう訳にはいきませんので、二重行政になりがちだし、税源の偏りが大変あります。大阪都構想は、大阪府と大阪市のそういった意味での不都合の解消を目指すというようなものだったと私は理解しておりまして、大阪府の中の話であります。
 道州制は現行の都道府県の区域をこえる、より広域的な自治体を設置するものだと理解しておりますが、そういうことであれば、実は両者には何の関係もありません。従って論理的には何の影響もありえないと私は思います。

《コメント》松坂英樹 県議
 知事は、現時点でも、道州制と大阪都構想は何の関係もない、別のもので、即、道州制ではないというお考えのようです。
 知事が引き合いに出された、大阪府と大阪市との話し合いはそうであっても、維新の会としての方向性は、メッキが剥げてはっきりしていると思うんですね。「大阪の中の話、どうぞ大阪でやってください」という話ではないと指摘をしなければなりません。

(3)和歌山県がなくなる「道州制」について
《質問》松坂英樹 県議
 以上、「道州制」と「関西広域連合」「大阪都構想」との関係をお尋ねしましたが、これらもふまえ、現在、政府がすすめている「道州制」そのもの、「和歌山県がなくなる道州制」について知事に質問をさせていただきます。
 数年後にも和歌山県をなくそうとしている「道州制推進基本法案」は、和歌山の地方自治や県民の暮らしを大きく変える問題であるにもかかわらず、道州制の形も中身も「国民会議」への諮問にゆだねていて、まったく明らかではありません。都道府県の廃止だけははっきり書いていて、肝心の中身は国民会議に丸投げなんですね。
 また、拙速な国会でのかけひきとは対照的に、和歌山県民には知らされていないし、議論もほとんどされていない状況です。
 県内でも、全国的にも「道州制の具体的姿も財源や債務の扱いも明らかでない」「更なる市町村合併が前提ではないか」「道州制ありきのまま進めていってもいいのか」という声が出されています。これらの問題点を知事はどうお考えでしょうか。政府が進める「道州制」とその方向性についての知事の所見をお示し下さい。

《答弁》 仁坂知事
 先ほどの道州制と大阪都構想なんですけども、維新という政党をそんなに知りませんが、外から見ておりますと、少なくとも2つ主張があって、1つは大阪都であり、それは多分他の所にも広げようということかもしれませんが、もう1つは道州制で、こっちだからこうだというようなことは私は寡聞にして知らないわけで、論理的にも別物だというふうに思います。
 次に、道州制そのものをどう思うかということですが、たびたびこの議会でも私は申し上げておりまして、考え方はあまり変わっておりません。
 明治時代に設定された現行の都道府県の区域は、現在の時間距離とか科学技術の発達あるいは専門化、そういうことを考えるとどうも狭くなっているのは明らかだなというふうに思います。日本全体のことを考えると、行政の効率とか人々の幸せとかを考えると、道州制の導入は長い目で見て不可避ではないかなというふうに思う次第であります。
 しかしながら、道州制は、地方分権を推進するためのものでなければならないと考えておるわけであります。それは何かというと、そもそも地方分権とは、地方と国がそれぞれ責任をもって自分で自分のことを決められるということだと思います。そのためには、まず国が責任をとるべき事務、これは国が統一のためにやらないといかんと、後は地方に任してそこは自分で責任をとってやって下さいということを整理した上で、地方が責任を負う事務については国から関与を受けることなく、財源も保障されるということが必要であります。また、道州制の下で資源配分が、現在、和歌山県に居住する住民にとって現状よりもえらい不利になるということでは困ります。有益な制度となるようにうまく、我々としては運動していかないといけません。
 具体的には、そのためにはこれも何度も申し上げておりますが、道州間の財政調整とか道州内の財政調整、そういうものをきちんと整理しておいて、同時に決定していかないといけないんじゃないかというふうに思いますが、その詳細な制度設計が不分明でありますし、主導される方の中からもそういうことについて、こうしようという話があまりないというのが私の感想であります。
 従って、導入をするかどうかということは、そういうのを一体となってきちんと考えないといけないので、今のところなかなかイエスとかノーとか言うのは難しいんじゃないかなというのが私の意見です。
 道州間の調整があまり議論されないまま、えいとやってしまいますと、多分、東京を中心とする州の一人勝ちになってしまうというようなこともあると思います。道州制を現在唱えているオピニオンリーダーみたいな方々がいます。そういう方の本などをよく読むと、あまり私が今必要だと思っていた資料が精緻に考えられている感じがあまりなく、現状が今、閉塞状況で気に入らないからこの際、ガラガラポンすれば、バラ色の未来が待っているというような主張が主流だなという感じがするわけで、制度の設計はそれだけじゃいけないと私は思います。

《再質問》松坂英樹 県議
 長い目で見て道州制が不可避だと考える知事も、道州間の調整・道州内の調整の機能、資源配分がしっかりしないと、いいかえれば和歌山県民は大打撃を受けかねないという認識だと思います。
 しかし、最初の答弁でお答えいただいたように、都道府県を廃止するという結論だけあって中身丸投げの道州制移行、これでは具合が悪いということははっきりしています。そして地方分権にプラスになるものでなければ意味がないのにその保障もない。
 だからこそですね、知事が答弁されたように、全国知事会や関西広域連合では意見がバラバラだから「問題を提起する」という具合に、最大公約数的な態度になるのでしょうけれども、和歌山県知事としてはですね、「イエス・ノーはむずかしい」などと言わずに、ハッキリ態度表明できるんではないですか。
 今の進め方の問題点を指摘するだけでは不十分ではないですか。国がすすめているやり方、中身から議論するというのでなくてですね、道州制ありきで結論だけ決めて取りあえずスタートというのでは賛同できないと、はっきりモノ申すべきではないですか。その点はいかがでしょうか。

《再答弁》 仁坂知事
 松坂議員のご指摘ではありますが、私は例えば手続きを先に決めるということが絶対間違っているとは思いません。それを提起していくということを主張するということも、1つのやり方だと思います。その時点で不十分だから、全部揃ってないから反対だというのは、これまた言い過ぎということではないかと私は思いますので、私が今考えていること、それから主張すべきことは先ほどの答弁で全部申し上げました。

《再々質問》松坂英樹 県議
 「ようわからん」という声が(議場から)ありましたが、そのとおり知事の答弁は、どうもはっきりしないんですね。
 広域連合でもそうなんですが、問題点は指摘しつつも、国の動きにはついていってしまう、事実上容認してしまう、こういう弱点があると指摘しなければなりません。
 もうひとつ突っ込んで質問をしますが、道州制への移行はさらなる市町村合併を押し付けて地方の衰退をまねくと、全国町村会・町村議長会も一丸となって痛烈に批判しています。県内でも、もちろん全国でも、この9月議会に議会からの道州制反対の意見書が続々上がっています。有田郡内3町でも、昨日までにすべての町議会で意見書が上がったと聞いています。
 私は知事への質問で、いまの道州制は、さらなる市町村合併が前提ではないかと危惧されている、これはどうなんだという質問しましたが、その点では知事の答弁は、「地方分権をすすめるものでなければならない」などと一般的なお答えしかなかったと思うんですよね。
 県内の市町村に、知事としてどういう姿勢を示すんですか?いやこれはたいへんな問題なんだと、法案には市町村ではなくて「基礎自治体」としか書いて無くて、何をおしつけられるかわからないんだと、ごいっしょに、今のやり方にはストップをかけましょうと言うべきところではないんでしょうか。知事は国の側に立つんですか。それとも市町村といっしょに地方の立場に立つんですか。この点での道州制への所見を再度お示し下さい。

《再々答弁》 仁坂知事
 議員はどうしても私に「絶対反対」と申し上げさせたいという感じがいたしますが、私は何度も言っておりますように、先ほど申し上げましたとおりの考えでおります。
 例えば、市町村の懸念は分かります。しかし、その懸念が絶対にそうなるんだ、例えば、どこかの方が言っておられたように、全国で市町村は300しか認めないことにして「小さい市町村は駄目だ」というふうなことを言っているかというと、そうでもないわけであります。
 自分のところの市町村の広さをどういうふうにして設計していくかは、やはり、むしろ住民の方々がお決めになることなので、それを強制的にやるという案が出てきたら私は反対ですけれども、しかし、「必ずそうなるに相違ない」と思って「全部反対」と言っていたら、全ての議論が封じられてしまうようにも思います。

《要望》松坂英樹 県議
 以下は要望を申し上げます。
 都道府県のかたまりというのは、政治や経済だけではなく、歴史や文化・スポーツなど県民生活あらゆる分野で、一体感があるわけです。だから、なんとか県民ショーとかも人気があるわけです。
 今県議会の論戦でも、和歌山の子どもは和歌山で育てるんだとか、また立派なプールができて、これまで優秀な選手が県外へ流出していたのが地元県内で強化できるとか、こういう和歌山をどうするという話が、一生懸命されている、すばらしいことだと思うのですが、こういった熱い想いは和歌山県がなくなるとどうなってしまうんでしょうか。
 甲子園の全国高校野球大会も道州制になって、8つの道州対抗でやると盛り上がるでしょうか?各道州代表の5チームずつが出場なんてなると大阪の学校ばっかりになりませんか?
 また、県の仕事は市町村と呼吸をあわせてやってきました。ワクチン接種をいっしょにやろうとか、鳥獣害対策やろうとかですね、国全体ではまだだけれども、大事なことだから自分たちから始めようと、誇れることを県内市町村とやってきました。これが関西州2000万人の規模になると、いっしょにがんばろうとなるでしょうか、一つひとつの特徴あるキラッと光る「基礎的自治体」のよさが生かされるでしょうか。
 私は、道州制ありきで都道府県を廃止するようなやり方ではなく、削られてきた交付税をもどすなど、もっともっと地方の財源や役割を保障し、地方自治の回復、強化をすることこそが必要だと訴え、和歌山県として自然豊かな県土と県民の暮らしを守るよう、強く要望するものです。


2.教育問題
(1)高校授業料「無償化」への所得制限
《質問》松坂英樹 県議
 質問の第二項目の「教育問題」に移らせていただきます。一点目は「高校授業料無償化への所得制限」についてです。
 政府は、来年度から高等学校の授業料「無償化」に所得制限を導入し、「無償化」の流れを後戻りさせようとしています。政権交代による政策変更の象徴的なものとして位置付けられているようですが、これは長年の父母・教育関係者をはじめとする国民の願いに逆行するものです。
 また世界的に見ても、義務教育の無償化はもちろん、中等教育の無償化は世界の流れであり、これにも逆行するものです。日本政府はこれまで、高校・大学の段階的な無償化を定めた国際人権A規約13条の適用を留保してきましたが、昨年の9月に政府自身がこの留保を撤回しました。世界に向けて態度表明したように、国内政策もこの「無償化」の方向に向かって進んでゆくべきです。
 長崎県議会からも7月に「公立学校の授業料無償制の堅持と給付型奨学金制度の創設を求める意見書」が可決されたと聞きます。
 県教育委員会として、この問題をどう考えるのか教育長よりお示し下さい。

《答弁》 教育長
 高校授業料無償化について、授業料の負担が可能な一定所得以上の世帯への所得制限の導入は、やむを得ないものと考えております。
 なお、国では、所得制限導入で生まれた財源を活用し、低所得者支援のための給付型奨学金の創設等を検討しており、今後、国の動向を注視しながら適切に対応してまいりたいと考えております。

(2)少人数学級の充実
《質問》松坂英樹 県議
 次に、少人数学級の充実についてです。文部科学省の来年度概算要求によりますと、36人以上学級の解消など少人数学級の拡充について一定の前進が見込まれることになっています。ところが、この措置は1学級が20人以下になる場合は除くと、注意書きされているんですね。
 本県の小学校をみると、小規模校が多く児童数減少も進んでいます。以前は一学年に2学級・3学級あった学校でも、今は1学級になってしまっているという学校が数多くみられます。今や和歌山県では、学年が1学級という規模の学校が、県内約250校のうち約3分の2を占めているという状況なんですね。よってこの文科省の方針どおりに進むと、その影響を受ける学校も出てくることが強く心配されます。
 県教育委員会として少人数学級の充実についてどう考え、この問題にどう対処しようとしているのかお示し下さい。

《答弁》 教育長
 議員ご指摘のとおり、文部科学省の概算要求における、少人数学級の推進では、1学級が20人以下になる場合が除かれております。
 本県では、これまでも少人数学級に必要な教職員定数を確保してきたところです。小学校1、2年生と中学校では、35人以下の学級、小学校3年生から6年生についても、35人以下の学級を基本としながらも、学年において1ないし2学級の場合は、38人以下の学級を実現してきたところです。
 今後もこれを堅持するとともに、国の動向も注視しながら適切に対応してまいりたいと考えております。

《要望》松坂英樹 県議
 教育長の“授業料無償化への所得制限やむなしと考える”との答弁はたいへん残念な答弁だったと言わなければなりません。
 次の少人数学級の充実については、適切に対処してゆきたいと決意がのべられました。これらの問題は、今後具体的に動いてゆく問題ですから、引き続き、論議してゆきたいとだけ申し上げておきます。


3.みかん対策
(1)2013年産みかんの生育状況と課題・対応
《質問》松坂英樹 県議
 続いて第三項目めの「みかん対策」についての質問に移らせていただきます。
 本年産のみかんの状況を地元で伺うと、夏の雨不足により、昨年に続き灌水にたいへん苦労し、皮の日焼けも発生したり、小玉傾向だったが、この間の雨で果実の大きさも回復し、例年に比べても美味しいみかんが期待できるということです。
 まず、本県の2013年産みかんの生育状況と課題・対応について、農林水産部長より答弁を願います。

《答弁》 農林水産部長
 本年産みかんは表年にあたりますが、5月下旬から6月中旬にかけての高温により生理落果が多かったため、現時点での本県の生産量は、対前年比104%の16万9千トン程度を見込んでおります。
 果実の肥大は、夏期の干ばつの影響があったものの、8月下旬以降の降雨により回復し、糖度は平年に比べ高く、酸はやや低く、食味の良い果実に仕上がってきているところです。
 全国の生産量は対前年比102%の86万3千トン程度となる見込みで、農林水産省が6月に示した適正生産量93万トンを下回っています。
 しかしながら、みかんの1世帯当たりの年間購入数量は、10年前に比べて60%の約12kgに減少しており、消費者が味を重視する傾向にある中で、産地間競争に打ち勝つためには、品質の高いみかんの供給が重要であると認識しております。
 今後も、JAグループと連携して、マルチ被覆や樹上での選別などの管理を徹底するとともに、農家自身による選別や光センサー選果機による厳選出荷を推進してまいる所存でございます。

(2)機能性成分に注目した販売促進と品種開発
《質問》松坂英樹 県議
 次に、機能性成分に注目した販売促進と品種開発についてお尋ねします。体によい和歌山県産食材をしっかりアピールしようと、昨年の東京に引き続き、「おいしい!健康わかやま」機能性フォーラムが和歌山市で開催され、私も参加して勉強させていただきました。
 基調講演で愛知学院大学の大澤先生が強調しておられた、「フィトケミカル」と呼ばれる植物由来の栄養成分のお話は、今回も興味深く聞かせていただきました。フィトケミカルはビタミンや食物繊維などに続く「第7の栄養素」として着目され、みかんのβクリプトキサンチンのような、色・香・苦味というような植物由来の成分がはたす、抗酸化作用、健康増進や病気予防などの機能性が注目されています。
 講演の中で紹介されていたのですが、「紀ノ国屋文左衛門が江戸にみかんを船で運んだときに、みかんを積んだ船の底の部分に積んでいった「船床」みかんというのがあって、これを積んでおくことが、みかんが腐りにくく、ネズミなどの害にも侵されないという役割を果たしていた、それで「船床」みかんという名前がついたんですが、実はそれにふさわしい機能性成分を多く含んでいたのです」ということだったのですが、これは科学的に見ても、また物語としても、非常にいいお話だと思いました。そして、その講演の中で紹介された「船床」みかんが、県の果樹試験場で機能性向上をめざすカンキツ品種改良の研究材料となっているというので、改めて試験場の実験園も視察もさせていただきました。議場に配付しております※資料は、果樹試験場がすすめている機能性成分に着目したカンキツ新品種の開発研究の資料です。たいへん興味深く説明を聞かせていただきました。
 私は、県の、こうした機能性成分に注目した販売促進と品種開発などの取り組みに大いに注目しているものですが、実りの秋シーズン本番をひかえ、今後の取り組みの展開についてお示しいただきたいと思います。

《答弁》 農林水産部長
 県では、全国の消費者に県産農産物等の機能性をアピールするため、「おいしい!健康わかやま」をキャッチフレーズとした広報活動を展開しており、「健康」、「美容」、「元気」のシンボルとして体操の「田中3きょうだい」に「おいしい!健康わかやま産品応援隊」にご就任いただいたところです。
 また、啓発冊子「和歌山県産食材機能性ガイド」を作成して、各種イベントで活用するほか、全国の流通関係者等に機会あるごとに配布しております。
 9月5日に和歌山市で開催したみかんなど県産果実の機能性を紹介するフォーラムには、200人を超える方々にご参加いただきました。首都圏でも11月に著名人を招聘してフォーラムを開催する予定です。
 機能性に優れた柑橘の新品種につきましては、「ジャバラ」と「ダイダイ」や議員お話しの「舟床」などとの交雑による品種開発に取り組んでいるところです。
 現在、育成段階にある系統について果実分析を行って、「ジャバラ」に含まれるナリルチンに加え、抗酸化作用や抗アレルギー作用のある成分を確認しており、今後、生育特性や加工適性について調査研究を行う予定でございます。

(3)ジュースなど加工食品の強化方向
《質問》松坂英樹 県議
 3つ目は、ジュースなど加工食品の強化方向についての質問です。ジュースやゼリーなどの加工食品は、果物摂取のすそ野を広げる意味でも、また通年出荷、県内加工産業の強化という面でも、今日的にたいへん重要な位置づけが必要だと常々考えている所です。
 今議会補正予算には、JAジュース工場の機械設備更新への補助が計上されています。また最近では、なんとか農園のジュースというような、プライベートブランドの特徴ある商品も数多くみうけられるようになり、和歌山県産みかん加工品の魅力的な商品バリエーションが広がるよう期待しているところです。
 県として、ジュースをはじめとする加工食品の魅力を高めるために、どう取り組んでゆこうとしておられますか。
 輸入自由化による外国産果汁におされた価格の低迷もあり、みかんの果汁向け原料は20年前の4割に激減しています。ジュースは若い世代もふくめ人気が高いにもかかわらず、原料不足により生産が減少しているとの報道があり、これはなんとかしなければならないんじゃないかと感じました。
 もっと美味しい魅力的な加工食品、こうした付加価値を上げて、加工用みかんの買い上げ価格を引き上げてゆく、また一方で、生産されたみかんの中において、加工用みかんにまわす比率を上げることで、市場出荷するみかんの品質を高め、単価アップをはかる、そして農家収入を上げてゆく、こんなふうに進んだらいいなと思うのです。
 良質な加工用果実の安定供給という点からも、また市場流通する生果の品質向上という点でも、県として、生産から加工・販売を幅広く見通した政策強化が必要だと考えますがいかがでしょうか。

《答弁》 農林水産部長
 農産物の加工は、収益性の高い農業づくりを進める上で不可欠であることから、県長期総合計画に基づき、「加工を核としたアグリビジネスの構築」を推進しております。
 加工食品の魅力を高めるために、本年度の新政策である6次産業化ネットワーク事業、農商工連携ファンド・中小企業元気ファンド等の活用により、素材のよさを生かした高品質で特色のあるみかんジュースやゼリーなどの開発への支援とともに、技術的なことについては工業技術センターが相談を行っているところでございます。
 いずれにいたしましても、美味しいみかんづくりが基本であり、生産から加工・販売を見通した政策として、厳選出荷による生果、いわゆるそのままのみかんですけれども、生果の市場価格の安定化と同時に、加工用果実の確保につながる仕組みづくりを、引き続き検討してまいります。
 今後とも、生産・加工・流通・販売それぞれの段階での施策を通じて、本県農業の基幹品目であるみかんの振興を図ってまいる所存でございます。

《要望》松坂英樹 県議
 これまでは、ジュースなど加工用みかんについては、「ジュースに落とさんなんようなみかんを作るな」「見栄えのいい立派な良いみかんを作るんにどうするんかという発想だったと思うのです。
 形や見栄えの立派さを競う時代から、味と機能性を重んじる時代になってきています。
 味の濃い食味のいいみかんを追求すれば、かなり小さいみかんも出てくる、それをジュースやゼリーに加工して、美味しくいただくというのも実際に始まっていて、商品の評価も高いようです。
 このように、和歌山県の果実をはじめとする県産品のもつ、すばらしい素材を生かす加工の分野に、これからも一層、知恵と力を注ぐよう要望しておきます。


4.有害鳥獣対策
(1)被害状況の推移と現状
《質問》松坂英樹 県議
 最後の4項目めの質問、有害鳥獣対策について伺います。
 この間、県の有害鳥獣対策は、県民の切実な声にこたえて、取り組みも予算も抜本的に強化をしてきました。しかし、そうした対策が進められたにも関わらず、被害がなかなか減らないというのが本県でもまた全国でもジレンマとなっている問題です。
 最初に、本県の被害状況の推移と現状について、農林水産部長よりお示し下さい。

《答弁》 農林水産部長
 野生鳥獣による農作物被害金額は、平成24年度で3億5300万円と依然深刻な状況が続いております。
 内訳はイノシシが最も多く54%を占め、次いでサル、シカ、アライグマの順。
 また、作物別では果樹が2億7500万円で最も多く78%、特に最近ではシカによる柑橘類の食害が増加しており、次いで野菜、水稲の順序となっております。
 過去5年間の被害額は3億円前後で推移しており、防護柵を設置していない農地に被害が発生しております。

(2)シカの管理捕獲の効果と課題
《質問》松坂英樹 県議
 次に、シカの管理捕獲の効果と課題についてです。今年は、シカの管理捕獲5年計画の3年目として取り組まれました。猟友会はじめ関係者の皆さんのご協力により、1年目、2年目よりも引き上げた目標をもって取り組んだわけですが、ほぼ目標通りの捕獲実績をあげられているようであり、関係者のみなさんに感謝申し上げるものです。
 しかし、住民のみなさんからお聞きする声としては、「シカが増えて増えて困っている」「シカにはお手上げだ」などシカ被害の声が続々と出されている現実があります。先日もNHKのテレビで湯浅町のみかん園でのシカ被害の様子が報道されていました。シカの背の届くところまではキレイに葉っぱや皮がむかれていて、木の上の所にしかみかんが残っていない、という実態が写されて、「そうなんよ、もうシカでたいへんなんよ」と地域でも話題になっています。
 私は、現在取り組んでいるシカの管理捕獲の効果が早く出てくるのを期待したいのと同時に、この事業の折り返し地点に立ち、取り組みが充分かどうかを吟味する必要があるのではないかと考えています。
 5年間の事業終了後に総括するのはもちろんですが、途中経過もよく見て着地点を目指す必要があるとおもうのです。計画スタート時には生息数はこれぐらいだという調査だったので、毎年これぐらい捕獲して、最終的にこれぐらいに抑えるという計画なんだけれども、生息頭数の把握は実態に即して正確であるのか、また、捕獲量に地域的強弱がないかなど再点検・検証をしつつ事業を進めてゆくべきだと考えますがいかがでしょうか。捕獲エリアの一定の強弱はやむを得ないとしても、たくさん捕れるところ、捕りやすいところだけ伸びて、そうでないところが残ると、期待していた効果が出ないかもしれません。そこらへんを検証・目配りをしながら、今後の計画推進に生かしていただきたいと思うのですがいかがでしょうか。

《答弁》 農林水産部長
 平成23年度から実施しているシカの管理捕獲については、被害が少なかった平成6年度当時の8,700頭まで生息数を下げることを目標に取り組んでおり、3ヶ年で4,563頭を捕獲いたしました。
 今年度中にシカの生息数を調査し、3年間実施した管理捕獲の結果を検証して今後の対策に活かしてまいります。

(3)捕獲対策の方向性
《質問》松坂英樹 県議
 3点目に、捕獲対策の方向性ということで伺います。有害鳥獣の捕獲方法は、一昔前は主に銃器に頼っていたものが、被害を受けた農家などが、銃やワナの免許を取り、捕獲に立ちあがったことなどから、箱ワナなどでの捕獲も普及してきました。箱ワナでの捕獲は比較的安全ではあるものの、しかし獣種や地域的条件によっては、銃器による駆除に依拠せざるをえない実態もあります。
 そこでお伺いします。銃器やワナなど捕獲方法別には、捕獲頭数の推移はどうなっていますか。また、これまで、捕獲対策として報奨金や免許取得時の経費補助など支援を強めてきたわけですが、被害拡大の状況、銃やワナの免許取得状況の推移などの状況をふまえ、今後どういった捕獲支援策が必要なのかを常に検討し、改善してゆく必要があると考えますが、今後の方向性についてどう考えておられますか。

《答弁》 農林水産部長
 イノシシ、シカ、サルの有害捕獲頭数は、平成20年で4,911頭、平成24年で17,349頭と増加しておりますが、そのうち、わなによる捕獲の割合は、平成20年の33%に対し、平成24年は48%と高くなってきております。
 県は、鳥獣害対策のひとつとして、狩猟者の育成・確保に努めてきましたが、銃猟免許者の減少・高齢化は深刻な課題であります。
 このため、本年初めての試みとして、田辺市で「ハンターになりませんかミーティング」を開催し、女性ハンターの講演や射撃場の見学を通じて、銃猟の魅力をPRいたしました。
 有害捕獲を進めるうえで、大型の個体の捕獲や止め刺し等に銃は必要不可欠ですので、引き続き銃所持者の確保に努めるとともに、銃所持者の技術向上と事故防止のため、今後も狩猟前訓練や安全講習会を開催してまいります。
 一方、わな捕獲については、県下全域において捕獲技術研修を実施しているところですが、捕獲におけるわなの割合が高まっている中、捕獲効率を高める大型囲いわな設置の推進やセンサーを利用した新捕獲技術の導入等を進めてまいります。

《要望》松坂英樹 県議
 ご答弁をいただきました。シカの管理捕獲では、3年間の結果を検証して今後に生かしたいとの表明もされました。ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 また、捕獲対策の方向性についても今後の取り組み方向が示されました。最後にこの点で要望を申し上げます。
 先週、日高川町議会で議会の求めに対して町長が、報奨金については銃器と箱ワナを獣種によっては統一をしてゆきたい、経費のかかる銃については別途経費支援を考えたい、これらを県と相談してゆくと表明されたと報道されています。これも一つの考え方だと思います。
 今後とも、こういったこれからどう進めるべきかという方向性をさぐる様々な立場からの提案も出てくるでしょう。ぜひ現場の声、県民の声を良く聞いて研究を続けていただきたいと思います。
 もう一点は、せっかくとった銃やワナ免許を継続して生かすための支援です。県の支援は免許取得時にあるんですが、これを毎年更新してゆく費用はたいへんなんですよね。
 先日も、もうワナの免許やめとこうかとおっしゃる住民の方のお話を聞きました。免許とって箱ワナおいた当初はよう入ったんやが、この1・2年はサッパリとれやん、あいつらも賢くなってるし、こっちも場所替えるんに分解して運んだり、エサ変えたりとなかなかできん」というんですね。それかと言って被害が減ったからなのかといえばそうではない。被害は引き続きあるわけなんですね。
 これからも免許取得者を増やそうという時に、せっかく免許をもっていただいている方々が、だんだん離れていってはダメだと思うのです。ですから、保護対策・捕獲対策に引き続き取り組むことを励ます様々な支援、また免許更新のための支援など、せっかく捕っていただいた免許を有効に生かす支援策をぜひ検討いただきたい。以上、県民と力合わせて取り組みや制度を発展させていっていただきますよう要望し、私の一般質問を終了させていただきます。ありがとうございました。


 
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