和議第117号
 「高校無償化」への所得制限導入に反対し、「教育費無償化」の前進を求める意見書(案)

 国は、2010年度から「公立高校授業料不徴収および高等学校等就学支援金制度(以下、高校無償化)」を始めた。この施策は、高校教育を「受益者負担主義」や「自己責任論」から、教育の機会均等を保障するものへ転換するもので、保護者・国民に歓迎された。この措置を受けて、2012年9月、政府は国際人権規約社会権規約13条の留保を撤回し、高校・大学の無償教育の漸進的導入を国際的に宣言した。
 ところが、政府は本年10月に開会された臨時国会に「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」(以下、高校無償化法)の一部「改正」案を提出、国会で審議の後11月27日に成立した。こうした動きは「高校無償化」の趣旨を損ない、その後退につながるもので決して許されるものではない。全国知事会など地方6団体や教育関係団体の中からも反対の声や先送りを求める声などが出されている。その中には、所得制限が導入されれば、それに係る事務的な負担が増大するとの指摘もある。また、被災地では「所得制限は震災復興の妨げとなる」という声があがっている。国は、国際人権規約留保撤回の趣旨に沿って、「高校無償化」維持・拡充をはじめ「給付制奨学金」の創設などで、誰もがお金の心配なく大学まで学べるよう、社会全体で子どもたちの学びを支えることが求められている。
 一方、学校教育費の保護者負担は、「高校無償化」の下でも私立高校68.5万円、公立高校23.7万円(文科省「平成22年度子どもの学習費調査」)と、依然として家計の中で大きなものとなっている。こうした実情を受け、独自措置で一定の年収以下の家庭に私立高校授業料を実質無償化する自治体も出ている。しかし、自治体の努力に頼る方法は地方財政の厳しさからも限界があり、教育を受ける権利が自治体の財政力に左右されてはならない。国は責任をもって教育費の保護者負担軽減をすすめることが必要で、そのためにも「高校無償化」の維持・拡充が求められる。
 与党内では「高校無償化」への所得制限導入でつくる財源を低所得者世帯向けの「給付型奨学金」創設にあてるとしているが、誰もが必要であると認める「給付制奨学金」を予算の付け替えで済ますようなやり方ではなく、「高校無償化」とともに必要な予算措置をすべきである。
 よって、和歌山県議会は、国会及び政府に対し、次の事項を実現するよう強く要請する。

1 国は、「高校無償化」への所得制限を導入せず、維持・拡充をすすめること。
2 国は、高校生・大学生に対する「給付制奨学金」制度をつくること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

  平成25年12月19日
          様
                                          和歌山県議会議長 山田 正彦
                                                     (提 出 者)
                                                      雑賀 光夫

                                                      松坂 英樹
                                                      奥村 規子
                                                      高田 由一
(意見書提出先)
 衆議院議長
 参議院議長
 内閣総理大臣
 文部科学大臣
 財務大臣
 総務大臣