2013年12月県議会
雑賀光夫 一般質問 概要記録
 議会中継動画
2013年12月12日

1.B型肝炎対策について

(1)B型肝炎患者を見つけだすために
(2)「特別措置法」にもとづく救済の周知について

2.教員の長時間勤務について
(1)全教の勤務時間調査と和歌山県での教員の勤務実態
(2)教員の時間外勤務とその手当について
(3)教員の長時間勤務をどう考えるか
(4)勤務軽減、長期休業を利用した自由な研修について
(5)学力テストの採点について
(6)勤務時間外に開かれる職員会議などについて

3.博物館の在り方について
(1)県立自然博物館について
  ・果たしている役割
  ・その拡充など教育委員会のもとでできないのか
(2)県立近代美術館について
  ・県立近代美術館の運営予算などの苦労について
  ・どうして所管変更をしなくてはならないのか

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1.B型肝炎対策について
《質問》雑賀光夫 県議
 議長のお許しを得ましたので、質問にはいらせていただきます。
 第一の柱はB型肝炎にかかわる問題です。
 みなさんの議席にチラシをおくばりしています。《チラシを紹介》連絡先として「和歌山からB型肝炎を掘り起こすボランティア」前田幸彦とかかれています。
 前田さんは奥さんをB型肝炎でなくされ、ふるさと紀美野町に帰られてから「B型肝炎大阪訴訟団」の支援を得て訴訟にとりくまれました。
 B型肝炎というのは、ウイルス性の肝臓病ですが、成人が感染してもほとんどが一過性感染で免疫を獲得して、その後感染することはないそうです。
一方、乳幼児期に感染した場合、抗体をつくらずに、ウイルスのキャリアとなり、慢性肝炎、肝硬変、肝癌を発症し亡くなる方が出てきます。その乳幼児期感染の40%が、かつての集団予防接種のときの注射器の使いまわしにあるといわれています。
 その救済を国に求める裁判が行われたのですが、2011年6月、当時の政権が国の責任を認めて、全国原告・弁護団に謝罪し、和解の基本合意が調印されました。そして和解金を支払う「特別措置法」が制定されました。この特別措置法は時限立法です。2017年1月までに書類を提出しなくてはなりません。
 前田さんの奥さんは、2005年に亡くなっていましたが提訴し、今年の2月に和解に持ち込みました。
 被害者であることの証明は大変だったそうです。「接種痕を示せ」といわれるのだが、本人は亡くなっている。「母子手帳があるか」といわれるが、自分が子供の時の母子手帳など保存していない。幸い、写真があり、東大病院のお医者さんが証言してくれたので、提訴・和解にこぎつけることができたそうです。
 肝臓は沈黙の臓器と言われています。年月を経てウイルスが活動を始めると長い戦いになります。 この問題の和解や救済の法律のことも知らず、自分が被害者であることにも気づいていない多くの皆さんにお知らせしたいと、前田さんは、自費でこのチラシをつくり、県内4大全国紙に新聞折り込みされたのだそうです。
 そこで質問です。

(1)B型肝炎患者を見つけだすために
 B型肝炎対策には、二つの段階があります。ひとつは、「肝炎対策基本法」にもとづく、早期発見のための検査のよびかけです。もうひとつは「特別措置法」にもとづく救済の制度を知らせることです。
 まず、「基本法」にもとづく第一のとりくみはどうなっているのかお伺いします。

《答弁》 福祉保健部長
 肝炎対策基本法に基づくB型肝炎対策につきましては、現在、早期発見のための肝炎ウイルス検査を保健所及び契約医療機関約500箇所で、無料で受けていただくことができ、治療が必要な方については、医療費助成を実施しております。
 さらに、県立医科大学附属病院と国立病院機構南和歌山医療センターの2箇所を肝疾患診療連携拠点病院に指定し、肝疾患相談支援センターを設けるとともに、専門医療機関22箇所を指定するなど、早期に適切な治療を受けられる体制を整えております。
 県といたしましては、肝炎ウイルス感染者の早期発見のため多くの方に肝炎検査を受けていただくよう、積極的な啓発、広報等に努めてまいります。

(2)「特別措置法」にもとづく救済の周知について
《質問》雑賀光夫 県議
 今一つは、特別措置法にもとづく救済です。これには手続きが必要だし、時限が限られており急がなくてはなりません。
 B型肝炎を予防注射が原因で広げたことの責任を国が認めた以上、国はそのことを広く知らせ、被害者の掘り起こしをする必要があると思います。前田さんが、自費で努力をされている姿を見ると、もっともっと、行政の支援が必要ではないかと思うのです。
 一般的な検査のよびかけにとどめるのでなく、掘り起こしを急いでほしいのです。献血の際には血液検査があります。献血を検査代わりにしてはいけないのはもちろんですが、健康だと思い込んでいた方が、この検査で、B型肝炎・陽性と判明した場合、結果だけの通知では、そのことの意味がわからず、そのまま放置することになります。
 検査結果の通知だけでなく、「特別措置法」による国の救済がある場合もあるということも知らせるなど、丁寧なフォローをしてほしいのです。
 また、紀美野町の広報誌には、B型肝炎救済の問題を囲み記事でいれてくれています。「和解」による救済を紹介するものです。「県民の友」でも広く知らせていただいてはどうかと思いますが、いかがでしょうか。

《答弁》 福祉保健部長
 献血による検査結果につきましては、赤十字血液センターが、献血にご協力を頂いた方に、希望により血液の検査結果を通知しているところです。
 B型肝炎ウイルス検査は、検査結果に異常を認めた場合に、別途通知しております。
 この通知には、詳細な検査結果内容やパンフレットを同封し、B型肝炎ウイルスに感染している可能性が高い方に受診勧奨を実施しています。なお、問い合わせ窓口では、肝疾患相談支援センターの紹介などを行っておりますが、併せて「特別措置法」の紹介を行うよう、赤十字血液センターに伝えてまいります。
 また、県では、全国B型肝炎訴訟大阪弁護団による和歌山県での相談会に職員を派遣し、県肝炎対策事業の説明を行っているところです。今後、ホームページや広報誌等を通じ、厚生労働省の相談窓口等の情報を提供していきたいと考えております。

《コメント》雑賀光夫 県議
 「特別措置法」による救済について紹介していただけるよう、血液センターに伝えていただけるという答弁をいただきました。県民の友などに紹介する時もご配慮いただきたいと思います。

2.教員の長時間勤務について
《質問》雑賀光夫 県議
 第二の柱は 学校での教職員の長時間勤務についての問題です。
 いま、「ブラック企業」というものが、大きな問題になっています。それは、若者を長時間働かせ、使い捨てにする企業です。日本共産党は、その実態を厳しく批判するとともに、「ブラック企業規制法」を議員提案しています。
☆ サービス残業には残業代を2倍にする制度をつくる。
☆ 年間の総残業時間を360時間に制限する。
 などが、その法案にはふくまれています。
 今日は、教員の長時間労働についてとりあげたいと思います。
 このたび、教職員の全国組織である全日本教職員組合が、教職員の勤務実態調査を行い報告書を発表しました。その調査によると教職員の1カ月の平均時間外勤務時間は69時間32分となっています。夏休み期間などは時間外勤務が短いということを勘案したとしても、年間・700時間にもなるでしょう。共産党が提案するブラック企業規制の2倍です。しかもそれが「平均値」での話です。
 教員の勤務条件は、学級規模などとともに重要な教育条件です。教員にゆとりがなくては、豊かな教育というものはできません。
(1)全教の勤務時間調査と和歌山県での教員の勤務実態
 教育長にお伺いいたします。教育長は、この「報告書」をご覧になっているでしょうか。県教育委員会は、県下小中学校・県立学校の教職員の勤務の実態をどう把握されているでしょうか。

《答弁》 教育長
 議員ご指摘の全日本教職員組合の教職員の超過時間調査につきましては、報道されている教育雑誌等で概要を拝見しております。
 県立学校の教職員の超過勤務につきましては、平成23年度から全ての教員を対象に毎年6月に「勤務時間実態把握調査」を実施し、勤務状況の把握に努めているところです。
 本年度の調査では、1,940人、約70%の教員から回答があり、1ヶ月の超過勤務の平均は32.5時間でした。昨年度と比べて2時間減少しており、引き続き効率的な学校運営を行うなど、超過勤務が少なくなるよう指導してまいります。
 小・中学校の教員につきましては、所管する市町村教育委員会に県立学校と同様に取り組むよう働きかけていますが、現在、詳細な超過勤務の状況を把握しておりません。

(2)教員の時間外勤務とその手当について
《質問》雑賀光夫 県議
 県立学校の教員の勤務実態について、お答えいただきました。平均で32.5時間。これは平均ですから、私が見せていただいたデーターでは、月100時間を超える方が全日制高校では102人もいます。
 小中学校についても実態をつかめといっているが、結果を聞いていないというのでは困ります。問題の深刻さの受け止め方が、これでいいのかなと思います。
 私は、海南市教育委員会が、教員の勤務について調査したものをここに持っています。中学校でいうと週12時間以上、(月あたりにすれば50時間以上)超過勤務をしている教員が69%にものぼっています。「平均」ではありません。「以上」です。しかも、教育委員会の調査です。きょうは、このデーターを使って議論をすすめたいと思います。
 民間労働者であれば、時間外労働をすれば、25%から50%の割増賃金がつきます。県庁職員も同様です。しかし、教員の場合は、「時間外勤務手当および休日勤務手当」は支給されません。それでは、どういう根拠に基づいて、時間外労働を命じているのか、教育長からご説明願います。

《答弁》 教育長
 教員には、教育職員の給与等に関する特別措置法により、給料月額の4%に相当する教職調整額が支給されており、学校行事や職員会議等のいわゆる超勤4項目について、時間外勤務を命ずることができることとなっております。

(3)教員の長時間勤務をどう考えるか
《質問》雑賀光夫 県議
 教職調整額4%が支給されているといわれた。これを超過勤務手当に代わるものだとすれば、25%の割増を含めて計算すれば、一日16分たらずの「超金手当」に相当します。一か月・5時間あまりです。
 一か月50時間以上の超過勤務に対して、5時間分の超勤手当に代わる「教職調整額」。まさに、違法状態だと思いますが、どうお考えでしょうか。

《答弁》 教育長
 議員ご指摘の点につきましては、教員の勤務実態につきましては、課題があるものと考えております。そのため、報告書の簡素化などによる事務時間の軽減や週休日の振替期間の拡大などの勤務時間制度の充実に努めているところでございます。

(4)勤務軽減、長期休業を利用した自由な研修について
《質問》雑賀光夫 県議
 教育長は「課題がある」とお答えになった。「課題がある」と認識されているのは結構ですが、まえまえから問題が指摘されながら、見るべき改善がなされていません。
 昔から、先生というのは、勤務時間などあまり問題にせず、「子どものためなら」と一生けん命にやられてきた。しかし、夏休みなどは、わりあいにゆったりと「自宅研修」ということもできていたと思います。
 しかし、最近では、子どもは学校に来ないのに、夏休み中でも先生方はそろって学校にいらっしゃる。「子どもは夏休みでも教員は勤務を要する日です」とおっしゃる。それはもっともです。
 しかし、教員には専門職としての自由な研究の自由がある。
 「図書館にいって、しらべものをする」「理科の先生が、生石山にのぼって自然観察をする」「自宅のほうが資料がたくさんあって教材研究ができるから、今日は自宅で教材研究をします」という場合もあるでしょう。こうした自主的な研修が、「教育公務員特例法」によって「勤務場所を離れて研修することができる」と教員には認められているのです。
 夏休みぐらいは、豊かな研修をしてほしいと思うのですが、いかがでしょうか。

《答弁》 教育長
 教員には、様々な経験や知識に基づく幅広い力が求められておりますから、長期休業中に休暇制度等を利用して見聞を広げ、教養を身につけることは重要であると考えております。
 「勤務場所を離れての研修」については、教育公務員特例法に規定されており、その内容が研修としてふさわしいものであり、職務に反映できるものであれば認めているところです。
 議員ご指摘の場合については、その内容が研修としてふさわしいものであり、職務に反映できるものであるかどうかによると考えます。教員には、今後も、より一層研修に励み、資質・能力の向上に努めてもらいたいと考えております。

《再質問》雑賀光夫 県議
 休暇制度を利用するのなら、家族サービスをしようが関係ない。
 私は、後半で言われた教育公務員特例法で認められた専門職としての教員の豊かさ追求する研修について申し上げているわけです。
 一例をあげてみたいと思います。
 先日、教職員組合の教育研究集会で「外国語教育」分科会を傍聴してきました。そこで若い先生が夏休みに16日かけて自転車でイギリスの北の端から南の端まで回ってきたという報告をされ、大変おもしろく聞かせていただきました。
 本来は、教育委員会が予算を付けて様々な留学の機会を保証すればいいと思うのですが、なかなか予算もないわけです。しかし、そんななかでも、英語の先生が夏休みに自費で英語圏に旅行する場合があるとおもいます。帰ってきたら、こういうことをしてきたよと、子どもに語れるという、こういうことは教員の力を高めると思います。これは「教育公務員特例法」にいう「勤務場所を離れての研修」として扱うことができると思いますが、教育長はどうお考えになりますか。

《再答弁》 教育長
 議員ご指摘の研修のあり方については、先ほど申し上げましたように、その内容が本当に研修としてふさわしいものかどうか、それから、さらにそれが子どもたちにどう反映できるのか様々な面から幅広く研究していくことが大切ではないかというふうに考えております。

《コメント》雑賀光夫 県議
 もっともっと、教員が自主的で自由な研修をすることを、奨励していただきたいわけです。よく、自主的な研修というと、「研修だから報告書を出してもらわなくてはならない」などという。厚い研修報告を出せなどといわれたら、「もうええわ」ということになる。イギリスを回った先生なら、日程表と地図と途中での写真を数枚つけてもらったら、「研修報告」としては、十分じゃないですか。
 生石山をまわってきた先生には、その日付と観察した植物の写真を張り付けた一枚レポートを出してもらったらいいじゃないですか。
 もっと広く言えば、教員というものは、ときには映画・音楽・演劇などを楽しみ、スポーツを楽しむゆとりがないと、心が干上がってしまう。心が干上がってしまうと、子どもの悩みに共感することもできなくなる。
 自転車でイギリスをまわったというような夢とロマンをもった先生であってこそ、こどもの心をつかむことができる。
 現在の長時間労働と管理体制は、教員のこころを干上がらせ、夢とロマンをもてなくしているのではないかと心配します。

(5)学力テストの採点について
《質問》雑賀光夫 県議
 勤務の軽減のためにやってほしいのは学力テストの採点の問題です。
 県独自の学力テストの是非はさておき、国の学力テストなら、国が指定した学校は、民間業者が採点を引き受けてくれる。県がやるのなら県が採点業務ぐらい予算化すればいいと思いますが、いかがでしょうか。

《答弁》 教育長
 本年度から県独自で実施する学習到達度調査というのは、当該学年で学習した内容を確実に身につけさせることを目的といたしております。
 この目的を達成するためには、調査実施後、教師自らが児童生徒一人一人の答案を直接確認をし、学力の定着状況の把握と課題の分析を行い、速やかに学力の向上対策に取り組むことが必要です。
 そのためにも、担当する教師が自ら採点をすることが、重要であると考えておりまして、予算化することは考えておりません。

《コメント》雑賀光夫 県議
 一方では、月50時間もの超過勤務という実態が報告されている。これは教育委員会の調査です。そういう中だから、こういうことを言っているんです。そういうことがなかったら、もちろんテストの結果を先生が採点した方が良いということもあるでしょう。
 しかし一方では、国の学力テストの場合は、国で予算化するわけです。これだけ長時間労働が問題になり、教育長も「課題がある」と言っているが、なかなか手の打ちようがないわけだから、やれるところから少しでも勤務の軽減をしたらいいと考えて、こういうことを申し上げているわけでございます。

(6)勤務時間外に開かれる職員会議などについて
《質問》雑賀光夫 県議
 教員の勤務の場合は、すべて校長が命じたというわけではない場合があります。自発的に、朝早く来て「朝練」につきあう、夏などは、部活動でつい長くなり、明日の準備で帰りが遅くなるというような場合がある。
 そんななかでも、長時間勤務をなくすという課題意識を管理職はもたなくてはなりません。ところが勤務時間が終わってから職員会議を招集するのが当たり前という校長がいるという話も聞きます。「子どもが家出したから、先生方、緊急に集まってください」という話ではないのです。
 教育長はどうお考えでしょうか。

《答弁》 教育長
 ただいま議員のご指摘は、その通りであると思います。緊急の場合を除き、職員会議は勤務時間内に行われるべきであり、議員ご指摘のような、職員会議が常に時間外に行われているという状態であるとすれば、極めて遺憾であり、今後とも適切な指導をしていきたいというふうに考えております。

《要望》雑賀光夫 県議
 緊急事態でもないのに勤務時間外に職員会議をするのは問題だと答えていただきました。職員会議・現職教育がどれだけ勤務時間外にはみだしているかということは、校長から報告させればすぐにわかることですから調べていただきたい。またの機会にお伺いしたいと思います。

3.博物館の在り方について
《質問》雑賀光夫 県議
 第3の柱は 「博物館の在り方について」であります。
 このたび、博物館、美術館などの事務を、教育委員会から知事部局に変更するということが発表されました。どうしてその必要があるのかよくわからない。所管変更の対象になったのは、県立自然博物館と県立美術館であります。
(1)県立自然博物館について
 ・果たしている役割
 まず、自然博物館についてお伺いします。この博物館は、社会教育上、どういう位置づけがあり、どういう役割を果たしてきたのか、教育長にお伺いいたします。

《答弁》 教育長
 和歌山県立自然博物館については、博物館法に基づく登録博物館として設置し、和歌山県の自然や生物に関する資料の収集及び調査研究を行うとともに、これを広く県民の方々に展示公開する等の活動を通じて県民文化の向上に大きく寄与してきたものと考えています。

《コメント》雑賀光夫 県議
 お答えがあったように、大変人気のある博物館であります。この博物館の行事で子どもが化石を発見したというニュースがよく報道されます。子どもたちを化石の世界にみちびいていく。館内に展示されているのは、県内の化石ばかりだそうです。水族館では、職員がサンタクロースの格好をして水槽掃除をかねて子どもたちをよろこばせる。
 入館者数も10数年前と比べても6万人、7万人台から昨年は、12万3,000人を超しています。レジャーが多様化している中で、大したものです。
 こうした人気のある博物館でありますが建設後30年を超しています。私も、文教委員会で、昆虫などの展示スペースが狭いのではないかと申し上げたことがあります。
 このたびの計画を拝見すると、自然博物館のスペースの狭さが意識され、「将来的な機能拡張も視野に入れながら施設再整備を検討」されるということは、たいへん結構なことで歓迎します。

 ・その拡充など教育委員会のもとでできないのか
《質問》雑賀光夫 県議
 しかし、どうして事務委任しなくてはならないのだろうか。
 博物館法の第十九条に「公立博物館は、当該博物館を設置する地方公共団体の教育委員会の所管に属する。」と定められております。委任ありきではなく、まずは法の定めるところに従って、機能強化を考えるべきではないか、という疑問があります。
 自然博物館の場合、生活環境総務課自然環境室に委任するというのですが、自然博物館というのは、主として子どもたちを相手にした社会教育施設であったと思います。
 自然博物館を知事部局で管轄している一つに、滋賀県の琵琶湖博物館があります。この場合は、よくわかります。琵琶湖の水質汚染が問題になって、県民の合成洗剤を使わない運動までおこった。滋賀県庁には「琵琶湖環境政策課」という課まである。そこで、琵琶湖博物館が、知事部局の管轄になるのは、自然の流れです。
 また、富山県の「恐竜博物館」は、観光などをあつかう部局が管轄しているそうです。これもそうだろうなと思います。
 しかし、和歌山県の場合は、教育委員会が管轄し、子どもたちに親しまれてきたわけです。自然博物館の整備等について、長年、この博物館を育ててきた教育委員会のもとで計画をたて、じっくりと委任も検討されてはどうかと思いますが、教育長、いかがでしょうか。

《答弁》 教育長
 県立自然博物館は、議員ご指摘のように毎年10万人を超える多数の入館者が訪れる大変県民にも親しまれている博物館です。ただし、現在の同館の展示内容や学芸員の配置等については、水族を中心とした分野に大きく偏っており、今後は動物、植物、地学等を含む県全体の自然を学び、体験する施設として博物館の展示や教育普及等のあり方を見直していく必要があります。
 今回の機能強化にあたっては、自然博物館の使命や事業との関連性が高く、自然や環境に関する専門的な情報の蓄積が豊富で、国等の関係機関との関わりが深い環境生活部において、指導、助言を行っていくことが最も適当であると考え、来年度当初から事務委任することとしたものです。

(2)県立近代美術館について
 ・県立近代美術館の運営予算などの苦労について
《質問》雑賀光夫 県議
 意見は最後に申し上げることにして、つぎは県立美術館の問題です。
 黒川紀章の設計になり、第一級の収蔵施設と収蔵物を持つ県立美術館は、地方にある美術館として高いレベルを誇っています。そのことは、第一級の収蔵家である田中恒子氏は京都府にお住まいの方ですが、コレクションをおいてもらうのなら和歌山県立美術館にと、そっくり寄贈されたことによっても示されます。
 ある美術家が県立美術館の「原勝四郎」展にいったそうです。田辺の作家です。いい展覧会だったので「カタログ」(展示作品の写真冊子)をくださいと言ったら「予算がないので作っていない。」ということだったそうです。他府県の美術館も訪れるその方は、「びっくりした」と私に語っていました。
 昨年開催した田中恭吉(きょうきち)展は内容も非常に優れていて、担当した学芸員は近代日本美術の研究者に与えられる倫雅美術奨励賞を受賞しました。出版社が出資してくれたことによって関連の書籍の出版ができましたが、独自にカタログの制作はできなかったそうです。
 滋賀県立近代美術館のHPによれば展覧会開催事業費は、平成23年度で6166万円となっています。当局からいただいた資料では、和歌山県立近代美術館の展覧会経費は、同じ年で約3852万円、60%余りの予算しかありません。
 美術館活動の大きな柱である展覧会事業が十分できるよう、予算確保を図っていく必要があるのではないでしょうか。
 教育長にお伺いいたします。

《答弁》 教育長
 県立近代美術館については、県民に多様な芸術鑑賞の機会を提供するため、川口軌外等の本県出身やゆかりの作家の作品、ピカソをはじめとする国内外の貴重な版画類、さらには、現代美術作品のコレクションを収集するとともに、各種の展覧会事業を行ってきたところです。
 ただし、近年は、議員ご指摘のように予算の制約等もあり、展覧会事業の内容について工夫や見直しを行っています。
 こうした中、今回の博物館の機能強化策の一環として、展覧会の開催の仕組みを改めるとともに、概ね3年に一回程度は通常予算とは別に大規模な展覧会も開催できるよう取り組んで参りたいと考えています。

 ・どうして所管変更をしなくてはならないのか
《質問》雑賀光夫 県議
 ただいまのお答は、県立美術館についても文化国際課に委任するという方針のなかに盛られているものです。感想はのちに申し上げますが、美術館というのは展覧会をするだけではなく、美術品を収納するという大事な博物館的機能があります。県展などはこれまでも文化国際課が担当してこられたのですから、これまでも連携してやってこられた。
 どうして、連携ではやれないのでしょうか。

《答弁》 教育長
 和歌山県の美術芸術の振興拠点であり、県民が気軽に芸術文化に親しむことのできる県立美術館の運営については、「和歌山県文化芸術振興条例」や「同振興基本計画」を所掌し、本県の芸術文化振興に係る業務を総合的に担っている企画部において、連携ではなく直接、指導、助言を行っていくことが最も相応しいと考え、事務を委任することとしたものです。

《コメント》雑賀光夫 県議
 いろいろお伺いしましたが、私は、博物館の移管あるいは事務委任は、あまりにも唐突であると思います。
 滋賀県立近代美術館の場合、周辺にたくさんの美術館がある。そこで一昨年度、近代美術館の運営を見直し、今後のあり方について報告書をまとめています。有識者会議の議論を踏まえてものです。
 
ここに分厚い報告書があります。
 実は、滋賀県の県立美術館は、知事部局が管轄しています。大事なことは、どこが管轄するにせよ、いかにそれぞれの博物館が県民に親しまれ、本来の役割を果たせるかどうかにあります。
 それぞれの博物館や美術館を支えている職員・学芸員のみなさんが、一番よくわかっていますから、そのみなさんの意見を大切にして、また、広く県民・有識者の意見を聞きながら発展を図っていくことが大切だと思います。
 そうしたプロセスを決定的に欠いていたのが、今回の博物館移管問題であったというのが、私の感想です。
 以上で私の一般質問を終わります。ありがとうございました。


 
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