2014年2月県議会
松坂英樹 一般質問 概要記録
2014年3月4日 議会中継録画

1.有田保健医療圏の医師確保について
(1)有田保健医療圏の産科医師確保
(2)「産後ケア事業」など、妊娠から
   出産・産後をトータルでささえる
   子育て支援策の拡充を

(3)有田市立病院の内科医師等の確保
(4)地域医療を守る県の役割と取り組み

2.和歌山の森林・林業の再生にむけて
(1)県産木材の利用拡大
(2)搬出間伐材の利用促進
(3)公共事業での木材利用拡大
  ・間伐材利用推進指針について
  ・土木工事における木材活用マニュアルについて
(4)林業後継者対策と森林組合の役割
(5)尾根筋や渓畔林の天然林化事業を


――――――――――――――――――――――――――――――――

1.有田保健医療圏の医師確保につい
(1)有田保健医療圏の産科医師確保
《質問》松坂英樹 県議
 通告にしたがい、一般質問をさせていただきます。まず、有田保健医療圏の医師確保についてです。
 この問題は、昨年6月県議会に引き続いての質問となります。有田保健医療圏内唯一の公立病院である有田市立病院では、産科医師の不足により、昨年9月から新規分娩の受付をやむなく休止されているという状況が続いています。
 私は先日、有田市立病院へお伺いし、ご苦労をおかけしている病院現場の事務長さんや産婦人科の助産師さんからお話をお聞きしてまいりました。現在、有田市立病院では、分娩再開までの間は「産科セミオープンシステム」によって、妊婦健診は市立病院で、出産は県立医大や日高病院でという対応をとっておられます。これに加えてこの1月からは、「助産師外来」と「産後ケア」の事業をスタートさせました。
 「助産師外来」とは、医師の妊婦健診枠の中で、医師にかわっての妊婦健診を行う事業で、普通の妊婦健診は妊婦さんだけで検診を受けるわけですが、助産師外来の妊婦健診では、夫や子どもたち、家族も含めていっしょに対応できるということが特徴だそうです。おなかの中の赤ちゃんの様子を見ながら説明、これは時には表情まで見ることができるそうですが、おなかの中にいるときから、母性愛・父性愛を育んでゆくことを大きな目的の一つにしているということです。
 また、健診時間をたっぷりとることもできるのが特徴で、通常の妊婦健診では1時間〜2時間待ちで受診し、検査含めて15分あればいいところで、異常の確認ということが健診の中心となります。その点、完全予約制の助産師外来の妊婦健診では、約1時間かけてゆったりと、妊婦さんの相談にのれるのが良い点だと強調されていました。
 また、助産師外来とともに、取り組み始めたのが「産後ケア」です。この「産後ケア」とは、全国の先進的な地域で始まっている取り組みで、核家族化や若者の孤立化が進む中、産後の不安定な時期のお母さんをケアしてゆくものです。今は、たとえ核家族でなくても、祖父母の高齢化があったり、また逆に現役で働き続けている場合も多く、必要な時に必要なアドバイスを受けにくいという状況があり、育児ノイローゼや時には児童虐待というような、深刻なケースにつながらないための取り組みとして注目されています。
 産後のケア自体は、助産院などではこれまでも、特にそれをうたっていなくても、当然のようにおこなってきた妊婦へのサポートです。出産直後のお母さんは、育児になれるまで一杯いっぱいで、お乳のこと、育児のこと、赤ちゃんのこと、「聞きたいけどどこに行ったらいいのかわからない」という時期に、1時間でも、話しができて、子どもを遊ばせて、リフレッシュして帰ってもらいたいんですと、助産師さんたちは言います。産後ケアには1時間程度の外来ケアや訪問ケアから、日帰りケア、宿泊ケアと色んなバリエーションが用意されています。
 こうした、助産師外来にしても、産後ケアにしても、共通しているのは、妊娠・出産・産後の母親が、いかに楽しく育児ができるかをサポートしたいという姿勢です。夜、一睡もできずに育児に向き合う母親が、自分の体の変化も含め、不安でガチガチになりがちな時期に、いかに自分の不安を打ち明けられるか、相談にのれるかということを大事にしていこうという姿勢です。
 また、助産師さんたちは、病院で待っているだけでなく、子育て支援センターに出向いての相談活動などもされています。「住民の中では、市立病院の産科なくたったという口コミだけが広がっていて、いえいえ、やっていますよというところから話が始まるんです」と明るく笑顔でお話されました。そして、「でも、なんといっても一日も早く常勤の産科医師を配置してほしいです。医師といっしょになって分娩を再開したいです」という助産師さんの言葉が胸に響きました。
 現在、有田郡市においては、年間約550人の出産があるにもかかわらず、分娩ができる医療機関は民間クリニック1カ所だけという状況であり、お産の集中する月の受付はお断りするしかないという現状だそうです。この状況は県内他の保健医療圏にはない状況です。
 有田保健医療圏内の1市3町の住民からは、「地元で安心してお産ができる体制づくりを早く」との要望が、日増しに高まっています。「有田地方で安心して子どもを産み育てられる体制を求める会」という住民団体も立ち上がり、事務局に問い合わせをさせていただくと、この1ヶ月で200通をこえるアンケートへの回答が寄せられていて、産科医師確保と市立病院での分娩再開を求める声が世論として大きく広がっていることを示しています。
 また先月、広川町で行われた、県の行政報告会においても、西岡広川町長さんが、ご挨拶の中で「ひとつ知事にご要望申し上げたい」と、この有田保健医療圏での産科医師確保を、町民のみなさんの前で仁坂知事に強く要望されていたのも印象的でした。
 こうした状況をふまえて、以下、順次質問をさせていただきます。まず一点目に、有田保健医療圏での産科医師確保にむけての取組はどうなっているのか。この間の取組と現状について福祉保健部長よりご答弁を願います。

《答弁》 福祉保健部長
 有田市立病院の常勤産科医が退職したことに伴い、昨年11月以降、有田保健医療圏において分娩が可能な医療機関は1ヶ所となっております。
 このような中、有田市立病院では、非常勤医師2名を確保するとともに、助産師外来を開設しております。また、有田保健医療圏では、妊婦健診は最寄りの医療機関で行い、分娩は圏域外の連携病院等で行うセミオープンシステムを、昨年11月から実施しているところです。
 今後とも、安全安心なお産をしていただくため、有田市立病院の常勤医確保に協力し、医療体制の確保に取り組んでまいります。

(2)「産後ケア事業」など、妊娠から出産・産後をトータルでささえる子育て支援策の拡充を
《質問》松坂英樹 県議
 次に、産後ケア事業など、妊娠から出産・産後をトータルでささえる子育て支援策の拡充をという点で質問をさせていただきます。
 先ほどご紹介申し上げましたように、妊婦や産後の母親への支援が今まで以上に必要となってきています。ところが、産後ケア事業などは、保険適用外ですから、自己負担がけっこうかかるんですね。先進的に実施している自治体では、半額や9割の補助を出して、自己負担を軽く抑える工夫をしながら利用を増やしています。
 こうした流れの中で、国においては新年度から、妊産婦の孤立感解消をはかり、既存の支援にかけていた産後ケア事業と産前・産後サポート事業に取り組むための、モデル事業が始まると聞ききました。こうした国事業の採択などに有田市と有田市立病院が手を上げてゆくならば、ぜひ県としても援助・助言をしていただきたいし、また県としても、妊娠から出産・産後をみすえた子育て支援策拡充を県内市町村とともに進めてゆくよう求めるものですが、いかがでしょうか。福祉保健部長に答弁を求めます。

《答弁》 福祉保健部長
 国では、来年度、妊娠・出産にかかる相談・支援サービスの充実と連携強化を図るためのモデル事業を開始します。これを受け、県としましても有田市や有田市民病院を含め県内市町村に対してモデル事業への参加を働きかけているところであり、計画書の提出があればモデル事業として指定されるよう支援を行ってまいります。
 また、妊娠から出産、育児に関する支援につきましては、市町村が実施主体となり、妊婦健診、妊婦教室、新生児家庭訪問、乳幼児健康診査などを通じて、保健師等による相談支援等が行われているところです。
 県といたしましては、これまでも市町村や地域の保健医療関係者と協力して、人材育成や支援技術の向上等に取り組んでいるところですが、今後更に、地域における切れ目のない妊娠から出産・産後支援体制の充実を図って参ります。

(3)有田市立病院の内科医師等の確保
《質問》松坂英樹 県議
 産科医師の不足とともに、有田市立病院では、内科医師や小児科医師などの医師不足という点でも困難をかかえています。内科については、外来診察が火曜日と木曜日が休診で週三日しか診察ができず、入院患者さんの受け入れにも困難を抱える状況となっています。
 この内科医師の不足問題は、病院運営全体にかかわることであり、県ならびに県立医大として特段の取り組みが必要とされていると思いますがいかがでしょうか。この問題にどう取り組んでおられるのか、福祉保健部長に答弁を願います。

《答弁》 福祉保健部長
 有用市立病院においては、従来5名体制であった内科について常勤医師の退職等が相次いだほか、小児科につきましても、昨年4月以降、常勤医師が確保できておりません。
 このため、県では、緊急的に自治医科大学卒業の内科医を1月から派遣したほか、小児科につきましても非常勤医を確保するなど、当面の診療体制確保に努めているところです。
 引き続き、有田市とともに、県立医科大学をはじめ、県外の医育機関等に対して、内科医師等を中心に派遣を依頼するなど、医師確保に取り組んでまいります。

(4)地域医療を守る県の役割と取り組み
《質問》松坂英樹 県議
 以上、3点にわたって質問をさせていただきましたが、今回とりあげさせていただいた、産科や内科医師の確保というような、地域医療を守るという分野は、一市町村や一病院だけの課題ではなく、広域自治体である県の大きな責務であり、県立医大の存在意義にかかわる大事な課題であると考えます。県下の地域医療を守ってゆくために、県のはたす役割をどう考え、医師確保をはじめ地域医療の体制強化のための様々な施策にどう取り組んでゆくのか。あわせて、有田保健医療圏での地域医療を守るためにどう取り組んでゆくのか知事のご所見と決意をお聞かせいただきたいと思います。

《答弁》 仁坂知事
 県は、地域の医療崩壊を防ぎ、安全・安心な地域医療体制を構築する役割を担っております。
 これをどういう風に具体的に行っていくかというと、特に現在ご指摘のありました地域の公立病院を中心とする拠点病院に頑張ってもらい、和歌山県は山の方に集落が広がっておりますから、これらの方々も診てもらえるようにするというのが戦略であります。したがって、この拠点病院を中心とした救急医療体制の堅持や、それを担う医師・看護職員の確保が大変大事なことでございます。
 具体的には、そのような病院では医師不足が顕著でございますから、援軍を送らなければいけないということで、医師を増やさないという閣議決定を覆した県立医科大学の都合40名の定員増の実現、あるいは、医師不足が特に深刻な産科、小児科等を目指す研修医を対象とした修学資金制度の創設、あるいは、若手医師の定着を支援する地域医療支援センターの県立医科大学への設置といった抜本的な医師確保対策に取り組んで参りました。
 また、各保健医療圏ごとに、小児医療、救急医療における医師会と拠点病院間の協力体制の構築も進めて参りました。
 今後とも、こうした様々な取り組みを進め、引き続き地域医療体制の充実に向け取り組んで参りたいと思います。
 有田保健医療圏においても、県立医科大学からの医師派遣や自治医科大学卒業の医師の派遣等により病院勤務医の確保に取り組んでいるところでございます。まだ、十分安心はできない状態でございまして、私自身も含めて、一人の医師を確保することは大変困難なことでございますが、これを行っていかないと次々と崩壊が起こりますので、引き続き頑張っていきたいと思います。
 地域医療再生基金等もございますので、開業医と拠点病院が協力する体制の構築に支援するなど、保健医療圏全体で安心できる地域医療の確保に取り組んで参りたいと考えております。

《要望》松坂英樹 県議
 知事から、決意をこめた答弁をいただきました。住民の皆さんの関心も非常に高い課題ですし、県・市・病院の関係者のみなさんは、力合わせて必死になってご苦労いただいています。
 一日も早く、医師確保のめどをつけ、地域医療を守れるよう、取り組みを強化されるよう、重ねて強く要望をさせていただきます。


2.和歌山の森林・林業の再生にむけて
《質問》松坂英樹 県議
 二つ目の質問であります、「和歌山の森林・林業の再生に向けて」に移らせていただきます。
 先日、有田川町の清水森林組合を訪問し、組合長さんをはじめ役員・職員の皆さんからお話を伺ってまいりました。
 清水森林組合は、この間の経営危機を関係者の皆さんの努力で何とか乗り越えるめどをつけ、1月からは新体制でスタートをさせています。懇談の中で、組合長さんらからは、木材利用の拡大、林業後継者対策、森林の公益的機能の啓発、事業における書類等の合理化・簡素化のご要望を聞かせていただき、森林・林業の再生への想いを強くした次第です。
 いま私たちは、県内の中山間地や山間部において、過疎化と若い世代の減少・流出が止まらず、一人暮らし・二人暮らしの高齢者世帯が、この数年でも急激に増加しているのを実感しています。
 県と市町村が力を合わせて取り組む過疎対策・地域活性化策の強化はもちろんのこと、本来の活力を取り戻すには若い世代の雇用確保がその柱となるべき課題です。林業や農業など第一次産業が元気になって、加工や販売などのすそ野が広がることが求められます。
 和歌山県の面積の77%が森林です。森林のもつ公益的機能についての意識は高まってきており、水源の確保、CO2の吸収源、生物多様性確保と益々重要な位置づけがされています。この和歌山の森林に蓄えられた高いポテンシャルを生かし、森林・林業の再生をはかることが大切です。
 日本国内の森林の成長量は約8000万立方メートルで、現在の日本における年間木材消費量を上回る量であり、現在約28%の自給率を抜本的に引き上げる条件があります。関税など国際的取引についても、木材も工業製品のような扱いではなく、天然資源としてあつかおうという動きもあるように、世界的な木材需要の高まりと資源の減少の中で、いつでも、どれだけでも外国から木材を輸入するという輸入頼みは通用しない時代を迎えています。
 ところが、国産材の消費は、輸入圧力により、消費量も材価も低下の一方をたどり、国産材の方が外材より安くなる逆転現象がおこっています。外材は丸太での輸入から加工済みのホワイトウッドにとってかわられていて、木材加工場も外材から国産材への転換・対応が求められているなど、輸入だよりの木材政策・国策の転換こそが求められます。
 しかし、県内の森林を見ると、有田川町の旧清水町地域では、森林面積の85%までもが人工林という状況で、必ずしも適地適木ではなかった過去の植林推進のために、過度の人工林化が進みました。また、多くの苗木を密植して成長させる育成法がとられたため、放置された人工林では、それが逆に弱点となって光の入らない真っ暗闇のモヤシのような森となり、一見緑の森に見えても、実は「緑の砂漠」なんだと指摘されています。
 こうした課題を解消するために、県としても様々な施策に取り組んできたわけですが、和歌山の森林と林業の再生を求めて、以下5点にわたって、質問をさせていただきます。
(1)県産木材の利用拡大
 一点目は、木材の利用拡大という点です。3年前、国において超党派で可決成立した公共建築物の木材利用促進法をうけ、この間、木材の利用拡大に、和歌山県としてどう取り組み、和歌山県産木材の利用拡大はどう進んだのか。まずはこの点から農林水産部長の答弁を求めます。

《答弁》 農林水産部長
 平成22年10月に施行された「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に基づき、平成24年2月「和歌山県木材利用方針」を策定するとともに、市町村に対しても策定を働きかけ、既に全ての市町村において利用方針が策定されております。
 また、副知事、各部長等で構成する、木の国プロジェクト推進会議において、公共施設の木造化、木質化に取り組んでおり、秋葉山県民水泳場の屋根部材や内外装仕上げ材など、多くの施設に紀州材が利用されています。
 こうした取り組みにより、法律施行前の平成21年度は県と市町村合わせて約1,700立方メートルであった紀州材の使用量が、平成24年度には1.8倍の約3,100立方メートルとなっており、着実に実績を上げているところでございます。

(2)搬出間伐材の利用促進
《質問》松坂英樹 県議
 次に、搬出された間伐材の利用促進についてお尋ねします。林業経営をめざす森林の間伐は利用間伐、搬出間伐が基本とされ、この間伐事業・森林整備事業をスムーズに進めるためにも、搬出された間伐材の利用促進に力を入れてきました。しかし、景気動向や一般材の木材価格、搬出量の変化、これらの影響を受けるために、せっかく搬出した間伐材が滞留するなどの局面もあったと伺いました。
 搬出間伐材の利用状況はどうか。供給量等はどう推移してきたか。今後どう利用促進をすすめてゆくのか。農林水産部長よりご答弁を願います。

《答弁》 農林水産部長
 間伐材は、建築用材や合板用材など様々な用途に利用されております。
 供給量につきましては、平成19年度は約1万7千立方メートルでしたが、5年後の平成24年度は約6万立方メートルに増加しております。
 間伐材をはじめとする紀州材の利用を進めるため、県では公共建築物での利用推進に加え、民間木造住宅における利用拡大などに取り組んでいるところです。また、合板用として年間約1万立方メートルが出荷されており、引き続き関係団体と連携して、新たな出荷先の確保など需要の拡大に取り組んでまいります。

(3)公共事業での木材利用拡大
《質問》松坂英樹 県議
 建築関係での木材利用促進とともに、木材使用を「量」の面で大幅に引き上げる可能性をもつのが公共土木工事の分野であると考えます。鉄筋とコンクリートだけでなく、木材や石を利用できる工事はたくさんあります。
 県はこれまで、今年度末をめどに公共土木工事への間伐材利用推進指針を策定することや、木材の活用マニュアルを早期に作成すると表明し、農林水産部と県土整備部が連携してこの課題に取り組んでこられました。ぜひこれらの取組みが新年度予算による事業に生かされ、県内での木材使用量が増加してゆくことを願うものです。
 新年度をむかえるにあたり、どのような指針とマニュアルを示そうとしているのかお尋ねいたします。
・間伐材利用推進指針について
 まずは、「公共土木工事への間伐材利用推進指針」についてはどうか、農林水産部長にご答弁を願います。

《答弁》 農林水産部長
 公共土木工事における木材利用促進は、県内の森林整備を進めるうえで大変重要であると認識しております。
 「和歌山県木材利用方針」においても、公共建築物だけでなく公共土木工事にも紀州材の利用を推進することとしており、木柵工(もくさくこう)や型枠などを中心に利用されております。
 今後、公共土木工事におけるより一層の利用拡大を図るため、重点的に木材利用を進めていく工事の種類を明記した「木材利用推進指針」を、年度末の策定を目標に、県土整備部と協議を進めているところでございます。

《再質問》松坂英樹 県議
 部長からは、木材利用推進指針の説明として、「重点的に木材利用をすすめてゆく工事の種類について明記してゆく」との答弁だったと思います。また、「年度末までに策定」ということでした。もう年度末だから、「どうだできたのか」と、聞いているんです。もうすぐ発表するんだという意味でしょうから、発表を期待しておきます。
 そこで、指針でしめす目標について再質問をします。国会での木材利用促進法の論議のときにもあったと思うんですが、これだけの量を使ってゆくことをめざすんだという数値目標、特に量的な数値目標、こういったものが入らないと、できるだけ努力するにとどまる可能性が大きいんですね。
 和歌山県としてこれだけの量を使ってゆこうと、めざすべき数値目標が広く県民に示されれば、工事を実際に発注する役所の側も、また木材を供給する側も、見通しをもって仕事をすすめることができると思うんですね。また、これが県民の皆さんに広くPRされるならば、木材を使っていこうという意識や合意になってゆく、施工業者さんの協力を得てゆく、こういうことにつながると思うのです。
 部長に再質問をします。木材利用の数値目標、特に量的な目標を打ち出してゆくおつもりなのかどうか、またこの「指針」は、県庁内プロジェクト、申し合わせというレベルではなくて、広く県民に公表して取り組まれるものなのかどうかという点も答弁を願います。

《再答弁》 農林水産部長
 現在策定作業中の指針では、例えば、山腹工における柵工であれば特殊な場合を除いて100%木製とするなどの、具体的な目標割合を設定することとしております。
 それから、量的な目標についてでございますけれども、指針の中では、現在のところそこまでは、議論はしておりません。
 といいますのは、その年度の事業量等によってきますので。
 それから、また、その指針の内容につきましては、広く公表し、着実に木材利用が進むように取り組みを進めて参ります。

《要望》松坂英樹 県議
 部長の答弁は、工法により目標割合の目標数値などを示してゆくという答弁でした。積極面を評価するものの、先ほど指摘をさせていただいたように、量的な数値目標がないと物足りないと思います。めざすべき目標とそれにいたる段階的目標や、手立て、こういったものを示せる計画・指針となるように、ぜひ実際に運用してゆく中で、発展させていっていただきたいと、強く要望をしておきます。

・土木工事における木材活用マニュアルについて
《質問》松坂英樹 県議
 次に県土整備部長にお尋ねをします。農林水産部とも協議しながらまとめている「公共土木工事への木材活用マニュアル」の内容について、またマニュアルの運用開始時期についてご答弁を願います。

《答弁》 県土整備部長
 公共土木工事における木材利用拡大を図るため、今年度、農林水産部と連携しながら木材利用に関するマニュアルの策定に取り組んできたところです。
 これまで、県木材協同組合連合会との意見交換や各建設部等に対する調査などで、木柵工や丸太伏工(まるたふせこう)等の施工実績及び維持管理上の課題について整理を行ってまいりました。
 今後、これらの調査・分析等を踏まえまして、公共土木工事の設計施工に活用できる木製品の利用が可能な工法につきまして、年度末を目標にマニュアルとして取りまとめ、運用してまいりたいと考えております。

《再質問》松坂英樹 県議
 もう年度末なんですがね。内容については取りまとめの段階ということですね。時期についても「早急に」運用していきたいという答弁でありました。
 この木材使用量が実際に増えるかどうかのカギを握っている主役は、県土整備部だと思います。私はこれまで試されずみの工法に加えて、河川工事など、木材を使用できる工事はかなりあると思うんですね。ぜひ実際に使えるいいマニュアルをまとめていただいて、早くスタートさせていただきたいと思います。
 再質問で部長に確認させていただきます。運用開始時期ですが、新年度の様々な公共事業において、マニュアルが示された後は、この新年度発注の工事から順次適用・運用されてゆくということでよろしいですね。その点を確認させてください。

《再答弁》 県土整備部長
 今ほど答弁させていただきましたけれども、マニュアルにつきましては年度末を目標に取りまとめをさせていただいております。取りまとめた暁には、速やかにこれが公共土木工事に運用されるように進めていきたいと考えております。

《要望》松坂英樹 県議
 一日も早くスタートできるよう期待しておりますので、どうぞよろしくお願いしておきます。

(4)林業後継者対策と森林組合の役割
《質問》松坂英樹 県議
 和歌山県は、「緑の雇用」など様々な施策を通じて林業振興と林業後継者の育成に取り組み、和歌山県の山間地域の活性化と森林環境の保全をめざしてきました。
 森林組合の作業班は、地域の雇用の場という点で、民間事業者とともに、地域で大切な役割を果たしてきました。しかし、昨今は森林組合の経営難等を理由に、林業後継者の雇用環境において厳しいものがあるのが現状です。
 林業後継者対策の到達と現在の支援策、森林組合の果たすべき役割についてお伺いします。県の取組の到達として、「緑の雇用」で就労した方が現在どれぐらい森林・林業の現場で働いておられるのか。また、新たな林業後継者の就労や技術力向上などの支援策はどうか。林業後継者育成における森林組合の果たすべき役割についてどう考えているか。農林水産部長のご答弁を願います。

《答弁》 農林水産部長
 まず、これまで行ってきた「緑の雇用事業」についてですが、林業に従事している方は平成24年度末で168名で、森林施業の中核となって活躍いただいております。
 次に、就労や技術向上などの支援策についてですが、国からの委託事業である「フォレストワーカー研修」などに加え、県では、林業の基礎的な知識から高性能林業機械の操作にいたるまで幅広い技能を習得することを目的に「グリーンワーカー育成研修」を実施するなど、林業の担い手の育成に積極的に取り組んでいるところです。
 本県の林業振興において、林業従事者の育成は非常に重要であり、林業従事者の多くを雇用する森林組合の役割は大きいことから、組合が森林所有者の付託に応えて森林施業を行っていくことができるよう、経営の安定化に向けた指導を行うとともに、体制強化を図るため森林組合の合併を推進して参ります。

(5)尾根筋や渓畔林の天然林化事業を
《質問》松坂英樹 県議
 質問項目の最後に、尾根筋や谷筋の天然林化事業について提案し答弁を求めたいと思います。
 新年度予算において「ごまさんブナ林再生プロジェクト」として、貴重なブナ林の保全と周辺の人工林の天然林化に取り組むとされていることを高く評価したいと思います。
 県はこれまで、計画的に環境林整備に取り組んできました。私はこの分野で、尾根筋の部分と谷筋・沢沿いの渓畔林と呼ばれる部分の天然林化に思い切って取り組むよう事業化を提案したいと思います。議場に※資料をお配りしております。
 先人の知恵として、植林をする際にも、山をまるまる全部人工林にするのではなく、尾根筋や谷筋・沢ぞいの渓畔林には天然林を残しておくことが健全な山を保つ知恵として受け継がれてきました。これは自然環境という点でも、また森林への栄養分の補給という点でも、また土砂災害を防ぐ治山の面でも大切だと言うことが経験上もわかっていたわけです。しかし、和歌山の山においては、人工林化が極端に進んで、それこそ谷ぞいの水際から、山の天の天まで植林されてしまったところが多いのが現状です。
 尾根筋の天然林は、しっかりとした根を張ることによる土砂崩壊の防止、落葉による土壌育成・栄養素の供給、多様な生物環境の保全などの機能を持ち、また、谷筋の渓畔林は、洪水による浸食防止、流下土砂の濾過に加えて、落葉・落下昆虫の供給、栄養元素の交換、生きものの生息場所の提供など、それぞれ多くの機能を持ちます。
 放置された森林の環境林化に加えて、目的と効果をよりはっきりさせた環境林化事業を打ち出す時期ではないかと考えます。
 そこで知事にお伺いをします。和歌山県として環境林整備に取り組んできたが、今後の方向性をどう考えているのか。豊かな森林自然環境の保全・回復と災害防止の観点から、尾根筋や渓畔林を環境林として天然林化する事業についてどう考えるか。ご答弁を願います。

《答弁》 仁坂知事
 本県ではこれまで、利用期を迎えつつある人工林を対象に、搬出間伐を積極的に推進してまいりました。
 利用すべきものは、きちっと利用するということでございます。
 一方、林業経営の観点から、収益が期待できない尾根筋とか急傾斜地の森林とか、また、もちろん渓流沿いに生育する渓畔林などについては、国の補助事業をはじめ、紀の国森づくり基金を活用して、広葉樹が混在する森づくりに向けて、強度間伐の実施など環境林整備に取り組んでまいりました。
 条件的に厳しく手入れが進まない森林や自然環境の面で重要な森林を中心に、環境林としての保全整備に取り組んで行きたいと思います。
 それ以上に、元のままの自然が本格的に残されているところも積極的に保全をしなければならないというふうにも思っています。
 県立自然公園の再編を就任早々行いましたが、その時もそのような考え方で配慮してまいりました。
 また、貴重な生態系を持つ森林などについては、そのまま保全しようということで、紀の国森づくり基金を活用して、公有林化を進めてまいりました。
 それから来年度、ご指摘のように新たにシカによる食害が拡大している護摩壇山のブナ林保全に、技術も活かして取り組むなど、貴重な森林資源の保全対策も更に強化してまいりたいと思っております。
 このように、豊かな森林資源を、次の世代に引き継いでいくためには、森林の持つ公益的機能の維持増進のための施策を積極的に推進していくことが重要と考えております。

《要望》松坂英樹 県議
 知事からは、環境林の整備の中でやってきましたと、今後も条件的に厳しくて整備のすすまない森林を中心に、環境林整備をすすめてゆくとの答弁がありました。
 私の今日の質問での提案は、知事がおっしゃったように、地理的・経済的要因で整備がすすまず放置された森林の整備すすめてきたことは大事なんだけども、これからは、その中でも特にというか、それに加えてというか、和歌山県の森林の尾根筋や渓畔林を目的意識的に整備すること、ここに意義があると提案をしたわけです。環境林の整備をはじめて10年がたちました。この整備計画の到達点をふまえ、今後ともこういった点をぜひ吟味しながら整備をすすめていただきたいと要望しておきます。
 そして、加えて要望しておきますが、新年度予算では県として土砂災害啓発センター(仮称)の設置が盛り込まれ、国の土砂災害研究機関を誘致して、防災対策に取り組むとされています。
 ぜひ、この新しい組織でも、森林の土砂災害防止という点から、尾根筋や渓畔林の天然林化の効果を研究するよう指示も出していただき、県の施策に生かしていっていただくよう要望をいたしまして、本日の質問を終わらせていただきます。


 
                                 仁坂知事の答弁を聞く、松坂英樹県議(右)
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