和議第142号
     日本政府に核兵器全面禁止のための決断と行動を求める意見書(案)

 2010年5月の核不拡散条約(NPT)再検討会議は、「核兵器のない世界の平和と安全を達成する」ことに合意し、「すべての国家は核兵器のない世界を達成し維持するために必要な枠組みを築く特別な努力をする必要がある」と強調した。次回2015年NPT再検討会議を前に、いま、世界のすべての国の政府と市民社会には、この目標を現実に変えるために協力し、行動することが強く求められている。
 しかし、それから4年が経ったいまも、「核兵器のない世界」を達成する具体的な道筋は見えていない。米ロ両国間の合意を含め、一定数の核兵器が削減されたとはいえ、世界にはなお17,000発の核兵器が貯蔵、配備され、他方では朝鮮半島をめぐる緊張に見られるように、新たな核開発の動きも続いている。意図的であれ偶発的なものであれ核兵器が使われる危険は現実に存在している。
 この状態を打開し核兵器をなくすためには、国際社会が一致して核兵器を全面的に禁止する以外に方法はない。国際司法裁判所も断じたように、核兵器の使用は「国際人道法の原則と規則」に反するものであり、世界で唯一、国民が核の惨禍を体験した日本には、核兵器の非人道性を訴え、その全面禁止を主張する道義的根拠と重い責任がある。
 いま核兵器を持つわずかな数の国が決断すれば、核兵器禁止条約の交渉を開始できる条件が生まれている。この決断と行動を遅らせることは、第2、第3のヒロシマ、ナガサキにつながる危険を放置することになる。
 さらに、北朝鮮の核開発をめぐって軍事的緊張が高まっているなかで、国際紛争の解決手段としての武力行使と威嚇を憲法で放棄した日本が核兵器全面禁止のために行動することは、朝鮮半島の非核化、日本と東アジアの平和と安全を促進するうえでもきわめて重要である。
 2013年10月、「核兵器の人道的影響に関する共同声明」が125カ国の連名で発表された。この声明は、核兵器の残虐性、「非人道性」を告発し、「核兵器のない世界」へ前進することをめざしており、「核兵器がいかなる状況の下でも決してふたたび使われないことが人類生存の利益」であると述べ、核兵器が使用されないことを「保証する唯一の道は、その全面廃絶である」とし、すべての国が核兵器使用の阻止、核軍縮などのために「責任」を負っていることを強調している。
 共同声明に日本政府も賛同したことは、唯一の被爆国であり、憲法の平和原則と「非核三原則」をかかげる国として当然の姿勢である。しかし、これで問題が終わったわけではない。核兵器は全面的に禁止されるべきである。
 2015年4月のNPT再検討会議にむかって、「核兵器のない世界」への行動が直ちに開始されるよう、ジュネーブの軍縮会議(CD)をはじめ核軍縮・廃絶と安全保障にかかわる諸機関で、「共同声明」の署名国として、日本政府が、核兵器全面禁止条約の交渉開始のために努力するよう要望する。

  以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

  平成26年6月27日
           様
                                       和歌山県議会議長 坂本 登
                                                  (提 出 者)
                                                   谷口 和樹
                                                   雑賀 光夫
                                                   松坂 英樹
                                                   角田 秀樹
(意見書提出先)
 衆議院議長
 参議院議長
 内閣総理大臣
 総務大臣
 外務大臣