2015年2月県議会 奥村規子 一般質問 概要記録 議会中継録画
      
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1.和歌山市産廃処分場の林地開発計画について
(1)和歌山市からの意見照会への回答について
(2)林地開発許可申請への対応方針について

2.地方税回収のあり方について
(1)和歌山地方税回収機構の活動実績等について
(2)和歌山地方税回収機構への移管件数について
(3)和歌山地方税回収機構への滞納事案の移管に対する認識について
(4)鳥取・児童手当差押え違法判決の活用について

3.「改正」介護保険制度について
(1)介護報酬引き下げの影響について
(2)市町村事業への移行について
(3)介護保険料の値上げについて
  ・県の平均保険料
  ・介護保険財政安定化基金について
(4)制度「改正」の受けとめと高齢者施策について


1.和歌山市産廃処分場の林地開発計画について
(1)和歌山市からの意見照会への回答について
《質問》奥村規子 県議
 議長のお許しを得ましたので、通告に従って質問させていただきます。
 まず最初に、和歌山市産廃処分場の林地開発計画についてお聞きいたします。
 和歌山市山口地区(滝畑・上黒谷)において、和歌山市の株式会社フォーシーズンファクトリーが建設を予定している安定型廃棄物最終処分場についてお伺いします。
 当計画地は、滝畑地区の飲料水や農業用水の水源地上流である森林区域で、大規模に開発を行おうとしていることから、森林法に基づく林地開発許可が必要と思われます。また、根来断層の直近で、地すべりや崩壊が多数見られる脆弱な場所であることから、2011年に計画が浮上してから今日まで、地元自治会が中心となって、デモ行進や市に対して約14万5,000筆もの署名を提出するなどの反対運動が実施されております。地元自治会の他にも、大阪府阪南市の住民も、建設反対の要望活動や署名を和歌山市に提出しています。そこで、農林水産部長にお尋ねいたします。
 和歌山市に対し、事業者が提出した生活環境影響調査実施計画書等について、和歌山市からの意見照会がいつ付けでありましたか。また、県としていつ付けで出した回答ですか。内容は主にどういうものですか。とりわけ危険性に触れた分はあるのでしょうか。土砂災害や水質汚染などについて、どのように述べられていますか。ここに和歌山市公文書開示を求めた資料1を付けさせていただきましたが、農林水産部長お答えください。

《答弁》 農林水産部長
 和歌山市から平成26年4月16日付けで、事業者が市に提出した廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく生活環境影響調査実施計画書等について意見照会があり、森林地域内での開発計画面積が1ヘクタールを超えることから、森林法に基づく林地開発許可が必要である旨、平成26年5月26日付けで回答を行っております。
 林地開発については、「災害の防止、水害の防止、水の確保、環境の保全」を内容とする許可基準が定められており、計画地周辺及び下流域への影響を防止する具体的な対策を明確にするとともに、土木工事、洪水調整池等の防災工事、残置森林の配置等の計画に当たっては、林地開発行為の許可基準に従うこと等を、お答え申し上げたところです。

(2)林地開発許可申請への対応方針について
《質問》奥村規子 県議
 続いてお聞きします。事業者は廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく産業廃棄物処理施設の設置許可の権限を有する和歌山市に対して、昨年、「生活環境影響調査実施計画書及び生活環境影響調査実施計画書に伴う事業計画書」などを提出しました。このことから、市は実施計画書等に対する県等の関係機関や市の委嘱した専門技術委員の意見を取りまとめ、事業者に意見を通知していると聞いています。現在では、事業者が和歌山市から通知のあった意見に対し、対応策を検討している状況であると推測されます。このような中で関係住民の声が十分に反映されるのか心配しているところです。
 資料2は、和歌山県林地開発許可制度事務取扱要領に示されている添付書類ですが、農林水産部長にお聞きしておきたいと思います。本計画に対する林地開発など、事前協議において地元同意についてはどのように尊重し、対応するのか要綱をはじめとして対応方針についてお答えください。

《答弁》 農林水産部長
 林地開発許可の申請に際しては、和歌山県林地開発許可制度事務取扱要領に基づき、関係者の同意書等を添付することを求めております。
 なお、現時点におきましては、事業者から県の事務取扱要領による事前協議、森林法に基づく林地開発許可申請はなされておりません。
 今後、事前協議の申し出や林地開発許可が申請された場合には、森林法並びに県の事務取扱要領に照らして適正に審査してまいります。

《再質問》奥村規子 県議
 再度、ご確認させていただきます。今の答弁の中では、許可申請には地元同意が必要だという要領になっているということでよろしいのでしょうか。

《再答弁》 農林水産部長
 県の事務取扱要領におきまして、林地開発許可の申請に際しては、関係者の同意書等の添付を求めているところでございます。

《再々質問》奥村規子 県議
 森林の役割は、環境の保全や水資源の涵養、生物多様性の保全、レクレーションの場の提供など私たちのくらしに不可欠なものです。
 私は、2011年6月議会において、知事に産廃処分場計画について住民同意をどう考えるかについて質問させていただきました。知事は、「最終処分場を確保にあたっては、県民の生活環境の保全を図り、住民の意見を聞きながら廃棄物処理法にのっとり対応してまいります」と答えていただいています。
 私は、和歌山県は林地開発許可申請に対しても他県より進んだ取り組みをされているように思います。資料2にありますように、「利害関係者又は団体名、自治会、土地改良区、水利組合、漁業協同組合等ごとに記入すること。」と書かれていますので、当然、許可申請には地元同意が必要だと考えます。
 もう一度、農振水産部長にお尋ねいたしますが、その点でよろしいんでしょうか。

《再々答弁》 農林水産部長
 同意書が必要であるかどうかというお尋ねでございますけれども、県の事務取扱要領におきまして「申請の要件」という表現を用いてはおりませんが、林地開発許可の申請に際しては、関係者の同意書等の添付を求めておりますので、必要ということになります。
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2.地方税回収のあり方について
(1)和歌山地方税回収機構の活動実績等について
《質問》奥村規子 県議
 2つめは、地方税回収のあり方についての質問です。
 地方税回収機構の活動実績等についてお尋ねいたします。市町村からの和歌山地方税回収機構への移管件数、移管額、徴収状況、滞納処分等の件数、未回収分の各市町村への返還、また、県・市町村からの和歌山地方税回収機構への派遣職員の人件費はどのようになっているのか、総務部長にお尋ねします。

《答弁》 総務部長
 和歌山地方税回収機構が公表しております資料によりますと、平成25年度における市町村から機構への移管件数は、843件、移管額につきましては、約11億円とのことでございます。
 徴収状況につきましては、直近に処理が完結した平成24年度引受分の徴収額は約7億円、徴収率は約49%で、未徴収の案件につきましては最終的に各市町村へ返還されているとのことでございます。
 また、滞納処分等の状況につきましては、全ての事案につきまして財産調査を行い、そのうち約8割の滞納者につきまして差押えを実施しているとのことでございます。
 なお、県・市町村からの機構への派遣職員の人件費につきましては、平成25年度決算によりますと、職員14名分で約1億円とのことでございます。

(2)和歌山地方税回収機構への移管件数について
《質問》奥村規子 県議
 各市町村から和歌山地方税回収機構へ移管される件数については、どのように決まっていくのか、総務部長にお尋ねいたします。

《答弁》 総務部長
 和歌山地方税回収機構は、県内全市町村で構成される一部事務組合でございます。機構への案件の移管については、当然、市町村各々の判断で決定されるというふうに聞いております。
 ただし、機構の人員が限られておりますことから、その処理能力を踏まえまして、移管件数のおおよその目安が示されていると聞いております。
 その目安につきましては、各市町村の滞納額等客観的な指標を基準にしつつ、各市町村に協議したうえで、決定されるというふうに聞いております。また、最終的な移管件数につきましては、この目安を参考にしつつ、各市町村が滞納状況等を勘案して自主的に判断しているというふうに聞いております。

(3)和歌山地方税回収機構への滞納事案の移管に対する認識について
《質問》奥村規子 県議
 県は市町村から和歌山地方税回収機構に移管される滞納事案について、どのように認識していますか。

《答弁》 総務部長
 市町村から和歌山地方税回収機構への移管につきましては、滞納税額が高額な事案等、市町村にとって整理困難な事案などから、市町村が滞納者の状況などを踏まえて選定しており、その引き継ぎに際しましては、市町村と機構で十分に協議のうえ、適切に移管されているものと認識しております。
 また、移管に際しましては、市町村において、移管対象者に対しまして、事前に移管予告も行われているということでございます。
 なお、移管につきましては、各市町村の判断により行われるものでございますけれども、一般的には、滞納を適正に解消するための市町村と滞納者間での取り決めが誠実に守られている場合は、移管はなされないものというふうに認識しております。
 県といたしましては、今後とも、市町村と滞納者の間で十分な意思疎通が図られるよう引き続き市町村に助言してまいります。

《再質問》奥村規子 県議
 答弁では、「各市町村の滞納額等の割合を基準に、市町村の意向を反映しながら移管予定件数を決定して市町村に提示する」ということでしたが、これは移管予定件数というのを年のはじめに決めておき、それに向かって実際に移管していく、ということでしょうか。
 地方税回収機構への移管事案の選定基準として、市町村にとって整理困難な事案、高度な処理能力を要する事案、同一滞納者で複数市町村にまたがる事案、滞納処分停止の判定が困難事案ということがあげられていますが、市町村はこうした事案が起こった場合、その一つひとつを検討して移管するのだと思います。多い年や多い市町村もあれば少ない年や少ない市町村もあるでしょう。しかし、あらかじめ予定件数が提示されれば、その件数に合わせて移管していかなければならない、滞納額が多いところは多く移管していかなければならない、そういう割り当てがおこなわれているということですか。この点、もう一度お答えください。

《再答弁》 総務部長
 移管予定件数を年の初めに決めておき、それに向かって実際に移管していくのかというような質問でございました。
 実務としましては、各市町村が督促や催告などを行ったにも関わらず、納税相談等に至らず、その結果、高額な滞納となっているなど、地方税回収機構への移管対象となるべき案件につきまして、各市町村が日頃から把握しておるところでございます。
 30市町村の代表者からなる機構の理事会におきましては、各市町村の滞納額等を勘案した、移管件数の案が示されますけれども、最終的には各市町村が日頃の税務執行の中で、自ら把握している移管対象となるべき件数をもとに、30市町村合意のうえで、おおよその目安を決定しているというふうに聞いております。
 そのうえで、実際に移管されるかどうかは、再度それぞれの市町村の判断により決定されるものというふうに聞いております。

《要望》奥村規子 県議
 事前に機構が移管件数を提示するのは問題だと思います。地方税回収機構への移管というのは、それまで市町村では滞納者の状況をふまえながら相談にのり、滞納を何とか解決していこうという対応がおこなわれますが、地方税回収機構は徹底して財産調査し、有無をいわさず滞納処分を行うところですから、そこにどれだけ移管するかを割り当てる、というのは、地方自治体がやることではありません。これはやめるべきだと思います。
 ぜひ、地方税回収のあり方について検討することを要望します。

(4)鳥取・児童手当差押え違法判決の活用について
《質問》奥村規子 県議
 最後に、鳥取・児童手当の差押え違法判決の活用についてお聞きします。
 2013年11月27日、広島高等裁判所松江支部において児童手当の入金口座差押えの違法性が争われた「滞納処分取消等請求控訴事件」の判決を、県は和歌山地方税回収機構及び市町村に対してどのように生かしていくのか、その対応について総務部長にお尋ねいたします。

《答弁》 総務部長
 一般に、差押等禁止債権に係る金員が金融機関の口座に振り込まれることによって発生する預金債権につきましては、原則として差押等禁止債権としての属性を承継するものではないとの最高裁判決が出されておるところでございます。
 一方で、平成25年11月27日の広島高等裁判所松江支部における「滞納処分取消等請求控訴事件」の判決におきましては、行政処分庁は預金口座に振り込まれた児童手当相当額を不当利得として返還することとされたところでございますが、この判決は特定の事情下においてなされた処分の違法性が争われたものというふうに理解しております。
 滞納整理につきましては、あくまでもそれぞれの団体の責任において行われるものでございますが、県といたしましては、この判決の趣旨を踏まえまして、法令に基づき適切に対応するよう、和歌山地方税回収機構や市町村に対して通知するとともに、県内市町村税務担当課長が出席する会議や、その他税務研修の機会などを通じまして情報共有、注意喚起を行ってきたところであり、今後とも引き続き、地方税の徴収事務が適正に執行されるよう支援・助言してまいります。

《再質問》奥村規子 県議
 答弁では、「この判決の趣旨を踏まえ、法令に基づき適切に対応するよう、通知している、注意喚起を行なっている」ということですが、これはどういうことですか。
 児童手当、給料や年金の生活費部分など、差押え禁止債権が振り込まれた預金口座で、その中身がほとんどまるまる、差押え禁止債権だと明らかな場合、どういう対応をするのか、県としてはどう考えていますか。

《再答弁》 総務部長
 今回の広島高裁の判決も踏まえたうえで、地方税法などの法令に従って、各団体において、適切に滞納整理を行うよう助言したものでございます。
 また、一般的に、滞納整理におきましては、個別の滞納者の生活状況等を踏まえ、税収入の確保及び税負担の公平の確保を図る観点から、適切に対応すべきものと考えております。

《再々質問》奥村規子 県議
 さきほど、最高裁判決で「預金債権は、原則として差押等禁止債権としての属性を承継するものではない」と出ているといわれましたが、これは違います。
 最高裁判決(1998年2月10日)は「差押等禁止債権としての属性」については触れていません。原審、高裁判決は正当、というものです。その高裁判決は、預金債権は原則として差押等の禁止債権としての属性を承継しないとしましたが、同時に、生活に充当する年金のように差押できない給付は預金口座に振り込まれた場合においても、受給者の生活保持の見地から差押禁止措置の趣旨は十分に尊重されてしかるべきではある、と述べています。鳥取県の児童手当事件の広島高裁判決は、児童手当が預金になった後も「児童手当としての属性を失っていなかった」、「児童手当相当額の部分は、実質的に児童手当を受ける権利自体を差し押さえたのと変わりがないから、児童手当法の趣旨に反するもので違法」と明言しています。これは普通に考えても当然のことではないでしょうか。
 差押禁止債権といえども預金口座に振り込まれたら自由に差押できるという結論を一人歩きさせてしまったら、もう差押禁止債権は存在しないも同然になってしまいます。児童手当も年金も多くは銀行振り込みで受け取っているのですから、それが預金口座に振り込まれた瞬間から差し押さえられるのでは、差押禁止債権だと法律で決めた意味がまったくなくなります。
 この高裁判決を受けて、鳥取県では滞納処分の取り扱いマニュアルを改定し、預金口座で月4回以上入出金を繰り返すものは生活口座として認定する、差押禁止債権の入金の有無について十分確認する、預金履歴から差押禁止財産の入金が確認できた場合には差押禁止額相当額を除いて差押を執行する、差押後、滞納者の申し立てで預金原資が差押禁止財産だと特定されれば、解除又は取消すこと、などとしました。預金であっても差押禁止債権を原資とするものは差し押さえないということです。和歌山県としても、こうした明確な立場を示していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 最近相談をうけたケースで、郵便貯金通帳をみれば、昨年秋から年金が振り込まれてはほぼ同額を引き出すことが繰り返され、残高3円となっているところに、今年2月13日、年金16万5,066円が振り込まれましたが、同日、和歌山地方税回収機構に16万5,069円を差し押さえられています。この貯金は、明らかに全額を差し押さえられない年金であり、貯金だからといって差押できないものと考えますが、どうでしょうか。

《再々答弁》 総務部長
 最高裁判決では、差押等禁止債権としての属性について文言としては明示していないのはご指摘のとおりでございますけれども、判決理由の中で、所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はないというふうにしております。
 このような判決は、一般的には原審の考え方を是認しておるものと解されておりまして、ご指摘いただきました広島高裁の判決におきましても、最高裁の判旨として、採用されておるところでございます。
 個別の事案につきましてのお尋ねがございましたが、税務情報につきましては、高度な守秘義務が課されております。
 市町村税の個別の事案について、承知する立場にはございませんけれども、最高裁判決や広島高裁判決を踏まえまして、差押等禁止債権として取り扱うべきもの、こういったものにつきましては差押えを控えるべきものだというふうに考えております。
 こうした判決も踏まえたうえで、税収入の確保及び税負担の公平の確保を図る観点から法令に基づき適切に対応するよう情報共有・助言を行ってきたところでございますけれども、今後とも、引き続き、機構及び市町村に対しまして、認識を共有しながら地方税の徴収事務が適正に執行されるよう支援・助言してまいります。
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3.「改正」介護保険制度について
(1)介護報酬引き下げの影響について
《質問》奥村規子 県議
 最後の項目に行きます。「改正」介護保険制度について、お尋ねいたします。
 介護保険法が改定され、ことし4月からの介護保険事業が大きく変えられようとしています。1.要支援の方のヘルパーとデイサービスを介護保険給付から外し市町村事業へ移行する、2.特別養護老人ホームへの入所は原則「要介護3」以上に限る、3.一定所得以上のかたは利用料を2割に引き上げる、4.低所得でも預貯金などがあれば介護施設の居住費、食費補助(補足給付)を縮小・打ち切る、といった問題です。
 厚生労働省は、介護サービス提供事業者に支払う公費である介護報酬の4月からの改定額を決定しました。特別養護老人ホームやデイサービスなどへの報酬を大幅に引き下げるなど、安心できる介護の充実に逆行するものであると思います。介護現場からは、利用者にも、従事者にも、事業者にも「大きな損失をもたらす」と厳しい批判の声が上がっています。そこでお尋ねいたします。
 介護報酬引き下げの影響について、どのように考えていますか。
 特別養護老人ホームや介護事業所では、事業が続けられない、労働者の待遇がいっそう厳しくなる、などの声がでています。特に、特別養護老人ホームは、報酬の大幅引き下げと人手不足により新設計画が白紙になるなど、基盤整備もすすまない問題がでてくると考えられますが。これについて、どのようにお考えでしょうか。

《答弁》 福祉保健部長
 平成27年度介護報酬改定において、全体としてはマイナス2.27%の引き下げとなっていますが、一方で認知症高齢者や介護の必要性が高い中重度者への対策強化等に向けた加算や、介護職員一人当たり月額1万2千円程度のアップとなる処遇改善加算の拡充がなされています。これらは、利用者のために、より質の高いサービスを確保するとともに、事業者のために介護職員の確保を目的とするものです。
 県としては、事業者に対し、この改定の趣旨の理解を図り、事業所における体制等の検討を促すため、関係団体への説明等を丁寧に行うとともに、関係者からの意見を聞き、実態を見極めながら、必要に応じ、実情を国に伝えて行きたいと考えております。
 また、国の制度を活用しながら介護人材の確保に取り組むとともに、特別養護老人ホームなどの施設整備を行う事業者に対し資金計画や人員確保などの運営面への助言を行ってまいります。

(2)市町村事業への移行について
《質問》奥村規子 県議
 次に、要支援1、2の方のヘルパーとデイサービスを市町村事業に移行する問題についてお尋ねいたします。
 2015年4月から2017年4月までに移行することとなっています。厚生労働省調査では、2015年度移行114自治体、16年度移行277自治体、17年度以降1,069自治体となっており、県内自治体では、2015年1月に実施された市町村に対する開始予定時期の調査では2015年度開始が0、16年度開始が2、17年度開始が28と聞いています。また、新事業における現行相当サービス、緩和した基準のサービス、住民主体のサービスの見込み量については、各市町村とも現在準備中であり、具体的な見込み数はまだ出ていないということです。市町村の第6次介護保険事業支援計画には、具体的な利用数量の見込みというよりは、今回の介護保険制度の改正理念や、市町村としての今後のとりくみの方向性について述べられています。
 要支援の方はサービスの選択が保障されるのか、現行相当サービスを引き続き受けたいという希望が認められるのかお尋ねいたします。

《答弁》 福祉保健部長
 介護保険法改正により、市町村は遅くとも平成29年4月から新しい介護予防・日常生活支援総合事業を実施することになります。この新事業は訪問介護、通所介護に関し、介護保険による全国一律の基準によるサービス給付ではなく、市町村が地域の実情に応じて、介護事業者に加え、NPOや住民ボランティアなど様々な主体による多様な支援を行うものです。
 今回の改正に伴い新事業への円滑な移行を図るため、既に要支援認定を受けサービスを利用している方で、その利用の継続が必要な場合には、新事業開始以降も、既存サービス相当のサービスを継続して利用することが可能です。
 いずれにいたしましても、市町村は、要支援の方の希望するサービス、身体状況、生活状況等を適切に把握した上で、その方に必要なサービスの提供に努める必要があると考えております。

《再質問》奥村規子 県議
 要支援の方のヘルパーとデイサービスを予防給付からはずし、市町村事業である多様なサービスに移行することについては、ほとんどの自治体が最終年まで移行できないとしているわけです。中央社会保障推進協議会が全国の自治体にアンケートをおこないましたが、73%の自治体が多様なサービスの確保については見通しがたたないと答えています。
 答弁では、すでに予防給付のサービスを受けている人は、必要に応じて既存相当サービスを利用できるということでしたが、保険料を払い、要支援と認定されているのですから、希望するサービス、現行相当のサービスを保障すべきです。また、新たに要支援と認定された人にも、希望するサービスを保障すべきです。「その方に必要なサービスの提供に努める必要がある」とお答えがありましたが、要支援の認定を受け、指定事業者による専門的サービスを希望する人にはこれが保障されるのか、その点、もう一度お答えください。

《再答弁》 福祉保健部長
 先程も答弁させていただきましたが、既に要支援認定を受けサービスを利用している方は、新事業移行後も必要に応じ既存サービス相当のサービス利用が可能です。また、新たに認定を受けた方は、認知機能の低下や退院直後で支援が必要であるなど専門的なサービスが必要な場合は、現行相当のサービスを利用することが可能です。県としては適切にサービス提供がなされるよう市町村に対して助言及び支援に努めてまいります。

(3)介護保険料の値上げについて
  ・県の平均保険料
  ・介護保険財政安定化基金について
《質問》奥村規子 県議
 介護保険料の値上げについて、お尋ねいたします。
 現在、全国平均保険料は5,550円程度ですが、今度の改定で和歌山県の平均はどの程度になるのでしょうか。第5期の保険料を決める際には、負担能力を超える保険料となることから、国は県の介護保険財政安定化基金を取り崩して保険料低減にあてるよう措置しましたが、今回についてはどうなっているのでしょうか。県の今期までの介護保険財政安定化基金残高はどの程度あり、どう活用しようとしているのかお聞きします。

《答弁》 福祉保健部長
 今年1月に県内市町村が試算した第6期介護保険料基準額の平均額は、約6,300円と見込まれています。なお、この額は、介護報酬改定の影響等を勘案する前のものであり、最終的には各市町村において介護保険条例の改正により確定するものであるため、多少の変動が見込まれるところです。
 次に、介護保険財政安定化基金は、第5期の保険料を決める際には、介護保険法で平成24年度に限り「一部を取り崩すことができる。」との法改正がされたものですが、今回は法律上そのような規定がないため、取り崩すことはできないところです。
 また、今期予定している貸付等を実行した後の介護保険財政安定化基金の期末残高は約10億7千万円になる見込みで、市町村の介護保険財政に第1号保険料の収納率低下や給付費増による不足が生じた場合に、市町村へ資金の貸付等を実施してまいります。

(4)制度「改正」の受けとめと高齢者施策について
《質問》奥村規子 県議
 最後に、『改正』介護保険制度の受けとめと今後の県の高齢者施策について 知事のお考えについてお尋ねいたします。
 介護報酬は3年に1度改定され、今回は報酬全体で2.27%引き下げになっています。2回連続の実質マイナス改定です。今回は、介護労働者の「処遇改善」の特別な加算を含んでいるため、その上乗せ分を除けば4.48%の過去最大規模の引き下げです。消費税や「アベノミクス」による物価高などで介護事業の経費が増えるなか、マイナス改定を実行すること自体、深刻な矛盾や困難を引き起こすものです。厚労省が決めたサービスごとの介護報酬は、特別養護老人ホーム(特養)、デイサービスなどの施設への報酬を大幅にカットする方針を打ち出しています。施設の運営と経営を直撃するものです。
 特養への基本報酬は、個室でマイナス6%弱と平均下げ幅よりさらに削り込まれています。相部屋はもっと大幅カットです。全国では、特養の3割が赤字という実態が調査結果で判明しているのに、今回のマイナス改定によって、特に特養がさらに苦境に追い込まれると考えられます。
 現在、特養の入所待機者数は2014年3月末で2,588人あり、そのうち要介護1、2の方は1,063人もあります。和歌山県の高齢化率は27.3%で全国7位(2010年国勢調査)、高齢者夫婦や単身世帯が全世帯の4分の1を占めています。高齢夫婦のみの世帯全国2位、高齢単身世帯全国3位の県です。安心して高齢者が住めるまちづくりを進めてゆくために、制度改正をどのように受け止めていますか。今後、県の高齢者施策をどのようにすすめていかれようとお考えですか。知事にお尋ねいたします。

《答弁》 仁坂知事
 介護保険制度については、介護を必要とする高齢者の増加が見込まれる中、国の責任において、制度を将来にわたり持続可能なものにすべきだというのが基本だと思います。
 今回の介護報酬の改定は、サービスの充実と給付の重点化・効率化を行い、負担の増大を抑制しつつ、持続可能な制度を実現する、という基本的な考え方の下で、国において十分議論されたものと考えます。
 しかし、今後給付の重点化・効率化を進める中で、改定によって本当に支障が出るということがあれば、国の責任において、手立てを講じていかなければならないというふうに思います。
 また、県の高齢者施策の進め方については、「和歌山の老後に安心を届ける政策」において、見守り、健康、安心、産業化の4つの分野で、それぞれの状況やニーズに応じた施策を積極的に展開してきたところでありまして、今後も充実を図っていきたいと考えております。

《要望》奥村規子 県議
 高齢者に「尊厳の保持」と「自立した日常生活に必要な給付」を保障するはずの介護保険が、要介護・要支援高齢者に負担と犠牲を強いることによって「持続」しようとするものです。今回の介護保険法の改定で、「公費投入による低所得者の保険料軽減」がはじめて法制化されましたが、「公費投入」でしか矛盾が解決しないところまできたことの現われで、制度的限界を示すものであると思います。
 国は「財政危機」を強調しますが、日本全体で8兆円を越える「介護保険給付費」のうちの国が負担する25%は2兆円程度です。政府一般会計予算90兆円以上のうちの2%程度に過ぎません。防衛費の半分以下です。アベノミクスによる財政出動の額にも及びません。
 今後、超高齢社会に向けて高齢者介護施策や地域包括ケアシステムを作り上げる上で、国に対して国庫負担割合の引き上げをさらに強くもとめ、市町村の一般会計からの繰り入れ実現のための県の支援を求めます。


 
                                                                仁坂知事の答弁を聞く、奥村規子和歌山県議(右)

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