2015年6月県議会
奥村規子 一般質問 概要記録
 議会中継録画
 2015618
  
1.原子力発電所の再稼働問題について
(1)福島原発事故5年目の現状と復興状況をどのようにとらえているか
(2)福井地裁の再稼働差し止めの判断についての所感
(3)原発建設を許さなかった和歌山県をどのように感じているか

2.南海和歌山市駅周辺での活性化について
(1)活性化構想について
  ・これまでの協議の経緯について
  ・構想の内容について
  ・今後の県の関わりについて
(2)住民参加のまちづくりについて

3.『改定』介護保険制度について
(1)全国と県の平均保険料額について
(2)保険料額が全国で2番目に高い理由について
(3)低所得者の補足給付の縮小・打ち切りについて
(4)利用者の資産確認について
(5)保険料抑制のための一般財源による負担軽減について


1.原子力発電所の再稼働問題について
(1)福島原発事故5年目の現状と復興状況をどのようにとらえているか

(2)福井地裁の再稼働差し止めの判断についての所感
(3)原発建設を許さなかった和歌山県をどのように感じているか
《質問》奥村規子 県議
 議長のお許しを得ましたので通告に従って質問に入らせていただきます。
 1項目めは、原子力発電所の再稼動問題について知事にお尋ねいたします。
 福島原発事故から5年目をむかえています。事故収束の目途も立たず、約11万人を超える方が県内外で避難生活を送っています。福島の原発事故は原発が抱える危険性と事故被害の深刻さを明らかにしました。避難生活が長期化する中での経済的困窮、放射能への不安、国・東電への対応への怒りと希望を持てないなかでの健康悪化などです。さらに汚染水漏れの解決にめどが立っていないと言う状況です。
 ここで、たくさんの方の思いをご紹介したいところですがそうも行きません。東日本大震災後、妊娠出産を経験された福祉職場に働く若い女性の方の声をお聞きください。
 「私は、様々な不安や葛藤の中で過ごしています。原発事故当初、これから妊娠をして、子どもを産んでもよいのだろうか?と、随分思い悩みました。でも、放射線の学習会や講演会に参加し、医師や友人たちと話をするなかで出産することを決意しました。その後妊娠してからはガラスバッチの装着やホールボディカウンター検診などを行い、無事出産しました。今のところ、子どもは活発で大きな病気もせずにすくすくと育っています。他県に避難し家族が離れ離れになっている友人たちもいます。私たち夫婦は話し合いの結果、福島に残って生きることを選択しました。どちらも苦渋の選択であり、どちらが正しいか誰にも分かりません。いま、私たち夫婦の一番の懸念は、わが子が大人になったとき、低線量被曝の影響がどのように出るのか、福島県出身だと言うだけで偏見に悩む日が来るのだろうかということです。わが子がこの問題としっかり向き合えるためにも、私たち夫婦がどんな思いで、この福島で暮らすことを選択したのか、その理由を語り、伝えていこうと思っています。今も福島は風評被害に苦しみ続けているのに、『収束宣言』や風化されそうな現状が一方にあります」と語っています。この方は全ての原発を廃炉にするまでがんばりたいと言われています。私も同じ気持ちです。
 原発の問題は日本の国、世界の問題です。昨年5月、福井地裁は「生存権を基礎とする人格権」が奪われる可能性があるとして、関西電力の大飯原発3、4号機について運転を認めない判決を言い渡しました。また、今年4月には高浜原発3、4号機について、再稼動差し止めの仮処分決定を行いました。
 そこで知事にお伺いしておきたいと思います。
 福島原発事故5年目の現状と復興状況をどのようにとらえていますか、福井地裁再稼動差し止めの判断についての所感、原発建設を許さなかった和歌山県をどのように感じていていますか、以上3点にわたって、お答えください。

《答弁》 仁坂 知事
(1)まず、福島県の復興状況についてですが、ピーク時の16万人より減っているものの、11万人を超える方々が依然として避難生活を余儀なくされています。
 放射線量についても、例えば福島市においては10分の1に低減しているものの依然として震災前の平常時の値を超える地域が多い状況であります。
 これらの状況に鑑み、今後も引き続き住宅や農地等の除染が着実に進められ、避難指示の解除により、避難者の方々の帰還が進むよう、国全体で福島県の復興を支援していく必要があると考えております。
 とりわけ、差別とか、或いは風評被害とか、そういうものを起こさないように、他県の我々も大いに協力をしなければならないと思います。その中でも、食料品、農水産物で、とんでもない差別がある。これは、輸入制限という形で特定の国から福島県を含むですが、日本の農産物が止められている。そんな馬鹿なことがあるかということで、これは風評被害などというものではありませんでして、明確な国際法違反でありますから、こういうものは国を挙げて闘わなくてはいけないと思っております。

(2)次に、福井地裁の再稼働差し止めの判断についての所感をお尋ねになりました。これでございますけれども、現代文明は様々なリスクを抱えながらも、その利便性と比較しながら、もちろんリスクを減らす手立ても講じながら、どの程度のリスクであれば許容できるか、やった方がいいか、そういうことを勘案して社会システムの中に組み込んできた、こういう歴史だと思っております。
 原子力発電は、今回の福島事故でそのリスクについては、いやというほど思い知らされましたが、一方、他の便利な文明の利器も、飛行機や自動車のようなものですら、それによって多くの人が亡くなっているということから見て、リスクがあるのは自明であります。
 自動車事故で原発と比べものにならないほどの人が亡くなっているから、これは事実でありますが、だからといって、一度生ずればものすごく多くの人が避難を余儀なくされるような、そういうものなのだから、これを二つ並べて議論するのは間違いであると言う人がいます。原発がそういうものであるからこそ、自動車とは比べものにならないほど安全規制が厳しくて、現に今回の事故から考えて、今までのリスク評価を格段に厳しくした安全基準が作られ、それを基に大変厳しい規制がおよそ考えられる限りの専門家を集めて行われていると承知しています。
 そういう規制をしても、まだリスクはゼロでないから、原発を動かすことは人格権に反するという議論は私は論理的ではないと思います。もし、人格権なるものによって全て原発は止めないといけないと言うのであれば、自動車事故をとても恐れる人が人格権を盾に、全ての自動車の運転を止めよと言われたらどうするのだろうかと私は思います。私は、要はリスク評価の問題なのだから、専門家が叡智を集めて対処してもらいたい、それしかないのではないかと思います。
 また、和歌山県のような原発のない所の知事が関係もないのに発言をするなという議論をする人がおりますが、私は和歌山県知事であればこそ和歌山県民のために発言をしております。
 和歌山県では、老朽化した発電所を急遽改良して、県内需要のおよそ3倍もの電力を他府県、大阪府とか滋賀県に送り続けています。専門家の安全リスク評価等を客観的にやれば、およそ原発よりもこちらの方が高いと思いますけれども、関西のため日本のために、地元の人々をはじめ県民が理解をしてくれているわけであります。それをいつまで続けたら良いのか。
 また、県内には電力を多く使わざるをえない中小企業者や農業者や漁業者がいっぱいいます。関西電力の財務は、投資してしまった原発の償却負担もあり、また追加投資や燃料購入もあって、大変な赤字で、これをもとに電力料金が何度も上がり、さらに上がる見通しにもなっています。これをきっかけに、電力を結構使う中小企業者が破綻して、関係家族に悲劇が起こるかもしれないということを心配する知事が、何故「関係もないのに」なのでありましょうか。
 そうは言っても危ないものを動かすわけにはいきません。安全審査も防災対策も万全を期してもらうことはもちろんであります。しかし、ここは関係機関、専門家の真摯な努力に期待せざるをえないのではないか、或いは国民の監視によらざるをえないのではないかと言う事ではないかと思っております。
 また、司法の裁判、判断に司法以外の人が口を出すべきではないという人が驚くべきことにいらっしゃいますが、間違った司法判断を糾弾すると称して運動をしている人々のことはどうするのでありましょうか。ましてや、本件は、福井地裁と鹿児島地裁の判断は完全に正反対であります。我々はすべて正義と、そして私の場合は県民の利益を守るという観点から、信じるところに従って発言する自由と義務を有していると考えております。

(3)最後に、原発建設を許さなかった和歌山県についてでございますが、本県においては、過去にいくつかの原発建設の計画がありましたが、それぞれにおいて地元の同意が得られず、事実上断念されていると思います。
 これをもとに、正義が勝ったかのように言う人がおりますけれども、原発のリスクは避けられた反面、地域は衰退してしまったような面もあると私は思います。おそらく推進した人々は、その衰退、或いは将来生じるであろう衰退をくいとめようとして努力されたのではないかと思います。このような人々を悪と決めつける事は私には到底できません。
 他の原発立地地域においては、関連産業における雇用の創出など様々な経済的波及が見られ、地域の活性化につながっている例もたくさんあります。また、インフラ投資も重点配分されますし、電源立地交付金も地域の活性化のために結構使えるところがあります。私は、あるとき、建設が遅れている和歌山の高速道路の要望に政府関係者に行ったところ、福島県の大物政治家が「君、福島はもう全部できてやることがないんだよ。君のところの案件を応援してやるぞ。」と言われたことがあります。残念ながらあまり効果がなかったのでございますが、そのように色々な判断材料があると思うのであります。しかし、和歌山は津波の災害リスクが大変高いところであります。したがって、様々な地域活性化のチャンスを逃したという面はありますけれども、総合評価として原発を作らなかったのは私は適切であったと思うし、それから今後もそうであるだろうと思っています。

《コメント》奥村規子 県議
 原発再稼動問題について知事に答弁いただきました。
 和歌山県においては、原発をつくらせなかったことは、適切な結論だったと、言われたと思います。
 福島原発の現状ですが、4年以上たった今も原発事故が示すものは、ひとたび原発事故がおこれば、その被害は、空間的にも、時間的にも、社会的にも限定なしに広がり続け、人類はそれを防止する手段を持っていないということです。これは他のさまざまな事故とはまったく違う、異質の危険が今も、そしてこれからも続いていくということだと思います。
 だからこそ、福井地裁判決は、「原子炉施設周辺の住民の生命、身体に重大な危害を及ぼす等の深刻な災害が万が一にも起こらないようにするため、原発設備の安全性に十分な審査を行わせなければならない」といっているのです。そして原発の耐震設計で設定する基準地震動を問題視して、これまで基準地震動をこえたケースがこの10年間に5回もあることなどをあげて、新規性基準は緩やかすぎ、またこれに適合しても安全性は確保されておらず、新規性基準は合理性を欠いている、としているのです。
 これを知事は、専門家が決めたものだから、それに異議を唱えるのは問題ある判決だとおっしゃられているように聞こえましたが、安全性が確保されていないという裁判所の判断こそ、納得できるものではありませんか。
 一般的にいって、あらゆる文明の利器にもリスクをともなうことは事実です。
 しかし、原発について安全神話がふりまかれた中で、推進していた人々がありえないと断言していた事故がおこって多くの人々が苦しんでいる。
 原発とどう向きあうかということが人類につきつけられた中で示された一つの判断が福井地裁の判決です。
 それについて知事がちがった意見をもつのはご自由ですが、知事記者会見という席上で「だれか自動車の差し止め請求をしたら、本当にされてしまうのではないか―――」などと、判決を揶揄するような論評をしているのは、いかがなものでしょうか。
 福島で苦しんでいる人たちが、「私たちの苦しみをわかってくれていないのではないか」と傷ついた人もいるのではないかという思いを、私ももちました。

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2.南海和歌山市駅周辺での活性化について
(1)活性化構想について
  ・これまでの協議の経緯について
  ・構想の内容について
  ・今後の県の関わりについて
《質問》奥村規子 県議
 2項目めは、南海和歌山市駅周辺での活性化について、県土整備部長にお尋ねいたします。
 5月18日、南海電鉄と和歌山市長が記者会見を開き、市駅活性化構想が発表されました。
 「市駅がなくなるのではないか」という不安の声を耳にするなかで、地元住民にとっては大変喜ばしいことと思います。
 私は2013年度2月の定例議会予算特別委員会において、和歌山市の中心市街地の活性化について質問いたしました。中心市街地の空洞化と今後のまちづくりの方向性についてお尋ねしたところ、知事からは中心部の土地需要を高める必要があること、外縁部の開発をセーブすること、具体的な再開発プランなども考えて提案したいと言われました。また、市駅周辺の街づくりについては県土整備部長から、市駅周辺再開発に向けて南海電鉄を中心に、県や市などの関係機関とも連携しながら、特に住宅や集客施設整備などによる賑わい空間の創出、バスターミナルやタクシーベイなどの駅前広場の再整備による交通結節点の強化といった、さまざまな検討がすすめられているということでした。
 この間、活性化構想について、県も含めてどのような協議をおこないすすめてきたのか、発表された内容も含め現状と、県の関わりについて県土整備部長お答えください。

《答弁》 県土整備部長
 去る5月18日に和歌山市と南海電鉄から発表された、南海和歌山市駅活性化構想につきましては、昨年6月より、和歌山市・南海電鉄・県の3者による南海和歌山市駅周辺活性化調整会議において、都市の賑わいの観点から、図書館、市民会館といった周辺公共施設の集約・再編、また、交通結節点機能の強化の観点から、バス乗降場の集約など駅前広場の再整備などを県から提案し、検討を進めてきました。
 また、本構想の内容は、駅舎を含む現在の南海和歌山ビルの建て替えとあわせ、更新時期を迎えている市民図書館を市駅に移転させ、文化・交流拠点を創出することによる賑わい空間の整備、観光案内所・自転車駐輪場の再整備による利便性の向上等を市街地再開発事業として実施するとともに、駅前広場において、バスロータリーを整備するなどによる、交通結節点機能の強化を図るものであり、南海電鉄は、第1期工事として、オフイス棟や駅施設について、すでに平成27年5月より工事に着手しております。
 県としては、都市の再生にあたっては、都市の外縁部への拡大を止めて、既存市街地などの拠点の再開発を行っていく大方針の下、県都の再開発の第一号がいよいよ動きだし、周辺地域の活性化への起爆剤となることに大いに期待しており、今後とも事業の推進が図られるよう和歌山市や南海電鉄とともに取り組んでまいります。

(2)住民参加のまちづくりについて
《質問》奥村規子 県議
 次に、まちづくりを進める上では住民参加のまちづくりが大切です。各地でまちづくりの計画の検討、作成に住民や各種団体などがそれぞれできる範囲で参加し、行政と協働してまちづくりをすすめる取り組みが広がっています。
 そこで、まちづくりを進める上での住民の意見のくみあげなど、住民参加をどのように考えていますか。県土整備部長お答えください。

《答弁》 県土整備部長
 まちづくりの計画を具体化するためには、これまでも和歌山市や関係事業者と検討を進めておりますが、加えて住民の方々がまとまり、そして計画の推進役としての役割を担って頂くことが大変重要だと考えております。
 そのため、これまでも、まちなかの拠点地区の活性化にあたって、和歌山県と和歌山市はともに鉄道事業者、周辺の民間事業者などと幅広く意見交換を進めてきており、とりわけ、この南海和歌山市駅周辺地区の活性化については、駅周辺地区の自治会などの集まりに和歌山市の職員が参加するなど、積極的に取り組んできたところです。
 今後も、関係する方々のご意見を伺いながら、住民の方々が計画の推進役として関わっていけるようなまちづくりに取り組んでまいります。

《要望》奥村規子 県議
 今後、賑わいのあるまちづくりと同時に、防災と安全安心のまちづくりが求められています。だれもが安心して住めるまちづくり、そのためには住民の参加は不可欠です。ぜひしっかりと情報公開をして、住民の意見が反映できる仕組みづくりをしていただけるように要望します。

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3.『改定』介護保険制度について
《質問》奥村規子 県議
 3項目めは、『改定』介護保険制度について福祉保健部長にお尋ねいたします。
 高齢化社会において、だれもが安心して住み続けられるまちづくりの大きな柱の一つが介護の問題です。高齢者も現役世代も安心できる公的介護制度が必要です。ところが、安倍政権の下でどんどんと介護制度が悪くなっています。
 今年度の介護保険料改定により、大幅な保険料値上げがおこなわれています。
 また、8月から介護保険の利用料にはじめて2割負担が導入されます。負担増の対象となるのは「所得160万円以上」(年金収入280万円以上)の層です。厚労省が設定する2割負担の所得基準は医療保険の「現役並み所得」のライン(単身:年収383万円、2人世帯:年収520万円)よりはるかに低く、しかも、世帯ではなく個人の所得で決まるため高所得といえない人まで負担増となります。必要なサービス抑制が起こりかねないという懸念があります。
 さらに、施設入所やショートステイを受けている方の、食費・居住費の負担軽減が縮小されます。
 年金の削減、消費税・電気代上昇など、くらしが厳しくなる中で介護保険料などの重い負担は生活そのものを破壊へと導くものです。
 そこで福祉保健部長にお尋ねいたします。

(1)全国と県の平均保険料額について
 65歳以上の方が負担する第6期(2015年度~2017年度)介護保険料の全国平均と和歌山県の平均保険料額はいくらになりますか。

《答弁》 福祉保健部長
 第6期計画期間における介護保険料の全国平均額は、5,514円、和歌山県の平均額は、6,243円となっています。

《コメント》奥村規子 県議
 全国一高い沖縄県で6,267円です。和歌山県が6,243円ということは、全国で2番目に高いということになります。

(2)保険料額が全国で2番目に高い理由について
《質問》奥村規子 県議
 それでは、和歌山県の平均介護保険料が、全国平均額と比べて高いのはなぜですか。
 福祉保健部長お答えください。

《答弁》 福祉保健部長
 和歌山県の平均介護保険料が高い理由としては、県内の高齢者の状況について、80歳以上の方の割合が高く、世帯の状況についても、単身世帯・夫婦のみの世帯が多いため、介護サービスのニーズが高くなっており、また、訪問介護などの在宅サービスが充実していることから、高齢者全体に占める介護サービスを利用する人数の割合が高いことがその要因として考えられます。

《再質問》奥村規子 県議
 年金が増えていないのに保険料負担が上がり、負担能力を超えているのではありませんか。

《再答弁》 福祉保健部長
 高齢者の介護保険料の負担に関しては、低所得の方については軽減を行うなど、応能負担の仕組みとなっているところです。
 介護保険に係る給付が増加する中で、現役世代も納税を通してその一部を負担し、さらに40歳以上の方については、第2号被保険者として介護保険料もご負担いただいていることを考えると、高齢者の方についても一定のご負担をお願いせざるを得ないと考えています。高齢者の方の介護保険料の負担感等に対するご意見などについては、今後もできるかぎり情報収集を行っていきたいと考えています。

《再々質問》奥村規子 県議
 今期保険料改定に際して、県・市町村で低減するためにどういう取り組みがされたのでしょうか。介護給付費準備基金の繰り入れなどはどうだったのでしょうか。

《再々答弁》 福祉保健部長
 介護保険料に係る負担軽減に関しては、今般、消費税を財源として低所得者の方を対象に負担軽減が行われたところです。
 また、介護給付費準備基金についてですが、介護保険制度においては、3年間の計画期間において、介護保険料などによる収入と、給付費との財政均衡を保つことが求められています。
 通常、給付費については後年度になるほど増えるため、計画期間前半は収入の一部を介護給付費準備基金にプールして、計画期間後半にこれを使い切ることとなりますが、実際の給付費の伸びが低かったことなどにより、計画期間後に当該基金に一定額が残る場合があり、このため、県においては、適切な介護保険財政の運営の観点から、次期計画期間における当該基金の残額の活用を指導しています。
 この結果、県内では、平成27年度から平成29年度までの第6期の介護保険料の改定に当たって、15市町村がこの基金を取り崩したところです。

《要望》奥村規子 県議
 基金は、その期の保険料を集めすぎたことによるものです。だから当然、保険料の低減のために活用し、高齢者に返すべきだと思います。もっと活用するべきだと思います。

(3)低所得者の補足給付の縮小・打ち切りについて
《質問》奥村規子 県議
 低所得者が施設を利用する場合に、食費・居住費の負担を軽減する「補足給付」の縮小・打ち切りが8月から実施されます。月5万円の基礎年金以外に収入のない人が毎月10万円以上の自己負担を迫られるなどの事態が起こってきます。
 補足給付の対象から外すのは、『本人が低収入でも世帯分離をしている配偶者が住民税課税である場合』、『単身で1000万以上、2人世帯で2000万円以上の預貯金がある場合』です。障害年金や・遺族年金などの非課税年金を今後は収入・所得と扱うとしています。どのように受け止めていますか。
 福祉保健部長お答えください。

《答弁》 福祉保健部長
 現在、施設入所の際にかかる低所得者の食費及び居住費については補足給付を実施していますが、利用者が預貯金を保有しているなどにも関わらず、保険料を財源とした給付が行われることは不公平であることから、本年8月に、補足給付を行う際に資産を勘案する等の見直しを行うこととされています。
 県としては、この改正についてはやむを得ないものと考えていますが、その一方で、これまでの補足給付の受給者に対する影響及び運用状況について、市町村等を通じてできるかぎり情報収集を行っていきたいと考えています。

(4)利用者の資産確認について
《質問》奥村規子 県議
 これまで「所得」のみであった補足給付の要件に、「預貯金」「配属者の所得」を追加することは、さまざまな問題が生じかねません。県は市町村に対してどのように対応されていますか。

《答弁》 福祉保健部長
 補足給付に係る資産確認に関して、昨年6月の法改正以後、厚生労働省から事務取扱の方法やQ&Aなどが順次示され、これを受け県では昨年8月及び11月に県内の市町村向けの説明会等を通じて情報提供を行うとともに、利用者への周知を含めて適切に対応するようお願いするなど、本年8月の施行に向けて各市町村で必要な準備が進められるよう取り組んできたところです。

《再質問》奥村規子 県議
 資産確認では通帳のコピーを提出させることや、金融機関を調査する同意書を提出させることになっています。
 さまざまな状況で本人に確認できない場合はどのように対応するのでしょうか。

《再答弁》 福祉保健部長
 認知症などでご本人の意思確認ができない場合には、ご家族や成年後見人などの代理人にご確認することになります。また、現に施設等に入所されている場合は、個別に対応していくことになると考えています。

《要望》奥村規子 県議
 預貯金等申告に「偽り」があった場合は「給付の価額の全部返還」に加えて「給付額の100分の200に相当する額以下の金額を徴収する」と、介護保険制度では、他に例を見ない重い「制裁」を定めました(介護保険法第22条)。厚労省が提示した「申請書」の欄外には、そうした制裁措置が明記されています。市町村窓口で利用者に対し過度な「威圧」にならないように、利用者が不安負担とならないように丁寧な対応を行なうよう県の援助を求めます。

(5)保険料抑制のための一般財源による負担軽減について
《質問》奥村規子 県議
 高齢者の3人に2人が住民税非課税と思われます。65歳以上の介護保険料の負担が生活圧迫の大きな要因となっています。高齢者本人や家族の貧困が深刻化する中、保険料が「年金天引き」の対象とならない、年金が月15,000円未満の方の保険料滞納が増えています。国に実効性のある保険料の減免制度を求めてゆくべきです。そして、県としても、もっと一般財源による負担軽減を行うべきではないでしょうか。福祉保健部長お答えください。

《答弁》 福祉保健部長
 介護保険料の滞納額の増加の要因としては、団塊の世代の方々が65歳となり、第1号被保険者に切り替わる際に、手続き的に一定期間普通徴収の対象となることによって普通徴収の額が増加したこともあるため、この要因については一概には言えません。
 県としては、これまでも国に対し介護保険料の軽減策の実施などを要望してきたところであり、今般の介護保険法改正によって、本年4月より、221億円の公費を投入して低所得者に係る負担軽減がなされております。また平成29年4月に予定されている消費税の引き上げの際にも、約1400億円の公費を投入して更なる低所得者に係る負担軽減が行われることとなっています。
 また、県及び市町村が一般財源による負担軽減に取り組むべきとのご意見に関しては、「介護保険はみんなで支える」という制度趣旨を踏まえて、その財源として、国・県・市町村の公費負担割合、被保険者の保険料の負担割合が定められていることなどから、県は考えておりませんし、市町村においても、この制度趣旨を理解していただきたいと考えています。

《要望》奥村規子 県議
 今回の介護保険法の改定で、「公費投入による低所得者の保険料軽減」がはじめて法制化されました。これは介護保険会計だけでは成り立たないということですね。
 「公費投入」でしか矛盾が解決しないところまできたことのあらわれで、制度的限界を示していると思います。
 しかし、当初は1700億円投入とされていたのが、消費税増税の先送りを理由に221億円にとどまりました。その結果、第1号被保険者の介護保険料額について、第1段階の保険料率が0.5から0.45に軽減されただけです。だから、和歌山市でみれば基準額が上がっているため、第1段階の年間保険料が34,870円から35,640円になり、軽減でなく値上げになっています。社会保障充実のためといった8%の消費税増税分が、社会保障にはごくわずかしか使われていないということです。消費税10%との引き換えでなく、もっと一般会計から入れるべきです。県や市町村からの繰り入れを拡大すべきだと思います。また、市町村の繰り入れについては、市町村の判断でおこなわれるべきだということを主張しておきたいと思います。
 私は、介護保険財政の「制約」は第1号保険料が高齢者の負担能力を超えた額になってしまっていることにあると思います。その解決方法は公費部分を拡大し、保険料に依存する仕組みを改革していく以外にないと思います。県からも国に要望していますが、国庫負担割合をさらに増やすことです。国は「財政危機」を強調しますが、日本全体で8兆円を超える「介護保険給付費」のうち、国負担は25%は2兆円程度です。政府の一般会計予算90兆円以上のうち、2%に過ぎません。防衛費の半分以下です。アベノミクスによる財政出動の額にも及びません。これからの超高齢社会に向けて、高齢者介護施策や地域包括ケアシステムを作り上げて行く上で、国庫負担割合の引き上げの働きかけをいっそう強めていただきたいと思います。
 以上で、私の一般質問を終わらせていただきます。


 
                                                仁坂知事の答弁を聞く、奥村規子和歌山県議(右)

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