2015年6月県議会
雑賀光夫 一般質問 概要記録
 議会中継録画
 2015617
   

1.平和の問題
(1)戦後日本で憲法9条がはたした役割と「戦争法案」
(2)エルトゥールル号が教えるもの
(3)沖縄辺野古新基地をめぐる問題をどうみるか
(4)原爆の悲惨さを語り継ぐ取組

2.子どもの貧困問題
(1)子どもの貧困の現状把握と対策
(2)学校現場での子どもの貧困把握
(3)学力テスト結果と子どもの貧困
(4)子どもの貧困と就学援助
(5)子どもの医療費無料化・県も支援を

3.海南市の津波対策
(1)浮上式断念・新計画に市民の意見を


《まえおき》雑賀光夫 県議
 議長のお許しを得ましたので、質問にはいらせていただきます。
 その前に、先の県会議員選挙では、なんとか滑り込むことができました。これからも当局のみなさん、先輩同僚の議員の皆さんのご指導、よろしくお願い申し上げます。
 この県議選で、私は住民の声を県政にとどける問題とともに、安倍内閣の暴走にストップをかける、憲法の解釈を変えて自衛隊が海外で武器を使える範囲をどんどん広げていくのは危険だと訴えました。あえて「自民党」とはいわずに「安倍内閣」と申し上げてきた。といいますのは、自民党の重鎮であった、元幹事長であった方々、野中広さん、古賀誠さんといった方々までが、安倍内閣はどこへ行くのか、自民党の中にこの暴走を止めるものはいないのかと嘆いていらっしゃるからであります。相手候補である自民党県議のみなさんも、立場上何も言わなくても、安倍内閣がすすめていることがまともなことだと思っていらっしゃるとは、私には思えなかったからでございます。
 選挙結果は、定数や候補者の組み合わせがありますから、県内では残念ながら3議席になってしまいましたけれども、全国的にはすべての都道府県で議席を得るということになりました。がんばってまいりますのでよろしくお願い申し上げます。

1.平和の問題
(1)戦後日本で憲法9条がはたした役割と「戦争法案」
《質問》雑賀光夫 県議
 さて、質問にはいりますが、申し上げましたように、憲法解釈をめぐって、日本は大きな曲がり角に来ています。
 安倍内閣は、国民の命と財産を守るためには、日米同盟を強化し集団的自衛権認めなくてはならないといいます。私は、イデオロギーがどうであれ、事実に立って、なにが国民の命や財産を守ることになるのかということを考えてみたいと思います。
 私は、以前にも、憲法9条の会アピールをめぐって議論したことがございました。軍事力で国民の命や財産をまもれるというのなら、原爆や水爆をもっている軍事大国、アメリカやロシアの国民の命や財産が守られているはずではないか。しかし、そういう国々では、外国に侵略して人々を殺し、憎しみを買い。国内で大きなテロが起こって国民の命や財産が失われているではないか。
 ちょうど、アメリカでは同時多発テロが起こり、ロシアでも多くの子どもたちも巻き込まれるテロ事件があった直後のことでした。
 その一方で、憲法9条をもつ日本は、自衛隊がありますが、海外に出て行って殺したり殺されたりすることだけはなかった。このことについては、客観的事実としては否定できないと思います。
 この憲法の解釈を根本から変える安保法制、わたしたちは「戦争法案」と呼んでいるものが、国会で審議されています。今月4日の憲法審査会では、与野党推薦の憲法学者がそろって「憲法違反だ」と断言されました。さらに憲法学者らが「戦争法案」廃案をもとめる声明への賛同は、220人を超したと報道されています。そんな中でも安倍内閣は、国会を延長してでもこの法案の可決を図っています。
 戦後日本で憲法9条がはたした役割と「憲法違反」という多くの声を無視して法案審議をすすめる安倍内閣のやりかたについて知事のお考えをお伺いいたします。
 以上で第一問を終わります。

《答弁》 仁坂 知事
 我が国は、戦後の平和主義を謳った憲法下で、他国と武力衝突をおこさず、他国の紛争に介入せず、途上国に多大の援助を行い、一生懸命誠実に働いて、かつ常に国際経済秩序の維持にも協力をして国際社会に協力して、さまざまな国際貢献活動に積極的に寄与し、平和国家としての現在の高い評価と信頼を勝ち得るに至っております。
 憲法9条を含む憲法体制の下で戦後70年のながきにわたり平和を享受することが日本ができたのは、これは軍国主義に陥ってしまったという反省にたって平和を希求する日本国民の不断の取り組みがあったからだと思います。と同時に日米安保条約を含めた外交的立ち位置も紛争の抑止力という意味で大いに効果があったと思っております。
 このことは、恒久平和を願ってやまない我が国の国民の一人として、世界に誇るべきことであると考えております。一方で、時代の変化とともに世界のパワーバランスが大きく変わり、アジア太平洋地域においても国家間の新たな問題や緊張が生じている中、現在、今後の国の安全保障をどうしていくべきかの議論が行われておりますけれども、常に国の将来を考えておくという観点からそれを非難すべき問題と捉えるのはいかがかと思います。
 安全保障関係の法案に係る国会運営については、どう考えても国の所管でございますので、和歌山県知事として意見を述べるべきことではありませんけれども、どうすれば平和を守り続けることができるのかを、私も含め、国民一人ひとりが自らの問題として真剣に考えなければならないと思っております。

《コメント》雑賀光夫 県議
 安保条約についてはいろいろありますが、そのなかで「憲法9条」が、平和を守る役割をはたしたといわれました。その憲法の解釈が変えられようとしている。
 与党が推薦した方をふくめて圧倒的多数の憲法学者が「憲法違反」と断言した。自民党の元の重鎮、元防衛庁長官・山崎拓氏につづいて、現職の自民党国会議員も声を上げ始めています。高知県の地方公聴会でも、反対が5人。賛成は知事ひとりだったと報道されています。
 「知事は、一人一人が考えなくてはならない」といわれましたが、「日本テレビ」の世論調査では「この国会で成立させたほうがよい」が19.4%、「させないほうがよい」が63.7%。国民一人一人の民意が表明されつつある。
 国民の民意をふみにじってはいけない。知事からもご意見をあげていただきたい。県議会でもみなさんと一致点で声を上げられたらたらいいなと思います。

(2)エルトゥールル号が教えるもの
《質問》雑賀光夫 県議
 次に、先日、エルトゥールル号記念集会に参加させていただきました。個人的なことですが、エルトゥールル号の歌の作曲者・打垣内正は、私の叔父であり、その追悼歌が地元の方、子どもたちに歌われたのは感慨深いものでした。
 エルトゥールル号救援に串本の先人のみなさんが献身的に働かれたことが、日本とトルコの友好の基礎をきずき、イラン・イラク戦争のときには、トルコ政府が在留邦人の救出のための特別飛行機をとばせてくれた。このことは、すでに教科書にも道徳教材にもとりあげられています。
 私はこの感動的なエピソードは、憲法9条の精神に立った平和外交の意味を私たちに教えてくれる、戦後憲法以前に、串本の先人たちは、世界人類が愛し合い助け合うことこそが自国の安全保障になるということを示してくれた。こういう意味からもエルトゥールル号の事例は語り継がねばならないと思います。学校教育の場でもしっかりとりあげていただきたい。
 教育長は、どうお考えでしょうか。

《答弁》 宮下 教育長
 エルトウールル号の遭難事故の際、本県の先人が人命救助にあたった行為は、私たち県民にとって誇りであり、この出来事がトルコの人々の心に親日感情として生き、後の人道支援につながったものと捉えてございます。本県の児童生徒がこれらの事実について学ぶことは、人としての生き方を考える上で、極めて大切だと考えてございます。
 この出来事については、県が独自に作成した道徳教材の他、国の道徳教育用教材や社会科の教科書にも取り上げられておりますので、今後とも、県内の各学校において、様々な学習の場面で活用してまいります。

(3)沖縄辺野古新基地をめぐる問題をどうみるか
《質問》雑賀光夫 県議
 もうひとつ日本の将来、安全保障と民主主義にもからんでくる大問題は、沖縄普天間基地移設、辺野古への新基地建設の問題です。
 昨年の県知事選挙、つづく総選挙で、「オール沖縄」の、辺野古新基地建設反対という意志がはっきりいたしました。ところが、安倍内閣は、沖縄の民意を無視して、基地建設をすすめています。
 私たち日本共産党和歌山県議団は、6月4日と5日、沖縄に行ってまいりました。新基地建設のために海底調査がおこなわれようとしている現場を船で調査しました。キャンプシュワブ前の座り込みをしているみなさんにもお会いし、「名護共同センター」に立ち寄りました。
 こうした、県民の基地建設反対の熱気を感じながら、沖縄県庁では、担当課にお会いしました。「辺野古新基地建設問題対策課」といって、知事公室に直属して6月に新設された部署です。短時間ですが、県としての考えをおききしました。「ワシントン駐在」が設置され、そこには、アメリカ領事館を退職された方を、部長クラス・参事監として配置している。その方が、アメリカ国務省のヤング日本部長と面談して、翁長知事のアメリカ訪問の段取りなどもしてきたということでした。沖縄県の腰の据わった構えを感じました。
 もちろん、知事のアメリカ訪問といっても、中央政府をとびこえて、ちがった見解を持って地方自治体の長が訪問するわけですから、相手方も、「なるほど」とすぐに応じるわけにはいかないのはあたりまえです。しかし、県民世論をバックにそれに挑戦しようとするのが、沖縄県知事であります。
 名護共同センターの方が、「基地建設をやめないのなら、嘉手納基地包囲の行動をやろうという声がでている。普天間だけでなく、嘉手納基地もおいておけなくなる」と語っておられましたが、沖縄の基地問題というのは、そういう局面まできています。
 辺野古への米軍基地建設の可否という問題とともに、中央政府が地方自治体の意思をどううけとめるのか、地方自治にかかわる問題がございます。
 このことについて、知事はどう考えられるのかをお伺いいたします。

《答弁》 仁坂 知事
 ご指摘の問題は、3つの要素があると思います。第1は日本の安全保障の問題、第2は普天間基地という劣悪な環境からの地元住民の救済の問題、第3は辺野古にまつわる自然環境問題等の3つのなかなか難しい問題を同時に叶える解を見つけることが必要であると思います。
 今、県知事を代表とする地方の声というお話がありましたが、今の私の分類で言いますと、2番目の普天間基地の劣悪な環境からの救済と、3番目の辺野古にまつわる環境問題というのは、大いに地域の問題であります。
 しかし、日本の安全保障ということは、国全体の問題であって、それはどうでもいいというのは、沖縄県だけの問題ではなく、国民としては困ることであります。また、3番目の辺野古に反対と言うと、普天間の解決が現実の問題として遠のくように、私には思われます。
 地方に関わることは、知事が発言し、行動することは、もちろん大事でございます。国全体の問題についても、同時に考慮し、耳を傾けることも大事だと思います。さらに、地方の問題でも、こちらを立てれば、あちらが立てられない、あるいは立てることが難しくなるようなことがたくさんあることでございまして、現実にそういうことが往々にして起こることで、よく考えた責任のある行動が地方の方も望まれるなと思う次第でございます。

《再質問》雑賀光夫 県議
 いろいろのことがあってむずかしいということのようですが、ただ「解がみつからない」というのは、従来の枠で考えているから出口がない。かつて、鳩山由紀夫首相が「国外へ、すくなくとも県外へ」と公約したが、ゆきづまって辞職しました。どこでつまずいたのか。
 鳩山氏は、オバマ大統領に会ったときに「トラスト・ミー」といいました。「悪いようにしませんから私を信じてください」ということでしょう。あの時、鳩山氏は、「私は普天間基地撤去を公約して政権についたんだ。アメリカは日本国民の民意を尊重して基地撤去してほしい」と言っていたら、状況はかわっていたでしょう。
 沖縄県民と翁長知事は、その立場に立っていると思います。
 私は、仁坂知事にその立場にたってくれとまでは申しません。たた、意見が違っても沖縄県知事が沖縄の圧倒的な民意を受けて求めていることを中央政府が無視する。これは、同僚県知事として、だまってみていていいのですか。地元の意向を尊重するのかという立場から、どうお考えですかとお伺いしているのですが、いかがでしょうか。

《再答弁》 仁坂 知事
 感情的なことを言ってもしょうがないわけでございまして、ものごとは、全体の枠組みの中、限定されすぎた枠の中で考えると難しいわけでございます。従って、これは難しいですけれど、先ほど申し上げましたように第1番目の話も、第2番目の話も、第3番目の話もあって、みんな大事な問題なんだけどそれだけ考えているというと、なかなか問題解決できませんよねというぐらいしか今は言いにくい。それ以上のことを言える人がいたら、ひょっとしたら、無責任な人かもしれない。こんなふうに思っております。

(4)原爆の悲惨さを語り継ぐ取組
《質問》雑賀光夫 県議
 まあ、今日はこのくらいにして次に行きます。
 今年は、ヒロシマ・ナガサキでの被爆70年の年でもあります。
 今年も、原水爆禁止世界大会を前にして平和行進がおこなわれました。県下30の市町村で行われた平和行進では、市町村長さんや議会議長さんからも激励をいただきながら、全県民的な運動としてとりくまれています。
 県に対しては、5月29日、県原水協・県原爆被災者の会、核戦争防止医師の会などの代表者が、協力の申し入れを行いました。
 和歌山県議会では、平成10年6月県議会で、「核兵器廃絶平和県宣言」をおこなっています。
 その宣言は「和歌山県議会は、人類永遠の平和確立のため、いかなる核兵器も廃絶するよう強く訴え、県民の総意として、ここに核兵器廃絶平和県を宣言する。」と結ばれています。
 この精神を県行政にも生かしていただきたい。
 残念なことは6月14日、「和歌山県原爆被災者の会」が解散にいたったことであります。被ばく者の高齢化のため原爆の悲劇を語り継ぐことは私たちの世代に託して、「会」としては、終結した。
 ただ嬉しいのは、一昨年、県への申し入れをした時、「新原爆写真」を県で買い入れることをお願いし、そのとき県議会議長は山下直也さんでしたが、「私からも声をかけましょう」と言っていただき、県での購入、そして昨年、県庁内で「原爆写真展」がおこなわれたことであります。
 ひきつづいて核戦争の悲惨さをかたりつぐとりくみは、つづけていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

《答弁》 福祉保健部長
 県では、広島、長崎での原爆の惨状を伝える写真パネルを活用し、毎年「ふれあい人権フェスタ」で原爆写真を展示するとともに、昨年8月には県庁内でも原爆写真展を実施したところです。
 唯一の戦争被爆国として、戦争、原爆の悲惨さについて、多くの人に伝えていくことは、大切なことであり、今年度も8月に県庁渡り廊下において原爆写真展を開催することとしており、今後も平和に対する県民の意識がより一層高まるよう取り組んでまいります。

《コメント》雑賀光夫 県議
 学校教育の現場でも、戦争や原爆の悲惨さを語り継いでいくことは極めて重要です。県庁内での原爆写真展のとりくみは、市町村でのとりくみ、学校現場での戦争の悲惨さを語りつぐ取り組みにもつながっていくことを期待しています。

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2.子どもの貧困問題
《質問》雑賀光夫 県議
 続いて「子どもの貧困について」お伺いいたします。
 2013年、6月「子どもの貧困対策推進法」が制定されました。この法案では、政府には子どもの貧困対策を総合的に推進するため、子どもの貧困対策に関する大綱の制定義務が、都道府県には子どもの貧困対策計画策定努力義務が課されています。
 2006年のOECD報告書には、日本の貧困率について次のように指摘されました。

 ① 日本の貧困率は徐々に上昇しつつある。
 ② この数値は、OECD諸国に比べて高い。
 ③ 母子世帯の貧困率が突出して高い。

 この「貧困率」というのは、相対的貧困率をいいます。アフリカの子供たちが毎日食事ができないというようなものではありません。しかし、相対的貧困というものは、人間に精神的なプレッシャーを与えます。世間一般のような生活ができないために閉じこもってしまう。それが、子どもの場合にはなおさら深刻です。
 その子どもの貧困率が、2004年には13.7%だったものが、2010年には、15.7%と増えていることが指摘されているのです。これは、OECD22か国の中で、8番目の高さだということです。
 子どもの貧困は、連鎖するという問題があります。学力が低い、高校に行っても中退率が高い。学歴や資格がないから、安定した仕事に就けないという、貧困の悪循環がおこる。こうした問題を解決しなくてはなりません。

(1)子どもの貧困の現状把握と対策
 まず、「子どもの貧困」の和歌山での実態についてどういう把握をしておられるでしょうか。

《答弁》 福祉保健部長
 子どもの貧困の実態については、国から都道府県別の数値は公表されておりませんので把握しておりませんが、議員の発言にもありました母子家庭の実態につきましては、平成25年度に行った和歌山県母子世帯実態調査の結果、全国に比べると就業の割合は高いものの、パート・アルバイト等の比率が約半数を占め、世帯収入額としても低い状況や、大学等への進学希望に関しては低い状況が見られるところです。
 現在、県では、子どもの貧困について庁内関係課と連携し、県内の子どもの貧困にかかる状況把握に努めているところであり、これまでのひとり親に対する施策なども踏まえ、子どもの貧困対策に関する計画を策定してまいります。

《コメント》雑賀光夫 県議
 日本では、地域ごとに貧困の実態が明らかにされていないことが問題です。
 それでも県の担当課として、子どもの貧困の最も深刻な問題とOECDが指摘した、母子家庭の実態把握に乗り出したことは評価したいと思います。とりくみはじめた資料をいただきましたが、貧困の連鎖の問題が、はっきりと示されています。子どもの貧困対策法にもとづくとりくみは、はじまったばかりです。
 この質問を準備しているさなかに、千葉・銚子の県営住宅で強制退去の日に中学生の娘を殺害した母親への判決が大きく報道されました。以前に、生活保護の捕捉率の問題をとりあげたことがありますが、問題は深刻です。しっかりととりくんでいかなくてはなりません。

(2)学校現場での子どもの貧困把握
《質問》雑賀光夫 県議
 では、子どもをあずかる学校では、子どもの貧困をどう把握しているのでしょうか。

《答弁》 宮下 教育長
 学校では、児童生徒がおかれている生活環境や経済状況、親子関係等、多くの背景が複雑に絡み合い、学力や学校生活等において様々な教育課題が生じています。そのため、学校長と教職員が児童生徒一人一人の情報を共有するとともに、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラー等の専門家による助言を得ながら、学校内外の多様な角度から働きかけることが大切であります。
 学校からは、関係機関と連携して組織的に取り組むことにより、課題解決につなげているとの報告を受けており、今後も、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラー等を有効に活用しながら、支援体制の充実を図ってまいります。

《コメント》雑賀光夫 県議
 私はこの質問を準備する過程で、スクールソーシャルワーカーの活動の報告を読ませていただきました。
 「貧困」単に金銭的な問題だけではない、親が離婚したという問題だけではない、ある場合は、子育てをネグレクトする、ある場合は児童虐待がある。また、貧困な中で、昼も夜も働きながら子どもを一生懸命育てている母親が大勢いる。
 本当は、教育長にもこうした生々しい実態をおはなししてほしかったのです。
 こうした実態を担任がキャッチし、必要な場合には、就学援助、生活保護などの制度も活用して対応しなくてはならないと考えています。また、困難な事例に対応するためのスクールソーシャルワーカーをさらに増員を図っていきたいと考えています。これは要望といたします。

(3)学力テスト結果と子どもの貧困
《質問》雑賀光夫 県議
 学力テスト結果が大きな議論になりましたが、学力と子どもの貧困についてどういう分析をしているでしょうか。

《答弁》 宮下 教育長
 子どもの学力につきましては、文部科学省による平成25年度全国学力・学習状況調査のきめ細かい調査の中で、家庭の経済状況をはじめ、家庭での学習時間や読書習慣など、様々な要因と相関があると報告されてございます。
 各学校では、児童生徒一人一人の状況を把握し、わかる授業の実践や補充学習の徹底など、確かな学力の定着に向けた丁寧な取組に努めてございます。県教育委員会といたしましては、市町村教育委員会と連携し、一層の取組の充実を図ってまいります。

《コメント》雑賀光夫 県議
 文部科学省は、アンケート結果を統計処理していますが、ほとんど学校現場では参考にもされていないといったら、言い過ぎでしょうか。
 和歌山県では、1979年と1994年に同和教育との関係で学力調査をしたことがありました。その時は、現場の教員も参加して、保護家庭、一人親家庭などハンディキャップをもつ子どもたちの生活と学力の問題を分析したことがあります。その分析をみながら学校現場では、うちの学校の、うちのクラスのA君の場合はどうなんだろうという議論に発展した。間に15年も置いた調査だからゆっくり分析もできた。
 平均点をどう引き上げるかの論議でなく、困難を抱える一人一人の子供によりそった論議をおねがいしたいと思います。
 毎年2回もテストが行われ、その平均点を引き上げることに追われるようなことでは、こうした議論になりにくいということを心配いたします。

(4)子どもの貧困と就学援助
《質問》雑賀光夫 県議
 次に、子どもの貧困にたちむかうために何をするのか。
 貧困な家庭を支援する就学援助とがあります。これは、各市町村の管轄になっています。
 国の基準があって市町村が学用品や修学旅行費用などの援助金額をきめていく。国の基準そのものが低すぎると思いますが、その基準を大幅にわりこむ市町村がある。
 具体的に言えば、小学校1年生の学用品費は、国の基準では11,420円ですが、ある市では、6,860円です。なにかの間違いではないか、なにか事情があるのかと、教育委員会の関係課に聞いても「数字は間違っていませんが、事情はわかりません」という。市会議員や教職員組合の支部に問い合わせても「ことあるごとに要求しているのですが」というお話です。
 次に、この就学援助を親に周知し、就学援助金をどうわたすかという問題があります。周知についても市町村でいろいろですし、就学援助金を銀行口座振り込みになっているのは10自治体だけとお聞きしています。
 こうした問題は、市町村の管轄だからとすますのではなく、市町村と意見交換して、改善の努力をすべきだと思うのですが、教育長、いかがでしょうか。

《答弁》 宮下 教育長
 就学援助に関しては、それぞれの市町村が実情に応じて決定していくものでございますが、県といたしましては、これまでも制度が円滑に活用できるよう市町村へ助言を行ってきたところでございます。
 議員ご指摘の件につきましても、教育の機会均等の確保という制度の趣旨を踏まえ、市町村教育長会議などの機会に、県内市町村の就学援助支給額の状況について情報提供するとともに、プライバシーに配慮した支給方法についても助言してまいります。

(5)子どもの医療費無料化・県も支援を
《質問》雑賀光夫 県議
 次に、子どもの貧困と医療の問題をとりあげたいと思います。
 和歌山県教職員組合が実施した、歯科治療についての調査結果があります。歯科検診で歯医者さんにいきなさいよといわれて実際に歯科医に受診した児童生徒が小学校入学後は医療費助成がない地域では35%、中学校まで助成がある地域では50.55%になっている。医療費助成の効果は明らかです。
 市町村ですすんでいるから県や国でやらなくてもいいだろうという考えは間違っている。共通して必要とされているものなら県でやる。国でもやるようにせまっていく。そして、市町村は地域ごとの施策を考えることができるようにすべきだと思います。
 子どもの医療費を、中学校卒業まで、さしあたり小学校卒業まででも県として無料化されてはどうかと思いますが、福祉保健部長はどうお考えでしょうか。

《答弁》 福祉保健部長
 乳幼児医療費助成制度につきましては、乳幼児の健康保持増進及び子育て世帯の経済的負担の軽減を図るため、乳幼児医療費の支給をする市町村に対して補助を実施するもので、就学前の乳幼児を対象としているのは、乳幼児は免疫が少なく、病気にかかりやすく、また、病気にかかった場合に重症化しやすいため、早期に医療機関で受診してもらえるよう、自己負担分を無料にしたものであります。
 近年、市町村が対象年齢を拡充していることは県も承知しているところですが、乳幼児医療費助成制度は、ベースになる部分は県が下支えをし、対象年齢拡大等の上乗せの部分については、市町村がそれぞれの地域の実情に応じ、施策の特色を出すために実施しているものであり、県が統一的に無料化するものではないと考えております。

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3.海南市の津波対策
(1)浮上式断念・新計画に市民の意見を
《質問》雑賀光夫 県議
 海南市の浮上式津波防災堤防の断念にかかわって、予算特別委員会でもお伺いしました。
 知事からは、計画変更にあたって、さまざまな案が検討されたのだというお話もありましたけれども、十分納得できるものではありません。海南市議会でも、全員協議会で説明を聞いただけです。
 あたらしい堤防の案は、450億円かけて、沿岸堤防を9メートル程度にかさあげしたいというものです。私は、770億円もかけて浮上式でやれというつもりはありませんし、450億円の予算をかけていただくこともありがたいと思っています。しかし、お金をかけるからには納得できるものをつくっていただきたい。
 私は、予算特別委員会で、一つの案として、「湾内のおくまった狭い部分は仕切って水門をつけてはどうか」という提案をいたしました。その場合、和歌山石油という企業が港をつかえるかどうかを心配しておりました。
 その後、和歌山石油を訪問してお話を聞いた。大きな船は、月一回接岸するが、外側の岸壁につくから問題ない。小さい船が、毎日のように接岸する。私は、工夫すれば、私の案も可能ではないかと思いました。
 浮上式堤防をつくるというときには、何度も説明会をやっているわけです。前の計画がだめになり、さらに200億円の予算をつみあげた工事をする。その前にそのくらいの説明会ができないはずがない。
 県土整備部長のお考えをお伺いいたします。

《答弁》 県土整備部長
 和歌山下津港(海南地区)津波対策事業につきましては、従前の計画にあった浮上式防波堤が、南海トラフ巨大地震発生時に稼働しない恐れがあること、これらに対する補強等に多くの事業費と時間が必要となることなどから、本年2月に、国土交通省より、防護レベルを浮上式防波堤と同様の東海・東南海・南海の三連動地震とするも、浮上式防波堤をやめ、港内護岸を嵩上げする構造へ計画変更するとの発表がありました。
 この計画変更においては、国土交通省では、浮上式防波堤を補強する案、防護レベルを昭和南海地震レベルまで下げて事業費を極力抑制する案、沖合防波堤を建設する案など、様々な代替案が検討され、また、県としても、市民・県民の安全を守るための技術的な妥当性、海南市や地元企業からの協力、財政負担の可能性等の観点から検討してきました。
 その結果、港内護岸の嵩上げ案が、防護レベルが同等で、事業費の増加を極力抑えたものであること、港内の利便性や船舶の安全性等も考慮すると、最も良い案であるとの結論を出し、本年2月の「和歌山下津港 海南地区 津波対策協議会」において説明、公表したものです。
 その後、4月下旬から5月上旬に開催された海南市の市政懇談会において個別地区へ説明の要請を受け、6月上旬より黒江船尾地区、日方地区、冷水地区にて国土交通省・和歌山県・海南市による説明会を行いました。この説明会では、特に事業に反対という意見はなく、堤防の開口部の対策や大雨時の対策等に関する意見が出され、検討していくこととしております。
 今後も、設計が終了した時や工事に着手するときなど、必要な時期には、地元に対して説明を行っていくとともに、地元住民等から要望等が出された場合には、適切に対応するよう努めてまいります。
 なお、議員ご提案の港湾の内部に水門を設置する案につきましては、先般の2月議会の予算特別委員会においてご説明しましたように、船の接岸だけではなく、狭い水域で船舶が輻輳し安全性への影響が大きいことや、水門で津波が反射されるため、港内護岸を更に嵩上げする必要があること、水門の高さ・幅とも大規模になることが予想され、事業費の増大や地震時の確実な作動等、課題が多く、実現は難しいものと考えております。

《再質問》雑賀光夫 県議
 ご丁寧な答弁、ありがとうございました。
 さらに、つっこんでいろいろな意見が出るかもしれません。堤防かさ上げ工事がはじまってからいろいろ意見がでても対応できないので、地域からの意見は早く出していけるようにしたいと思います。ある程度まとまって「質問・要望」をすれば、国・県一緒に説明においでいただけるでしょうか。

《再答弁》 県土整備部長
 先ほども答弁いたしましたけれども、要請のあった3地区には、これまでも十分説明をしてきており、質問・要望等には可能な対応をしていきたいと考えております。
 繰り返しになりますけれども、今後も、設計が終了した時や工事着手時など、節目節目において、地元の方々に対し、説明し、適切に対応するよう努めてまいりたいと考えております。


 
                                              仁坂知事の答弁を聞く、雑賀光夫和歌山県議(右)
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