2015年9月県議会 松坂英樹 一般質問 概要記録 議会中継録画
   
   
2015
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1.安全保障関連法案への政治姿勢
(1)「戦後70年」への知事の所感
(2)安全保障関連法案についての知事の政治姿勢

2.河川・水路の一体的整備について
(1)広川と江上川の河川整備にあわせた県・市町村・水利組合の連携について

3.「地方創生」について
(1)和歌山県版「総合戦略」における「子育て支援」の具体化について
(2)市町村間の地域連携について
(3)県内市町村の「総合戦略」策定にむけた支援と連携


 

1.安全保障関連法案への政治姿勢
(1)「戦後70年」への知事の所感
《質問》松坂英樹 県議
 通告に従い一般質問をさせていただきます。第一の柱として、安全保障関連法案への政治姿勢について、順次、知事におたずねいたします。
 今年は戦後70年の節目の年にあたります。終戦記念日をむかえた夏、特にこの8月には、二度と戦争の惨禍を繰り返さないという想いを、戦争体験者、ご遺族、また戦争体験を引き継ぐ若者たちと、様々な県民・国民のみなさんが声を上げています。私は、戦後70年の節目の夏、多くの県民・国民の中に、「もう二度とこのような悲しみ、苦しみを繰り返さない」との思いが深く大きく広がっていると感じています。
 ここにあるのは、和歌山県遺族連合会が出版した、県内の戦争遺児ら38人の経験談を編んだ「あゝ大東亜戦争 遺児たちの歩んだ道」です。知事も巻頭にご挨拶を載せておられますが、この手記には、戦争遺児たちがどんなにつらい道を歩んだのか、今までは話すことができなかった想い、筆舌に尽くせぬ体験が、それぞれの方の言葉で記されています。
 戦争は、何の罪もない子どもたちが犠牲となります。戦争を知らない次の世代に戦争体験を引き継いでゆくためにも、こうした戦争遺児としての体験は、現在の若い世代や子どもたちにとっても、身近に考えることのできるものだと思います。
 「二度と戦争を起こしてはならない、私たちのような遺族を出してはならないとの信念で」、と書かれていましたが、戦争遺児の視点からお一人おひとりの手記を丁寧に編纂された、たいへん貴重なお仕事だと思いました。
 私は次に、終戦後の教師がつづった一つの詩を紹介したいと思います。「教え子を再び戦場に送らない」誓いの詩です。

 「戦死せる教え子よ」     竹本源治
   逝いて還らぬ教え子よ 私の手は血まみれだ!
   君を縊ったその綱の 端を私はもっていた
   しかも人の子の師の名において

   嗚呼!「お互いにだまされていた」の言訳がなんでできよう
   慙愧、悔恨、懺悔を重ねても それがなんの償いになろう
   今こそ私は汚濁の手をすすぎ 涙をはらって君の墓標に誓う
   「繰り返さぬぞ絶対に!」

 戦後を迎えた教師にとって、戦前・戦中に、疑うことなく軍国主義の一端を担ってしまった反省に立ち、もう二度と、戦争には加担しないと誓ったこと、このことが戦後のスタートであったと思います。
 日本国憲法の平和主義は、国際間のもめごとを、戦争という手段で、人殺しという手段で解決することはやめようということです。たとえ世界から紛争はなくならなくても、それを戦争にはさせない、このために人類は歴史に学び、知恵を出し合い、平和な未来を切り開く責務があるのだと考えます。
 今議会は終戦記念日をむかえた8月に開会されました。戦後70年の節目の年にあたり、仁坂知事としての所感を、まずお伺いいたします。

《答弁》 仁坂知事
 先の大戦の終結から70年の節目の年を迎え、多くの県民、国民の皆様が万感胸に迫る思いをされたことと思っております。あの苛烈な戦争では、本県からも多くの若者が戦地に赴き、或いは度重なる空襲による痛ましい戦災により、幾多の尊い命が失われました。
 そして、戦後、私たちのふるさとは、県民が一丸となって努力を重ね、困難を乗り越えて、荒れ果てた郷土の復興とめざましい発展の道を歩んでまいりました。
 私たちは、ともすると、今日の平和で豊かな暮らしを当然のことのように享受しておりますけれども、現在のこの平和と繁栄は、戦争により心ならずも命を落とされた多くの方々の尊い犠牲の上にあることを決して忘れてはならないと、改めて強く思っております。
 我が国では、戦後生まれの人が8割を超えました。太平洋戦争開戦の日や広島、長崎への原爆投下の日を正確に答えられる人も年々減少しているといわれております。70年という年月の長さを感じざるを得ませんが、二度と戦争の惨禍を繰り返さぬように、その悲惨さ、平和の尊さを後世に語り継ぎ、恒久平和の実現に努めることが、現代を生きる私たちの責務であると思います。
 戦没者の慰霊に真摯に取り組み、県主催の慰霊式を復活させたのも、その表れであります。
 私は、戦後70年の節目の年にあたり、先人が懸命に築いてこられた郷土和歌山を、県民の誰もが将来に夢と希望の持てる素晴らしいふるさとにしていかなければならないと、決意を新たにしているところでございます。

(2)安全保障関連法案についての知事の政治姿勢
《質問》松坂英樹 県議
 私は、平和な戦後が、この70年間続いた意義はたいへん大きいと思うのです。ところが今、このままでは戦後80年を迎えられるのか?との声が上がっています。戦後何十年という節目を重ねることが、これで最後になりはしないか。この先、日本が戦争にまきこまれる、加わってゆくことになりはしないか。これが今するどく問われている。それが「安全保障関連法案」いわゆる「戦争法案」の問題だと思うのです。
 安倍政権は、集団的自衛権行使容認を閣議決定しました。日本が戦争にまきこまれる、他国の戦争に日本が加わってゆくのではないか、その危険性を、今多くの県民国民が肌で感じているのではないでしょうか。
 この間の国会審議を通じて、戦争法案の問題点が次々に明らかになってまいりました。集団的自衛権の行使は憲法違反だという違憲性の問題、そして「法的安定性は関係ない」という内閣官房副長官による暴言、「後方支援」は「兵站(ロジスティクス)」であり自衛隊員が戦闘に巻き込まれる危険性が高まること、自衛隊が非人道的兵器の運搬をすることも否定されていないこと、防衛相内部資料(統合幕僚監部文書)が暴露され、国会にも出されていない重要な問題がどんどん先走りされていること、このような数々の大問題が国会審議で明らかになってまいりました。
 この統合幕僚監部文書問題に対しては、憲法学者らが声明を発表し、「合憲性に深刻な疑いのある法案について、成立を予定して検討課題を示すことは重大な問題である」と指摘したうえで、「議会制民主主義のプロセスよりも、防衛実務の事情を優先した対応と言わざるをえず『軍部独走』という批判をまぬがれない」と批判しています。
 内部文書をみてわかったことは、安倍首相が閣議決定の時に説明していた、米戦艦に乗ったお母さんと子どもたちを守るというようなことは一つも出てこないということであり、自衛隊と米軍が肩を並べて世界で戦う国にしたいということです。
 法案に批判的な世論と運動は急速に拡大しつつあり、私は、この憲法違反の戦争法案は、きっぱりと白紙撤回、廃案にすべきだと考えるものです。
 今、県民・国民の世論は大きくゆれ動いています。国のあり方を国民自らが主体的に議論するのが国民主権であり、戦前の中央集権の反省に立つ地方政治の使命からみても、今般の安全保障関連法案は県民の生命・財産とかかわる非常に重要な問題です。この間の国会審議や県民国民世論の状況をふまえ、和歌山県知事としての安全保障関連法案への政治姿勢をお伺いいたします。

《答弁》 仁坂知事
 我が国は、戦後70年間の長きにわたり、平和と繁栄を享受してまいりました。これは、軍国主義に陥ってしまったという反省にたって、平和を心から希求する国民の不断の取り組みがあったからこそだと思っております。
 もちろん、平和主義を謳った現憲法が果たしてきた役割も大きいし、一方、日米安全保障条約をはじめとする外交的立ち位置も紛争の防止に大いに効果を発揮してきたと思っております。
 一方で、憲法の施行から今日までの間、我が国を取り巻く安全保障環境は大きく変わりました。政府が「もはやどの国も一国のみでは自国の安全を守れない」と言っているように、時代とともに世界のパワーバランスが変化し、現在、アジア太平洋地域においても国家間の新たな問題が或いは緊張が生じていることは報道されているとおりであります。
 我が国の平和と安全を維持し、国民の命を守ることは政府の最も重要な責務であります。国の安全が保障されなければ、県民の命を、或いは暮らしを守ることもできませんので、私たちも大いに関心のあるところだと思います。
 政府は、安全保障に係る現在の体制が十分でないという問題認識に基づき、法整備を図ろうとしておりますけれども、多くの国民の間には、ご承知のように様々な議論があると思っております。そのような議論を傾聴することはもちろん大事でございますけれども、ただ、平和を唱え、自らが平和主義的であれば事足りる、或いは、相手もそうしてくれそうにないと考えて、防衛や安全保障や自衛権のあり方などということを議論したり、或いは耳を傾ける、そういうことを嫌悪するということでは平和は守れないと思います。
 今回の議論においても、政府は説明が不十分だということがよくアンケート調査などで出てきますけれども、しかし、その同じ人がどの部分について、どう聞きたいのかというようなことを、はたして考えて言っているのかというような点については疑問なしともいたしませんし、或いは説明を聞こうともしない人もいるかもしれないというふうに思います。
 ましてや、「戦争法案」とかあるいは「徴兵制になる」というレッテル貼りをすることに終始していてはどうかと思うことがございまして、例えば法案が成立することを前提に行政当局が実務とか運用とかを考えておくことすら否定するような話は私には非常識のように思います。
 もちろん、中身については議論されるべきことでございますので、国民的にいろいろ議論するということは正しいことではないかと思いますが、法案を前提にして、用意をしておくことはけしからんというのは、私も長く役人をやっておりましたし、今、県庁の役人を率いておりますが、変な議論だなというふうに思う次第でございます。
 いずれにしても、国を守るということは大事なことですから、平和を願うというのは、日本国民ほとんど、或いは100%と言っていいかもしれませんが、我々の願いでございます。その願いをどうやったら実現できるのかということについては、真摯に皆で議論したらいいのではないかと考えております。

《要望》松坂英樹 県議
 知事は、安倍政権の法整備の方針に理解を示されると同時に、世論についてはどうにもこの世論を見下した「レッテル貼りをしている」というふうに聞こえるふしもありまして、私はそれは気になりました。
 そして、「我が国を取り巻く安全保障環境が大きく変わった」というふうに、政府の立場を理解するというお話でしたが、そのことと安全保障関連法案の組立がさっぱり国会で説明がつかず、右往左往し、同じ言葉をオウム返ししているのが、今の安倍政権の国会審議の状況です。その安倍総理の言葉のフレーズをもって、法案への理解を示すことには、きびしく批判をせざるをえません。
 今、多くの若者、女性、そして高齢者や中年も、多くの名もない市民が、政治的立場や、知事がおっしゃったような安全保障の考え方の違いをこえて、戦争法案のゆくえ、アメリカと肩をならべて戦争をする国になる危険性を危惧しています。
 そして安倍政権が数をたよりに強引な国会運営をすすめ、国民の合意や国会審議を軽視したやり方に、批判の世論がいっそう高まっているのです。
 この8月末の一週間は、全国でも和歌山でも歴史的な戦争法案反対の行動が計画され、戦後日本政治に記される大きなヤマ場となるでしょう。
 国会前でも、地方でも、無名の若者や学生たちが、「自分の言葉で」「普通の言葉」で平和主義、立憲主義、民主主義が語られている。私は、そこに日本の未来を確信することができます。
 そして、戦争体験者が、その若者たちにエールを送っています。
 新聞の投書欄に掲載された「学生デモ 特攻の無念重ね涙」と題した、86歳の元特攻隊員の投稿の一部を紹介します。

 安保法案が衆院を通過し、耐えられない思いでいる。だが、学生さんたちが反対デモを始めたと知った時、特攻隊を目指す元予科錬だった私は、うれしくて涙を流した。
 オーイ、特攻で死んでいった先輩、同輩たち。「今こそ俺たちは生き返ったぞ」とむせび泣きしながら叫んだ。
 天皇を神とする軍国で、貧しい思考力しかないままに、死ねと命じられて爆弾もろとも敵艦に突っ込んでいった特攻隊員たち。人生には心からの笑いがあり、友情と恋があふれ咲いていることすら知らず。
 若かった我々が、生まれ変わってデモ隊となって立ち並んでいるように感じた。学生さんたち心から感謝する。今のあなた方のようにこそ、我々は生きていたかったのだ。

 この投稿に込められた思いや、戦前の地方行政にたずさわり戦争遂行に加担してしまった反省の思い、これらをしっかりと胸にきざんでいただきたいと知事に要望するとともに、私ども日本共産党県議団は、和歌山県内、全国津々浦々にひろがる戦争法案反対の世論とともに、議会内外でいっそう奮闘する決意を、改めて表明するものです。

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2.河川・水路の一体的整備について
(1)広川と江上川の河川整備にあわせた県・市町村・水利組合の連携について
《質問》松坂英樹 県議
 引き続き、2つ目の柱である「河川・水路の一体的整備について」の質問に移らせていただきます。本日も、台風15号が接近中であり、その影響が心配されています。今年7月の台風11号の時には、有田管内においては、広川町内で500ミリを記録するような豪雨となり、広川・江上川で河川が氾濫し、また水路があふれ街中でも長時間にわたって浸水被害が出ました。広川・江上川ともに堤防が決壊したところでは、大量の土砂や岩石が田畑に流れ込み、大きな被害が出ました。JRきのくに線では法面崩壊により電車が通行不可能となり、特急が止まり、普通列車もバス振替運行を余儀なくされました。
 広川町では昨年秋の台風11号でも同様の大きな浸水被害が出ており、これまで10年に1回程度だった被害が、このごろは、こうして毎年のように家屋や田畑を襲っているという状況です。
 この地域では「前門の虎、後門の狼」と例えられているように、海から襲いくる津波と背後の山からおしよせる広川・江上川の洪水になやまされてきた歴史を持ちます。
 議場に配付しています※資料をご覧ください。平野部における広川と江上川の流域を地図に示したものです。私はこの地図を作るための調査をするまでは、広川と江上川の間の地域には、どっちの川に流れているのかよくわからない水路が複雑にからみあっていると思っていました。ところがご覧のように、広川は山間部に広大な流域を持ちながらも、河口部の流域は極端に狭く、平野部の農地や市街地の排水は広川へは行っていないんですね。河口近くでは、ほぼ川の本線だけという狭い流域となっています。
 また南側の江上川は流域面積約5平方キロメートルの小さな川ですが、広川との間にある上中野の方まで、かなり無理をした形で集水域が伸びていることがわかります。

 そして、広川と江上川の間には、そのどちらの流域にも属さないエリアがあること、雨水が川へと流れずに、農業用水路や小さな水路を伝って網の目のように広がり、最後は海へ流れるというエリアがあるということを再認識しました。
 注目いただきたいのが、その広川と江上川の、どちらの流域にも属さない空白エリアが結構奥へ広くて、海岸部だけでなく上流にむけて南金屋の方まで伸びているんですね。これは、平野部の田に水を引くために先人が水路を伸ばし、上流の谷水を水田に取り入れるために伸ばした苦労のあとだと思うのです。
 ところが田んぼに水を引くための、細く勾配のゆるい用水ですから、大雨の水を排水する機能はありません。水路をあふれた洪水が、平野部の田や畑を海のようにおおいつくし、そしてその洪水が、そのまま街中へ流れ込んで道路の上も住宅もプールのように浸水する。そして最後に海へと向かうということになっているんですね。
 この浸水対策のために、これらの水路を拡幅したり、流れを変えたりすることは、用地の確保や利害関係の調整に困難をかかえることが多く、これまでなかなか進んできませんでした。加えて平野部を海岸に並行して横切るJRの線路もあり、これが堤防のようになっていて、この下をくぐらせて水路が通るのですが、通水断面拡大には多くの費用がかかるためになかなか進んでいません。
 今後、広川町内の街中の浸水対策のためには、水路や用水路の整備に加えて、道路の側溝を整備することにより必要な排水路の機能を強化することや、新たに道路の中に排水路を埋設し整備するなど、河川とともに道路や下水、水路整備を連携させて対策をすすめるべきではないでしょうか。
 県が策定する河川整備計画は、県管理である河川の本線が溢れないようにするというのが中心課題となるわけですが、本線やこの狭い流域のことだけ考えていたらダメだと思うのです。
 今般、県が広川の河川整備計画を策定するにあたっては、広川本線など県管理部分の線的な整備にとどまらず、面的に流域の降雨・出水のメカニズムを分析し、市町村管理の水路や水利組合などが管理している用水とあわせ、市町村とともに一体的な整備をすすめる契機とすべきだと考えますがいかがでしょうか。
 県土整備部長の答弁を求めます。

《答弁》 県土整備部長
 現在、県では、平成29年度末までを目標に広川も含めた主要河川の河川整備計画を策定することとしています。
 この河川整備計画の策定にあたっては、各地域の実情を踏まえた浸水対策を検討する必要があることから、河川や流域の特性、過去の浸水被害の状況等を踏まえた上で、地域の意見も聞きながら、具体の整備内容を検討することとしています。
 特に、広川のように、地域に降った雨が排水能力を超え、河川に流れ込む前に水路等が溢れる、いわゆる内水氾濫が頻発する河川においては、市町村を中心とした水路管理者における排水対策が重要であり、これらと一体となった総合的な浸水対策を検討する必要があると考えています。
 広川の河川整備計画については、今後検討が本格化することとなりますが、まずは町の行う排水対策を検討いただくとともに、県としては河川改修と一体となった効果的・効率的な浸水対策が実施できるよう調整を行ってまいります。

《要望》松坂英樹 県議
 市町村とよく協議しながら、整備の計画や、一体的な検討・調整をしてゆくという答弁だったと思います。その地域の特性は、歴史的な経過や地理的条件が重なり合っているものです。その上に立って、宅地化や集中豪雨などの今日的な変化に対応しなければなりません。
 既存事業のメニューの限界や、タテ割の押し付け合いで終わることなく、住民の声をよく聞いて、要望にしっかりとこたえられるよう、広川町をはじめこうした課題をもつ市町村とともに県が知恵をしぼり、しっかりと対策が実施されるよう、重ねて要望をさせていただきます。

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3.「地方創生」について
(1)和歌山県版「総合戦略」における「子育て支援」の具体化について
《質問》松坂英樹 県議
 3つ目の柱である「地方創生」についての質問に移らせていただきます。和歌山県の地方版総合戦略「和歌山県まち・ひと・しごと創生総合戦略」が「和歌山県長期人口ビジョン」とともに示され、5年間の目標を定めて取組が始まっています。県議会としても「半島振興・地方創生対策等特別委員会」での議論をスタートさせたところです。今回の一般質問では、総合戦略の中心的課題のひとつであり、人口減少を食い止めるための柱である「子育て支援」の分野で、県が「総合戦略」で掲げた目標と方針を、今後どう具体化してゆこうとしているのかを質問したいと思います。
 県の総合戦略において、基本目標の3つ目に「少子化をくい止める」を位置づけ、出会い・結婚の支援と、妊娠・出産・子育ての支援という二つの柱をたてています。
 今、若者の間では、低賃金で不安定な雇用条件や、長時間過密労働が蔓延する中、どうしても結婚年齢が遅くなる傾向があります。また若い世代の経済的貧困が指摘されている中、子育てにかかる経済的負担は非常に重くなってきていると言わざるを得ません。
 「子育て支援」という分野では、若い世代への経済的負担軽減や労働環境改善などが特に重要であると考えますが、県として、総合戦略に示されたこれらの課題と目標を今後どう具体化し、現行の施策の充実をどうはかってゆこうとしているのか、福祉保健部長ならびに商工観光労働部長より答弁を願います。

《答弁》 福祉保健部長
 和歌山県版「総合戦略」における「子育て支援策」については、子育て家庭の経済的負担の軽減を図るとともに、働きながら子育てができるよう多様な保育ニーズに対応した保育環境の整備を目指しているところです。
 経済的負担の軽減としては、紀州3人っこ施策による多子世帯の保育料無料化や就学前の乳幼児医療費助成を引き続き実施してまいります。
 また、仕事と子育ての両立支援としましては、直接的な事業実施主体である市町村と連携し、保育所の待機児童解消や、放課後児童クラブ、ファミリー・サポート・センター、一時預かり、病児保育などの多様な保育を充実してまいります。
 また、今後示されてくる地方創生の交付金の活用を視野に入れながら、若い世代も安心して子育てを行うことができるよう、更なる子育て支援策の充実に努めてまいります。

《答弁》 商工観光労働部長
 子育て支援のためには、育児休業の取得や長時間労働の抑制等、男女ともに仕事と子育てを両立することができる働きやすい職場環境が重要であると考えております。
 また、女性の労働力への期待が高まる中で、女性が働き続けられる職場環境づくりを進めることは、人材確保や定着率の向上など安定雇用や企業の成長にもつながると考えております。
 こうした取組を進めるためには、経営者の理解や意識改革が大きなポイントであることから、様々な機会を捉えて経営者に向けた講座を行ったり、労働局と連携して企業を訪問するなど、企業のトップに対して直接働きかけを行っております。
 また、ホームページで職場環境づくりに積極的な企業の実践例を紹介するとともに、社会保険労務士を企業に派遣して、働きやすい職場環境づくりのためのアドバイスを行っているところです。
 今後も、計画期間内に1,500社の事業所へ訪問等を行い、仕事と子育てを両立することができる職場環境づくりを促進してまいります。

(2)市町村間の地域連携について
《質問》松坂英樹 県議
 次に、国の方針では、人口減少に対応するためとして、拠点都市への集中がすすめられようとしています。しかし、この間の合併市町村の総括から見ても、周辺部の疲弊は深刻であり、選択と集中による周辺部の荒廃が、人口流出をいっそう加速させるとともに災害に弱い国土をつくるのではという問題提起がされています。
 和歌山県の総合戦略の中では「連携中枢都市圏」など、市町村間の地域連携がうたわれていますが、これらの具体化については、県としてどうすすめてゆく考えなのか。総務部長より答弁を願います。

《答弁》 総務部長
 連携中枢都市圏などの広域連携制度につきましては、「コンパクト化」だけではなく、「ネットワーク化」を上手く併せて進めていくことが重要であると考えております。
 「コンパクト化」につきましては、公共施設や行政サービスを一定の拠点となるエリアに集約することで、高齢化や人口減少が進む中での都市機能の維持や、効率性を高めつつ、より良いサービスを提供することを可能にするものでございます。
 一方で、「ネットワーク化」につきましては、圏域内の拠点となるエリアや周辺の居住地を公共交通や情報通信網等のネットワークでつなげることで、集約された都市機能を圏域全体で活用できるようにするものであります。
 これらの、「コンパクト化」と「ネットワーク化」を併せて行うことにより、単独では今後維持することが困難となることが想定される生活関連機能サービス等を圏域全体で維持・向上させるなど、地域と地域が共存共栄できるように取り組んでいくものでございます。
 現在、関係市町村と協議を進めているところでございまして、例えば、和歌山市と近隣市町におきましては、広域連携に関する検討会を立ち上げまして、どのような事業で連携が可能か、またそれによりどのような効果があるのか等につきまして、議論を重ねているところでございます。
 県としましては、総合戦略にございますとおり、行政間の効率的、効果的な連携につながるよう、引き続き、これらの取組に対し積極的な支援を行うとともに、活力ある和歌山の創造に向け、努力して参りたいと考えております。

(3)県内市町村の「総合戦略」策定にむけた支援と連携
《質問》松坂英樹 県議
 この問題の最後に、県内市町村の「総合戦略」策定にむけた支援と連携についてお伺いします。
 和歌山の誇る地域資源を活用し、新たなエネルギーを生み出すためには、広域自治体である県とともに基礎自治体の役割が決定的に重要であると考えます。県内市町村でも地方版総合戦略の策定作業が進行中ですが、この計画がコンサルまかせの金太郎飴のようなものではなく、しっかりとした議論を重ね、知恵を出した内容豊かな計画に練り上げることが求められています。市町村に対して県は、先行型の交付金獲得のために10月までの計画策定を呼びかけました。決して急がせているわけではないと言われながらも、市町村は長期総合計画や地域政策の様々な計画策定と重なり、その整合性の調整や時間的制約などに苦労しているのが実情だと思います。
 県内市町村の総合戦略策定にむけた進行状況はいかがでしょうか。県内市町村が地域性を生かした実効性のある計画を策定できるように県としても支援と連携をと、6月の特別委員会でも求めてまいりましたが、現在の状況、そして今後の方向性について総務部長より答弁を願います。

《答弁》 総務部長
 次に、県内市町村の総合戦略策定の状況でございます。7月に行ったアンケート結果によりますと、16団体において10月末までに、その他の団体においても年度内に総合戦略を策定する予定となっております。
 次に、県は、市町村の総合戦略策定の支援となるよう「和歌山県まち・ひと・しごと創生総合戦略」を早期に策定したといった、これも市町村支援の一環だと考えております。また、市町村の総合戦略が実効性のあるものとなるよう十分な意見交換や協議を行う場を設けるために「和歌山県まち・ひと・しごと創生連絡会議」を開催するとともに、市町村に対する情報提供や相談受付等を行う「ワンストップ」窓口を設置しているところでございます。
 引き続き、市町村の求めに応じたきめ細やかな支援を実施してまいります。

《要望》松坂英樹 県議
 各担当部長から答弁をいただきました。具体化についてはこれからということだと思います。この総合戦略の中で、なぜこの目標を設定し、どうやってそれを具体化させてゆくのか、今後とも議論を重ねてゆきたいと思います。今後、国の新型交付金もしっかりと活用しながら、今後の県の様々な分野の施策において、必要な拡充や新たな支援策がしっかりと講じられるよう要望をいたしまして、私の一般質問を終わらせていただきます。


        
                                     仁坂知事の答弁を聞く、松坂英樹和歌山県議(右)

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