2.地域医療構想の策定について
(1)政府の病床削減をどのように受け止め、今後、県としてどうしていくのか
(2)保健医療計画との関係はどうか
3.雇用問題について
(1)療養している方への就労支援について
1.県民の医療費負担の軽減について
《質問》奥村規子 県議
議長のお許しを得ましたので、通告に従い一般質問に入らせていただきます。
まず一項目目は、県民の医療費負担の軽減についてお尋ねいたします。
県民のくらしにとって、健康に対する不安が大きく、「病気になったらどうしょう、身体の心配よりもお金の心配で眠れない」などとよく聞かれます。しかし今、安心して療養できる環境ではありません。
今年の6月30日に閣議決定された、財政・経済政策の基本方針「骨太の方針2015」は、今後の社会保障の伸びを毎年5000億円に抑制するとしています。高齢化などに伴う社会保障費の「自然増」は、毎年8000億円から1兆円といわれており、削減幅は3000億円から5000億円にものぼります。
また、厚生労働省が7月2日に公表した国民生活基礎調査の結果、2013年の1世帯当たりの平均所得が、前年比1.5%(8万3,000円)減となったことが分かりました。生活が「苦しい」と感じている世帯の割合は、昨年の2014年7月時点で前年比2.5ポイント増の62.4%に上り、過去最高となっています。これは、1世帯あたりの所得の落ち込みが続いたことや、2014年4月に消費税率を8%に引き上げたことなどが影響していると厚労省は分析しています。1世帯当たりの平均所得はここ10年で最も低く、データが残る1985年以降では4番目の低さです。26年前とほぼ同じ水準となっており、非正規雇用の増加などが背景にあると(厚生福祉-時事通信社7月24日号)では伝えています。
社会保障の負担が生活を圧迫している状況の中で、いっそう社会保障の削減を押しすすめれば、国民から医療や介護・福祉などをますます遠ざけるものになってしまいます。保険料負担が重くのしかかり、受診抑制につながり、ひいては、いのちにかかわりかねません。
そこで今回は、4点について福祉保健部長にお尋ねいたします。
(1)国保の問題について
・各自治体の保険料・収納率などの現状はどうか
国保制度は被保険者の高齢化、低所得者層の増加など、制度の抱える構造的な問題により、その財政的基盤は極めて脆弱です。被保険者は低所得や無職の割合が高いなかで医療費が年々増加する状況にあって、負担額を増やすことにも限界があるということが、市町村国保広域化等支援方針のなかでも指摘されています。実際、被保険者のうち無職者が41.9%、60歳以上が48%占めています。
各自治体の、保険料・収納率などの現状はどのようになっていますか。福祉保健部長、お答えください。
《答弁》
福祉保健部長
平成27年度の市町村の保険料は、例えば、所得250万円の40歳代夫婦で未成年の子どもが2人などの一定の条件を設定して試算した場合、最高が56万700円、最低が34万9,600円で、県平均が44万1,540円となります。
市町村の収納率につきましては、平成25年度の現年分では、最高が99.56%、最低が88.37%、県平均が91.97%となっております。
・県民のくらしから考えて保険料が高すぎるのではないか
《質問》奥村規子 県議
先に述べたように、県民のくらしは大変厳しい状況です。保険料が高すぎるのではありませんか。県としてどう考えますか。
《答弁》
福祉保健部長
国民健康保険の被保険者には退職された方など無職の方が多く、また、年齢構成が高いため、医療費も高くなり、被用者保険と比べて保険料負担が大きくなるという構造的な問題を抱えております。
そのため、国民健康保険の保険料につきましては、所得に応じて応益割の7割、5割、2割を軽減する制度があり、平成26年度からは、5割軽減、2割軽減の対象者が大幅に拡大され、平成27年度も対象者の拡大が図られるなど、所得の低い方への保険料負担の軽減が図られております。
《再質問》奥村規子 県議
所得250万円4人世帯で、最高が56万700円ということです。同じ所得での昨年度と比較しますと、最高は、別の町ですが53万5,900円です。ことしは10町村で値上げされ、最高額もあがったわけです。
所得250万円の22%にものぼる保険税です。所得250万円ということは、サラリーマンなら収入では年およそ383万円です。2ヵ月近くの収入が保険税として徴収される。これは負担能力を超える保険税ではありませんか。
たとえば協会けんぽでは、およその計算ですが、この年収ですと約22万円くらいの保険料になります。国保はきわめて高くなっているわけです。
ここまで高騰した保険税が払えないために、保険証をとりあげられ、資格証が発行されている世帯が県内で、平成26年6月1日時点で3,488世帯あります。全日本民主医療機関連合会の調査では、保険証の取り上げなど経済的な理由で病院にかかれず死亡した人が、わかっているだけでも昨年、56人に上っています。
和歌山市の資格証発行世帯はことし3月末で1,528世帯ありますが、そのうち15%は所得ゼロ、22%は所得200万円以下です。低所得で保険料が払えない、その状況がうきぼりになっていると考えます。
国保料(税)があまりに高すぎるため払えないことで保険証をとりあげるというのは、国民皆保険制度を空洞化させるものではありませんか。この点でのお考えをお聞きします。
《再答弁》
福祉保健部長
保険料を納付できない特別の事情がないにも関わらず、1年以上滞納している方については、国民健康保険法第9条に基づき、被保険者証に代えて被保険者資格証明書を交付するものと定められております。
この制度は、納付意識が低い滞納者との面会機会を確保して保険料納付を促し、きちんと納付されている方との負担の公平を図り、医療保険制度の維持を図るために必要な制度であると考えております。
《コメント》奥村規子 県議
一問の答弁にありましたように、国保は無職、年齢構成が高いため、医療費が高くなるが被保険者の収入は低いという構造的な問題があり、国民皆保険を支える国保制度が重大な危機にあると思います。根本的な原因は、1984年に国保財政の50%だった国庫負担を23%にまで抑制したことです。
しかし、この構造的な問題を解決することなく、この国会で成立した国保法改定は、2018年度から国保の「都道府県化」を決めました。今年度はその第1歩として、すでに、財政運営広域化、つまり1円以上のすべてのレセプトを共同安定化事業とし、市町村から拠出金を出すやり方が導入されました。これは、国保料(税)の「平準化」をすすめるものであり、実際にこれまで医療費支出が低く、保険税が低かった町村などで値上げがおこっています。
このことから、都道府県化で分賦金を決め、標準保険料率と収納率目標を示すといったやり方になれば、いっそう高い保険料になるおそれがあるのではないでしょうか。
こうしたことにならないよう、県の姿勢がいっそう問われています。その点を指摘しておきます。
(2)後期高齢者医療制度の問題について
・広域連合の会計状況の現状
《質問》奥村規子 県議
後期高齢者医療制度の問題についてお聞きします。
後期高齢者医療制度は2008年の制度開始以来、「高齢者への差別医療」だと廃止を求める声が上がり続けています。民主党政権の下で一旦廃止が約束されていましたが、それも反故にされ制度が継続されています。しかも、保険料は改定のたびに値上げされています。
そこで、後期高齢者医療広域連合の会計状況の現状をお伺いします。
《答弁》
福祉保健部長
和歌山県後期高齢者医療広域連合の平成26年度の決算状況については、保険給付などを行う特別会計では、歳入が約1354億円、歳出が約1313億円で、差し引き約41億円の黒字となっており、ここから翌年度に返還する国庫負担金等の予定額を除いた剰余金は約5億6千万円となっております。
・保険料の引き下げと広域連合に対して県としてどう考えるか
《質問》奥村規子 県議
次に、保険料改定時には県が管理する財政安定化基金を取り崩して保険料の低減にあてることができると思いますが、2012年改定、2014年改定ではまったく取り崩さず、連続値上げとなりました。保険料が払えず、短期保険証が交付されたり、差押が行われる高齢者も出ています。保険料の引き下げと広域連合に対して、県としてどう考えますか。
《答弁》
福祉保健部長
後期高齢者医療の保険料は、和歌山県後期高齢者医療広域連答合が2ヵ年の財政運営期間ごとに改定を行っており、次期改定は平成28年4月となっております。
和歌山県後期高齢者医療財政安定化基金は、原則として、医療費の急増による財源不足など短期的な変動に対応するためのものであり、保険料の増加抑制に活用することは特例であるため、まずは和歌山県後期高齢者医療広域連合が剰余金を活用することになります。
《再質問》奥村規子 県議
平成26年度に保険料値上げがおこなわれましたが、決算では約41億円の黒字、剰余金約5億6千万円ということです。この剰余金というのは、保険料を集めすぎた分にあたるということになります。
昨年度の保険料値上げがどうだったのかが問われる状況です。剰余金を後期高齢者に返さなければならないと思います。
県は次期改定にあたり、剰余金の活用は当然、財政安定化基金取り崩しを含め、保険料をひきあげないよう、後期高齢者医療広域連合との協議に、ぜひ、のぞんでいただきたいと思います。
また、保険料特例軽減の廃止が打ち出されています。特例軽減は、後期医療反対の世論に押されてつくられたもので、年金収入の低い方やこれまで被扶養者だった方に9割、8.5割、保険料を軽減するものですが、これが廃止されますと、9割軽減の人は3倍、8.5割軽減の人は2倍に、扶養家族だった方は5~10倍もの負担増が強いられます。この継続を求めるべきだと考えますが、いかがですか。
《再答弁》
福祉保健部長
国において予算措置として実施されております後期高齢者の保険料軽減特例については、平成29年度から原則的に本則に戻すこととされており、その実施に当たっては、所得の低い方に配慮しつつ、急激な負担増となる方については、きめ細かな激変緩和措置を講ずるとしています。その具体的内容については、国において検討されているところです。
(3)子どもの医療費助成に係る国保の減額調整措置について
・国のペナルティの見直しの進捗状況
《質問》奥村規子 県議
現在、県では保護者負担を軽減するため、市町村と連携しながら、就学前の乳幼児の医療費補助がされています。
さらに、各自治体の中に対象を広げてほしいという声が強く、県制度以上に小学校・中学校・高校卒業まで医療費の補助が実現しています。ある市では新日本婦人の会のみなさんが14回もの請願を出すなど、今も運動が広がっています。
現行では、市区町村が独自助成すると、国からの負担金が減額されるペナルティの仕組みがあります。厚生労働省は、国保の減額調整措置を見直すうごきがあると聞きますが、進捗状況をお聞かせください。
《答弁》
福祉保健部長
地方単独事業として子どもの医療費に係る一部負担金の減免を行った場合、国は、受診回数が増加することにより医療費が増加するという観点から、増加したとみなされる医療費について、国民健康保険の国庫負担の対象とせず、減額措置がとられております。
この減額措置につきましては、従来から全国知事会などを通じ、国に対して廃止するよう強く求めておりましたところ、少子社会における子どもの医療のあり方に関する検討会が設けられることとなり、今後、この検討会の場で、子どもの医療費助成に係る国庫負担金の減額措置も含め議論が行われるものとなります。
《要望》奥村規子 県議
子どもの医療費の助成対象を広げる市区町村が急増しています。厚生労働省の調査では、通院で中学卒業、またはそれ以上まで助成する自治体は1,134市区町村、65%にのぼっています。2004年では11自治体しかなく、10年で103倍に増えています。
歯がボロボロになっても、経済的理由で歯科に通院できない子どもがたくさんいます。子どもたちの健康や未来に関わる問題ですので、ぜひ、和歌山県としても、子育てしている保護者のみなさんの切実な願いに応えて、来年の予算で対象年齢の拡充を考えていくべきと思います。
(4)差額ベッド料の免除や高額療養費制度の活用の周知徹底について
《質問》奥村規子 県議
医療費の軽減について最後に、これは少しでも負担軽減につながるということから、差額ベッド料の免除や高額療養費制度の活用の周知徹底についておたずねします。
入院すると「差額ベッド料」が請求されます。差額ベッド料とは、保険のきかない部屋代のことです。厚労省は個室から4人部屋で徴収を認めています。全国で約26万床あり、全病床の19%を占めます。患者負担額は、個室で平均1日7,563円、最高は36万7,500円(2013年7月時点)です。
差額ベッド料は、高額療養費(1ヵ月の患者負担上限額)の対象になりません。
2014年3月25日厚労省通知保医発0326第1号では、差額ベッド料を請求できない場合、患者に特別療養環境室に係る特別の料金を求めてはならない場合としては、具体的には以下の例を挙げています。
① 同意書による同意の確認を行っていない場合(同意書に室料の記載がない、患者側の署名がないなど内容が不十分である場合を含む)
② 患者本人の「治療上の必要」により特別療養環境室へ入院させる場合
③ 病棟管理の必要性等から特別療養環境室に入院させた場合であって、実質的に患者の選択によらない場合
としています。
入院治療の際、保険適応でない差額ベッド料の負担や高額の治療費の負担を考えると、必要な治療ができないという場合があります。差額ベッド料の免除や、ひと月間に診療を受けて支払った一部負担が自己負担限度額をこえた場合に申告すればこえた分が支給される「高額療養費制度」について、どのように周知されていますか。
《答弁》
福祉保健部長
差額ベッド料の取扱いにつきましては、厚生労働省から留意事項が示されており、直近では平成26年3月26日付け厚医発0326第1号の通知の中で、特別療養環境室に係る特別の料金を求めてはならない場合の具体例が記載されております。
当該通知につきましては、近畿厚生局を通じ保険医療機関に周知されているところです。
高額療養費制度につきましては、保険者である市町村において、加入者にリーフレットを送付するなど周知を図っております。
なお、「限度額適用認定証」の交付を受ければ、当該認定証を医療機関の窓口に提示することによって、同じ医療機関での支払いは限度額までとなります。また、後から高額療養費を申請することもでき、高額療養費の支給対象となる方につきましては、市町村からその旨の通知が届くこととなっております。
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2.地域医療構想の策定について
(1)政府の病床削減をどのように受け止め、今後、県としてどうしていくのか
《質問》奥村規子 県議
2項目目は、地域医療構想の策定についてお聞きします。
強行された医療保険法改定では、都道府県が策定する医療費適正化計画の強化も盛り込まれました。昨年成立した医療・介護総合法では、地域医療構想による病床、削減が導入され、それとリンクさせて、医療給付費の伸びを県の責任で抑制していく仕組みづくりがおしつけられようとしています。
政府は「入院から在宅へ」の掛け声で、病床数の削減、特に急性期病床を大幅に削減し、患者を在宅へ押し出し、医療費を抑制する方針です。
そのために、医療機関からの病床機能報告制度をつくり、都道府県は2015年度中に地域医療構想を策定することになりました。2025年の人口推計をもとに、いかに病床削減・再編をすすめるかの枠組みを示す、地域医療構想策定ガイドラインが出されています。そして、6月15日には政府の推計を発表し、2025年には全国で入院ベッド数を今の1割ほどにあたる16万~20万床削減し、各都道府県ごとに望ましいベッド数をあげました。それによれば、和歌山県では2013年の13,100床を、2025年には9,500床に、削減率27.5%、3,600床もの削減、という数字があげられたわけです。
こうしたやり方で、必要な医療体制が守られるのでしょうか。県として、政府の病床削減をどのように受け止め、今後どうしていくのかお聞きします。
《答弁》
仁坂知事
地域医療構想は、二次保健医療圏ごとに急性期、回復期、慢性期から在宅に至るまで、将来の医療需要を推計し、病床機能別の必要病床数等を県が定めるものでございます。
また、在宅医療に誘導するわけでございますので、その前提として、在宅医療をちゃんと行えることを含む地域包括ケアシステムを作り上げていかねばならないということで、これは結構大変なことでございます。
この地域医療構想に関し、今回政府が示した病床削減の推計値がございます。これは、国の地域医療構想ガイドラインで示した計算方法により、全国の人口推計等を用い、計算したあくまで参考値であります。
そうはいっても、和歌山県の場合、今後、人口減少もあり、将来の医療需要にふさわしい一定の病床削減は必要となってくると思われます。
病床再編の作業は、県がやらないといけない。地域医療構想を策定し、進めることとなっておりますけれども、一方で、医療制度の根幹をなす診療報酬、これはいわば、量を考える時の価格みたいなものですが、これは、国が決めておるために、大変難しい、価格で誘導することができない、まあこういうことでございます。
ただ、医療費の高騰を国民が全体として負担できるかという問題を背景に法律でも決まったことでございますので、今後、地域の実情を踏まえ、市町村や医療関係者等の意見を十分聞きながら、地域医療構想を策定し、その実現に取り組んでいくしかないというふうに思っております。
(2)保健医療計画との関係はどうか
《質問》奥村規子 県議
保健医療計画との関係で、どのように位置づけられるのかお聞きします。
平成25年3月第六次保健医療計画に「保健医療計画は、良質かつ適切な医療を効果的に提供する体制を構築し、県民のみなさんの医療に対する安心・信頼の確保を図るために、医療法に基づき策定するものです」と述べられています。
保健医療計画には、各保健医療圏ごとに現状と課題、圏域での取り組み方向が書かれています。今後、地域医療構想が策定されますが、保健医療計画との関係はどうなりますか。
《答弁》
福祉保健部長
地域医療構想は、二次保健医療圏ごとに将来の医療需要に見合った地域の医療提供体制の目指すべき姿を示すものであり、医療法に基づき保健医療計画の一部として新たに策定するものです。
次期保健医療計画においては、今回策定する地域医療構想の内容を組み込む形で、改定を行ってまいります。
《再質問》奥村規子 県議
地域医療では、医師不足や看護師不足が進み、医療崩壊と言われるほど深刻な状況になっている地域もあります。また今でも、病院から早期退院がせまられ、リハビリもないまま在宅に戻される、介護に移行させるといっても、特別養護老人ホームの待機者が県内で約2,600人もいるなか、ショートステイの長期利用など、高齢者が漂流しているといった状況もあります。
国の病床削減政策を県内にあてはめるのではなく、本当に地域の実情にみあい、医療関係者、住民の意見を反映させていくことが必要です。
また、保健医療計画では、5疾病5事業ごと、また圏域ごとに課題がだされています。たとえば、産科・小児科医師の地域偏在や分娩を取り扱う医療機関の減少への対策、2次救急医療体制の充実などがあげられています。こうした医療供給体制の充実の課題を反映した地域医療構想を策定していくのかどうか、県の姿勢をおたずねします。
《再答弁》
福祉保健部長
保健医療計画では、がんなどの疾病、または、救急医療など事業ごとの医療提供体制について、現状と課題、そして施策の方針を示しています。
これに対して、地域医療構想は、総体としての医療需要を圏域ごとに推計し、必要な医療提供体制の構築を目指すものでございます。
先ほども申し上げたとおり、次期保健医療計画策定にあたっては、地域医療構想で定めた事項を盛り込んで、安心で信頼できる医療提供体制を目指していきたいと考えています。
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3.雇用問題について
(1)療養している方への就労支援について
《質問》奥村規子 県議
3項目目は、雇用問題についてお聞きします。
病気や障害などあっても、安心して働ける環境づくりが必要です。ここで問題にしたいのは、障害者認定に至らない場合や、軽度の脳卒中、心疾患、糖尿病、精神疾患などの治療しながら安心して働くことが出来ることは、大変生きがいにつながるということです。憲法第27条では、「すべての国民は勤労の権利を有し、義務を負ふ」と謳われています。
最近、40代前半の男性の方から、相談を受ける機会がありました。彼は、てんかんで3級の障害者手帳を持っていましたが、2年間薬物治療にて発作の発生が見られず、障害手帳を受給することができませんでした。年金生活の両親と同居しているため、何とか日々を送っていますが、ご本人は「年齢的にも親孝行しなければならないのに・・、働きたい」と言われています。ハローワークにも通っています。しかし、主治医から運転や不規則な仕事は禁止されています。
このように、療養しながら働くということは、大変困難な状況です。企業にとっても受け入れが難しい問題ですが、県としての対策はどうなっていますか。また、企業への働きかけはいかがですか。
《答弁》 商工観光労働部長
長期にわたり病気治療をされている方や、障害があるものの手帳を交付されていない方の就労につきましては、症状や治療の状況などにより仕事に制約がある場合が多いことから、働く意欲のある方に対しては、きめ細やかな就労支援が必要であると認識しています。
県では、就職の総合相談窓口である「ジョブカフェわかやま」において、症状やこれまでの就労経験等を詳しくお聞きしながら、治療と就労を両立するためのアドバイスを行ったり、新規就労を希望される方にはハローワークにつないで就労が可能な職場を紹介しているところです。
また、長期治療中の方などの就労には事業者の理解が不可欠なことから、企業への働きかけが重要であると考えています。
国においては、障害者手帳の有無にかかわらず、てんかんや精神疾患のある方などの雇用を促進するために、職場定着や職場復帰などに取り組む事業者を支援する助成制度が設けられております。
また、障害により長期間、仕事をするにあたって配慮が必要な方などに対して、障害を理由とする差別的取扱の禁止や就労に支障となる事項の改善を事業者に義務づけた改正障害者雇用促進法も平成28年4月から施行されます。
県といたしましては、事業者に対して、企業研修会などの場を利用して、このような助成制度や法改正の趣旨を周知徹底するとともに、治療と就労の両立について理解を求めてまいります。
《要望》奥村規子 県議
障害者手帳の有無にかかわらず、てんかんや精神疾患のある方などの雇用を促進するためにということが進められているという答弁でした。その点は、ぜひとも県として積極的にお願いいたします。
病気で多種多様の、いろんな制約をかかえながら治療していかないといけない方が、けっこういらっしゃると思います。そういった人たちも含めて働ける環境を良くしていくことについては、企業の協力や理解などが必要だと思いますので、県としても啓発や、事業所のみなさんと一緒になって具体的な受け入れ方法を考えていくことなどをすすめていただきたいと思います。
ここで紹介したいのが、内閣府が昨年実施した、がん対策に関する世論調査です。がん治療で2週間に1回程度通院が必要な場合、「働き続けることができる環境にはないと思う」という方が「どちらかといえばそう思う」という方も含めると、3分の2にのぼるという調査結果が出ています。また、5割以上の方がその理由として、「代わりに仕事をする人がいないし、いても頼みにくい」「職場が休むことを許してくれるかどうかわからない」「休むと職場での評価が下がる」と、事業者の理解にかかるものをあげています。
治療と就労の両立は非常に難しいものがありますが、働く意欲のある方が働くことのできる社会づくりは、生きがいを持って自立した生活をおくるためにも大変重要なことだと思います。そのためには、がんに限ったものではありませんが、先ほどのアンケート結果にもあるとおり、行政はもちろん社会全体、とりわけ事業者の理解が重要です。商工観光労働部長は「事業者の理解が不可欠であり、理解を求めていく」と答弁されました。
県では障害者雇用率が2.44%と、法定の2.3%を上回って障害者の雇用をすすめているということです。また、病気で長期治療が必要な職員には病気休暇の制度を使って仕事をしながら治療ができる環境が整えられていますし、病気等により、たとえば自動車運転に支障がある職員の方には運転の業務をさせないなど、治療と仕事が両立できるよう細かい配慮がなされていると聞いています。中小企業では体制的になかなか難しい問題もあると思いますが、県の取り組みなども紹介しながら、ぜひ、障害のある方や病気で長期に治療が必要な方が意欲と希望に応じて働くことができるよう、事業者への啓発や協力を得られるように、これからもしっかりと施策をすすめていっていただくことを要望します。