2015年9月県議会 文教委員会 雑賀光夫副委員長の質問概要記録

8月31日

《質問》雑賀光夫 副委員長
 (教育委員会が、2013年8月に小学校の男性教諭に行った懲戒免職処分を、今年8月28日、県人事委員会の判定に基づいて停職3ヵ月に修正した件についての議論の中で)人事委員会の決定に違和感を持つのは、皆さんと一緒である。ただ、事の形式論理として、教育委員会としては適切であると今も考えている処分について、人事委員会に否決された。そうなると、教育委員会として持っている物差しを検討することが求められてくるのではないかと思うが、どう考えるか。
 また、文教委員会としてこれだけ議論になっている問題を、文教委員会として人事委員会に意見を聞く筋道はあるのだろうか。

《答弁》 宮下教育長
 個々の事案について、私どもは吟味し、処分している。実際、幾つかの処分があったが、内容が個々に異なる。私どもは、わいせつ行為を含め、子供たちを守るということが原点であり、譲れない。今の時点で、物差しを変えるつもりはない。
 いろいろな意見があると考えるが、個々の事案をしっかり吟味してそれに沿った対応を考えていきたい。それが教育長としての立場である。
 もう1点については、私から答えられない。
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《質問》雑賀光夫 副委員長
 この間、非常に考えさせられたのは、岩手県の中学2年生が自殺したという、いじめ自殺事件である。この事件を受けて、文部科学省でもいじめと自殺対策の通知を出された。新聞報道でしか見ていないが、報告が十分でないので、もう1回報告するよう通知が出たようである。どういう通知が出て、どんな対策がなされたか。

《答弁》 義務教育課長
 全国の痛ましい事件を受け、文部科学省は、平成18年にいじめ件数のとらえ方を、それまでの発生件数から認知件数へと変更した。平成24年11月にはいじめの緊急調査を行っており、各学校はこれまで以上に子供のSOSを見逃さず、いじめの認知を積極的に進めている結果、認知件数にあらわれてきているところである。
 いじめ問題を解決するためには、いじめの兆候にいち早く気づき、早期対応を図ることが大切であり、本県のいじめ認知件数についても年々増加してきており、学校による組織的ないじめの認知が進んでいる。
 委員ご質問の文部科学省からの通知については、いじめの認知件数が都道府県によってかなり差があることから、認知件数をもう一度調査するという内容のものである。本県については、認知件数が多いという結果が出ている。このことは、本県では、各学校の先生方がアンテナを高くして少しでもいじめの兆候を見逃さないとの思いで取り組んでいる成果が出ていると思っている。

《質問》雑賀光夫 副委員長
 私も、8月4日に出た文部科学省の通知を読んだ。文部科学省も、あれもやれ、これもやれといろんなことをたくさん書いている。その上で、9月には自殺が多いので気をつけようと書いてあった。
 私は、岩手の事件を新聞報道で見てまず思ったのは、子供が日記で訴えてきたとき、その担任の先生が隣の先生に「こんなふうに子供が書いてきたが、どうだろうか」と、その一言の相談がなぜできなかったのかということである。後から新聞報道を見れば、その先生は、「あのときは自分で解決したかった。だから、相談せずに自分で解決しようと思って抱え込んだ」と言ってお父さんに謝ったということであった。やっぱりそうだったのかと思った。
 若い先生が孤立しているのではないか。どんなことでも相談できる関係でなく、ばらばらになっているのではないか。言いかえれば、自分の弱さを人に見せたくない、自分でできると人に見せておかなければいけないというようなプレッシャーを感じているのではないか。文部科学省はいろんなことを書いてくれており、その1つ1つは大事なことであるが、一番大事なことは、先生が気になることを、子供のことを、自分ですぐに解決できなくてもいいから隣の先生に相談できるような学校になることではないかというのが、私がこの事件で思ったことである。いろんな思い方があると思うが、私が考えたことを含めて教育長はどう考えるか。

《答弁》 宮下教育長
 新聞報道であるので、もっといろんな要素が入っているかもしれない。
 今のご質問については、私どもがいじめの問題に対応するときに1番目に挙げていることである。私どももマニュアルはつくったが、マニュアルというのは最低限こういうことはしっかりやっていこうということで全ての教員に配布したものである。この前、初任教員の皆さん方にも、「これはしっかり読んでください。いじめは、1人では解決できない。周りの人たちとチームを組んで相談してやっていくことが極めて大事である」と言った。いじめの問題も、不登校の問題もそうであるが、学校の中で1人でやることではなく、管理職も含めて全員でやっていくということが学校の中で一番大事なことであると思っている。

《質問》雑賀光夫 副委員長
 私は、そういうことを教師仲間で相談することが大事だと思う。その点で、教師というものは、決して完全なものではないし、教育の仕事というのは難しいものである。どんなベテランでも完全ではない。
 私は、教師に、特に校長先生方に、自分が若いころに失敗した経験をしっかり若い人に学校でも語ってほしいとよく言う。私自身も県議会の席上で自分の失敗した経験を語ったことがある。例えば、どうしようもなくなって子供を殴ってしまったという失敗の経験である。そのときはもう自分は教師をやめたいと思ったが、教師というのは失敗の経験というものが誰にでもある。あのときは山口教育長であったが、教育長にも失敗した経験をしゃべってもらったことがある。
 岩波新書で、教育評論家の金沢嘉市さんという人の「ある小学校長の回想」という大変有名な本が出ている。彼の本は何から始まるかというと、自分が若い教師だったときの失敗の経験から始まる。一生懸命子供を教えて上の学校へ行かせたが、よく考えてみると就職する子供たちをほったらかしにしていたことに気がついて愕然として、すごく反省したという経験から、「ある小学校長の回憩」という本が始まる。私は、すばらしい成功体験を語るよりも、教師は失敗の体験を語るというのがものすごく好きであるので、金沢嘉市さんという人の本が好きであるが、校長先生は学校現場で若い先生に「こんなにしないといけない」ということを言ったり、よいことを言う以上に、自分の若いころの失敗した経験をしっかり語ってほしい。それで教師というのは失敗しながら一人前になっていくんだと若い先生は思って、失敗したことを決して隠さず、自分ができないことを人に隠さず、自分で抱え込むのでなく、困っているんだ、助けてくれと言えるような学校になることが大事だと思っている。
 それで、教育長にも私たちもこんな失敗した経験があるという話をしてもらって、校長先生方には学校現場で自分の失敗の経験をしっかりと先生方に語ってもらって、困っている先生に困っていることを言いやすい学校にしてくれればいいかと思うが、私が言っていることについてどう考えるか。

《答弁》 宮下教育長
 もちろん、私も失敗だらけの人間でここまで来たと思っているが、ただし、私は、いじめの問題から出発するとしたら、失敗は許されないと考えている。命にかかわる問題である。若い教師が1人で抱え込めば命にかかわる問題にもなるとしっかり認識する必要があり、学校長なり周りの人たちに助けを求められるような関係づくりが大切である。その上で、さまざまな学校教育活動の中で、クラブ運営や学級運営から始まって、諸先輩方が積み重ねてきたことを、成功したことや失敗したことを取りまぜてアドバイスができるようになるということが一番よいと思っている。私もいろいろなところへいろいろな話をしてきたつもりであるが、肝心なところは外さないようにと思いながらさせていただければと思っている。

《要望》雑賀光夫 副委員長
 最初に言ったように、今度の事件で私が一番気にかかったのは、なぜこの先生が隣の先生に相談できなかったのかということである。いじめに対する研修会で話をすることも大事であるし、いじめがあればどんな小さなことでも報告しなさいと通達を出すことも大事であるが、若い先生が自分で解決できなければ能力がないと思われるのではないかと思わずに、困ったことについて同僚などと話しやすい関係があれば、岩手の悲劇は防げたのではないかと強く思っている。
 そういう点で、そういうことをしっかり報告するようにと言うだけでなく、上に立つ者が、私もこんな失敗をたくさんしたという話をしながら、若い先生が弱みを隠さずに人前でさらけ出せるように、そんな学校をつくっていただきたい。


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