2016年12月県議会 雑賀光夫 一般質問 概要記録   議会中継録画
  

  
20161212

1.ため池の安全対策について
(1)「加速化計画」の進展状況
(2)改修を要するため池の選定はどうしてきたのか
(3)ハザードマップの作成状況
(4)重根・新池の改修計画について

2.運動「部活動」について
(1)専門家による調査と有識者会議提言をうけて
(2)教育委員会の指導の徹底
(3)外部指導者について

3.南紀・はまゆう支援学校の統合
(1)どういう支援学校をつくるのか
(2)視覚などの障害への対応
(3)教員定数はどうなるのか
(4)学校づくりに保護者・教職員の声の反映を

4.部落差別解消法と人権問題
(1)部落差別解消法と実態調査
(2)人権相談に見る人権課題


1.ため池の安全対策について
《質問》雑賀光夫 県議
 議長のお許しを得ましたので質問に入らせていただきます。
 第一の柱は「ため池改修加速化」についてであります。
 ため池改修についてお伺いするのは、何度目かになります。県のため池改修は、レベルアップしてきていることを評価しながら、さらに県民の安全をはかっていただきたいと思います。
 最初にこの問題を取り上げたのは、2005年6月県議会、10年余り前のことでした。当時、県では、その前年度から3カ年計画で420ヵ所のため池について耐震診断を実施しはじめておりました。ところが当初、地元で心配の声がある慶権寺(けごんじ)池が、診断リストに入っていなかった。そこで、ぜひとも診断に加えてほしいとお願いしたところ、海草振興局は、50ヵ所の診断のトップに慶権寺池を調査してくれたのです。最初の目視による第一次調査には、私も地元の皆さんとともに参加しました。すると、ボーリング調査が必要だということになり、真っ先に改修が実現したのです。
 それ以後、危険ため池、耐震診断が必要なため池を選び出すことの難しさということが、私の大きな問題意識になっておりました。
 その後、2008年5月の集中豪雨で紀の川筋の松池・桜池という二つの池が決壊寸前という事態がおこりました。この松池は第一次調査だけ、桜池は、第一次調査の対象にもなっていなかったのです。
 そして2011年、いま県がとりくんでいる「ため池改修加速化」のきっかけになった愛宕池の全面決壊という事故がおこります。このときは、集中豪雨というような雨でもなかった。下流に人家が少ないから第二次診断をしなかったと説明されましたが、ともかく、そんな池が全面決壊した。
 そこで知事は、「ため池点検の加速化」を決断されたことは、評価するものです。
(1)「加速化計画」の進展状況
 そこで第一に、農林水産部長にお伺いいたします。「加速化」計画の進展状況についてお聞かせください。

《答弁》 農林水産部長
 県下には、約5,500箇所のため池が存在し、農業用水確保のために活用されております。
 県では、平成24年度にため池決壊に対する安全度向上のため、地域の実情に応じた「ため池改修加速化計画」を策定し、比較的規模の大きいかんがい受益面積5ヘクタール以上かつ貯水量1,000立方メートル以上の772箇所の内233箇所について、県が事業主体となり改修に取り組んでおります。
 平成28年度現在では、49箇所にて改修に着手しており、平成38年度までに233箇所を整備する計画で進めております。
 改修にあたりまして、老朽化が進んでいるため池は、全面的に改修し、その他、豪雨対策としては、雨水を安全に流下させるため、洪水吐けを大きくする改修や、地震対策として堤体にひび割れなどの変状が生じた場合に、水位を低下させ決壊を防ぐ緊急放流施設の設置など部分的な改修を行っています。

(2)改修を要するため池の選定はどうしてきたのか
《質問》雑賀光夫 県議
 私は、改修が必要なため池を選び出すことのむずかしさということを申し上げました。いま、お答えいただいた772ヵ所については客観的な基準で選ばれている。そのうち233ヵ所を選び出して改修が必要なため池としたわけですが、どのようにして選び出しているのでしょうか。

《答弁》 農林水産部長
 改修を要するため池につきましては、市町村の協力を得て実施しましたため池点検による危険度判定結果や、浸水想定区域図を基に算定しましたため池下流の想定被害額により、全面改修あるいは部分改修を要するため池対策県計画案をとりまとめた後、関係市町村との協議を経て改修するため池233箇所を選定しております。
 その他のため池におきましても、市町村によるため池ハザードマップ作成の促進や、市町村とともに水利組合などの管理者に対しまして、日常点検や維持管理の重要性などの啓発に取り組んでおります。

(3)ハザードマップの作成状況
《質問》雑賀光夫 県議
 このたび、私の地元では、「重根(しこね)新池」という池の安全対策について、地元自治会からも要望もあがっています。私も心配の声をお聞きしたので地元の友人に誘われて現場に行ってまいりました。友人が「草ぼうぼうで大変だよ」というのでそのつもりで行ったのですが、行ってみるときれいに草が刈りこまれている。水利組合が管理してくれている。ただいまの答弁でも、地元水利組合のこうした管理というものもため池の安全のためにだいじなものだということがよくわかりました。
 友人は、「ハザードマップで説明があったので、一気に関心がたかまった。県が努力してくれているのがよくわかる。ぜひとも安全対策をしっかりやってほしい」と語りました。その後、地元自治会からの「要望書」という運びになったようです。
 ハザードマップというものは、まさかの時の避難のためにも、安全への注意喚起のためにも大切なものだと思いますが、ハザードマップの作製は、どういう計画でどこまですすんでいるのでしょうか。

《答弁》 農林水産部長
 ため池ハザードマップの作成につきましては、市町村が事業主体として順次進めており、県はかんがい受益面積2ヘクタール以上のため池1,342箇所の浸水想定区域図を作成し、市町村に提供することにより作成支援をしているところでございます。作成状況につきましては県全体では平成28年度末で1,342箇所のうち942箇所が作成される見込みです。このうち海南市におきましては、平成28年度末で124箇所のうち9箇所、また紀美野町におきましては、52箇所のうち1箇所を作成する見込みであります。
 今後は両市町を含め進捗の遅れている市町村に対して、重点的に早期のハザードマップ作成を働きかけてまいります。

《コメント》雑賀光夫 県議
 全県と比べて、海南海草ではハザードマップ作成が遅れていることがわかりました。県でもしっかり督励していただけるようですが、地元でもしっかりお願いしていきたいと思います。

(4)重根・新池の改修計画について
《質問》雑賀光夫 県議
 「重根新池」の場合、池の下には人家が大変多く、みなさん心配されるのはもっともだと思います。この池の安全対策・改修計画はどうなっているのか、お聞かせください。

《答弁》 農林水産部長
 海南市重根地内にある重根新地の改修については、海南市が事業計画書を策定し、県が行う改修事業として平成29年度新規採択に向けて手続きを進めております。
 事業着手後は、池下流域の安全度向上のため早期に事業完了するよう努めてまいります。

《要望》雑賀光夫 県議
 来年度から事業にとりかかっていただけるのは、大変ありがたいことです。地元自治会の要望も十分聞き取って進めていただけますようお願い申し上げます。


2.運動「部活動」について
《質問》雑賀光夫 県議
 第二の柱は、運動部活動についてであります。
 6月県議会で中学校の運動部活動についてお伺いしました。あの時は、教育委員会も私と同じ問題意識でおられたと思いますが、大阪体育大学と連携して調査し、有識者会議の意見を聞くということで、何を聞いても「調査」と「有識者会議」まちで、はなはだ質問しにくいと申し上げました。
(1)専門家による調査と有識者会議提言をうけて
 どうやら、「調査」と「有識者会議」が終わってその報告書も出されています。「調査」から明らかになったこと、有識者会議から提言を受けた県教育委員会としての今後のとりくみについて、教育長にお伺いします。

《答弁》 宮下教育長
 中学校の運動部活動につきましては、大阪体育大学の協力を得て実施した実態調査から、9割の生徒が活動を「楽しい」と感じ、運動部加入生徒は、非加入生徒に比べ、生活リズムが良い傾向が見られます。また、約8割の教員が指導にやりがいを感じ、ほぼ全ての教員が生徒の将来に役立つ活動であると答えています。反面、練習日数が多い部に所属している生徒ほど、「疲れがたまる」と感じてございます。
 県教育委員会では、本調査結果を踏まえた有識者会議からの提言を受け、1週間の内、1日は休養日を設ける等、中学生期の発達段階に応じた今後の望ましい運動部活動の在り方を示した「中学校運動部活動指針」を作成しているところです。
 また、「運動部活動指導の手引」につきましては、本指針の内容を盛り込んだものに改訂し、校長会や研修会等を通じて、指導の徹底を図ってまいります。

(2)教育委員会の指導の徹底
《質問》雑賀光夫 県議
 6月県議会の質問で、「私も若さに任せて土日も出て行って、子どもたちと一緒にやった」という話をしました。やんちゃな子供たちの集まった野球部でした。
 「あの子どもたちに、日曜日は野球部は練習なしにする」といったら、子どもたちはどんな反応をするだろうか。
 「ワエら野球楽しみで学校へ来てるのに、それを取り上げるんか」
 当時、私が担当した野球部の子供たちは、そんなものの言い方をしかねない子どもたちでした。
 さらに「野球部やったらあかんのやったら、日曜日は野上八幡の石段でトレーニングや。野球部とちがうぞ。一年生、強制やないぞ。来たいもんだけこい」。大きな3年生ににらまれた1年生は、野上八幡の石段でしごかれる…。
 私は、かけだしの教員の時代を思い出して、そんなことを考えました。
 いま、やんちゃな子どもの話をしましたが、教師だって抜け道を考えかねない。それほど、部活動の規制というものは、むずかしいのです。
 これまでも必要な指導を行ってきているが、なぜ、定着しなかったのか。そのことを踏まえた教育委員会の指導の徹底について、教育長のお考えをお伺いします。

《答弁》 宮下教育長
 中学校運動部活動の運営につきましては、教員が生徒の期待や保護者の要望に応えようと熱心に取り組むことや、休みなく練習することが成果につながるとの思いから、休養日や練習時間の設定については、定着してこなかったものと考えてございます。
 これらを踏まえ、実態調査の分析により得られた休養日の必要性等の内容を指針に示し、県内の中学校で、校長のリーダーシップのもと保護者の理解を得ながら、確実に実施されるよう、市町村教育委員会や中学校体育連盟と連携し取り組んでまいります。

(3)外部指導者について
《質問》雑賀光夫 県議
 私が指導した野球部は、その後強くなり、マナーもよくなり、県大会にも出ました。私を助けてくれたのは外部指導者でした。最近、那賀病院にもおいでになった名医として名高いM先生は、私の高校の同級生でした。当時、和歌山医科大学の野球部員でした。
 「雑賀、野球部もってるんか。助けてやろうか」といってきてくれた。バッティングピッチャーまでしてくれた。ストライクがきれいに入るから、練習は効率よくすすむ。友達だから、私をちゃんと立ててくれる。
 外部指導者というのは、こんなにうまくいけばいいのですが、子どもが外部指導者のいうことは聞くが、先生の言うことを聞かなくなると最悪です。
 外部指導者をどんな具合に選ぶのか、教育長のお考えをお伺いします。

《答弁》 宮下教育長
 外部指導者につきましては、本年度、県では中学校の運動部に、当該校長及び5市1町の教育委員会から申請を受けた21人を派遣してございます。また、外部指導者には、学校における運動部活動の意義を踏まえた指導を行うよう、運動部活動等推進検討会議を通じて指導しています。
 なお、市町村におきましても独自に57人の外部指導者が派遺されてございます。
 今後も運動部活動が学校教育の一環であり、その意義やねらいを十分理解した上で指導できるよう、県及び市町村が連携して外部指導者を対象にした研修会を開催し指導してまいります。

《コメント》雑賀光夫 県議
 教育長の指導性に期待いたします。


3.南紀・はまゆう支援学校の統合
《質問》雑賀光夫 県議
 第三の柱は、南紀・はまゆう支援学校の統合についてです。
 南紀・はまゆう支援学校の統合が計画され、パブリックコメントも行われました。
 先日には、地元西牟婁の県会議員のみなさんと一緒に、私も教育関係者であったというので特別に呼んでいただいて、保護者の皆さんと懇談もしてまいりました。
 はまゆう支援学校は、知的障害を中心にした学校ですが、南紀支援学校というのは、肢体不自由児の支援学校であります。肢体不自由というのは、車いすに乗っているのかというとそうではありません。足が不自由で車いすに乗っているというだけなら、普通の小中学校に通うでしょう。さまざまな病気で重複障害をもって、寝たきりの子どもが多いのが、肢体不自由児支援学校であります。
 先日、県教職員組合の教育研究集会で、重度障害の子どもとかかわった教育実践を聞かせていただきました。授業風景をビデオにとっての実践報告でした。
 ベッドに寝たきりの子どもに、先生は手作りの人形をつかってお話をします。子どもは、言葉を話せませんが、目は、人形の方に向けていることはわかります。そして、ときどき、舌を動かして、感情を表現するのです。先生は「一人で授業すると、人形を動かすのに一生懸命で、舌で表す感情表現を見落とすんです。」といわれました。助言者の先生が、「舌を動かした感情表現を見つけて、そのとき『K君、おもしろかったんだねえ。ありがとう。』と子どもの手を握ってあげることが大事だ」と言われました。
 こんな具合に、人と人の交流を通じて、子どもの発達を支援していく、重度重複障害児の教育の一場面を見てまいりました。
(1)どういう支援学校をつくるのか
 そこで質問ですが、まず第一に、南紀・はまゆう支援学校を統合して、どういう支援学校をつくるのでしょうか。教育長にお伺いします。

《答弁》 宮下教育長
 統合校では、みなべ、田辺・西牟婁地域の特別支援教育を牽引する特別支援学校として、肢体不自由教育、知的障害教育、聴覚障害教育の専門性のより高い教育を行ってまいります。
 また、複数の障害に対応する特別支援学校としての専門性を生かし、重度・重複障害等、多様な教育的ニーズを必要とする児童生徒への教育や一般就労の促進に向けた職業教育を行い、自立と社会参加するために必要となる力を育む教育を進めてまいります。
 さらに、紀南地方の視覚障害や聴覚障害のある児童生徒やその保護者、教職員への相談体制の充実を図る等、地域の幼稚園・保育所、小・中学校、高等学校を支援する特別支援教育のセンター的機能を発揮する役割を担ってまいります。

(2)視覚などの障害への対応
《質問》雑賀光夫 県議
 知的・肢体・聴覚の障害に対応する支援学校になるということであります。それなら、視覚障害も含めてはどうかと思います。紀南からも、視覚障害をお持ちの子どもさんが、盲学校の寮に入るかどうか迷ったが、あまりに小さいころから親元を離すのもかわいそうだというので、地元の小学校でお世話になり今では盲学校の寮に入っているというケースをお聞きしたことがあります。そういう子供さんが、いらっしゃると思いますが、視覚障害にも対応する学校にしたらどうかと思いますがいかがでしょうか。

《答弁》 宮下教育長
 紀南地方における視覚障害教育への対応につきましては、これまでも、児童生徒本人や保護者の意向の確認及び市町村教育委員会との協議を踏まえて、弱視の児童生徒を対象とした特別支援学級の設置や和歌山盲学校による巡回教育相談実施等、専門的な教育を提供できる体制整備を行ってまいりました。
 統合校におきましても、和歌山盲学校と連携を、これまで以上に強め、紀南地方の幼稚園・保育所、小・中学校、高等学校に在籍する視覚障害のある児童生徒やその保護者、教職員への相談支援活動を進めてまいります。

(3)教員定数はどうなるのか
《質問》雑賀光夫 県議
 南紀支援学校は、古い学校ですから、新しいきれいな校舎になることは結構です。一番大事なことは、どういう教育内容が保証されるかという問題です。一番の問題は、人的配置です。
 学校には校長が一人、教頭をふくむ教員が配置されます。現行南紀支援学校、はまゆう支援学校、それぞれに教員が配置されています。
 教育長にお伺いしますが、仮に現在の生徒数のままで、あたらしい学校に統合された場合、少なくても現行通りの教員数が配置されるのでしょうか。

《答弁》 宮下教育長
 統合校の教職員数につきましては、児童生徒の主たる障害の種別、児童生徒数及び学級数等により、国の基準で算定した場合、必然的に減ることになりますが、今後、南紀支援学校及びはまゆう支援学校をはじめ、関係する方々のご意見を踏まえ、統合校での教育が充実したものになるよう、定数の確保に努めてまいります。
 また、国に対しても、いわゆる「定数法」のさらなる改善について要望してまいります。

《要望》雑賀光夫 県議
 教育長は「国の基準で算定した場合、必然的に減る」とお答えになっています。定数法どおりだと。10数人、教員だけで少なくなるそうです。私も、はじめは信じられませんでした。小学校であれば、各学年10数人・6学級の学校が二つ統合しても、一学級20数人・6学級の学校になるだけですから大幅に教員数が少なくなることはわかります。しかし、支援学校の場合は、そうではないと思っていたのです。
 なぜ少なくなるのか。南紀・はまゆうが統合すると、児童数が多い知的障害の支援学校とみなされ、知的の支援学校の基準で教員が配置される。だから、肢体不自由児の南紀支援学校に手厚く配置されていた教員は減らされてしまう。全く不合理なことだと思います。そのほかにも統合にかかわるさまざまな要因で教員数が減らされる。
 教育長は、国に対してこの不合理の是正を要求するとともに財政当局にもしっかり働きかけていただきたいと思います。
 パブリックコメントでも、「教員定数確保」の要望が多いのですが、教育委員会の説明では、なかなか教員数が減るということを読み取りにくい。どうも、保護者のみなさんに不安を与えることを心配してのことかもしれません。
 子どものことを心配している保護者の方に「本当のことを言ったらいらぬ心配をかける」などと考えるのはとんでもないことです。本当のことを語り、文部科学省にも、県の財政当局にも、教育水準を落とさないためにぶつかっていく姿勢を示すことが、保護者の信頼を得ることになるのではないかということを申し上げておきたいと思います。

(4)学校づくりに保護者・教職員の声の反映を
《質問》雑賀光夫 県議
 問題は、教員数だけではありません。給食調理員は、南紀で4人、はまゆうで5人、現在は9人です。南紀支援学校では、給食の再調理が、きめ細かく行われています。食物をペースト状にするのですが、なんでもペーストにすればいいということでなく、子どもの状態に応じた調理がされているとお聞きしました。この水準を維持するために何が必要ですかとお聞きしましたら、調理員の人数とともに調理室の中に特別な再調理をできるスペースがほしいといわれました。
 寄宿舎についても、統合にはさまざまな、現場でないとわからない問題があると思います。
 そういう問題を踏まえて、教育長にお伺いします。
 あたらしい学校づくりについて、保護者の意見もよく聞き、学校現場の声が反映するようにどうしていくのかをお聞かせください。

《答弁》 宮下教育長
 県教育委員会では、これまでも両校の保護者や教職員、地元関係者等に対して、統合校の内容や特色、今後の進め方について説明を行い、ご意見等をいただいてまいりました。また、9月には、統合の概要について県民意見募集を行い、10月には、質問内容の概要と県教育委員会の考え方についてホームページ上に掲載したところです。
 統合の準備に向けては、今後、両校合同で設置する保護者等を含めた検討委員会と県教育委員会で十分な意見交換を行いながら進めてまいります。

《要望》雑賀光夫 県議
 一番手厚い保護・教育が求められる子どもたちの教育を、基準だ、法定数だ、しかたがないと切り捨てることのないように、お願いしておきます。


4.部落差別解消法と人権問題
《質問》雑賀光夫 県議
 第四の柱は、部落差別解消法と人権問題です。
 国会で、「部落差別解消法」なるものが成立いたしました。私はこうした動向は、同和問題の最終解決に逆行するものではないかと考えます。
 部落差別というものが近代社会にまで残された要因は、いろいろありますが、身分社会の残滓であります。この残滓が消え去って国民が一つに融合することが、この問題の解決です。
 民族差別の場合は違います。民族の違いをなくして融合しようとするのは、かつて日本帝国主義が朝鮮民族に押し付けようとした創氏改名のようなものです。民族問題は、それぞれの歴史や文化を尊重しながらそれぞれの民族に誇りをもてるようにならなくてはなりません。
 男女平等の場合も、男女の区別をなくしてしまうというのでなく、男性は男性として、女性は女性として尊重されるものでなくてはなりません。また過度に「男らしく」「女らしく」と強調することが、男性・女性としての尊重とはいえないということも申し上げておきます。
 こうした理解に立つとき、同和行政というものは、矛盾をはらんでいることがわかります。同和特別対策としての行政をすすめようとすれば、同和地区を指定し、同和地区出身者というものを指定しなくてはならないからです。それでも1960年代には、あえて線引きしてでも特別対策をせざるを得ないほど、同和地区内外の格差が大きかったのです。線引きして特別対策をすることについての国民的合意が、1965年の同和対策審議会答申であり、それを法制化したものが、1969年の「特別措置法」でした。
 磯村英一氏を会長とする政府の諮問機関「地域改善対策協議会」は1984年の答申で「同和地区住民の社会的経済的地位の向上」と述べました。1993年の和歌山県内の「同和地区生活実態調査」では、若い世代では同和地区内外の結婚が90%に達し、結婚での差別は過去のものになりました。
 しかし、不幸なことは、84年の磯村「答申」が「周辺地域の状況に比べて不均衡」「「ねたみ意識」が各地で表面化してきた」と指摘し、「民間運動団体の行き過ぎたいわゆる確認、糾弾をはじめとする行動形態に起因すると考えられるこわい問題であるとの意識の発生」と指摘せざるを得なかったことでした。
 同和行政のゆがみ、同和行政を民間運動団体が私物化する窓口一本化、意見の違うものを「差別」と糾弾する一連の事件は、司法の場でもその不当性が明らかにされました。そして2002年、同和対策事業は廃止されたのです。
 さて質問です。
(1)部落差別解消法と実態調査
 このたびの「部落差別解消法」は、理念法であって予算措置をともなうものではないことを強調されています。しかし、「部落差別の実態にかかる調査をこうずることを責務としている」ということは大変心配です。
 和歌山県では、同和対策が終了して以後にも、同和問題を最重点課題ととらえた「実態調査」を計画したことがありました。そのとき、月山弁護士を委員長とする「県人権施策推進審議会小委員会」は、平成18年3月16年づけで、「意見書」を提出し厳しく批判しました。
 意見書は、「同和問題を人権局が突出した形でとらえることは、同和問題自身の解決方法としても好ましいものではない」とし、「実態調査」は中止になったのです。
 企画部長にお伺いいたします。このたびの「法律」が成立した場合に、かつての月山「意見書」が心配したような懸念はないのかどうかお答えください。

《答弁》 企画部長
 部落差別解消法の実態調査につきましては、「部落差別の解消の推進に関する法律」第6条において、「国は、部落差別の解消に関する施策の実施に資するため、地方公共団体の協力を得て、部落差別の実態に係る調査を行うものとする。」と規定されておりますが、参議院法務委員会におきまして、「部落差別の実態に係る調査を実施するに当たっては、当該調査により新たな差別を生むことがないように留意しつつ、それが真に部落差別の解消に資するものとなるよう、その内容、手法等についで慎重に検討すること」と、附帯決議がなされているところでございます。
 今後、所管省庁において、附帯決議を踏まえ、調査により新たな差別を生むことがないよう調査の内容や手法等について十分検討されるものであると考えております。
 県におきましては、引き続き情報収集に努めるなど国の動きを注視してまいります。

(2)人権相談に見る人権課題
《質問》雑賀光夫 県議
 次に、月山「意見書」は「県人権局の取り組み姿勢には未だに「同和問題をはじめとする人権問題」からの脱却が認められず失望と挫折感を禁じ得ない」と述べておりました。「同和問題」だけを突出して強調することを批判したのです。
 県人権局には、いろいろな相談がよせられると思います。どうした人権相談が多いのでしょうか。

《答弁》 企画部長
 県企画部におきましては、人権局、各振興局、公益財団法人和歌山県人権啓発センターにおいて、人権全般に関する相談窓口を設置し、県民からの相談に応じているところでございます。
 平成25年度から平成27年度の過去3年間における人権相談件数につきましては、合計716件の相談を受理しております。
 人権課題別では、件数順に、障害のある人、女性、同和問題、子ども、高齢者の人権に関する相談となっております。

《意見》雑賀光夫 県議
 お答えになられたように、今日の人権問題はいろいろあります。
 月山「意見書」が指摘したように、「同和問題を突出してとりあげること」は、問題の解決に逆行する場合があります。これまで、同和問題の解決に心を砕いてきた多くの皆さんから、このたびの「部落差別」を冠した法制定に、懸念、怒りの声が上がっているということを申し上げて、質問を終わります。


 
  宮下教育長の答弁を聞く、雑賀光夫県議(左)

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