2017年2月県議会 雑賀光夫 一般質問 概要記録      議会中継録画
  
  
201736

1.カジノ・舟券売場とギャンブル依存症
(1)ギャンブル依存症の実態とそれにつながる犯罪
(2)賭博・ギャンブルの犯罪性
(3)IR設置と隣接自治体の同意
(4)カジノを含むIR施設におけるギャンブル依存症への対応について

2.学校給食と集団食中毒
(1)このたびの食中毒の規模・原因・対応について
(2)給食調理場の状況について(単独・共同など)
(3)共同調理場の直轄・委託・民営の状況
(4)ノロ保菌者を見つける検便
(5)保菌の心配がある人が安心して休めるように
(6)各学校での調理場方式とこのたびの食中毒を教訓とした今後の安全対策

3.外国から来た子どもたちの教育
(1)外国から来た子どもたち(人数・学校)
(2)県・市町村教育委員会による支援
(3)子どもたちの学力について
(4)高校進学への支援について

4.熊野川の濁水問題
(1)実効ある対策はできるのか
(2)地域住民・周辺市町村の要望を聞いて


1.カジノ・舟券売場とギャンブル依存症
《質問》雑賀光夫 県議
 議長のお許しを得ましたので、質問に入らせていただきます。
 第一は、カジノ・舟券売り場とギャンブル依存症であります。
 「カジノ解禁推進法」が国会で可決されたことをめぐって、12月県議会で議論が行われました。その議論では、マリーナシティが候補地のひとつとして挙げられておりました。マリーナシティは、海南市と目と鼻の先にあります。その一方で、海南市には藤白に場外舟券売場・ボートピアチケット売場建設計画が立ち上がり、地元からは反対の声があがっていす。
 私どもは、「このままでは海南市が賭博の町になるのではないか」という危機感を持ち、市民の皆さんとともに、この問題を考えてみようという活動をはじめています。
 その手始めに、海南市に計画されているミニボートピア・チケットショップのある奈良県・御所(ごせ)市に行ってきました。
 交通便利な場所にある、明るい色の建物です。中に入って管理者から説明をお聞きしました。馬券売り場や舟券売り場というと想像するような、「外れ券」をちぎってばらまいているようなことは全くありません。お酒の持ち込みも禁止。お客さんは、黙々とチケットを買っては、スクリーンを眺めている。異様な雰囲気はあるが、まったく静かです。
 総売り上げは、40億円、その1%4000万円を、市役所に協力金で支払います。海南市の業者が「総売り上げ35億円、1%3500万円を市役所に収めます」といっているのと大差はありません。
 ただ一つ違ったのは、「海南市にくる業者は、地元自治会に100万円、周辺の自治会連合会に100万円を、毎年10年間払うと言っています」というと、管理者の方は目を丸くして、「自治会への支援はそこまでしていません。流しそうめんをしたり、花火大会で団扇を配ったりしています」というのです。
 そのあと、市役所に行く前に、前の喫茶店にはいりました。
 喫茶店のママさんはいいます。「市に4000万円入るんだから来てもらっていいんじゃないの」といわれます。
 「この施設が来てからお客さんが増えましたか?」と聞きました。「ぜんぜん、ごらんのとおりよ」なるほど、私たちのほかにお客さんは入っていません。ママさんは続けます。「ギャンブルに来る人はね、少しでも賭けたいから、コーヒなどは飲まないのよ。お昼も、お弁当をもってくるかコンビニでおにぎりを買う。そんなお客さんにはあんまり来てほしくない。親しくなったら、『お金を貸して』と言われるから。それでも、『ガソリン代がないので1,000円貸して』といわれて、しょうがないから上げたことがある」
 カジノも競艇もパチンコも同じですが、生産したり価値を生むわけではない。
 ボートピアの総売り上げ40億円の場合、その4分の3が利用者に還元されて、ギャンブル依存症を生む。しかし、10億円は巻き上げられて、そこから20人の雇用、施設維持費が支払われ、市には4000万円、地元自治会にはなにがしかの協力金が支払われる。そのあとのお金は、どこへ流れていくのでしょうか。
(1)ギャンブル依存症の実態とそれにつながる犯罪
 そこで質問です。まず、日本におけるまた和歌山県でのパチンコを含むギャンブル依存症の実態をどう把握しているのか福祉保健部長にお伺いいたします。
 また、警察庁の犯罪統計でも、2015年からパチンコ依存、ギャンブル依存を動機とするものを分類するようになったとお聞きしています。警察本部長から、全国におけるまた和歌山でのギャンブル依存に起因する犯罪の実態についてお聞かせください。

《答弁》 福祉保健部長
 ギャンブル依存症は、様々なギャンブルへの衝動が抑制できなくなり、経済的、社会的、精神的な問題や対人関係などの問題が生じているにもかかわらず、自分の意思ではやめることができない状態とされており、本人やその家族に様々な問題を生じさせる疾病であると言われております。
 平成25年度に厚生労働省の研究班が実施した調査によれば、ギャンブル等の依存症が疑われる方は、国内では成人の4.8%と推計されておりますが、本県の実態については、把握しておりません。
 なお、現在、国では、より詳細な依存症の実態を把握するための調査が行われているところです。
 県では、アルコールや薬物などの依存とともに、県精神保健福祉センターや県立保健所で相談を行っており、電話や来所による相談は、平成26年度は32件、27年度は43件、本年度は1月末時点で35件という状況です。

《答弁》 警察本部長
 犯罪統計で確認できる範囲でありますが、ギャンブル依存、ぱちんこ依存を主たる動機とする犯罪は、全国において、統計を取り始めた、平成27年中は1,702件、平成28年中は2,328件であり、一方、和歌山県では、平成27年中は9件、平成28年中は8件を確認しています。

《コメント》雑賀光夫 県議
 ギャンブル依存症のさまざまな心配が指摘されました。
 ご答弁いただきましたように、厚生労働省はギャンブル依存症の実態を推計しております。しかし、保健所などに寄せられた相談は、1年間に30件から40件。氷山のほんの一角だといわねばなりません。
 私たちは海南市で、「舟券売り場建設を考える市民のつどい」を開きました。その中で、私が驚いたのは、身内のギャンブル依存症の実態が赤裸々に語られたことでした。
 「私の妹の子どもはギャンブル依存症でした。朝は普通の服装で出かけるのですが、シャツ裸で帰ってくる。その姿で電車に乗れないので、タクシーで帰ってきて、家人に『タクシー代をはらってくれ』というのです」
 「私の母は、パチンコ依存症になり、お金を借りてパチンコに通うのが止まらなくなった。」という話がだされました。
(2)賭博・ギャンブルの犯罪性
《質問》雑賀光夫 県議
 賭博というものは、本来違法なものである。ところが、自治体財政寄与するなどという理由をつけて公営ギャンブルが公認されてきた。それにサッカーくじが加わり、このたびカジノまでがその仲間入りすることになりました。
 賭博を禁止するということの本来の趣旨はどこにあるのか、警察本部長からお話いただきたいと思います。

《答弁》 警察本部長
 賭博を禁止するということの本来の趣旨につきましては、一般的には、公序良俗、すなわち、国民の健全な経済活動と勤労への影響と、副次的犯罪の防止にあるものと承知しています。

(3)IR設置と隣接自治体の同意
《質問》雑賀光夫 県議
 和歌山県では、IR誘致候補地として、和歌山市のコスモパーク加太、和歌山マリーナシティ、それに白浜町の旧空港跡地の3ヵ所が挙がっているが、区域の認定を申請する際には、隣接自治体の同意も必要となりますか。

《答弁》 企画部長
 昨年12月に成立した「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」、いわゆるIR推進法の附帯決議には「地方公共団体が特定複合観光施設区域の認定申請を行うに当たっては、公営競技の法制に倣い、地方議会の同意を要件とすること。また地方公共団体による公聴会の開催など、地域の合意形成に向けた具体的なアクションや依存症や治安維持などの地域対策を、国の認定に当たっては十分に踏まえること。」と盛り込まれておりますが、隣接する地方公共団体の同意については特に触れられておりません。
 IRの整備に必要な具体的な手続きについては、今後の国の法整備の中で定められることになっておりますので、隣接自治体の同意の必要性についても、その中で明らかになってくるものと考えてございます。

(4)カジノを含むIR施設におけるギャンブル依存症への対応について
《質問》雑賀光夫 県議
 これまでの議論を踏まえて、仮に和歌山にカジノを含むIR施設ができた場合、ギャンブル依存症についてどんな懸念があり、どう対応されるのか知事にお聞かせいただきたいと思います。

《答弁》 仁坂知事
 私はかねてから申し上げておりますとおり、カジノの設置に伴い懸念されるギャンブル依存症については、ものすごく重視しております。
 そうならないようにする技術はいろいろ議論されておりまして、かなりの程度それは可能だと思いますけれども、それでも雑賀議員のような人だけではなく、多くの人の頭から心配は消えないでしょう。「うちの人が、うちの子が、うちの親がなったらどうしよう」ということであります。
 だから少なくともその懸念がなくなるまでは、和歌山でIRが認められるとしても、そこでは和歌山県民ないしは日本人をカジノに入場できないようにしたいと考えております。
 従いまして理論的に考えますと、和歌山のIRにおいては住民のカジノによるギャンブル依存症の可能性はゼロであります。
 従いまして、どうして雑賀議員がそのような質問をされるのかな、私の言うことはいつも無視されるなと、この件に関わらず、一生懸命言ってるのだけどな、ということが多々ございますので、最後感想でございますが、締めさせていただきます。

《コメント》雑賀光夫 県議
 知事がこれまでも答えておられることは重々承知の上でお伺いしています。和歌山県民あるいは日本人は入れないようにして、ギャンブル依存症から守るというのは、私には異様な考え方であるように思います。
 和歌山県民には、そんなことをするとギャンブル依存症になるから出入りしてはいけませんというわけでしょう。ところが、世界のお客さんには、ギャンブルでしっかり遊んでくださいという。ギャンブル依存症になっても関係ない。和歌山県にお客さんが来てもうかればいいんだ。こう言っていることに他ならないではありませんか。
 「お客さんに来てください」という施設では、和歌山県民も楽しめる施設でなくてはならないということを申し上げておきたいと思います。


2.学校給食と集団食中毒
(1)このたびの食中毒の規模・原因・対応について
《質問》雑賀光夫 県議
 御坊市の学校給食が原因となるノロウイルスによる集団食中毒が発生しました。原因は明らかになってきているようですが、このたびの食中毒の規模、原因究明や対応についてお答えください

《答弁》 環境生活部長
 今回の御坊市立給食センターが調理した給食を食べた御坊市及び日高川町内の児童ら763名が嘔吐などの症状を訴えた集団食中毒では、原因食品である「磯和え」を和える工程でノロウイルスに汚染されたことが強く疑われますが、調理従事者全員が原因食品を食べたことと、一部の食材が保存されていなかったことから、詳細な汚染経路の特定には至りませんでした。
 このことから県では、当センターに対して、衛生管理マニュアルに基づく検食用食材の保存と調理された食品を調理従事者が食べないことを指導する一方、県内の集団給食施設への緊急一斉立ち入り指導を行うとともに、今月中旬には御坊市及び和歌山市において調理従事者等を対象とした衛生講習会を開催することとしております。
 再びこのようなことが起こらないよう、集団給食施設をはじめとする食品事業者への監視指導と県民への感染予防対策の啓発に努めてまいります。

《コメント》雑賀光夫 県議
 大事な問題もお答えいただきました。食材が保存されていたら、ノロウイルスの感染経路も早く発見されて、立川市の食中毒も防ぐことができたのではないかと残念です。

(2)給食調理場の状況について(単独・共同など)
《質問》雑賀光夫 県議
 大きな調理場で、食中毒の規模が大きくなったという問題もあると思います。かつて海南市で学校給食センター化に反対する運動がおこりました。それまで海南市では学校ごとの調理場で調理が行われてきました。その中でも南野上小学校の給食がおいしいということがよく言われました。当時の海南市で一番小さい農村部の学校、地元でとれた農産物で給食の調理がされていたからです。市民の大きな運動の中で、2、3校ごとにまとめて調理をする「親子方式」におちついて現在に至っています。
 学校給食の「単独調理場」「共同調理場」その中間の「親子方式」の3つに大別されますが、その状況は、どうなっているのでしょうか。また、共同調理場の規模はどのようなものでしょうか。教育長にお伺いします。

《答弁》 宮下教育長
 学校給食調理場の状況についてですが、平成27年度は「単独調理場」が110施設、いわゆる「親子方式」とされる単独調理場が16施設、「共同調理場」が27施設、民間施設で民間業者が調理している調理場は5施設です。
 また、共同調理場の規模ですが、給食数で言いますと、30食余りから5,000食を超える調理場など、様々な規模となっております。

(3)共同調理場の直轄・委託・民営の状況
《質問》雑賀光夫 県議
 今回の御坊市の給食調理場は2,000食規模のセンターです。
 しかし、橋本市、田辺市では、3,000人を超える規模の給食調理場で給食調理をしています。岩出市では5,000人規模です。こういうところで、今回のような事態がおこったら、地域の医療機関で対応できるのかという心配もあります。
 いま一つ、大きな給食調理場を行政が直接管理するのか、民間会社に委託するのかという問題があります。
 直営の共同調理場と民間委託の共同調理場、民間施設で民間業者が調理しているものは、どれだけあるのか。御坊市はシダックス・大新東ヒューマンサービス()という会社に委託していたと報道されていますが、民間委託先・民間事業者とその安全実績をどう把握しておられるのでしょうか。

《答弁》 宮下教育長
 共同調理場の直営等の状況につきましては、市町村が調理員を雇用している共同調理場が18施設、調理業務を民間に委託している共同調理場が9施設、このほかに民間施設で民間業者が調理している調理場は5施設です。
 各市町村において、「プロポーザル方式」又は「入札方式」等により業者を決定しており、過去数年間に食品衛生法上の違反に係る行政処分を受けていないこと等の条件を設定することで、安全実績を担保しております。
 県教育委員会では、各市町村教育委員会に対して、文部科学省の「学校給食衛生管理基準」に基づく衛生管理の徹底について指導しており、各市町村教育委員会では、この基準に定められた点検票により、委託業務内容に関する衛生管理の徹底が図られているかを定期的に点検しております。

(4)ノロ保菌者を見つける検便
《質問》雑賀光夫 県議
 今回は、食材に原因があったことが明らかになったのですが、ノロウイルスの対策には、いくつかの問題が考えられます。症状がでていないけれどもノロウイルスを保菌している無症状の保菌者を事前にどうみつけるか。
 普通の感染症は、検便で保菌者がみつかるのですが、ノロウイルスの場合は、特別な検便が必要で、それにかかなりの費用が掛かるといいます。こうした検便は、どのくらい実施されているのでしょうか。また、回数を増やすための予算措置検討されているのでしょうか。

《答弁》 宮下教育長
 文部科学省の「学校給食衛生管理基準」では、「検便は、赤痢菌、サルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌血清型O-157その他必要な細菌等について、毎月2回以上実施すること。」と規定されております。また、ノロウイルスによる感染症が地域で流行している場合や調理場内に感染が疑われる者がいる場合は、ノロウイルスの検便検査を行うこととなっており、各市町村において、ノロウイルス流行状況を踏まえ、必要に応じて検査を実施しているところです。また、県立特別支援学校では、ノロウイルスの感染が疑われる者がいる場合、検査を実施しております。
 ノロウイルス検査の実施については、予算措置を含めて地域の実状を踏まえ、各市町村教育委員会が実施するものと考えております。

(5)保菌の心配がある人が安心して休めるように
《質問》雑賀光夫 県
 無症状の保菌者を見つけ出すもう一つの方法として、関係者に自主申告してもらう方法があります。家族にノロと疑わしい症状があった場合は申し出ていただいて休んでもらう。
 ところが、現在の給食調理員の給与体系の場合は、休めば給与がなくなる場合があります。休まなくてはならない期間が、1ヵ月にも及ぶという場合がある。そうなると、少し気になっていても、「心配ないだろう」と自分に言い聞かせるというのが、よくあることです。安心して自主申告で休んでもらうためには、安全のための休暇中は、休業補償をすることも必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

《答弁》 宮下教育長
 市町村の給食施設における給食調理員につきましては、各市町村での雇用となり、給与体系等も市町村の規定によるところであります。また、調理業務を委託している場合の休業補償については、市町村が委託業者と契約している内容であり、その契約の範囲で対応することとなっております。
 なお、県立学校における給食調理員につきましては、賃金職員として雇用されており、勤務実績に応じた支給となっております。

(6)各学校での調理場方式とこのたびの食中毒を教訓とした今後の安全対策
《質問》雑賀光夫 県議
 学校給食は、できるだけ子どもに近いところで調理することが望ましいと考えます。それは、リスクが大きくならないということだけでなく、「地産地消」「食育」という面からも、身近なところで給食が準備されることが望ましいと考えるからです。財政的効率化のために「センター化」に走るのではなく、各学校で調理する単独調理場の方向に近づけてほしいと思います。
 また、感染経路がわかるようにすることよりも、再発防止のための安全対策が大切だと思いますが、教育長から、今回起こった事態の教訓も含めて、お考えをお伺いしたいと思います。

《答弁》 宮下教育長
 調理場方式につきましては、設置者である市町村が、給食施設の維持管理、栄養教諭等人員確保、食育や地産地消といった教育的見地など総合的に検討し、市町村の実状に応じた調理場方式を選択し、決定しているところです。いずれの場合においても、衛生管理の徹底等適切な実施について指導してきたところであり、今後も引き続き、安全で安心な学校給食の提供に努めるよう指導してまいります。
 また、県教育委員会では、再発防止のため、先日、市町村教育委員会給食担当者に対して説明会を開催し、今月末にも、学校給食関係者を対象とした衛生管理研修会を開催する予定です。今後とも、各市町村教育委員会に対して、文部科学省が定める「学校給食衛生管理基準」に基づく衛生管理のさらなる徹底を図るよう指導してまいります。

《コメント》雑賀光夫 県議
 教育委員会でもいろいろ考えていただいているのですが、ノロウイルスを検出する検便への支援とか、体調が悪い調理員が自主申告しやすいような休業補償など私が提案した問題もじっくりと考えて、今後の対策をしていただきたいと思います。


3.外国から来た子どもたちの教育
《質問》雑賀光夫 県議
 海南市の中学校で、外国籍を持つ子どもの教育を考える学習会が開かれたとお聞きしました。
 昨年の4月に中国籍の男子中学生が転校してきました。日本で再婚した母親が引き取って、日本で暮らしたいとやってきたのです。日本語は全く話せない。
 子どもを受け入れなくてはならないと、校長先生は、中国語の入門書とCDを準備して備えたといいます。海南市教育委員会も、週に1回、人を派遣してくれました。しかし、十分な支援ができないままに、中学生は、だんだん元気をなくし、中国の父親のもとに帰ってしまった。学校では、「日本で学びたい」とやってきた子どもを支えきれなかったという反省から学習会を開いたという経過のようです。
 こうした子どもたちの中には、外国籍の子どもも日本籍の子どももいます。日本語を話せない子、話せる子がいます。親が外国籍であったり、日本語を十分話せない場合があります。そこで「外国から来た子ども」と呼んでおきましょう。
 和歌山市の繁華街に近いM小学校。外国から来た子どもが11人います。中国4人、フィリピン4人、タイ3人。日本語がほとんど話せない中国から来た2人の子どものためには、子ども支援センターからのボランティアが週に1日来てくれている。
 その近くのS小学校では、外国から来た子どもは12人、韓国3人、アメリカ1人、タイ4人、フィリピン4人。日本語を話せない子は2年生1人、4年生1人です。ここには県教育委員会から週に3日、教員が派遣され、とくに国語の授業など別室で指導してくれるので助かると校長先生は語っておられます。2つの小学校だけで外国から来た子どもは23人です。
 どちらの学校でも、「子どもはすぐに会話はできるようになるが、親との意思疎通が大変だ」という悩みを聞かせていただきました。7・8割が母子家庭です。「メールを送ることが多いのですが、メールの文字を読めない親がいる。防災メールなどの場合、心配だ」と校長先生は、きめ細かい配慮を語られます。
(1)外国から来た子どもたち(人数・学校)
 そこで質問ですが、第一に、外国から来た子どもの実態をしっかりつかむ必要があるとおもいます。いくつの学校に、どのくらいの人数の児童生徒がいるのでしょうか。

《答弁》 宮下教育長
 外国人児童生徒の就学については、国際人権規約等の規定を踏まえ、就学の機会を適切に確保するよう、各市町村において小・中学校に入学を希望する外国人児童生徒を無償で受け入れるなどの措置を講じております。県教育委員会といたしましては、日本語指導が必要な児童生徒の状況を把握するとともに、市町村教育委員会からの外国人児童生徒の就学等に関する相談に対応し、支援を行っております。
 県内の日本語指導が必要な児童生徒については、平成28年5月1日現在、小学校21校に34名、中学校7校に12名在籍してございます。

(2)県・市町村教育委員会による支援
 第二に、こうした子どもたちを支援するための県の教員配置としてはどうなっていますか。
 また、市町村教育委員会や子供支援センターからボランティアが派遣されているようですがどんな具合でしょうか。

《答弁》 宮下教育長
 県教育委員会では、本年度、国の加配を活用して、日本語指導が必要な児童生徒が多い和歌山市と田辺市に教員を1名ずつ配置しており、巡回指導を行うなどして、個別に日本語習得のための指導や各教科の学習内容が理解できるよう支援しております。
 市町村教育委員会においては、個々の状況に応じて、支援員を配置したり、外国語ボランティアを活用したりするなど、日本語習得のための支援やその児童生徒の母国語による支援などを行っております。また、日本語によるコミュニケーションが困難な保護者に対しては、学校の支援員やボランティアなどを活用し意思疎通を図るなどの対応をしております。
 日本語指導が必要な児童生徒が在籍する学校においては、特別の教育課程を導入して、個別の学習や一斉授業の中で児童生徒に寄り添うなど、一人一人に応じた支援を行っております。
 今後、本県においても日本語指導が必要な児童生徒が増加することが予想されますので、国に対してさらなる加配の要望を行うとともに、関係機関との連携の強化を図ってまいります。

(3)子どもたちの学力について
《質問》雑賀光夫 県議
 こうした子どもたちの学力の問題です。こうした子どもたちの学力の課題も分析しておられると思います。どのような対応をしているのでしょうか。

《質問》 宮下教育長
 全国学力・学習状況調査や県で実施しております学習到達度調査の実施に当たって、日本語指導が必要な児童生徒については、各学校の判断により、調査時間の延長や問題用紙へのルビ振りなど、普段の学習活動と同様の配慮を行うなどの対応をしております。
 県教育委員会では、児童生徒の調査結果を踏まえ、一人一人の学力の定着状況を把握し、補充学習をはじめ、個に応じた支援を充実するよう指導しております。

《コメント》雑賀光夫 県議
 私は、「学力テスト」実施には批判的です。その理由の一つは、平均点比べになっていて、平均点競争の弊害が大きい。学力を調査するのなら、課題を抱えた子どもたちの問題に目を向けてほしいと申し上げておきます。

(4)高校進学への支援について
《質問》雑賀光夫 県議
 つぎに、こうした子どもたちが高校に進学できるようサポートする問題です。高校への進学の状況はどうなのか。他府県では、国語 数学 英語の3教科入試を実施しているという話も聞くのですが、和歌山県ではどうでしょうか。

《答弁》 宮下教育長
 日本語の理解が十分でない外国人生徒等で、特別な措置を講じて県立高校に入学した生徒は、平成27年度で1人、平成28年度で3人であります。
 入学者選抜の方法としましては、日本語の理解不足による不利な状況を補うため、問題や解答用紙の漢字へのルビ振り、試験時間の延長、母国語の辞書持ち込みなど、個々の状況に応じて特別な措置を講じ、対応しているところです。
 今後も市町村教育委員会を通じて、特別な措置が必要な志願者を把握し、一人一人の状況に応じた個別の措置で対応してまいります。

《要望》雑賀光夫 県議
 「外国から来た子どもたち」というのは、これからも増えてくると思います。教育委員会が把握しているのは、「日本語を話せない児童生徒です。小中28校で46人。私が訪問した2つの小学校で4人ですが、「外国から来た子ども」は23人になる。全県的には200人から300人になる。しっかりサポートして、日本とかれらの母国の友好の懸け橋になってほしい。学校現場のご苦労をしっかりつかんで、施策を充実していくように、お願いしておきます。


4.熊野川の濁水問題
 第4にとりあげる熊野川の濁水問題について、一昨年の2月、昨年12月の県議会でも地元の議員さんがそれぞれ取り上げていただきました。共産党県議団も先日、土砂災害啓発センター視察もかねて、熊野川、ダム視察を行いダム管理者のお話を聞き、新宮市の担当者、地元住民の皆さんと懇談してまいりました。
 熊野川にそって車を走らせると、ダムから流れる濁水と北山水系からの清流がくっきりと分かれます。
 まず、地元住民のみなさんのお話を聞いて感じたのは、地域住民の熊野川への思いの深さ、この川を守る長いたたかいの歴史でした。
 地元の方が持ち出されたのは「新宮川水質汚濁防止連絡協議会」という団体が発行した、昭和21年から昭和53年までの「新聞切り抜き資料集」でした。熊野の山林の管理と発電ダム建設を巡って、熊野川と自然を守る立場から、長いとりくみがありました。それが、平成23年の水害をきっかけにして濁水が深刻になっている。
 平成24年7月、国、県、ダム管理者、沿川市町村で構成される「熊野川の総合的な治水対策協議会」が設置されました。一昨年3月に、「濁水対策」の平成33年までの計画・工程表が作られています。しかし、新宮市当局を含めて地域住民のみなさんには「本当に濁水問題が改善されるのだろうか」という気持ちが大変強い。
 その後、濁水問題が解決されていないことを訴えられたのが、昨年12月の田辺市の議員さんの質問でした。知事からは、奈良県側の復旧の遅れが指摘されました。
(1)実効ある対策はできるのか
 「治水対策協議会」の計画・工程表の施策で、実効ある対策ができるとお考えでしょうか。また、災害復旧でも、崩れた道路を復旧するという問題は、和歌山県側、奈良県側、三重県側それぞれの都合に合わせて、早い、遅いがあっても致し方がないと思います。しかし、川を守るための治山を含めた流域対策は、国が主導して、「治水対策協議会」の責任でやらなくてはならないと思います。私にはそれが見えてこないように思われるのですが、県土整備部長のお考え、見通しをお伺いいたします。

《答弁》 県土整備部長
 熊野川の濁水対策については、平成24年7月に国、三重県、奈良県、和歌山県、電源開発(株)、関西電力(株)及び沿川市町村から構成される、「熊野川の総合的な治水対策協議会」を設置し、各機関において対策を実施しているところでございます。
 流域対策につきましては、平成33年度末を目指し、国土交通省や和歌山県等が、洪水後の濁水の発生源となっている崩壊地対策や河道への土砂流出防止対策を治山、砂防事業で実施するなどしております。
 また、電源開発(株)が実施するダムの貯水池対策については、洪水後には表層の清水層から取水できるよう、風屋ダムや二津野ダムに浮き沈みする濁水防止フェンスを平成27年度末までに設置するとともに、風屋ダムの取水設備の改造に着手しました。
 併せて洪水後の濁水早期排出と清水貯留期間の延長など、発電運用の改善にも取り組んでいるところでございます。
 これらのすべての対策が完了した場合においては、平成23年の紀伊半島大水害以前の状態まで、濁度の軽減が図れるものと期待しております。
 引き続き、これらの対策を早期に完成させるとともに、その進捗状況、対策効果のモニタリングを関係機関と連携し進めてまいりたいと考えてございます。

(2)地域住民・周辺市町村の要望を聞いて
《質問》雑賀光夫 県議
 新宮市は、計画・工程表に加えて「先進地事例の研究・実践(風屋ダム濁水バイパスの設置)」など提案しております。「先進地とはどこですか」とお伺いすると、「九州に一ツ瀬ダムというのがあって親子ダムになっています」というお返事をいただきました。私は素人ですから、それが有効なのかどうかの判断はできませんが、濁水に悩む新宮市の提案であります。ぜひこうしたことも検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

《答弁》 県土整備部長
 議員からご指摘のありました先進地事例の研究等につきましては、「熊野川の総合的な治水対策協議会」において、既に新宮市からご提案があったことを承知してございます。
 この提案を受けまして風屋ダムの管理者である電源開発(株)からは、現在、実施している熊野川の濁水軽減対策は、平成26年6月に設置された、有識者等からなる「熊野川濁水対策技術検討会」において、全国の濁水長期化対策の事例も参考に、発生源や濁水長期化の要因分析及びダムにおける対策に関する技術的検討によりとりまとめられた対策であり、まずは、これらの対策を早期に完成させるとともに、その効果の検証が重要と考えている旨、協議会において報告があったところでございます。
 県といたしましては、現在予定されている対策の実施とその効果の検証を行った上で、更なる追加対策が必要となれば、「熊野川の総合的な治水対策協議会」において検討されるよう、働きかけてまいりたいと考えてございます。

《要望》雑賀光夫 県議
 さきに申し上げた地元の議員さんの質問も読み返させていただきました。それぞれ、地元住民の皆さんの強い思いがこもった質問になっていたなと敬服いたしました。
 しかし、問題解決への見通しが見えないことに、地元の皆さんはいらだっておられると思います。知事はじめ関係者の皆さんに、国への働きかけをしっかり強めていただけるよう要望して、質問を終わります。



  
                                                     仁坂知事の答弁を聞く、雑賀光夫県議(右)
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