2017年12月県議会 文教委員会
  雑賀光夫委員の質問概要記録
   
                                                    20171214

《質問》雑賀光夫 委員
 学力テストについてであるが、テストの成績は、今年度はよかった。大変結構なことである。
 しかし私は、この学力テストのことに関していろいろと心配もしている。3年前の12月県議会では、学力テスト問題について議論をした。その冒頭で私は、教育とは何かということを立ち戻って考えなくてはならないということを言って、その中で次のように伝えた。
 「若い芽を早く大きくなあれと、毎日引っ張っていたら、若芽を枯らしてしまう」という例え話があるが、子どもをある面から追い立てたとき、どんな歪みが生じるか。最も極端なものが少年犯罪である。当時、私が思い出していたのは、酒鬼薔薇聖斗と名乗った、神戸の幼児を殺したあの事件である。そういう事件が起こると大騒ぎするけれども、親は決してそのような子どもを育てようと思って育てたわけではない。優秀な子どもにしたいと思って育てた。そのことが子どもを追いやって、このような歪みを生んでしまった。これは極端な例だけれども、教育界にはこういうことがあるのではないか。
 管理と競争の教育が多くなる中で、学校現場は息苦しくなってくる。そこで起こってくるのは、不登校の問題であり、いじめの問題である。現場のプレッシャーから逃げるのが不登校であり、それを他に転嫁して憂さ晴らしをするのが「いじめ」だといってよいのではないか。その行き着く先が、子どもの自殺ではないか。教育は総合的な問題なので、ある面だけを追い込んだ時に、思わぬところで歪みが起きる場合がある。こういう警告をしたことがある。
 学力問題に関して、今年も10月に校長研修を実施したと聞いた。昨年もやられたようだが、この研修はどんな趣旨で実施したのか、教育長から伺いたい。

《答弁》 宮下教育長
 市町村の小中学校の管理職に対して、学力や不登校の問題など、県下全体として取り組むべきことについては、直接学校長に、県として取り組んでいることを話すのが大事だという趣旨である。

《質問》雑賀光夫 委員
 去年、学校長に対して牧野企画監がお話になったことは、さすがだと思うこともあった。例えば、「学力テストについては、校長先生がまずテストの問題を解いてみなさいよ」というアドバイスをしておられた。また、「3年生で習うローマ字が6年生でできないのはなぜか。それは活用していないからである。学んだことは活用させてこそ定着する」、あるいは、「学校では授業が大事である、部活動で生活指導しようと思ってはいけない。部活動だけじゃいけない。やっぱり授業が大事だ」、このような指摘は達見だと思った。
 ところが、かなり焦っておられたような気がする。「今日話したことを伝達してほしい。やったかやらなかったか点検する。やっていない場合は教育委員会まできてもらう」、こんな風に言っている。また、「教育長は、ここにいても優しいことしか言わない。私はよそからきた人間なので、言うべきことは言う」と言っていた。教育長は、「私は、厳しいことを言わないので、厳しいことを言って欲しい。」と頼んだのか。

《答弁》 宮下教育長
 そういうことは言っていない。
 教育長の立場で話すことと、私が企画監に期待していることがあるので、役割分担しながら話をしている。

《質問》雑賀光夫 委員
 3年前から、教育において若芽を引っ張るような指導では、歪みが生じるのではないかと心配をしている。そこに飛び込んできたニュースが、福井県の中学生が副担任の女の先生に責められて自殺をしたという事件である。3年前の事件だが、今年の10月に報告書が発表されたことで、大きく新聞報道された。管理的な教育行政が行われると、指導力のない、自信のない先生が体罰に頼ったり、あるいは子どもをおさえ付けたりというようなことが多い。
 和歌山県では、いじめによる自殺や先生の指導で子どもを死なすということは、幸いなことになかったと思うがどうか。

《答弁》 宮下教育長
 最近、問題になったことはない。

《質問》雑賀光夫 委員
 それはよかったが、そういうことが起こらないようにと心配している。
 福井県が教育の先進県で、和歌山からも研修に教員を派遣して、そして牧野企画監にもおいでいただいて指導いただいている。ところがその先進県で、先生が子どもをいじめて自殺に追い込んだ事件があった。教育長も予算をつけて、教員を研修に送っているわけだから、その送った先でこういう問題が起こったということに当然関心を持ち、情報を収集していると思うが、このことをどう感じているか。

《答弁》 宮下教育長
 本県の課題ということでいうと、子供たちの中では、いろいろなことが起こる。私の知る限りでは、いじめとかそういう動きの中で死に至るということは、最近ではない。子供たちの中でいろいろなことが起こるというのは、どの都道府県も同じことだと思う。それを前提として、福井の今回の自殺だけの問題でなく、様々な子供たちのことを私たちはいろんな意味で福井県から学びながら、和歌山県では、どういう風に取り組んでいくべきかを検証していくことが必要と考える。福井のことに関して、今1点だけ聞いているわけであるが、すべての詳細が分かったわけはなく、注視しながら、学ぶべきところはしっかり学んでいきたいと考えている。

《質問》雑賀光夫 委員
 予算をつけて、福井県が教育の先進県だというので、視察に人を送って、帰ってきて報告しなさいということをしている。その福井県でこういうことが起こった。予算をつけて送っているわけだから、特別の関心を持って情報を収集する、あるいは現地へ調査団を送るぐらいのことをすべきと考えている。
 配布資料を見て欲しい。2017年12月12日午後5時10分にネットに載ったもので、福井新聞の記事である。この事件について、福井県の総務教育常任委員会が、11日に全会一致で決議をした。この男子生徒の自殺に関して、学校に問題があったということであるが、教員の多忙化により生徒への適切な対応がなく、精神的ゆとりを失っている状況にあったのではないかと懸念されている。これは、この教師だけの特殊な問題ではなく、教育全体の問題とすべきではないか。さらに、学力日本一を維持することが教育現場への無言のプレッシャーを与え、多様化する子どもたちの特性に合わせた教育は困難であると言わざるを得ないとして、同委員会は公教育の検証と見直しを求めたのである。
 つまり、和歌山県の予算をつけて教員を送っている先進県が、学力日本一のプレッシャーを先生にかけて、そういうことが今度の問題の一因になったと常任委員会で意見書が決議され、県議会でも全会一致でおそらく決議されるであろう。つまり具体的には、義務教育課程では、過度の学力偏重を避ける、教員の多忙化を解消する、発達障害傾向の子どもが増えていることを踏まえ、生徒の理解の徹底を図ること等があげられている。
 福井県の総務教育常任委員会委員長は、「今、先生の忙しさはパンク状態。過労死があってもおかしくない。生徒の自殺を二度と起こさせないためにも、公教育の見直しが必要である」と述べている。つまり、この事件が、単に特殊な先生の特殊な問題でなく、福井の教育にも問題があったのではないか、と検証が始まっている。福井を和歌山のモデルとして、予算をつけて、先生を休ませて福井に送っている。それが良かったかどうかは別として、関心を持たないといけないと考えるがどうか。

《答弁》 宮下教育長
 全国どこの都道府県でも、教育の大きな課題について、考えていくことは大事である。福井県については、福井県がすべての面に渡って全国的に評価されているということが前提としてある。福井県でその事件が起こったということ、どの都道府県も全て完璧ではないということも含めて、福井県が検証を進めていくことが、また評価されると考えている。新聞では断片的なことしか載っていないが、今後検証していく福井県の姿勢から更に学んでいく。和歌山県の様々な課題を克服していくために、福井県から学んだことはたくさんある。それは和歌山県になじまないこともあるかもしれないが、それも含めて福井県から学ばせてもらっている。その成果が、すぐに出ないかもしれないが、今後、出てくると思っている。学力だけではなく、不登校でも、福井県には和歌山よりも進んだ取組がたくさんある。学力のベースになっていることすべてを学ばせてもらっている。

《質問》雑賀光夫 委員
 福井の教育に学ぶところが多いということは否定しない。
 そこで、企画監の話に戻るが、「福井には色々な人が来ている教育先進県として評価されていて、大勢の人が学びに来ている。それに比べて、和歌山はどうか。全国から馬鹿にされている。私は、今は和歌山の住人だから、腹が立つし、くやしく思う。名誉挽回しなくてはならない」、こういうことを校長の研修の中でおっしゃっていた。
 和歌山のことを心配していただいて大変ありがたいが、教育のトップにいる人が感情的なものの言い方をして、それを聞いた校長が教員に対してものの言い方を増幅させる。そして、校長から締め付けられた教員がさらに焦って、子どもを締め付けたりして、福井で起こったようなことが出てきたりしないか心配している。
 上に立つ人は、こういうものの言い方をしてはいけないと思うが、教育長はどう思うか。

《答弁》 宮下教育長
 表現の仕方の問題である。発言の趣旨の中には奮起を促していくこともある。そこだけを取り上げたら、少し言い過ぎた部分もあるかもしれない。しかし、その趣旨は、それだけ子供たちのために一生懸命やっていこうと呼びかける意味と理解している。そういう熱意の表れである。

《質問》雑賀光夫 委員
 「県教委の言うことを聞かない校長、校長の言うことを聞かない先生、先生の言うことを聞かない子どもたちが、和歌山にあると言われている。みなさん、知っているか」こういった話もある。そんなことを、教育長は言われていると知っているか。

《答弁》 宮下教育長
 これも表現上のことかもしれないが、教育委員会が方針を持ってやることについて市町村の教育委員会、そして学校が同じ方向を向いていかないと成果は上がってこない。校長のリーダーシップが大事になってくる。趣旨は、そういうことである。

《要望》雑賀光夫 委員
 一面的な焦った指導は、教育に歪みをもたらせるのではないかと心配している。この点は、テープを起こしてもらったり、テープを流して聞いてもらってもいいが、検証してもらいたい。
 福井で起こったことはいい機会である。福井の常任委員会の決議は、この問題を特殊な地域の問題にせず、自分たちの教育全体を、「全国からは、学力日本一ということで成果を上げている。それでいいのだ」とせずに、それを検証しようとしている。教育条件整備も含めてやるという福井県の姿勢は立派だと思っている。この機会に和歌山でも検証することを要望しておく。
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《質問》雑賀光夫 委員
 串本古座高等学校を視察した際、グローカルコースや串本町、古座川町の支援状況についての話を聞いた。
 例えば、海南高等学校美里分校などもなくなってしまうと、長谷毛原地域は火が消えたようになる。また、学区撤廃に伴い、長距離通学生徒が増加しているという問題があるし、不登校を経験したような子どもが美里分校を選び入学しているという状況もある。
 串本古座高等学校の話を聞きながら、県教育委員会として、遠方から入学している子どもに対する支援ができないものかと思った。
 学区があった時代から、へき地の子どもが都市部の高校に進学する際、下宿代や通学費の補助があった。そうした制度は今も残っているが、例えば、海南市や和歌山市から美里分校に進学した場合は補助がない。地域を活性化したり、高校を元気にしたりするという立場から、県教育委員会として支援できないものか。

《答弁》 宮下教育長
 各高等学校がそれぞれ特色化を図り、子供達の選択肢が広がる一方で、少子化も進んでいる。また、各学校にはそれぞれ役割があり、その役割も多岐に及んでいるとも思う。
 今、話に出た美里分校は、地域の子供達がゼロという状況になっている。学校が地域に対して果たす役割というものもあるが、学校は子供達の教育のために存在しており、子供達の教育をどう充実させるのかということも当然前提としてある。地域活性化のための学校となれば、学校の存在そのものが変わってしまうので、地域と学校の状況を見ながら、今後のことを考えていく必要がある。
 少子化と学校規模、統廃合の問題も含めて、和歌山県の教育を今後どうしていくのかということを、中長期的に考えていく必要があると思っている。

《質問》雑賀光夫 委員
 串本古座高等学校グローカルコースに対して、串本町、古座川町から行っている支援は、地域活性化という立場からの支援だと思う。
 県教育委員会としても、寄宿舎等の面で支援をしてもいいのではないかと思うが、県からの支援として、どういうことがあるのか。

《答弁》 県立学校教育課長
 串本古座高等学校は、地域の豊かな自然等を教材として生かした教育課程を編成しているが、その編成にあたり、県教育委員会としても指導、助言している。
 また、こうした特色ある教育活動をPRするため、全国の主要都市、東京、名古屋、大阪等で、生徒を募集するための学校説明会を開いたが、県もその運営に携わり、支援してきた。
 さらに、全国募集で入学した生徒の生活面や精神面の不安を解消するため、生活支援員を配置しサポートしている。

《要望》雑賀光夫 委員
 遠方から来た人のための拠点がほしいという話もあるので、しっかり支援してあげてもらいたい。
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議案に対する採決
議案第168号 平成29年度和歌山県一般会計補正予算
議案第174号 和歌山県立中学校及び高等学校設置条例の一部を改正する条例
議案第190号 県民交流プラザ和歌山ビッグ愛・和歌山ビッグホエール・武道・体育セン
        ター和歌山ビッグウエーブの指定管理者の指定について
は、全会一致で原案


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