2017年12月県議会 雑賀光夫 一般質問 概要記録   中継録画


20171212

1.台風・大雨災害
(1)台風21号の特徴と災害の概要
(2)海南市岡田・室山地域の浸水対策について
(3)農林水産業への被害と対策
  ・農林水産業への被害
  ・農家の実情に合った復旧支援
(4)山崩れと流木対策

2.自然エネルギー開発と自然保護
(1)海南・紀の川風力発電事業
  ・環境アセスを住民にわかりやすく
  ・環境アセスと住民による規制
  ・林地開発の環境影響の評価
  ・環境アセス「方法書」の説明会について
(2)海南市・重根のメガソーラー計画
  ・「林地開発事前協議」について
  ・林地開発「地元同意」とは何か

3.核兵器禁止条約と被爆者署名
(1)核兵器禁止条約とICANのノーベル平和賞受賞
(2)被爆者が呼びかけた核兵器廃絶署名


1.台風・大雨災害
(1)台風21号の特徴と災害の概要
《質問》雑賀光夫 県議
 議長のお許しをえましたので、大きく3つの柱で質問させていただきます。
 第一の柱は、台風大雨被害にかかわってであります。
 台風21号は、大きな被害をもたらしました。お亡くなりになった方、被災されたみなさんにお悔やみとお見舞いを申し上げたいと思います。
 私も地元、海南海草地方だけでなく、紀の川市や新宮市などお見舞いに回ってまいりました。
 まず、台風21号の特徴と被害の概要について、危機管理監にお伺いしたいと思います。

《答弁》 危機管理監
 本年10月の台風第21号の特徴としましては、超大型で強い勢力を保ったまま紀伊半島に接近し、21日午後から和歌山県南部を中心に大雨をもたらすとともに、22日から23日未明にかけまして、台風を取り巻く発達した雨雲により、県内全域が暴風を伴った大雨となりました。
 23日までの72時間降雨量は、新宮市で893.5ミリ、紀の川市で354.5ミリを観測するなど、記録的な大雨となり、新宮市周辺や紀北地域などで多くの浸水被害と土砂災害等が発生しました。
 次に、被害の状況ですが、11月末現在で、人的被害につきましては、死者1名、負傷者3名、住家被害は、全壊が2棟、半壊・一部損壊が334棟、床上・床下浸水した家屋が2,094棟に及ぶなど、多数の住宅が被害を受けました。
 また、県や市町村管理の道路で107箇所、河川で164箇所が被害を受け、大規模な土砂災害も5箇所発生しました。
 農林水産業関係では、農地・農業用施設や林業関係などに約34億円の被害が出たところでございます。
 県では、被災地域の迅速な復旧と被災された方々への支援に、全力で取り組むと共に、引き続き、防災、減災対策の充実に取り組んでまいります。

(2)海南市岡田・室山地域の浸水対策について
《質問》雑賀光夫 県議
 今回の台風被害の特徴があり、課題が浮かび上がってきていると思います。私が見聞きしたことから、今後どういう対応が必要になっているのかを、考えていただきたいと思います。
 海南市内でいうと、室山・岡田地域です。私が駆け付けた時、水は引いていました。ところが、一軒一軒まわってみると、床上浸水のお宅もあります。この前より20cmも高い浸水だといいます。
 紀美野町の議員から電話です。「蓑津呂という地域で、山の木がくずれて家が大変になっている。見に来てほしい」。下津の伏山という地域のみかん山がくずれたと、友人からの電話です。海南金谷線の扱沢での道路の分断、生石山のふもとで山林崩落、次々被害の情報がはいってきました。
 被害の特徴は、①さまざまな土砂崩れ、②大雨による水を川に流すことができないための内水の浸水、であったように思います。
 海南市の室山にしても、紀の川市の丸栖・調月にしても、懸案の箇所での浸水でした。対策は考えられていたのですが、「繰り上げてやってほしい」という声が、私どもへも当局へもとどいているものと思います。どうお考えなのかをお聞かせください。
 紀の川については、奥村議員からも質問いたしました。亀の川の整備計画との関係で、災害対策をどう急ぐのかを昨日の答弁とも重なりますが、県土整備部長にお伺いします。

《答弁》 県土整備部長
 海南市の岡田、室山地域の浸水対策等を目的としまして、亀の川と支川大坪川において河川整備を実施してございます。
 亀の川につきましては、平成22年10月に策定した河川整備計画において、河口から紺屋橋までの約4.8km区間について堤防整備や河床掘削を位置づけ、下流から順次整備を進めてございます。これまでに河口より約600m区間とその上流左岸側約160mが完成し、今年度は、引き続き右岸側の護岸工事と河床掘削を実施してございます。
 また、支川大坪川につきましては、亀の川合流点からJR橋までの約1.2kmの県管理区間において、平成28年度から局所的な対策に着手し、現在、室山団地前において護岸の一部嵩上げや、亀の川との合流点付近において河床掘削するための護岸の補強を実施してございます。
 さらに、市の管理区間であるJR橋上流の岡田地域については、浸水対策として、海南市が排水ポンプ場の整備に取り組んでいると聞いてございます。
 県としては今後とも、様々な機会を通じて予算の確保に努め、亀の川や支川大坪川の整備を進めてまいりたいと考えてございます。

《要望》雑賀光夫 県議
 事前にお聞きしたときは「スピードアップを図り早期完成を目指す」というお考えもあったのですが、急いでいただきたいと思います。また、室山団地前の一部かさ上げですが、あの部分は、大坪川がJR線路下をくぐるところでクランクになっているので、少々のかさ上げでは間に合いません。JRとの関係で工事が難しいのでしょうが、JRへも働きかけて改善していただきたいと思います。これは要望とします。

(3)農林水産業への被害と対策
・農林水産業への被害
《質問》雑賀光夫 県議
 次は農林水産業への被害であります。ミカン畑がくずれた、モノレールが駄目になった、農機具が水につかったなどがあります。こうした被害の実態は、いかがでしょうか。農林水産部長にお伺いします。

《答弁》 農林水産部長
 今回の台風21号による農林水産業被害につきましては、被害総額が約34億4500万円の甚大な被害となっております。
 内訳といたしましては、農作物の風による傷みや冠水、園芸施設における損壊などで約5億7700万円、田・畑の畦畔崩壊や土砂の流入、農道や水路、ため池被害など農地・農業用施設で約16億7300万円、林道の法面崩壊や路側決壊、山腹の崩壊など林業関係で約4億6400万円、養殖魚のへい死など水産関係で約7億2000万円などとなっております。

・農家の実情に合った復旧支援
《質問》雑賀光夫 県議
 私が見せていただいたみかん山について、海南市から調査に来て、国の補助金を受けて復旧するかどうか検討になりました。そこで知ったのですが、国の補助金は、このみかん山を完全復旧することを前提にする。必要な費用は、2200万円になります。それに対して出される補助金は200万円。そこにモノレールの復旧はふくまれていません。
 ミカン農家の方は、「モノレールの復旧に補助してもらえれば、山の崩れたところは、倒れたミカンの木は植え直しながらでもミカンをつくっていける。しかし、2000万円も負担することはとてもできない」と言われます。
 国の補助制度が、農家の実情にあっていないのではないか。以前の大雨被害でも、傾斜地の梅畑の復旧支援が実情に合わないという意見を国に上げていただいたことがあると思うのですが、ひきつづき、現場の実情に合った復興支援をはたらきかけていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 また、国の復旧支援の補助事業以外に、農家への救済支援の施策はないのでしょうか。農林水産部長にお伺いします。

《答弁》 農林水産部長
 県としましては、急傾斜園地での災害について復旧が促進されるよう、事業主体である市町村支援を行ってまいったところです。
 また、議員ご指摘の傾斜地の梅畑の復旧支援に関し、平成23年の台風12号災害を契機に、農地・農業用施設の災害復旧制度の改正を国に対し強く要望を行いました。
 従来は、傾斜が20度を超える農地については、農地災害復旧事業の対象外でありましたが、要望の結果、収益性が高いと認められる場合20度を超える農地についても、農地災害復旧事業の対象となり、急傾斜農地が多い本県にとって非常に有利な改正となったと考えております。
 なお、農業用モノレールにつきましては共同利用・管理を行っているものは、災害復旧事業の対象となりますが、今回の事案のような個人施設については対象となりません。
 国の復旧支援策以外の施策につきましては、農業共済制度のほか、農機具については農業近代化資金等の低利融資制度があります。また、農業用モノレールについては国の果樹経営支援対策事業の補助対象となっております。
 県としましては、災害復旧制度を有効に活用して頂くためにも、市町村に対し引き続き制度を周知するとともに市町村の取組を支援して参りたいと考えております。

(4)山崩れと流木対策
《質問》雑賀光夫 県議
 今回の台風では、いくつもの山崩れが起きています。私は、紀美野町の現場に行ってみてきましたが、崩れた土砂とともに多量の木が流れ出していました。地元の方は、土砂だけでなく流木があったことが被害を大きくしたと話していました。
 山崩れの原因は、雨量や傾斜、地形など一つでなく、いろいろな要因があると思いますが、対策として何が重要であると考えられますか。
 また、山崩れによる流木の発生を抑えるためにはどのような対策が効果的だと考えられますか。農林水産部長にお伺いします。

《答弁》 農林水産部長
 議員ご指摘のとおり、山崩れは雨量や地形、地質、森林の状態など様々な因子が重なり合って発生するものと考えます。
 まず、山崩れを予防するためには、間伐等により森林の適切な密度管理を行い、樹木や下層植生の根の発達を促し、土石を縛り付ける効果を高めることが重要であると考えております。
 その上で万が一の山崩れに備えて、治山ダムを設置することが木の流出を抑えるためには有効であると考えております。


2.自然エネルギー開発と自然保護
(1)海南・紀の川風力発電事業
《質問》雑賀光夫 県議
 第二の柱は、「自然エネルギー開発と自然保護」、超大型風力発電やメガソーラーにかかわってであります。
 前回の9月県議会で、自然にやさしいはずのソーラー発電・風力発電が、企業利益優先で大型化され、森林を破壊すれば本末転倒だと申し上げました。加えて、お金を出して住民の声を抑え込む「覚書」を企業が地元自治会と結ぼうとしている問題をとりあげたところ、知事は「人権のない国の話みたいだ」、つまり、日本ではありえない話だという認識を示されました。
 実を言いますと、私は、あの「覚書」を取り上げるのが、怖かったのです。知事から中途半端な答弁しか得られなかった場合、「誰が覚書を外へ漏らしたのだ」ということになって、区長さんが苦境に立つかもしれない。そこで、「どこの覚書かしりませんが」といって、カモフラージュして質問したのです。
 知事は立派な答弁をしていただいたので、私の心配が杞憂となりました。これからも、さまざまな企業が和歌山県で仕事をすることになりますが、企業と県民が共存共栄できることを願っています。
 ところが心配な問題がいくつもあります。
・環境アセスを住民にわかりやすく
 一つは、9月県会でとりあげた海南市・紀美野町・紀の川市・有田川町にまたがる超大型風力発電の計画です。
 「環境配慮書」を海南市役所で閲覧し、それについての「環境影響審査会」が開かれ、私もその一つには傍聴してまいりました。
 専門家による審査とともに、県民のみなさんが、わかるようにしなくてはなりません。
 その点では大変不親切です。「環境配慮書」はコピーをできない。企業のホームページでも閲覧できるが、印刷できないような加工がされている。計画の全体像を住民がわかりやすく開示するような指導はできないのでしょうか。環境生活部長にお伺いします。

《答弁》 環境生活部長
 環境影響評価において、計画内容を住民にわかりやすく伝えることは重要と考えており、かねてから事業者にはわかりやすい形での情報公開を積極的に行うよう指導してきたところです。
 また、10月25日付けで事業者に通知した配慮書に対する知事意見においても、住民との積極的な対話に努めるとともに、その説明の際には、環境影響及び根拠となるデータ等について正確かつわかりやすく提供するよう述べたところです。
 さらに、県としても事業の概要をまとめた資料についてホームページに掲載し情報の公開に努めているところです。
 引き続き、住民にわかりやすい形での情報提供を事業者に求めてまいります。

・環境アセスと住民による規制
《質問》雑賀光夫 県議
 「環境配慮書」に対して地元自治体から、心配と批判のご意見がよせられています。紀美野町長は、心配な点を列記するにとどまらず、記述内容が「虚偽であるため本書は信頼に足る図書となっていない。」という厳しい指摘までなされています。
 こうした意見に対して、企業は「方法書」を作成し、その説明会など環境影響調査の手続きがすすんでいくわけですが、地元住民・地元自治体の懸念が払拭できない場合、この計画はストップになるのでしょうか。環境生活部長にお伺いします。

《答弁》 環境生活部長
 環境影響評価は、事業計画の内容を決めるにあたり、環境にどのような影響を及ぼすかについて、事業者自らが住民などの意見を聴きながら調査、予測、評価を行い、その結果を踏まえてより良い計画を作り上げていく手続きです。
 事業の実施については、事業者が、地元住民・行政機関からの意見などを踏まえて判断されるものと考えております。

・林地開発の環境影響の評価
《質問》雑賀光夫 県議
 お答えいただいたように、業者が行政や住民の意見を聞く場ということになっています。
 一方、計画をストップできる仕組みは、林地開発の許可を与えるかどうかで「地元同意」が条件になっていることだけがあります。そこで、この風力発電で、森林がどう伐採されるのかという観点から、環境配慮書を読み直してみました。
 4,500KWの風車が、72基建設されます。風車のローターという回転部分は、直径130m、高さは150mという巨大なものです。
 これだけの巨大なものを山の尾根に建設しようとすれば、設置場所、運び込む大きな道路をふくめて、そうとうの森林を伐採しなくてはならないでしょう。しかし、どれだけの伐採をするのかは示されていません。
 環境生活部長にお伺いしますが、森林伐採による環境影響は、評価されるのでしょうか。

《答弁》 環境生活部長
 配慮書の手続きは、事業の規模や場所が定まっていない計画段階のものであるため、伐採の位置や面積などは示されておりません。
 今後の環境影響評価法の手続きの中で、事業者に対し、森林の伐採による環境影響について、適切な評価と適正な環境配慮を求めてまいります。

・環境アセス「方法書」の説明会について
《質問》雑賀光夫 県議
 環境アセスにおける次の段階は、「方法書」を示すことになっています。
 「方法書」というのは、「環境配慮書」に対して出された意見を踏まえて、計画を具体化するものだと思います。そして「方法書」は、地域住民に説明しなくてはなりません。
 方法書の説明会では、住民のみなさんから、たくさん質問が出されるでしょう。
 環境アセスメントをすすめるのは業者ですが、形式的な説明で「手続きはすんだ」というのでは困ると思います。住民の質問にはしっかり答えてほしい。
 環境生活部長はどうお考えでしょうか。

《答弁》 環境生活部長
 先ほどもお答えしたように、環境影響評価は、住民や行政機関の意見を聴きながらより良い計画を作り上げていく手続きであることから、事業者には、住民等の関係者に対し丁寧かつ十分な説明を行うとともに、質問や疑問には真摯に対応する必要があるものと考えております。

《コメント》雑賀光夫 県議
 私は、風力発電というものの可能性を否定しませんが、風力発電の規模が1,000KWを超したところから、健康への被害の訴えが多くなり、その問題の解決の方向が出されていないことから、現段階では、1,000KWを超える風力発電の建設にはブレーキをかけるべきではないかと申し上げてきました。
 さらにこの度の、日本エネルギー株式会社というのは、資本金10万円の会社だそうです。びっくりしました。その親会社は、シンガポールに拠点を置くエクイスエナジーという外国会社のようです。
 こんな会社に、和歌山の自然を、山林をまかしてしまっていいのかという、心配の声が広がっていることを申し上げておきたいと思います。

(2)海南市・重根のメガソーラー計画
《質問》雑賀光夫 県議
 いまひとつの問題は、メガソーラー発電の問題です。とくに最近の大雨被害を見るにつけても、治山治水の重要性を痛感いたします。
 そんなときに、川の上流の山を丸坊主にして、ソーラーパネルを貼り付けるメガソーラー計画がすすんでいる。
 その海南市重根で計画されている旭メガソーラーについて、私たちは心配しています。地元自治会への説明が進んでいるわけですが、この説明の手法には、いろいろの疑問があります。
・「林地開発事前協議」について
 近隣のメガソーラー計画の場合、事前に森林開発の「事前協議書」を県に提出しています。私たちは、この協議書の情報公開請求によって、計画の全容と、県がその計画についてどんな意見を付しているかを知り、事業者がそれをどうクリアーしているかチェックすることができました。
 しかし、旭メガソーラーの場合、県とは事前協議せずに、地元4自治会と区長のみを対象に説明会をおこなっています。したがって、日方川下流を含む海南市民は、計画の全容を直接知ることができません。説明会に参加した自治会関係者から説明を聞くしかありません。
 ただ、海南市へは届け出があり、土地利用面積は18ヘクタールとなっています。
 そこで質問です。今回のような大規模な開発で、「事前協議」をしないメガソーラー企業がこれまでにあったのでしょうか。また、「事前協議」がされるべきだと考えますが、農林水産部長、いかがでしょうか。

《答弁》 農林水産部長
 林地開発許可制度における事前協議ですが、開発に係る事務手続が適正に行われるよう、関係機関が所管する法令等を明確にする手段でございます。
 この事前協議は、原則として開発に係る森林面積が10ヘクタールを超える場合や開発事業者からの申入れがあった場合に行うものでございます。
 これまで10ヘクタールを超えるメガソーラー開発については、すべて事前協議がなされており、今回の森林開発区域が10ヘクタールを超える場合には、当然、事業者から事前協議申出書が提出されるものと思われます。

《コメント》雑賀光夫 県議
 この業者は、「県河川課の指導をうけて」と繰り返し住民への説明の文書で述べています。しかし、河川課に問い合わせると、協議に来たことはないというではありませんか。
 河川課の方では、業者に注意をしてくれたのでしょう。業者は、地元説明会で12月9日付で、「まだ協議にまで至っておりません」と「訂正とお詫び」の文書を出してきたようです。
 事実と異なる説明をして、地元自治会役員を信用させるという手法は、重大です。この業者の信用性を疑わざるをえなくなってきます。

・林地開発「地元同意」とは何か
《質問》雑賀光夫 県議
 さらに、問題があります。地元4自治会では、いろいろな意見があります。そこで業者は「多数決で区の意見を決めてもらって、区と水利組合の同意ですすめたい」という説明をした。
 業者が地元自治会に「多数決で決めてほしい」などというなど、とんでもない話です。「重根区」というのは、13自治会の集まりで、そこには区長がいますが、多数決をとる性格ではない。
 この企業は、いろいろなところで事業を展開しているプロです。一方、地元自治会の役員というのは、初めてこういう問題に直面する素人です。地元自治会をこんな論法で、自分に都合の良いペースに巻き込もうとすることは、私が問題にしている「企業倫理」からいってどうなのか。
 この業者のやり方には、大きな不信を持たざるを得ません。
 そこで、農林水産部長にお伺いしますが、「地元同意」という場合、県としては何をもって地元とお考えでしょうか。

《答弁》 農林水産部長
 林地開発許可制度における地元同意につきましては、森林法及び和歌山県林地開発許可制度事務取扱要領に基づき、開発行為の区域内の権利者や開発行為に対する利害関係者の同意としております。
 開発行為に対する利害関係者の同意の範囲については、開発地に隣接または下流域の直近に位置し、開発の影響を受けるおそれのある単位自治会及び権利関係者と考えております。
 なお、その同意書には、自治会の総会などで関係者の合意形成を図った経緯が確認できる書類の添付を求めているところでございます。

《要望》雑賀光夫 県議
 「区長」が印をおして「地元同意」にならないことは、はっきりしました。しかし、私は、日方川下流を含めて、影響が大きい自治会を含めるべきだと申し上げておきます。
 この、旭メガソーラーの開発場所は、藤白断層という活断層が走っている地域です。林地開発の「事前協議」も、計画の全体像を海南市民に明らかにしてすすめるように、指導をお願いしておきます。


3.核兵器禁止条約と被爆者署名
《質問》雑賀光夫 県議
 第三の柱は、核兵器禁止条約・被爆者署名についてであります。
 核兵器廃絶にかかわって質問をしたのは、昨年の6月、オバマ前アメリカ大統領がヒロシマを訪問したことにかかわってのことでした。
 その後、大きな歴史的動きがありました。一つは、国連で核兵器禁止条約が採択されたこと、もう一つは、そのことに大きく貢献した「ICAN」という国際NGOが、ノーベル平和賞を受賞したことでした。どちらでも、日本の被爆者の訴えが大きな役割を果たしたと伝えられています。12月10日に行われた、ノーベル平和賞受賞式には、カナダ在住の被爆者・サーロー節子さんが登壇し、核兵器廃絶への訴えは大きな感動を呼んだと報道されています。
 いま、北朝鮮の核開発が、世界から大きな批判を浴びています。歴史に逆行するものとして、厳しく批判されなくてはなりません。しかし、その批判を本当に迫力あるものにするためにも、核兵器禁止から廃絶への大きな流れを作っていくことが必要です。
 国民一人一人、一つ一つの自治体も、核兵器廃絶という悲願に向けての歴史の歯車を回さなくてはなりません。私の出身地海南市、そして紀美野町では、合併前の4つの自治体が非核宣言をしていたのですが、合併によって「宣言」が消えてしまっていました。これではいけないと、9月議会では、紀美野町議会が新たに非核宣言を決議し、12月議会には海南市議会でも非核宣言をという請願が、超党派の議員さんの賛同を得ながら審議されています。それが採択されれば、県内30市町村中、27の市町村が、非核宣言をしたことになります。
 県議会は、非核宣言をしています。和歌山県としても、しっかりとこの流れに加わっていただきたいと思います。
(1)核兵器禁止条約とICANのノーベル平和賞受賞
 まず、核兵器禁止条約と、ICANのノーベル平和賞受賞ということについて、知事はどんな思いをもっていらっしゃるでしょうか。

《答弁》 仁坂知事
 核兵器廃絶については、議員ご指摘のとおり、平成10年6月、和歌山県議会において「核兵器廃絶平和県宣言」が議決されております。この宣言は、核兵器の廃絶と恒久平和の実現を心から希求する全ての県民の願いが込められたものであると認識しております。
 核兵器廃絶に向けた活動は、世界中で数多くの団体が取り組んでおり、今回ノーベル平和賞を受賞したICANの活動も、その中の一つであると理解しております。
 核軍縮、不拡散は、日本人の願いであると思いますので、受賞は喜ばしいものだと思います。
 核兵器禁止条約については、被爆国である我が国の国民の願いであり、実現できれば良いという気持ちを皆が持っていると思っております。日本人は誰もその志に反対の人がいないのではないかと思います。私もそう思いまして、日本は賛成するものだと思いました。確かに、核兵器国も非核兵器国も、すべての国が批准をすれば、核兵器のない世界に近づくはずであります。しかしながら、日本政府はこれに加わりませんでした。それはどうかなと正直言って私は思いました。
 でも、その後分かったことは、核保有国が皆入らない、一国でも賛成しない国があると、現実には抑止力で平和が保たれている世界でありますから、なかなか実効があがらない。
 ましてや、核保有国や、そのために躍起になっている国々に囲まれている日本では、日米安保条約による米国の抑止力に依存せざるを得ないというのが、好むと好まざるとに関わらず、現実であります。したがって、日本国政府は賛成できなかったんだろうと推測をしております。
 日本国政府は、この条約に批准をせず、この条約に加盟しないで、核兵器国と非核兵器国との信頼関係の再構築を最優先とした、現実的アプローチをとる、と表明をしております。
 この表明は、抽象的なものに留まっているとは思いますけども、以上の現実のもとにある日本の国民としては、政府の立場を理解せざるを得ません。

(2)被爆者が呼びかけた核兵器廃絶署名
《質問》雑賀光夫 県議
 この二つの出来事に、被爆者が大きな役割を果たしたということを申し上げました。被爆者がその思いを託したのが、被爆者が呼びかけた核兵器廃絶署名、通称「ヒバクシャ国際署名」であります。議場に資料として、お配りしています。
 知事もこの署名に協力し、広く呼び掛けるために力を尽くしていただきたいと考えますが、いかがでしょうか。

《答弁》 仁坂知事
 議員ご指摘の核兵器廃絶国際署名は、核兵器禁止条約の締結への賛同を求めているものであります。それ以外のことも書いてありますが、そういうことを書いてございます。
 核兵器禁止条約については、さきほど答弁いたしましたとおり、理想としてはすべての国で締結してほしいと考えておりますけども、現実においては、およそ、それは実現できないと考えております。そう考えて、政府も条約に賛成できなかったものと考えております。
 それに対する政府の苦しい立場を理解できる者としては、あるいは、ましてや知事として県民の名誉のために言ったことはちゃんと結果を出すということを要求されているという知事の立場を考えますと、この条約に入れと言っているものに署名することは遠慮しておきたいと思います。

《再質問》雑賀光夫 県議
 知事は、誤解していらっしゃると思います。
 まず、日本政府は、核保有国と核兵器廃絶の立場に立つ国々の間を分断することになるといって、このたびの条約には賛成していません。そのことに、国際的にも批判が高まり、安倍首相は被爆者から「あなたはどこの国の総理代人ですか」と批判されました。
 しかし、そのことはわきに置いておきましょう。この署名は「核兵器を禁止し廃絶する条約を結ぶことを、すべての国に求めます」と言っているのであって、いつ、どんな手順で結ぶかということまで特定しているものではありません。「核保有国が加入しない中では日本は加入できない」という日本政府を批判して、すぐにこのたび結ばれた条約に参加しなさいと言っているわけではありません。
 だから、奈良県、兵庫県、滋賀県、京都府の知事も、署名をしているわけです。
 それでも知事は、この署名に協力できませんか。

《再答弁》 仁坂知事
 雑賀議員の文章解釈に文句をつけるつもりはないんでございますが、しかし、私の見解とは違うなと思うわけです。
 雑賀議員は、これは一般的に全ての締約国が核廃絶をすべきだと言っているだけだとおっしゃいましたが、それでは国連で提案された条約は、全ての締約国が入らなくても良いという条約であったかというと、全部がそういうふうにしましょうという提案であったわけです。したがって、同じものだと考えるのが、私の文章解釈ではないかと申し上げておきたいと思います。
 最終的に核兵器禁止条約の締結をするかどうか、国の外交や安全保障に関わる問題でありまして、国の専権事項であるわけで、地方自治の代表であります知事の署名を求める議員の考えに、あまり私は合理性がないと思います。
 無理に迫るというのは、知事を利用して、政府を困らせようとする政治的意図があるのではないかという疑いを、疑いです、招く恐れがあると、私は思います。
 核反対を唱えたり、行動したりするということは、意義のあることであるけれども、万人受けのする免罪符みたいなところがあるなというような気もいたします。
 署名する以上、身命を賭して実現に向けて行動しないといけないものではないかと私は思っておりまして、さきほど申し上げましたとおり、この条約を日本政府が賛成をする、あるいは世界で実現できるというのは簡単ではないというものに署名をするのは、美しい概念に立っているという、いわば免罪符を買っただけというような気がいたしまして、他の知事のことは一切コメントいたしませんが、私の流儀ではないと考えます。

《コメント》雑賀光夫 県議
 署名いただけないのは残念ですが、署名というのは自発的にしていただくものですから、「署名しないと辛抱ならん」というわけにはいきません。
 今日のところは、ここまでにしておきましょう。
 以上で、一般質問をおわります。


 
                                               仁坂知事の答弁を聞く、雑賀光夫県議(右)
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