2018年9月県議会 奥村規子 一般質問 概要記録   中継録画
2018920
1.住みよいまちづくりについて
(1)商店街の振興・活性化について
(2)市街地再開発事業への県の補助金について

2.山地災害について
(1)山地災害危険地区数の現状について
(2)治山事業にかかる台風20号・21号での山地災害の発生状況と復旧について
(3)最近の集中豪雨にともなう林地開発許可での対応について

3.学校給食について
(1)学校給食の実施状況と食育のとりくみ
(2)学校給食の安全性の確保について


1.住みよいまちづくりについて
(1)商店街の振興・活性化について
《質問》奥村規子 県議
 議長のお許しを得ましたので、通告に従って3項目について一般質問をさせていただきます。
 一つ目の項目は、住みよいまちづくりについてお尋ねいたします。
 今年の夏は異常な気温の上昇に続いて豪雨災害や台風20号・21号に大阪・北海道での地震など、相次ぐ大規模災害が起こりました。亡くなられた方々に心から哀悼の意をささげるとともに、被災された皆様にお見舞い申し上げます。
 あらためて、災害に強い防災・減災のまちづくりが、喫緊の課題であることが突きつけられました。高齢者をはじめ、障害者、子どもなど、特に支援が必要な人がいち早く避難できるよう、具体的な仕組みを整えることが急がれます。住民同志の繋がりも大切になってきています。このようななかで、地域コミュニティの活性化の一つとして、商店街の再生が求められています。
 和歌山県では、新たな長期総合計画が策定されて2年目となり、「世界とつながる愛着ある元気な和歌山」を目指す将来像として、様々な取り組みが行われています。
 その一つとして、「活力と魅力のあるまちづくり」が進められているところです。一万人当たりの小売業の商店数が全国3位ということから、中小企業の活性化は重要です。しかしまちなかでは、住民になれ親しまれ、暮らしと地域社会を支えてきた商店街が停滞・衰退し、空き店舗とシャッター通りが目立っ状況が今も続いています。
 毎日の生活に欠かせない身近な商店がなくなり、自動車が使えないお年寄りが困っています。商店街の衰退は、単に中小商店だけの問題ではありません。商店街の衰退の原因はさまざまですが、個々の商店街の努力だけでは克服できるものではないと考えます。「バブル」崩壊後の経済失政と国の「構造改革」によって、国民の所得と消費購買力が抑えこまれ、売り上げの大幅な減少が大きく響き、その上に、大型店の出店ラッシュと深夜営業など、無秩序な「競争」激化が商店街を直撃しました。
 1990年代、国は周辺小売店との調整のための法律、大規模小売店舗法(大店法)の規制を相次いで緩和し、1998年に廃止をしてしまいました。その結果、大型チェーン店による無秩序な出店と営業時間の野放し状態が一気に広がり、外国資本の参入もあって、ショッピングセンターの巨大化や大型店同士の熾烈な競争が繰り広げられています。私は、こういったことが商店街や地域経済の問題にとどまらず、「まち」のあり方や住民の暮らしにも深刻な影響を及ぼしてきたと思います。
 中心市街地や住民に身近な商店街がつぶされたうえに、結局、大型店自身も消失するなど、「まち」そのものが空洞化する深刻な事態が、全国各地に生まれたのではないでしょうか。欧米諸国では、1970年代・80年代に「規制緩和」と大型店の郊外乱開発によって商店街が荒廃し、都市と下町が空洞化して大きな社会問題になりました。この大失敗から各国は90年代に入って、大型店の乱開発の規制を強化し、地域社会の核である商店街を振興する方向に大転換しています。
 大型店の乱開発の規制と商店街の振興・再生とを「車の両輪」とする、「まちづくり」ルール確立の方向が大事だと考えます。「高齢者が歩いて買い物のできる商店街」、「安心して住み続けられるまちづくり」をめざして、中小商店主と地域住民、事業者、消費者、NPO、大学、自治体により模索され取り組まれています。こういったことをしっかり支援することこそ大事だと考えます。
 そこでお尋ねいたします。誰もが住みよいまちづくりに向けて、商店街の振興・活性化についてどのようにお考えですか。

《答弁》 商工観光労働部長
 商店街の振興・活性化について、県では、これまで商店街の空き店舗を活用し、少子高齢化など社会的課題に対応する事業に補助するとともに、担当者が商店街に赴き、地元関係者とソフト事業の企画・立案を支援するなど商店街の活性化に向け取り組んできたところです。しかしながら、その効果も限定的なものであり、賑わいが続かず活性化に至っていないのが現状です。
 このような中、商店街を活性化するには、まず商店街の方々自らが、どのようなサービスを提供すれば地域住民の方々に利用していただけるかなど、商店街の皆さんで一体となって考えることが重要であるとともに、地域住民の方々についても、大いに利用すべきであると考えます。
 また、まちづくりを考える主体である市町村が、将来のまちのあり方を考え、まちの構造をどのようにしていくか設計していくことが大切であり、空洞化した中心部に機能を集約し再開発するとともに、商店街の振興・活性化に向け積極的に取り組んで行くべきであります。
 県としても、商店街の振興・活性化は大きな課題であると認識しており、他府県の事例などの情報収集に努めながら、そうした取り組みを支援して参ります。

《要望》奥村規子 県議
 中小企業は日本経済の根幹であり、中小企業憲章には「社会の主役として地域社会と住民生活に貢献」する存在と示されています。地域に根をおろし、モノづくりやサービスでの需要にこたえ、雇用を生み出している中小企業の役割はますます大きくなっています。
 2014年6月には、小規模企業振興基本法ができました。この法律は「成長発展」だけではなく、「事業の持続的発展」の重要性を明確にしています。あらためて、小規模企業振興法の理念と県の中小企業振興条例に基づき、個人事業主を含め「小企業者」などを「地域経済の主役」として支援施策をいっそう強め、商店街の再生に力を注いでいただきたいと思います。

(2)市街地再開発事業への県の補助金について
《質問》奥村規子 県議
 県は、にぎわいのある魅力的な都市づくりとして、和歌山市と連携して、市街地再開発事業に取り組んでいます。総事業費は現在のところ約240億円で、そのうち国・県・市の補助金は約111億円と聞いております。県はどのような基準の下に補助金を出していますか、お尋ねいたします。

《答弁》 県土整備部長
 和歌山県では、まちなか居住の促進と、にぎわいの創出に資する市街地再開発事業を行う者を助成する市町村に対しまして、補助金を交付することとしております。
 具体的には次の4つの要件を定めてございます。
 ・都市再開発法に基づく市街地再開発事業で、社会資本総合整備計画に位置づけられていること。
 ・まちなか居住の再生を図るべき区域として市町村の計画に位置づけられた区域内や、都市機能や居住を誘導する区域を定める立地適正化計画で設定する都市機能誘導区域のうち、中心拠点区域内で行われること。
 ・30戸以上の共同住宅又は、多目的ホールや屋内公開広場などの、にぎわい交流施設が含まれる、複合施設が整備されること。
 ・まちなか居住の促進、都市機能の誘導、景観改善等に対して先導的な役割を果たす事業や、他の都市機能を整備する事業の推進に資する事業であって、当該都市の活性化のために特に必要であること。
 以上の4つでございます。
 和歌山市駅前地区をはじめとする3地区で実施しております市街地再開発事業は、これらの要件に合致していることから、和歌山市に対し補助をしているところでございます。

《要望》奥村規子 県議
 中心市街地の開発事業は、民間の事業に多額の税金を投入するものです。民間投資の喚起を口実に中心市街地の開発を促進するということになり、住民不在の開発を招くものになりかねません。住民本位のまちづくりにぜひ取り組んでいただけるよう要望いたします。


2.山地災害について
(1)山地災害危険地区数の現状について
《質問》奥村規子 県議
 和歌山県の森林面積は36万1260ヘクタールで、県面積の76.5%を占めています。7月5日夕刻から降り始めた雨が、翌6日朝にかけて降水量が300ミリを越える大雨となり、土砂災害・浸水被害が発生しました。その後、和歌山市の山林を専門家の方や住民のみなさんと調査に行って参りました。千手川・高川流域でも多くの斜面崩壊・土砂流出が発生し、積み重なった流木の上を乗り越えなければ前に進めない状況でした。
 そこで、県下の状況をお尋ねしたいと思います。現在の山地災害危険地区数を区分ごとにお聞かせください。

《答弁》 農林水産部長
 県では、地形・地質等からみて、山地の崩壊及び渓流からの土砂流出などにより、家屋や公共施設等に被害を与えるおそれのある箇所を山地災害危険地区とし、防災や避難計画の啓発に努めているところであります。
 その区分ごとの箇所数は、山腹崩壊危険地区が7,432箇所、崩壊土砂流出危険地区が6,044箇所、地すべり危険地区が40箇所、合わせて13,516箇所となります。

(2)治山事業にかかる台風20号・21号での山地災害の発生状況と復旧について
《質問》奥村規子 県議
 山地災害から県民の命と財産を守るため治山事業に取り組まれていますが、今回の台風20号・21号での本県の山地災害の発生状況と、これからどのように復旧されていくか教えてください。

《答弁》 農林水産部長
 本県を襲った台風20号及び21号による治山事業関係の山地災害の発生状況については、9月18日現在、被害箇所数36箇所、被害額12億2550万円となっています。
 被害の主な概要につきましては、台風の影響による豪雨と暴風による山腹の崩壊や、渓流荒廃地からの土砂流出によるものとなっています。
 そのため、森林の持つ災害防止機能など、公益的機能の回復を図るため、林野庁の補助事業などを活用しつつ、国の採択要件に適合しない箇所につきましては、県単独の治山事業などにより復旧に努めてまいります。

(3)最近の集中豪雨にともなう林地開発許可での対応について
《質問》奥村規子 県議
 森林の開発許認可に当たって、最近の集中豪雨や台風、地震などの発生状況をどう考えていますか。住民の不安がさらに大きくなっていることに対して、県としての対応をどう考えていますか。お答えください。

《答弁》 農林水産部長
 近年の集中豪雨等により、全国的に大きな災害が発生しているところであり、当県におきましても今後の災害発生について危惧するところであります。
 林地開発許可制度の審査に使用する公共事業等の技術基準については、平成26年の降雨強度の見直し等、大災害の発生を契機に変更されてきております。
 今後も引き続き技術基準を遵守しながら、災害の防止が図られるよう慎重に審査をすすめてまいります。

《意見》奥村規子 県議
 和歌山県の土砂災害マップは、住宅地や公共の施設などがあるところで土砂災害、土石流災害、洪水及び地すべりなどの恐れがある区域が指定されているのであって、すべての区域が指定されているわけではありません。住民のみなさんと調査に行ったところで土砂災害、土石流の発生したところは指定区域外でした。自然災害はいつ、どこで、どんな規模で発生するかわかりません。適切な災害への対応と、慎重な許認可審査をお願いします。これは意見です。


3.学校給食について
(1)学校給食の実施状況と食育のとりくみ
《質問》奥村規子 県議
 2015年9月に食育基本法が改正されました。第20条には学校、保育所等における食育の推進について述べられています。その中に、地域の特色を生かした学校給食等の実施とありますが、現在の実施状況と方式についてお尋ねいたします。また、第3次食育推進計画の目標達成のための取り組みについても、栄養教諭の配置も含めお答えください。

《答弁》 宮下教育長
 学校給食の実施状況につきましては、今年度、小学校では237校中236校で、99.6%、中学校では120校中110校、91.7%で、第3次和歌山県食育推進計画では小・中学校とも100%とすることを目指しております。
 実施方式につきましては、「単独調理場方式」が138校、「共同調理場方式」が174校、また、他市町が運営する給食センターや民間施設に委託している学校が35校あります。いずれの場合も、設置者である市町村が、給食施設の維持管理、調理員等の人員確保などについて総合的に検討し、それぞれの実情に応じた調理場方式としております。
 第3次和歌山県食育推進計画では、「全ての小・中学校に栄養教諭が食に関する指導訪問を実施する割合を100%」にすることを目標としております。栄養教諭につきましては、現在、40名を配置し、学校における食育の中心的な役割を担っております。
 今後、栄養教諭が所属校以外の学校へも積極的に指導訪問するなど、効果的・効率的に食育を推進することにより、推進計画の目標の達成に努めてまいります。

(2)学校給食の安全性の確保について
《質問》奥村規子 県議
 ある県では、PFIの学校給食現場では大量に輸入食品が使用されていることが判明し、民間委託の現場では外国産米も使われているということです。和歌山県の学校給食の安全性は、どのように確保されているのでしょうか。国産食品と輸入食品の比率及び品目はどのようになっていますか。また、本県の学校給食における地場産物の利用を拡大するための取り組みも教えてください。

《答弁》 宮下教育長
 学校給食の安全性につきましては、「学校給食衛生管理基準」に基づき、食品の選定や購入・納入時、また、子供たちが食べる前に校長・栄養教諭等が点検・確認することにより、安全性を確保してございます。
 国産食品と輸入食品の使用状況につきましては、国産食品は約80%で、米については全て県内産を使用してございます。また、約20%の輸入食品は、小麦や砂糖、ごまなどとなっております。
 地場産物の使用割合は、ここ数年全体の26%前後で推移しております。第3次和歌山県食育推進計画では目標を40%と掲げ、利用拡大を進めておりますが、保護者の経費負担の抑制や同一規格での安定供給等が課題となっております。このことから、農林水産部と連携して「学校給食での和歌山産品利用拡大戦略アクションプログラム」を策定し、昨年度から取組を進めております。
 主な取組といたしましては、市町村ごとに農産物直売所などの生産者と給食センターなどの購入者をつなぐ組織づくりを県が支援し、提供可能な地場産物の食品と数量、規格等の情報を共有し、地場産物を安定して供給できる体制の確立を図っているところです。
 また、地場産物の活用は、地域の自然、文化や産業、生産の苦労への理解を深め、食に対する感謝の気持ちを育むとともに、ふるさと教育の一環としても意義あることから、小学校、中学校、特別支援学校にみかんやサバ、ジビエを無償で提供してございます。
 今後も、引き続き、学校給食の安全性の確保とともに、地場産物の積極的な活用を推進してまいります。

《要望》奥村規子 県議
 学校給食の無償化について要望いたします。
 子どもの貧困が社会問題となっています。子どもの貧困対策としても、少子化対策としても、子どもの食のセーフティネット、社会保障としての学校給食の無償化を国制度としてすすめるよう、働きかけをお願いしたいと思います。
 広島県のある町で、給食費未納の世帯が、保育料や国民健康保険料、固定資産税など、市への支払いを軒並み滞納していたという例がありました。給食費未納を、子どもの貧困のSOSと受け止め、未納の背景を知り、学校から支援制度につなげることができると思います。小中学校の給食を無償にすると、日本全体で年額5000億円かかると言われていますが、お隣の韓国では、すでに無償化がすすんでいます。給食のはじまりは日本より遅く、朝鮮戦争(1953年)直後に多くの欠食児童が出て、海外の支援で脱脂粉乳の支援が始まり、その後、小学校、高校、中学という順に制度を普及させたということです。日本でも無償にする自治体が徐々に増えてきています。
 すべての子どもを対象に、そのなかで特に困っている家庭が救済される制度として考えていただきたいと思います。
 ぜひ実現できるように、県として国への働きかけを重ねて要望します。


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