2018年9月県議会 雑賀光夫 一般質問 概要記録   中継録画


2018921
1.台風21号にともなう停電について
(1)「停電情報システム」とその不具合について
(2)停電時における関西電力と自治体の連携
(3)広範囲、長期の停電の教訓と課題について
(4)地域資源を総動員した防災対応
(5)電話の不具合の問題について

2.県土整備事業の進捗について
(1)国道370号坂井バイパスの年度内完成について
(2)海南市の津波防災堤防の進捗と完了の見通し
(3)亀の川と日方川の河川整備計画に基づく整備の進捗状況等について

3.知事選挙に臨むいくつかの争点について
(1)IR・カジノ誘致について
(2)クラスサイズ縮小についての知事の考え
(3)不合理な子ども会施策について


1.台風21号にともなう停電について
《質問》雑賀光夫 県議
 議長のお許しを得ましたので質問にはいります。
 このたび、台風第21号では大きな被害がありました。被災されたみなさまへお見舞い申し上げます。私も、5晩、ロウソク生活を経験しました。
 その後、私は紀美野町に入りまして、その災害の大きさにおどろきました。谷あいの集落には、木が倒れ車が入れなくなっている。そこに町職員は3リットルウォーターバッグを一輪車に載せて訪問したといいます。
 この議会の冒頭で、知事は、配布文書に付け加えて「日本ではじめてのことと思いますが、立木の伐採を助けながら停電の解消につとめている」と述べられた。私は大変大事なことだと感じながらお聞きしました。県民の苦難に心を配り、やれることは何でもすることが大事です。
 紀美野町の町長さんも、仁坂知事からはなんどもお見舞い・激励の電話をいただいたと感謝しておられました。
 災害と言っても、道路がくずれたとなると道路の担当課がでかけて修復する、川があふれたとなると河川課が担当することになるのですが、「停電」となりますと、基本的には関西電力の復旧を見守るしかありません。
 では、行政がまずやるべきことは、なんだろうか。
 第一は、情報を共有して、住民の安心を担保することでしょう。
 第二は、災害弱者についての、安全を担保することでしょう。
 私自身、自分の家が停電になった時考えたのは、私の家が停電になっていることを電力会社が把握してくれているのかどうかという不安でした。
 関西電力の停電窓口には、なかなかつながらない。和歌山市役所に電話してみました。すこしつながりにくかったのですが、間もなくつながり、事情を申し上げると、「関西電力に伝えます」と言ってくれました。
 停電を把握するシステムに不具合が生じたという報道があったからなお心配しました。そこで質問です。
(1)「停電情報システム」とその不具合について
 第一点、停電があったとき、電力会社は、どこの家に電気が送れていないのかということを検知するシステムはもっているのでしょうか。
 「停電情報システム」の不具合というものは、どういう性格のものだったのでしょうか。商工観光労働部長からご説明下さい。

《答弁》 商工観光労働部長
 関西電力では、高圧の配電線の停電状況を自動で感知し、市町村ごとの停電軒数の概数をホームページで公表する「停電情報システム」と呼ばれるシステムを運用していると承知しています。ただし、このシステムでは、高圧の配電線より需要側にある変圧器の不具合や建物への引込線の断線などに起因する停電については、個別に把握することができないと聞いています。
 また、関西電力に確認したところ、9月4日午後から生じた「停電情報システム」の不具合は、台風21号の影響により、想定以上に多くの停電が発生したことでシステムの処理能力を超えた情報処理を行った結果生じたものであるとのことです。同社では、システムサーバーの増強及びソフトウェアの改修を行い、6日の夜には同システムの機能を回復させたと聞いています。

(2)停電時における関西電力と自治体の連携
《質問》雑賀光夫 県議
 第二点、停電になれば、問い合わせの電話が殺到するのは当然です。電力会社だけではさばききれない状況で、県・市町村にも電話が殺到したと聞いています。住民の安心を担保するための仕組みが必要です。自治体に関西電力が職員を派遣してくれたということもきいたのですが、どういうことをしてくれたのか、今後どういうことを検討しているのでしょうか。

《答弁》 危機管理監
 関西電力に確認したところ、市町村に台風第21号による停電に関しての問い合わせが殺到したことから、市町村からの要請により、停電箇所などの問い合わせ等の対応を行い、自社へ報告するなどの情報連携を行うことを目的に市町村へ派遣したとのことです。
 なお、関西電力では、今後、今回のような停電の際には、必要に応じ、あらかじめ職員を市町村へ派遣する方針であると聞いております。

(3)広範囲、長期の停電の教訓と課題について
《質問》雑賀光夫 県議
 第三点、このたびの停電が、予想外に大規模で復旧に時間がかかったことから、どういう課題がうかびあがってきているのか。送電線の老朽化というような問題はないのか、送電線の地中化ということがすすんでいたら、もう少し被害はすくなかったのではないかなども考えます。
 とくに紀美野町では、どんどん木が大きくなってくる山中に送電線がはしっているわけです。送電線の地中化というのは、いままでは都市部の話だと思っていたけれども、山林地域にこそ必要ではないのか。一本の電線が切れても別のルートで電気をおくれるようなバイパスは考えられないのか。いっぺんにできることではありませんが、重点的にでもこうしたことが検討されなくてはならないと感じたのですが、関西電力はどう考えているのでしょうか。危機管理監にお伺いします。

《答弁》 危機管理監
 山林地域での電線の地中化につきましては、関西電力に確認したところ、樹木の倒壊や風雨の影響を受けにくいものの、電線の破断などの事故点の把握に時間がかかることや、土砂災害の場合には復旧が更に長期化するなど、さまざまな課題があるとのことです。
 また、電線ルートの複線化ついては、停電を回避する有効な方法でありますが、山林地域で複数のルートを確保することは極めて困難であるとの回答がありました。
 一方、関西電力では、今回の停電を受け、9月14日に社長を委員長とする「台風21号対応検証委員会」を設置し、早期復旧、顧客対応、自治体との連携などの課題について、改善策の検討を行い、それぞれの地域特性に応じた適切な送電ルートのあり方や、自然災害を踏まえた電線などの設備強度化の可能性についても検討されると聞いております。

(4)地域資源を総動員した防災対応
《質問》雑賀光夫 県議
 紀美野町でお伺いした地区(桂瀬地区)には、10人のお年寄りが泊まり込んでいる介護施設があり、隣には集会所がある。一週間停電した。地域の業者の方が発電機を貸してくれてのりきったのですが、大変だったそうです。
 地域の消防団は詰め所ごとに発電機をもっている。消防団などもふくめて、地域の防災資源をフル動員できるシステム、たとえば町長が判断すれば使えるというようなシステムが必要ではないかと思ったのですが、どのような対応をされたのでしょうか。危機管理監にお伺いします。

《答弁》 危機管理監
 市町村長は災害時において、住民の生命と財産を守るため、それぞれ地域の持てる資源を最大限活用して災害対応を行っております。
 議員ご質問の紀美野町におきましても、停電が長期化した地域において、町、消防団、自主防災組織等が備えている発電機を、診療所や避難施設等で活用するとともに、家庭用ボイラーを使用する各家庭に発電機を持ち回る等の対応も行ったと聞いております。
 また、県としても、企業からの貸出しの申し出があった発電機を調達して、町の希望を聞いて配布を行ったり、尾崎要二議員(自民党県議団)から直接ご指導をいただきながら、紀美野町や有田川町と連携を取り、関西電力の移動電源車の配備を行う等、支援に努めたところであり、今後とも、災害時にはあらゆる資源を総動員して対応してまいります。

(5)電話の不具合の問題について
《質問》雑賀光夫 県議
 わたしの生活相談所に、「電話がかからないので困っている」という相談が入りました。私は、「113」に電話してみました。やっと通じた。「修理は予約を受け付けますが、10月26日になります。」という返事をもらったのが、9月13日ごろのことになります。
 NTTというのも随分人減らし合理化をすすめてきた。その結果がこういうことかと思いましたが、今はそんなことを言ってもどうもなりません。
 そこで私の頭にひらめいたのは、「電話回線に不具合が起きたのはたくさんあっても、今や携帯電話が普及している。電話線の不具合がおこった家庭で、家族は一人も携帯電話を持っていない家庭にしぼりこめば、きわめて少数ではないか。優先して修理するか、携帯電話を無料で貸し出すことができるのではないか」とういうことでした。
 県では、これまで固定電話の早期復旧に向け、どのように働きかけてきたのか。企画部長にお伺いします。

《答弁》 企画部長
 NTT西日本によりますと、通信ビル間の中継伝送設備の障害は自社システムにより把握できるものの、通信ビルから加入者宅までの電柱・ケーブル等の損傷については、主に利用者からの申告によって把握しており、またそれによって復旧対応を開始するということです。
 さらに、県内には停電時には利用できない光IP電話が、約12万回線提供されておりまして、復電、要は電気が復旧するまでは通信が出来るか分からず、復電後に利用者から申告があって初めて不具合が分かるというふうになっているということです。
 このことを踏まえまして、県では復電状況に鑑み、9月14日に知事の指示により危機管理局から住民の方々に対し、固定電話の不具合があった場合は、NTT側では分からないので、NTTに申請を行うよう注意喚起いたしました。
 結果的に、県内でのNTTへの固定電話の不具合の申請については、発災翌日の9月5日では284件であったものの、復電するに従って増加し、昨日、9月20日時点までにのべ3,556件あったということです。
 県では、NTT西日本が固定電話の復旧に長時間を要しており、県民生活に多大な影響が生じていることから、9月14日に、知事からNTT西日本の小林代表取締役に対し、通信復旧人員の増強を含め早期の復旧を要請し、昨日、9月20日時点までに2,640件の復旧が完了したところです。
 また、9月19日にはNTT西日本から、今月末、9月末までに県内の全ての復旧作業が完了見込みとの報告がありました。議員ご質問にあった10月26日よりは早くなっておりますが、電力や携帯電話等の他のインフラと比較して復旧のペースが非常に遅いということから、復旧を前倒しするよう強く要請しているところです。
 県としては、NTT西日本の固定電話の復旧状況を引き続き注視し、必要な対応を取っていくとともに、今回の台風第21号における通信事業者等の対応の検証を踏まえまして、今後の災害時における通信の確保や復旧の更なる円滑化に向けた取り組みについて協議を進めてまいります。

《コメント》雑賀光夫 県議
 実は、この質問通告を出した日、19日の昼すぎ、NTTの工事担当者から電話がありまして、私がお願いしていた2軒のうち1軒、「いまから修理に向かいます」ということでした。10月26日修理の予定であったお宅です。
 いろいろ考えますが、まずは担当者にお礼申し上げておきたいと思います。


2.県土整備事業の進捗について
(1)国道370号坂井バイパスの年度内完成について
《質問》雑賀光夫 県議
 私は県会議にでて16年目になります。気になるのは、何度も取り上げてきた事業が、どこまで進んできたのか、見通しがどうなのかという問題です。
 第一は、阪井バイパスをめぐる問題です。この道路は、海南市の西部と東部、さらに紀美野町をむすぶ大動脈ともいうべき道路。私が県議会に出させていただいたころに、法線が煮詰まりかかっておりました。
 最近、道路協議会が開かれ、委員の方から「本年度末までに供用というが大丈夫なのか」という心配の声が出ておりました。
 残事業はどれだけあるのか。今年度予算はどれだけついているのか。年度内にできるのか。見通しを県土整備部長からお答えください。

《答弁》 県土整備部長
 国道370号阪井バイパスにつきましては、事業区間全線で工事を鋭意進めているところでございまして、事業の進捗は概ね9割の状況でございます。
 残事業といたしましては、竜部(たつべ)池に架かる(仮称)竜部橋の上部工事を始め、道場山(どうじょうやま)の山切工事や国道424号の付替橋梁の上部工事、舗装工事などとなっております。
 平成30年度予算につきましては、全線の供用に必要な予算といたしまして、事業費12億5000万円を当初予算で計上してございます。
 工事の見通しにつきましては、大規模な山切りなど時間を要する工事が残っており、工程は厳しいものの、しっかりと工程管理を行い、平成30年度末の供用に向け、引き続き取り組んでまいります。

(2)海南市の津波防災堤防の進捗と完了の見通し
《質問》雑賀光夫 県議
 第二は、海南市の津波防災堤防です。
 私は、「海南市は津波に弱い町」と申し上げて、津波対策をお願いしてきました。この津波防災堤防にも紆余曲折がありました。
 国土交通省が、「世界最初の浮上式津波防災堤防をつくりましょう」と言い出した時には、私も期待いたしました。
 しかし、国土交通省の内部情報が伝わってきて、どうも雲行きがおかしくなってきた。結局、技術上の問題で、浮上式津波防災堤防は中止になって、堤防のかさ上げが決まった。
 事業の進捗はどうでしょうか、残事業は予算ベースでどうでしょうか。今年度予算はいくらつき、完成年度はいつになるのでしょうか。

《答弁》 県土整備部長
 和歌山下津港海岸海南地区におけます、直轄海岸保全施設整備事業につきましては、事業の進捗は概ね4割の状況でございます。
 平成29年度末までに、関西電力海南発電所の西側護岸の嵩上げ改良や津波防波堤の新設、琴の浦(ことのうら)水門の新設工事が完成しております。
 海南地区の沖側につきましては、琴の浦水門の取付護岸工事が完成する今年度末で防護ラインが完成する見込であり、また、湾奥部につきましては、日方(ひかた)水門の築造工事を実施しており、順次、日方護岸や築地護岸の改良工事を実施していく予定とうかがっております。
 今年度予算及び残事業費につきましては、平成30年度当初国内示額は約20億円となっており、平成31年度以降の残事業費といたしましては、約270億円となります。
 本事業につきましては、目標年度でございます2023年度の完成を目指し、事業の推進に取り組んでいくと国土交通省より聞いておりますので、県といたしましても、引き続き国の事業進捗に協力してまいりたいというふうに考えております。

《コメント》雑賀光夫 県議
 事業完了予定まであと5年、残事業は270億円。県では50億円の事業を予定していただいていましたが、国の内示は20億円。これでは、12、3年かかってしまいます。南海東南海地震・津波はいつくるかもしれない。
 国土交通省は約束を守るように迫っていただきたい。
 この問題では、地元海南市や地元企業負担はおかしいと申し上げていることも付け加えておきたいと思います。

(3)亀の川と日方川の河川整備計画に基づく整備の進捗状況等について
《質問》雑賀光夫 県議
 第三は、河川整備計画にもとづく整備の進捗状況です。異常気象・大雨が多くなり大変心配です。
 亀の川下流の岡田・室山地域では、大雨のたびに浸水になやまされています。とくに大坪川の水を亀の川がのみこめないという問題があります。「亀の川水系河川整備計画」にもとづく整備の進捗状況はどうでしょうか。大坪川沿川地域の浸水被害の軽減は図られるのでしょうか。
 「日方川水系河川整備計画」にもとづく整備の進捗状況はどうなのかをお聞かせください。日方川上流では、海南市重根のメガソーラ―のための林地開発が計画されています。この林地が開発された場合、山の保水力が低下することが懸念されます。日方川水系河川整備計画にどういう影響があるのかお聞かせください。

《答弁》 県土整備部長
 亀の川につきましては、平成22年10月に亀の川水系河川整備計画を策定し、河口から紺屋(こんや)橋までの約4.8km区間の堤防整備や河床掘削等を位置づけております。
 河川整備計画に基づき、河口から紺屋橋までの区間につきましては順次整備を進めておりまして、河口から約700m区間につきまして完成しているところでございます。
 今年度は、引き続き、右岸の上流約200mの護岸工事を予定してございまして、今後も上流に向け河川整備を実施してまいりたいというふうに考えております。
 また、支川の大坪(おおつぼ)川につきましては、亀の川合流点からJR橋までの約1.2kmの県管理区間のうち、平成28年度から室山(むろやま)団地前におきまして、護岸の一部かさ上げなどの局所的な対策に着手し、今年度は、合流点より河床掘削等を実施する予定でございます。
 さらに、市の管理区間でございますJR橋上流の岡田地域につきましては、浸水対策といたしまして海南市が排水ポンプ場の整備に取り組んでいるというふうに聞いております。
 これら県・市による連携した取り組みによりまして大坪川沿川の浸水被害が軽減されるというふうに考えております。
 続きまして、日方川について申し上げます。日方川につきましては、平茂25年9月に日方川水系河川整備計画を策定し、河口から神田(かんだ)橋までの約1.5kmの区間の河道拡幅や河床掘削等を位置づけております。
 河川整備計画に基づき、河口から神田橋までの区間について順次整備を進めており、下橋(しもばし)付近から大橋付近を除く区間について護岸工事が完了しているところでございます。
 平成29年度より下橋架け替え工事に着手し、平成31年度完成に向け進めており、残る大橋、新町(しんまち)橋の架け替え等についても、順次実施する予定でございます。
 これらの河川につきましては、今後とも、様々な機会を通じて予算を確保し、事業を推進してまいりたいというふうに考えております。
 それから、海南市重根(しこね)のメガソーラー計画によります、日方川水系河川整備計画への影響についてでございますが、一般的に、森林には水源の涵養などのさまざまな機能がある中、森林伐採を伴う開発はその機能を損なうこととなり、河川への雨水の流出が増加するおそれがあると考えております。
 そのため、森林法に基づき県で定めた林地開発許可制度の手続におきまして、河川担当部局に対する協議が位置づけられており、雑賀議員ご指摘の海南市重根のメガソーラー計画につきましても、事業者から河川担当部局への協議が必要となっております。
 その際に、当該メガソーラーの開発により日方川への雨水の流出が増加し、治水上の影響が予測される場合には、そうした影響が出ないように、調整池を設置するなどの必要な防災措置を求めることとなるため、日方川水系河川整備計画に対する影響はないものと考えております。

《コメント》雑賀光夫 県議
 治水に悪い影響がある山林開発はみとめられないということだろうと思います、住民の皆さんとともに見守っていきたいと思います。


3.知事選挙に臨むいくつかの争点について
《質問》雑賀光夫 県議
 知事はひきつづき、県政を担当する意欲を示しておられます。
 一方、「ゆたかで住みよい和歌山県をつくる会」から畑中正好氏が立候補することになり、先日記者発表をし、私も同席しました。
 今日の質問でも、私はこの度の台風災害について、知事が県民の立場で頑張っておられることは評価しました。紀州3人っ子施策(現紀州っ子いっぱいサポート)など努力している面もある。そのことを否定する気はありません。
 しかし、「何でこんなことを?」と思うことも少なくありません。
 例えば、大きな問題では、核兵器禁止条約への参加をめぐって、「核兵器禁止条約については、…日本政府はこれに加わりませんでした。それはどうかなと正直言って私は思いました」といわれるので、いい線行くなと思ったのですが、結局は安倍内閣が条約に加わらないことについて理解できるとして、署名もしない。
 あるいは、原発再稼働にブレーキをかけた福井地裁判決を評して「原発があぶないというのなら自動車だって危ない」と言い放って、私たちを唖然とさせたことがあります。
 そこで、今日は、いくつかの問題について知事の真意をおうかがいしておきたいと思います。
(1)IR・カジノ誘致について
 第一は、カジノをふくむIR誘致であります。
 私はこの問題について県議会で2回取り上げました。まず、その中ではっきりした点、事実問題を整理しておきたいと思います。
 6月県議会でも、「依存症対策」についてお伺いしました。「和歌山県内でのパチンコなどギャンブル依存症の実態はどうか」ということに対して、「和歌山県内での実態はつかめていない」というのが答えでありました。
 カジノをふくむIRによってギャンブル依存症がふえないのかという問題、一時は「日本人は入らせないから危険性はゼロだ」という話もあったわけですが、そうはならなかった。しかし、「法律のカジノ規制は、当初考えていたよりも、はるかに厳しいものになっている。県独自の運営上の工夫と合わせれば、弊害は完全に除去できる」と断言されておられる。
 ギャンブル依存症の実態もわからないのに、「カジノによって増える心配はない」とどうして断言できるのだろうか。
 もう一つは、和歌山県IR基本構想で示されている、カジノの入場者数や売上高の試算については、「監査法人トーマツが独自のノウハウ・知見を用いて推定を行った」とお答えになったが、その中身は、企業秘密で根拠もよくわからないと聞いています。知事はIR誘致により和歌山県を元気にするというが、トーマツにお任せの試算がその根拠なのでしょうか。
 以上2点についての知事の見解をお伺いします。

《答弁》 仁坂知事
 現在の日本におけるギャンブル依存症は既存の公営競技やパチンコを原因として発生しており、そういう意味ではギャンブル等依存症と言わないといけないのですが、今後本県においても、この依存症対策を進めていくことは重要であると思っております。
 IRによって、あるいはカジノによって、依存症が増えるかどうかということについては、IRの制度の問題であります。従って、別にインチキなことを言っているわけではない、ということをよくお分かりだと思います。
 今般成立したIR整備法には、「マイナンバーカードを必ず提示せよ」、「入場回数制限もかける」、「高額の入場料の設定をする」、「本人・家族申告による入場制限措置がある」、「現金を持って来ないと入れてあげない」、「クレジットカードの使用は禁止する」、「現金引き出し機の設置は禁止する」という、既存の公営競技やパチンコにはない、重層的で多段階的な厳しい規制が設けられているところであります。
 こういうえらい厳しい規制ができたというのは、考えてみたら、「制度如何によっては和歌山県は外国人専用でいくぞ」と宣言したことも、ちょっと影響を与えたかなと思っているところでございます。
 加えて、さらに想像力をたくましくして、弊害を除去する策として、本県独自の「IRカード」導入による破産リスクを排除する仕組みを事業者に求めることによって、論理的に考えればカジノ施設を起因とするギャンブル依存症については防ぐことが出来ると思うわけでございます。「そうでない」と言うのなら、その論理性を議論しないといけないということではないかと思います。
 誰でも、いつでも、何回でも、どんな対応でも楽しめるというのが、他のギャンブル等であろうかと思いますが、これとは全く違うわけでございます。従ってIRについては、あんまり既存の概念で決めつけないで、あるいは思い込みで決めつけないで、説明をちゃんと聞いて、本当にそうかどうか考えれば分かるのではないかなと思うわけであります。特に、雑賀議員におかれましては、元先生をやっておられました。立派な先生は多分、既成概念にとらわれないで、決めつけないで、自分で考えて、「ほんまかいな」と考えて、「よく考えてやんなさいよ」というふうに言っておられたと思いますので、そういう雑賀議員におかれましては、このことはよくご理解いただけるのではないかなと思います。
 次の問題でございますが、監査法人トーマツが行ったカジノ施設の入場者や売上高の試算方法については、その詳細を県は承知しておりますが、それは企業独自のノウハウとか知見に関わるところもありますから、全部を明らかにすることは出来ません。
 また、「なんでこんなことを」という中にIRなども雑賀議員は言われると思います。「他はちゃんとやっているのに、なんでこんなものに手を出すんですか」と。これはやっぱり、この議会で申し上げましたとおり、今のままでいけると思ったら、かなり先が難しくなってくる。新しい要素も足していかないとなかなかいけないので、弊害がとってもあるというのならともかく、そうでなければ、ちゃんと挑戦をしていこうということではないかと思います。
 IR誘致によりもたらされる経済効果、雇用効果がこれまでにない規模となることは、シンガポールやなんかで先進的な成功事例を見れば分かることであります。
 例えば2010年に2つのIRが開業したシンガポールでは、開業前後を比較すると、これは前の年と次の年とでございますが、観光客数が約1.4倍、観光収入にあっては約1.8倍まで増加し、開業に伴う22,000人の直接雇用を創出したという事実があります。
 加えて、先般実施したRFI、これは投資意向調査ですが、和歌山県IR基本構想で示した投資規模2800億円、経済波及効果約3000億円を超える規模の計画も出したいと言っているところもありまして、別に本県は根拠のないことを言っているわけではなくて、本県の構想は十分に合理的で実現可能性のあるものだと思っております。

《コメント》雑賀光夫 県議
 さらに市民団体が、県の担当課が監査法人トーマツとどういう協議をしたのか、トーマツからどういう報告が出されたのかの資料を情報開示するように求めました。ところが、出されてきたのはいわゆる「海苔弁当」といわれる黒塗り資料であります。どうして情報開示できないのか不審におもうところです。
 私の手元に外国人観光客の増加率というデーターがあります。2011年を起点として、2016年の数字がならんでいます。
 カジノを導入したシンガポールは、124%です。確かに伸びています。ところが、日本は386%でもっと伸びている。大阪は595%で、和歌山県はなんと622%です。和歌山県の商工観光労働部はよく頑張っている。もちろん知事も頑張られた結果です。どうして知事はこのことに誇りをもって、和歌山の自然と歴史を生かした観光振興の道をすすまれないのでしょうか。
 さらに、そもそもカジノというものは、誰かがギャンブルで負けることで、得をする人もあり、カジノ企業は利益を上げる。こういうものでしかありません。

《コメントに対する答弁》 仁坂知事
 観光客の議論がありましたが、外国人の伸び率で議論されるのと、それからその伸び率が今回によってどうなるかというようなこととは桁が違うんでございますので、その辺についてご理解いただきたいと思います。

(2)クラスサイズ縮小についての知事の考え
《質問》雑賀光夫 県議
 第二は、教育の困難、学校現場のいそがしさ解消の上でどうしても必要な、1クラスの生徒数の上限を30人なり35人なりに抑えるクラスサイズ縮小であります。
 2016年、2月県議会予算特別委員会でのことですが、知事は「もともとの持論だが、1学級当たりの人数を必ずしも少なくしなければいけないとは、余り思っていない…」とおっしゃるのでびっくりしたわけです。自分の子どものころはもっと多かったし、大勢の中でやっていくことも大事だ。この持論は、今もお持ちで、知事としての施策をこの立場でおすすめになるのでしょうか。

《答弁》 仁坂知事
 少人数学級による指導が必ずしも教育的な効果が高いわけではなく、これがすべてであるというふうには思いません、ということでございます。また、児童生徒が大勢の中で人間関係を学んだり、社会性を身につけたりすることも大事だと思います。
 ここにいるすべての方々が、もっと多人数学級で育って、いろいろと揉まれながらやってきたことも考えると、それがすべてであるというふうには思えないということを言っております。
 しかし、最近は子供たちがいろいろ悩んだり、あるいは対応が出来なくなったりするといった、たくさんのことが起きております。それについて、学校の先生もそういう子供たちをみんなケアしていかないといけないわけですから、それは大変だということもわかります。従って、別に大人数に戻せというようなことを言っているわけではございません。それよりも教育環境の整備というのは、各学校の状況に応じて教員を配置するということが重要ではないか、そのうえで、教えた後、いろんな問題を抱えている子供たちに対しては、個別の指導とか補充学習とか個々の児童生徒の実情に応じた、きめの細かな対応を行うことがより重要なので、そのために教員の配置なども出来るだけやっていったらいいのではないかと思っております。
 教育委員会には、市町村教育委員会としっかり相談して、学校や児童生徒の課題解決のために必要な教員を配置し、きめ細かな対応ができるよう、今後も取り組んでもらいたいと考えております。

《コメント》雑賀光夫 県議
 「少人数学級だけが唯一の方法ではない」と聞いて少し安心しました。
 全国の県教育長協議会では、クラスサイズを小さくしてください、「35人以下学級」という要望を文部科学省に上げています。この教育委員会をしっかりと応援していただきたいと思います。

(3)不合理な子ども会施策について
《質問》雑賀光夫 県議
 第三、仁坂知事は、合理的な考えをお持ちの方だから、こんな施策にしがみつくことはあるまいと思っていたのにがっかりしたのが、特定子ども会への偏った施策の問題です。
 和歌山県には、地域子ども会支援事業補助金があり、その中で「地域総合活動」に区分される子ども会に対して市町村が補助する場合、その補助金額の2分の1を県が補助することになっています。
 1つの子ども会ごとに最高56万円の補助金をうけることができる。和歌山市が25万円つければ県も25万円つけて50万円。しかも20人の子どもで1単位として、その地域に10単位の子ども会があると認定すれば500万円もの補助金が付く。
 お手元に担当課からいただいた「平成29年度 地域子ども会活動支援事業補助金 確定額一覧」の最初のページだけをお配りしました。これでどれほどの補助金がついているかわかります。
 一方では、同じ和歌山市内の子どもたちの活動であるにもかかわらず、6万円の補助金で活動している子どもクラブもある。県がかかわらないたくさんの子ども会、親子クラブというものがあり、もっとすくない補助金でやりくりしている。補助金のないところもあるでしょう。いかにも不合理だと私は思うのですが、知事はどうお考えでしょうか。

《答弁》 仁坂知事
 議員が今、政治的ななんとかとおっしゃいましたけれども、そういうなんとかの勘ぐりみたいなことはやめていただきたいというふうに思います。
 子ども会の補助金につきましては、その活動を支援している市町村に対し、子供の人数や活動日数、活動内容などに応じて補助しております。どの市町村に対しても、どの地域の子ども会にも、ルールに従って補助しているわけでございます。
 当然、活動が活発な子ども会は、相応の補助額になるということになります。
 議員は額の結果によって、なにか不合理があるのではないかと言われて、そういうものを是正するのが私の仕事だというような感じでおっしゃったのですが、結果ではなくて、大事なことは制度が差別的ではないかどうか、合理的にできているかということだと私は思います。
 本件については、制度は透明で基準も公表しているし、結果的にはたくさん活動しているところが、たくさん補助金をもらっているというのは、いつの時代でも、どこにでもある話しで合理的でもあると私は思ってございます。
 子ども会活動は、保護者や指導者のもと、地域の子供の健全育成を目的として異なる年代の子供たちが集まり活動するもので、地域の連帯意識を育て、校外における学習や様々な体験・交流活動を通した子供たちの健やかな成長を目的とする有意義な活動であると認識しております。
 県としては、引き続き、市町村と共に、こうした子ども会活動に対して、支援を行っていきたいと思っております。

《コメント》雑賀光夫 県議
 知事選挙では、福祉の問題、中小企業活性化のためのリフォーム助成の問題、いろいろ議論されることと思います。活発な議論を期待します。


 
                                                       仁坂知事の答弁を聞く、雑賀光夫県議(右)
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