和議第6号
          地方財政の充実・強化を求める意見書(案)

 地方自治体は、子育て支援策の充実と保育人材の確保、高齢化が進行する中での医療・介護などの社会保障への対応、地域交通の維持など、果たす役割が拡大する中で、人口減少対策を含む地方版総合戦略の実行やマイナンバー制度への対応、大規模災害を想定した防災・減災事業の実施など、新たな政策課題に直面している。
 一方、地方公務員をはじめとした公的サービスを担う人材が限られる中で、新たなニーズへの対応と細やかな公的サービスの提供が困難となっており、人材確保を進めるとともに、これに見合う地方財政の確立をめざす必要がある。
 政府の「骨太2018」では「(地方の)一般財源の総額について、2018年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保する」とされ、2019年度(平成31年度)の地方財政計画でも、一般財源総額は62兆7072億円(前年比+1.0%)となり過去最高水準となった。
 しかし、一般財源総額の増額分も、幼児教育の無償化などの国の政策に対応する財源を確保した結果であり、社会保障費関連をはじめとする地方の財政需要に対応するためには、さらなる地方財政の充実・強化が求められている。
 このため、令和2年度の政府予算と地方財政の検討にあたっては、歳入・歳出を的確に見積もり、人的サービスとしての社会保障予算の充実と地方財政の確立をめざす必要があることから、政府に以下の事項の実現を求める。

                         記

1 社会保障、災害対策、環境対策、地域交通対策、人口減少対策など、増大する地方自治体の財政需要を的確に把握し、これに見合う地方一般財源総額の確保をはかること。

2 子ども・子育て支援新制度、地域医療の確保、地域包括ケアシステムの構築、生活困窮者自立支援、介護保険制度や国民健康保険制度の見直しなど、急増する社会保障ニーズへの対応と人材を確保するための社会保障予算の確保および地方財政措置を的確に行うこと。とりわけ、幼児教育の無償化に伴う地方負担分の財源確保を確実にはかること。

3 地方交付税における「トップランナー方式」の導入は、地域によって人口規模・事業規模の差異、各自治体における検討経過や民間産業の展開度合いの違いを無視して経費を算定するものであり、廃止・縮小を含めた検討を行うこと。

4 「まち・ひと・しごと創生事業費」として確保されている1兆円について、引き続き同規模の財源確保をはかること。

5 令和2年度から始まる会計年度任用職員制度の導入により増加する地方自治体の財政負担に対し、財源確保をはかること。

6 森林環境譲与税の譲与基準については、地方団体と協議を進め、林業需要の高い自治体への譲与額を増大させるよう見直しを進めること。

7 地域間の財源偏在性の是正のため、偏在性の小さい所得税・消費税を対象に国税から地方税への税源移譲を行うなど、抜本的な解決策の協議を進めること。
 同時に、各種税制の廃止、減税を検討する際には、自治体財政に与える影響を十分検証した上で、代替財源の確保をはじめ、財政運営に支障が生じることがないよう対応をはかること。

8 地方交付税の財源保障機能・財政調整機能の強化をはかり、市町村合併の算定特例の終了を踏まえた新たな財政需要の把握、小規模自治体に配慮した段階補正の強化などの対策を講じること。

9 依然として4兆円規模の財源不足があることから、地方交付税の法定率を引き上げ、臨時財政対策債に頼らない地方財政を確立すること。

10 自治体の基金残高を、地方財政計画や地方交付税に反映させないこと。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

  令和元年6月27日
               様
                                  和歌山県議会議長 岸本  健
                                          (提 出 者)
                                            尾崎 太郎
                                            長坂 隆司
                                            奥村 規子
                                            多田 純一
                                            玄素 彰人
(意見書提出先)
 内閣総理大臣
 内閣官房長官
 総務大臣
 財務大臣
 経済産業大臣
 内閣府特命担当大臣(地方創生担当)
 内閣府特命担当大臣(規制改革担当)
 内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)