2019年6月県議会 楠本文郎 一般質問 概要記録

 中継録画
2019618
1.日高川水系整備計画の早期完了と今後の治水対策
(1)日高川本川の整備計画の位置づけと、日高川町、美浜町の各工事の進捗状況と
   今後の計画
(2)下川、斉川・堂閉川、東裏川の工事計画について
(3)椿山ダムの操作規則はこのままでよいのか
(4)左岸の野口、右岸の藤井の堤防は持ちこたえられるのか
(5)県道御坊美山線藤井地内の道路整備の今後の方針
(6)国の補正予算がついた日高川本川の浚渫箇所はどこか

2.高すぎる国保料(税)の引き下げのために
(1)現在国保の「構造的問題」という認識と、全国知事会が求めている改善の方向
   について
(2)「負担の限界」からの緩和のためには公費投入しかない
(3)公平な負担の在り方として、応益割は正しいか
(4)困ったときに困った人を助ける国保にするために

3.和歌山南漁協の補助金不正に関して
(1)県行政はどうとらえていますか、何故不正が見逃されてきたのでしょうか
(2)和歌山南漁協への今後の対応と他の漁協への対応


1.日高川水系整備計画の早期の完了と今後の治水対策について
《質問》楠本文郎 県議
 初めてこの本会議場から、県民の命とくらし、財産を守るために私見を交えながら県知事はじめ、県政の執行責任を担っておられる方々に対し、ご質問申し上げることが出来ることは本当に光栄なことです。
 御坊市民の負託に応えていくために懸命に頑張る所存でございますが、まだまだ全体を把握し、短く適切にご質問申し上げるには時間が足りませんでしたので、戸惑いながらになると思いますがご容赦のほどをお願いいたします。市民、県民の願いをまっすぐに届けることを念頭に今回は大きくは3点についてお尋ねします。
 まず、大きな1点目の質問は、災害から住民の命とくらしを守るための対策についてです。気候変動、地球温暖化のなか、集中豪雨、異常な高温、すさまじい強風、さらにはとてつもない台風がくり返し襲来しています。その上東海・東南海・南海の三連動地震、南海トラフ巨大地震とそれに続く津波は、いつ起こってもおかしくないと言われる昨今です。災害対策は待ったなし、最優先の課題だと言えます。
 御坊市民にとって、日高川は豊かな自然環境と命の水をもたらす「母なる川」ですが、時には牙をむいて大災害を引き起こしてきました。特に、昭和28年7月18日のいわゆる「7.18水害」は、私の生まれる1年前のことですが、そのすさまじさは折に触れ聞かされて育ちました。そして平成23年9月の台風12号による大洪水により再び大きな被害を受けました。8年近く経過する中でも、復旧の進捗状況と、その上での今後の治水対策は大きな関心ごとになっています。そうした視点から県土整備部長に6点についてお尋ねしていきます。
(1)日高川本川の整備計画の位置づけと、日高川町、美浜町の各工事の進捗状況と今後の計画
 まず平成28年3月に「二級河川 日高川水系河川整備計画」が策定されています。この計画は、平成13年10月に策定された「日高川水系整備基本方針」に沿って、「今後概ね20年で計画的に実施する河川工事の目的、種類、場所等の具体的事項を示した計画である」と記されています。
 昭和28年の「7.18水害」を受け、昭和56年には日高川総合開発事業の全体計画が策定され、平成元年には椿山ダムが完成しました。もうこれで「洪水は起こらない」と流域住民の誰しも信じ込んでいたなかで、平成23年9月の台風12号によって大洪水が発生しました。
 「二級河川 日高川水系河川整備計画」はこの洪水被害を受けてからのちにつくられた計画ですから、日高川本川の計画の位置付けについては単なる復旧ではなく、今後の同規模の洪水対策が含まれていると考えてよろしいでしょうか。
 この河川整備計画にある日高川町内の若野、入野、平川、船津、坂野川、田尻、三十木、皆瀬、浅間の9ヵ所については、復旧を伴い、さらに流下能力向上対策を目的としてすでに大きな工事として進められています。それぞれの進捗状況の説明と今後の計画についてお示しください。
 また、日高川町江川は平成23年12号台風以外の大きな台風で相次いで被害を受けたこともあり、支川であるが、本川の水位上昇の影響を受けやすいとして流下能力向上を目的として工事が進められてきました。工事完了のめどについてお聞かせください。
 美浜町内の西川でも工事が継続されています。上流域、下流域の河道掘削、護岸工、堤防の整備等があります。
 同時に西川は、美浜町内の5つの樋門と、御坊市内の大和水門、熊野川の樋門と防潮水門も併せ、津波対策として遠隔操作化をはかる計画になっています。この点でもそれぞれの進捗状況と、今後の計画についてお示しください。

《答弁》 県土整備部長
 まず、日高川の河川整備計画についてでございます。日高川の河川整備につきましては、これまでの最大規模の洪水でございます昭和28年洪水や平成23年台風第12号洪水と同規模の洪水でも安全に流下させることができる水準を将来的な目標といたしました河川整備基本方針を策定してございます。
 一方、その整備には多大な費用と相当の期間を要することから、早期に一定の整備効果を発現させるため、これまでの最大規模洪水に次ぐ大きな被害をもたらしました平成15年8月台風第10号洪水と同規模の洪水に対して、家屋の浸水被害を解消することを目標といたしました河川整備計画を策定し、段階的な整備を推進しているところでございます。
 次に、日高川町、美浜町の各工事の進捗状況、今後の計画についてでございます。この日高川町、美浜町の各工事の進捗状況、今後の計画でございますけれども、日高川本川の河川整備状況につきましては、若野地区、入野地区、三十木地区、皆瀬地区の4地区では、築堤あるいは河道掘削等の整備が概成しているところでございます。残りの5つの地区につきましては、今後着手時期を検討してまいりたいというふうに考えております。
 さらに、日高川支川の江川の整備状況につきましてご質問いただきました。日高川合流点から上流約4.9kmの区間を災害復旧助成事業として平成27年度から着手しているところでございますけれども、工事は順調に進捗しておりまして、JR紀勢本線に近接する区間と本川との合流部の工事等を残すのみとなってございます。
 さらに日高川支川の西川の整備状況、そして樋門、水門の遠隔操作の状況についてご質問いただきました。日高川支川の西川の整備状況につきましては、平成29年度から工事に着手しておりまして、下流からの護岸工事や河道掘削を鋭意進めているところでございます。
 この西川につきましては、平成29年度は当初予算の10倍となります補正予算を確保し、また平成30年度も国において実施されることとなりました「防災・減災、国土強靭化のための3ヵ年緊急対策」、これを活用いたしまして、県の当初予算に対しまして3.5倍となる補正予算を確保したところでございます。今後とも、様々な機会を通じ予算を確保し早期進捗に努めてまいりたいというふうに考えております。
 なお、ご指摘のありました8箇所の樋門・水門の遠隔操作化につきましては、平成29年度までに全て完了してございます。

(2)下川、斉川・堂閉川、東裏川の工事計画について
《質問》楠本文郎 県議
 この河川整備計画の中では、下川、斉川・堂閉川、東裏川についても述べられています。御坊市民からするとそれぞれの流域においての度重なる浸水は一刻も早く対策を講じていただきたい流域です。被害の実情と現状は県においても十分に把握されたうえで整備計画に入っていると思いますが、いつになったら改善されるのかと首を長くして待っている状態です。見通しについてお示しください。

《答弁》 県土整備部長
 西川の支川の下川、斉川、堂閉川、東裏川の浸水対策につきましては、現在下流から進めております西川本川の整備に一定の目処がつき次第、着手について検討してまいりたいというふうに考えております。

(3)椿山ダムの操作規則はこのままでよいのか
《質問》楠本文郎 県議
 3点目に椿山ダムの操作規則についてお尋ねします。
 椿山ダムは、昭和28年の「7.18水害」対策として計画され、完成して30年です。平成23年の大洪水は、下流域住民にとっては「ありえない」と思わせる洪水でした。現時点では冷静に振り返り、椿山ダムの果たす役割と限界を受け止める時期にあると思っています。
 日高川町議会から、平成26年3月にまとめられた知事宛の改善要望書が届けられていることだと思います。
 この要望書では、①日高川が大きな集水面積を持ち、しかも多雨地帯であることからすれば貯水能力は少ないこと、②流入量600トン/sからの放流では遅いこと、③雨のピークが2つ以上ある場合は初期の段階から放流して空き容量の温存を図る、などが述べられたうえで、調整開始流入量を3段階に分けることが提案されています。
 私はこの要望書をみて、4,500トン/sで計画された椿山ダムが、なぜ4,000トン/sでこれだけ大きな被害を出したのかが分かりました。雨のピークが2つあったのが大きな要因ではないかと思えてきました。すなわち溜まった水をもっと早く流すべきという結論なのですが、大事な問題です。ご所見を伺いたいと思います。

《答弁》 県土整備部長
 椿山ダムの操作規則を大洪水に対応した運用にできないかとのご指摘でございますけれども、議員ご指摘の方法では、大規模洪水が予想され、ダム下流で被害が発生する流量となった場合でも洪水調節されることなく、洪水初期の段階から被害が発生してしまう、こういうことになるというふうに考えております。
 したがいまして、避難時間が確保できなくなることや、大規模洪水に至らなかった場合に本来ダムで守られたはずの生命・財産を危険にさらしてしまうことが懸念されるところでございます。
 例えば、昨年8月23日の、古座川の七川ダムでは、台風第20号に伴う豪雨の影響によりまして、ダムへの流入量が短時間で急激に増大したところでございます。下流の古座川の水位につきましても、平常時の水位からわずか4時間ほどで氾濫危険水位を超過したと、こういう状況でございます。このような中、ダムでは限界ぎりぎりまで洪水調節を行いました。その結果、大きな被害には至りませんでしたけれども、仮に、早い段階からダムへの流入量を貯留せずに放流していた場合、下流の水位上昇と相まって、浸水被害が拡大する事態が発生していたことが予想されております。
 このようなことや精度の高い降雨予測が現時点ではなかなか困難になることも踏まえると、現状では、ご指摘の方法を操作規則に位置付けることはできないというふうに考えております。
 一方、本県では、全国に先駆けまして特別な取り組みを行っております。具体的には、ダムの空き容量を大きくしておくことが効果的であると考え、大規模な出水が予測される場合には、本来は関西電力株式会社が使用することができる容量分の水につきましても、河川管理者の判断によりまして、事前に放流させていただくことができる協定を関西電力株式会社の協力により締結をいたしました。これによりまして、洪水調節機能の強化・拡大が図られ、これまでに椿山ダムでは2回の事前放流を行ってきたところでございます。

(4)左岸の野口、右岸の藤井の堤防は持ちこたえられるのか
《質問》楠本文郎 県議
 「二級河川 日高川水系河川整備計画」の第3章3.1には洪水等による災害の発生又は軽減に関する目標の記述の中に「堤防点検を行い、必要に応じて堤防の安全性確保のための堤防強化対策を実施する」とあります。
 ちなみに御坊市野口地域、御坊市藤井・吉田地域に関する記載はありませんが、この地域は昭和28年の「7.18」水害で最も被災が大きく、また、平成23年9月の12号台風では堤防天端すれすれまで水が来て、「堤防から川の水で顔が洗えた」と表現されているほどでした。椿山ダムの操作が同じで、先にご質問申し上げた上流域の流下が向上されたなら、左岸の野口、右岸の藤井の堤防は持ちこたえられるのか、越流はないのかという心配と不安が増幅しています。
 「安心」が市民全体に共有されているとはいいがたい状況です。野口側で言えば、今の堤防は基本的には7.18水害時にガレキも混ざった土砂を積み上げた堤防のままで、御坊市防災センター建設によりその周辺の補強はされているものの、民家側の土手は手付かずであるということです。江川が改善された分、今度は野口堤防に当たる流量が増加するという意見です。
 また、藤井側では、藤井グラウンド前の堤防の両側の補強工事を実施していただきました。このこと自体は緊急対応として歓迎されていますが、根本的には若野、江川流域からの流れ込み流量は大きくなり、堤防の老朽化とで持ちこたえられないのではないかという思いは消えません。この点でのお答えをいただきたいと思います。

《答弁》 県土整備部長
 御坊市の藤井地区および野口地区の日高川本川におきましては、その上流域の河川改修が完了した場合、同地区付近の流量が若干増加いたしますが、その場合であっても、平成23年台風第12号による洪水と同規模の洪水を流下させることができるというふうに考えております。
 また、藤井地区の藤井グラウンド前の約740m区間におきまして、平成29年度より張コンクリートによる護岸の修繕工事を実施しているところでございます。
今後とも、御坊市野口地区も含め、堤防の状態を把握しながら、適切に堤防の維持管理に努めてまいりたいと、このように考えているところでございます。

(5)県道御坊美山線藤井地内の道路整備の今後の方針
《質問》楠本文郎 県議
 さらに、藤井側の堤防は、県道御坊美山線の整備が残されている区間と位置付けられている場所とも重なる部分があります。この未整備区間は、日常的に自転車通学路、通勤路として交通量が多かったうえに、近年は川辺インターへのアクセス道路としても頻繁に活用されおり、野口橋右岸取り付け部は見通しが悪く、危険が増大している道路状況になっています。
 この道路整備に関しては、以前からの課題になっていましたが、道路整備の今後の方針についてご説明をいただきたいと思います。

《答弁》 県土整備部長
 県道御坊美山線につきましては、日高川沿いの主要幹線道路でございまして、全線で概ね2車線が確保されているところでございますけれども、議員ご指摘の御坊市藤井地内の区間約900mだけが未整備の状況となってございます。幅員が狭く、交通量が多いことから、県としては、従来より整備の必要性は高いと考えていたところでございます。
 一方で、平成23年の紀伊半島大水害時には、日高川の水位が大きく上昇し、御坊市内におきましても堤防天端近くまで達するなど、洪水に対する懸念の声が大きいというふうに認識してございます。
 そうしたことも踏まえ、県といたしましては、道路拡幅により河川の断面を狭くすることはできないと判断いたしまして、昨年10月、堤内側、川と反対側でございますけれども、堤内側への拡幅案による人家等への影響について地元藤井区の役員の皆様に説明し、今年度、事業化いたしたところでございます。
 引き続き、道路整備の進め方につきまして、地元の皆様方に説明をし、測量設計に着手してまいりたいとこのように考えてございます。

(6)国の補正予算がついた日高川本川の浚渫箇所はどこか
《質問》楠本文郎 県議
 この項目の最後に、河川整備計画第4章2の2の1)の「河道の維持」という項目があります。「河道内において、土砂堆積や草木等の繁茂によって川の流れが阻害されないか点検した結果、(中略)治水上問題があると判断した場合には、河床掘削や障害物の除去等による流下阻害対策を行い」とあります。
 すでに付けられている国の30年度補正予算もこうした判断のもとで執行されると思います。ただ、御坊市議会災害対策特別委員会では、野口新橋周辺御坊市ふれあいセンターゴルフ場前の土砂の浚渫要望がくり返し提起されています。現時点での浚渫予定箇所をお示しください。

《答弁》 県土整備部長
 日高川本川における河床掘削や障害物の除去等による流下阻害対策といたしましては、今年度から野口新橋を含みます天田橋から野口橋間の樹木密集地において樹木の伐採を行い、さらに、再繁茂防止のための除根と掘削も行うこととしております。


2.高すぎる国保料(税)の引き下げのために
《質問》楠本文郎 県議
 大きな2点目の質問は、高すぎる国民健康保険料(税)の引き下げの課題についてです。私見を交えながらいくつかの質問をさせてください。
(1)現在国保の「構造的問題」という認識と、全国知事会が求めている改善の方向について
 まず、単刀直入に知事にお尋ねします。私は、戦後日本の復興の中で作り上げられてきた「国民皆保険制度」は、日本社会がつくり上げてきた世界に誇れる制度であり、守られなければならない制度だと考えています。いかがでしょうか。
 その国民皆保険制度の根幹をなすべき国保が危機に瀕している、これは「構造的問題」だと、繰り返し答弁されています。あらためて、現在国保の「構造的問題」という認識と、全国知事会が求めている改善の方向と併せて知事の方からお答えをいただきたいと思います。

《答弁》 仁坂知事
 我が国では、国民皆保険制度により、国民に等しく良質な医療が提供され、その成果として国際的にも評価される世界最高水準の平均寿命や高い保健医療水準を達成してまいりました。
 国民健康保険は、相互扶助の精神にのっとり、他の医療保険等に加入していないすべての住民を被保険者としており、国民皆保険の根幹をなすものとして重要な役割を果たしております。
 誰もが安心して必要なときに必要な医療を受けることができる国民皆保険制度は、我が国が世界に誇るべき制度であり、今後も維持していくべきであると考えております。
 しかしながら、現在、国民健康保険は、協会けんぽや健康保険組合などの被用者保険と比べて「年齢構成が高く、医療費水準が高い」、「所得水準が低く、保険料の負担が重い」といった構造的な問題があるということでございます。
 国民健康保険制度を将来にわたって守り続けるために、これまでの市町村の個別単位ではなくて、平成30年度からは、県が財政運営の主体となり、国保運営の中心的な役割を担っております。しかし、これで長期的には、市町村単位の状況は平準化できるわけでございますが、当県のように全体として高齢化が進んでいる、いわゆる地方の問題を抱えているところは、大都会に比べて、つらい状況にあるということには変わりはございません。少しでもこれを軽減しようということで、国保財政の安定化を図るために、国民健康保険運営方針に基づき、事務の効率化や標準化などを推進するとともに、特定健診受診率の向上や糖尿病重症化予防、後発医薬品の使用促進などに取り組むことにより、医療費の適正化を推進しているところでございます。
 ただ、問題は、先ほども申し上げたとおりでございますので、高齢化の進行や医療の高度化により、今後も医療費が増加すると見込まれる中、国民健康保険制度を持続可能なものにしていくことは、国の責任であるというふうに思います。
 このため、全国知事会では、これまでも繰り返し国庫負担金の増額など財政支援の拡充を国に要望してまいりましたが、今後も被保険者の負担軽減が図られるように、全国知事会を通じて要望していきたいと考えております。

(2)「負担の限界」からの緩和のためには公費投入しかない
《質問》楠本文郎 県議
 私は長らく御坊市議会にいて、この6月は毎年「国保議会」と位置付けてくり返し発言してきました。当時は市が保険者でしたから根掘り葉掘り聞かしてもらったのですが、県政ともなるとそういうわけにはいかないと思っています。しかし、国保法第4条で、県は「中心的な役割を果たす」とうたわれていますから、少し細かなところもお聞かせいただかねばなりません。
 実は、この国保は「被保険者の負担は限界に近づいている」といわれて久しいのです。ですから私は御坊市で毎年質問することになってしまったのですが、20年前とも雲泥の差というほど高くなっています。
 負担が限界を超えている方々にいくらペナルティをかけても「払えない」のです。そして「差し押さえ」までいって生活が立ち行かなくなっても「医者にはかからない」と開き直るしか方法がないところまで追い込まれている方が多いのです。「社会的弱者の医療制度」のはずが、弱者を医療から排除し、困窮に拍車をかけてしまっているのです。
 県が運営の主体者を担うようになってまだ2年目ですが、現場を預かる福祉保健部長の認識のほどはいかがでしょうか。
 私は全国知事会の言われている「定率の国庫負担率の引き上げ」しかないと思っています。「構造的な問題」は構造的に取り組んでいかなければ解決しません。
 富が異常に集中して格差が生み出されました。「富の再分配」を行えるのは富の集積を生み出してきた国しかできないと考えます。
 国は、「法定外繰り入れをなくせ」と言いますが、市町村が繰り入れをするのは被保険者の耐えがたい負担を少しでも軽減するために必要に迫られて行っているものであり、それをなくすことは、被保険者に更なる負担をかぶせることになります。
 収入の少ない国保の被保険者が高い保険料から逃げるためには、医療にかからないか、国保から逃げ出すしかありません。これが私の言う皆保険制度の崩壊です。こんな現実を変えていかなければならないと思いますが部長の見解をお聞かせください。

《答弁》 福祉保健部長
 国民健康保険は、協会けんぽや健康保険組合などの被用者保険のような事業主の負担がないことや、世帯員数に応じて算定する「均等割」が賦課されることなどから、被用者保険と比較すると、相対的に保険料の負担が重くなっています。
 また、低所得の世帯について、負担能力に応じて「均等割」及び「平等割」の最大7割を軽減する、保険料軽減措置の対象となっている被保険者の割合は、平成30年度で約63%であり、低所得の被保険者が多い状況であることは認識しております。
 こうした中、県では、保険料の負担を軽減するため、平成30年3月に策定した第3期和歌山県医療費適正化計画に基づき、特定健診の受診率の向上や糖尿病重症化予防など県民の健康の保持増進を図るとともに、後発医薬品の使用を促進するなど、医療費の適正化を行っているところです。
 また、保険料の納付が困難な場合にあっても、国民健康保険に加入している県民ができるだけ必要な医療を受けることができるよう、各市町村において面談による納付相談を実施し、保険料の徴収猶予などのきめ細やかな対応を行っているところです。
 なお、市町村の法定外繰入につきましては、現在、市町村間の保険料格差をなくすため、県内統一保険料の実現を目指していることから、解消する必要があると考えております。
 いずれにしましても、国民健康保険を持続可能なものにしていくことは国の責任であると考えており、被保険者の負担軽減が図られるよう、今後も国に対し、全国知事会を通じて国庫負担金の増額などを要望してまいります。

(3)公平な負担の在り方として、応益割は正しいか
《質問》楠本文郎 県議
 さて、次の項目は、公平な負担の在り方です。
 もともと、国保は「国保料」でも「国保税」でも、その負担額は、利益を受けるのだからという理由で、平等割・均等割という2つの「応益割」と、資産割・所得割という負担能力に応じた「応能割」の2つ、併せて4区分について、すべての家庭1軒1軒にあてはめられて計算されます。ところが所得の低い階層がいることにより応益割に軽減措置が加わります。つまり「すべて平等に」負担を求めているはずの応益割に、能力に応じた負担をしてもらうという考え方が入っている訳です。
 その軽減枠が今では7割・5割・2割と細かくなりました。そして被保険者全体の中で、軽減世帯は今や多数を占める現状にあります。
 だんだん複雑になって担当者泣かせになった上に、後期高齢者支援金分と介護給付金分が加わりました。国保制度は非常に複雑なものに変化してしまったのですが、基本は、他の健康保険制度に入れない方が必ず入れる、入らなければならない皆保険制度の下支えの役割を担っているからこそ軽減措置が必要になっているのではないでしょうか。この点では、「応益割」という考え方は実質的にすでになくなっているといっても過言ではないと思うのですが、福祉保健部長のお考えはいかがでしょうか。
 ゼロ歳児も利益を受けるから、としてかけられた「均等割」が、「高齢者医療を支える」ために負担を求める均等割としても計算されています。高齢者医療の支援をゼロ歳児にまで求めるという不合理で異常な負担を求めることになってしまっています。すでに「子どもの人数が多ければ国保料()が高くなるのは子育て支援に逆行している」という批判はかなりの説得力を持ってきており、「子どもに係る均等割保険料軽減措置の導入が必要」だという全国知事会の考え方につながっていると思いますがいかがでしょうか。

《答弁》 福祉保健部長
 国民健康保険料の算定に際しては、負担能力に応じた「応能割」と、受益に応じた「応益割」が設けられております。
 議員御指摘の「応益割」には、「均等割」と「平等割」があり、「均等割」は、国民健康保険の受益者が個々の被保険者であるため、世帯員数に応じて負担するのが合理的であるということから設けられているものです。
 しかしながら、「均等割」だけでは、世帯員数が多く所得が少ない世帯の負担が過重となる場合があるため、これを緩和させる方法として、世帯ごとに保険料を賦課する「平等割」が設けられております。
 被保険者全体で制度を支え、被保険者間の負担の公平を図るという観点から、「応能割」、「応益割」にはそれぞれ重要な意味があるものと認識しております。
 一方、保険料の軽減措置につきましては、所得額が一定以下の世帯について、「応益割」に係る保険料の負担を軽減するものであり、低所得世帯の負担が過重となることを避けるために、当然必要なものであると考えております。
 なお、子供に係る均等割につきましては、子育て支援を推進する観点から、全国知事会を通じて保険料軽減措置の導入を国に要望してきたところであり、今後も継続して要望してまいります。

(4)困ったときに困った人を助ける国保にするために
《質問》楠本文郎 県議
 現行の国保制度には一時的・臨時的に免除する仕組みはありますが、常設の免除制度はありません。よく生活保護制度の捕捉率が問題になります。「生活保護は結構なものや、わしらは3万円の年金で生活している」という声を私の身近で聞きます。様々な理由で、保護基準以下の収入しかなくても生活保護申請をしないで生きています。国保7割軽減がかかっているとはいえ、この方にも国保料()がかかってきます。また、単身の高齢者一人暮らしで、年金を66,000円支給されている方はいわゆる「境界層」です。この方が国保料()を払うと、所得は保護基準以下になります。
 こうした生活に困窮する方の免除制度を、全額国費で補う国の制度が必要となっていると思います。福祉健康部長のお考えをお伺いしたいと思います。

《答弁》 福祉保健部長
 国民健康保険は、被保険者相互の支え合いに基づき、負担能力と受益に応じた保険料を負担していただく制度であります。
 世帯の所得が低く、保険料の負担が過重となる場合は、保険料のうち、「均等割」と「平等割」で構成される「応益割」を軽減する措置がありますが、軽減額の上限は7割となっております。
 軽減後の保険料を負担することにより、生活保護の最低生活基準を下回る、いわゆる「境界層」の世帯につきましては、生活保護法による必要な保護を受けることができ、最低限度の生活が保障される仕組みになっております。
 先ほどからずっと申し上げたのですが、相互扶助の保険制度でありますから、お互いに、やはり負担するという認識がまず大事であります。
 ですから、支払うということをまず確定して、ただ、同様にその方の生活を守ることが必要でありますから、生活保護を適用して、生活を守っていくということになっております。


3.和歌山南漁協の補助金不正に関して
《質問》楠本文郎 県議
 大きな項目の3点目に、和歌山南漁協の補助金不正受給についてうかがいます。
 この問題は、昨年4月の漁協組合員による内部告発がきっかけとなり表にでてきたものです。地元紙が昨年4月27日付けで「放流補助金水増しの疑い」と大きく報じました。それを受けて田辺市が同漁協に関する補助金について独自調査を実施したところ田辺市分でも補助金の不正受給があり大きな問題となったものです。
 これをうけて和歌山南漁協は、昨年5月から弁護士などで構成する第3者委員会を立ち上げ、白浜町と田辺市の補助金について、それぞれ調査結果を意見書という形でまとめ漁協に対して報告しています。今後の漁協の対応などの推移を見守りたいと思います。
 いうまでもなく漁業協同組合に対する監督や検査の権限は和歌山県にあります。今回、明らかになった補助金は市町の補助であり、いまのところ県補助金での不正は明らかになっていません。
 しかし、漁協の組織体制や事務管理、財務のいい加減さが今回の不正を招いたことはまちがいないことであります。その点において監督官庁の県の責任はどうだったのかが問われています。
 そこで農林水産部長に単刀直入に伺います。
(1)県行政はどうとらえていますか、何故不正が見逃されてきたのでしょうか
 今回の補助金不正問題を、県はどうとらえていますか。これまでの県の監督や検査のなかでなぜこうした不正が見逃されてきたのでしょうか。

《答弁》 農林水産部長
 今回の補助金不正問題については、内部告発をもとに支出先関係者への聞き取りなど詳細な証拠調べを経て判明してきたものです。この問題の背景には、広域合併した和歌山南漁協の運営が実質的には旧漁協単位で行われ、組織としてガバナンスが機能していなかったことがあると考えられ、直接的な原因としては、事務処理体制が脆弱であったこと、チェック体制が機能していなかったこと、理事、職員ともに法令遵守意識が低かったこと等が挙げられると考えております。
 県の常例検査では、財務諸表が適正かどうかを確認するため、組合の帳簿を中心に検査をしております。今回の補助金不正問題は、悪質で巧妙な会計処理によるものであったことから、県の検査で発見することは困難であったと考えております。

(2)和歌山南漁協への今後の対応と、他の漁協への対応
《質問》楠本文郎 県議
 こうした事件をうけて今後、和歌山南漁協に対して、通常の常例検査だけでなく特別な対応が必要ではないのでしょうか。
 また、県内の全漁協に対しても今一度、きちっとした検査をする必要があるのではないでしょうか。お答えください。

《答弁》 農林水産部長
 今回のような事件の再発を防ぐため、新たに設置されたJF和歌山南経営改善策検討委員会に県も参画し、組織のガバナンス体制、事務処理体制、チェック体制及び法令遵守意識を抜本的に見直す改善策を位置付けるよう強力に指導し、先日、組合理事会で方針決定されたところです。
 今後は、改善策が確実に実施されるまで和歌山南漁協に対して継続的に指導監督を行うとともに、今回の事案については、他の漁協でも起こりうる、内部牽制体制や法令遵守体制にかかる問題であることから、この機会を捉えて、他の漁協に対しても重点的に指導して参ります。
 今回の補助金不正問題につきましては、本来、補助金交付元の市町が主体となって検査を行うものと考えております。しかしながら、県におきましても、県内の漁協に対する常例検査の中で、新たに補助金にかかる検査も行うとともに、必要に応じ臨時に検査を行うなど市町を側面からサポートし、再発防止に万全を期して参ります。
 なお、田辺市が不正又は不適正であると推認している事業の財源として一部に県の補助事業が含まれていたことから、その件については今後さらに詳細な調査を実施した上で事実関係を明らかにし、厳正に対応してまいりたいと考えております。


 
                                         仁坂知事の答弁を聞く、楠本文郎県議(右)


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