2019年12月和歌山県議会
  平成30年度決算の認定に対する反対討論 楠本文郎
   
                                         中継録画8:20~)
                                           20191218
 議案第163号「平成30年度和歌山県歳入歳出決算の認定について」、及び議案第164号平成30年度和歌山県公営企業決算の認定について」の2議案について、日本共産党県議団を代表して、反対の立場から討論を行います。
 県財政から県民生活、県経済の関係について前年比を見た場合、個人市民税マイナス2.1%、個人事業税マイナス0.1%、地方消費税マイナス0.9%、とあり、法人関係では法人県民税はプラス6.8%、法人事業税プラス3.8%とあるものの不動産取得税はマイナス19.9%にもなっています。
 市民生活は依然として経済的にしんどい状況にあり、企業活動は動き出してはいるものの非正規雇用、低賃金が続いていることもあって、波及効果が出るところまでは行っていないのではないか、中小企業貸付資金の収入率は前年度に比べ1.5ポイント増加しながらも、収入未済額は依然として多額であり、進学奨学金貸付金の返済も担当者の努力がありながらも分割返済にとどまっていることが特徴だと考えます。
 市民の暮らしをどう守るかが政治の一番の使命であるという立場から、いくつかの施策、県事業について討論をいたします。
 子どもと女性に関わる支援事業として、紀州っ子いっぱいサポート事業の第2子保育料等無償化や在宅育児支援が国の制度の先取り的に新規実施されました。また、医師確保のために研究・研修資金を貸与する制度は医療分野の人材確保策として大いに評価しているところであり、もっと広報していくべき事業です。
 保育士不足への対応として、保育士人材確保事業が始められました。しかし、予算8670万円が4437万円の決算で、約半分しか使われていない。周知されていないのではなく今の需要に適合していないのではないか。保育現場の状況は、臨時職員を求めているのではありません。正規で雇用されない実態の克服を求めているのではないでしょうか。保育現場に光を当てる良い制度のはずだと思っています。早急な改善を求めたいと思います。
 生活困窮者自立支援事業も注目されてきた事業です。事業名通りの駆け込み的な相談が相次いでいます。今も1,400人前後の方の相談があり、就労まで行くのは2%あるかどうかです。「自立」を急ぐことが成果主義になっていないでしょうか。問題は生活保護に関する相談が3分の1を超えていることをどうとらえるかです。ただでさえ低い日本の生活保護捕捉率の中で、生活保護は論外になっていないかが問われています。相談を受けるのが非正規の専任非常勤職員が担っていることも、制度上の問題だと考えます。これまで、県単独で行ってきた「ひきこもり者社会参加支援事業」が、この「生活困窮者自立支援の一環として行う」として廃止されて現場は混乱しました。今一度、制度設計の見直しを図るべきだと思います。
 子どもの貧困対策の一環として、平成30年度事業として和歌山県子どもの生活実態調査が行われたことも評価されるところです。調査の結果と分析に、各界各層の方が注目していました。私もその報告を2回受け、自主的学習会も持ちました。この調査を今後どう生かしていくのかが問われていきます。格差の広がりの中で、対策の必要なことは見えてきましたが、その具体化がまだ見えてきません。担当課の奮闘を期待するところです。県内市町村は、子どもの医療費無料化をどんどん進めています。県の支援が大幅に遅れていることを指摘しない訳にはいかないでしょう。
 平成30年度は、国保制度が料・税を徴収した市町村から納付金、いわば分担金が県に集められ、給付の一元化が図られた年です。これによって、市町村の国保料・税はかなりのばらつきが生まれました。すでに、負担の限界といわれている中で、負担の「限界」をどう緩和するのか政策的な判断が必要になっているのです。世帯の所得が低く、保険料の負担が過重となる場合は、保険料・税のうち、「均等割」と「平等割」で構成される「応益割」を軽減する措置があります。平成30年度では、この軽減世帯は約63%です。また、子どもの人数が多ければ高くなる均等割りは大きな矛盾になっており、廃止する自治体もあります。文字通り、政策的な政治判断で継続できる国保料・税になるよう求めておきたいと思います。
 教育委員会から決算資料をいただきました。この間、私どもは再三に渡り、学校現場における定数内講師の改善を求めてまいりました。教育長も不正常な状態と認識しており、5か年で半減させるという決意を示されてきました。しかし、決算資料では、小中学校においては8.5%(前年7.7%)、高校では6.5%(前年5.5%)と、前年度より増加しています。非常勤職員も、小中学校で8.3%(前年8.0%)、高校で15.5%(前年15.5%)、まだ3か年残されていますから一気に進められることを強く期待しておきたいと思います。
 災害救助・災害救援事業についての説明で誤解を招く説明書きがありました。実際の内容は、各振興局への災害備蓄費と、平成30年7月豪雨の救援活動に要した費用との2種類あることが分かりました。岡山・広島・愛媛に災害救助に行き、北海道には災害見舞金を支出している。さらに、災害救援に参加した市町に代わって、まとめて県から救助にかかった費用を求償しています。入りと出が入り組むことになっているが、決算審査に置いて、今後のていねいな説明を求めました。
 同時に平成30年は岡山・広島・愛媛の大規模災害だけでなく、県内でも6月20日の御坊市名田町での突風から始まり、7月の大雨、8月下旬の台風20号、続けて9月3日からの台風21号、続けて22号などで大きな災害に見舞われています。そのため平成30年度の災害復旧費は前年の約2倍近くになっています。
 激甚災害に指定されたところと、和歌山のように指定されなかったところの、被災者の生活や生業の被害程度は変わらないのに、災害の規模で災害支援の補助割合が違うのは不合理であることが浮き彫りになりました。新たな制度設計が必要な時代になってきたことを付け加えておきたいと思います。
 この議案の最後に、平成30年度の国直轄事業負担金は、県土整備部だけでも132億円あり、県財政への大きな負担になっています。国に対して、その廃止や軽減を要求していってもらいたいと考えるものです。
 次に議案第164号平成30年度和歌山県公営企業決算の認定について」です。
 土地造成事業会計では、起債がまだ44億9100万円の償還残高となっています。毎年繰り入れられる一般会計からの繰り入れ1億5700万円を継続、工業用水道事業会計からの長期貸し付け金は平成31年が期限となっていましたが、さらに10年延長されました。
 平成30年度は、完成土地の5件36,696㎡の売却、借地権契約は1億1000万円あり、また163号議案普通会計の所管ですが、コスモパーク加太の売買努力は評価するものの、いずれも県財政への圧迫を取り除くにはまだまだ遠い道のりです。
 この公営企業決算のもう一つの柱は、こころの医療センター会計です。この審査では他の議員からもたくさんの評価が寄せられました。私どももこのセンターの位置付け、果たしている役割をおおいに評価するものです。
 県内の自殺率は、全国で1位というありがたくない現実があります。「精神科医療の充実」は避けられないテーマとなっています。一般会計からの繰り入れ6億円余がありながらも、対象医療として、統合失調症、うつ病対策、さらに認知行動療法へ、また、アルコール依存症、ギャンブル依存症対策、発達障害などに取り組む実際を、異例の決算委員会としての視察も含めて見分しました。唯一の県営精神医療機関として24時間365日、大きな役割を担い、日々格闘していることを評価し、臨床心理士1名だけなど不十分な体制を充実させていくべきだと考えます。
 土地造成事業会計との抱き合わせの採決になるので「賛成」にならないことが残念であることを申し上げ反対討論といたします。


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