1.洋上風力発電について
(1)再生可能エネルギーの中に占める洋上風力の可能性について国の考え方を
どう捉えているか
(2)県が実施している洋上風力ゾーニングの背景、目的、内容について
(3)ゾーニングの活用の方策、今後の進め方について
(4)和歌山県沖でのゾーニングを有効に生かすために
2.日高川水系整備の新年度計画について
(1)日高川の河川改修と樹木伐木、堤防補修は
(2)西川河川の予算の増加、今年の進捗は
(3)堂閉川の浸水被害対策について
3.部落差別の解消の推進に関する条例案について
(1)今、「部落差別」を強調して克服しなければならない課題なのか
(2)部落差別だと判断する「差別の定義」は
(3)誰が「差別だ」と判断するのか
(4)この差別は必ずなくすことが出来るという共通理解について
4.新型コロナウイルス被害への対応について(要望)
(1)介護施設及び障がい者施設への支援について
(2)風評被害への経済援助体制について
1.洋上風力発電について
(1)再生可能エネルギーの中に占める洋上風力の可能性について国の考え
方をどう捉えているか
《質問》楠本文郎
県議
2020年3月議会にあたり議長の許可を得まして、一般質問をさせていただきます。
再生可能エネルギーの開発は、世界的にも日本のエネルギー需給から見ても待ったなしの状況です。そうした中で、洋上風力発電が浮上しています。
長期安定的な買取制度であるFIT制度の導入以来 再生可能エネルギーの普及が儲かる事業になっており、また、国際的な潮流を受けて、大手の事業者や外国資本が巨大な資金力で太陽光発電、風力発電の設備を大型化してきているのも現状です。
資源エネルギー庁の資料によれば、2019年令和元年8月時点で、約1258万kWの洋上風力発電の案件が環境アセスメントを実施しているといいます。このまま放置すれば乱開発にもなりかねない等の懸念のもと、海域利用のルール整備の必要性が高まってきているのではないでしょうか。
そうした中で、2019年4月に「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」略称「再エネ海域利用法」が施行されました。これには衆参のすべての会派、日本共産党も含めて賛成しました。
再生可能エネルギーに本格的に取り組んできたEU諸国とくらべ、導入実績で大幅に後れを取りました。日本の電力供給にしめる再生可能エネルギーの比率は18%(2018年)です。デンマークの59%、ドイツの41%、スペインの38%、イタリアの35%、イギリスの33%などを、大きく下回っています。
再生可能エネルギーの導入・普及は、温暖化抑制のためにも喫緊の課題であり、一層の推進が求められています。しかし、持続可能な発展をめざすための一環であるはずの再生可能エネルギーの取り組みも、環境面や土地利用に関する規制の弱い日本では、きちんとしたルールや規制が未整備のまま、地域外資本や外国資本による利益追求を優先した乱開発が起き、住民の健康・安全や環境保全にかかわる問題を引き起こしています。再生可能エネルギーの健全な発展のためにも、解決が急がれます。
そのために、事業の立案および計画の段階から情報を公開し、事業者、自治体、地域住民、自然保護関係者、専門家など広く利害関係者を交え、その地域の環境保全と地域経済への貢献にふさわしいものとなるようにしなければなりません。
そこで、まず再生可能エネルギーの普及を課題としている国の方向性、その中での洋上風力の可能性についての国の考え方を、和歌山県としてどうとらえているのかをまずお答えください。
《答弁》
商工観光労働部長
平成24年7月のFIT制度開始以降、太陽光発電を中心に再生可能エネルギーの導入が急速に拡大し、コストの低減に従って、買取価格の引き下げが行われているところです。大規模な太陽光発電では、平成29年度から入札制が導入され、現在、1kWhあたり13円程度、陸上風力発電の買取価格では、今年度19円となっています。
それに対し、平成26年度からFIT制度の対象となった洋上風力発電の買取価格は、事業化されたものがほとんどないこともあり、現在も36円と高い買取価格が維持されています。
他方、令和元年4月から再エネ海域利用法が施行されたことにより、同法に基づく案件については、入札制の導入によって、事業者間の競争を促してコスト低減を図るとともに、公募により選定された事業者に、最大で30年間、国により促進区域に指定された海域を長期占用できる権利を与え、利害関係者との調整の枠組みを明確にするなど、国は、洋上風力発電の導入を促進しているところです。
県としましては、エネルギー自給率の向上や地球温暖化防止に資する再生可能エネルギーにつきまして、自然環境や防災等の観点から地域住民の生活環境の維持に十分配慮しつつ、導入を促進していかなければならないと考えております。
洋上風力発電につきましても、地域の自然的条件や社会的条件を見極めながら、導入の可能性をしっかり検討し、対応していく必要があると考えております。
(2)県が実施している洋上風力ゾーニングの背景、目的、内容について
《質問》楠本文郎
県議
再エネ海域利用法の成立にもとづき、早くも2019年7月には、海域利用の「促進区域」の指定に向けて、すでに一定の準備が進んでいる11地域が整理されました。このうち「有望な区域」として、秋田県能代市・三種町・男鹿市沖、秋田県由利本庄市沖、千葉県銚子市沖、長崎県五島市沖の4カ所が地域指定され、さらに長崎五島市沖は法8条第1項、自然条件と出力の量、航路等への影響、港湾との一体的な利用、系統の確保、業況への支障がないこと、他法令の海域・水域との重複がないことの指定基準の6条件を満たし、協議会での意見がまとまったことなどから「促進区域」に指定されたということです。
県はこうした状況を把握したうえでゾーニング調査を実施しているはずです。いま国からの委託を受け実施している3か年のゾーニング調査を、和歌山県として受けた背景、目的を説明していただきたいと思います。また、3か年調査の2年目ですが、その具体的な内容をお示しください。
※資料 和歌山県ゾーニングの基本的な考え方
《答弁》
商工観光労働部長
和歌山県沖の紀伊水道につきましては、NEDOの調査によると、全国的に見ても風況が非常に良く、今後、事業者によって風力発電事業が計画される可能性が高いとされています。
このような中、和歌山県では、環境省の委託を受けて、平成30年度から3か年の計画で、由良町から串本町までの海域において、洋上風力発電の「ゾーニング」を行っているところです。
本ゾーニングは、地域の自然的条件・社会的条件を評価し、洋上風力発電の導入を促進しうるエリアや環境保全を優先することが考えられるエリア等の設定を行うことなどを目的としています。
現在の進捗としては、本年度までに海棲生物、鳥類、自然公園や世界遺産からの景観等といった自然環境の観点からとりまとめを行ってきており、先般、パブリックコメントを実施したところであり、それによって得られた意見を踏まえ、引き続き検討してまいります。
(3)ゾーニングの活用の方策、今後の進め方について
《質問》楠本文郎
県議
3か年の調査実施後、このゾーニングがどのように生かされていくかがやがて問われます。ゾーニング結果によっては、「促進区域」に手を挙げられるかもしれない。今後の進め方については、資源エネルギー庁が示している4つの基本原則に基づき、促進区域の指定6基準を満たすこととなるのかどうかの判断が求められてくるでしょう。このことを念頭に置いての議論を始めていくべきだと思うのですが見解を伺っておきたいと思います。
《答弁》
商工観光労働部長
ゾーニングにつきましては、今後、漁業や船舶の航行といった先行利用者への影響など社会的な調整が必要となる事項について、引き続き調査を行い、最終的なとりまとめを行う予定としております。
その後、とりまとめたゾーニングマップを、洋上風力発電の事業者に提示し、事業を検討する際の参考にしてもらうことを考えております。
また、議員からお話しがありました「再エネ海域利用法」では、具体的に事業を進めていくエリアを「促進区域」として国が指定するとともに、この区域において、公募に基づき国が事業者を選定する仕組みになっています。
県としましては、この制度を活用するかどうかについても、本ゾーニング結果を踏まえながら検討していきたいと考えております。
(4)和歌山県沖でのゾーニングを有効に生かすために
《質問》楠本文郎
県議
さて、2月24日に県主催の洋上風力発電フォーラムが行われました。私も参加しましたが、質問では、情報が少なくほとんどの住民には知られていない現状が発言されています。
私は、今回「再エネ海域利用法」が初めて全会一致で採択された大きな要因は、再生可能エネルギーの普及を図ることの必要性での一致と、同時に、地域住民を置き去りにして大規模事業者だけが儲かる仕組みでは事業化は出来ないし、無理やり反対意見を押し切っても継続した良い事業にはならない、という方向に進んだのだと思っています。
その保証が漁業者・船主など先行利用者を含む「協議会」を設置し、その協議会の合意がなければ前に進めないとしている点があげられます。この点をしっかり押さえて、地域住民の選択、判断の元になるようしっかり地域住民に働きかけて、県として主導していただきたいと思うのですがいかがでしょうか。
《答弁》
商工観光労働部長
和歌山県における今後の洋上風力発電の導入につきましては、自然環境や防災、事業環境等の総合的な観点から、地域住民の生活環境や漁業、観光等の県内産業への影響を十分配慮しつつ、地域のためになるように進められる必要があると考えております。
仮に地域にとって悪影響があると判断される場合は、厳しく対応する必要があると考えております。
県としましては、この考え方を前提として、引き続き、ゾーニングマップの作成や洋上風力発電の導入について、検討を進めてまいります。
《要望》楠本文郎
県議
風力発電も大規模化・集中化によって、騒音、低周波、シャドーフリッカー、基礎工事の巨大化による安全面や周辺環境への影響など、住民の不安・不満は高まっています。環境省は2017年に「風力発電施設から発生する騒音に関する指針」を作成しましたが、1基あたり出力2000kWの風車を想定した調査をもとにしており、最近では1基4000kW以上の出力の風力発電計画が増えているもとで、「指針」の見直しが必要です。とくに集中立地にともなう累積的影響を検討すべきです。
地域での乱開発を防ぐ手法として、環境保全を優先するエリア、風力発電の導入促進が可能なエリアに区分けするゾーニングの導入は有効であり、環境省はマニュアルを作成していますが、国として住民の健康・安全や環境保全を脅かす恐れがある地域への立地を規制することも必要です。
すでに、ある事業者は、早期の事業化をめざして昨年2月4日、御坊市沖での計画書を作成し「配慮書」の公示縦覧を済ましています。これには知事意見も付けられています。御坊市・美浜町・日高町も意見を述べられています。事業計画者が提出する次の「方法書」の段階では、とても難しい状況になることは目に見えています。県として再エネ海域利用法に則ってリードしていただきたいことを要望してこの項を終わります。
2.日高川水系整備の新年度計画について
《質問》楠本文郎
県議
大きな2点目に、今回も引き続き日高川水系整備計画についてお尋ねさせていただきます。
昨年末11月30日に6月・9月議会での私の質問とその答弁を元に、住民のみなさんへの「災害シンポジューム」を開かせていただきました。
県が作成している日高川水系整備計画の全体の災害対策と、椿山ダムの操作についての関心はとても高く、たくさんの現場写真を使いながらの説明と、発言者5名の話で、たっぷり2時間かってしまいました。たくさんの方の質問と、ご意見をお聞きするつもりでしたが、少しの質疑時間になりました。ただ、80人余りの方が参加して、とても熱心に聞いていただけたと思っています。後日、5カ所でざっくばらんの懇談会を開きました。どこでもこの日高川水系を中心とした災害対策が話題となりました。災害に対する苦労話や、心配な点は地域によって違いますが、とても関心の高いことであることは間違いないことでした。
(1)日高川の河川改修と樹木伐木、堤防補修は
日高川の河川改良に、当初予算としては昨年と同額の1億5750万円が計上されています。このうち江川(えがわ)の和佐地域の、ちょうどJRの橋脚のあたりから野口にかけても、これは見るからに河川内で整備事業が進められています。令和2年度も同様の事業が行われると考えてよいのでしょうか ご説明ください。
日高川の最も下流の天田橋は国道にかかった橋ですが、この北詰めの樹木が正月にかけて伐木されました。最も目立つ場所です。市内外の方から喜びの言葉がたくさん寄せられました。たくさんの群れとなった野鳥の住み家でもありましたから少し気になりますが、災害防止のためということで苦情は聞いていません。結局、令和元年度からたくさんの川の中の樹木がなくなっています。どのぐらいの箇所で伐木されたのでしょうか。そして、令和2年度も継続して伐木されるものと考えてよいのでしょうか。
天田橋から野口橋にかけての右岸堤防は、絆創膏から包帯上にコンクリートでの補強が目立ってきています。作業の方にお聞きすると、ごみの投げ捨てが多くこのかたづけに余計な時間がかかると言われます。この部分でも、そのままでは作業にならないので結果的に雑木伐採が進んできています。まだ絆創膏状態の区間がかなりあります。この区間の堤防補強を継続していただけるのかどうか、お聞きしておきたいと思います。
《答弁》
県土整備部長
日高川の河川改修につきましては、令和2年度も引き続きまして、日高川本川と支川江川との合流点付近やその上流において、堤防整備を行ってまいりたいと考えております。
日高川の伐木については、天田橋から野口橋の間の樹木の密集地において実施することとしておりまして、今年度は、天田橋上流の両岸、御坊大橋下流の左岸側などで行いました。なお、併せて再繁茂、再び繁ることを防止するため、再繁茂防止のための除根と掘削も行っております。令和2年度も引き続き、野口新橋上下流の右岸側など、樹木の密集地において同様の工事を行いたいと考えております。
天田橋から野口橋にかけての右岸堤防の修繕工事については、令和2年度も引き続き、工事を行ってまいりたいと考えております。
(2)西川河川の予算の増加、今年の進捗は
《質問》楠本文郎
県議
災害シンポジュームに参加をした方の多くは「西川(にしがわ)に御坊市内を流れる川が何本も流れ込んでいることは知らなかった」と言われます。その西川の改良にかなり力を配分していただいていることに感謝申し上げたいと思います。昨年当初に2億1000万円、6月に同額の補正があって、さらに、2月補正予算で5億500万円、さらに令和2年の当初には4億8300万円の予算がついています。
担当職員の健康が心配だという声も聞こえるほどの予算をつけていただいているのですが、それで元年から2年にかけてどこまで進捗することになるでしょうかお示しください。
《答弁》
県土整備部長
西川の河川整備につきましては、県議会議員の皆様、県選出の国会議員の皆様をはじめ、関係の方々のご尽力により成立いたしました「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」の予算を最大限に活用するなどいたしまして、引き続き、事業の進捗を図ってまいりたいと考えております。
これらの予算により、現在、大川橋から寺田橋までの間で工事を行っております。令和2年度も引き続き、尾上橋から寺田橋までの問の河道掘削、寺田橋の架け替えなどを進めてまいりたいと考えております。
(3)堂閉川の浸水被害対策について
《質問》楠本文郎
県議
堂閉川(どうべがわ)は、日高川町と御坊市の境界にある道成寺、鐘巻周辺でたくさんの浸水被害を日常的に起こしています。これを改善してほしいと行政区域を超えた委員会が作られていますが、その要請活動も長年続けられています。今回 堂閉川として初めて予算が計上されました。この2100万円の内容について説明をいただいておきたいと思います。
《答弁》
県土整備部長
堂閉川の改修計画につきましては、日高川水系河川整備計画に位置づけられており、河道の付け替えを行って斉川(いつきがわ)の下流に接続することにより、流下能力の向上を図ることとしております。
一方で、一般的な河川改修は、まず下流の流下能力を向上させ、上流からの流量の受け皿を確保してから、順次、上流の河道改修を実施することが原則でございます。そのため、堂閉川を改修するには、現在工事中の西川や、その支川の斉川の改修が必要となり、堂閉川の改修まで相当の年数を要することとなります。
そこで、これまでも下流の斉川や西川への負担を増大させずに道成寺周辺の浸水被害を軽減することができる手法がないか、検討を重ねてきたところでございます。
このような中、今年度、地元から、堂閉川上流のため池を調節池としても活用するなど、浸水対策に最大限の協力をするので、県においても浸水対策の早期着手について、再度検討して欲しいといった趣旨のご要望をいただきました。これを受け、県において改めて検討を行いましたところ、河川整備計画に位置づけられている堂閉川のバイパス部分を、下流の整備状祝の如何にかかわらず、先行して暫定的な調節池として整備することで、浸水被害の軽減効果が期待できるとの結論に至りました。令和2年度は、その整備効果や手法を詳細に詰めた上で、設計に着手してまいりたいと考えております。
堂閉川の浸水対策につきましては、かねてより道成寺周辺浸水対策検討委員会の皆様をはじめ、日高川町、御坊市からもご要望をいただいているところでございます。県といたしましては、早期に浸水被害の軽減を図ることができるよう取り組んでまいります。
3.部落差別の解消の推進に関する条例案について
(1)今、「部落差別」を強調して克服しなければならない課題なのか
《質問》楠本文郎
県議
大きな項目の3点目に、今議会に提案されている「部落差別の解消の推進の関する条例」案に対して、基本的な問題意識を提起し、質問申し上げます。
昨年2月に公表された「和歌山県人権に関する県民意識調査 調査結果報告書」を読みました。このアンケート中、関心のある人権課題を17項目の中から3つ選ぶ設問では、「障害のある人の人権」が42.7%で最も割合が高く、「働く人の人権」が38.2%、「インターネット上での人権侵害」が27.8%となっています。「同和問題」は8.2ポイントで、5年ごとの調査ですが、15年前より10.4もポイントも下がっています。
このアンケートの設問では、「同和問題」の表現でかっこ書きでの「部落差別」です。何故にこの条例案では、これまでの呼称の「同和問題」から、「部落差別」になったのかその説明をいただきたいと思います。
私は、パブリックコメントに付された骨子案にある「部落差別は様々な取組により解決へ向かっている」と認識していますが、本条例案にはその記述はありません。
同名の法律は2016年にすでに施行されていますが、私たちは長いこと「同和対策事業」に取り組み「同和問題」の解決のために全国で改善を図ってきました。今更また、時計の針を巻き戻すような呼称をされることには大きな違和感を持つものです。
骨子案では、続けて「今もなお個人への誹謗中傷、同和地区の問い合わせ、インターネット上への差別書き込みなどが存在しています」との記述になっていますが、この実態について説明をいただきたいと思います。
また、県にはすでに、「人権尊重の社会づくり条例」があります。近年15年はこの条例に基づいて人権擁護の取り組みを推進してきたと捉えています。この条例との相違点、進化させる内容等についても説明的条文はないと思います。
人権擁護の観点から、部落差別だけ突出して取り組まなければならない現状にあるのかどうかの認識として併せて担当の企画部長お答えください。
《答弁》
企画部長
まず、条例案ではなぜ同和問題から部落差別に呼称が変わったのかという点についてでございますが、平成28年に「部落差別の解消の推進に関する法律」が施行されたことに伴い、今回の条例を提案するにあたり、「和歌山県部落差別の解消の推進に関する条例」としたところでございます。
次に、部落差別については、これまでの取組により解消に向かってはいるものの、今もなお、結婚などに際して同和地区かどうかを問い合わせる行為や、インターネット上に誹謗中傷や同和地区を忌避・排除する書き込みなどが発生しているという実態があります。
部落差別解消推進法が施行された平成28年度以降、市町村等から67件の部落差別が報告されており、その内訳としては、差別発言が32件、同和地区の問い合わせが24件、結婚差別が1件、差別はがきなどが10件となっております。さらに本県では、今年度からインターネット上の差別書き込みのモニタリングを実施しておりまして、令和2年2月末時点において、362件の差別書き込みを確認しております。
このような差別の現状を踏まえ、部落差別の解消を推進するためには条例が必要と考え、提案したところでございます。
(2)部落差別だと判断する「差別の定義」は
《質問》楠本文郎
県議
2点目は、条文の問題です。「部落差別の解消の推進に関する法律」の審議では、「同和」または「部落差別」等の定義がないことが大きな問題になりました。今回提案の条例案にも定義がありません。
「今なお様々な差別が存在する」と規定している「差別」とはどんなことを言うのかの「定義」がなければ、「差別」しているとの認定のしようがありません。法案審議では法律案提出者は「部落とは部落の出身者であることを理由とした差別」だとしてきました。法と同様ならこれを行政的に対応しようとすればするほど旧同和地区出身者かどうかをまず認定しなければなりません。かつて、私たちは属地・属人主義で差別解消のための格差是正に取り組んできました。この条例を新たにつくることによって時計の針を巻き戻すことになり、部落を特定し、差別の再生産すなわち、新たな差別が始まるのではありませんか。また、条文にはなくとも定義に当たる「ものさし」はいかがするのかについても併せてお答えください。
条例案第5条・6条では「県民の責務」「事業者の責務」を求めています。差別解消のために必要な役割を果たすよう努め、施策に協力するよう求められています。しかし、県民が広報活動などで協力しようにもどこの誰が、どんな内容で差別されたのか分からなければ心からの協力になりません。半ば強制するような方法は、逆効果をもたらすものしかないことはすでに経験してきたことです。「責務」の内容はどんなことを想定されているのでしょうか。部長からお答えいただきたいと思います。
《答弁》
企画部長
今回提案した条例における「部落差別」とは、「部落差別の解消の推進に関する法律」における部落差別のことで、一般的には、特定の地域の出身者であることを理由に結婚を反対されるなどの不合理な取り扱いを受けることです。この条例は、部落差別の解消を推進するためのものであり、本条例の施行に伴い、地区と人を特定するものではありません。
県民及び事業者の責務については、率先して部落差別の解消のために取り組んでいただくとともに、行政が行う講演会・研修会や啓発活動への参加をお願いするものです。特に、事業者については、部落差別の解消のための研修などの取組により、従業員の人権意識の高揚を図っていただくことを求めています。
(3)誰が「差別だ」と判断するのか
《質問》楠本文郎
県議
この項の3点目に、条例案第7条「部落差別への取り組み」では、「部落差別を行ったものに対し、説示・勧告をするとあります。
法律審議の中で参議院付帯決議が付けられました。「過去の民間運動団体の行き過ぎた言動等、部落差別の解消を阻害していた要因を踏まえ、これに対する対策を講じることも併せて」とあります。事業所や、福祉団体でもこの「差別認定」は出来ないでしょう。この判断は誰が行うのか、説示や勧告は誰が行うことになるのでしょうか。企画部長からお示しください。
《答弁》
企画部長
部落差別か否かの判断については、知事が行います。
また、部落差別を行った者に対し、知事の指揮・監督のもと、県職員が部落差別は許されないものであるということを説示し、今後、部落差別を行わないように促します。その上でこれに従わない場合は勧告を行います。
(4)この差別は必ずなくすことが出来るという共通理解について
《質問》楠本文郎
県議
この項目の最後にお伺いをいたします。私は、この部落差別はなくさなければならないもの、そして時間はかかってもなくせるものだと思っています。それは差別をする格差などの実態がなくなっているからです。残るのは心の中になるのではありませんか。
「差別してはならない」ということを半ば強制してきた過去の歴史は、周りに言ってはならない、心の中に閉じ込めておくという方向になりました。正しい理解を広げていくことを一緒に考えることはできると思っているのですが、いかがでしょうか。この差別をなくすための知事の思いをお答えいただいておきたいと思います。
《答弁》
仁坂知事
和歌山県では、先人たちも同和問題の解決に取り組み、私自身も解決のために、一生懸命取り組んでまいりました。また、部落差別の解消の推進に関する法律が施行されたことにより、部落差別は許されないものであるという認識は高まったと考えております。
しかし、残念ながら、結婚差別や個人を誹謗中傷する差別発言をはじめ、同和地区を避けようとする目的で同和地区の所在を調査したり、行政機関へ問い合わせをしたりする事例が発生しております。また、調査をしてあげるというような人だっておるわけです。インターネット上には悪質な差別書き込みが行われるなど、部落差別は過去の問題ではなく現実の問題として残っております。
私としては、和歌山県独自でやらなければならないことを考えて、今年度からインターネット上の人権侵害対策事業を実施しております。これは、法律の地方公共団体がいろいろ考えてやれということに即したものだと思っております。具体的には、差別的な書き込みのモニタリングを行ってプロバイダ等に削除要請を行うなど、差別の拡散や助長の防止に努めるとともに、県民に対して、インターネットの正しい使い方について理解を深めるための講座を実施するなどの啓発にも取り組んでおります。
また、従前から、相談者の気持ちに寄り添いながら、部落差別に関する相談に応じるとともに、部落差別についての理解や認識を深めていただくための教育及び啓発に取り組んでおります。
この条例案を提出させていただきましたのは、昨今の田嶋企画部長から説明がありましたような状況に鑑み、法律の趣旨からして、さらに和歌山県では部落差別の解消のために、やることがあるんじゃないかということで、条例案を提出させていただいたわけでございます。
しかし、先ほどからの楠本議員のお話を、議論を聞いておりますと、ちょっとそれは違うんじゃないかというふうに私は思っております。まず、定義をしろというお話がありましたが、部落差別とは、我々日本人が日本の歴史を勉強したら誰でも分かるような歴史的な事実であります。現在も続いている歴史的な事実であります。したがってこれ以上の定義をするということは、弊害の方が多い、そういうものだと思います。一体、地域とか個人とかを特定したいのでしょうか。そんなことは多分ないと思うのですが、定義をしろといってお迫りになるということは、そういうふうにも繋がります。また、そもそもそれが何になるのでありましょうか。部落差別は、部落差別がいかんのであります。例えば、特定の人を部落差別のかどで虐めたリ、害したりするときに、それが的外れなものであるかどうか、ということをですね、例えば、明らかにするような基準を示せという法律的な要請があれば、それは地域とか個人とかを特定する必要があるわけですけれども、そんなことをまさか楠本議員が、あるいは御党が求めているとは思いません。したがって、それ以上、定義をする必要はないと思います。
それから、誰が判断をするかということなんですけれども、これは、3条の対象になるようなことを誰かがやれば、それは、そりゃいかんのじゃないかということで、私が判断をして説示をしたりするということは、条文上明らかであります。楠本議員は、これは気持ちの問題だとおっしゃいました。だんだんそういうふうになってきていると思います。差別したらいかんというふうなことは、私も思っておるとおっしゃいました。そのとおりだと思います。しかし、閉じ込めたらいいんだ、閉じ込めるより、本当になくさなければいけないというふうに思われているのであればですね、本当に、そう思わないようにしようということを鮮明にした条例を作って何が悪いんでありましょうか。本当に、そういうふうにしようよということで、全会一致で賛成されるものと考えております。
4.新型コロナウイルス被害への対応について(要望)
《要望》楠本文郎
県議
大きな項目の4点目に、新型コロナウイルスに関しての対応の問題で質問のつもりでしたが、20日開会日に各派も含めた形で代表的質問があり、知事答弁をいただいたうえで、県議会としての国に向けての意見書が出されました。
今回の和歌山県内の感染の始まりが湯浅町にある病院の医師の罹患からであったことで県内に衝撃が走りました。以来県知事を先頭とした担当部課の奮闘、市町村関係者の努力、県民各位の理解の中でここまで来たという状況です。本当にご苦労様です。
20日の開会日に各会派の意見も含めた形で代表的質問があり、知事答弁をいただいたうえで、県議会として、国に向けての意見書が出されました。
13人目の感染者がでて以来、県内で新たな感染者が出ていないといううれしい状況を受けて、しかし、感染事態は全国的にまだ予断を許さない状況にありますから、今後の対応ということで2点の要望をもうしあげます。
日本共産党の市町村議員は、県政課題についても、県議団と連携して住民の暮らしに係る問題を解決していこうと日常的に取り組んでいます。私の担当している日本共産党議員に寄せられている有田地方の状況についてです。
(1)介護施設及び障がい者施設への支援について
有田地方の介護施設では、新規入所、ショートステイの引き受けが停止する事態が発生して、通常の高齢者の介護サービスがままならない状況が一気に進みました。
湯浅町は、全くないという悲鳴が上げられる中で、県や他市町の協力で、65歳以上の高齢者にマスク支給、介護施設へのマスクと消毒液の配布もされました。停止されていた介護施設も通常運営に戻れるようになってきています。ただ、有田川町では高齢者へのマスク、消毒液の配布を実施したいとしているけれども、物品が集まらない状態であるといいます。また、衛生用品が障がい者施設や作業所に回らず、障がい者世帯からも配布を求める声が上がっています。
こうした状況の中、県として、支援の必要な介護サービスの確立のための人員の派遣、障がい者施設への支援など、全体として高齢者や障がい者のある方が困ることのないよう、しっかり支援を続けていただけるようお願いします。
(2)風評被害への経済援助体制について
さて湯浅町では、2017年に醤油醸造文化が日本遺産に認定されたことを機に観光資源を生かしたまちづくりに取り組み、観光客の誘致に奏功してきました。その矢先の今回のいわば事件が発生したわけです。町の雰囲気は一変し、伝建地区の街並みから観光客はいなくなりました。行事・イベントは軒並み中止され、ふるさと納税返礼品の受け取り拒否、宿泊施設や外食店などの予約キャンセル、地場産業であるみかん、しらす、しょうゆ等の特産物の販売にも大きな打撃を及ぼしています。
「一日店を開けていてもお客さんは1組だけ」という居酒屋さん。「予約の宴会がすべてキャンセル。普段の客数も通常の3割程度。常連さんも来ない」という外食店さん。ある和菓子屋さんは「初午や神社の餅投げ、施設への和菓子納品などはすべてキャンセル。何とかしてほしい」、醤油味噌販売店さんは「国内。外国人観光客とも激減。マスコミの取材も多く気が滅入る」という状態です。ミカン農家、鮮魚販売業者からは、「湯浅町産というだけで出荷のキャンセルが来た」などなど、こんな状態の長期化はまさに死活問題」「新型コロナ倒産」が次々に出かねない、というひん死の状態だと訴えています。
風評被害はかなり深刻で、湯浅町民が町外へ出向いた際に「湯浅町から来た」というだけで嫌われたり、入店さえ拒否された事例もあります。この状況は有田川町でも、有田市でも同様です。
こうした風評被害については、湯浅町だけでなく県内全域に及んでいると思います。問題点をしっかり把握して、風評被害を克服していくためのなお一層の経済支援を要望します。
仁坂知事の答弁を聞く、楠本文郎県議(右)
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