2020年6月県議会 杉山俊雄 一般質問 概要記録
  録画中継

2020619

1.学校再開にあたって
(1)子どもの学習の遅れや心身のケア等に応える体制について
(2)県学力テストは中止に
(3)高校入試の出題範囲等を早期に示し、周知すること
(4)消毒や清掃などの新たな負担の軽減について
(5)通常授業に戻して良い根拠について

2.コロナ拡大とIRカジノについて
(1)コロナの影響でカジノが一変したことについて
(2)マイナスの社会的・経済的効果の試算について
(3)「特定資金貸付」業務について
(4)カジノはギャンブル依存症で成立する
(5)カジノではなく観光資源の活用を


1.学校再開にあたって
(1)子どもの学習の遅れや心身のケア等に応える体制について
《質問》杉山俊雄 県議
 県内の多くの学校が6月1日から再開されました。喜びと不安の再開だったと思います。
 3カ月間に及ぶ長期の休校は、子どもたちに計り知れない影響を与えています。何よりも長期にわたって授業がなかったことは、子どもの学習に相当の遅れをもたらしました。子どもを取り巻く環境の違いによって、学力の格差を広げたという点でも深刻です。
 また子どもたちは、かつてない不安とストレスを抱えています。(国立成育)医療研究センターの「コロナ×子どものアンケート」では、困りごとという設問に対して、「友達に会えない」、「学校に行けない」、「外で遊べない」、「勉強が心配」の順で回答をしています。各種のアンケート結果では、「イライラする」「夜眠れなくなった」「何もやる気がしない」「死にたい」などの悲痛な声が記されています。こうした子どもたちの不安や悩みを受け止める教育が求められます。
 学習の遅れと格差に対しては、子ども一人ひとりに丁寧に教えることが欠かせません。学習の遅れた子どもへの個別の手立ても必要です。不安やストレスと向き合いながら、心身のケアをすすめて行くには、手間と時間が必要です。特別な困難を抱えた子どもには、より立ち入った心理的あるいは福祉的な支援が求められます。これらのことは学びをすすめていく上で欠くことは出来ません。
 しかし、現場では遅れを取り戻そうと、土曜授業、夏休みや学校行事の大幅削減、7時間授業が計画され、授業の詰め込みが行われようとしています。
 文科省は「学校教育が協働的な学び合いの中で行われる特質を持つことに鑑み、学校行事等を含めた学校教育ならではの学びを大事にしながら教育活動をすすめていくことは大切」と「学びの保障」の方向性を示しています。
 学びを保障するためには、子どもを直接知っている学校現場の創意工夫を保障することこそが必要です。教科書、全てを駆け足で消化するやり方では子どもは伸びないと、多くの教員が指摘しているところです。
 県教育委員会は休校中や再開後の子どもの状況を把握していると思いますが、学習の遅れや心身のケア等に応える体制づくりについて、どう取組をすすめていますか。教育長にお伺いします。

《答弁》 宮﨑教育長
 学校再開にあたっての子どもの学習の遅れや心身のケアに応える体制についてのご質問でございます。
 臨時休業期間中は、各学校において、担任等から家庭への電話連絡や家庭訪問等により児童生徒一人一人の学習や心身の状況把握に努めてまいりました。
 授業再開後は、担任や養護教諭等を中心に児童生徒一人一人に対して、きめ細やかな健康観察の相談等を行い、安心して学校生活を送れるよう努めています。また、家庭学習の内容が身についているかを把握し、定着が不十分な児童生徒に対して補充学習等を行うことが有効であります。さらに、授業時間を確保することが必要でもあります。決して駆け足で消化するやり方ではなく、夏季休業期間を短縮し学びの保障に努めています。
 そのために、本議会で、教員、学習指導員、スクール・サポ一卜・スタッフや、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等の追加配置をお願いしているところでございます。
 今後、各学校において、児童生徒が安全・安心に登校し、前向きに学習に取り組めるよう、市町村教育委員会と協力して支援してまいります。

《要望》杉山俊雄 県議
 担任は大変です。健康チェック、心のケア、宿題の点検、補充学習等々をしなければなりません。国の2次補正で県全体で、教員の加配39人、学習指導員600人、SSS(スクール・サポート・スタッフ)200人の配置がありますが、これでは不十分です。感染予防や教職員の過重な負担を軽減するために、更なる増員を国に求めていただきたいと思います。また、子どもへの学力の影響はこのあとも続いていく可能性があります。多くの教職員やスタッフ等で学校を支えていく体制を持続させ、一年切りにしないよう国に求めていただくよう。重ねて強く要望しておきます。

(2)県学力テストは中止に
《質問》杉山俊雄 県議
 全国学力テストは中止になりましたが、県学力テストについては、10月実施を延期する方向で検討していると聞いています。
 学校現場に余裕がない中で実施されれば、対策のために多くの時間が費やされ、子どもたちに新たなストレスをもたらし、子どもの成長をゆがめ、学力格差をさらに広げることにもなりかねません。
 学校は行事を縮小し、子どもが楽しみにしている運動会などを中止するところもあります。土曜授業や7時間授業等で必死に授業時数確保に努めているのに、県教委は現場の状況を顧みず、県のとしての行事・学力テストを無理矢理押しつけるのは理不尽ではないでしょうか。キッパリ中止すべきだと思いますが、教育長の考えをお聞かせください。

《答弁》 宮﨑教育長
 県の学カテストについてでございますが、本年度の学習到達度調査については、県内の小中学校等で臨時休業中に取り組んだ家庭学習や、再開後の授業における子どもたちの一人一人の学習内容について、定着状況を把握するとともに、個々の課題に合わせた指導を行い、学習内容を確実に身に付けさせるために行います。
 約3か月の臨時休業を経て、各学校において学習指導の検証が必要な本年度こそ、この調査が特に有意義であると考えています。

《要望》杉山俊雄 県議
 休校中で、教師から直接教わっていない家庭学習の定着状況を把握してどうしますか。子どもを支えられる大人たちが周りにどれだけいるかの違いによって、「学力格差」が生じます。この「学力格差・学習の遅れ」を取り戻すには、県の学力テストではなく、子どもを直接知っている学校現場に任せればどうですか。
 学力テストを実施すれば、定着していない部分を補おうとかなりの時間が費されます。学校は行事削減で時数確保に努力しているのに学力テストを行うのですか。
 学校の「授業時数確保」の努力を無にして良いのでしょうか。中止すべきだと再度申し上げておきます。

(3)高校入試の出題範囲等を早期に示し、周知すること
《質問》杉山俊雄 県議
 中学3年生の教科書は「年度内に終わるように」と言われていて、5月25日から授業を行っています。入試に備えてのことと思われますが、詰め込み、新幹線授業になりかねません。ついて行けなく、分からない子どもを多く生み出しかねません。「ついていけないのであれば塾に」との声も聞かれます。学習の進度差が入試に響くのではないかと子どもも保護者も不安に思っています。
 文科省は入試における配慮事項について、「志願者が安心して受検に臨めるよう」に、「出題範囲や内容、出題方法について、志願者が不利にならないよう、適切な工夫を講じる」などの通知を出しています。例えとして、出題については「適切な範囲や内容となるよう設定」することや「問題を選択できる出題方法にする」などを示しています。さらに「入学者選抜の内容をしっかりと入学志願者に伝えることにより不安払拭に努めること」を求めています。
 文科省が言うように、各学校の学習状況が異なることを踏まえ、公平公正な入試のあり方を検討し、早期に学校・保護者に周知することが求められるのではないでしょうか。教育長お答えください。

《答弁》 宮﨑教育長
 高校入試の出題範囲を早期にということでございますが、今回のような事態において、最も優先すべきことは、子どもの将来にわたっての学力の基盤を保障することでございます。県立高等学校入学者選抜の出題範囲を縮小すると、その単元の勉強がおろそかになってしまいます。学びの本質とは何かを慎重に考える必要があります。
 このような観点から、現中学3年生には、夏季休業期間の短縮により授業時間を確保し、生徒に過度な負担をかけることなくご中学3年間で学習すべき内容を卒業までにきちんと学べるよう計画をしております。さらに、教員の増員分や学習指導員などを中学3年生の指導にあてることにより、きめ細やかな対応をしてまいります。
 今後、各市町村教育委員会を通じて、学習の進捗度合いや、各中学校の学習状況等をヒアリングなどを実施して把握し、よりよい方法を講じてまいります。

《要望》杉山俊雄 県議
 各中学校の学習状況を把握し、周知も含め適切に対応するとの答弁でしたが、「教科書を終わることを最優先」にしています。そうなれば、周知は遅くなることが予想されます。
 文科省は入試の出題については「範囲や内容をしっかりと入学志願者に伝えることにより不安払拭に努めること」を求めています。
 大阪府は出題範囲を1割から2割削減するとして、6月19日に公表する予定です。県も不安払拭に答えるよう、早めに対応していただくよう要望しておきます。

(4)消毒や清掃などの新たな負担の軽減について
《質問》杉山俊雄 県議
 学校は6月からの分散登校で、事前の健康チェック、午前中に3時間、午後3時間の目一杯の授業時間を抱え、その上、給食前の消毒、午後の授業終了後、掃除・消毒作業をこなしてきました。
 特別教室は生徒が入れ替わるので、その都度10分の休み時間に消毒を終えなければなりません。教職員は神経をすり減らしながらの授業と消毒の連続で動き続けなければなりません。疲労感いっぱいで免疫力も低下します。このように、学校は感染対策として、毎日の消毒、清掃、健康チェックなどこなし、今まで以上に多くの業務が生じています。もともと異常な長時間労働を強いられている教員にそれらの負担を課せば、教育活動へ力を注ぐことが出来なくなります。
 国は第2次補正予算で、感染対策の徹底と学習保障の人的体制の強化として、SSSを未配置の小中学校に25,200人、追加配置するとしています。県は現在の配置校と小規模校を除いて全校に配置するとしていますが、感染症対策としてはすべての学校に配置すべきです。高校には配置されません。
 また2次補正で、校長の判断で自由に活用できる財政支援があります。地域の感染状況や学校規模に応じて、小・中・高・支援学校に1校当たり100万円から300万円が措置されます。
 管理職に、今必要なものは何かと聞くと「人・金・裁量権」だと口をそろえて言います。これで十分だとはいえませんが、これも活用して、是非、学校の清掃や消毒に必要な人員の確保等をしていただきたいと思います。教育長お答えください。

《答弁》 宮﨑教育長
 消毒や清掃などの新たな負担の軽減ということでございますが、消毒や清掃などの業務については、授業を行うため、また児童・生徒が安全安心に登校するための準備行為であります。ご負担をおかけすることもありますが、さらに新たな人員の増ということは考えておりません。

《要望》杉山俊雄 県議
 現場の切実な願いに応えた答弁とは思えません。「消毒・掃除に必要な物品の財政支援はするが、後は教職員でしっかり掃除を」と言っているようにしか聞こえません。
 現場は健康チェック、心のケア、細心の注意をしながらの授業、その上消毒・清掃で疲労困憊です。何もかも教職員に押しつけていいのでしょうか。一升瓶に二升の酒は入りません。
 田辺市はSSSを会計年度職員として11人(22校分)、1日4時間・3,740円で採用しています。
 国は、学校の清掃や消毒に必要な人員増や委託については、「使えない」と言っていますが、是非現場の声を国に届けてください。
 また、地方創生臨時交付金の上乗せで、人員確保ができるよう財政当局に求め、教職員の負担を軽減してください。教育長よろしくお願いしておきます。

(5)通常授業に戻して良い根拠について
《質問》杉山俊雄 県議
 学校で万全の感染症対策を行うことは言うまでもありません。しかしながらその学校で、厚生労働省が示している感染防止の3つの基本(①身体的距離の確保②マスクの着用③手洗い)のうち、①が出来ないという重大な問題に直面しています。新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は、「新しい生活様式」として「人との間隔はできるだけ2メートル空けること」を基本にしています。しかし「35・38人学級」では2メートル空けることはおろか1メートル空けることも不可能で「身体的距離の確保」と大きく矛盾してしまいます。
  再開後の学校では、20人程度の授業とするため、学級を2つに分けるなどの「分散登校」に取り組んできましたが、この措置は多くの学校で6月15日から通常授業に戻っています。
 20人程度の授業を続けるには、現在の教員数や教室の数ではあまりに不足しているため、元に戻したのではないのではないでしょうか。再開後の通常授業に教職員も子どもも保護者も不安の声を上げています。
 「身体的距離の確保」を「新しい生活様式」の重要な1つとして社会全体で取り組んでいるときに、教室を例外にすることは矛盾です。子どもたちが学校で最も長い時間を過ごす教室を、感染拡大防止対策の観点からしっかり保障していくべきではないでしょうか。「35・38人学級」に戻して良い根拠はどこにありますか。教育長お答えください。

《答弁》 宮﨑教育長
 通常授業に戻して良い根拠についてということでございますが、新型コロナウイルス感染症については、長期的な対応が求められているところですが、持続的に児童生徒等の教育を受ける権利を保障していくためには、一日も早く通常の授業の再開が待たれていたところでございます。
 文科省が作成した衛生管理マニュアルでは、和歌山県のような最も感染レベルの低い地域では、施設等の制約から1メートルの距離を確保できない場合でも、「3つの密」を避けるよう努めることで授業の実施が可能と示されております。
 従って、十分な感染症対策をとった上で、通常の授業への移行が可能と判断をしております。

《要望》杉山俊雄 県議
 「和歌山県は最も感染レベルが低い」ということについて、県民に周知されていません。知事はメッセージで「密接はダメ、政府より厳しい。3密はもっとダメ」「3密でなければいいでしょう、窓を開けているからいいでしょうは全く間違いだと思う」と述べています。
 子どもたちが学校で最も長い時間を過ごす教室を「身体的距離の確保」のために、「密接ダメ・3密もっとダメ」を合い言葉に、安心・安全をしっかり保障することが求められます。
 日本教育学会は再開後の学校の大変さを支える体制として、2次補正だけでは不十分で、小規模学習集団編成や複数担任制、学習補充や個別指導で学習を保障し、ストレスや悩みに答える学校づくりを進めるために、10万人の教員増を提案しています。
 6月10日の衆議院予算委員会で、日本共産党の志位委員長は、2015年2月の少人数学級について「鋭意努力する」とした取組を加速するべきではないかと安倍首相に質問しました。これに対して「検討していきたい」と応えています。
 和歌山県独自で出来る話ではありませんが、大規模な加配等を今年度限りとせず、「コロナ後を見据えて教職員を増員して、少人数学級を加速すべきだ」と国に求めていくべきではないでしょうか。切に要望しておきます。


2.コロナ拡大とIRカジノについて
(1)コロナの影響でカジノが一変したことについて
《質問》杉山俊雄 県議
 次はコロナ拡大とIRカジノについて質問します。
 黒川前(東京高検)検事長は賭け麻雀を認めて辞職しました。雑誌『時評』(2017年9月号)のインタビューで、黒川氏は休日の過ごし方を聞かれ「海外に行った際には個人的な観点でIRを視察する」「職業上の関心もかねて」と述べています。2017年前後はカジノ解禁の議論が進んでいた時期で、刑法は賭博を禁じているが、「公益性」などにより違法性が阻却される。賭博・カジノを合法化する解釈変更を法務省が認めたのも黒川事務次官時代です。「官邸肝いりのカジノ合法化に汗をかいたのが、ギャンブル好きの黒川氏であった疑いが持たれています。」黒川氏がカジノ合法化に関わった経緯は今後明らかになるでしょう。前置きはこれぐらいにして、本題に入ります。
 新型コロナウイルス感染拡大で世界のカジノ業界は一変しました。世界中のカジノが閉鎖に陥っています。アメリカの約1,000軒のカジノ施設が全て営業停止になっています。年収約8兆円の巨大市場が突然消滅しました。
 5月12日、世界最大のカジノ、ラスベガス・サンズが日本進出から撤退しました。フランスのバリエール社も和歌山の公募に応募しませんでした。
 マカオのカジノは2月5日から2週間閉鎖。今は再開していますが、国際観光客の入国制限で客足が戻らず、2月の収益は9割減、3月は8割減、4月は97%減。コロナ感染が収束し、カジノを再開しても正常化は厳しい状況にあります。
 1つは再開の条件です。ラスベガスのカジノ監督機関は再開の条件として、社会的距離のため、スロットマシンの客同士の距離を空け、テーブルごとの制限を求めています。再開で、フル操業しても高収益は望めません。
 2つ目は空路での客の移動です。どこまで回復するのか予想がつきません。「3密」状態のカジノに、客が戻ってくるのかも含め、高収益性は様変わりします。この状況は1年~2年ほど続くと思われます。
 3つ目は、パンデミックは繰り返されると言うことです。ワクチンが開発されたとしても、繰り返される危険があります。大きな成長性は失われたと言えるのではないでしょうか。
 4つ目は世界のカジノはオンラインカジノへと舵を切っています。ランド地上型カジノは大規模施設で、窓もない閉鎖空間に客を詰め込み、24時間365日掛け続けさせます。カジノをエンジンとして、国際会議場や展示場などのカジノ以外の巨大施設をつくるというのが従来のIRです。カジノの高収益を使って、客を大量に集め、その客をカジノに誘導し、巨額の収益を上げるというIRビジネスモデルは終焉を迎えているといえないでしょうか。そこで伺います。
 コロナ禍のもとで、一変したIRカジノの状況について、また、国のIR基本方針は今年1月の決定が遅れ、感染症対策の事項を盛り込むことも検討されているようですが、現時点で、県の「実施方針」につい、さらに、カジノ事業者は今、共通してコロナを乗り切るために経営体力を消耗し、過剰債務を抱え込み、その返済に目先の利益をもとめているもとで、県に応募してきた2つの事業者が、和歌山のIRを経営できる能力があるのかについて、企画部長お答えください。

《答弁》 企画部長
 今年に入り新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、ラスベガス、シンガポール、マカオといった世界の主要地域でIR施設が閉鎖されたことで、業界全体が大きなダメージを受けているのは事実です。
 今後の影響は中長期的に注視する必要がありますが、国が目指すIRのビジネスモデルが新型コロナウイルス感染症収束後に成り立たないのであれば、すべてのIR事業者が採算性を考え、日本から撤退するに違いありません。しかしながら、多くのIR事業者は引き続き日本への投資意欲を示していると考えております。
 次に、IR整備法では、国の基本方針に即して都道府県等が実施方針を作成することになっております。
 一方、昨年9月に公表された基本方針案では、基本方針確定前に都道府県等が実施方針の作成等の手続きを進めていくことも想定されており、その場合は、国の基本方針確定後、必要に応じて実施方針等の内容の修正を行うことになっております。
 本県では本年2月、国の基本方針案に即して、実施方針案を作成したところですが、ご質問のあった感染症対策も含め、国の基本方針が修正されれば、必要に応じて実施方針案の内容を修正してまいります。
 最後に、それぞれの事業者の経営能力については、事業者から提出される提案審査書類に基づき、IR事業を長期的に継続し、確実に実施する能力を有する事業者であるかを審査していくことになります。
 また、その前提として、事業者は、自らの調査で採算性について見極めた上で、応募してきたものと考えております。

《指摘コメント》杉山俊雄 県議
 コロナ禍のもとで業界全体が大きなダメージを受けているという答弁でした。朝日新聞の社説は「カジノ誘致の構想が根底から揺らぐ事態であり、いったん決めたことだからと突き進む愚は避けるべき」と主張しています。これが大方の見方ではないでしょうか。
 国の基本方針も感染症対策を含んだものにすると言うことです。相当な変更が行われ、ビジネスシステムそのものを大きく変えるのではないかと思われます。
 今、応募してきた2事業者についてはこれから審査すると言うことですが、大変危惧されます。
 先に上げた「朝日」社説に、「誘致を目指す自治体はよく考えて欲しい。暗雲漂う事業に地域の活性化を託すのは、まさに賭けに等しい」とあります。今立ち止まるべきだと思います。

(2)マイナスの社会的・経済的効果の試算について
《質問》杉山俊雄 県議
 日本共産党の清水忠史衆議院議員は地方創生特別委員会で、韓国ではカジノ社会がもたらした「利益」が年間2兆円なのに対し、賭博中毒患者が生まれることによる社会的・経済的「費用」が年間7兆円を超えると言う試算を紹介し、「誘致自治体は経済効果を詳細に試算しているが、マイナスの社会的・経済的効果についても試算し、地元議会や住民に示すべきだ」と求めました。観光庁の審議官は「区域整備計画ではカジノの有害な影響についても、対策やそれに要する費用も審査する」と応えています。
 県は今の時点で、マイナスの社会的・経済的効果の試算をどれくらいと踏んでいますか。企画部長お答えください。

《答弁》 企画部長
 カジノ施設を起因とするギャンブル依存症患者の発生リスクについては、国による重層的で多段階的な規制及び県と事業者が共同で行う対策により、未然に防ぐことが出来ると考えております。従いまして、ギャンブル依存症患者の増加により発生する社会的・経済的損失について、損失額の試算は行っておりません。
 ただし、国が求める「カジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響の排除」を適切に行うために必要な措置については、その費用の見込みも含めて、区域整備計画に盛り込む予定としております。

《指摘コメント》杉山俊雄 県議
 ギャンブル依存症の増加により発生する社会的・経済的損失額の試算は行っていない、ということです。しかしあとで議論しますが、ギャンブル依存症は必ずでます。その社会的なマイナスとともに、カジノの売り上げは利用者の負け金です。和歌山県の試算でいえば、1400億円です。これは経済効果に含まれるのではなく、地域経済にとってはマイナスの効果となります。そのことは指摘しておきます。

(3)「特定資金貸付」業務について
《質問》杉山俊雄 県議
 日本のカジノには「特定資金貸付」という「お金貸します」制度が組み込まれています。預託金に応じて借入額が変わります。額が法律で決まっていません。これはカジノ管理委員会が決めることになっています。
 一定額を預ければカジノ業者から大金が借りられることになります。シンガポールの場合、800万円以上の額をカジノ側に預けている客に限って、カジノからお金を借りることが出来るようになっています。日本だと想定しがたい額ですが、カジノ業者からの借金をそのまま背負い込む危険があります。
 さらに重大なのは、「特定資金貸付」の上限が不明確だということです。カジノ業者が行う「特定資金貸付」は、「貸金業法」が適用されません。上限なくお金を貸し付けることが可能です。
 「貸金業法」では返済能力を考慮して、利用者の借入金額を年収の三分の一に制限しています。しかし、カジノ業者は貸金業者ではありません。規制の対象外です。大変危険な制度です。「消費者金融で頭金を借り、カジノ特定資金貸付を使って軍資金を膨らませて勝負」となると、一瞬にして全財産を失うことになりかねません。
 カジノはお客が負けられるように、お金を貸し出します。カジノ業者の恐ろしさはこの「特定資金貸付」業務にあります。このことについて、企画部長お答えください。

《答弁》 企画部長
 IR整備法の規定では、「特定資金貸付業務」貸付対象者は、「国内に住居を有しない外国人又はカジノ管理委員会規則で定める金額以上の金銭をカジノ事業者の管理する口座に預け入れしている日本人等」に限定されております。金額は現在定められていませんが、議員のご質問にありましたように、海外の例をみても相当の資力を有する方が対象となると考えています。
 また、貸付にあたっては、対象者の収入又は収益その他の資力、信用、借り入れの状況、返済計画その他の返済能力に関する事項を調査し、その結果に基づいて限度額を対象者ごとに定めるなど、厳格な与信調査により適切な金額を貸し付けるものと認識しております。従って、議員ご指摘の「消費者金融で頭金を借り、特定資金貸付を使って軍資金を膨らませて勝負」ということは、おこらないと考えております。
 なお、特定資金貸付制度の詳細については、今後制定されるカジノ管理委員会規則において制定される予定です。

《指摘コメント》杉山俊雄 県議
 企画部長は「厳格な調査により、適切な金額を貸し付けるものと認識」と希望的観測を述べているだけです。断定ではありません。特定資金貸付はお金貸しますという制度です。消費者金融のアイフル・プロミスなどで800万円借りられるのは魅力です。
 カジノ管理委員会の事務局に、カジノ業者のプロが入ることが出来ます。カジノのプロが規則を作るお手伝いをします。カジノ事業者の有利な規則になることは予想されます。
 カジノ実施法では返済を求める場合、威圧しての取り立ては禁止規定になっています。法律でわざわざ規定しなければならないこと自体、カジノ貸付制度が市民生活と相容れないものである証拠です。禁止規定に違反しなければ威圧して取り立てても良いことになります。大変恐ろしいカジノ実施法であるということを申し添えておきます。

(4)カジノはギャンブル依存症で成立する
《質問》杉山俊雄 県議
 知事は国の対策と県の対策によって、「ギャンブル依存症の対策は万全」と言ってきました。オーストラリアのビクトリア州でカジノ事業者が作る「ビクトリア責任あるギャンブル財団」が、約1万4千人のギャンブラーを対象に聞き取り調査したレポート(17年11月)があります。これについて「カジノの是非を決める横浜市民の会」の運営委員で弁護士の大川氏はギャンブル依存症に関わる、カジノの罪深さを示す1つの統計を紹介しています。
 依存度を重度・中程度・軽度で見ると、「重度の依存症」の人は1.1%で、「中程度の依存症」の人は4.0%で、「軽度」は12.7%、「問題なし」は82.2%です。ところが賭け金を売上比率から見ると、大きな金額をかけるバカラなどでは「重度」の人は58.7%、「中程度」の人は19.1%を賭けていいます。(売上比率)
 比較的賭け額が小さいスロットマシンなどでは「重度」の人が35.8%、「中程度」の人が23.6%を賭けています。つまり、ギャンブル人口の5%にすぎない重度・中程度の依存症者がカジノ売り上げの7割を貢いでいます。カジノはギャンブル依存症に寄生してしか成立しないのです。ギャンブル依存症はカジノ事業の「副産物」ではなく「主産物」です。
 知事は外国人専用から、高水準の依存症対策があるから大丈夫と言って県民・日本人も入れるカジノに方針転換をしました。また、IRカードで上限を設定するので、万全といいます。しかし、マサチューセッツ州では上限を設定していますが、担当者は声をかけるだけで、止めることは出来ません。上限になったらすぐ追加チャージ出来ます。
 知事は「政府も世界最高水準の依存症対策をしている。理論的に依存症は発生しない」と断言しています。こう断言されるとカジノは存立しません。大変な矛盾です。このことについて知事の考えをお聞かせください。

《答弁》 仁坂知事
 答弁を申し上げる前に、まず今までの議論の中で都市伝説が発生するような話がありますので、ちょっと注意を申し上げておきますが、経済効果これは、産業連関分析でやるんです。したがって、特定のセクターの所では、マイナスになることもあるし、全体としては差し引きをしてこうなるああなる、でこれがあの経済効果なのでマイナスの効果を無視してプラスばっかり言っていると、これは間違いでございますので、第一でございます。
 その次はですね、黒川さんが刑法の賭博禁止を解釈で阻却したと言われましたが、これは完璧に都市伝説であります。いくら黒川さんでもですね、刑法の規定を解釈で180度ひっくり返すということはできません。これはIR整備法ができまして、国会で議決されたので、IRということをやる限りにおいては、賭博の禁止法にかからないということが決まった。
 IR整備法ができて、それで和歌山県もそれに従ってやっていることでございますので、都市伝説の流布のために努力されないようにぜひお願いしたいっていうふうに思います。
 議員はご質問の中で、「5%の依存症患者がカジノ売上げの7割を稼いでおり、カジノは依存症に寄生してしか成立しない」と主張され、その根拠としてオーストラリアの「ビクトリア責任あるギャンブル財団」が調査したレポートを示されたわけであります。
 この調査レポート、もちろんこんなんあるぞって言われたので、見てみるということなんですが、ビクトリア州のゲーミング売上げの全てが、州の住民により構成されているという前提で推計が行われておりますが、これはかなりというか全く間違いであります。ビクトリア州のIRを見ると、海外や地域外から訪問する多くの観光客により収益をあげております。特にカジノ施設においては海外から訪問するいわゆるVIP売上げの割合が高いのが事実でありまして、調査レポートを根拠として、カジノは依存症に寄生してしか成立しない、と主張するのはですね、これは明らかに間違いであります。
 で、IRも事業でありましてビジネスなんですね。多額の投資を回収するためには、依存症でどうにもならぬ住民をたくさん作ってしまっては、これは継続事業ができないわけであります。この辺はビジネスとですね、投資をして回収しなきやいけないビジネスと、すぐドロンをしてよい泥棒との違いでございます。泥棒の論理しか想像できないというのはいささか情けないことでございます。ビジネスは泥棒と違いまして、投資をして回収をするためにお客様第一でせにゃいかん、お客さんが破綻してしまうようなことをですね、いっぱい作ったら、お客さんなくなってしまうわけですから、それは回収はできないということになってしまうわけですから、普通はそういうことは致しません。
 ただ、もちろん業者にだけこれを任せてしまうようなことは、いささか危険ですので、従ってちゃんと行政が規制をしないといかん。.これが正しいやり方ではないかというふうに思います。
 これまでも説明させていただいたとおり、本県は、ギャンブル依存症の問題について大変重視しており、そのリスクを徹底して排除するため、国による重層的で多段階的な規制に加えまして、IRカードの導入や依存症対策専門員の設置などの対策を講じようとしているところでございます。
 中でも、IRカードについては、1日のプレイ金額の上限を決めるものでございまして、カジノ行為への、のめり込みとか破産リスクとかそういうものに対しては非常に有効だというふうに考えています。
 こうした規制や対策を理解した上で、なお、事業者の応募があったわけでございますので、そういうことを考えてもですね、カジノ事業の収益は依存症の方によって成り立っているという理屈は全く間違いということになるかと思います。
 なお、念の為に申し上げておきますと、オーストラリア・メルボルンでございますけれど、青少年は入れないよというふうな規制はあるんですけれども、和歌山県のようなうるさい規制はありません。そういうことで多少は依存症の方がいるのかもしれないですけど、それでもあのうるさいオーストラリアでですね、そのメルボルンで社会問題になっている、韓国で一か所だけありますけれど、社会問題になっているというのは私は聞いたことありません。

《指摘コメント》杉山俊雄 県議
 知事は、「カジノがギャンブル依存症で成立している証拠はない。また、理屈は成立しない」といいます。
 それなら、「ギャンブル依存症患者は国の重層的で多段階的な規制で未然に防ぐことが出来る」という論拠も成立しません。どんなに鉄壁でも上手の手から水は漏れます。先のレポートによると、大変厳しい規制(入場禁止、利用制限、住民に対する貸付の禁止等)をしているオーストラリアのビクトリア州でも、ギャンブル依存症推定有病率(重度の依存症)は0.8%、中程度は2.8%。同じようにイギリスでも(0.6%)、アメリカのマサチューセッツ州でも(1.7%)重度依存症者を出しています。これが現実です。この少数の依存症ギャンブラーたちがカジノの売り上げの7割を作り出しているのも事実です。そのことも指摘しておきます。

(5)カジノではなく観光資源の活用を
《質問》杉山俊雄 県議
 県はIRが出来ると観光業が元気になるといいます。シンガポールがモデルと繰り返し言います。シンガポールはIRが出来てから外国人客が増えました。しかし、IRがない日本の方がもっと増えています。
 「世界経済フォーラム」が各国の国際観光の競争力ランキングを発表しています。シンガポールはIRが出来た当時はNO1、今は6番です。IRが出来たことでシンガポールの国際競争力が落ちました。日本は今、NO1です。評価のポイントは自然・文化・食など、その国にしかない観光資源です。シンガポールは都市国家で観光資源がありません。IR型カジノをつくって何とかしようとしましたが、評価が下がりました。
 また、IR基本構想にある巨大な国際会議場や展示施設の問題です。東京都は「IR国際会議場や展示施設を作るとどれくらいの需要があるのか」という調査を「PWC」に委託しました。5,000名を超すような大規模な会議はほとんど需要がないとの報告です。
 国際会議の規模別の統計では、小規模な会議が増えています。大規模な国際会議・展示施設を作っても需要がありません。
 日本には国際観光で3千数万人が来るだけの魅力があります。県はすごい観光資源があるとアピールしています。自信を持って地道に進めていけば良いのではないでしょうか。
 世界のカジノはランドカジノからオンラインカジノへと舵を切っています。5年先には和歌山のカジノは無用の長物になっているかもしれません。再考して戴きたいと考えますが、知事の考えをお聞かせください。

《答弁》 仁坂知事
 それではですね、答弁を簡潔にするのは大変難しいのでございますが。
 第一、観光振興のため―生懸命やってまいりました。それでも人口がどんどん減るわけでございます。これは、やっぱり起死回生の新しい投資をしてそれで一段と人口が増えるような材料を作っていかないといけない。もしこれができない、それはおかしいと言うんだったら、今までやったことの他に何を一体やれと杉山さんはおっしゃるのかということを言ってもらいたい。それが言えない限りですね、将来の世代に対して、ギャンブルみたいな嫌なことは手出さないで置いときましょうよと言ってですね、逃げてしまうというのはですね、将来世代とこの愛すべき和歌山県に対して無責任ではないかというふうに思うわけであります。
 短く申し上げました。

《指摘コメント》杉山俊雄 県議
 何をと言われれば、観光資源があるわけですから、観光客を県内のいろいろなところへよんで、地元に金をつぎ込む、そういうことによって地域を活性化する。外にお金を放り出すのではない、そういうことだと思います。時間がないのでこれで終わります。



宮﨑教育長の答弁を聞く、杉山俊雄県議(左)


                                                   仁坂知事の答弁を聞く、杉山俊雄県議(右)
  2020年6月議会   杉山俊雄プロフィール、質問一覧
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