2020年6月県議会 高田由一 一般質問 概要記録
  録画中継

2020617

1.新型コロナウイルス感染症対策
(1)公衆衛生行政のこれまでとこれから
(2)検査体制の充実
(3)感染症病床と地域医療構想の今後
(4)医療機関への財政支援
(5)市町村との情報共有と連携

2.種苗法改正案について
(1)県内農業と育種への影響
(2)県育成品種の流出防止策

3.緊急浚渫推進事業
(1)事業への取り組みと対象箇所

4.高速道路の安全対策
(1)衝突防止ワイヤーロープの設置について

5.メガソーラー計画についての疑問
(1)県条例での認定について
(2)県道の道路占用許可の根拠


1.新型コロナウイルス感染症対策
(1)公衆衛生行政のこれまでとこれから
《質問》高田由一 県議
 最初に新型コロナウイルス感染症対策について質問いたします。
 新型コロナ感染症では、この間の関係者のみなさまのご努力により、和歌山県内では入院者数ゼロ、感染者も5月12日以降、1か月以上でておらず事態が落ち着いている状況です。
 こういうときだからこそいま、県下の公衆衛生を過去から現在まで振り返り、評価すべき点と不足している点を明らかにしておくことは、感染症の次の波が来ることを考えたとき大切であります。そこで以下、質問をさせていただきます。
 日本医師会の横倉会長は先日、日本外国特派員協会で講演し、記者との質疑応答の中で、保健所数に関した問いに対して、保健所を減らし過ぎただけでなく、職員も減らしたことが今回の感染拡大の事態を招いた大きな要因になっているとの考えを示されました。いま公衆衛生における保健所の役割の重要性があらためて浮き彫りになっています。
 1994年地域保健法の成立(97年施行)により、それ以降、都市部を中心に保健所数は1992年の852か所から現在、469か所へ激減しました。とくに2000年代初頭の小泉構造改革で大阪市などの政令指定都市では各区に1か所づつあった保健所が、市全体で1か所に統合されるなど、大都市部が今回のコロナ禍に対応できていないひとつの要因となっているのではないかと言われています。
 和歌山県の公衆衛生をになう保健所はどうだったでしょうか。和歌山県内でも地域保健法の成立で県内8か所の県保健所が6か所に減らされるかもしれないと保健師さんらを中心に心配がだされていました。県議会でも95年12月議会で我が党の村岡キミ子議員が「長年住民に親しまれてきた現在の保健所をそのまま残し、体制や機能の強化を図ること」を求めています。翌96年2月議会では玉置公良議員が、廃止されるかもしれないとされた古座保健所について周辺町長や住民などから存続を求める陳情があったことを紹介しながら質問しています。さらに古座保健所の問題では周辺町議会からも存続と充実を求める意見書が出されていました。そうした住民の運動もあるなか和歌山県の保健所はいまも7保健所1支所の体制を維持してきました。このように基本的には保健所を守ってきた経過があると思います。
 そこでこれまでの公衆衛生にかかわる県行政を振り返って、優れた点や問題点をどのようにとらえられているか答弁をお願いします。あわせて今後の衛生研究所と保健所の充実についてどのように考えておられるのかについてもお答えください。

《答弁》 仁坂知事
 地域保健法の施行に伴い、全国的に保健所の再編が進められてまいりましたが、本県は、地域住民の生活に不可欠となる保健予防、公衆衛生の水準を維持することが重要と考え、保健所を各圈域単位に設置する体制を堅持してまいりました。これまで保健所は、保健予防と公衆衛生の専門的かつ広域的拠点として、結核などの感染症や食中毒、災害対応など様々な健康危機管理事象への対応の中で、知見を重ねノウハウの蓄積に努めてきました。また、今年度から、多様化する保健・福祉ニーズに、より的確に対応するため、保健所の組織改正を行い、機能強化を図ったところであります。
 このような取組を進めてきたからこそ、今般の新型コロナウイルス感染症の対策において、保健所が、早期発見・早期隔離・徹底した行動履歴調査を行う「和歌山方式」の拠点として、コロナ封じ込めに大きな役割を果たすことができたものと認識しております。すなわち、保健所が、本県独自の早期発見システムにより発見された感染者の入院措置を行い、行動履歴を徹底的に調査するとともに、濃厚接触者を特定した上で健康観察を行うなど、早期に介入を行うことにより、感染者が発生するたびにそれを抑え込んでクラスターに発生しないように努め、それでもクラスターが実際は発生したのでございますけれども、その感染拡大を最小限に食い止めることができたものと考えております。
 また、環境衛生研究センターは、研究事業も行いながら、常に専門職員の資質や技術水準の向上に努めてきたところであります。今般の対応にあたっては、感染者の診断に欠かせないPCR検査を実施する最前線の機関として、検査数の増加時には、終日フル稼働をしてもらうなどの緊急時対応により積極的に検査を実施してきたところでありまして、このような状況に対応するため、暫定的な増員配置をすでに行い、体制の強化を行っているところであります。
 今後、第2波の到来が予想される新型コロナヴイルスをはじめ、いつ起こるかもしれない大規模災害や集団感染の発生に備え、保健所及び環境衛生研究センターが有する保健・衛生などの専門性を十分発揮できるように、職員の資質向上を図る研修や実地訓練等を積み重ね、地域住民の安心・安全の拠点となるように一層の機能強化を図っていく所存でございます。

《意見》高田由一 県議
 保健所をめぐって機構改革についても答弁がありました。日本公衆衛生誌という専門誌に2012年の第59巻第8号に掲載された「都道府県立保健所統合組織の組織権限面の実態と今後の方向性」という論文があります。そのなかで全国的に1990年代から「保健・福祉サービスの一体的提供」という名のもとに県の保健所と福祉事務所を統合してきた流れを総括して、「保健所が健康危機管理の拠点として活躍することを期待するならば、統合に無理があった。組織統合の真の目的は行政改革として組織数を減らすこと」とこれまでの流れを批判しています。
 今回の和歌山県の機構改革については、保健師が本来の業務に集中できるという点で評価したいと思います。
 同時に過去の行革の流れのなかでおきた福祉事務所と保健所の統合は、住民の健康を守るという点で大きな問題点があったということを指摘しておきたいと思います。

(2)検査体制の充実
《質問》高田由一 県議
 つぎに検査体制の充実についてうかがいます。
 仁坂知事も名を連ねた18道県知事による「感染拡大を防止しながら一日も早く経済・社会活動を正常化し、日常を取り戻すための緊急提言」が5月11日に発表されました。私ども日本共産党も6月4日、「感染防止と経済・社会活動の再開を一体にすすめるための提言」を発表、そのなかでこの18道県知事の提言を引用して、「受動的な検査」から「感染者の早期発見・調査・入院等による積極的感染拡大防止戦略への転換」と検査体制の早急な整備を求めています。
 検査体制の問題では和歌山県においては和歌山市とあわせて、以前は1日あたり80件のPCR検査体制をこの間、充実させ、今では一日あたり168件を目標としています。このことは多いに評価したいと思うのですが、和歌山市内でしか検査ができないという状況はかわりません。新宮や串本、田辺で検体採取をしても行政検査のためにはいちいち和歌山市まで検体を運搬しなくてはなりません。
 そこでうかがいます。今後、新型コロナの検査体制をどのようにして充実させようとしているのでしょうか。また、知事会もふれている積極的感染拡大防止戦略を和歌山県ではどのように具体化するのでしょうか。さらに検査を担ってもらおうとしている地域の医師会との話し合いでどんな意見がでているか、お答えをお願いします。
 くわえて私は紀南地方に常設のPCR検査センターをつくることを提案したいと思います。このセンターはただ単に検体をとるだけでなく、現地に検査機器もすえて実際に検査をする場所です。この提案についても答弁をお願いします。

《答弁》 仁坂知事
 まず、議員のお話にございました「積極的感染防止戦略」という言葉なんですが、これは実は感染拡大防止のために自粛だけに頼るというのではなくて、保健医療行政を最大限活用して、それで、そちらの力をもってですね、自粛のところにかかる負荷を少なくしよう、そのためにはということで色々と提言をしているのですが、実は、和歌山県が一番モデルとしてふさわしいくらいの感じかなあというふうに思っております。だんだんそういうことを言っておりましたら、賛同者が増えてまいりまして、広島県の湯崎知事が取りまとめをしてくれたということであります。
 国におきましては、このような緊急提言を行ったあと、5月29日に検査対象者を拡大する見直しを行ったのですけれども、本県は、もともとよくご存知のように、あまり国の基準なんかにとらわれないで、論理的に大事だと思うことはやってきたということでございます。それは、実はある意味では大変なごとでございまして、ピーク時には、県の検査機関である環境衛生研究センターを終日フル稼働してもらって、通常の処理能力を超える検査を実施して、それでなんとかそれを実行してきたわけでございます。そうやって、感染者の早期発見に努め、早期隔離、そして徹底した行動履歴調査という「和歌山方式」をずっと追い求めてきたということでございます。
 今後の感染第2波の到来に備えて、考え方はこれでよろしいかと思うのですが、やっぱり装備とか武器とかそういうものはたくさんあったほうがよろしいわけでございます。そういう意味で、環境衛生研究センターの検査機器を増設し、1日あたりの処理能力を増加させたほか、救急医療、周産期医療等を担う県内全域の中核病院にPCR検査機器を配備いたしまして、救急患者や手術前患者および分娩前妊婦等にPCR検査を迅速に行うことで、院内感染防止を徹底して、医療従事者が安心して医療を提供できる環境をつくるということに取り組むとともに、状況に応じて、紀南地域のみならず、各地域の検査にもこれは活用できるものですから、お願いをして機能を発揮させる所存でございます。
 さらに、地域における検査体制の強化につきましては、各医療圈単位で、保健所を中心に医師会や医療機関等と今後の検査体制について協議を行っているところでございますが、医師会からは、抗原検査キットの確保や唾液検査の導入についての意見が出されておりまして、県としては必要性は十分認識しております。ただ、あの検査をすればいいというものではなくて、たくさん検査をするための色々な装置というものを、マスコミなどはよくプレイアップするのでございますけれども、実は、何のために検査をするかというとですね、やっぱり感染症法の措置をきちんとやるために仕分けをしていくということで検査があるわけで、そこのところをどうも日本全体が忘れていて、和歌山県は忘れないようにきちんとしていかないといけないということではないかと思います。
 今後は、抗原検査、こういうものも採用いたしまして、実は若干不正確なのですけれども迅速に判断できるというメリットがありますので、先ほどのPCR装置がちゃんと揃っていないところなんかで、感染がちょっと拡大をして、この感染者である恐れがあるような方を迅速に検査をするには、有効な手法と思いますので、このようなものもきちんと整えておくということもやっていきたいと考えております。

(3)感染症病床と地域医療構想の今後
《質問》高田由一 県議
 つぎに今後の感染症病床のあり方についてうかがいます。これまでは新型コロナに対応できる病床として指定感染症病床32床にくわえて結核病床13を足して45床でしたが、これが多くの病院の協力をえて現在150床まで対応可能としています。
 当面はこの状況を維持されると思いますが、将来的にはどうしていこうとしているのか、県としての考えをおたずねします。
 また、地域医療構想の今後の進め方についてどう考えているでしょうか。今回のコロナが終息後、その経験をいかしていくべきではないかと思いますが答弁をお願いします。

《答弁》 福祉保健部長
 感染症指定医療機関数および感染症病床数は、感染症法に基づく国の配置基準により、都道府県ごとに定められていますが、今般の新型コロナウイルス感染症においては、全国的に感染症病床が逼迫する事態となりました。
 本県では、感染症指定医療機関に加え、地域の公立・公的病院を中心に、一般病床を感染症病床として活用する臨時応急の対応で、コロナ感染者の受入及び感染拡大に備えた病床の確保に努めてきたところですが、第2波の襲来に備え、さらなる増床が必要であると考えております。
 コロナ感染者を一般病床において受け入れるには、院内感染防止対策を講ずる必要があるため、受入病床だけではなく、同じ病棟内にある一般病床への一般患者の入院も制限する必要があり、このような事態が長期間続けば、地域医療への影響は少なくありません。
 そのため、県としては、感染症病床の配置基準に加え、一般病床での感染者の受け入れを前提とした病床確保の考え方など、今後の感染症対策について、早急に見直すよう、国に対し働きかけているところです。
 一方で、地域医療構想は、地域の医療関係者の協議を通じ、病床の機能分化と連携を進め、効率的な医療提供体制を実現する取組であり、本来、感染症病床は対象どなっておりません。
 しかしながら、緊急時と平時の医療を切り離すことができないことから、今後、国において感染症対策の見直しが行われ、緊急時において感染症病床へ転用すべき一般病床数の考え方など、一定の見解が示されれば、県としても、その影響を踏まえ、適切に対応して参ります。

(4)医療機関への財政支援
《質問》高田由一 県議
 つぎに大幅な収入減となっている病院や診療所への財政支援についてうかがいます。日本病院会などの3団体の調査によればコロナ患者を受け入れた病院は、四月は平均1億円の赤字だとしています。また、新型コロナは一部の専門病院だけで対応できません。地域として病院や診療所が役割分担をしてきたからこそ、かろうじておさえこめてきたと私は考えます。すべての医療機関への支援が必要です。
 こうした状況のなかすでに病院で働く医師や労働者にボーナスカットなどのしわ寄せが始まっています。
 そこで医療機関への財政支援について県としてどう考えているのかおたずねします。

《答弁》 福祉保健部長
 新型コロナウイルス感染症患者の増加に対応するためには、一定の受け入れ病床を確保する必要があることから、県内全域の医療機関に対し、病床確保の協力要請を行ってきたところであり、患者を受け入れる医療機関にあっては、感染者の受け入れに備え、病床を常に空床のまま確保しておく必要があることから、国において、病床確保にかかる支援策が講じられたところです。
 また、実際に感染症患者を受け入れた場合には、手厚い人員配置や多くの医療資材などが必要となることから、国において、診療報酬上の臨時的な取り扱いとして、重症や中等症の感染症患者に対する診療報酬額をこれまでの約3倍に引き上げるなど、医療機関に対して必要な対策が講じられたところです。
 しかしながら、これらの支援策は、医療機関が新型コロナウイルス感染症患者の受入病床確保や実際に患者の受け入れを前提に講じられている対策であり、受診控え等により収入減となった医療機関を支援するためのものではありません。
 もちろん、一定割合以上の収入減となった事業者については、国の持続化給付金をはじめ、全業種を対象とした県独自の「事業継続支援金」、「県内事業者事業継続推進」を創設しているところであり、これらの事業の活用により、新型コロナウイルス感染症患者の受け入れを行っていない病院を含むすべての医療機関に対応していきたいと考えています。

(5)市町村との情報共有と連携
《質問》高田由一 県議
 つぎに市町村との情報共有と連携についてうかがいます。
 和歌山県新型インフルエンザ等対策行動計画では、県と市町村との連携をうたっています。ところが市町村からは、実際は必要な情報が提供されていないのではないかという声がとどいています。6月10日にかつらぎ町議会が知事と県教育長に対して意見書を可決しています。その内容は、感染者については陽性確定の後に、性別・年代が提供されるのみで、その家族や濃厚接触者については一切の情報が提供されていない、こういう状況では町が管理責任を負う各施設について適切な対応ができない、などというものです。
 そこでうかがいます。こうした市町村との情報共有をもっと密にしていくべきではないでしょうか。また、必要なときは市町村とのオンライン会議などを適宜、開催していくべきではないかと思いますがいかがでしょうか。

《答弁》 福祉保健部長
 県においては、感染防止対策にかかる県の方針や感染拡大防止に必要となる情報については、記者会見等で積極的に公表しているところであり、公表内容については、速やかに市町村等関係機関との情報共有を図っているほか、県民に対しても、ホ-ムページ等を活用し、よりわかりやすい情報の発信に努めています。
 一方、感染症法においては、国及び都道府県は、感染症の発生の状況や動向及び原因に関する情報等を積極的に公表することとされているが、公表にあたっては個人情報の保護に留意することが併せて規定されています。
 感染症法では、感染症の発生状況、動向及び原因調査や検体の確保、移送、入院勧告など、感染症対応の中心となる業務は、都道府県が実施することとされており、実際にその業務を担う保健所においては、個人情報について極めて限定的に取り扱う必要があるものと考えております。
 県では保健所に対し、市町村をはじめ医療機関や各関係機関が参加の上、感染防止対策にかかる検討を行うよう指示しており、感染拡大防止、早期発見、感染者の生活支援等の観点から市町村との連携が必要となる場合においては、保健所と市町村との間において、個人情報の保護に配慮しつつ、情報共有を行っていきたいと考えています。
 いずれにしても、感染防止対策を効果的に実施していくためには、市町村の協力が必要であることから、引き続き取組方針や必要な情報共有を図るための会議等を適宜開催するなどし、連携を密にし、感染拡大の防止に努めてまいります。


2.種苗法改正案について
(1)県内農業と育種への影響
《質問》高田由一 県議
 種苗法改正案についてうかがいます。報道によりますと今国会で成立をめざしていた種苗法改正案の審議が見送られるようです。コロナ危機のなか十分な審議ができないまま成立になるのではと危惧しておりましたが、国会での今後の十分な議論を期待するものです。
 いうまでもなく種苗は農林水産業における基礎的な生産資材であり、収量、品質、耐病性など、すぐれた品種を育成することは、生産者にとっても消費者にとっても重要な意義をもちます。
 この立場から、育成者権のおよぶ範囲を加工品の生産、譲渡にまで拡大したり、権利の存続期間を拡大する2005年の種苗法改正には国会で我が党も賛成してきました。
 現在の種苗法でも育成者が必要ならば独自の契約を提供農家などと結ぶこともできます。また、自家増殖禁止植物の種類は、2006年の拡大で82種になり、その後2017年に289種に急増し、現在は400種近くに及んでいます。このような状況ですから育成者権は現状でも十分保障されていると思います。
 一方それと対をなすように農家に関しては自家増殖は原則容認とされてきました。国際条約でも、国連「農民の権利宣言」でも地域の伝統的な品種の保存、利用や自家増殖は農民の権利と定めています。
 種苗法改正案が成立すると、登録品種の自家増殖は許諾制となります。農家については自家増殖を「原則容認」としていたものを、今回の改正案では「原則禁止」に180度転換することになります。
 農業者はこれに違反すれば10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金を科す刑事罰の対象となります。
 そこでうかがいます。現在、しめされている法案の内容で成立した場合、県内農業や育種にはどういう影響があるでしょうか。

《答弁》 農林水産部長
 今般の種苗法改正案は、国内の優良品種が海外に流出している実態に鑑み、これを防止すべく、法律の見直しを図るものと聞いております。
 現行の種苗法では、海外への転売については、同法が適用されずに規制の対象となっておりません。これに、国内で自家増殖された種苗の違法な海外流出も加わり、育成者権が保障されない状況が生じております。
 改正案では、育成者権を持った者が栽培地域を指定できるようにすること、自家増殖を許諾制にすること、これらの権利を侵害する場合は罰則の対象とすることなどにより、登録品種の海外流出を防止する仕組みとなっております。
 議員ご質問の本県農業への影響につきましては、農家が自家増殖する際に許諾が必要となる品種は、在来種や登録が失効したものを除いた登録品種に限られており、例えばみかんについては全体の2%であることや、県が育成した登録品種については自家増殖を認めていくことから、県内農家への影響は小さく、むしろ、海外流出した際にブランド価値が下がることの損失の方が圧倒的に大きいものと考えております。
 また、育成者権が保護されることで、安心して育種に取り組めると考えております。
 議員ご案内のとおり、種苗法改正案は今国会での審議が見送りとなっておりますので、今後も国の動きを注視し、県内農家に多大な影響が及ぶ場合には、必要に応じ国に対して要望を行ってまいります。

(2)県育成品種の流出防止策
《質問》高田由一 県議
 次にこれまで県試験場などで有力な品種が育成された場合、海外への流出を防ぐ対策をどうとってきたでしょうか。また、これからはどうしていくのか、答弁をお願いします。

《答弁》 農林水産部長
 県ではこれまで、みかん、うめ、かきなどの果樹をはじめ、野菜・花きの品種開発に取り組んでおり、現時点で、登録された品種と出願中のものを合わせて22品種あります。
 今般の種苗法改正案については、県育成品種の海外流出を防止するうえで有効であると考えているところでございますが、今国会での成立は見送られました。
 現行の種苗法では栽培地域を指定できず海外への転売が規制されていないことから、本県においてはこれらの品種の流出を防ぐため、苗木組合等との契約により種苗の販売を県内に限定するとともに、栽培農家には自家増殖した苗を無断で第三者に譲渡することのないようチラシなどで啓発を行っております。
 また、海外での増殖を防ぐためには国ごとに相手国の知的財産関係法令に基づき品種登録を行う必要があり、現在、中国、韓国などでかきやいちごの品種登録を進めるなど、海外へ流出しないよう工夫して取り組んでおります。
 県で育成した品種は県民の財産であることから、今後も、海外での品種登録を進めるとともに、農家の方々へは研修会などあらゆる機会を捉え、更なる啓発を行ってまいります。

《要望》高田由一 県議
 登録品種の海外流出を防ぐのが目的といいますが、現在でも登録品種の使用にあたって契約を結んでいる例が多いのですから、海外へ持ち出してはダメということをもっとハッキリさせることは可能だと思います。また、答弁にもあったように本気で海外流出を防ごうと思ったら県試験場がやっているように海外での品種登録を積極的にするしかありません。
 気になるのは現在は影響がそれほどでなくても将来、大手の種子企業に種の権利が独占されていくのではないかという懸念です。とくに今回の改正案では主要穀物にまで自家増殖を禁止するということですが、欧米でも主要穀物は農家の自家増殖を認めていますし、日本のように穀物まで一律に自家増殖を禁止という国はないと言われています。こうした心配があるということを申し上げておきます。


3.緊急浚渫推進事業
(1)事業への取り組みと対象箇所
《質問》高田由一 県議
 つぎに県土整備部で今年度の新規事業として予定されている緊急浚渫推進事業の内容と県の取り組みについてうかがいます。この事業は昨年度の台風第19号による河川氾濫等の大規模な浸水被害が相次ぐ中で、維持管理の大切さが国の方であらためて位置づけられ、河川等の浚渫や堆積土砂の撤去等を行う事業です。事業のやり方としては地方単独事業という形でのちに財政措置をするものですが、この新たな事業について和歌山県としてどのように取り組むのか、また田辺、西牟婁地方ではどのような箇所を対象と考えているのか、答弁をお願いします。

《答弁》 県土整備部長
 緊急浚渫推進事業は、昨年の台風第19号による災害を契機に、地方自治体による河川やダム、砂防等に係る浚渫を推進するため、今年度国において創設されたものでございます。
 これにより、今年度から令和6年度までの5年間、地方自治体が単独事業として実施する浚渫に係る経費について、地方債の発行が可能となりました。
 県といたしましては、財政上の負担が少なくなるこの制度を最大限に活用し、水害や土砂災害にかかる住民の不安解消に向けて取り組んでまいりたいと考えており、現時点では、県管理河川で53河川、二川ダム、そして18か所の砂防施設において事業を計画してございます。
 今年度は、人家への影響が大きく土砂の堆積が著しい箇所から取り組むこととしており、河川、ダム、砂防を合わせて約10億円の事業執行を予定しております。
 この制度を活用することにより、例えば河川においては、例年の2倍程度となる量の浚渫が可能となっております。
 なお、田辺市および西牟婁郡内におきましては、富田川などの8河川や大塔川の砂防堰堤において浚渫を予定しております。


4.高速道路の安全対策
(1)衝突防止ワイヤーロープの設置について
《質問》高田由一 県議
 つぎに高速道路の安全対策についてうかがいます。
 県内の近畿自動車道紀勢線南紀田辺インター以南および京奈和自動車道での暫定2車線区間での安全対策としてのワイヤーロープの整備状況と効果、すさみ南インターから新宮市までの現在事業中区間も含めて、今後の設置計画はどうなっているでしょうか。また、橋梁やトンネル部分については地盤の関係から未だに着工されていませんがその見通しはあるのでしょうか。答弁をお願いします。

《答弁》 県土整備部長
 暫定2車線の高速道路における安全対策について、県ではこれまで、対面通行による重大事故防止の観点から、道路管理者である国土交通省に対して、車線逸脱防止機能を有するワイヤーロープの設置を要望してまいりました。
 そうした中、国土交通省では、「暫定二車線区間の高速道路のワイヤーロープ設置方針」に基づき、供用済みの土工区間でその設置が進められているところです。
 県内の整備状況としましては、昨年度までに南紀田辺インターからすさみ南インター間の約3km、那智勝浦新宮道路の約4km、及び京奈和自動車道の約9kmの区間でワイヤーロープの設置が完了しています。
 その効果としまして、ワイヤーロープ設置以降に発生した事故のうち、南紀田辺インターからすさみ南インター間及び那智勝浦新宮道路では各々1件、京奈和自動車道では9件の事故で、重大事故に繋がりかねない車線逸脱が回避されました。
 また、橋梁やトンネル部のワイヤーロープの設置については、今年3月に国土交通省から「中小橋において、標準設置を進める。」ことや、「長大橋、トンネル区間についでは、公募選定技術の性能検証を引き続き進める。」と発表されたところでございます。
 一方、現在事業中のすさみ串本道路などにつきましては、完成2車線の計画で整備が進められており、中央分離帯にコンクリート製の壁型防護柵等を設置することとなってございます。
 県としては、引き続き国に対して、暫定2車線区間の車線逸脱防止対策の推進を働きかけてまいります。


5.メガソーラー計画についての疑問
(1)県条例での認定について
《質問》高田由一 県議
 つぎに上富田町市ノ瀬地区のゴルフ場跡地に計画されているメガソーラーについてうかがいます。計画では広さ約74haの敷地に太陽光パネルを設置し、発電規模は92メガワットと完成すれば国内でも屈指の大きさになります。地元のみなさんの理解もあるなかで計画が進められていることは、承知しており、私はこの上富田町内の発電所計画に異論を唱えるものではありません。県の太陽光発電条例の認定もおりています。しかし、今回、取り上げたのはここにいたるまでの経過がどうも納得できず、問題提起をしたいと思ったからであります。
 実はこのメガソーラーの計画は当初は、古座川町の小森川という地区で計画されていたといいます。聞くところによりますと2015年に再生可能エネルギーの固定価格買取制度(以下FIT制度といいます)の認定をうけたものの後に計画変更し、上富田町内での計画となったようです。そのため古座川町内でもわずかでありますが23kWの発電パネルを設置し、そこと上富田町内の間を延々約90kmにわたって主に県道の地下にケーブルを埋設する方法で接続することになっています。FIT制度で古座川町で計画認定をうけたからその場所が入っていないと、計画自体が新規のものとみなされるからだと考えます。
 遠く90km離れた発電所の計画が一体のものとみなされる。これは常識で考えると理解できないのであります。ところが県の太陽光発電条例の申請では上富田町内だけの計画申請になっています。
 そこでまずうかがいたいのは、FIT制度では一体のものとして申請している計画がなぜ県条例では別々の計画と判断されるのかということであります。環境生活部長の答弁をおねがいします。

《答弁》 環境生活部長
 県太陽光条例は、出力50kW以上の太陽光発電設備の設置等に関し、設備が整備される地域に係る防災面、安全面、環境面及び景観面といった観点から審査し、認定の可否を判断する制度となっております。
 ご質問の上富田町と古座川町の太陽光発電設備につきましては、資源エネルギー庁に確認したところ、送電線で接続することで、FIT法において特例措置として一体の事業と認められていると聞いでおりますが、事業区域や設備に関し明らかに一体性がなく、それぞれ独立した太陽光発電設備であることから、県太陽光条例では別の計画と判断したところです。
 なお、古座川町の出力23kWの太陽光発電設備につきましては、出方が50kWを下回るため、県太陽光条例の対象とはなりませんが、古座川町の太陽光条例の対象となることから、現在、町において条例に基づく手続が行われております。

《意見》高田由一 県議
 なぜFIT制度でこういう解釈ができるか。いろいろ調べてみましたら、資源エネルギー庁の通知があります。
 そこで次のように書かれています。2017年7月14日付け、2020年4月1日改訂の資源エネルギー庁の再生可能エネルギー推進室からでている「再生可能エネルギー発電事業計画における再生可能エネルギー発電設備の設置場所について」という通知です。そのなかに「再生可能エネルギー発電設備の設置場所の変更」という項目があり、本来なら20年の調達期間が終了するまでの間、同一の場所であることが求められているが、例外として変更できる場合があるとして「隣接する一連の地番(電線路により電気的に接続している発電設備を設置する飛び地を含む)の追加または削除」と書いています。こうした通知が根拠となっているのではないかと思います。
 離れた発電所でも電線でつなげば一体とみなす、追加ができるというような内容です。これは常識的に考えれば近隣の発電所をつなぐ場合のことだと思うのです。
 今回のような解釈でいくとするなら、たとえば県境をこえる計画でも電線でつなげばいいことになります。残念ながらFIT制度を所管するのは直接、資源エネルギー庁ですから、私がここで何を言っても答弁する方がいないのは残念です。

(2)県道の道路占用許可の根拠
《質問》高田由一 県議
 最後に、土整備部長にうかがいます。今回の計画の両地点を結ぶ自営線とよぶ電線を埋設するために県道など約90kmを掘って埋め戻すという工事がこれから行われていきます。すでにこの件は道路法の占用許可が県から降りていますが、その許可の根拠は何でしょうか。占用工事に伴う住民生活への影響などは大丈夫でしょうか。

《答弁》 県土整備部長
 一般的に道路の占用は、道路法第33条の規定に基づき、道路本来の目的を阻害しない範囲において、道路の敷地外に余地がなく、やむを得ない場合に認められ、道路管理者が、その占用目的、占用形態等諸要素を総合的に判断して、許可することとなります。
 一方、電気事業者が事業の用に供する電柱、電線を設ける場合には、道路法第36条第2項により、占用物件を埋設する深さなど政令で定める基準に適合するときは、道路管理者は許可しなければならないとされてございます。
 ご質問の件は、申請者が電気事業法に基づく届出をしている電気事業者で、その事業の用に供するため、道路に電線を埋設するものであり、埋設する位置や深さが政令で定める基準に適合していたことから、許可したものでございます。
 なお、工事の施工に当たっては、住民生活への影響を最小限にとどめるために、事業者に対し、施工方法や交通規制について、沿線地域への説明などを行うよう、引き続き、指導してまいります。

《意見》 高田由一 県議
 最初に申し上げたように、今回のメガソーラー計画自体に反対だというつもりはありませんが、疑問はのこります。太陽光発電をめぐる今後の事業がよりよい事業となるようにとの思いから問題提起をさせていただきました。



                                                   仁坂知事の答弁を聞く、高田由一県議(右)

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