2020年12月和歌山県議会
  令和元年度決算の認定に対する反対討論 楠本文郎
      録画中継9:30~)

                                    20201216


 議案第129号「令和元年度和歌山県歳入歳出決算の認定について」及び議案第130号「令和元年度和歌山県公営企業決算の認定について」の2議案について、日本共産党県議団を代表して、反対の立場から討論を行います。
 県財政の歳入を通して県民経済の状況をみると、令和元年度の法人事業税はプラス4.7%と若干の伸びにとどまっています。昨年10月には消費税増税が強行されました。前回の消費税8%への増税を契機に、実質家計消費は年25万円も落ち込み、労働者の実質賃金も年10万円も低下していました。昨年5月には内閣府が発表した景気動向指数が6年2カ月ぶりに「悪化」となるなど、政府自身も景気悪化の可能性を認めざるを得なくなっていたにもかかわらず、10%への増税が強行されたのです。この影響が県民生活に重くのしかかっています。増税の本格的な影響がでてくるのは令和2年度の決算になろうかと思いますが、それに加えて新型コロナ感染症の甚大な影響が今後出てきます。ますます県民の暮らしを支えるための県政が求められています。
 以下、いくつかの施策、県事業について意見を申し上げます。
 児童虐待などについての相談がこの5年間で2倍近くになっています。一方、乳児家庭全戸訪問事業の訪問件数が少なくなっています。訪問には家族同意が必要ですが、とても複雑な事件が発生しており、市町村と連携して、各種検診も含めすべての子どもの状態を把握するよう要望したいと思います。
 また、保育士不足への対応として、人材確保事業が前年度より半減しています。現場の状況は、臨時職員ではなく正規職員を求めています。命を育てる保育士を、正規で育てる方向に転換するべきだと考えます。全体として、子どもたちへの支援策強化が求められています。
 介護現場では依然として人手不足が続いています。福祉人材を確保するために今年度は介護福祉士等の修学資金貸付事業が実施されました。この事業は一定期間の就労により返済免除措置もあります。人材不足解消のためにしっかり広報していただきたい事業です。
 医療の分野では、第7次保健医療計画の3年目になりますが、「地域医療構想」としてベッド「削減」計画が盛り込まれたままです。コロナ禍の病床確保という点では真逆の方針であり、大きな問題です。
 4月から都道府県単一化がスタートした国民健康保険事業ですが、低い国費投入に留まっているため依然として高すぎる国保料(税)の問題は解消されていません。医療へのかかりにくさもコロナ禍のもとで深刻化しています。
 私たちは、地方自治の原点として、県民の命を守り、くらしを支えるためのさらなる改善が必要だと考えます。困難をかかえる県民に対するきめ細かな対応を求めます。
 公立学校において、定数内の「非正規」の教職員を5年間で半減して、「正規」の教職員に代えていくという教育課題では、小中学校・高校とも昨年より若干前進しましたが、小幅なものにとどまり充分な改善に至っていません。「半減」という公約まであと2年、一気に進められることを強く期待しておきたいと思います。
 令和元年11月末でカゴメ加太菜園は撤収しました。県はこの用地造成のために20億円投資しています。カゴメ加太菜園の15年間の賃料合計は3億4100万円ということです。あまりにも賃料が低すぎたと言わざるを得ません。
 また、一般会計でコスモパーク加太対策費として、県から開発公社に賃料が毎年6億円以上支払われています。ちなみに令和元年度の売却は1件1億7800万円でした。コスモパーク加太事業の負債は大きく、県財政への大きな圧迫を取り除くにはまだまだ遠い道のりだと言わなければなりません。
 こうした構図は、和歌山マリーナシティ事業も同じに見えます。マリーナシティは、国費120億をかけて親水性防波堤が造られ、県は第1工区196億円、第2工区206億円の計402億円をかけて大きな造成地を造りました。それを県から松下興産へ、半額程度の209億円で売却しています。様々な要因はあったでしょうが、全国で当時進められていたリゾート開発事業はことごとく破綻しています。夕張のように、国の推進事業だからといって無批判に進めることは将来世代に負の遺産を引き起こすこととなる教訓の一つです。
 令和元年度のIR予算は、職員が大幅に増員され、2億1000万円の事業を執行しています。関連する事業も大幅に増やされています。私たちは、カジノを含むIR事業自体に反対ですから、こうした決算を認める訳にはいきません。
 一般会計決算の最後に、毎年度申し上げているように国直轄事業負担金は128億円もあり、県財政への大きな負担になっています。国に対してその廃止や軽減を要求していってもらいたいと考えるものです。
 次に、議案第130号「令和元年度和歌山県公営企業決算の認定について」です。この公営企業決算の一つの柱は、こころの医療センター事業会計です。
 令和2年2月からギャンブル依存症治療支援の専門医療機関に指定したとのことです。対象医療として、統合失調症、うつ病対策、さらに認知行動療法へ、また、アルコール依存症、発達障害などにも取りくんでいます。医療機関として24時間365日働いているこのセンターの果たしている役割はますます重要です。
 ここでも保健所との連携がとられており、24時間対応の電話相談活動の強化も併せ、保健所・医療センター・福祉部それぞれの人的な配置と増員を、ここでも求めておきたいと思います。
 令和元年度末の未収金2217万円余の、それまでの法律事務所への業務委託を見直し、職員間で未収を把握するようにしてからは随時回収されてきているとの報告がありました。職員体制を充実させ職員間のコミュニケーションをしっかりとり、マンパワーを発揮しています。教訓にすべきことであり、この会計は評価します。
 しかし、土地造成事業会計では、起債がまだ40億1300万円の償還残高となっています。一般会計から毎年1億5700万円を繰り入れ、工業用水道事業会計からの長期貸付金15億円は返済期限をこの令和元年度からさらに10年間の延長としました。
 この土地造成事業会計も大きな重荷になっていることから反対であることを申し上げ私の反対討論といたします。


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