2020年12月県議会 杉山俊雄 一般質問 概要記録
 
  
録画中継

                               2020
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1.高校再編計画について
(1)高校再編計画の拙速な実施について
(2)「適正規模1学年6学級」の根拠について
(3)「競争教育」は教育の機会均等を破壊する

2.1年単位の変形労働時間制について
(1)導入にあたって丁寧な「意向調査」を行っているか
(2)夏季休業中は閑散期となる証拠データはあるのか
(3)制度導入の大前提をクリアするために、業務をどの様に削減するのか

3.部落差別解消推進条例の一部改正について
(1)プロバイダに対する責務規定の追加ついて
(2)県の部落差別の判断について


1.高校再編計画について
《質問》杉山俊雄 県議
 県教育委員会は、「きのくに教育審議会」の答申を受け、今年度中に高校再編整備実施プログラムを策定しようとしています。中身は生徒減少を理由に、今後15年間で現在ある29校を20校に削減する計画で、無謀といわざるを得ません。
 今や高校は準義務教育的な存在であり、子どもに高校教育を受ける権利を保障することは、人権保障であり、高校教育を受ける機会を奪うことがあってはなりません。
 学校統廃合は未来永劫、歴史のある学校を地域から消し去り、子どもや住民に多大な負担や苦労をかけます。学校規模が小さく、財政効率が悪くても、「教育を受ける権利」の保障に必要な経費を支出し、教育条件を整え、その利点や可能性を最大限追求するのが県教委の役割です。
 県教委は答申の理解を求めるために、地方別の説明会や諸団体との懇談を持ったとしていますが、十分意見を聞いたわけではありません。
 地域懇談会では、拙速な再編計画に異論が噴出しました。南部高校では町長を会長に「南高の未来を創造する会」が結成され、学校存続への運動が始まっています。また、笠田高校でも県教委との懇談会がもたれ、県議、町長、教育長なども出席し、PTAからは高校を残すよう強く要望されています。
 このように地元首長をはじめ議員、保護者、OBほか地域住民が各地で、存続を求める声を上げ始めています。また、元校長の会(教友会)が「安心して学べる学校を地元の近いところに保障してほしい。少子化がますます加速する。地域全体の活力につながる問題として捉えてほしい」と県教委に要望しています。
 学校は「地域の文化センター」としての中心的な役割があり、地域の魅力・核である学校の廃止は地域の衰退の引き金になります。このことからも拙速な統廃合は中止をし、子どもや学校関係者はもとより、広く地域住民の声に真剣に耳を傾け合意を得るには、数年間の議論の時間が必要と考えます。
(1)高校再編計画の拙速な実施について
 そこで伺います。地域に根ざした高校の重要性をどのように捉え、どう進めようとしているのかについて、また、地域住民の声に真摯に向き合うことが求められていることについて、さらに、子どもの学習権保障に対する考えと具体化について、教育長お答えください。

《答弁》 宮﨑教育長
 先ほどからの議員の質問において、「学校を削減する」や「高校教育を受ける機会を奪う」、また、「学校を地域から消し去り」等、答申内容の解釈に齟齬(そご)があるように感じますので、まず、答申の意図するところについて、説明をさせていただきたいと思います。
 本県には、議員もご承知の通り、地道な取組や特色ある取組により、魅力を備え地域に根ざした高校が数多くあります。答申が指摘しているのは、生徒数の減少が進む中で、そのような重要な学校が、立ち行かなくなる懸念があるということでございます。
 答申は、地域とともに持続可能な学校づくりを推進していくこと、また、地域の学校が成り立たなくなった場合でも、単なる「削減」ではなく、発展的に融合した新たな学校づくりを推進していくことを提起しています。このことは、議員の質問にある、「地域に根ざした高校」づくりということと、相いれないものではないと考えます。
 また、学習権については、学校の数を減らすことによって侵害される、あるいは学校の数を残すことによって保障されるというものではなく、一人一人の成長にとってどのような学びが必要なのかを考えながら学校を整備していくことによって保障されるものだと考えます。答申では、これからの県立高等学校の在り方として、和歌山の子どもの優れた能力を十分に発揮できる高校教育、高等特別支援学校や学び直しの学級の設置等を含めた個に応じた学び、普通科、専門学科、総合学科の充実などの点において、その方向性が提示されていますので、これらを実施プログラムで示し、その具体化を図ることによって、真に学習権の保障がなされると考えます。
 今後、長期間にわたって実施されることになる再編整備では、これからの高校教育の在り方について、県民の皆様とともに考え、共通理解に至ることが大切と考えます。このことから、9月以降、答申内容を説明する地方別や個別の懇談会を開催するとともに、そこでいただいたご意見を尊重しながら、県教育委員会として再編整備実施プログラム(案)の作成に取り組んでいるところです。
 懇談会では、議員の発言にもあった「安心して学べる学校」「地域の魅力・核である学校」づくりについても説明させていただきました。また、そのために、学校が地域と協働することの重要性を説明したところ、「学校のことを一緒に考えたい」「学校とともに動いていく必要性を感じた」などの前向きなご意見もいただいております。

《要望》杉山俊雄 県議
 答弁では、単なる削減ではなく、融合だと言います。(紀北筋で)3校を1校に融合すれば、残り2校は必要なくなります。数の上では2校なくなります。2校削減というのではないですか。
 また、県民の共通理解が大切と言いながら、実施プログラムに沿って、着々と実行するのではと心配です。拙速にすすめないよう要望して、次の質問に移ります。

(2)「適正規模1学年6学級」の根拠について
《質問》杉山俊雄 県議
 今回の答申のポイントの1つは「適正規模」を1学年4学級から6学級に引き上げたことです。根拠として、「学校の小規模化」が「高校の魅力の低下」につながり、「地域の活力低下」を生み「負のスパイラル」に陥る懸念あるとしていますが、納得できません。
  4学級規模では科目開設の制約、習熟度別クラス編成の制限、教員の専門外授業の負担等様々な課題が生じるので適正でない。8学級では今後のさらなる少子化の進行で、現実的でないというのです。つまり、中を取って6学級が適正といっているに等しく、ご都合主義ではないでしょうか。
 和歌山県は、1校あたりの生徒数でいえば全国16位で、中位の上です。他県と比べて小規模校が多いわけではありません。
 全国的に再編整備計画が進められていますが、全国15位の香川県は標準規模を定めず、地域の状況に応じて定員を決めるとしています。26位の山梨県では適正規模を4~8学級とし、適正規模を下回る高校についてもただちに再編の対象とせず、通学時間などの地域の状況等を踏まえ、生徒にとって最もよい視点で考える。また、学校は地域の知の拠点で地域活性化の核でもあり、地域の人々との連携を求めるとしています。43位の秋田県では、生徒減の実情に即して学級減を進める。しかし直ちに学級減とせず、1学級の定員を35人にするなど、緩やかな計画を検討しています。
 他県は、和歌山県のように1学年6学級を適正規模とし、無謀に高校を削減する計画にはなっていません。和歌山県は優しさが足りません。
 1学年6学級の妥当性を「切磋琢磨」論や「新しい学び」に一定程度の生徒数が必要としていますが、科学的な検証はありません。学級規模と教育的効果についての研究はされていますが、学校規模との相関関係に関する研究は見当たりません。
 日本で言われるような「小規模校が生徒の成長・発達によくない」という主張は諸外国ではほとんどありません。
 適正規模は、子どもにとっての「適正」という意味ではなく、行政効率からの「適正」で、効率が悪いから統合しようというのはリストラの基準に他なりません。
 新型コロナ感染症を経験して、今後も新たな感染症が懸念されるなか、現在の40人学級では身体的距離が取れません。また、分散登校で20人程度の学級を経験し、教師たちは「一人ひとりに目が届く」、子どもたちは「先生に質問ができ、勉強が分かるようになった」と大好評であったことからも、少人数学級の必要性は明らかです。
 生徒減少期だからこそ、他県でも見られる少人数学級や学級規模の縮小を行い、行き届いた教育を保障することで学校統廃合を避けることができます。
 そこで伺います。6学級が適正という根拠について、また、20人程度の学級の必要性について、さらに、国の標準が30人学級になった場合の対応策について、教育長お答えください。

《答弁》 宮﨑教育長
 平成17年の再編整備計画では、県立高校の適正規模を「4~8学級」としてきました。生徒減少が続く中、現行基準のままでは、大多数の学校がこの範囲には収まらなくなってしまいます。特に、地方では、通学範囲内に4学級を満たす学校がなくなることも懸念されます。そこで、考え方を見直す必要があると考えています。
 答申では、生徒の多様な人間関係の中での成長・成熟、学校行事や部活動の活力、必要な教員数が確保されることによる教科・科目の充実が期待できることなどの利点をあげて、現実的かつ望ましい学校規模が1学年6学級と示されました。
 また、この規模であれば、将来、更なる少子化か進んでも、市域においては活力があり地域の核となりうる学校として存在していけるという見通しも含まれています。
 ただし、市域と市域の間にある高校や専門高校については、6学級を満たすことが難しい場合でも、存続させることが必要となることもあります。このようなことを総合的に考えると、6学級規模の学校を中心に、4学級未満の学校もあり得るという形が、和歌山県の実情に見合った高校の在り方だと考えます。
 それぞれの高校に求められる機能が維持できる範囲においては、現在の学校をできるだけ存続させられるよう努めつつ、それが困難になった場合には、学校の発展性や生徒の通学範囲等に配慮しながら、新たな学校に再編整備する必要があると考えています。
 20人程度の学級については、一概に人数を減じて学級数を増やすことで学校が存続すればよいというわけではありません。学級の人数はその導入目的やもたらされる教育効果などから考えるべきものです。例えば、答申に盛り込まれている10名程度で学ぶ「学び直し」に特化した少人数学級の新設については、必要性があると考えており実現していきたいと思います。
 なお、来年度の高校募集定員では、串本古座高校を1学級35人編制といたしました。 35人学級は、学校運営に一定の負担がかかるものですが、地域や学校の要望も踏まえての限定的な設定です。国においても少人数学級が制度化されるように、今後も県教育委員会としても働きかけてまいります。
 国の制度が30人学級になった場合でも、教室数等に支障が生じないように、現在、慎重に検討を重ねつつ再編整備の実施プログラム(案)を作成しているところです。

《コメント》杉山俊雄 県議
 6学級の科学的根拠はありません。15年先の生徒減少数を6学級規模の生徒数で割れば9校が割り出されます。削減のための6学級と言わざるを得ないことを指摘して、次の質問に。

(3)「競争教育」は教育の機会均等を破壊する
《質問》杉山俊雄 県議
 答申では公教育の責務を「世界に羽ばたき、和歌山発展に寄与する人材を育てる」こととしています。これは教育基本法の教育の目的・機会均等に反する立場であります。
 「難関大学進学」、「アスリートの育成」など競争主義を一層強化する方向での再編計画は教育の機会均等を侵し、見過ごすことはできません。
 難関大学への進学が低いことを「教員の指導力や生徒の学ぶ姿勢」等に責任転嫁しています。これでは現場で頑張っている教員や生徒を愚弄することにしかなりません。
 配付資料をご覧ください。大学進学率に関していえば、平成17年(2005年)以降、全国平均と比較して年々格差が大きくなっています。このことは何を物語っているのでしょうか。教員や生徒の質が低下してきたからではなく、県の教育政策に問題があるからではないでしょうか。
 県教委は全国に先駆けて、平成15年度から通学区を撤廃し、平成16年度からは県立の中高一貫校を設置(設置数は全国1番です)し、平成17年度には高校再編整備計画を策定しています。このような大きな制度改革と軌を一にして大学進学率の格差が拡大してきています。これらの教育政策が大学進学率の低下に繋がっているのではないでしょうか。
 また、東大進学者数を10年単位で見ていっても、1970年代と2010年代とは同数です。どの年代でも進学者数はそれほど変わりませんが、違うのは年代とともに地域に偏りが出てくることや私学が8~9割を占めるようになったことです。
 有名大学への進学者を伸ばすために、学区を撤廃し、中高一貫校を作っても大きな成果を上げるには至っていません。
 競争教育をあおればあおるほど、学力の高い生徒は実績のある私学に流れ、県立高校は疲弊してきています。
 競争をあおる教育政策で高校間格差が拡大し、階層分化された各高校での活力が失われ、負のスパイラルを生んでいるのではないでしょうか。「小規模化が負のスパイラル」を生むのではありません。
 答申では人口減少で「通学区域を再設定すれば、子育て世代が地域から流出」するので、再設定すべきでないと結論づけています。しかし、難関大学を希望する生徒は地域の有名私立へ進学し、学区撤廃と相関関係がありません。
 競争的な教育政策をなくし、ゆとりを持って学校生活が送れるように、学区を縮小し、高校間格差をなくし、地域の子は地域で学び、何処でも同じ教育を受けられるような制度設計に改めることを検討する時期にきているのではないかと思いますが、教育等の答弁を求めます。

《答弁》 宮崎教育長
 今後、進める再編整備においては、各地域に、活力と魅力を備えた高校、自己実現が十分に果たせる高校を整備し、県内どの地域においても、格差なく質の高い教育が受けられるようにすることが重要だと思います。このことは、議員の質問にある「競争主義を一層強化する方向での再編」とは異なるものです。
 また、学区制についてですが、生徒が自らの意思で選び、学びたいという意欲をもって通うことのできる学校の存在が重要と考えます。答申では、学校は、学区という制度ではなく、生徒・保護者・地域から信頼され、地域の拠点として認められることにより、持続可能性を帯びていくものとされています。
 そういった高校教育を各地域に実現していこうとするのが、今回の再編整備実施プログラムの柱になると考えています。そのために、県教育委員会として、保護者、同窓会、地域等とともに、地域の子どもたちが真に学びたいと思える、地域の核となる県立学校づくりに邁進していきたいと考えております。

《要望》杉山俊雄 県議
 どの地域でも、格差なく教育が受けられるのであれば、選択の余地はありません。学区を外して選択できれば、格差が生まれます。格差のない教育と学区外しは矛盾しませんか。選択できるのは一部の生徒だけです。
 「格差がない」というのであれば、学区を設定すべきだと、要望しておきます。


2.1年単位の変形労働時間制について
(1)導入にあたって丁寧な「意向調査」を行っているか
《質問》杉山俊雄 県議
 変形労働時間制の導入には「恒常的な時間外労働がないこと」が前提なので、長時間労働が常態化している学校に導入する余地は無いと思いますが、まず導入にあたって丁寧な意向調査が行われているかについて質問します。
 変形労働時間制は、忙しい時期には所定労働時間を1日8時間以上を設定し、暇な時期には労働時間を短縮し、全期間をならせば週40時間以内に収まるようにする制度です。しかし、学校には暇な閑散期はありません。
 文科省は「導入しても、勤務時間や業務を短縮するものでない」と言っているのに、どうしてこのようなものを導入するのかについて、6月の文教委員会で質問しました。
 教育長は「超過勤務が45時間以内でないと導入されないが、現在導入できる状況にない。しかし市町村が導入する場合、県で条例を作っておく必要がある。」と答弁。県が不作為とならないために条例を作ると言うのです。
 日本共産党の畑野衆議院議員は、昨年11月の文部科学委員会で導入するためのプロセスについて確認しています。
 政府参考人は「条例を制定するプロセスの出発点は、まず各学校で検討。その上で市町村教育委員会と相談し、市町村教委の意向を踏まえ県教委が条例案を作成し、県議会に諮る」また、「各学校の事情を踏まえずに県の条例で一律に強制することはできません」と答弁しているように、職場の意向や学校の実情を尊重し、決定することになっています。
 さらに、全国の教育長や教育関係者会議等、様々な場で、改正法の趣旨や意義を周知徹底するとも答弁しています。
 萩生田文科大臣は「各学校の意向を踏まえずに、県が一律に条例で強制しても何の意味も無い。当然、学校のみんながいやだというものを条例で運用して動かすことはできない」と言っています。
 条例制定の出発点は国会答弁の通り「各学校での話し合い」です。各学校の意向を無視して条例は作れないと思います。
 そこで教育長に伺います。現在県教委は「意向調査」を行ったと思いますが、国会答弁にあるような現場の事情をよく聞く調査になっていますか。お答えください。

《答弁》 宮﨑教育長
 公立学校の教育職員における「休日のまとめ取り」のための1年単位の変形労働時間制の導入についで、全ての県立学校及び市町村教育委員会の意向を丁寧に確認をいたしました。現時点では、この制度を直ちに導入したいという意向の表明はありませんでした。今後も、各学校や市町村教育委員会の考え方を慎重に確認してまいりたいと考えております。

《要望》杉山俊雄 県議
 丁寧に意向調査を行ったと言いますが、市町村学校では校長ですら説明を受けていません。教員はなおさらです。高校でも教員は知らされていません。プロセスの出発点は「学校での話し合い」と国会で答弁しています。
 県教委は不作為にならないよう県条例をつくるといいますが、学校の意向を丁寧に聞かないことの方が不作為ではないですか。今後、改正法の趣旨を現場に周知徹底するよう要望しておきます。

(2)夏季休業中は閑散期となる証拠データはあるのか
《質問》杉山俊雄 県議
 文科省は、夏休みのまとめ取りについて「リフレッシュ時間を確保でき、教職の魅力向上で意欲と能力のある人材」の確保につながるとしています。つまり夏休みの連続5日休日(40時間)に魅力を感じ、教職希望が増えるというのです。しかし、教員は夏休みのまとめ取りに魅力を感じて教員をしていません。子どもと一緒に歩んでいくところに最大の魅力を感じて頑張っているのです。
 文科省はまとめ取りできる夏休みを閑散期と捉えています。しかし夏休みは授業がないだけであって教員はいつもと同じように勤務し、けっこう仕事が詰まっています。部活動の指導、校外の研修への参加、家庭訪問、授業期間中にできない諸々の業務をこなしています。
 さいたま市は、昨年7月に試行的に導入しました。7月の4日間、1時間勤務時間を延長した分、7月22日以降の夏休み期間中に4時間分を調整します。しかし、わずか4時間さえ、結局調整する日が見つからなかったというのです。
 理由として、教員の未配置や未補充が多く、常に繁忙期で、長時間を余儀なくされる中、長期休業中を閑散期と決めつけ、導入するのはあまりに無謀だというのです。現場では、教員を増やし、勤務時間内に普通に仕事ができるようにしてほしいと訴えています。
 大橋名古屋造形大学教授の研究によると、2015年度と2016年度のいずれも、新任教員は全ての月において残業が生じている。しかもほとんどの月でカロー死ラインを超えており、閑散期と想定されている8月も2015年度は26時間、2016年度は16時間の残業が確認できたとしています。
 そこで教育長に伺います。夏期休業中は閑散期となる証拠データはありますか。お答えください。

《答弁》 宮﨑教育長
 文部科学省は、「休日のまとめ取り」が可能な状況をつくるためには、授業のない期間である夏季休業等に業務を削減して閑散期をつくる必要があると述べております。
 本県におきましては、夏季休暇の一斉取得日を設定するとともに、その前後には行事や研修等を設定しないようにすることで、夏季休業中に休日をまとめて取ることができる状況をつくっております。
 全ての校種において夏季休業中の8月は、他の月と比較して明らかに超過勤務時間が少なくなっているというデータは把握しております。

(3)制度導入の大前提をクリアするために、業務をどの様に削減するのか
《質問》杉山俊雄 県議
 勤務時間を延長する時期について、文科省の導入の手引では、年度当初や学校行事等で業務が多い時期、4月、6月、10月、11月を考えています。
 これらの月は過労死事案が多い月であり、4月は新学期の環境の変化によるストレスに加え、行事の多さが加わります。業務量が多く、過労死事案が多い月にわざわざ所定労働時間を延ばして勤務させるのか。理解に苦しみます。
 疲労は日々その日のうちに解消するのが原則です。たまった疲労は簡単にとれません。寝だめ、休みだめはできません。変形労働は健康を害し、体を壊します。
 ある新採は告発しています。「1ヶ月働きましたが異常です。残業せざるを得ない仕事量を任されて、残業しても、ボランティア扱いで残業代は出ない。雑務等の仕事が多いせいで、授業や学級をよくしようとする試みや、子ども一人ひとりを考える時間が全くとれません。本当に悲しい。日々の授業はほぼ準備なしです。毎回思いつきのような授業になってしまって、子どもに本当に申し訳ない。このままでは、質のよい教育はおろか、教員は死にます。助けてください。」と悲痛な叫びが聞こえてきます。忙しい時期に勤務時間を延長することは異常です。
 文科省の「勤務実態調査」から、教員は1日11時間を超える長時間労働で、月80時間の過労死ラインを超える超過勤務は小学校で33.5%、中学校で57.6%にのぼります。
 長時間労働で身も心も疲れ切っている教員の働き方を変えるのが、教育委員会の仕事ではありませんか。今でさえ多忙な時期に所定労働時間を延長するなど、受け入れられません。
 導入の大前提は教育長が答弁したとおり、 超過勤務時間を「上限ガイドライン」で示された月45時間、年360時間以内とするまで業務を削減することです。
 文科省は「業務の削減を徹底的に進める」と答弁していますが、教育長は具体的にどのように削減するつもりですか。お答えください。

《答弁》 宮﨑教育長
 業務削減については、学校ではICTの活用や休暇の確保、ノー残業デーの設定、会議の簡素化、部活動における休養日や練習時間の設定等に取り組んでおります。
 また、体育部及び文化部の部活動指導員やスクールサポートスタッフ、スクールカウンセラーなど様々なスタッフを配置しております。
 加えて、各学校ではICTやタイムカードによって、勤務時間の的確な把屋を行い、超過勤務時間の縮減を進めております。

《要望》杉山俊雄 県議
 勤務時間を把握して、削減に取り組んでいるといいますが、現在でも超勤はなくなっていません。45時間以上は40%を越え、過労死ラインライン越えもかなりあります。小手先の改革では何ともなりません。業務の大幅削減や教員増など抜本的な改革が必要です。そうでないと校長による時短ハラスメントが起こり大きな社会問題になってくると予想されます。真剣に取り組んで戴くことを要望しておきます。


3.部落差別解消推進条例の一部改正について
《質問》杉山俊雄 県議
 日本共産党県議団は2月議会で部落差別解消推進条例については、すでに「人権尊重の社会づくり条例」があり、これを生かすべきとして反対しました。今回の一部改正案にも反対の立場から2点について質問します。
(1)プロバイダに対する責務規定の追加ついて
 条例一部改正の理由はインターネット上に部落差別書き込みが拡散されていて、プロバイダに削除要請しても削除されていないこともあるから、条例の法的根拠でより強く削除要請をするというのです。
 インターネット利用に関連しては、条例がなくてもすでに削除要請は実施されています。わざわざ改正する必要があるのか疑問です。
 半年あまりで条例を改正しなければならないほど、2月に提出された条例に不備があったのか、疑わざるを得ません。
 11月17日に行われた人権施策推進審議会では、弁護士や大学教授から条例の問題点等が指摘されています。また、10月17日から11月16日まで行われたパブリックコメントへは2名から提出があり、条例改正は必要ないとの意見でした。
 さて、インターネット上に部落問題があふれているのかについてですが、県と共同研究している和大のモニタリングでの掲示板への書き込みの確認件数は、令和元年度で19万件だといいます。県職員が部落差別と判断してプロバイダに削除要請した件数は362件で、全体の0.19%と極めて少数です。このうち削除された件数は83件で0.04%と極々少数です。
 削除されていない件数は279件(0.14%)ですが、モニタリングで書き込んだ人を特定できた件数は無く、説示等を行っていないと聞いており、特に抽出して、条例に「プロバイダの責務条項」を追加する必要性はありません。
 和大への負担金は300万円で、情報専門教授の院生を中心に週8時間のモニタリングが行われています。1時間に約450件、1分間に約8件というとてつもない数のモニタリングです。
 ネット上の書き込みは、表現の自由と関連していて、「差別」に該当するかどうかについては、県の判断とプロバイダの判断が異なることは十分あり得ます。現に、削除要請があっても全て要求が通る訳ではありません。県の削除要請に応えないことが問題であるかのような発想は謙虚さを欠いているのではないでしょうか。
 ネットの削除要請は、任意の制度で、従うか否かは、原則としてプロバイダ等の意思にかかっています。プロバイダ責任制限法3条では削除の規定はありますが、プロバイダの削除義務の規定ではなく、削除しても責任を問われない条件を規定したものです。
 ネットの発信者に対する勧告のためには、発信者情報が必要ですが、開示を求めること自体、手続き的にハードルが高く、開示請求できるのは権利侵害が要件です。自治体の権限で出来ることではありません。仮に明らかになったとしても、勧告自体、法的には強制力はありません。
 インターネット上に流出した情報をすべて回収することに多大な時間を費やし、問題があると探し続け、削除要請することに意味があるとは思えません。税金を使ってまで追求する価値があるのか疑問です。
 プロバイダ責任制限法や業界団体の自主規制では削除要請に対する対応を必要とするのは権利侵害のある場合です。一般的なお願いしかできないのでは、責務規定を条例に追加する意味はありません。県として出来ることは、被害者へのサポート体制を充実することではありませんか。また、県民に対しては人権尊重に関する啓発や相談活動を積極的に行うことではないかと思いますが、企画部長の答弁を求めます。

《答弁》 企画部長
 インターネットは、拡散性及び匿名性といった特性を有しております。従来型のトイレなどでの差別落書きと異なりまして、インターネット上で部落差別が行われた場合は、情報が瞬時に拡散され、被害が大きくなることから、県ではご本年3月に「和歌山県部落差別の解消の推進に関する条例」を施行し、インターネットを利用しての部落差別を禁止したところです。
 また、本規定に違反した書き込みがないかどうかのモニタリングを行い、違反書き込みと特定したものについては、プロバイダに対して削除要請を実施しております。令和元年度では362件の削除要請を行い、本条例施行後の令和2年11月末時点で321件もの書き込みを本規定に違反していると判断し、プロバイダに対して削除要請を行ったところです。 しかしながら、削除要請を行った書き込みのうち、約85%が削除されていないという状況です。
 プロバイダは、インターネット上で部落差別が行われている場合に当該情報を削除することができることから、県としては、インターネットを利用した部落差別の拡散防止を図るためには、プロバイダの役割は非常に大きいものであると考えています。そのため、県では引き続き削除要請を行っていきますが、プロバイダにおいても、自身がインターネット上で部落差別が行われていることを確認した場合には当該情報を削除いただくことを求めるために、プロバイダに対する責務を規定したものです。
 また、県では、被害者へのサポートを行うため、人権局や各振興局、公益財団法人和歌山県人権啓発センターに部落差別に関する相談窓口を設置するとともに、月2回の無料の弁護士相談を実施しています。さらに、県民に部落差別についての関心を促すとともに、正しい理解と認識を深めていただくため、駅前等での街頭啓発や啓発資料の作成、部落差別に関する歴史や現状、今後の課題を知っていただくための研修会や講演会を開催するなど、積極的に啓発活動を行っています。県では、今後も引き続き、部落差別の解消を推進していくため、啓発や相談体制の充実に努めてまいります。

《コメント》杉山俊雄 県議
 インターネットの落書きは、条例がなくても消しにいけます。県とプロバイダの判断基準が異なるので全ては消せません。書き込んだ人を特定するのに高いハードルがあります。条例を作ってまで消しに行くことに力を注ぐより、現に行われている、啓発や相談体制を充実することの方が大切です。

(2)県の部落差別の判断について
《質問》杉山俊雄 建議
 部落差別解消条例には部落差別の定義がないので、部落差別であるかの判断は判断者の主観になります。禁止条項を置き、勧告という規制手段を設定している以上、定義は不可欠です。
 例えば、部落差別事件として取り上げられ、市町村から報告のあった事例を公文書開示一覧で見ると次のようなものです。「同和住宅は毎月6000円の家賃を払い続けたら、自分のものになると知人から聞いた。不公平だと思い電話をした」これが差別事件として報告されています。この質問者に対して市は「旧同和住宅に払い下げ制度はない」こと「市営住宅全般では、諸々の要件について、お互いの合意があれば払い下げできる制度がある」と説明し、「理解いただいた」と報告されています。
  差別事件報告書の差別の分析によると「本件は同和対策事業に対する誤った認識による問い合わせである。情報を鵜呑みにして、誤った認識で捉えることは偏見であり、差別意識を助長する。認識を改めなければねたみ意識につながるとともに、誤った情報がさらに拡散され、歯止め無く流布される。同和地区に対する偏見や部落差別はこのような誤った情報から起こると考えられる」と分析されています。
 参議院法務委員会の付帯決議や地対協の意見具申は今日的な課題として、「周辺地域との一体性や一般対策との均衡を欠いた事業の実施は新たな『ねたみ意識』を各地で表面化させている。このような行政機関の姿勢は国民の強い批判と不信感をもたらしている」と行政の主体性の欠如が差別の解消を阻害し、新たな差別を生む危険性を指摘しています。
  部落差別解消推進条例には、「部落差別を行った者」に対する説示・勧告の権限が県に付与されています。県による主観的判断により、差別かどうかが認定されることになっています。
 県が説示・勧告を行うことは本筋でないと思います。国の人権擁護機関である法務局に任せるべきと考えますが、企画部長の答弁を求めます。

《答弁》 企画部長
 本条例における「部落差別」とは、「部落差別の解消の推進に関する法律」における部落差別のことで、誰もが理解できる歴史的事実です。一般的には特定の地域の出身者であることを理由に結婚を反対されるなどの不合理な取り扱いを受けることを言います。
 本県においても、インターネット等を用いて、今もなお同和地区やその関係者を避けようとする目的で、誹謗中傷を行ったり、同和地区の所在の調査や行政機関へ問い合わせをしたりするなどの事例が発生しており、部落差別は過去の問題ではなく、現実の問題として残っています。
 部落差別により深く傷つけられた方がおられ、この方々の心の傷は決して些細なものではありません。そのため、県として、このような部落差別に悩まれている被害者を救済していかなければならないと考えています。
 県では、市町村と連携を図りながら、被害者に対しては、被害者の心に寄り添ったサポートを行い、部落差別を行った者に対しては、部落差別は許されないものであり、行ってはならないということを説示し、今後、部落差別を行わないように促しているところです。
 また、部落差別については、本県だけの課題ではなく、全国的な課題であることから、国に対して、引き続き、実効性のある法制度の整備を提案してまいります。

《コメント》杉山俊雄 県議
 部落差別が現実の課題として残っていても、県が県民に説示・勧告を行うべきでなく、国の人権擁護機関である法務局に任せるべきだと言っているのです。
 以上で一般質問を終わります。



宮﨑教育長の答弁を聞く、杉山俊雄県議(左)
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