①過去最大 6120億円
2月県議会では2021年度当初予算が提案されました。一般会計は前年度比215億円増(+3.7%)の6120億円と、過去最大です。
歳入では、県税収入が40億円の減(▲4.3%)。新型コロナの影響として、企業収益の悪化等により法人2税は39億円減(▲19%)、個人県民税は9億円減(▲3%)の一方、地方消費税は8億円増(+3.8%)を見込んでいます。
地方交付税は11億円減少(▲0.6%)する一方、地方交付税の不足分を借金で補う臨時財政対策債は100億円(+58.8%)増額する予定です。
119億円(+14.7%)増額される国庫支出金からは、新型コロナ対策に186億円が充てられます。
借金残高1.1兆円で県民1人120万円、貯金は184億円
県の借入金である県債は203億円減(▲26.9%)ですが、臨時財政対策債を含めた県債残高は過去最高を更新し続け1兆1068億円(155億円増、+1.4%)にのぼり、県民1人あたり約120万円の借金を背負うことになります。借金返済のための公債費も3億円(+0.4%)増加しました。
歳入全体は6096億円で、不足する25億円については、借金返済や収支不足に備えた県債管理基金から補てんします。それでも当基金残高は150億円を超え、同じく収支不足に備えた財政調整基金と合わせると、「中期行財政経営プラン」の想定より31億円も多い、184億円を貯金しています。
②新型コロナ対策に544億円
検査機器・体制を拡充
歳出では、新型コロナウイルス感染症対策に544億円を計上。環境衛生研究センターや医療機関等へのPCR検査機器の拡充、検査体制の強化、抗原検査キットでの検査拡大を図ります。
環境衛生研究センターは県内の検体検査の主体的役割を担っていますが、狭いうえに老朽化しています。現場を視察した日本共産党県議団も要求してきた増改築を含む再整備が計画され、21年度は基本設計に1億円計上しています。
しかし、保健所の体制強化はなく、各保健所相互の応援体制の整備にとどまりました。和歌山県は、感染者が確認されてから保健所による徹底調査で対象者を特定し検査して抑える「和歌山方式」を今後も続けるとしています。和歌山方式を続ける上でも、また全国約半数の都府県で始められている「社会的検査」に踏み出すためにも、保健所の体制強化は重要です。
入院体制を強化 病床削減は見直されず
コロナ感染患者の入院病床を400床、うち重症者用を40床確保。満床状態に備え、回復者を宿泊療養に移行できる体制を確保します。コロナ対応当日しか使えなかった医療従事者宿泊支援制度も前後3日間に改善されました。しかし、「再編」の名で県内の病床2割を削減していく「地域医療構想」は見直されていません。
中小企業・県民生活に県の独自支援求められる
コロナ禍での中小企業の資金繰りに対応するために、例年900億円程度の新規融資枠を1200億円に拡大します。しかし、融資である限り返済を伴います。国の持続化給付金や家賃支援給付金への県の上乗せ、収入減少世帯への緊急小口資金貸付等は、現時点では継続されません。国制度が打ち切られても、県独自で県民や中小企業を支援することが急務です。
③コロナ禍でもカジノ誘致に猛進
新型コロナ感染拡大で、世界のカジノIRは存続の危機に陥っています。カジノを中心にした大規模集客施設であるIR構想はもはや時代遅れとなっています。ところが和歌山県は世界の情勢を顧みず、カジノIR誘致に猪突猛進。21年度も6900万円かけて広報・啓発活動し「県民の理解を深める」などとしています。
現在、和歌山の計画に2者が応募しており、春には優先権者を選定、10月~22年4月までに国に区域整備計画を申請する予定です。
また県は、IRは民間事業者による建設・運営事業と説明してきましたが、IR実施方針にはインフラ整備や事業者の損失への負担、業績不振・災害発生時の最大限の協力など県の負担が明記され、その負担は県民の税金で補てんされます。
さらにIRは、一度できてしまえば最低でも40年間は事業が続けられます。経済活性化どころか地域を衰退・荒廃させ、治安を悪化させます。その一つとして、IRのホテルの問題があります。ギャンブルで負けた人の金を吸い上げるカジノの収益をもとにした格安の大型ホテルができれば、県内の旅館・ホテルを軒並みつぶすことになりかねません。他の地域産業へも同様の打撃を与えます。対策したところでギャンブル依存症も間違いなく増えます。
和歌山の将来、子や孫の代にまで悪影響をもたらす計画を進めることは絶対許されません。
④高校再編問題に不安・反対続出
県教育委員会は1月、現在32ある県立高校を15年間で再編・削減していく計画の骨子案を発表しました。多くの地域や様々な団体、保護者などから不安や反対の声が広がっています。県教委は生徒数の減少を理由にしていますが、この計画は40人学級を元に計算しています。現在、国で小学校35人学級が検討されるなど、少人数学級が進んでいけば学級数も維持でき、今ある高校を減らす必要はありません。学ぶ喜びを感じとれる豊かな教育のためにも、少人数学級を推進した計画に転換するべきです。
教育を受ける権利の保障に反する
さらに問題なのは、「特に期待される使命を達成する」として「特任高校」を設けるなど、高校間の格差をより拡大し深刻化させる計画であることです。どの地域でも必要な教育を受けることができる権利の保障、機会均等に反します。今回の計画は撤回すべきです。
少人数学級には正規教員増を
教職員は前年度より26人減らします。定数を減らす一方、定数の中で非正規で雇う「定数内講師」は小中学校で400人前後、県立学校で100~150人程度を毎年保持し、定数外の「非常勤講師」は年々増員。教育を安上がりの非正規教員でまかなっています。
過労死ラインを超える教員の長時間労働を是正するためにも、豊かな教育の実現に必要な少人数学級の推進のためにも、県独自で正規教員を増やすことが不可欠です。
⑤高すぎる国保料(税)・介護保険料
国民健康保険料(税)は、2019年度の43万5,520円から、20年度は43万6,870円に上がりました(所得250万円40代夫婦4人家族モデル世帯の県平均)。国保の財政運営が県単位化された18年度に策定された県国保運営方針では、国保料(税)値上がりを抑えるための市町村一般会計からの法定外繰入をなくし、統一保険料にしていくことが示されました。16年度には8市町村が繰り入れていましたが、19年度では太地町だけとなっています。20年度の国保料(税)を見ると、16年度より値上がりしているのは県内30市町村中11カ所ですが、うち7カ所は繰入をやめた市町村です。21年度は運営方針が改定されます。改定案でも、法定外繰入を解消し、令和9年度(2027年度)までに統一保険料(税)を目指すと明記されています。
介護保険では、21年度に保険料が見直されます。制度創設から改定ごとに上がり続け、現在の第7期保険料は県平均月額6,538円と全国4番目の高さです。今改定でのさらなる値上がりが懸念されます。
⑥県民の税金でムダな港湾整備すすめ、大企業には優遇
和歌山北港沖の関西電力LNG発電所計画のための南防波堤建設が2000年度から始められました。総事業費は300億円で国が100億円、県が50億円負担。これに加え、18年の台風被害により、県の負担が7億円余り増えています。全長1,000mのうち685mが建設済みで、これまで県は36億円負担しました。しかし、発電所着工のめどは立っておらず、防波堤建設だけが進められています。
関西空港の埋め立てに土砂を売った跡地である「コスモパーク加太」は、借金を440億円残しました。県はその土地のうち95.9haを、県土地開発公社(県設立の財団法人)から年576円/㎡で借りています。
その一部を20億円かけて用地造成し、カゴメ加太菜園に100円/㎡という破格の安値で貸していました。県が造成したものの、加太菜園は事業計画の縮小を繰り返し、賃料支払いが部分的に中断され減収。2018年9月の台風被害を受け操業を停止し、親会社カゴメが撤去作業を完了した19年11月をもって賃料支払いは県との合意で終了しました。操業開始からの賃料総額は3億4300万円しか入っていません。県民の税金を使った大企業への優遇措置です。