2021年2月県議会 杉山俊雄 一般質問 概要記録

   録画中継

202139

1.鳥インフルエンザの経営支援について
(1)発生農家に支払われる国の手当金の交付状況について
(2)鶏舎の修繕等に対する県の支援について

2.高校再編計画について
(1)「答申」から「骨子案」に至る変更について
(2)「骨子案」の問題点について
(3)高校全員入学と全県一区制の見直しについて

3.メタンハイドレート事業について
(1)調査の進捗状況と商業化の目途について
(2)地球温暖化を加速し脱炭素社会に逆行する


1.鳥インフルエンザの経営支援について
(1)発生農家に支払われる国の手当金の交付状況について

《質問》杉山俊雄 県議
 西日本の養鶏場で高病原性鳥インフルエンザの発生が相次ぐ中、昨年12月10日に紀の川市の養鶏場で発生が確認されました。
 県は直ちに対策本部を立ち上げ、その日のうちに鶏の殺処分を開始し、翌11日に6.8万羽の殺処分を完了しました。また、12日から13日にかけて飼料・鶏糞の処理、消毒作業を行い、防疫措置を完了しました。県当局の迅速な対応、また、本庁及び那賀振興局の県職員、自衛隊員の昼夜分かたぬご尽力に感謝申し上げます。
 今冬1例目の発生は昨年11月5日の香川県三豊市で確認されました。この農場では33万羽の採卵鶏が2階建ての鶏舎で飼養されていました。三豊市では12例が連続して発生しました。
 昨年11月下旬から香川県だけでなく西日本の全域に拡がり、全国屈指の主産地である鹿児島県や宮崎県、12月末には千葉県にも飛び火し、北陸の富山県でも発生し、未だに猛威を振るっています。
 国内の発生件数(20年11月5日~2月25日)は、17県51例で、殺処分羽数は1,000万羽近くにもなっています。
 渡り鳥が大陸に帰るまでは感染の恐れが続き、5月の初旬までは余談を許さない状況です。ひとたび発生すれば、財産である鶏をすべて失うことになります。
 殺処分された鶏などの補償については、農場内の鶏、卵、飼料を県職員と専門家が評価し、家畜伝染病予防法に基づく手当金として国で補償されます。
 従業員の給料については新型コロナ特例の雇用調整助成金は対象外なので、特例以外の雇用調整助成金は要件を満たしても支給額が少なく、支給日数も100日が限度で十分補償されません。

 経営再開までには農場内の消毒などに3ヶ月、鶏舎の穴の修繕やネット等を再点検し、再度消毒をし、鶏舎(5,000~7,000羽)にモニター鶏を導入しウイルスがないことを確認し、順次この作業を行い、雛の導入となります。
 生後3ヶ月ぐらいの雛(少し高額)を購入予定なので、卵を産むまでに3ヶ月ほどかかります。産み始めの卵は小さいので販売価格は低く、元の状態になるのに1年はかかると見込まれます。
 その間の生活費や従業員の生活を護らなければなりません。
 そこで、国の手当金の交付状況について、農林水産部長に見解を求めます。

《答弁》 農林水産部長
 家畜伝染病予防法に基づき、鳥インフルエンザ発生農家へは、殺処分された鶏に加え処分された卵や飼料の評価額が、国から手当金として交付されることとなっております。
 ただし、伝染病の発生予防またはまん延防止に必要な措置を講じなかった場合は、手当金の全額または一部が交付されないこととなっております。
 議員ご指摘のとおり、経済的に極めて苦しい立場に置かれている発生農家にとって、速やかな補償が行われることは、経営を維持・再開していく上で重要です。
 このため、本県で発生が確認された昨年12月10日に知事が国に対し手当金の早期交付を要望するなど、迅速な交付に向けて取り組んできたところであり、現在、国で審査中の状況ですが、3月中に交付される見込みと聞いております。
 発生農家の経営再開に支障を来すことのないよう、手当金の早期交付について、引き続き国へ要望してまいります。

《要望》杉山俊雄 県議
 早く交付されれば安心すると思いますのでよろしくお願いします。
 しかし、国から交付される手当金は、実際、鶏が生きていて得られるはずだった販売価格との間に差があって、十分に補填されません。
 また、国は手当金の引き上げについて拒んでいます。その上、手当金が全額補償されるのかは分かりません。答弁にあったように、厳しく評価され、減額されます。
 手当金が減額されれば、自分たちで積み立てた互助基金にも連動し、減額されます。
 経営再開までには多くの困難があり、大変厳しい状況に追い込まれます。
 手当金の額が年度末に決定されます。大変不安です。国に、手当金の引き上げを要望していただきますよう、よろしくお願いいたします。

(2)鶏舎の修繕等に対する県の支援について
《質問》杉山俊雄 県議
 鳥インフルエンザウイルスは、渡り鳥のカモなどの水禽類を宿主とします。紀の川市には多くのため池や山田ダムがあり、多くの渡り鳥が飛来します。
 渡り鳥から鶏への感染経路については、カモなど渡り鳥が国内へのウイルスの運び屋になります。カモの腸内でウイルスは増殖し、排泄された糞には多くのウイルスが含まれ、その糞が感染源となり、農場付近に生息する野鳥やネズミなどの小動物を介して、鶏舎に持ち込まれるといわれています。また、池やダム湖などの水がウイルスに汚染され、その水から野鳥やネズミなどの小動物を介して、鶏舎に侵入することも考えられます。
 感染は鶏舎の構造の違いによらず、どのような鶏舎でも発生している状況です。
 宮崎県は家きん飼養農場における飼養衛生管理の自己点検結果は遵守率100%ですが、これまで12例の発生があり、92万8千羽が殺処分されています。
 また、千葉県ではこれまでに11例の発生があり、477万羽が殺処分されています。うち3例は飼養羽数100万羽以上で、最新式のウインドレス鶏舎で飼養されていましたが、それでも発生しています。
 どのように侵入防止対策を行っても、渡り鳥が多く飛来し、越冬に最適なため池等がある地域では、感染のリスクは高く、これは人災ではなく自然災害ではないでしょうか。
 農家は消毒や野鳥や小動物の侵入防止対策に必死です。侵入を防ぐネットの補強・鶏舎の修繕等には大変なコストが掛かります。どれほどの額になるかわかりません。高額だと経営再開にも影響します。
 国の事業では規模拡大などが要件となっており、農家個人の鶏舎の修繕等の補助はありません。
 そこで、鶏舎の修繕等への県の支援を是非お願いします。農林水産部長に見解を求めます。

《答弁》 農林水産部長
 発生農場に対する国の疫学調査チームの調査結果では、鶏舎側面の金網等の破損や壁に小型の野生動物が侵入可能な穴もあったことが指摘されており、経営再開にあたっては、これらを修繕し、国が定める飼養衛生管理基準を満たす必要があります。
 県では、畜産業での衛生管理の強化等を推進するため、令和3年度新政策として「畜産施設衛生管理強化支援事業」の予算を本議会にお願いをしております。
 今後、本事業の推進を通じ、養鶏農場での衛生管理の強化を図ってまいりたいと考えてございます。

《要望》杉山俊雄 県議
 大変ありがとうございます。新政策で鶏舎の補修等の支援が得られれば、経営再開の助けになると思います。
 養鶏業者は、鶏舎の補強・改修等に大変なコストがかかります。県から指示がないので、どれ程の額になるかと不安に思っています。高額だと再開の目途がたたないとも言っています。
 香川県は、国の長期融資を受ける場合、無利子で融資が受けられる、資金支援事業を創設しています。また、国の「雇用調整助成金」の決定を受けた中小の事業主に、鳥インフルエンザ対応雇用調整助成金制度を設けています。
 養鶏農家が希望をもって営業再開できるよう、国に支援を求めるとともに、県においてもさらなる支援の拡充をお願いします。


2.高校再編計画について
(1)「答申」から「骨子案」に至る変更について
《質問》杉山俊雄 県議
 県立高校の再編計画に関わる変更の経緯について述べます。11月24日、議会閉会中に臨時文教委員会が開会され、高校再編問題が論議されました。多くの議員から「問題あり」との発言があり、県教委は当初年度末としていた「実施計画」の作成を「拙速」との声に押され、柔軟に対応するとしました。しかしながら、高校削減計画の「プログラム案」を年内に作成することに固執しました。
 12月14日の文教委員会では、「プログラム案」の年内作成を断念し、再度各高校で説明会を開き地域の意見を聞くなかで「プログラム案」につなげる方向に舵を切りました。
 コロナの影響でこの計画は延期され、議会開会までの2月9日から22日までの間に、県下15会場で説明会・懇談会を開催することに変更しました。一方、県教委はこれに先立ち高校校長会を開き『県立高等学校再編整備計画・実施プログラム(案)』の骨子(案)の中味を説明、各高校では校長から教職員に骨子案の説明が行われました。また、県会議員全員に説明を行うとして、1月23日には共産党県議団に説明があり、15会場の説明会には、この「骨子案」で説明を行うとしていました。
 「答申」の中味は「削減ありきで拙速だ」「地域の声に耳を傾けよ」「少人数学級に対応していない」など県民の強い批判を受けて、「骨子(案)」を提起したものと思われます。
 2月9日から「骨子案」の説明会が行われましたが、10日には「骨子案」が「論点整理」へと、一日にして説明内容が変更されました。県教委の説明では「再編」「計画」という言葉が入れば、もうすでに決まったかのような印象や誤解を与えるから変更したと説明しています。
 この説明は、12月文教委員会で教育長が「案よりも砕けた形で県の考え方を示して、県民の方々(先生方をはじめ地域のみなさん方)から意見を聞いてプログラム案を練り上げていきたい」との答弁と矛盾しませんか。
 「広く意見を聞く」ことや「公平な情報を提供する」という観点からはあり得ないことであり、ご都合主義ではないでしょうか。
 そこで教育長に伺います。12月文教委員会でなぜ突然方針を転換したのか。また、「答申」と「骨子案」のおおきな違いについて。さらに、一日にして「骨子案」から「論点整理」に変更した理由をお聞かせください。

《答弁》 宮﨑教育長
 議員ご質問の点につきましては、昨日の藤本議員のご質問とも重複いたしますが、改めてお答えをいたします。
 これからの県立高等学校の在り方につきましては、今後の深刻な少子化の中で、本県高校教育の課題の改善や教育の質の向上を図るという点と、学校をどのように整備していくかという点の、二つの観点で考えております。
 昨年12月までは、答申に沿った説明をする中で、県民の皆様方から様々なご意見をいただきました。再編は必要だとご理解いただきながらも丁寧な対応を求める声もあり、案の提示までに、県教育委員会の基本的な考え方をお示しする段階を設けました。
 2月の説明会・懇談会では、具体的な案は示さず、意見の分かれる点において論点の整理をしつつ、あくまで意見を聞くことを主眼に、各会場の状況に応じて、丁寧に説明をしてまいりました。
 県教育委員会では、広く意見を聞き、検討を重ねながら進める姿勢で一貫しており、そのような対応の中で、県民の理解は着実に進んでいると感じております。今後も、県民の信頼・信用を大切に、取り組んでまいります。

《コメント》杉山俊雄 県議
 2月の説明会・懇談会から、「論点整理」に変わったといいますが、共産党県議団には骨子案を説明し、これで説明会を行うとしていました。
 教育長は12月文教委員会で「案よりも砕けた形=具体的なものを示して、意見を聞いて、プログラム案を練り上げていきたい」と言っていましたから、「骨子案」で具体的なことを説明しにきたと思っていました。それが一夜にして「骨子案」から「論点整理」に変わるというのは信じがたいです。
 丁寧に説明しすぎて、「意見を聞くことを主眼に」はお忘れになったように感じました。

(2)「骨子案」の問題点について
《質問》杉山俊雄 県議
 今回の「骨子案」には地域の声が一定反映され、「今ある32校の県立高校を充実させ、可能な限り存続」させ、「自宅から通学可能なところに高校を確保」するという再編整備の基本的な考え方が示されています。
 また、「適正規模6学級」については目標であるとした上で「4~8学級に収まるような再編整備をめざす」とし、「少人数学級の実現や教育環境のおおきな変化には計画を修正し、柔軟に対応」するとしています。
 しかし、「骨子案」には色々な問題点があります。その1つ目は、「特に期待される使命を達成するため」に導入される「仮称・特任高校」を作ることです。「答申」には「旧帝国大学や医学部といったいわゆる難関大学への進学実績について、近隣府県に比べてかなり低い状況にある」との認識が示され、難関大学に入る少数の子どもを教育するという点では、今回の「骨子案」も「答申」と大差ないものと思われます。「仮称・特任高」を目指して受験競争が激化し、高校間にさらなる格差が生まれるのではないでしょうか。
 2つ目の問題点は、県立高校32校を7区分し、「役割や使命を明確化」していることです。教育行政が高校の役割・使命を明確化し、「特色化」を計ることは、意図しなくても高校を格付し、序列化につながるもので、ゆがんだ高校教育観を県民に植え付けかねません。「全県一学区制」の導入以来、地域外の高校へ通学する生徒が増えるとともに、高校間格差が深刻になっています。行政による「特色化」はその状況にお墨付きを与え、拍車をかける恐れがあります。
 3つ目は県教委は「今ある高校をできる限り存続」といっていますが、今回の「骨子案」でも生徒減を理由に多くの学校を削減するであろうことは見過ごせません。
 高校が削減されれば、遠距離通学や不本意入学が増えます。不登校等への教育課題への対応がより困難になることが予想されます。
 生徒急増期は高校新設より学級数増で対応してきたのだから、減少期は高校削減では無く、学級規模の縮小・少人数学級で対応すべきと考えます。
 15年先に30人学級が実現すれば、中学卒業生が2,000人減少しても現在の学級数が必要になります。高校を削減する必要はありません。
 少人数学級の実現は、多くの教職員の配置で、高校生に豊かな学びが保障され、地域コミュニティの拠点となる学校をたくさん残すことにつながります。
 また、小規模な学校では、一人ひとりの個性が育まれ、地域と深く結びつくことで、大規模校と違う学びを保障することが出来ます。そのことによって地域に活力が生まれます。
 4つ目は「地域中核高校」の位置づけです。「長期にわたって持続可能かつ活性化し、地域の高校教育の中核となる学校」としています。文科省は普通高校の機能別分化を進め、「高校魅力化」に新たな競争原理を持ち込んでいます。地域に高校がありながら、「魅力化」で地域外の高校に進学すれば「地域中核高校」といえなくなります。
 「地域中核高校」に位置づけられるであろう粉河高校についていえば、紀の川市の地元4中学校らの進学者は1学年だけで言うと27%です。近くに高校がありながら3割にも満たない子どもしか通っていません。「高校魅力化」で「地域中核高校」を目指し、努力せよというのでしょうか。30年以上も前に粉河高校には地元4中学から98.7%の子どもが進学していました。35年たって何故このような状況になっているのでしょうか。
 以上骨子案の問題点について述べてきました。これら4点について県教委の見解を求めます。

《答弁》 宮﨑教育長
 議員のご質問4点は相互に関連するものであり、今回の再編整備を進める上で、県教育委員会が意を尽くしている部分でありますので、今後の県立高校の教育の在り方について、包括的にお答えいたします。
 各地域において中核となる高校は、主に普通科教育を希望し、多様な進路希望を有する生徒を対象にした学校とすることを想定しています。こうした高校においては、多様性や活力ある学校生活を可能とするため、一定の規模を必要としますが、その学校内では、10人程度の少人数学級や通級による指導を行うほか、大学進学の希望を叶える教育課程や科目選択を担保し、地域で存在感を発揮する学校だと認知していただけるよう取り組んでいきたいと考えています。
 一方、工業や商業などの専門教育や特色化した教育等を希望する生徒も少なからずおります。こうした教育を行う様々な高校を展開することも重要だと考えております。
 昨日の藤本議員のご質問にお答えしたとおり、地域の中核となる高校と、特色を明確にした全県的な高校は、中学生の進路希望に即したものであります。各学校の特色化を図り、その特色に基づいた進路選択を促すことこそ、議員ご指摘の、高校の格付け・序列化の改善に繋がるものと考えています。
 高校の再編整備は、将来にわたって充実した高校教育を保障するための方法であり、大局的に考えなければならないテーマです。議論を今ある高校の存廃に終始させることなく、まして30人学級のように、法整備の行方も不透明な仮定の話で論じることなく、現実的な再編整備の考え方をもって、和歌山の将来を担う子どもたちに、豊かで確かな教育を継承するという観点で進めていく必要があると考えております。

《コメント》杉山俊雄 県議
 地域中核・地域特性など高校を7区分し、「特色化」することが中学生の進路希望に即したものであると言いますが、生徒は普通科希望が多いのです。進路希望に即した区分になっていません。また県教委は、各学校の特色化に基づいた進路選択を促すことこそ、高校の格付け、序列化を大きく改善できると言っていますが、真逆です。「促す」とは「せき立てる」「仕向ける」という意味です。すなわち、中学校教師に7区分の高校へ生徒を振り分けよと言っているようなものです。生徒が主体的に進路を切り開くものになっていません。
 学業の専門性を追究する全県的な特色を明確にした高校とは「特任高校」のことです。特別の任務、すなわち難関大学進学を目指す高校です。これを頂点に受験競争がさらに激化します。

(3)高校全員入学と全県一区制の見直しについて
《質問》杉山俊雄 県議
 生徒減少期だからこそ、地域の衰退に拍車をかける高校削減ではなく、少人数学級を見据えた高校の存続が求められます。
 現在、希望すればすべての子どもが高校に進学できる状況にあります。だからこそ高校の選抜制度をやめて、近くの高校に進学できる体制を整えることが望まれます。これこそが戦後の教育改革で掲げられた「高校全員入学」と「高校3原則」(学区制、男女共学、総合制)ではないでしょうか。
 かつて文部省は「高校全員入学」を方針に掲げていました。1947年の「新制高等学校望ましい運営の指針」には、「新制高等学校は、その収容力の最大限まで、国家の全青年に奉仕すべきものである」として全入を謳っています。
 また、選抜制度については「一部の人々は新制高等学校は、社会的経済的および知能的に恵まれたものからよりぬいた者のためにのみ存在するきわめて独善的な学校であるべきと実際に信じていた、この考えに同意するようではいけない。選抜しなければならない場合でも、やむをえない害悪であって、経済が復興して適当な施設を用意することができるようになれば、直ちになくすべきものである。」(文部省学校教育局『新制中学校・新制高等学校望ましい運営の指針』1947.4.10)として、選抜制度を否定しています。
 世界第3位の経済大国の今こそ、「害悪」である選抜制度をなくし、すべての子どもに高校教育を無償で保障すべきではないでしょうか。
 また、高校3原則についていえば、全県一学区制が最大の問題です。2003年に全国に先駆けて、中学区制を撤廃して全県一区にしました。学区撤廃で受験競争が過熱し、高校間格差が拡大してきました。高校の「魅力化・特色化」で新たな競争原理を持ち込むのではなく、全県一区制を見直し、通学費や通学時間の負担が少ない地元の高校で安心して学ぶことが出来る制度に改善すべきではないでしょうか。
 高校の存続は地域の持続可能性と不可分な問題です。トップダウンではなく、高校生・保護者・教職員・地域住民の願いや自治体の意見が反映される学校作りを支援し、時間をかけて県民的な論議を、長いスパンで取り組むことを県教委に期待します。そこで伺います。高校再編問題については県民的な論議を重ね、長いスパンで取り組むこと。また高校全員入学と全県一区制の見直しについて県教育委員会の見解を求めます。

《答弁》 宮﨑教育長
 今後の本県高校教育の在り方につきましては、行き詰まった状況になる前に、長期のスパンで検討し、計画的に取り組む必要があると考えております。
 再編整備を含む、高校教育の在り方を考えるにあたっては、きのくに教育審議会の委員をはじめとする有識者や、各方面の方々との議論や寄せられたご意見ご要望をもとに、丁寧かつ慎重に進めていくという方針を堅持しており、今後も大事にしていきたいと考えております。
 これまで県は、和歌山の子どもたちの希望に沿った学びを、県内の高校で叶えることができるように、条件整備に努めてまいりました。近年の全日制高校の入学者選抜の出願倍率が0.9倍前後となっていることからも、そのことはご理解いただけるものかと思います。
 昭和50年代から60年代にかけては、中学校卒業生徒数の増加と普通科志向の高まりを受けて、一部地域では地元の高校、普通科へ進学する運動が積極的に行われていたことは承知しています。
 その後、平成の時代に入り、生徒数の減少と軌を一にして、多様な普通科系教育を求める希望が広まったことを背景に、通学区域が撤廃されました。
 少子化がさらに進んだ今日、通学区域を再び設定しても、30年以上前の状況に戻ることはありえず、却って住民の流出や県外高校への進学など、新たな深刻な問題が生じることが懸念されます。
 今求められているのは、地域の中学生や保護者から信頼され、期待される高校を各地域に整備することであり、そのことが、将来にわたって地域の持続可能性を高めることに繋がると考えます。
 県教育委員会や学校関係者が、その地域で教育を受けたいと考える全ての生徒を受け入れ、興味関心や進路希望に応じた教育を行う、地域の中核となる高校の整備に真っ向から取り組むべきであり、今回の再編はその契機となると確信しております。

《要望》杉山俊雄 県議
 地域で教育を受けたいと考える全ての生徒を受け入れ、興味関心や進路希望に応じた教育を行うよう取り組む=全入や学区の見直しも視野に、再編整備を進めていってほしいと要望しておきます。


3.メタンハイドレート事業について
(1)調査の進捗状況と商業化の目途について
《質問》杉山俊雄 県議
 県は2月15日に県立向陽中学校で、将来を担う若い世代にも関心を持ってもらうため、次世代のエネルギー資源と言われるメタンハイドレートに関する出前授業を開催しました。内容は「メタンハイドレートと和歌山県沖での調査」と「燃焼実験と新エネルギー」についてでした。大変興味深かったのですが、参観できなくて残念でした。
 教師時代、ドライアイスを使用して、試験管内でプロパンガスを液化させる燃焼実験を行いました。試験管の温度によって沸騰が変化し、炎が大きくなったり小さくなったりする場面で歓声が上がります。プロパンガスの沸騰を観察させるのに大変いい教材だったことを思い出しました。
 メタンはCO2排出量が石油の半分で、成分に硫黄や窒素を含まないので大気汚染がなく、メタンハイドレートは新エネルギー源として注目されています。
 メタンハイドレートは天然ガスの主成分であるメタンをカゴ状の水の分子が取り囲んだ固体の物質で、低温高圧の海底下や海底面および永久凍土下に存在します。大陸周辺の海底に分布している堆積物の特徴は非常に細かい粉砕物や鉱物粒子などの他に、有機物や有孔虫などの生物遺骸が含まれる海底泥質堆積物です。
 日本近海には世界有数のメタンハイドレート埋蔵量があり、西日本の南海トラフに最大の推定埋蔵量を持つとされています。日本海側には海底表面に純度が高く塊の状態で存在していることが海洋研究開発機構などの調査で分かっています。
 特に南海トラフなど太平洋側のメタンハイドレートは、分子レベルで深海における泥や砂の中に混溜しており、探索・採取がきわめて困難であると言われています。
 現時点においても有効な採掘方法の確立には至っていません。回収方法については様々な提案がされていますが、解決しなければならない数々の問題が存在しています。
 和歌山県は平成24年度からメタンハイドレート開発の促進を目指して、「表層型メタンハイドレート賦存状況調査」を毎年実施しています。メタンハイドレートが存在する特徴的な地形および複数のプルームを確認し、その海底下にメタンハイドレートが存在する可能性があるとしています。
 表層型メタンハイドレートとは深海表層堆積物中に塊状・脈状・粒状で存在するメタンハイドレートで、メタンプルームとは海底から立ち上るメタンガスの気泡密集帯で、メタンハイドレート探査のよい目印となります。
 県では漁業調査船「きのくに」の魚群探知機を使用して、毎年200万円ほどの予算で調査が行われています。その調査の進捗状況と商業化の見通しにつて、商工観光労働部長にお伺いします。

《答弁》 商工観光労働部長
 メタンハイドレートの賦存(ふぞん)状況に関する調査の進捗状況につきましては、平成24(2012)年より漁業調査船「きのくに」で実施しており、これまでの調査により、串本沖においてメタンハイドレートの存在を強く示唆する気泡の柱、いわゆる、プルームが観測されているところであり、さらに範囲を広げて調査を進めているところであります。
 商業化の見通しにつきましては、国は「海洋基本計画」に基づき、令和9年度頃までに、民間企業が主導する商業化に向けたプロジェクトが開始されることを目指しており、現在、大学・研究機関等と事業参入に関心を持つ企業等が連携して、生産技術の研究開発等が進められています。

《コメント》杉山俊雄 県議
 令和9年の商業化プロジェクト開始を目指すということなので、本格的に商業化されるまでには、まだまだ遠い道のりであることが分かりました。

(2)地球温暖化を加速し脱炭素社会に逆行する
《質問》杉山俊雄 県議
 大気中のメタンは二酸化炭素の20倍を超える温室効果があると言われています。アメリカの地質調査研究所は、メタンハイドレート開発によって発生するメタンのうち回収しきれずに大気中に放出されるメタンが気候変動を加速する可能性があると警告しています。一方、メタンハイドレートは放置したままでも海水温の変化や海流の影響で僅かずつメタンを乖離し、海中から大気中に放出されてしまうため、積極的に開発し、利用して温暖化効果を抑制すべきとする意見もあります。しかし現在のところ技術的には多くの課題があり、採掘はきわめて危険な行為であると言われています。
 地球温暖化が進むと海水温が上昇し、これまで海底で安定状態にあったメタンハイドレートからメタンが乖離され大気中に放出されます。さらなる温暖化の進行で多くのメタンが吐き出され、悪循環を起こすことが予測されています。
 環境省は今の地球温暖化が抑えられなかったら2100年の夏の天気予報では、日本列島は沖縄を除いてすべて最高気温40度以上で、大阪では42.7度と予想しています。 また台風は巨大化し、「中心気圧870hPa、瞬間最大風速90㍍」のスーパー台風がどんどん襲ってくると予測しています。すでに産業革命時と比較して地球の平均気温が1度あがってしまっています。
 これを「パリ協定」では「1.5度以内」に押さえ込まなければなりませんが、現在提出されている各国の目標の合計では、21世紀末には3度上がると予測されています。灼熱地獄のような地球になってしまいます。待ったなしの対策が求められます。
 政府は2050年に炭素排出量を実質ゼロにすると宣言しました。大量に排出する発電産業も転換を迫られています。炭素排出をゼロにするには、ほとんどの発電所を再生可能エネルギーにしなければなりません。ところが、政府の「グリーン成長戦略」で打ち出したのは、50年時点での参考値で、CO2回収を前提とした火力発電所と危険な原子力発電所の合計で30~40%を維持、肝心の再生可能エネルギーは50~60%という低さです。
 自然エネルギー財団のまとめによると欧州などでは、2050年を待たずに2030年の節目ですでに高い目標が掲げられています。スペイン74%、ドイツ65%、アメリカのニューヨーク州70%などです。日本の2030年における再生可能エネルギーの発電比率目標は22~24%と低さが際立っています。
 メタンは石油や石炭と同じように化石燃料の一種で、再生可能エネルギーには含まれません。炭素排出ゼロ社会を目指すのであれば、メタンはCO2排出量が半分であっても化石燃料であることには変わりがありません。今優先されるべきは、再生可能エネルギーへの転換を大規模にすすめることではないでしょうか。商工観光労働部長の見解をお伺いします。

《答弁》 商工観光労働部長
 メタンガスは、そのものが温室効果の高いものですが、プルームとして自然に発生しているものであるため、そのまま放置するよりは、それをエネルギーとして活用する方が合理的と考えられます。また、海底からメタンハイドレートを回収する際に湧出するメタンガスも回収できるよう、海底面にドーム型の膜構造物を設置する技術の研究も行われています。
 そのままにしますと、メタンが大気に出てくるものと思われます。その上、メタンとC02では、地球環境に及ぼす効果も異なるものと考えられています。
 メタンハイドレートは、石炭や石油を燃やすよりも、C02排出量が約30%少ない上、日本の周辺海域に相当量存在すると言われており、我が国にとって貴重な国産資源といえます。
 本県としましては、国の「グリーン成長戦略」の動向を注視しながら、再生可能エネルギーや水素分野を引き続き推進していくとともに和歌山県沖でメタンハイドレートの開発が行われれば地域の発展に大きく寄与するものと考えられるため、今後もメタンハイドレートの調査を継続してまいりたいと考えています。

《コメント》杉山俊雄 県議
 3月2日、国連事務総長は温室効果ガスを多く排出する石炭火力発電について、2030年までに段階的に廃止するよう訴えています。6月のG7首脳会議までに具体的な計画を示すよう要求しています。菅政権は排ガスゼロを掲げながら、石炭火力の新増設、原発再稼働に固執しています。対応がせまられるのではないでしょうか。
 パリ協定の1.5度目標を達成するためには、石炭火力発電からの段階的撤退こそ唯一の重要なステップだと訴えています。目標を達成しないと、地球は「宇宙のオアシス」から灼熱の星になってしまいます。次世代に責任を持って引き継げません。
 県は、今後も化石燃料を一定程度活用せざるを得ない状況であるから、メタンハイドレートを採掘し、火力発電もやむを得ないと言っています。何が何でも目標を達成し、次世代に責任を果たすという気概が感じられません。
 また、メタンハイドレートを採掘するのに必要なエネルギーを1とすれば、そこから得られるエネルギーは1に満たないという主張もあります。採掘すればするだけ赤字になります。商業化には長い長い道のりと大変なリスクがあるのではないでしょうか。
 2030年までに段階的に廃止を、との訴えに背を背けることになります。和歌山県は、自然豊かで太陽光、小型水力発電、風力発電、波力発電、バイオマス等、再生可能エネルギーの資源の宝庫です。コージェネレーションシステムなど省エネを活用しながら、積極的に地域で必要なエネルギーを作り、地域内で消費する、地産地消による再生可能エネルギーに転換していかなければなりません。全国に先駆けて、和歌山県がそのリーダーになることを期待します。



宮﨑教育長の答弁を聞く、杉山俊雄県議(左)
  2021年2月議会   杉山俊雄プロフィール、質問一覧
  日本共産党県議団HOME