2021年6月県議会 高田由一 一般質問 概要記録

   録画中継

2021
616
1.新型コロナウイルス感染症対策
(1)ワクチン接種の状況
(2)抗原検査キットの活用状況
(3)事業者への支援について
(4)国制度の周知について

2.災害時の福祉避難所の積極的な活用と個別避難計画
(1)福祉避難所の指定状況
(2)個別避難計画について

3.高校生の就職活動における一社推薦制度について

4.グリーンスローモビリティの県内での活用

5.サイクリングの安全対策


1.新型コロナウイルス感染症対策
(1)ワクチン接種の状況
《質問》高田由一 県議
 最初に、新型コロナウイルス感染症対策のワクチン接種の状況についてうかがいます。
 ワクチン接種が始まり、医療従事者に続き、高齢者への接種がすすめられています。当初は予約方法の問題などで現場の市町村はたいへんな混乱と苦労がありました。いまでも過重な仕事が続いています。そんななかでも和歌山県は接種が進んでいるということで、この間の県当局、市町村の職員、地域の医師や看護師のみなさまのご努力に心から敬意を表したいと思います。
 さて、このワクチンですが、新型コロナの発症や重症化を防ぐ効果は確認されているものの、感染そのものを防げるかどうかはわかっていません。そんななかデルタ型と言われる新たな変異株が不気味に拡がってきています。ワクチンによる集団免疫が日本全体に広がるにはまだまだ時間がかかります。接種を済ませたから安心ということではなく、従来の感染対策や検査体制のさらなる充実は予断なく進められなくてはならないと思います。この点で私ども日本共産党はいまからでも東京オリンピック、パラリンピックは中止すべきだと考えていることを表明しておきます。
 そのうえでワクチン接種の状況についてうかがいます。午前中の議論で、高齢者への接種状況や接種場所へ行けない人への対応などがわかりました。そこで重複を避け、私なりの視点とこの間、高齢者施設等のみなさんから聞いたご意見をもとにうかがいたいのは、施設の職員への接種状況です。この間、クラスターの発生した入所系施設や通所系のデイサービスでは、外部からのウイルス持ち込みが原因となってきました。それを防ぐためにも入所系、通所系あるいは訪問系を問わず施設の職員へのワクチン接種も急がれると思いますが、どのような状況になっているでしょうか、福祉保健部長の答弁をお願いします。

《答弁》 福祉保健部長
 高齢者が入所する施設の従事者は、高齢者に次ぐ基礎疾患のある方と同じ優先接種の対象ですが、施設内のクラスター対策の重要性から、入所者と同時にワクチンを接種することが認められており、多くの高齢者施設では、入所者と従事者の同時接種が行われています。
 現在、高齢者が入所する施設については、約6割の施設において1回目の接種を終え、今後、従事者も含め7月中の完了を予定しております。
 また、通所や訪問系サービスの従事者についても、県ではクラスター対策の観点から早期の接種が必要と考え、市町村に対し、地域の実情に応じて優先接種対象にできるとの考えを示したところであり、現在、接種が進んでいるところです。

《要望》高田由一 県議
 通所系や訪問系も優先接種できるとのことでしたので、ぜひ推進をされたいと思います。

(2)抗原検査キットの活用状況
《質問》高田由一 県議
 次に、県が医療機関や福祉施設などに配布をした抗原検査キットの活用状況についてうかがいます。
 この抗原検査キットは、正確さはPCR検査に若干劣るものの、感染リスクも少ない検体採取方法で現場ですぐに結果がわかることから、今年2月議会の補正予算では、8万8千回分のキットを購入し、高齢者施設や障害者施設など各所に配布がされました。この使い方としては、新規に施設入所された方や、ちょっと調子の悪くなった職員などに使うという趣旨でした。
 それが第4波をうけ、4月27日、知事が記者会見をされ「方針を変えた」と表明、高齢者施設で働く職員に対し、無症状の人も対象に一週間に1回、検査をしてくださいとなりました。特に、5月を検査の強化期間ということで取り組まれ、配布したキットは16万回分を超えていると聞きます。これだけ大量の検査キットを使ったスクリーニングの方針は和歌山県が初めてではないかと思います。
 新型コロナウイルスの社会的な幅広い検査については、これは前の福祉保健部長とも昨年12月議会で議論しました。私は成功してきた和歌山方式とあわせて、とくに高齢者施設での社会的検査が大切だと強調しました。今回、それがPCR検査でなく抗原検査キットという形ですが実施されたことは大きな前進だと考えます。
 そこで、抗原検査キットを使った無症状者への検査に踏み切った理由、その後の施設での活用状況、成果など福祉保健部長の答弁をお願いします。さらに、5月の検査強化期間は終わりましたが、障害者施設を含む高齢者施設等への今後の対応はどうなるでしょうか。あわせて答弁をお願いします。

《答弁》 福祉保健部長
 高齢者は新型コロナウイルスに感染した場合に重篤化する恐れがあり、また、高齢者や障害者が集団生活する施設等では集団感染のリスクがあるため、県では施設等に対し、手洗い、手指消毒、マスク着用、検温等の基本的な感染予防対策の徹底を指導してきたところです。
 加えて、本年3月から、施設等への新規入所や職員が体調に不安がある、あるいは仕事でやむを得ず県外を訪問した場合に、抗原検査キットを用いて迅速に検査できるようにしたところです。
 ところが、第4波におけるとりわけ変異株の影響により感染者が急増し、高齢者施設等で集団感染が複数件発生したことを踏まえ、感染をより早い段階で発見するため、4月末からは、特に高齢者施設等の職員が1週間に1回、定期的に検査できるよう強化し、県から各施設等に対し抗原検査キットを配付しました。
 その際には、検査強化の趣旨や具体的な検査方法の説明動画等を県ホームページに掲載するなど、各施設等で検査が円滑かつ適切に実施できるよう、丁寧に説明しながら、感染拡大防止の徹底を指導してきたところです。
 その結果、これまでに少なくとも職員5名に陽性反応があり、医療機関でのPCR検査の結果、3名は陰性となったものの2名の陽性が確定し、速やかに入院につなげるなど施設内での感染拡大を未然に防ぐことができたものと考えております。
 なお、感染者数の減少や病床使用率の低下など状況が改善してきたことから、6月からは従来の体調に不安がある職員等を対象に随時検査を行う方式に戻したところです。
 県では引き続き、基本的な感染予防対策はもちろんのこと、より効果的に抗原検査キットを活用し、施設等への感染の持ち込みや感染拡大の未然防止の徹底を図ってまいります。

《要望》高田由一 県議
 必要とあればすばやく高齢者施設に限らず、活用していただけるよう要望しておきます。

(3)事業者への支援について
《質問》高田由一 県議
 次に、新型コロナ感染症の影響を受ける事業者への支援についてうかがいます。
 まず、県の制度として実施した和歌山市内飲食店への時短要請協力金の給付状況ならびに飲食・宿泊・旅行業給付金の状況についてお示しください。
 あわせて、6月に追加される予定の飲食・宿泊・サービス業等支援金の対象業種はどのように考えておられるでしょうか。
 さらに、県の給付金は、対象期間のうち一定以上の売上があることが要件になっていますが、この売り上げ要件にひっかかって支援の対象にならない事業者もいらっしゃいました。制度の改善をしてほしいという声にどうこたえられますか。商工観光労働部長の答弁をお願いします。

《答弁》 商工観光労働部長
 和歌山市内の飲食店を対象とした「営業時間短縮要請協力金」については、6月10日時点で約2,100件の申請を受け付け、そのうち約200件の給付を行ったところです。
 また、本年の2月定例会にて議決をいただいた「飲食・宿泊・旅行業給付金」については、6月10日時点で約3,000件の申請を受け付け、そのうち約2,000件の給付を行ったところです。
 本議会に上程している「飲食・宿泊・サービス業等支援金」の対象業種としては、新型コロナウイルス感染拡大「第4波」による影響が特に大きい飲食業や宿泊業に加え、それらに関連する卸売・小売業や対事業所サービス業などを主な対象業種と考えています。
 売上要件については、産業施策として実施をするという観点から、「飲食・宿泊・旅行業給付金」においては、2か月間で、15万円以上の売上を要件としているところであり、本議会に上程中の「飲食・宿泊・サービス業等支援金」についても一定の売上要件を設けていく予定です。

《要望》高田由一 県議
 今後も一定の売上要件を設けるといわれましたが、事業者には年金と事業収入をあわせて生活しているという方々もいます。私は、営業実態があればこの売上要件は必要ないのではと思いますので、今後の検討をよろしくお願いします。

(4)国制度の周知について
《質問》高田由一 県議
 次に、国制度の周知についてうかがいます。
 相次ぐ緊急事態宣言を受けて、国のほうでも事業者への各種支援策がつくられました。この間の国の事業者支援策でもとくにわかりにくかったのが、1月の緊急事態宣言にともなう一時支援金という制度です。昨年や一昨年と比べて売上が半減以下になっていれば個人で30万円、法人で60万円が最大支給されるということです。緊急事態宣言の影響を緩和する制度としてつくられましたが、和歌山県内の業者でも宣言地域と取引がある場合や、旅行関連事業者については対象となりました。旅行関連事業者とは、制度紹介のホームページで確認すると飲食事業者(昼間営業等の飲食店等)、宿泊事業者、旅客運送事業者、自動車賃貸業、旅行代理店事業者、文化・娯楽サービス事業者、小売り事業者(土産物店等)など、となっていますが、実際は明示されていない幅広い業種でも給付されている状況です。
 この支援金の申請は5月末で締め切りとなったため、もう今さら言っても遅いのですが、県内事業者でももっと活用ができた制度であると思われます。この制度については地域の商工会の会員さんらには比較的情報が伝わっていましたが、そうでない場合は本当に知らない人が多くありました。この一時支援金制度は終了しましたが、4月からの緊急事態宣言をうけ、月次支援金という新たな制度がつくられました。
こうした国制度をしっかり県内事業者も利用できるよう周知が必要です。そこで商工観光労働部長にうかがいます。県として、国制度の周知の状況について、どう考えておられますか。答弁をお願いします。

《答弁》 商工観光労働部長
 国の支援制度については、国のホームページでの掲載や商工会・商工会議所などを通じて、周知が図られているものと認識しています。
 県においては、独自でとりまとめている「新型コロナウイルス感染症に係る支援策」にも国制度を含めて掲載し、県のホームページなどで周知するとともに、県内の商工会・商工会議所などの経済団体や市町村にも配架と周知をお願いしているところです。
 また、各種清報をメール配信する商工通信や県独自の制度である産業別担当者などを活用し、県内事業者への周知に取り組んでいます。
 今後も、国や県の支援策を積極的に周知するとともに、様々な意見を国に伝えるなど、より多くの事業者が活用できるよう取り組んでまいります。

要望》高田由一 県議
 国に対して制度の周知とあわせて、知事会も求めているように、持続化給付金などすべての業者を支援する給付を要望しておきます。


2.災害時の福祉避難所の積極的な活用と個別避難計画
(1)福祉避難所の指定状況
《質問》高田由一 県議
 次に、災害時の福祉避難所の積極的な活用と、個別避難計画についてうかがいます。
 先日の地方紙でも紹介されましたが、白浜町では、ホテルと協定を結び、災害時に高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を必要とする人が避難をする福祉避難所を新たに指定しました。
 福祉避難所については、今年に入ってその運用や位置づけが大きく見直されています。内閣府の「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」が改正されました。この改正により、これまでは二次的避難所とされてきた福祉避難所への直接避難も促進していくことになりました。
 背景には、近年の災害をふまえた政府内での検討があります。例えば、令和2年7月の豪雨災害では、死者のうち約79%が65歳以上の高齢者だったことなどの分析があります。
 また、高齢者や障害者などの要支援者の家族からは、普段行き慣れていない一次避難所には、避難すること自体に無理があることが言われ続けています。さらに、この間の福祉行政の働きかけのもと、施設でのケアから地域でのケアが増えてきており、地域で暮らす高齢者、重度の障害者が増えてきていることもあります。
 最近の災害では、福祉施設自体が河川の氾濫や土砂災害に襲われる事例も多々あります。県の調べによりますと、すべての高齢者や障害者の県内入所施設863施設のうち、各種ハザードマップ等で危険な地域内に施設が入っている状況は、津波警戒区域では約3%、水防法に基づく洪水浸水想定区域では約40%、土砂災害警戒区域では約9%ということで、かなりの数の施設がハザードマップ内の危険な地域に存在します。場合によっては、福祉施設全体が避難することも想定しなくてはならない状況です。福祉避難所の位置づけはますます重要だと考えます。そこで福祉保健部長にうかがいます。
 県内の福祉避難所の指定状況ならびに過去3年間の災害時に開設された実績はどうなっているでしょうか。また現状では県有施設で福祉避難所に指定されているのは1カ所のみと聞いていますが、もっと県有施設を活用していってはどうでしょうか。答弁をお願いします。

《答弁》 福祉保健部長
 福祉避難所の指定状況につきましては、令和2年12月1日時点で県内全市町村において264か所となっております。
 また、過去3年間の福祉避難所の開設実績は、平成30年度は3つの台風の到来に伴い14か所、令和元年度は2つの台風に伴い4か所の開設かおり、令和2年度は、開設実績がありませんでした。
 次に、県有施設の福祉避難所としての活用につきましては、まずは、最寄りの避難所に避難して災害から命を守ることが前提となりますが、地域や要支援者の実状を踏まえた市町村からの要請があれば、検討してまいります。

《要望》高田由一 県議
 例えば熊本市では、福祉子ども避難所として、市内にある特別支援学校や盲学校など8つの国立、県立施設を福祉避難所として指定し、在校生やその家族が直接避難できるようにしました。和歌山県でもよろしくお願いします。

(2)個別避難計画について
《質問》高田由一 県議
 次に、個別避難計画についてうかがいます。
 先ほどもふれましたが、災害時に福祉避難所へ直接避難も可能とされました。それを可能とするためには、あらかじめ誰がその福祉避難所を利用するのか把握する必要があります。そうでないと、障害や体の特性にあわせた適切な避難生活ができないからであります。また、福祉避難所に一般の避難者が押し寄せるということになっても困ったことになります。
 災害時、要支援者を守り、福祉避難所を円滑に活用するためにも不可欠なのが、一人ひとりの状況に対応した個別避難計画と言われる計画です。今年5月の災害対策基本法の改正により、個別避難計画の作成が市町村の努力義務とされました。
 この個別避難計画の作成では今、大きな動きがでてきています。それは、普段から要支援者の介護や支援にたずさわっているケアマネージャーなどが防災担当と連携をとって、個別避難計画をつくる取り組みです。災害時ケアプランという名称で、普段のケアプランとあわせて災害時にどう避難し、生活を維持するかをあらかじめ福祉の専門職がかかわって決めておくと言うものです。都道府県レベルでは兵庫県で「防災と福祉の連携モデル事業」として先行的に取り組まれています。そこでうかがいます。
 避難行動要支援者の個別避難計画の具体化状況はどうなっているでしょうか。主体は市町村ですが、県としてどう支援の取り組みをしていくのか、福祉保健部長の答弁をお願いします。

《答弁》 福祉保健部長
 「災害による犠牲者ゼロ」を目指す本県では、避難行動要支援者名簿や個別避難計画を早期に作成することが極めて重要と考えており、毎年、市町村主管課長会議や市町村ヒアリングを開催し、市町村に対してそれらの作成について強く働きかけてきたところです。
 その結果、令和2年10月1日現在、県内全市町村で要支援者名簿は作成されており、個別避難計画についても、県内23市町村で作成が進められているところですが、市町村の進捗状況には開きがあり、8割程度作成できている市町村もあれば、未だ着手できていない市町村もあります。
 今後、さらに個別避難計画の作成を進めるためには、議員ご指摘のとおり、日頃からケアプラン等の作成を通じて避難行動要支援者本人の状況をよく把握している介護支援専門員や相談支援専門員など、福祉専門職の参画を得ることも有効な手段の一つであると考えます。
 また、それ以外にも、自主防災組織、民生委員等、地域住民の状況をよく知る団体との連携も重要です。県としても、市町村に対し、こうした団体と連携して計画を作るよう促すとともに、福祉専門職や民生委員等に対しても、研修等の機会に個別避難計画の作成方法等について説明してまいります。
 さらに、今後は、ハザードマップ上、危険な場所に居住するなど、計画作成の優先度が高い方については、概ね5年程度で全ての計画が作成できるよう、市町村に工程表の作成を促し、その進捗状況をしっかりと把握しながら、個別避難計画の作成が進むよう、強く働きかけてまいります。

《要望》高田由一 県議
 私も地域の自主防災会の運営に携わっていますが、個別避難計画を見ても、要支援者を支援する人が家族や身内だけの場合が多いのです。これでは、地域の人が普段から要支援者に目が向くことになりません。また、市町村でも福祉と災害担当の連携が人手不足もあり、なかなか難しいようです。実際に役に立つ個別避難計画になるよう、よろしくお願いしたいと思います。


3.高校生の就職活動における一社推薦制度について
《質問》高田由一 県議
 つぎに高校生の就職活動における一社推薦制度についてうかがいます。
 高校生の就職活動については主に、企業側が高校を指定して求人をする指定校求人と、公開求人の二通りがあります。例年9月16日に応募が解禁され、9月30日までは一人一社のみの応募・推薦とし、10月1日からは一人二社まで応募が可能となります。これが現在の制度で、一人一社制とか一社推薦制と言われています。こうした制度により、高校生の就職希望者に対する内定率は、和歌山労働局の調べでは令和元年度で9月末までに67%以上、卒業までに99%以上となっている状況です。
 知事は県民の友5月号で、高校生の就職活動についてメッセジを出しました。高卒で就職した人の離職率が大卒者に比べて高い、その原因は「就職先の決め方にある」と結論づけられています。
 そして「調べてみたら、(中略)まだ学校の一社推薦制度が温存され、それによって生徒の就職活動によって就職先を決めるのでなく、先生の指導で決めているところもあることに気がつきました」として、そのうえで「制度的にも一社推薦制度から生徒の就職活動支援に完全に舵を切りました」という内容になっています。
 こうした結果、今年の見直しにより県内企業に限り、9月16日の解禁日から複数社への応募を可能とすることに変更されました。
 この県民の友の文章を見た高校の就職指導の現場からは、次のような意見が寄せられています。「高校生に求人票の見方を指導したり、生徒の職場訪問を引率したり、生徒の意向を聞きながら応募さきを決めていく。丁寧な指導がなく一方的に就職先を割り振っているような印象になっている。一社推薦制度イコール先生が決めているという結び付け方は飛躍的すぎる」、「生徒たちを、より競争的なシステムに投げ込むのではないか」「高校生の求人は、これまで培われてきた事業所と学校の信頼関係で成り立っている。この制度だと、生徒も業者も困るのではないか」など、かなり厳しい批判の声がでています。
 この議論のきっかけは、政府の規制改革推進会議などでの議論だと考えますが、今年2月に発表された同会議の「高等学校就職問題検討会議ワーキングチーム報告」でも一人一社制、つまり一社推薦制度をすべて見直せとは書いていません。逆に、高等学校卒業者の早期離職の高さの理由が、そうした高卒就職慣行に起因すると断じることはできないとしています。
 知事メッセージでは、高校生についてですが、次のようにも言われています。「就活をさせることにしようということを教育委員会と話し合って決めました。その後、随分離職率は下がりましたが、どうも下がりきりません」と述べられています。知事が就任された平成18年以降、確かにしばらくは高校生の3年以内離職率は下がりました。しかしその後は逆に高止まりしています。
 実はこれは、全国的に同じ傾向で、私は高校生の離職率が上がったり下がったりするのは景気や雇用など全国的な変動のなかで起こったことであり、大学生より高校生の離職率が高いのは、就活の方法のちがいというよりは年齢差によるものだと思います。
 そこで知事にうかがいます。知事は離職率の高さを一社推薦制の影響とみているようですが、こうした認識に至った理由をお示しください。

《答弁》 仁坂知事
 私が知事にならせていただきました当時、大学卒業者はそれほどではなかったんですけれども、就職した高校生がわずか2、3年内に、私としては信じ難いほど多く離職をしていました。離職の差は、これ何だろうなといって色々考えた訳でございます。教育委員会などにお聞きして、色々、個別の意見なんか、どんなんって聞きましたところですね。実は、職場が想像とだいぶ違ったんだとかですね、あるいは、本当は別の業種が希望だったんだけど、先生が指導してくださるから、そうやって決めたんだとか、まあこんなような話が実はたくさんあった訳でございます。私は、経済産業省で就職担当もやっておりましたから、就活ということについての実態、結構よく知っております。相思相愛になったら非常によろしいと、こういうことなんでございます。
 そこでですね、どうも、これは高校生と大学生で、大学生は就活をしますが、就職の決め方に違いがあるのと違うか、というのが私の結論でありました。相手の企業に納得してから内定をもらって就職を決めている、心を落ち着かせて決めている大学生に対して、高校生は、校内で選考された生徒が応募する一人一社制であって、応募先の決定には先生の指導も大きく影響していたかな、という感じでございます。もちろんですね、多くの先生方ができるだけ多くの生徒をきちんと就職させてあげたいという気持ちからですね、本当に好意から校内選考にあたられていた、ということをですね、私は疑ったことは1回もありません。
 しかし、未成年とはいえですね、生徒は17歳とか18歳にもなると自分の就職先としての好みとか、希望とか、あるいは人生の設計とか、なんかあるはずなんですね。できれば行きたいなという職種や企業のイメージもある訳であります。一方ですね、まだ高校生ですから、先生に対しては非常に尊敬しておりますから先生に対する絶大な信頼があるから、先生が善意で、好意から決めていただいた就職先というのはそんなのは嫌だというようなことはですね、なかなか言えないというのも当然なんじゃないかなという風に思った訳でございます。
 それならまず高校生にも大学生のように、希望先、希望する企業を訪問して、それで色々自分の気持ちも確かめたり勉強したりして、それで、かつ企業からもですね、当然、この子はうちで働くのは向いてるかどうかというのを判断しますので、適性を見てもらう、いわゆる就活をさせた方が良いという考えに至った訳でございます。
 そこでですね、当時の教育委員会と徹底的に話し合いをいたしました。教育委員会はですね、やっぱりずっと前からやってたことには自信がありますし、悪い言葉で言うと前例踏襲なんですけど、一生懸命考えている訳ですから、私が言った企業訪問とかそういうのはインターンシップという形でですね、もうすでに実施していますよと、そういう事で、もうそれはやってるやってるというような、そういう答えが多い訳であります。 それで、あんまり、そう言うんで、私はこの実態を見てね、若い身空で、20にも満たないときに職を失ってしまうと、それは自分でやめるということかもしれませんが、そういう現状を是認して、はたして教育者と言えるのですか、というようなことまで申し上げたこともあります。そこでだんだん納得していただいて、平成だいたい21年ごろからだと思いますが、高校生の就職の仕組み、就活を中心にしてやるということで、私は改善されたと思っておりました。
 そこで、学校現場にも、当然、教育委員会から指導していただいております。それで、私はその旨を広く県民に語っていた訳でございまして、行政報告会でもしょっちゅう言っていたし、それから折に触れてテレビなんかでも言っておりましたし、さらにはですね、これはかなり最近になってからですが、高校生向けの就職サマーガイダンスという大集会なんかがございますから、そういう時にですね、諸君、就活をね、一生懸命やって先生が指導してくれると思うから、自分で一生懸命決めるんだよというようなことを語っていた訳です。
 この21年の後くらいからですね、ずいぶん離職率が改善されてきた訳です。よしよしと思っておったんですが、どうも期待したほどではなくて、途中でさっき、議員が高止まりと言われましたが、まあ、そんな感じが若干あって、おかしいなあと思っていたら、実は昨年になって、従来の、つまり、もともとの一社推薦制度が温存されているということを、変わってないということを知った訳でございます。そこで、これは話が違うねといって直していただいたということでございまして、別に、昨年からころっと制度を変えた訳ではなくて、もともと変わっていたというのが現状であります。
 教育委員会の幹部は、就活を中心とする実態の変更と、制度ですね、その矛盾に気がつかなかったということ、あるいは、能力がなかったということだと思っております。その結果ですね、学校現場では高校生の諸君に、どんどん就活をさせて、自ら就職先を考えて、それで決めていこうねというような動きをしている現場と、それから、制度としての一社制度を重く見て、生徒の就活よりもですね、先生による選考を重く見る、そういう現場がたぶん混在していたのではないか、そんな風に思います。おそらくですね、前者の現場ではですね、今回の決定は、そんなものは当たり前だと、ただの制度的な追認だとお考えになったと思いますし、それから、後者の現場ではですね、自分たちの権限を無視するものだというふうに受け止められたんだろうなあというふうに思う訳です。
 しかし、一番大事なことは、就職活動って誰のためかというと、生徒のためでありますので、いくら立派な、あるいは能力のある先生がご指導なさっても、就職による職業生活というのは、実はその生徒のものなのでございまして、生徒がどういう風に自主的に考えていくかということがですね、やっぱり一番尊重されるべきじゃないかなという風に思う訳であります。
 ではですね、なぜ一人一社制度があったのかと考える訳でございます。考えてみると、これは論理と歴史と両方あると思いますが、おそらく企業のためにあるんだろうという風に思います。つまり企業、私も就職活動やってましてねと言ったんですが、就職担当ですね。やっぱりですね、雇う方からいうと、逃げられるのはものすごく困る訳です。したがって、学校が一社推薦制度できちんと保障してくれるというのは、ものすごくありがたい制度なんです。一方ですね、学校や、あるいは生徒の方からいっても、就職難の時代はできるだけ学校に求人を出してもらいたい。協力する学校にはたくさん求人を出す。それから、きちんと割り振りをしてですね、漏れなく多くの子どもたちが就職先に就けるようにしてもらいたい。そういうことが当然その頃あったんで、これは持ちつ持たれつの関係である。
 ところが今はどうかというと、実は就職難ではございません。むしろ求人難の時代でございますから、そんなメリットは学校にとっては多分ないんじゃないかと思います。かつですね、やっぱり大事なことは生徒そのものなんで、企業の論理で就職指導をしてはいけない。生徒本位で就職のお助けを、先生がして差し上げたらいいじゃないかと、こんな風に今思っている訳でございます。
 ただですね、ある生徒が、例えば、人気のある生徒で多くの企業のとこに行って、多くの企業から内定をどんどんもらって、それを隠しておいて、それで、後で裏切るということになるのは、それは信義上の問題としてよくありません。それから、お友達がですね、多分その人が独り占めをするものですから、就職先を失うことになりかねません。したがって、これは、これだと、悩んで、よく考えて、これだと内定もらった企業はちゃんと約束を守って、他のところに浮気をしたりしないということはですね、これは道徳の問題として先生は指導をすべきだと思う訳でございます。道徳の指導というのは、その子どもの将来の人生を考えると絶対に大事なことになるはずなので、それよりもそういう説得の代わりに、―社推薦制度という制度で縛るんだという考え方はですね、そう考える先生がいたらちょっと権力志向的だなとか、全体主義的だなという、なんとなく感想をもつ次第でございます。

《要望》高田由一 県議
 秋田県では、平成15年度から、和歌山県がやろうとしている複数応募制を実施してきました。しかし、その後の10年以上の高校生離職率の推移をみても、全国平均と比べて大きく改善されたようにはなっていません。
 ですから、一社推薦制のみに離職率の原因を求めることは無理があると思います。クライエントというなら一方の当事者である、雇用する事業者も70%以上が今の就職慣行で良いというアンケート結果もあります。
 しかし、高校の現場では、新たな就活制度で動きはじめています。今後、大きな混乱が起こらないよう、学校現場の意見を丁寧に聞いて対応してほしいことを要望しておきます。


4.グリーンスローモビリティの県内での活用
《質問》高田由一 県議
 次に、グリーンスローモビリティの県内での活用についてうかがいます。
 グリーンスローモビリティとは、時速20km未満で公道を走ることができる電動車を活用した小さな移動サービスで、その車両も含めた総称です。(資料
 国土交通省では、高齢化が進む地域での地域内交通の確保や、観光資源となるような新たな観光モビリティの展開など、グリーンスローモビリティの推進を行っています。ジオガイドや観光ガイドとともに、地域をめぐるガイドツアーなどとも相性がよく、観光地にとっても大きなメリットが期待されます。また、平成30年度からは、グリーンスローモビリティの活用検討に向けた実証調査支援事業を始められており、これまでに18自治体での実証実験が行われました。また、石川県輪島市や島根県松江市、広島県福山市などでは、すでに恒常的な運用が開始されています。
 これまで和歌山県内では、こうした実証調査などの取り組み事例はありませんが、身近なところでもバス停や駅などへ自宅から行き来する場合の、いわゆる「ラストワンマイル」で困っている地域が多数あります。
 そこで、こうしたラストワンマイルの課題解消に向け、県としても市町村と連携してこのグリーンスローモビリティの実証実験などの取り組みを進めてはどうかと思いますが、企画部長の答弁をお願いします。

《答弁》 企画部長
 地域における移動手段のあり方については、県では、これまで各市町村を訪問し、地域公共交通の確保に向けた意見交換を実施するなど、市町村と一緒になって検討をしているところでございます。
 議員ご指摘のグリーンスローモビリティについては、環境への負荷が少ないという利点もあり、県外の自治体で運行されている事例も見うけられます。
 しかし、地域交通として活用するにあたっては、初期導入費用が高額で、維持費についても一般的な車両と比較して安価とは言えないなどの課題かあるため、国土交通省が公募をする実証調査支援事業を希望する市町村はない状況でございます。


5.サイクリングの安全対策
《質問》高田由一 県議
 最後に、サイクリングの安全対策についてうかがいます。
 5月31日、千葉県銚子市から太平洋岸沿いを通り、和歌山市に至る全長1,487kmの太平洋岸自転車道がナショナルサイクルルートに指定されました。これまでの関係者のみなさまのご努力に敬意を表したいとおもいます。
 このことが、わかやま800のサイクリングロードとあわせて県内観光の発展につながるよう期待しております。
 一方で、自転車通行量が増えることで、安全対策の強化がこれまで以上に求められていると思います。サイクリストからは、特にトンネル区間で危ない目にあうことが多いとの声が寄せられています。ナショナルサイクルルートの審査委員会でも、走行環境に関する意見として、暗いトンネルへの対策が求められています。ナショナルサイクルルートに指定されたことで、今後、多くのサイクリストが訪れることが考えられますが、ナショナルサイクルルート上の国管理国道の部分とあわせて暗いトンネルについて、県としてどのように安全性向上に取り組んでいくかを、県土整備部長にうかがいます。

《答弁》 県土整備部長
 当該自転車道の走行環境については、矢羽根型路面標示等ル一卜指定に必要な環境は整備されているものの、議員ご指摘の暗いトンネルの安全対策については審査委員からもご指摘されるなど継続的な対策が必要であると認識しています。
 当該自転車道の県内区間323kmには32箇所のトンネルかあり、国管理か17箇所、県管理が13箇所、市町管理が2箇所です。15m程度の短いトンネルもあれば、十分な幅員を有するトンネルもあるなど個々に検証する必要があると認識しています。
 つきましては、国土交通省等と連携しながら、トンネル1つ1つについて、交通量や延長、明るさ、幅員等をサイクリストの交通安全の観点から検証し、追加的な対策の必要性について検討を進めているところでございます。

《要望》高田由一 県議
 ナショナルサイクルルートの環境整備を通じて得られたノウハウを、わかやま800サイクリングロードにも生かしていただき、より良い観光支援、安全・安心なサイクリングについて、がんばっていただきたいと思います。


 
                                                           仁坂知事の答弁を聞く、高田由一県議(右)
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