2022年2月和歌山県議会
 杉山俊雄 予算特別委員会質問 概要記録
 

2022311

1.県産小麦の推進で学校給食パンに安心安全を
(1)グリホサートと界面活性剤POEAの安全性について
(2)県内での小麦の栽培への支援について

2.ゲノム編集食品について
(1)ゲノム編集食品の安全性について
(2)小学校へのゲノム編集トマトの苗の配布計画について


1.県産小麦の推進で学校給食パンに安心安全を
(1)グリホサートと界面活性剤POEAの安全性について
《質問》杉山俊雄 県議
 県産小麦を使って、「安心安全な給食パンを提供してほしい」との思いから質問します。
 まず始めに、輸入小麦に残留するグリホサートについて質問します。グリホサートは農薬の有効成分で主に除草剤として使われています。「ラウンドアップ」という商品名で、世界中で広く販売されています。
 ラウンドアップは遺伝子組み換え作物の登場で、急速に使用量が増加しました。ラウンドアップに耐性を持たせた大豆やトウモロコシなどが開発され、これらの作物以外を枯らす農薬として、使用量が劇的に増加しました。最近では、農家が収穫直前に撒き、植物を枯らして収穫する「プレハーベスト農薬」という使い方が広がっています。日本でも農薬メーカーがこの方法で大豆にグリホサートを使用するよう宣伝をしています。
 グリホサートの健康への影響に関しては「発がん性、環境ホルモン作用、出生異常、生殖系への影響、脂肪肝、自閉症などの発達障害、パーキンソン病、急性毒性としての皮膚炎、肺炎、血管炎」等、日々、国際学術誌に多数発表されています。
 ロンドン大学の研究チームは「超低濃度でも長期間摂取すれば脂肪肝を引き起こす」と発表しています。また国際婦人科連合は「ガンや神経発達障害、先天性欠損症との関連が疑われる」「使用を避けるのは社会的責任である」と使用禁止を勧告しています。
 米国研究チームが行ったラットの実験によると、第2世代は、精巣、卵巣、乳腺疾患が増加し、第3世代では雄に前立腺の疾患、雌に腎臓の疾患が増加し、世代を超えた悪影響が確認されています。
 人の体内にも残留します。米国の尿調査では、遺伝子組み換え作物の導入以降、グリホサートの検出率は5倍に増えています。
 環境への影響も深刻です。土壌細菌に悪影響を及ぼし、土壌の貧困化をもたらすことが、フランス・パリ大学の研究者によって指摘されています。アルゼンチン・ブエノスアイレス大学の研究者は、グリホサートがミツバチの脳や神経系に障害をもたらし、味覚と記憶の両方に影響を与えていることを突き止め、群れの崩壊の原因になり得るとしています。
 グリホサートの危険性について縷々述べてきましたが、それに加え、ラウンドアップに含まれる界面活性剤POEAについての毒性の問題があります。
 フランスのカーン大学のセラリーニ教授は、ラウンドアップの何が枯らすかを実験したところ、グリホサートよりもむしろ添加されている界面活性剤POEA(非イオン系界面活性剤ポリオキシエチレンアミン)の方が良く枯らすことを見いだしました。界面活性剤POEAはラウンドアップの補助成分の一つで、グリホサート単体に比べて、毒性が千倍以上あることを示す研究結果を2017年に発表しました。
 また2018年、ロンドン大学の研究者らも、市販の農薬に含まれる界面活性剤などの補助成分が有効成分よりも毒性が高いとして、補助成分に対する新たな規制が必要とする研究結果を発表しました。
 POEAは、植物の細胞膜を通過するのを助けるために、有効成分のグリホサートとともにラウンドアップに含まれていて、微量でも長年摂取すれば健康障害を引き起こすことが、世界の識者が指摘しています。世界各国ではグリホサートの使用規制、禁止に向けて、多くの国が動き出しています。
 日本では2017年にグリホサートの基準値を緩和しましたが、農水省は2021年以降、使用量の多い農薬については、新たな科学的知見に基づいて優先的に再評価を行うとしています。
 このように、今の段階では農薬ラウンドアップについては、安全性が証明されていません。そうであれば、予防原則の観点からグリホサートやPOEAを含むラウンドアップの使用を禁止すべきと考えますが、農林水産部長の見解をお聞かせください。

《答弁》 農林水産部長
 グリホサートを有効成分とするラウンドアップ等の除草剤は、本県におきましても農地の雑草管理に使用されております。
 除草剤に限らず全ての農薬は、農作物の栽培管理のために散布等するものであり、その使用にあたっては、安全性を確保する必要があります。
 このため、国では、POEAを含むか含まないかにかかわらず、ラウンドアップなど販売される全ての農薬について、人体や環境への影響、作物への残留等に関する様々な試験成績に基づき、安全性の評価を行い、問題がないと判断した場合、農林水産省が適用作物や散布時期、回数等の使用基準を定め、農薬登録をしております。
 県では、ラウンドアップも含め、国において安全性が確認された登録農薬を適正に使用することは、問題がないと考えております。
 なお、委員お話しのとおり、登録農薬の再評価につきましては、本年度から順次取組が始まっており、今後、その進捗状況や結果について注視してまいります。

《コメント》杉山俊雄 県議
 「国が安全性を確認しているので問題ない。農薬の再評価については注視していく」との回答でした。
 しかし、欧米等では「規制・中止」の方向に動いています。
 フランスは昨年末で使用を中止、代替品に変えて除草しています。使用中止農家に2,500ユーロ(約30万円)の税額控除があります。
 ドイツでは、2月にハチ類に有害な農薬禁止法案が閣議決定されました。2024年から完全に禁止されます。
 カナダでは、昨年8月に100種類の農薬の家庭での使用を禁止、商業使用は許可制になりました。
 インドでは、5月にある州内でのグリホサートを全面禁止、ラウンドアップ耐性・害虫抵抗性のGMの栽培を中止しました。
 バイエル社は家庭用ラウンドアップの販売を2022年度で終了します。末期がん患者が、ラウンドアップが原因としてモンサント社(現バイエル社)を訴え、勝訴しました。また、同様の訴訟が数万件、カナダやオーストラリアでも訴訟が相次ぎました。賠償額が多額になるためです。
 健康への影響では、米国で3月、妊娠中に暴露し、グリホサートが多いほど女児の男性化、環境ホルモンへの影響があるとされました。
 デンマークの大学で9月、濃度が鶏の卵の孵化に影響するとされました。
 しかし日本は、グリホサート剤農薬を今年1月に5品目、2月に4品目を登録しました。農薬の再評価についても期待できません。ハチミツの残留基準は0.01ppmでした。輸入ハチミツに0.03又は0.04ppmを検出しました。どうしたかというと、普通は排除します。しかし0.05ppmに緩和しました。あり得ない仕業です。信用できません。誰のための基準かが疑われます。世界のスタンダードに逆行するのが日本の現状です。「県民の命、健康を守る」という観点から、規制すべきです。

(2)県内での小麦の栽培への支援について
《質問》杉山俊雄 県議
 輸入小麦にグリホサートが残留しているので、県産小麦栽培を支援して学校給食に使用してほしいとの願いから質問します。
 日本の小麦の自給率は、わずか13.3%(2018年)です。小麦の輸入は国が管理し、輸入先は3カ国に限定されていて、米国が51%、カナダが32%、オーストラリアが17%(2013年から2017年の平均、農水省)です。3カ国から輸入した小麦をブレンドして、毎年同じ品質を保つようにし、大手製粉会社が小麦粉を作り、その小麦粉から、うどんやパンなどが作られます。
 パンにグリホサート残留値が高いのは、カナダや米国北部の寒冷地で作られた春小麦を使用しているからです。春に種子をまいて秋に収穫する春小麦は、日光をよく浴びグルテンが多くパンの原料に適しています。しかし、雑草や害虫が多い時期で農薬が多く使用されます。その上、プレハーベスト農薬で除草剤の使用が多くなり、農薬の残留が増えます。特に全粒粉パンの残留値が高いのは、胚芽や表皮に農薬が残りやすいからです。国産小麦で作ったパンからは、グリホサートは検出されていません。
 和歌山県は「小麦を作っても製粉所や販路がなく、温暖で地形的にも栽培条件が悪く推奨できる作物ではない」と言います。つまり、助成しないと言うことです。
 しかし「和歌山県農業80年の歩み」によると、昭和15年(1940年)の最盛期には、全県で約8,000haの作付面積(令和2年の水稲よりも多い面積)で、約2万トンを収穫しています。昭和20年代後半までは5,000~6,000haの作付けで、約1万トンの収穫量があります。ガットに加盟する昭和30年代から作付面積が徐々に減少し、昭和38年(1963年)の完全輸入自由化以降激減し、昭和53年(1978年)には5haで12トンになっています。歴史を顧みると、和歌山県で小麦が栽培されなくなったのは気候や地形的な問題ではなく、関税が年々引き下げられ、完全輸入自由化によって、安い小麦が大量に入ってきたからです。
 本格的に小麦栽培が復活するのは2018年からで「学校給食に安心安全な県産小麦パンを提供したい」と一人の農家が立ち上がり、この取り組みに地域の保護者、食育・耕作放棄地対策に取り組む農家らが賛同し、協力し合って年々耕作地を広げ、昨年2市1町で栽培面積約1ヘクタール・2トンを収穫しています。今年は品種を県の気候にあった「せときらら」に統一し、休耕田0.5haを含め3市1町で倍の2haまで拡大し、5月の収穫量4トン以上が期待されます。すべて有機農法・無農薬で栽培されています。
 収穫された県産小麦粉パンは、学校給食会が積極的に買い上げてくれ、昨年11月19日から26日までの間に、和歌山市の小学校と一部中学校、紀北支援学校、海南市の小中学校、日高町の小中学校に提供されています。
 滋賀県では2022年度から県産小麦が100%使用されます。給食パンの原料を自県産にするのは北海道、山口に次いで3番目です。国産を含めると5道県目になります。
 県内では、岩出市が昨年9月から学校給食に、国内産小麦を100%使用しています。
他県では行政やJAが主導して小麦を振興していますが、和歌山県には先ほど述べたように振興政策はありません。圃場整備の整っている休耕田を利用すれば、小麦を広げられる可能性があります。
 そこで、農林水産部長に伺います。
 政府は2030年までに小麦の生産量を108万トンに増やし、自給率を19%に上げる目標を持っています。県での小麦栽培の促進による自給率の向上、休耕田の利用等による環境保全、有機・無農薬による生物多様性、学校給食による地産地消の推進等の観点から、県産小麦の栽培促進を支援すべきと考えます。そうすれば、学校給食パンへの安心安全な県産小麦の使用拡大につながると確信しています。当局の考えをお聞かせください。

《答弁》 農林水産部長
 本県の農業振興は、農業経営の安定化に重点を置いており、そのため、果樹栽培や野菜花きの施設栽培等を中心に、収益性の高い農作物の生産振興に取り組んでおります。
 委員ご提案の小麦栽培についてですが、現在の国産小麦の販売価格は1t当たり57,000円程度で、平均単収は423kgですので、10a当たりの粗収益は約24,000円となり、水稲は約112,000円ですから、小麦の収益は米の4分の1程度になります。
 このため全国では、基盤整備されたほ場で、大型作業機械を用いて効率的な栽培を行うことで低コスト生産を実現し、契約栽培により収益を確保する形で小麦栽培が行われております。
 平坦地が少なく、ほ場整備率が低い本県での小麦栽培は、滋賀県や兵庫県のような大規模化や機械化によるコスト低減等が困難であり、収益性の高い農業経営が望めないことから、これを支援することは難しいですが、本県が進める果樹栽培や野菜花きの施設栽培等収益性の高い品目との複合経営として、各農家の判断により小麦栽培に取り組むことは可能と考えております。

《質問》杉山俊雄 県議
 儲かる農業を支援するというのが国の方針で、知事も関西広域で答弁されました。それは充分、分かっています。
 しかし、農業には多面的機能、環境保全や生物多様性など、価値ある営みがあります。儲からない農業にも支援をというのが私の願いであり、農家の方々の願いではないでしょうか。儲けではなく。子どものために安全安心を提供してほしいとの思いからです。
 ではなぜ、外国産小麦安いのでしょうか。小麦農家は生計が不成立です。国が補助金を出しているから、小麦農業が成立しているのです。
 農業所得に占める補助金(価格保障と所得補償)は、欧米並みの農業保護で安心して農業が営めます。イギリス、フランスほぼ100%、ドイツは70%、日本は30%です。
 小麦を県が支援しないので、助成・補助金大変少なく、ハードルが高くなっています。「せときらら」の品種銘柄指定があれば、1等Aランクで8,800円/60kgの交付金があります。農場試験場で、試験栽培をして品種登録を支援していただきたい。県が支援してくれれば、小麦栽培仲間が広がります。
 知事が関西広域連合議会の答弁で「政治は住民の幸せのためにある」とのべられた言葉に感動しました。小麦農家は、子どものためにと頑張っています。未来ある子どもたちに、安心安全をプレゼントしていただきたいと思います。知事、何か答弁があればお願いいたします。

《答弁》 仁坂知事
 今の話は、非論理的な感じがします。
 小麦を作っている人たちだけが頑張っているという前提で質問しているような気がします。米を作っている人や、汗水流して鉄工所などの現場で働いている人も頑張っています。小麦を作っている人だけが補助をもらうというのは、いかがなものかと思います。

《要望》杉山俊雄 県議
 儲かる農業には実際に補助があるわけですから、非論理的な話だとは思いません。子どもの安全のためにも、ぜひ小麦農業への支援をお願いします。


2.ゲノム編集食品について
(1)ゲノム編集食品の安全性について
《質問》杉山俊雄 県議
 ゲノム編集食品として、初めて国内で栽培や販売が認められた作物が、高GABAトマトです。開発者は、筑波大学の江面浩教授です。調理用トマトにゲノム編集で遺伝子を操作し、GABAというアミノ酸を増やしました。GABAには血圧を下げる効果があるとされているため、「健康に良い」ことを売りにしています。このゲノム編集トマトは、2020年12月に農林水産省と厚生労働省が開発企業からの届け出を受理したことで、栽培や販売が可能になりました。
 ゲノム編集とは、細胞核の特定の遺伝子を、はさみの役割を持つ酵素などを用いて切断したり、切断したところに別の遺伝子を入れたりする、遺伝子組み換え技術と同様の「遺伝子操作技術」です。
 ゲノム編集は、ねらった遺伝子を正確に壊す技術だと言われていますが、目的以外の遺伝子を切断してしまう「オフターゲット」がよく確認され、予期せぬ遺伝子損傷(染色体異常・破砕)が学会で報告されています。
 ゲノム編集による品種改良について、世界的に様々な議論が起きています。EUやニュージーランドは遺伝子組み換えと同様に規制する立場なのに対し、日本、米国、ブラジル、アルゼンチン、オーストラリアなどは規制をしていません。
 スイスは2020年9月、「ゲノム編集」を含む遺伝子組み換え農産物栽培の期限付き禁止を決定しました。地方自治体レベルでは、米国カリフォルニア州メンドシーノ郡、ドイツのバーデン・ビュルテンベルク州が栽培を禁止しました。
 開発者の江面教授は「安全性は確認されている」といっていますが、環境への影響や安全性を評価する試験を行っていません。また、植物や生物多様性への影響、乳幼児などの健康への影響、「オフターゲット」と呼ばれる想定外の遺伝子の影響についても詳細に調べていません。
 ゲノム編集植物では、花粉が風やハチなどに運ばれて、はるか離れた場所に移動し、他の品種と交雑する可能性があります。動物であれば養殖場から逃げ出せば勝手に移動するので影響は深刻です。
 農水省が2021年3月に募集した「みどりの食料システム戦略」へのパブリックコメント17,265通のうち、95.9%がゲノム編集技術への懸念でした。
 日本政府はゲノム編集技術を「自然界で起こる突然変異と同じもの」と言って、安全審査も表示もなしに次々と流通を許可しています。しかし、突然変異や交配技術を含めた育種技術は、変化した新しい特性が何世代かを経て固定され、自然に適用できる品種になります。
 分子生物学者の河田昌東(まさはる)氏は「ゲノム編集は安定した、確立された技術ではない」「各国で研究されているが、ゲノム編集食品が一般流通しようとしているのは日本のみ」「次世代への影響が明らかになっていない」さらに「安全審査を強め、表示を義務付けて消費者の選択の権利を守るべき」などと提起しています。
 消費者庁はゲノム編集食品に表示を義務づけていないので、私たちは知らずにゲノム編集食品を口にしている可能性があります。拙速な流通はやめて、安全性を確かめるべきと考えます。
 そこで環境生活部長に伺います。ゲノム編集については、農水省へのパブリックコメントでも多くの懸念が寄せられています。県として懸念を払拭し、県民に十分周知するよう、どのような対策がなされていますか。
 また、遺伝子組み換え食品については、表示義務があります。同じ遺伝子操作のゲノム編集食品には、表示義務はありません。遺伝子操作のゲノム食品を食べたくない消費者の選択の権利は大切です。予防原則の立場から、消費者が選択できるよう食品表示を行うよう、国に働きかけていただきたいと考えますが、答弁を求めます。

《答弁》 環境生活部長
 委員ご質問の組換えDNA技術に該当しないゲノム編集技術応用食品は、他の生物から取り出した遺伝子を組み込むのではなく、遺伝子の特定部位を切断して、目的の機能を付与する技術によって得られた食品で、その変化は従来の品種改良で起こる範囲内であるとされています。
 同食品の特性等については、県のホームページやパンフレット等において広く情報提供しており、令和2年2月には「ゲノム編集技術を利用して得られた食品について」をテーマに食の安全シンポジウムを開催しています。引き続き機会をとらえて県民への情報提供に努めてまいります。
 また、同食品の表示につきましては、現在のところその義務はありませんが、消費者庁の食品表示基準では、消費者の自主的かつ合理的な選択の観点から、積極的に情報提供するよう努めるべきと示されています。現在、日本で流通・販売されているGABAの含有量を高めたトマトなどには、この技術を応用したことの表示がなされ、消費者が選択できるようになっています。
 消費者庁に確認したところ、現在、表示を義務化するなどの見直しの予定はないとのことですが、今後、流通実態や諸外国の表示制度に関する情報収集を行ったうえで、新たな知見が得られた場合には、必要に応じて取扱いの見直しを検討するとのことであり、今後も国の動きを注視してまいります。

《要望》杉山俊雄 県議
 県はゲノム編集につい積極的に情報を提供しています。私はゲノム技術を否定しているわけではありません。
 マッキンゼー・グローバル研究所の報告書によれば「ゲノム技術については驚異的な技術革新が行われ、2030年までさらなる進化を遂げる。人類があらゆる生命の設計図を手にし、操作できる可能性が飛躍的に高まっている」としています。
 懸念されるリスクとして、遺伝子操作によって未知なるウイルスが作り出され人類の脅威になることや、人工受精卵を操作してデザイナー・ベイビーを誕生させる問題などがあります。
 報告書をとりまとめた所長マイケル・チュイ氏は「この技術は、光と影が混在するパンドラの箱です。使い方を誤れば、人間の命に関わります。どこかで倫理の線引きをする必要がある」と述べています。
 もう一人、フランスの国立保健医学研究所倫理委員会委員長のエルビ・シェネイベスは「ゲノム編集技術の使い方につて重要なポイントがある」といっています。この技術の不確実性を認識し、この技術について非常に無知であることを認識することが重要です。ゲノム編集に伴う、すべての変動要素をコントロールできているわけではありません。ゲノムを編集する際に、的外れにカットしてしまうことも起こり得ます。ゲノムは動的な存在であり、私たちがまだ知らない情報を持っています。不確実性や予想できない未知の部分がある以上「技術の使い方について議論は慎重に進めるべき」と述べています。
 政府も「新たな知見が得られれば見直しを検討」言うように、確立した技術ではありません。確立された技術でないというのは、大切な観点と思います。食用の遺伝子組み換え作物は、国内で栽培されていません。同じ遺伝子操作をするゲノム作物が栽培されていることに違和感を感じます。
 予防原則の立場から、栽培したくない生産者、使いたくない事業者、食べたくない消費者の選択の権利を守るため、表示義務が必要です。
 現在、販売事業者は「GABA含有量を高めたトマト」と表示、販路拡大、消費拡大の宣伝をしています。消費者庁は、ゲノムでないことを示す根拠書類があれば「ゲノムでない」という表示は可能としています。
 種に表示すれば、収穫物にも、加工食品にも表示できます。そうすれば選択の権利を守ることにつながります。県として最大限の路力をお願いします。

(2)小学校へのゲノム編集トマトの苗の配布計画について
《質問》杉山俊雄 県議
 ゲノム編集トマトを販売するのは、筑波大発のベンチャー企業「サナテックシード社」です。同社は2021年5月に、家庭菜園用として5,000人に合計2万本の苗を配布しました。各家庭が、ゲノム編集トマトの栽培場所になります。これをさらに広げるため、今年から障害児介護福祉施設に苗を無償配布、2023年には小学校に苗を無償提供する計画を持っています。今後、無秩序に拡大することが予想されます。
 同社は「小学校をはじめとする教育機関へは科学教育の教材として、子どもたちがトマトを育てるようにしていきたい」と表明しています。子どもたちをターゲットとしてゲノム編集食品の「啓発」を行うことを狙っています。
 ゲノム編集食品に関する報道がほとんど行われず、長期的な影響については全く知らされていません。そのため、介護施設や小学校は危険を考えずに、無償提供されるのならと、受け入れる可能性があります。子どもたちはトマトを育てることに夢中になり、収穫したトマトを食べることになるでしょう。子どもたちの経験から、家庭もゲノム編集トマトを受け入れることが予想されます。
 ゲノム編集トマトを食べたから、直ちに健康障害が起きるというものではありません。遺伝子組み換え食品が流通するときも、企業側は「遺伝子組み換え食品は従来の食品と同等だ」という安全神話を振りかざしました。米国では、遺伝子組み換え食品の普及とともに、アレルギー、糖尿病、慢性疾患で苦しむ人が増加し、人々は「遺伝子組み換えでない」というラベルの付いた食品を買うように、大きく変わってきています。
 「北海道 食といのちの会」は、ゲノム編集トマトの苗を受け取らないことを求める要望書を、全道の市町村長と教育長に送付し4自治体が「受け取らない」、6つの自治体が「検討など」と回答しています。要望書では、子どもたちが夢中に育て食べることで、抵抗感なくゲノム編集食品を受け入れられるようにするやり方に「遺伝子操作作物の問題を知らない子どもたちに、安全性も確かめられていないまま栽培させ、食べさせることは非人道的行為」と厳しく指摘しています。
 ゲノム編集は安定した、確立された技術ではないと生物学者は言っています。また、消費者庁自身も「諸外国の表示制度に関する情報収集も随時行った上で、新たな知見等が得られた場合には、表示の義務づけも視野に入れつつ必要に応じて取り扱いの見直しを検討」すると述べています。
 愛媛県今治市は「食と農のまちづくり条例」で、遺伝子組み換え作物等が栽培できないようにする、市独自の規制条例を作っています。遺伝子操作されたゲノム編集食品も同様に禁止・規制すべきという声は、世界でも広がりつつあります。
 そこで、教育長にお伺いします。予防原則の見地から、県下の小学校・教育委員会は、危険が予想される苗の無償配布を受け入れないようにする必要があると考えますが、教育長の見解を求めます。

《答弁》 宮﨑教育長
 ゲノム編集トマトについては、国会においても質問されており、食品としての安全性や生物多様性への影響がないことを確認し、その旨公表しているところである、と答弁されています。
 また、現在、実際に販売されていますが、特段の問題というのは指摘されていません。
 なお、県内小学校への無償配布の事実や計画について、配布元に確認したところ、「配布エリア、配布量等については未定である。」との回答でありました。しかしながら、大切な子どもたちに関係することでありますので、しっかりと情報収集をして勉強してまいりたいと考えています。

《再質問》杉山俊雄 県議
 国は安全と言っているので「問題はない」との答弁でした。
 OKシードプロジェクトがオンライン反対署名を行って、各都道府県の知事、教育長、あるいは環境福祉などに、署名を送付した、というふうに伺っています。教育委員会にこれが来ていますか。来ていたら、どういうふうにしたのかをお聞きします。

《答弁》 宮﨑教育長
 私の方で、それを記憶していません。また、帰ってから確かめたいと思います。

《要望》杉山俊雄 議員
 もし届いたら、対応よろしくお願いします。


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