2022年2月和歌山県議会 高田由一 一般質問  概要記録

 録画中継

202237

1.新型コロナウイルス感染症の検査体制の充実
(1)行政検査の状況
(2)抗原検査キットの幅広い配付と活用を
(3)無料検査の実施状況と今後
(4)第6波の感染収束に向けた取り組み

2.県立図書館の充実について
(1)資料費の問題と役割について
(2)読書バリアフリー法への対応
(3)県立図書館の将来像

3.自治体で働くケア労働者への賃上げについて
(1)市町村からの処遇改善交付金の申請状況


1.新型コロナウイルス感染症の検査体制の充実
《質問》高田由一 県議
 新型コロナウイルス感染症の第6波で、高齢者に感染が広がり命を落とす人が急増しています。全国的には1日あたりの死者数が2月22日に初めて300人を突破しました。2月だけで死者は4,000人を超え、過去最悪の水準です。厚生労働省のまとめによると、今年に入ってから亡くなった人のうち、70歳以上が9割を超えています。これは高齢者施設でのクラスターの増加と関係しています。和歌山県でも、第6波では、これまで40名以上が亡くなっていますがほとんどが70代以上の高齢者です。
 先日、野尻技監の発表した「第6波の現状」というレポートでは、3回目ワクチン接種後の感染事例や、同じ人が2回かかる事例など、新型コロナとの戦いは予断を許すものではないことを物語っています。
(1)行政検査の状況
 そこで最初に、行政検査の状況についてうかがいます。
 年明け早々に第6波に突入し、感染が急拡大しました。現在はピークを越えつつあるようですが、2月15日に示された全国知事会の緊急提言でも「危機的状況が国民に正しく認識されるよう、国として強く発信すること」など、危機感をもった対応が必要な状況は変わりなく、むしろ感染が高止まりで推移する、あるいは増加に転じる可能性もでてきています。
 私はこれまで紀南地方にも臨時の行政検査の検査体制が必要ではと訴えてきましたが、昨年11月に、和歌山県が民間の大手検査機関と契約し、今回の第6波ではその力が活用されています。この契約では検体の搬送までを民間で担ってもらうことで、県行政に負担がかからないやり方となっています。このことで第6波での検査需要にも対応できているようで、これは大きな成果を上げていると考えます。
 ただ、心配なのは、あまりにも検査の陽性率が高いことがあります。大阪や東京などでは、検査陽性となる率が40%近い状況があるようです。これでは検査そのものが不足して感染実態とずれている危険性はないかと心配します。そこで福祉保健部長にうかがいます。和歌山県において行政検査は不足していないのかどうか、また滞りなく行えているのかどうか答弁をお願いします。

《答弁》 福祉保健部長
 第6波におけるPCR検査体制としては、まず、和歌山県環境衛生研究センターにおいて、1日あたり300件まで実施可能な検査体制をとっています。
 さらに、今後の感染拡大に伴う検査ひっ迫が想定されたことから、民間検査機関に検体検査業務を委託し、また、患者受入病院に対しても、PCR検査機器整備を行い、迅速な検査体制を図ってきたところです。
 こうした取組により、第6波のいまだかつて経験したことのない規模の感染者が発生している状況の中においても、PCR検査能力を1日あたり最大約2,700件まで高めて対応してきたところです。

《要望》高田由一 県議
 現状は滞りなく行えているとのことです。一日の感染が500名を超えた1月末から2月当初にかけては、だいぶん行政検査の結果が返ってくるのに時間がかかったという話もうかがいましたので、今後とも抜かりなくお願いします。

(2)抗原検査キットの幅広い配付と活用を
《質問》高田由一 県議
 次に、抗原検査キットの幅広い配付と活用についてうかがいます。

 このことについても昨年の6月議会で議論をしました。いま特に介護職場からは悲鳴があがっています。感染者がでたときの職員体制の確保はもちろん、従来なら濃厚接触者のまわりの人に抗原検査キットで検査をしてもらいながら勤務してもらっていたが、いまはキットの不足で、この検査もできないために、自分が感染を広げるのではないかという心配でいっぱいになりながら介護にあたっているという状況があります。施設のなかには、研究用といわれる薬事承認されていない検査キットを自費で購入して検査をしてもらっているところもあると聞きました。たいへんな苦労です。そのような状況ですから、職員や入所者に対する検査を頻回に行うため、早急に介護、障害者施設等への抗原検査キットの配布が急がれます。
 また、昨年12月議会で、私は、児童の入所施設や保育園、幼稚園、小学校、学童保育など、ワクチン接種の対象年齢に満たない子どもたちが利用する施設で、クラスター発生を防ぐためにも、感染状況が一定のレベルを超えた段階で、定期的な検査を実施していくことが必要だと要望しました。
 このたび、政府の新型コロナウイルス感染症対策推進本部は、事務連絡で、検査の集中的実施計画の対象になってこなかったこうした施設での検査を検討するよう要請しています。
 また、報道によると東京都では、私立も含めた学校の教職員を対象とした定期的な検査を始めたようです。これは抗原検査キットを活用したもので、週1回程度、全教職員を対象に実施します。教職員からは「自分たちが学校にウイルスを持ち込めば、体の弱い子たちに移してしまうかもしれない」と心配の声があがっていました。
 そこで福祉保健部長にうかがいます。検査の集中的実施計画でどのような施設を対象に、どれくらいの頻度で検査を実施していくおつもりでしょうか、答弁をお願いします。

《答弁》 福祉保健部長
 県では、これまで集団感染が発生している施設やその周辺の濃厚接触者などに対して重点的に抗原検査キットをいち早く配付し、感染の早期発見と感染拡大の防止を図ってきたところです。
 今回、本県が「まん延防止等重点措置区域」として指定されたことに伴い、基本的対処方針に基づき、高齢者施設等の従事者等に対する集中的実施計画を策定したところです。
 同計画では、特別養護老人ホームなどの入所系の高齢者施設や障害者支援施設等を始め、小学校、幼稚園、保育所、学童保育等において、従事者や教職員への週1回程度の定期的な検査を3月31日まで実施することとしています。
 県としましては、同計画に沿って、従事者等に検査を行うことにより、施設への感染の持ち込みを未然に防ぎ、感染拡大の防止を図ってまいります。

《要望》高田由一 県議
 あらたに小学校や幼稚園、保育所、学童保育等でも週1回の職員への検査を実施するということで一歩前進だと思いますのでよろしくお願いします。
 また、民間検査機関との契約で増えたPCR検査の能力をスクリーニング検査に活用することもできると思うので、ぜひ必要なときは実行していただければと思います。

(3)無料検査の実施状況と今後
《質問》高田由一 県議
 次に、無症状の幅広い県民を対象にした無料検査の実施状況についてうかがいます。感染拡大時に、都道府県の判断により、感染の不安がある無症状者に対し、PCR検査等を実施する一般検査事業が昨年末から取り組まれています。これは無料で検査ができる制度です。昨年、12月県議会で私の質問に対し危機管理監は、和歌山県では、PCR検査及び抗原定性検査を併せて約50万回分に係る経費等を計上していると答弁されました。そのときはまだ感染が収まっていたころだったので、私は、感染拡大時に無料検査実施のタイミングが遅くならないか、感染者が少ないうちに囲い込むのが大切、検査の実施も前倒しでお願いしたいとお願いしていたところです。その後、感染拡大の兆候を見て、昨年末からこの無料検査を動かし始めたことは評価をしています。
 そこで危機管理監にうかがいます。県の年度内の50万回の検査予定に対してこれまでの実施件数はどうなっているでしょうか、また、検査結果はどうでしょうか。さらに新年度予算のなかでも感染拡大時の検査が予定されていますが、どれくらいの規模を予定しているでしょうか。
 加えて、この無料検査を知らない、どこでやっているかわからないという県民もまだまだいらっしゃいます。もっと県民への周知が必要ではないでしょうか。以上、答弁をお願いします。

《答弁》 危機管理監
 一般検査事業は、感染が拡大傾向にある場合に知事の判断により、感染リスクが高い環境にある等のため、感染に不安を感じる無症状の県内在住者に対して、ワクチン接種者を含めて検査を受けることを要請するものであります。その検査費用は無料となっております。
 令和3年12月28日から開始した一般検査事業におけるPCR検査及び抗原定性検査の実施件数は、令和4年3月4日時点の集計では、約2万6,000回となっており、その検査結果で陽性であったのは、約1.8%となっております。
 また、令和4年度におきましても、現在の第6波の感染拡大が終息した後、再度、感染が拡大した場合に、一般検査事業として実施するPCR検査及び抗原定性検査、併せて約38万回分の経費等に係る予算の審議を今議会でお願いしているところでございます。
 一般検査事業に関する県民への周知につきましては、これまでホームページ、テレビ、ラジオによる周知、新聞やフリーペーパーへの周知広告の掲載に加え、各世帯への周知チラシの配布などに取り組んできたところでございます。
 今後も、様々な手法により工夫をしながら、県民への周知を実施してまいりたいと考えております。

《要望》高田由一 県議
 当初予定の50万回に対してまだ、2万6,000回の実施ということで、検査キットの不足状態も影響していますが、やはり県民への周知が不足していると思いますので、わかりやすい宣伝をしていただけますようお願いします。

(4)第6波の感染収束に向けた取り組み
《質問》高田由一 県議
 最後に知事にうかがいます。感染状況はようやく頭を打ち始めていますが、高齢者施設での感染拡大などで、これまでの波を大きく越えて、死亡する方が増加しています。ここで、これまで以上に検査と積極的疫学調査を拡大し、早期の囲い込みを行うことが、感染を早期に収束させ、亡くなる方を減らすことにつながると考えます。今後の収束に向けた取り組みについて知事の考えをお聞かせください。

《答弁》 仁坂知事
 これまで和歌山県は、患者の命を守るため全員入院を堅持してきましたけれども、オミクロン株の感染力は強力で、感染の急拡大から感染者が、1月中旬ですでにですね、連日100名を超えたために、感染拡大を想定して確保していた病床もまたたく間に埋まる、という事態になってしまいました。
 県としては入院が一番安全に県民の命を守れるものですから、できれば全員入院でいきたいと思っておるんですけれども、次善の策として、入院に加えて宿泊療養や自宅療養をしてもらい、その間のお世話とウォッチを県医師会の協力も加えて、万全にやっていき、病状の悪化が予想された場合は、保健所で措置入院をしていただくという療養体制に切り替えて、県民の命と健康を守ろうとしているところでございます。
 より詳しく申し上げますと、特に自宅療養については、病状の急激な悪化が命の危険につながることからですね、常にウォッチをしていく必要がございます。
 先ほど、藤本委員から、しょっちゅう様子を聞いて下さったというお話があるんですが、保健所も実は新しい人も世話していかないといけないものですから、既存の方にですね、いつも余裕があれば、それは聞くに越したことがないんですが、それをやっているとパンクしてしまうというところもございます。
 そこで、和歌山県医師会の協力のもとに、一旦自宅療養ということになった方については、お医者さんを割り当てて、それで患者の容態をクリニックの医師に電話又はウェブで健康観察していただいて、病状悪化時には保健所に連絡していただいて、保健所の調整で、病院に搬送する、という体制に今、している訳でございます。
 さらに、高齢者施設等においてクラスターが多発したことから、初期対応の手引きを作成いたしまして、周知するとともに、感染管理認定看護師・医師の派遣を行いまして、施設における感染拡大の防止を図って参りました。さらに、かかりつけ医等が高齢者施設等を往診しまして、中和抗体療法を含む早期治療をすぐに行えるようにいたしまして、重症化防止を図る取り組みを実施しているところでございます。
 加えて、感染や重症化を予防するため、市町村の努力や医療機関の協力によりまして、全国と比較して早いスピードで、ワクチンの追加接種が現在進められているところであります。
 感染防止の為にあらゆる手段を講じた結果、現在、第6波の県内の感染状況は、恐らくピークを過ぎて、減少傾向にあるとは思いますが、これだけ頑張っているのに急激に感染者が減らないというのはですね、本当に大変で、依然として家庭、学校、職場などで感染が発生し、いわゆる下げ止まりというような状況かな、という風に思っております。
 県としては、保健所による早期発見・早期隔離、徹底した行動履歴の調査など、ご指摘の積極的疫学調査、即ち保健医療行政の働きにより、総力戦で感染の早期収束に努めて参る所存であります。

《要望》高田由一 県議
 オミクロン株の特徴はやはりその感染力と世代時間の短さ、軽症や無症状感染者の多さです。その無症状者を早期発見するにはやはり検査と積極的疫学調査です。国中で感染爆発しているときは、和歌山県でいくら努力しても限界があると思いますが、感染が頭打ちになってきたいまこそ、ここに力を注げば県内の亡くなる方を大きく減らすことができると思うのでよろしくお願いします。


2.県立図書館の充実について
(1)資料費の問題と役割について
《質問》高田由一 県議
 次の項目、県立図書館の充実についてうかがいます。
 最初に、資料費の問題と役割についてです。
 一般質問で県立図書館の問題を取り上げるのは2度目になります。平成13年に取り上げたときは、図書を購入するための資料費にまでたいへん厳しいシーリングがかかって、以前の半分以下になっているときでした。
 今回は、県立図書館の将来像について質問しようしていたのですが、そのために図書館年鑑という資料を調べていたら、資料費の決算額で和歌山県が9216万円となっており、人口120万人未満の県のなかで鳥取県の1億円超についで第2位にランクされているとなっていて、ずいぶんがんばって予算を獲得しているなあと感じて改めて図書を購入するための資料費について聞いてみようと考えたのです。
 ところが、先日、図書館に聞き合わせたところ、これは統計の集計をした日本図書館協会のミスのようで、本当はお配りしている資料にもあるように、近年は5000万円台で推移しています。誤りは誤りとして、日本図書館協会に訂正をおねがいしたいのですが、問題はその後です。昨年、今年の予算を見ますと明らかに資料費が減ってきている。また以前のようにどんどん減らすようなことはないのか。たいへん心配になりました。この資料費が減ってきていることについて、今後、どうしようと考えているのか、教育長の答弁をお願いします。
 関連して、そのように資料費などの予算が心もとないなかで、県内の図書館行政における県立図書館としての独自の役割について、きちんと果たしていけるのかどうかも心配です。県立図書館の役割について、どう捉えられているのか併せて答弁をお願いします。

《答弁》 宮崎教育長
 県立図書館では、様々な制約がある中、資料購入にあたっては、徹底した精査や紀南図書館との資料の共有化等も図り、毎年、約2万冊の新規購入を行うことで、蔵書の充実に努めています。
 また近年、市町村立図書館等の整備、充実化が進んでいることから、資料整備の面で、利用者のニーズに応えた県立図書館と市町村立図書館の棲み分けも必要であり、県立図書館では、和歌山県に関する資料の収集、保存等、県の中核的な図書館としての役割や機能を重視しています。
 このような取組を通じて、県民の生涯学習や読書に対する要求に応えていきます。
 また、インターネットの普及に合わせ、ホームページでの蔵書検索や貸出予約、調査相談の受付を行うとともに、県立図書館の資料を県内どこに住んでいる方にも閲覧してもらえるよう、利用者のサービス向上に取り組んでいます。
 今後も、一層広い視野に立った工夫を重ね、幅広い年齢層の読書や生活・仕事上の解決など様々なニーズに応えることができるよう、県立図書館の環境や機能の充実に努めてまいります。

《再質問》高田由一 県議
 教育長からはもう少しつっこんだ答弁をいただけると思ったのですが、県の資料費が減ってきていることについて、明確に答弁をお願いします。

《再答弁》 宮崎教育長
 確かに、若干減っている状況にはあるんですけれども、先ほども申しましたように、精査をしながら、それから市町村立との棲み分けもありますので、そういうことで資料の購入額自体は確かに減っても、それはそれで対応できている、そういうことでございます。

《要望》高田由一 県議
 日本共産党は図書館についての政策も発表しています。そのなかに都道府県立図書館では、市町村の図書館が所蔵していない資料の提供ができるよう、少なくとも国内出版物のほとんどを購入収集できる規模の資料費増額が必要としています。
 答弁にもあったように毎年約2万冊購入と言われましたが、年間の書籍や雑誌の出版点数は合わせて約7万冊と言われています。県内図書館の中核であるなら、資料費の充実こそ求められていることを指摘しておきます。

(2)読書バリアフリー法への対応
《質問》高田由一 県議
 次に、読書バリアフリー法への対応についてうかがいます。
 2019年、視覚障害者等の読書環境の整備に関する法律、略して読書バリアフリー法が成立、施行されました。この法律には、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本理念が定められており、障害の有無にかかわらずすべての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化の恵沢を享受することができる社会の実現に寄与することを目的としています。
 こうした基本理念に基づき、地方公共団体が「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画」を策定することを努力義務としています。努力義務なので必ず策定するものでないことは残念ですが、この法律を受けてかなりの自治体で計画の策定が進められているようです。
 この基準に定められた視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画について、今後、県として、どのように取り組んでいくおつもりでしょうか。教育長の答弁をお願いします。

《答弁》 宮崎教育長
 読書バリアフリー法への対応につきましては、来年度、有識者及び社会福祉団体等関係者による検討会議を開催いたしまして、早期の計画策定に取り組んでまいりたいと考えています。
 また、県立図書館では、バリアフリーに配慮した施設の整備や大活字本や録音図書の充実、対面朗読や郵送による貸出サービスなどを実施しています。
 今後も、障害のある方々が図書館を利用しやすくなるよう、取組を充実してまいります。

《要望》高田由一 県議
 このことについては、視覚障害者の当事者のみなさんらともしっかり意見交換しながら進められるよう要望しておきます。

(3)県立図書館の将来像
《質問》高田由一 県議
 次に、県立図書館の将来像についてうかがいます。現在の県立図書館が建設されたのは1993年で、今年で29年になります。この間、すさまじい勢いで、インターネットが普及し、デジタル化が進行しました。以前は、古い新聞などをマイクロフィルム化したりして長期保存をしていましたが、現在はそのマイクロフィルム自体の保存性が問題になっています。国立国会図書館などでも蔵書のデータ化が進められており、著作権等の問題はありますが、この流れは進んでいくことと思います。

 また、過疎化、高齢化がすすむ紀南地方でも、コロナ禍を契機に地方への移住やIターン就農など、新しい人の流れが起こりつつあります。このことは歓迎すべきことですが、新しく移住してこようという志をもった人たちにとって、ネックになるのが、住みづらさよりも、高度な勉強や資料収集をする環境が整っていないことではないかと思います。こうしたことから、私は県内どこにいても県立図書館の情報を利用し、レファレンスなどそのサポートを受けながら質の高い、仕事の成果に結びつけられる環境をつくることは今後、必要不可欠になってくるのではと考えています。
 そこで知事にうかがいます。県立図書館の将来像をどのようにお考えでしょうか。答弁をお願いします。

《答弁》 仁坂知事
 県立図書館は、教育長の答弁のように本県において郷土の文化的価値を高める資料を積極的に収集、保管・公開して図書館の目的である教養、調査研究、レクリエーション等の助けとなる資料を県民に提供するというのが大事なことだと思います。
 現在106万3,000冊の資料を所蔵する県内最大の拠点でございます。特に和歌山県に関する資料は、可能な限り収集し保存しています。また、紀州徳川家第16代当主徳川頼貞が蒐集した楽譜、音楽書のコレクションである南葵音楽文庫の大部分も保管、公開して、紀州徳川家にゆかりのある西洋音楽資料の殿堂という文化拠点としても高い評価を受けております。
 その意味ではですね、市町村が設けている図書館、あるいは書店、なんかとはちょっと目的が違う気がいたします。しかし、私の経験したことなんですけど、ある方々は自分の読みたい本を買ってもらうのは当たり前だ、例えば娯楽のために読んでおられるような本をどんどん買って欲しいし、十分買ってくれないので不満という人もいるわけであります。県立図書館は、今申し上げました使命にあったような蔵書の充実とか文化の保全、これを考えていくべきであると第一に思うわけであります。とはいってもあまり固く考えすぎますと不都合も出てくると思います。例えば楽しみのために本を読むようなものを置いておいてはいけないのかと、それもまたちょっと言い過ぎてですね。限られた予算の中で本当に必要なものから買っていってその上で、余裕があればそうとも言えないようなものも合わせて蔵書に加えていったらいいんじゃないかというふうに考えております。
 和歌山県の読書文化の振興を図るために必要だと考える蔵書を今後とも一層充実するとともに、ご指摘にもございましたようなITを活用したサービスやデジタル化した貴重資料のデータベースを公開することによりまして、利便性の向上も図っていきたいと思います。さらに生涯学習の機会の充実を図るため、市町村立図書館が発展充実されてきておりますから、これと連携して、すべての県民がより身近に活用することができるような図書館の実現を目指していきたいと考えております。

《要望》高田由一 県議
 例えば、山形県立図書館などでは幅広く一般向けに宅配サービスをしています。送料は自己負担ですが、料金も安く設定されています。コロナ禍で移動しにくい状況や交通不便の問題のある和歌山県でも導入できればと思いました。
 また、図書館先進県と言われる鳥取県では、はーとふるサービスとして、障害者だけでなく、高齢の方など図書館利用に困難のある方へのサービスを進めています。同時に、市町村図書館や学校図書館などと連携して県立図書館の資料を、県内どこの拠点にも2日以内に届ける日本一の物流システムを整備しています。県立図書館の専門的な資料が県内どこにいてもすばやく活用できる体制があります。
 このように各地の図書館で、独自のサービス提供が進められています。さらに、資料のデジタル化の推進などやるべき課題は沢山あると思います。
新政策にもあるように、ニューワーク、ライフスタイルを進めるなら、文化や知的環境の整備も欠かせないと思います。
 南葵文庫や、南葵音楽文庫の礎を築いた徳川頼倫侯は、日本図書館協会の初代総裁でもありました。図書館行政においては和歌山県が、全国の先導役をすることこそ求められているし、ふさわしい役割ではないでしょうか。図書館行政のさらなる発展をお願いしておきます。


3.自治体で働くケア労働者への賃上げについて
(1)市町村からの処遇改善交付金の申請状況

《質問》高田由一 県議
 最後に、自治体で働くケア労働者への賃上げについてうかがいます。
 新型コロナ感染症の影響で多くの働く人、なかでもケア労働を担う労働者に大きなしわ寄せがいっています。
 日本経済が成長せず、新型コロナなどの危機に弱い根本には賃金が上がらない日本の異常さがあります。1人当たりの実質賃金はピーク時の1997年と2020年を比べると、64万円も減ってしまいました。なかでもケア労働者は、例えば保育士でいうと全産業労働者と比べて月額で9万円以上、賃金は低いという統計がでています。
 1990年代後半以降、人件費の削減を狙う大企業・財界の要求にこたえて歴代政権が労働法制の規制を緩和してきたことで低賃金の非正規雇用が増え、賃金が押し下げられました。年収200万円未満のワーキングプア(働く貧困層)は約1200万人にのぼります。国民の所得が増えず、格差と貧困が広がったことで日本経済の弱体化が進みました。
 そのようななか昨年12月、岸田首相の所信表明演説がありました。経済対策として、国が率先して、看護・介護・保育・幼児教育などの分野において、給与の引き上げを行っていくことを表明、介護、保育、幼児教育の現場で働く方については、この2月から3%、年間11万円程度給与を引き上げるとして、100%、国の財源による処遇改善交付金が予算化されました。
 これまでの経済政策や賃金政策、新自由主義政策の誤りを認めたからこそ、岸田首相は、未来社会を切り拓く新しい資本主義を言われているのではないかと思います。今度のケア労働者への賃上げは、一桁低いと言われていますが、若干でも改善の方向を出されたことは一歩前進ではないでしょうか。
 ところが、この賃上げ政策が素直に喜べない事態になっています。
 介護や障害者施設については、これは多くが民間の事業所が担っているので、ほとんどの職場で処遇改善交付金を申請するとのことですが、保育士や幼稚園教諭、学童保育支援員などのうち、公立の職場では、賃上げを実施する市町村が少ないと聞いております。公立の職場でも100%、国の交付金がもらえるのになぜ申請しないのか、はなはだ疑問です。
 そこで福祉保健部長にうかがいます。市町村の保育士の処遇改善にむけ県としてどのように対応してきたでしょうか。その結果、市町村からどれだけの処遇改善交付金の申請があがってきているでしょうか。答弁をお願いします。

《答弁》 福祉保健部長
 市町村の保育所における保育士の処遇改善について、県の対応と市町村の申請状況についてお答えします。
 県としましては、市町村に対し、「今回の保育士等の処遇改善は、閣議決定された経済対策を受けて実施するものであり、公立保育所における保育士等の賃金改善について、積極的な実施の検討を依頼する」旨の内閣府、厚生労働省通知を周知することにより、保育士等の処遇改善の検討を促しました。
 また、「会計年度任用職員については、職務の内容や責任などを考慮した報酬額の見直し」や「地域の民間給与水準を踏まえた上で、一般行政職と同じ給料表を用いつつ給料の調整額等の支給も想定される」旨の内閣府、厚生労働省経由の総務省通知も送付したところです。
 その結果、公立保育所で働く保育士等の処遇改善のため、12市町から、国庫補助金の申請の提出がありました。

《要望》高田由一 県議
 答弁をいただきました。これは私の調べたところですが、申請のあった12の市町村でもほとんどが会計年度任用職員のみを対象にしており、正規職員の賃上げは予定されていないようです。
 もしこの交付金を申請しなければどうなるでしょうか。再度、お配りしている資料をご覧ください。今年の人事院勧告では、公務員賃金が21年度に比べて0.9%引き下げられたことで、公立の保育士賃金も引き下げられることになっています。今度の国の交付金である処遇改善事業では、約3%、9,000円の賃上げを保証するため、この0.9%の減額分についても穴埋め分として措置することになっています。逆に言えば、この国の交付金を申請しないと給与減額となります。
 市町村のなかには、まず公務員保育士から賃上げはしにくいとの声もありましたが、政府の閣議決定にもあるように、「民間部門における春闘に向けた賃上げの議論に先んじて」、この賃上げを実施するということですから、何も遠慮することはないのです。
 また、閣議決定では「新型コロナウイルス感染症への対応と少子高齢化への対応が重なる最前線において働く方々の収入の引き上げ」を言っています。民間も公立も関係ありません。実際、保育士などのケア労働者は、普段の生活のなかでも、なるべく外出を控え、帰省してきた家族との食事なども控えるなど、子どもたちに絶対に感染を持ち込んではならないと神経をすり減らしながら、がんばっておられます。このがんばりに応えようというのが、今回の賃上げです。
 現状では、公立保育園における処遇改善交付金の申請と正規職員への適用が少ない状況です。事業の実施主体は市町村ですから、県から「こうしろ」と言うわけにはいきませんが、市町村のなかには、2月21日の申請期限を過ぎたからもうあきらめたというところもあると聞きます。しかし、せっかくの賃上げのチャンスです。本当の期限である3月末まではあと少しですが、今一度、交付金の手続きについて、市町村に周知していただけるよう要望します。


  
                                               仁坂知事の答弁を聞く、高田由一県議(右)
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