2022年6月和歌山県議会 杉山俊雄 一般質問  概要記録

   録画中継
2022613

1.省エネ・再エネによる脱炭素社会の実現について
(1)市町村の脱炭素化の取組の促進について

2.和歌山県学習到達度調査の中止について

3.教員の長時間労働の解消について


1.省エネ・再エネによる脱炭素社会の実現について
《質問》杉山俊雄 県議
 議長の許可を得ましたので、通告に従って一般質問を行います。
 1つ目は、省エネ・再エネによる脱炭素社会の実現にむけ、市町村の取組の促進と県の役割についてです。
 世界も日本も気候危機の状態にあり、今後も地球温暖化の進行による被害の拡大が予想されます。温室効果ガス排出削減、とりわけCO2排出削減が急務です。国連IPCCは気温上昇1.5未満に抑えるために、世界のCO2排出量を2030年までに2010年比で45%削減、2050年に実質ゼロを示しました。
 2021年8月の第6次評価報告書では、以前の評価に比べて更に緊急性が高まっているとして、さらなる強い対策を求めています。
 世界気象機関は今後5年間で平均気温1.5上昇する可能性が50%あると公表。1.5とは、気候変動の影響が人間と全地球にとってますます有害になる指数です。このまま排出を続ける限り気温上昇は続くと警告しています。2030年までが大幅削減の勝負の年になります。
 「2050年排出実質ゼロ」を表明した国は144カ国(2021年11月9日)、日本では700以上の自治体がゼロ宣言し、100近い自治体が気候非常事態宣言を行っています。
 政府の2030年削減目標は2010年比で42%、和歌山県の削減目標は25%にすぎません。仁坂知事には日本をリードする大幅削減を期待します。日本共産党は2030戦略で、省エネで40%減らし、再エネで電力の50%をまかなえば、50~60%削減は可能としています。
 和歌山県の2019年度の全エネルギー消費量は電力に換算すると590億kW時で、産業部門84%、運輸部門4%、家庭部門6%、業務その他部門6%を占め、全国に比べ、産業部門の割合が大きいのが特徴です。
 エネルギー消費量の内、電力消費量は68億kW時で、全エネルギー消費の11.5%に当たります。県内の2020年度実績によると、再エネ発電量は消費電力の約25%で、国の実績を上回っているといいます。家庭・業務部門で再エネ導入が進んでいると思われますが、運輸部門での電力消費はほぼゼロで、自動車の電気化が進んでいません。また産業部門での電力消費は6.4%で、93%以上が化石燃料です。この部門での省エネ・再エネによるエネルギー消費量の削減が脱炭素のカギを握ります。
 2019年度の主な化石原料のうち、石油などの4品目の輸入額は約13兆6000億円で、そのうち和歌山県は約2900億円です。和歌山県はほとんど化石燃料からエネルギーを得ているので、再エネで地産地消に切り替えれば、輸入化石燃料分のお金を地域で有効活用することができます。中小企業の仕事や雇用を生み、地域活性化が期待できます。
 県は政府目標より再エネが進んでいると言いますが、県内の全消費エネルギーはほとんどが化石燃料に頼っていて、再生可能エネルギーは全エネルギーの3%足らずしか供給されていません。2030年までに50%削減を実現するには全部門で省エネ・再エネにシフトする必要があります。
 市町村の省エネ普及対策としては、更新時に省エネ機器、断熱建築、省エネ車・電気自動車などの選択を確実にできるよう支援する。断熱建築普及については断熱基準を高めゼロエミッションビル・住宅を普及していく。さらにコスト情報・投資回収年の目安提供、省エネ対策への専門家アドバイスや窓口相談をする仕組みを作るなどです。
 例えば、中小企業や家庭向けには初期投資実質ゼロ円で、光熱費削減分で返済する省エネ設備機器普及政策なども考えられます。
 省エネによる光熱費削減分を設備投資に回す。断熱建築を地域工務店で受注し、省エネ機器も地域企業で取り次ぎ、残る光熱費も再エネ発電で賄えば、お金が地域に循環します。脱炭素は大きなビジネスチャンスになります。
 再エネ普及対策では、県は2030年に再エネ発電量割合を33%とし、バイオマスや小水力、廃熱の利用促進、企業の研究開発支援、また実用段階にない海流発電の実用化や水素エネルギーの技術普及に取り組むとしています。2030年まで新技術に期待していては先進的な削減目標は達成できません。
 福井市のある病院では、2017年に老朽化した空調機や給湯器、照明を省エネタイプの機種に切り替え、18年度のCO2排出量を44%削減した。消費する電力の低炭素化を図るため、太陽光発電パネル16kWを設置した。事業費に対する3分の1は国からの補助が得られるため、実費負担は大幅に削減できた。将来は太陽光パネルを増設して蓄電池にため、全電力を自足して災害時の診療も検討するとの記事が載っていました。
 再エネ100%にする。そのため、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなど地域の特性を生かした資源を最大限活用し、地域に発電設備を増やし、購入電力の再エネ割合を増やす必要があります。陸上風力は全国消費量に近い可能性があります。太陽光は各地で設置でき、建物屋根だけでなく、農地や耕作放棄地にパネルを設置する「営農型太陽光(ソーラーシェアリング)」が可能です。
 ドイツでは、地域の電力供給を担う公的企業「シュタットベルケ」が各自治体に設立され、地元の住民が地域の再生可能エネルギー開発に関わり、地域で得た収益を地域の事業に使うなど、エネルギーの「地産地消」、地域の活性化、地域経済の発展に重要な役割を果たしています。市町村としても公的な新電力会社を設立して再エネの「地産地消」でエネルギー転換するのも一つの選択肢ではないでしょうか。
 県内の「カーボンゼロ宣言」や「気候危機非常事態宣言」の自治体数は全国と比較して少ないのが現状です。また、「地球温暖化対策推進法」の実行計画の取り組み状況も同じく少なく、気候危機に対する構えが甘くないか心配です。市町村の計画促進のために排出量の実態把握が欠かせません。東京都や埼玉県はエネルギー消費量やCO2排出量統計の推計を提供しています。市町村の地球温暖化対策実行計画の策定を支援・加速する必要があると考えます。
(1)市町村の脱炭素化の取組の促進について
 そこで、環境生活部長に伺います。市町村の脱炭素化の取組みを促進するため、計画策定の支援や専門家の派遣、具体的なアドバイスが必要と考えますが、県はどのように取り組んでいくのか、答弁を求めます。

《答弁》 環境生活部長
 本県の脱炭素化を進めるためには、地域と密着した行政を担う市町村の積極的な取組が重要です。既に、太陽光発電設備の設置に対する補助の実施や、国の地域脱炭素ロードマツプに基づく先行地域づくりの検討など、地域の実情に応じた取組を始めている市町村もあり、今後、そうした取組をさらに拡大していくことが必要です。
 国においては、市町村別のエネルギー消費量や部門別温室効果ガス排出量の情報提供などにより、市町村の計画策定を後押しするとともに、加えて、地域の課題解決に向けた専門家派遣制度に、今年度から脱炭素分野を新設するなど、その支援を強化しています。
 県では、これまでも市町村に対して、国の支援に関する情報提供や個別の相談に対する助言等を行いながら、新エネルギーをテーマにした研究会の開催や、ゼロカーボンシティ宣言の働きかけを行ってきたところです。今年度は、新たに市町村向けの脱炭素セミナーの開催を予定しており、先行事例の紹介を交えて具体的な取組内容を提案するとともに、支援制度の活用について助言を行うなど、市町村の脱炭素化の取組を一層促進してまいります。

《コメント・要望》杉山俊雄 県議
 県はこれから本腰を入れて取り組みを進めていく段階だと思います。
 和歌山県の一番の課題は、再生可能エネルギーが全エネルギーの3%しかないということです。
 それと市町村の温暖化対策実行計画があまり進んでいないことです。このままでは、今求められている2030年までに50~60%削減は不可能です。相当な覚悟が必要だと思います。
 全エネルギーの97%の化石燃料費約3000億円を活用して、省エネ・再エネを促進する。また、再エネによる地産地消に切り替えれば地域内でお金が循環し、仕事や雇用を生み、地域の活性化に寄与します。大きなビジネスチャンスです。雇用で比較(原発54基で4.6万人:2010年度。ドイツ再エネ雇用33.2万人:2017年度)
 川崎市議団が自然エネルギー研究センターに委託した報告書では、人口154万人の川崎市でも50年までに再エネ100%が可能としています。中心は太陽光発電で再エネの90%。残りバイオと風力です。設置場所:臨海部工場・事業所の屋根や空き地、運河・用水路、駐車場、倉庫、農地のソーラーシェアリング、民間住宅など。大都市、川崎市でも再エネ100%可能都の試算があるのだから、県でも市町村の実情に合った多様な取り組みが可能と思われます。
 今年度、国も県も腰を据えて、脱炭素化に向けて市町村を支援する計画です。国は温暖化対策実行計画の策定支援ツールの公開や専門家の派遣等で支援する。県はセミナーを開催して先行事例等の具体案を提案するなど行うことになっています。
 できるところから積極的に取り組むよう支援をお願いして質問を終わります。


2.和歌山県学習到達度調査の中止について
《質問》杉山俊雄 県議
 県教委は新規事業として、中学校で年1回実施していた県学力テストを2回実施することにしました。
 理由は全国学テで小学校は全国平均と同程度で一定の成果が現れているが、中学校の結果が全国下位に低迷しているからだといいます。

 全国学力テストでは、正答率を学力の指標にしているので、都道府県別平均正答率の公表が全国各地に大きな影響を与え、すくなくない道府県が教育振興基本計画に数値目標を掲げています。ちなみに和歌山県は小・中学校とも20位以内を目指すとしています。
 県教委は成績低迷の大きな課題を克服するために、県独自学力テストを2回実施し、学力アップを各校に促し、尻をたたくというのです。そのため、1年・2年生の学力調査を4月に実施し、弱点を克服するために復習教材・補充学習を提供し、12月にもう一度実施して、補充学習や授業改善の成果を新学期の4月の全国学力テストに発揮させる計画です。
 教育長は成績低迷の大きな原因について、「部活動がメインになっていたり、生徒指導が問題になっていたりで、学習面の対策が少し手薄になっている」と今年の文教常任委員会(2月定例会)で答弁しています。
 教育長が言うように学習面の対策が手薄になっているのなら、学力テストを2回実施して尻をたたくより、教員が本来の教科指導に専念できる条件を整備すべきです。部活動に時間が奪われるのであれば、外部指導員を増やすか地域に移行させ、また生徒指導に手がかかるのであれば、スクールカウンセラーやソウシャルワーカーなどの専門員を充実させ、同時に教員を増やして負担を軽減すべきです。
 私の教員時代でも部活動に熱心に取り組み、生徒の荒れが酷いときはその対応で日付が変わって朝方まで対応したことは多々あります。教育長が言うように部活と生徒指導に学力低位の原因を求めるのであれば、今に始まったことではありません。教科指導に専念できる時間を保障しなかった県行政の責任が問われます。
 私は、中学校の成績が小学校より低い大きな要因は、地域の成績トップクラスの児童たちが地元中学校に進学せずに、県立中学校や私立中学校に進学するようになったからです。地域によって異なりますが10%~15%に上ります。
 仮に児童100人の点数が1点から100点まで規則正しく分布しているとして、その内上位10人がいなくなれば、平均点は5点低くなります。上位15人がいなくなれば平均点は7.5点下がります。このモデルは極端ですが、成績上位者が地元中学に進学しなければ確実に平均点は下がります。地元に進学しない率が上がれば上がるほど平均点は下がります。競争教育を推し進めてきた教育行政の弊害を覆い隠し、部活や生徒指導の困難性に原因を求め、教師や生徒をテスト漬けにさせることは許されません。
 学校現場は1年を通じて涙ぐましい学力向上対策が行われています。全国学テの採点や分析等は業者委託で、夏休み前に結果が送られてきます。県教委は夏休みまで待てないとして、素早いフィードバックのために、自校採点をするよう指導します。そのためテストを委託業者に渡す前に全生徒の答案をコピーし、全教職員で分担して、分析ツールソフトにデータを入力します。その結果を受けて、学力向上推進プラン会議を行い、5月には学力対策年間計画を市町村教委と県教委に提出します。中間分析会議や学期末分析会議、7月には全国学テとの結果比較・確認を行います。前倒しでどんどん仕事が求められます。教育委員会は、弱点を克服するために指導方法を改善せよ、授業に生かせと教師に圧力をかけます。
 これ以外にも指導力向上研修として、中学校教員には全国学テの対象教科の全教員の研修が行われます。全体研修・中核教員研修会・地方別研修会等研修のオンパレードです。
 成績の振るわない学校では、退職校長等が指導員になって、フォローアップ研究授業が課せられます。
 年間通しての学力向上推進計画で、現場は振り回されます。ゆとりがありません。
 今回の中学校の県学力テスト2回分は業者委託で、問題作成・採点・結果分析等業者が行い、教員の負担軽減を行っています。しかし、昨年までは素早いフィードバックのために、自校採点を課し、課題を見つけ弱点克服をしろと圧力をかけていました。その上、評価テスト(過去問)でも自校採点を課していました。今回は2回実施するので素早いフィードバックは免除されています。これはダブルスタンダード・ご都合主義ではありませんか、何のためのテストなのか目的が分かりません。子どもや学校のためだけでないことだけは断言できます。責任の矛先を教師や子どもに向けさせているのではないですか。
 コロナ禍で業務が増え大変な中、さらに長時間労働に拍車をかけるのではないかと心配しています。
 学力テストの最大の弊害は子どもにストレスを与えることです。全国学テが導入以来、10歳から14歳までの自殺率は2009年に底を打ちましたが、19年には1.9倍となりました。子どもの自殺はこの数年、過去最多を更新する深刻な事態で、10代の死因のトップが自殺というのは主要7カ国(G7)で日本だけです。日本の子どもたちが高度なストレスとプレッシャーにさらされています。同時期に小学校の不登校認知件数は2.8倍、校内暴力は5.8倍、いじめは11.4倍にもなっています。子どもたちに表れている深刻な状況は、特定の子どもの性格や性質が問題ではなく、国連子ども委員会勧告で指摘されているように、競争主義的な教育政策が子どもたちに深刻な影響を与えていることは明らかです。
 そこで教育長に伺います。教育施策はスクラップアンドビルドでなければ業務が増えるばかりで、長時間労働は解消されません。県学テ2回実施に対してこれと同等かそれ以上の何をスクラップしましたか。
 また、学力テストには問題点が多々あります。一つは子どもがテスト漬けになる。二つは国連子ども権利委員会勧告の競争的な教育環境の改善ではなく、逆に競争を強いる。三つ目はOECD諸国で最長の教員の過重労働状態を一層悪化させる。四つめは教員不足が深刻なのにそれに拍車をかける。五つ目は民間教育産業に4000万円の委託費をつぎ込む事に矛盾を感じる。さらに私立中学校は参加しません。問題が易しく、学テに時間をとられたくないからです。県立中学校は全国平均より相当高いはずです。テスト時間が余りすぎて寝ている状況だそうです。いろいろな要因を分析せずに、全国平均に囚われる県教委の姿勢こそ問われるべきです。問題点の多い県学力テスト2回実施や全国学テを中止すべきです。これら二つのことについて、答弁を求めます。

《答弁》 宮﨑教育長
 これまでの全国学力・学習状況調査や県学習到達度調査の結果から、本県の中学生の学習状況には課題があるというふうに考えております。
 この課題を改善するために、今年度より中学校の県学習到達度調査は全学年を対象に年2回実施し、短いサイクルで学習内容の定着状況をきめ細かく把握し、得られた結果をもとに授業改善を図り、質の高い授業を提供したいと考えています。
 そうしたことが、子どもたちが意欲的に学びに向かい、結果として学力の向上につながると考えております。
 また、これまで教員が行っていた県の調査の採点を業者に委託することで、教員の負担軽減にもつながっております。
 県学習到達度調査と全国学力・学習状況調査ともに実施することは、子どもたちの学びを確かなものにする上で重要でありまして、今後も引き続き実施してまいります。

《再質問》杉山俊雄 県議
 県学テを2回実施して、全国平均にする、20位以内にするには、教師に相当なことを求めます。教材研究・研修等で、今まで以上に忙しくなります。教育長は現場が忙しく「学習面の対策が手薄になった」という。現場が今まで以上に忙しくなって、授業改善で質の高い授業提供ができますか。論理が矛盾していませんか。
 「子どもは意欲的に学び、学力が向上する」質の高い授業提供の時間をどう確保しろというのですか。こうすればできますよと、具体的に示して下さい。
 それから、県学テのスクラップアンドビルドの回答が残念です。自校採点を業務委託することがスクラップですか。
 県学テ2回実施の新政策にはいろいろな業務が付随します。その一部の業務(自校採点を委託)をなくしても、その他多くの業務は残ります。この認識では、新政策の度に業務は膨れ上がるばかりです。
 文部科学省通知(2019年3月18日)の「学校における働き方改革に関する取り組みの徹底について」を読まれていると思いますが、この通知は、異常な長時間労働の状況を早急に是正する目的で出された通知です。P11の8に「新たな業務を付加するような制度改正等を行う際にはスクラップアンドビルドを原則とし、(省略)、正規の勤務時間や人的配置等を踏まえ、教職員の業務量について俯瞰し、学校に対して新たな業務を付加する場合には積極的に調整を図る体制を構築すること」と書かれています。要するに「この通知では」、何かしたかったら何かを廃止するスクラップアンドビルドが原則だといっています。最後の「体制を構築する」とありますが、これは新たな負担を課すならば人を新たに雇えと言うことです。新政策2回実施の県学テにおける業務委託が文科省の言うスクラップアンドビルドに当たりますか。再質問をします。

《再答弁》 宮﨑教育長
 業者委託することによって、採点も、それから分析も業者に委託をすることになります。従いまして、教員の仕事の負担の軽減にはつながると考えております。それから、基本的に、今までは、各学校、教員の考えで、特に、早期に結果を見たいと、それから、それのために改善をしていきたいというふうな教員もございますので、そういった教員におかれましては、一生懸命、自分でしっかり採点をされるというようなこともございます。

《コメント》杉山俊雄 県議
 ある教育長の「日本の教育をダメにした元凶は学テだ」との発言が忘れられません。大変、的を射ています。
 学力テストの最大の弊害は子どもにストレスを与えることです。全国学テが導入以来、自殺率・不登校数、校内暴力、いじめが急増しています。これは子ども個人の問題ではなく、子ども取り巻く環境が子どもを追い詰めていることは明らかです。
 テストで子どもを追い立てても学力が伸びないことは20年近くの取り組みではっきりしています。生徒の弱点は把握出来ているはずだし、毎年先進県に教員を派遣し、過去問に精を出してもそれほど成果が出ていません。
 中学校の成績低位に一番の原因は先ほども述べましたが、地域のトップクラスの児童が地元中学に進学いないことです。地域の児童が地域の学校に進学する制度にすれば問題は解決。
 今の学校に一番必要なのはゆとりです。ゆとりこそが生徒を多面的に伸ばします。
 子どもは興味関心を持てば、意欲的に勉強します。強制されれば嫌気がさします。子どもと学校にゆとりを取り戻しましょう。
 ゆとりある学校現場であれば、教育に希望が持てます。教員志願者が増え、教員不足も解消するでしょう。


3.教員の長時間労働の解消について
《質問》杉山俊雄 県議
 教員の労働実態は、文科省の調査(2016年)によれば、持ち帰り仕事を含め1日12時間近く働き、その上、土・日も働き過労死ラインを超えています。管理職・特に教頭は教諭以上に深刻です。
 1日の平均休憩時間は、小学校で6分、中学校で8分と大変少ない状況です。これは労働基準法34条「6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は60分」に違反しています。民間企業では、違反すれば使用者は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。公立教員も労働基準法が適用されますが、公務員の場合、違反しても使用者への罰則がありません。だから、使用者は法を守らなくても違反にならず、時間管理が甘くなります。さらに、公立学校の教員はどんなに残業しても「残業代ゼロ」と決められている「給特法」があり、「定額働かせ放題」になっていることが長時間労働に拍車をかけています。
 過酷な労働条件下で、病気で倒れる教員が増加しています。過労と密接な関係がある精神疾患による休職者数は、1980年代は1,000人前後だったのが少しずつ増え続け、1990年後半から急増し、2007年から10年間以上は、5,000人前後で高止まりしています。休職者の推移は、職場の多忙化の進行をみごとに表しています。
 昔から残業がこんなにあったわけではありません。1966年と2016年の全国教員勤務実態調査から週あたり残業時間を比較すると、小学校では1時間20分から24時間30分と15倍に増えています。中学校では2時間30分から29時間41分と12倍になっています。
 残業時間が増えた理由を2019年の教育長答弁では、いじめや不登校等の生徒指導上の課題や保護者への対応等に加え、校外校務の増加等が原因と答えていますが、これが真の増加の原因ではありません。
 残業時間が増えた最大の理由は、教員定数を増やさなかったことにあります。1958年の「義務標準法」では、1日の勤務時間の半分は教科指導(4コマ)、残りの半分は教科外指導、準備整理、その他校務一般に当てるとし、1日8時間の枠内で仕事が終わるよう制度設計されていました。
 それが2002年の完全週5日制になったにもかかわらず、週6日制と同じ授業時数をしなければならなくなり、2割も少ない教員定数で増えた授業数をこなさなければならなくなったからです。(教員一人当たり24コマをこなしていたのとおなじ授業を一人当たり20コマでこなすとすれば、教員2割増やす必要がある)
 もう一つは授業以外の業務が増加されたことです。2019年の教育長答弁以外の業務が学校現場に押しつけられました。全国学力テストや県学力テストは言うまでもありません。教育委員会の学力向上事業として、授業推進のための会議、テスト成績アップのための指導計画書の作成・提出。また研究授業の推進校では、公開授業の授業案づくりで忙殺、打ち合わせ会議の重ね、何回かの試行授業。さらに職業体験学習では、打ち合わせ会議・事前準備、体験職場への文書作成等があります。このように増える会議と書類書き等が多岐にわたります。
 学習指導要領による新たな学力観「関心・意欲・態度」を成績評価するための数値化が求められます。挙手の回数、提出物のチェック等をエクセルに入力。意味を感じない作業にため息が出ます。
 2020年4月から長時間労働を改善するために、教職員の勤務時間把握が管理者の法律上の義務になり、昨年から時間把握のためにタイムカード等が導入されています。長時間労働は改善されていますか。虚偽の報告は懲戒処分の対象になります。
 私が聞く限りでは改善されていないようです。Aさん:出退勤はカードでしていますが、ほとんどの人は持ち帰り仕事です。4月は忙しかったから1日13~15時間ぐらい働いていました。Bさん:昨年は高校3年生を担任していたので、推薦書類を書く時期は週末もほぼ出勤していました。超勤は平均すれば50~60時間ぐらいです。Cさん:退勤後仕事はしていません。超勤が一定以上あると校長面談があります。運動部顧問で土日来ている人は面談したと言っていました。早く帰れと言われても練習をほり投げて帰れない。面談をしたという実績を残したいのではと思います。7時40分ぐらいに出勤し、午後6時半から7時過ぎの間に退勤します。
 Dさん:通常7時半に出勤し、19時半に退勤します。小学校低学年を受け持つので授業時数は週26時間(コマ)で空きがありません。放課後は丸付け、下校時の児童の事故等の対応、保護者への対応、報告書類の処理に追われて教材研究の時間が取れません。教育委員会への報告書類は不登校状況報告、図書館利用報告、児相への関わり、教委のアンケート、困難状況報告、タブレット使用事例、ICT教育に関わること等多岐にわたります。教材研究は朝早く起きて1時間から2時間行います。学校で12時間拘束されるが持ち帰り仕事はカウントされません。友達は土曜・日曜に1週間分の教材研究をするそうです。このように時間管理が導入されても長時間労働は改善されていないようです。
 そこで教育長に伺います。一般企業では業務量から必要な労働者数が算定されますが、公立学校の業務量は今の教員数でこなせる量になっていますか。その根拠はありますか。
 また、2019年の一般質問から3年が経過しました。長時間労働を解消するために県教委はどのような施策を実施して来ましたか。答弁を求めます。

《答弁》 宮﨑教育長
 教員には、児童生徒一人一人に丁寧に関わりながら、その実情から生じる多様な課題に対する必要があり、その業務を定量化・模式化することにはなじまない面があります。
 教員の長時間労働の解消には、教職員の十分な確保と、業務のスリム化を併せ、両面から進める必要があります。
 教職員数につきましては、国の加配を活用し、小・中学校で国の基準より少人数の学級編制に必要な教員定数を確保するとともに、部活動指導員や不登校児童生徒支援員、教員業務支援員、スクールカウンセラーなどの専門スタッフを増員しているところです。
 教員の業務につきましては、令和2年4月に「教育職員の業務量の適切な管理その他健康及び福祉の確保を図るための方針」を策定しました。また、令和3年4月に「教職員等の働き方改革推進プラン」を改訂し、会議の簡素化や、部活動における休養日や練習時間の設定等、校務の効率化を進めるとともに、学校に対して行っている調査やアンケート、研修会について精選、簡素化するなど、業務のスリム化に取り組んでいます。
 さらに、今月6日スポーツ庁が公表した「運動部活動の地域移行に関する検討会議提言」を先取りして、部活動業務の軽減に向けた対策を検討しております。
 そもそも教員にとりましては、研修会、研究会というのは、教員の力を伸ばす絶好の機会だというふうに考えております。また、教科の研究・準備というのは、必須の要件であると思います。それらを疎かにしているわけにはまいりません。時間を有効に使うことも大切だと考えます。
 教育を充実させるためには、授業準備や児童生徒と向き合うための十分な時間を確保する必要があり、今後も、教育の質の担保と教員の働き方改革の両立を目指し取り組んでまいります。

《コメント》杉山俊雄 県議
 課題意識・問題意識を充分持っていると思います。働き方改革プランを策定して解決されようとしていると思います。しかし、現場にはその思いが届いていません。また、時間管理を導入しても長時間労働は克服されていません。
 長時間労働の要因には2つあります。一つは2割も少ない教員数で週6制時と同じ年間授業時数をこなさなければならなくなった。少ない教員数で目一杯の授業時間数をこしているからです。その結果、教員の持ち時間が増えたこと。
 もう一つは学テ問題で言いましたが、スクラップアンドビルドができていなくて、業務が増えたからです。それは業務量と教員数の関係の根拠を知らないからです。
 1968年当時、文部省は1日8時間で授業と他の業務が終わるように制度設計していた。1日8時間のうち4時間は授業、残り4時間は授業準備を含めた他の業務。8時間内で終わる業務にしなければならないというのが基本・根拠でした。
 だから、昔はほとんど残業がなかったのです。今はその根拠を知る人がいないので、業務が膨れ上がってしまったということ。
 文科省通知「働きから改革」の原則は、スクラップアンドビルドです。何かをしたかったら、何かを廃止する。
 県教委が率先して業務を簡素化(なくす)することに指導性を発揮してほしいと思います。



宮﨑教育長の答弁を聞く、杉山俊雄県議(左)]

  2022年6月議会   杉山俊雄プロフィール、質問一覧
  日本共産党県議団HOME