2022年12月和歌山県議会 楠本文郎 一般質問 概要記録


録画中継
2022126
1.コロナ感染症の現状と今後の対応について

2.感染症対策、事業者支援について
(1)「和歌山県事業再構築チャレンジ補助金」のねらいと独自性
(2)「ものづくり生産力高度化事業」の説明
(3)県経済の現状認識と今後の取り組みについて

3.和歌山南陵高校の学校運営の混迷について
(1)9月以降の現状について
(2)私立学校法に基づく指導内容の認識について
(3)転入学の条件について

4.県営射撃場について(要望)


1.コロナ感染症の現状と今後の対応について
《質問》楠本文郎 県議
 新型コロナウイルスの感染状況は、県内において、今後どのようになっていくのか悩ましい状況にあると感じています。
 さて現在、第8波とも言われていますが、日々の感染者数はかなりの状況を示しています。全国的のも増加傾向であり、地域によっては過去最多を更新している地域もあります。そこで、県下の和歌山県の感染状況についてまずお答えください。
 PCR検査等の無料化事業の期間延長についてはすでに対応をしていただきました。11月24日に、知事の判断により、特措法第24条9項に基づき、感染に不安を感じる無症状者が行える「一般検査」を、取り扱い薬局も増加して、和歌山県として12月31日まで延長されていることを評価し、感謝申し上げるところです。
 その上で、11月21日付け厚労省から「令和4年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)の実施にあたっての取り扱いについて」の事務連絡が出されています。この事務連絡では、「緊急包括支援交付金」を令和4年の年度末まで延長すること、地域における病床確保の実態等を踏まえ、コロナ病床の機能強化や通常医療との両立を促進することとしています。
 これまで和歌山県の感染症対策は国の方針通り、ただ従うということをせず、事実上の全数把握など知恵を絞って続けてきました。そのことでもって高い評価を受けてきました。さらに「病床の確保」は県が何より大事にしてきた方針だと思います。この点をふまえ、今後の感染拡大に備えた対応について福祉保健部長に伺っておきたいと思います。

《答弁》 福祉保健部長
 新型コロナウイルス感染症の感染状況については、10月中旬以降、新規感染者数の増加傾向が続いており、今後の動向についても、新たな変異株の出現や社会経済活動の活発化などによる感染の急拡大を懸念しております。
 今冬に想定されている季節性インフルエンザとの同時流行におきましても、医療機関をはじめ関係機関と連携を図りながら、これまで蓄積してきた知見を活かし、柔軟に対応できるよう、現在、準備を進めているところです。
 入院医療体制につきましても、県内各圏域の実情や医療機関の特性、一般医療への影響等を考慮しつつ、入院が必要な方に対応できるよう、国の病床確保事業を最大限活用し、必要な病床数を確保してまいります。

《要望》楠本文郎 県議
 感染者の推移は、12月3日は620人、病床使用率は83%ありました。軽症化といわれているけれども、酸素投与者は40名前後となっています。昨日は、あらたにクラスターが5件ということですね。決して安心できる状況ではないということを抑えておきたいと思います。
 時期、季節的なことで言えば、答弁にあったように社会経済活動の活性化を図る年末年始になります。この点では、行動制限はないとされていますが、いわゆるブレーキを踏まざるを得ない状況にあると思います。
 そのためにも、無症状の方が感染を拡散する事態を防ぐというのは「コロナウイルの特性」から強調しすぎることはないと思います。
 ひとつの事例ですが、友人が息子の感染によって濃厚接触者になりました。PCR検査で陽性になりました。しかし、症状は出ていないのです。この方は福祉施設の勤務をしています。同時に同居の連れ合いは体質的にワクチンを打てないと診断された方です。入院の対象ではないけれども、隔離する必要があることを保健所が判断して紀南のホテルに入れることになりました。こうした判断が素早くできるという和歌山の医療を大事にしたいですね。
 また、紹介した病床確保のための事務連絡は、地域における、つまり知事の判断で減額されないように判断できる基準が示されたものです。現状は病室を確保する必要があることを強く要望しておきたいと思います。


2.感染症対策、事業者支援について
(1)「和歌山県事業再構築チャレンジ補助金」のねらいと独自性
《質問》楠本文郎 県議
 今議会の12月補正予算には、「和歌山県事業再構築チャレンジ補助金」として12億円の事業化が上程されました。この「事業再構築補助金」という名称で、国においても同様の事業があります。県の今回の「チャレンジ補助金」12億円は、国がやっているにもかかわらず、しかもコロナ対策の臨時交付金を使って行うということになります。この補助金のねらい、また、国とは違う独自性について、商工観光労働部長からご説明をいただきたいと思います。

《答弁》 商工観光労働部長
 今議会に上程しています、「和歌山県事業再構築チャレンジ補助金」は、県内の中小企業者等が取り組む新分野への参入や業種・業態転換等の事業再構築に対して補助金を交付するもので、新たな挑戦に意欲を有する事業者の取組を応援するものです。
 同補助金は、国の事業再構築補助金の要件である、売上減少は求めず、また、既に国の事業再構築補助金の採択を受けた事業者は、2回目の申請は出来ないのですが、別の新たな事業に挑戦する場合は、申請可能とする予定です。
 加えて、和歌山の地域資源を活用した事業や、適正な下請取引等に向けて国が推進している「パートナーシップ構築宣言企業」には、採択にあたり加点措置を講じる予定です。
本事業により、アフターコロナにおける事業者の前向きな取組を支援してまいります。

(2)「ものづくり生産力高度化事業」の説明
《質問》楠本文郎 県議
 同じく補正予算で「ものづくり生産力高度化事業」2億円余が計上されています。この補助金の対象事業者や対象事業、また、補助率や補助上限額はどうなっていますか。この補助制度のこれまでの実績件数、交付額をお示しいただいて、今回提案分では、どの程度の件数・額を見込んでおられますか、お答えをいただきたいと思います。

《答弁》 商工観光労働部長
 和歌山県ものづくり生産力高度化事業費補助金は、県内に事業所を有する製造業者が、デジタル技術等を活用し生産力を高度化するために行う総額300万円以上の設備投資を対象に、補助率は事業費の1/3以内、補助額の上限額は2000万円までを補助するものです。
 当該補助金は、令和3年度から開始し、その年度に、12件の事業者に対して9476万4千円の交付を行い、また、今年度には、8件の事業者に対して、9627万7千円の交付決定を行ったところです。
 令和4年度12月補正予算案として、20件の事業者からの申請を想定し、事業者への補助金を総額2億円とする提案をしています。

(3)県経済の現状認識と今後の取り組みについて
《質問》楠本文郎 県議
 1点目でもお尋ねしたように新型コロナ感染者は予断を許さない状況ですが、国は行動制限を行わない方針です。国民の自己防衛意識は逆に高まって言えるのではないでしょうか。
 そのため、地域・業種によってはさまざまな社会経済の影響により、いまだ、売り上げ減少が続いている事業者も少なからずいます。
 この状況の中で、国において「地方交付金」「地方創生臨時交付金」という地方の裁量分を出していると考えます。県経済における現状認識と、県としての今後の取り組みについて包括的に商工観光労働部長に答弁を求めます。

《答弁》 商工観光労働部長
 秋口以降の新型コロナウイルス感染症第7波の沈静化により、飲食や宿泊需要は、緩やかながら持ち直しの動きが継続しております。
 さらに、政府の水際対策の緩和により、県内にも外国人観光客が戻りつつあります。
 このようななか、県が実施した直近の影響調査においても、コロナ前と比較して売上が減少していると回答した事業者の割合は改善傾向が続いており、県経済へのコロナ禍の影響は薄らいできていると考えられます。
 そこで、今後の事業者向け支援については、売上が減少した事業者への一律の支援策から転換し、前向きな投資を促す「和歌山県事業再構築チャレンジ補助金」や資金繰り支援等に重点を置いて実施してまいりたいと考えております。
 加えて、国の補正予算で措置された事業について積極的に周知を図りながら活用を促します。
 また、需要喚起策である「全国旅行支援」については、年明け以降に、新たに割引率を見直し実施できるよう今議会に提案をさせて頂いております。
 引き続き、社会経済の動向を十分注視しながら、事業者向け施策を進めてまいります。

《要望》楠本文郎 県議
 景気持ち直しの動向と、チャレンジへの支援策は一定の理解をします。
 しかし、第8次とも言われる感染状況の中で、この財源は「新型コロナ感染症対応地方創生臨時交付金」であり、その中の「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金」を充当した事業になっていることに違和感を持ちます。チャレンジ予算は別の財源で措置されるべきで、「価格高騰重点支援」が本来求められるものではないでしょうか。
 山形県では「原油価格・物価高騰緊急支援給付金」事業を実施している。売り上げの30%減少、又は粗利が30%以上減少した事業者に対しての支援を行います。
 物価高騰は、ロシアの侵略に加え、コロナの低迷と、円安による影響です。
 これから事業者にはインボイスの重み、また消費税の預かり金が重くのしかかってきます。
 私のまわりではチャレンジできないで悲鳴を上げている事業者が少なからずいます。
 「全業種を対象」とした、「30%以上減収の事業者へ」の寄り添う施策を検討していただきたいと要望します。


3.和歌山南陵高校の学校運営の混迷について
(1)9月以降の現状について
《質問》楠本文郎 県議
 和歌山南陵高校の学校運営の混迷を早期に解決して、「生徒たちも保護者ものびのびと高校生活を送って欲しい」という思いから、これまで質問を重ねてきました。9月議会の質問から3か月たちます。すでに二学期も終了の時期を迎えようとしている中、スポーツクラブの奮闘や、音楽発表会の実施など子ども達の頑張り、活躍が伝えられています。
 一方で、私に伝えられる個別具体的な情報は、経営面での改善がなされているとはとても言い難い状況が続いていることが伝えられています。経営問題は、新理事長のもとで期待を持ったのもつかの間、1か月余りでさらに新たな理事長となっています。正常化したならばもっとも協力を求めるべき保護者に対しても全保護者を対象とした会は、9月も10月もそして11月も開かれずに結局先送りされてきました。
 また、来年度に向けて、中学校進路指導教諭に対し、学校紹介を行う時期にも入ります。中学生の進路指導において、和歌山南陵高校を対象校に考えて良いのかどうか悩む声が日増しに高まります。
 すでに県においては日常の改善指導とともに、現地調査もされてきたことと思います。調査と指導した状況の報告をいただきたいと考えます。

《答弁》 企画部長
 和歌山南陵高等学校に関する9月以降の現状についてですが今夏に就任した理事長が10月に開催された理事会において解任され、新たな理事長が選任されたという報道がありました。
 このことを受けて学校法人に対し、理事長交代の経緯や今後の法人及び和歌山南陵高等学校の運営方針について、来庁の上での説明を求めるとともに、静岡県の改善命令に従い速やかに経営状況の改善を行うことを求めたところです。
 また、毎年実施している定例の現地調査を、今年度は、9月9日、12日及び11月7日に経理関係書類や授業実施状況等について、計3回に分けて実施し、当該調査の結果、これまでにも改善を求めてきている公租公課等の滞納や図書室の未設置など、改善が必要な事項がありましたので、あらためて文書による行政指導を行ったところです。

(2)私立学校法に基づく指導内容の認識について
《質問》楠本文郎 県議
 大学設置・学校法人審議会学校法人分科会による検討結果などを踏まえ、平成26年に私立学校法が一部改正されています。この改正は、私立学校の自主性を尊重しつつ、私学全体に対する不信感につながるような異例な事態に対し、所轄庁が適切に対応するための仕組みを整備したものです。
 改正の概要は3点あります。1つに所轄庁による必要な「措置命令」等の規定です。それは 学校法人が法令の規定に違反したとき等に所轄庁が必要な措置をとるべきことを命ずることができる=措置命令、学校法人が措置命令に従わないときは、役員の解任を勧告することができる=役員の解任、措置命令や役員の解任勧告を行う場合には、所轄庁は、あらかじめ私立学校審議会等の意見を聴かなければならない=審議会意見。
 2つに、報告及び検査の規定の整備として、所轄庁は、この法律の施行に必要な限度において、学校法人に対し業務・財産の状況について報告を求め、又は学校法人の事務所等に立ち入り、検査することができる=立ち入り検査権。
 3つに忠実義務規定の明確化として、学校法人の理事は、法令及び寄附行為を遵守し、学校法人のため忠実に職務を行わなければならないことを規定する=忠実義務。
 この改正に基づいての静岡県の指導内容と、文部科学省の私学行政課との協議がどこまで進んでいるかを質すことは可能ではないかと考えます。以上企画部長の答弁を求めます。

《答弁》 企画部長
 私立学校法に基づく指導内容の確認についてですが、平成26年の私立学校法の改正により、同法第60条に学校法人に対する所轄庁の措置命令等に関する規定が、第63条には、報告及び検査に関する規定が設けられたところです。
 学校法人南陵学園に対しては、同法人の所轄庁である静岡県知事が、これらの規定に基づき、私立学校審議会の意見を聴いた上で、本年7月8日付けで経営改善等に係る措置命令を発出しました。
 現時点で、静岡県から当該措置命令に関するその後の状況について公表はされておりませんが、本県にも可能な範囲で情報の提供を受けているところであり、状況に応じて文部科学省との協議にも参加しております。
 本県からは、生徒の学びに支障が生じ、不安を抱えたままの学校生活が続くことは好ましくないとの考えのもと、静岡県に対して私立学校法に基づく適正な措置を早急に行うよう求めているところでございます。

(3)転入学の条件について
《答弁》楠本文郎 県議
 3点目に、このような状況とは関係なく、県内の高等学校への転入学を希望する生徒がいた場合の条件についてお尋ねしておきます。私学への受け入れは各校によっての設置理念が違うことから、条件はそれぞれの高等学校の判断があるかと思いますが、県立校では受け入れの条件はいかがでしょうか。教育長から方針をお示しください。

《答弁》 宮﨑教育長
 県内の高等学校への転入学の条件についてでございますが、志を持って入学した生徒が、その学校での高校生活を全うできることが最も大切であり、学びの保障という観点からも、関係者が力を合わせていくことが重要であると考えます。
 様々な理由で転入学を希望する生徒がいた場合は、本県では県立高等学校への転入学について次のように運用しています。
 前提条件が3つあり、1つ目は、全日制課程の場合は生徒及び保護者が和歌山県内に住所を有すること、定時制課程及び通信制課程の場合は生徒が和歌山県内に住所または勤務先を有することが確実であること。2つ目は、学校教育法第一条に定められている高等学校に在籍していること。3つ目は、一家転住等やむをえない正当な理由があることとしています。
 また、転入校の受け入れる条件としては、在籍校と転入校との教育課程に大きく差異がないこと、転入校の定員など、教育上支障のないこととしています。
 こうしたことを踏まえた上で、在籍校と転入校との協議・了解のもと、学力試験等を実施し、受け入れを判定することとなっています。

《再発言》楠本文郎 県議
 財務状況は極めて厳しいとの推測のもと、来年度向けての募集の成否が好循環となるか、運営不能となるかの瀬戸際にあると考えます。
 子ども達の評価は、前任校と全く違います。礼儀正しく、前向きの姿勢で接していることが地域社会で評価されています。その子ども達は、県立校ではない、ひとりひとりの個性を理解してくれる高校という受け止めで頑張ってきています。
 学校祭が12月10日に予定されています。保護者説明会が、同日開催され、参加確認を求められています。この保護者会は、県としても求めていたものです。内容も本来的に保護者に説明すべき事項が報告されるかどうか問われます。担当課として、参加して学校側と保護者の意見がかみ合っているかを確認することが必要か否か、それが良い方向につながるか、よく見極め熟慮して判断いただきたいと思います。


4.県営射撃場について
《要望》楠本文郎 県議
 仁坂知事が、11月9日「県営射撃場の整備について」との記者発表をされました。
 知事は、「県営射撃場ですが、私の経験で言うと16年ぐらい、ずっと悩んだり揉めたりして上手くいかなかったのですが、上手くいきそうな感じになってきていて、多分できると思いますので発表します。ただし、まだ完全に全ての人とちゃんと合意したり契約したりしていないので、今のところ固有名詞は秘すということでお願いしたいけど、ものすごくいい話なので発表だけします。」という記者会見です。
 以来そもそも射撃場とはいかなる施設になるのか、過去の事例はないのかなど調べると、16年間ですから、いろんなケースがあったのでしょうが、2009年9月に補正予算が提案されたが、2010年6月議会で計画断念した事例を知りました。
 記者会見でも「結構大変です。第一に、お金が掛かります。第二に、やっぱり音もするし、上手く(対策を)やるので、鉛公害は出ないように設計して建設しますが、そういう問題が過去にあったので、嫌だなという議論もあります。それから、実際に作るのはいいとして、県としては維持経費がものすごく掛かって、不良資産にならないか、という議論がある。そうなったら大変で、それもちゃんと見極めておかないといけない。三番目に、地元の方が嫌だと言った時は、その地元の市町村がちゃんと説得してくれないといけない。ということで、我々は、ずっと、射撃場整備の3条件を満足するような形で進めてきました。」と整備の3条件を示されています。
 今回、そうした条件が一定クリアできるめどがついたから知事の記者発と表されたと思うのですが、少し拙速ではなかったでしょうか。本来なら質問したいところですが、知事も記者会見の最後に「新しい知事がこんなの駄目という可能性はある」と言われていることから、今回は「県行政の進め方」としての懸念を要望という形で発言しておきます。
 私たち日本共産党県議団にとって、今回の話しは寝耳に水でした。この間、県政の場でこの射撃場の議論がどれだけなされてきたでしょうか。知事も言われたように県営とするなら建設のお金もかかるし維持費もかかる、新たな県施設を作るというこんな大問題が、県庁内部のどこでどんな議論がなされ、記者会見にまで至ったのでしょうか。本来なら審議会などで第3者の意見も聞きながら進めるべきような課題だと思います。私は、2010年に前の計画が断念されてから、こんにちまでどこでどんな議論がされたのか、これまでの経緯と議論の内容をつまびらかにしないかぎり、議員としても判断のしようがないと考えています。
 ぜひ新しい知事にも、こうした意見があることを引き継いでいただき、複雑な経過をたどってきた案件ですから慎重かつオープンな議論をされるよう要望しておきます。
 以上で私の質問は終わります。仁坂知事におかれては、本当にご苦労様でした。



                        企画部長の答弁を聞く、楠本文郎県議(右)
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