2022年12月和歌山県議会 杉山俊雄 一般質問 概要記録


録画中継
2022128
1.化学物質過敏症(香害)について
(1)化学物質過敏症(香害)に関する周知・啓発について
(2)学校における実態把握、周知・啓発について

2.五條市の「2,000m滑走路」建設計画の和歌山県への影響について


《コメント》杉山俊雄 県議
 昨日、玄素議員がミサイルが飛んできたらの話しをされました。
 先制攻撃としての「敵基地攻撃能力の保有」が閣議決定されようとしています。物騒な世の中になってきたなと感じました。
 今日、12月8日はハワイの真珠湾に先制攻撃をした日です。日本が戦場となり、4年後には原子爆弾が広島、長崎に投下され、破滅への第一歩となった日です。
 憲法前文の「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにする」の決意を思い起こしました。また、「戦争が起こらないようにする」のが政治の責任です。平和外交の視点での論議が必要です。今日、新聞を読んでいて思いました。

1.化学物質過敏症(香害)について
(1)化学物質過敏症(香害)に関する周知・啓発について
《質問》杉山俊雄 県議
 化学物質過敏症とは空気中を漂う化学物質を吸入することにより症状が出てくる病気(2009年に保健病名に登録)です。この病気が厄介なのは、血液検査などの客観的な指標で識別することが難しく、ほとんどが自覚症状です。患者は100万人以上で予備軍も入れると1000万人とも言われています。
 化学物質過敏症は「新しいタイプの公害病」です。従来の公害病は特定の地域で発生していたのに対して、この病気は個別の家の中で起き、さらに家族の中でも発症する人と発症しない人が出ます。地域とも家族とも共通項を持てない発症者は、周囲の無理解から孤独感と疎外感で大きな苦しみを味わうことになります。
 2008年頃から、香りの強い海外製の柔軟仕上げ剤がブームになったのをきっかけに、香りの刺激で化学物質過敏症を発症する方が増えています。日本消費者連盟は「柔軟剤、消臭除菌スプレー、制汗剤、芳香剤、合成洗剤などの強い香りを伴う製品によって健康被害が生じる(体臭は含まれない)」化学物質過敏症を「香害」と定義しています。
 日本消費者連盟が事務局を務める「香害をなくす会」が行ったアンケート(2019年12月末~2020年3月末・9,000人分以上)結果で切実な事態が明らかになっています。
 香り付き製品のにおいで具合が悪くなったことがある人は約8割を占め、そのうち86%が柔軟剤と回答しています。次いで香り付き合成洗剤が66%以上です。洗濯に使われる日常品で被害が多いことが分かります。香水、除菌・消臭剤、制汗剤、アロマと続きます。自由記述欄では、整髪料、洗髪料、芳香剤(部屋用、トイレ用、車用)があります。化粧品全般、ハンドクリームにはかなり臭う製品があり、会社や電車の中で塗り直すことがあるため、被害を感じることが多いようです。
 最も多い症状は頭痛、吐き気です。続いて思考力低下、咳、疲労感、めまい、鼻の粘膜の痛み、目の痛みや充血、呼吸困難と続きます。
 具合が悪くなる場所で一番多いのは乗り物の中、次いで店、公共施設、隣家からの洗濯物のにおい、職場、病院学校の順です。路上や公園・駅等「すれ違った人」や「人混み」なども含まれ、「給食エプロン」など「子どもが持ち帰ったもの」との回答があります。保育園や幼稚園、宅配の人、修理や工事の人、荷物にも香が付着しているというのが目立ちます。まさに人がいる場所であればほぼすべての場所や場面で遭遇してしまうのが現状のようです。
 香害で体調が悪くなった人のうち、休職や退職、欠席や休学など日常生活に支障を来す人は約2割に上ります。その中に職を失った、長期間休むことになった、電車に乗れないという深刻な事例もあります。学校に通えない、休みがち、不登校という子どもの事例もあります。柔軟剤のような日用品で、労働や教育の機会が奪われている、収入が断たれ、学業を中断せざるを得ない実態が明らかになりました。
 香りの製品や場所から離れると改善する人が7割、残り3割は原因から離れても体調が悪い状態が続くと回答。数日間寝込むケースもあります。具合が悪くなった人のほぼすべての人が香害対策を求め、柔軟剤などの家庭用品へのマイクロカプセル使用の中止を求めています。製品の中止を求めたいが、「まずはマイクロカプセルだけでも中止して欲しい」との声ではないかと思われます。
 早稲田大学理工学部環境資源工学科の大河内博教授は「香害を引き起こす化学物質を特定することは困難ですが、アンケートで柔軟剤と香り付き合成洗剤が重大な原因となっていることが明らかになった意義は大きい」と言います。
 県内在住のAさんは、新築マンションの建材の臭いや柔軟剤の香りで、吐き気や頭痛がひどく仕事を続けられなくなりました。お隣さんに、「香り付きの柔軟剤で寝込んでしまうので、使うことを控えていただけませんか」と頭を下げましたが、「皆さん使っていますよね」と言われるとそれ以上言えません。理解してもらえない。人間関係が崩れてしまう。そのことに一番苦しんでいます。健康を害しただけでなく、家の売却で借金が増え、仕事ができず、普通に暮らす生活がなくなりました。あまりのつらさに死を考えたことは一度や二度ではありません。「誰もが相談できる窓口があると安心する。啓発だけでなく、受け入れてもらえる環境を整備することが大変重要」と訴えています。
 そこで福祉保健部長にお伺いします。化学物質過敏症で苦しまれている方にとっては「周囲の理解と配慮」が不可欠であり、社会全体がこのことを認識するためにも、化学物質過敏症や香害に関する啓発に取り組む必要があると思います。しかし、和歌山県のホームページを「化学物質過敏症 香害」で検索しても、すぐにアクセスできません。配布資料埼玉県草加市ホームページにあるように入力すればすぐにアクセスでき、情報量が多く利用しやすいように変更出来ないでしょうか。お答えください。
 また、「香害をなくす会」が行ったアンケート調査で、乗り物や学校、病院などの公共の場での被害が多いことを考えると、今は症状が出ていない人も含めて社会全体で認識・理解して、香の自粛や柔軟剤などの使用自粛、安全性の高い製品の開発などの検討が必要となっています。香害は特定の人だけの問題ではありません。誰でも突然症状が出てくることがありますし、小さい子どもへの影響はさらに深刻です。過敏な人が安心して生活できる環境はすべての人にとって良い環境です。
 2021年8月に、「香害をなくす会」が要請していた香害の周知と香り製品の自粛を求めるポスターを国の5省庁(消費者庁、文科省、厚労省、経産省、環境省)が連名で配布資料のとおり作成、発行しました。国が発行したことは一歩前進です。
 米国の疾病対策予防センターは2009年、1万5千人の職員に、香水だけでなく、香り付き洗剤や柔軟剤仕上げ剤などで洗濯した衣類を身につけて職場に来ることの自粛を要請し、施設内での香り付き製品の使用を禁止しました。職場における空気環境を良い状態に保つことは、職員の健康と仕事の環境を維持するための予防的措置につながるからです。
 2019年以降、全国各地で香害をなくす運動が広がりはじめ、地方自治体での陳情、意見書採択、学校での周知や自粛の呼びかけなどの取り組みが進んでいます。2020年6月現在、香や化学物質の害を知らせるポスターやチラシなどを作成した自治体は51、ホームページで呼びかけた自治体は94に上っています。
 そこで福祉保健部長にお伺いします。香害がみんなに知ってもらえるレベルになるようなポスターを作成し、県庁各部局の職員が香害への理解を深めるために庁内で周知すると共に、県ホームページへの掲載や公共施設での掲示等に活用してもらいたいと考えますが、お答えください。

《答弁》 福祉保健部長
 化学物質過敏症は、ごく微量な物質に対しても過敏に反応し、様々な身体的・精神的症状があらわれるものとされておりますが、現時点では医学的にその定義が確立されておらず、発症に至るメカニズムも不明確であり、その症状や原因が患者によって様々であることから、客観的な臨床検査法や診断基準が確定しておりません。
 しかしながら、柔軟剤等の香りにより頭痛や吐き気が生じるなど、その症状に苦しみ、周囲の配慮が必要な方々がいらっしゃることから、県としましては、このことを正しく認識して頂けるよう周知啓発に取り組むことは重要であると考えます。
 県では、これまで化学物質過敏症に関するホームページの作成や県民の友での周知啓発を行ってきたところですが、議員からのご指摘を踏まえ、ホームページにつきましては、より簡単にアクセスできるようにするとともに、具体的な症状例や症状を誘発する可能性のある物質について掲載するなど、内容の充実を図り、ホームページを利用される方にとって、より分かりやすくなるよう改善して参ります。
 また、ポスターによる啓発につきましても、国が作成した香りへの配慮に関するポスターを活用し、庁内各部局に対して周知するとともに、県ホームページへの掲載や公共施設での掲示等に取り組んで参ります。

(2)学校における実態把握、周知・啓発について
《質問》杉山俊雄 県議
 学校では教室等の環境に関わる6種類の揮発性有機化合物について、学校薬剤師と連携し、年1回、検査を行い、基準を超えた場合には、必要な措置を行っています。しかし、学校の検査は建材とか備品から放散される揮発性有機化合物の対策が中心です。
 教員や子供たちが教室内に外から持ち込む香りつき柔軟剤、洗剤、消臭除菌スプレー、制汗剤等から発散される揮発性有機化合物の健康被害については検査されていません。
 平成24年1月には、文科省により「健康的な学習環境を維持管理するためにー学校における化学物質による健康障害に関する参考資料」が示されており、日常の留意点として、換気に努めることや芳香剤・消臭剤を可能な限り使用しないようにすることが書かれています。
 そこで教育長に伺います。シックハウス症候群や化学物質過敏症の児童・生徒は、より学校生活上で配慮が必要です。本県の学校において、化学物質過敏症等により、学校内での香害や工事、ワックスがけなどの際に体調不良を起こしやすい生徒の実態を把握する必要があると考えますがいかがでしょうか。教育長お答えください。
 また、芳香剤や柔軟剤などに使われている香料には、多種類の危険な合成化学物質が使われていて、化学物質の影響を受けやすい発達期の子どもに注意が必要です。日本では、香料や香の有害性に対する認識が薄く、「においには個人差があり、なかなか健康被害だと言えない」、「いいと思って使っている人に、話題にするのは気が引ける」など香害が表面化しにくい事情があります。
 2007年、米国ミネソタ州では健康局と教育省と協力してワーキンググループを立ち上げました。その目的は学校の生徒や教職員に香り付き製品が、喘息や化学物質過敏症を引き起こす可能性があることを知らせるためです。また臭いを吸い込んだ子どもの呼吸器だけでなく、学習能力にも影響を及ぼす可能性があることの認識を広く共有するためです。
 香害について、来校される方々に呼びかけるポスターを学校の玄関に掲示する、また保護者向けにチラシを配布する必要があると思います。
 そこで教育長に伺います。長野県安曇野市では、教育委員会から「香料についてのお願い」という通知を全小中学校に配付されています。他にも宮城県多賀城市、茨城県つくば市などが保護者向けにお便りを出しています。県教委が率先して、教員、保護者などへの周知、啓発をしていただきたいと思います。教育長お答えください。

《答弁》 宮﨑教育長
 学校における化学物質過敏症の実態把握についてお答えします。
 教職員が児童生徒の健康管理を行うに当たっては、保健調査票等を活用し、既往症を含む児童生徒の健康状態を把握するとともに、丁寧に聞き取りを行った上で適切な対応を行うこととしています。
 化学物質過敏症を有すると考えられる児童生徒についても、発生要因や症状が個人によって異なるため、実態をより詳細に把握することが必要です。そのため、保健調査票への記入内容や面接時の質問項目の工夫により実態を把握し、転入学時の引継ぎや教職員同士の情報共有を徹底するよう、県立学校及び市町村教育委員会に働きかけてまいります。
 次に、学校における周知・啓発についてお答えします。
 国が作成した「香りの配慮」に関するポスターの掲示等により、柔軟剤等の使用に係る周囲への配慮について啓発するよう、令和3年8月に県立学校及び市町村教育委員会に周知を行いました。
 引き続き、チラシ・ポスター等を活用して教職員や保護者に啓発を行うとともに、県立学校や市町村教育委員会の担当者を対象とした研修会等において、柔軟剤等の香りにより体調不良となる生徒がいることや、該当児童生徒に対しての学びを保障する観点から適切な配慮が必要であることを啓発してまいります。


2.五條市の「2,000m滑走路」建設計画の和歌山県への影響について
《質問》杉山俊雄 県議
 2,000m滑走路の建設計画について簡単に経緯を述べておきます。五條市は2007年に陸上自衛隊駐屯地を要望し、2013年に奈良県が陸上自衛隊駐屯地の誘致と防災ヘリポート建設を立ち上げました。2014年に奈良県が調査費等を予算化し、18年までの5年間に1億8330万円が使われています。突然2018年に2,000m滑走路案が出てきました。
 予定地は五條市のプレディアゴルフ場内(五條市阪合部新田町441)で和歌山県境・橋本市恋野から5~600mの場所にあります。計画では早期整備のため、第1期は広域防災拠点として東のゴルフ場5haを2年かけて造成整備する。第2期は西のゴルフ場46haを造成し、600m級滑走路を8年かけて建設する。第3期では73haを造成整備し、2,000m級滑走路を10年かけて建設する計画です。建設費は約1000億円で、少なくとも20年はかかる計画です。
 2,000m級滑走路建設は全国的に例がなく、国は第7次空港整備計画で、地方空港整備を抑制して、大都市圏の拠点空港の整備を優先する方向に転換しました。民間空港としての奈良(五条)空港は不可能になっています。2,000m滑走路の目的は「空港」ではなく、「防災」と「防衛」しか考えらません。
 2021年1月に、奈良県知事は県広域防災懇談会で、「内閣府参事官から紀伊半島をカバーする大規模な広域防災拠点を歓迎するとのお墨付きをもらった」といい、2021年3月議会で、2,000m級滑走路が必要なのは南海トラフ巨大地震の発生時に県内外からの大量の人的、物的支援を受け入れ迅速に被災地に支援するため、大型ヘリC1輸送機の離発着が可能な600m滑走路から、最新の固定翼輸送機や自衛隊輸送機の離発着が可能な2,000m滑走路に変更したと説明しています。
 財源の裏付けとして、100%起債適用で7割交付税措置という緊急防災・減債事業債の適用を計画、総務省への要請で大臣が応援すると言ったと答弁しています。2021年6月に内閣府の知見を得て「奈良県大規模広域防災拠点整備基本計画」を策定しています。
 2,000m滑走路は奈良県単独の事業で、和歌山県への負担はありません。広域防災拠点としての位置づけなので、周辺自治体と共同運営するという名目で、2021年11月に、3知事名で、国へ「大規模な広域防災拠点」の緊急防災・減債事業債の適用を総務省に申し入れをしています。
 事業債を活用して2,000m滑走路ができたとしても、維持管理に大変な負担がかかります。ちなみに大規模広域防災拠点としての静岡空港では年間管理費に5億2000万円が必要で、静岡県財政に重い負担をかけています。
 防衛省は防災目的だけの駐屯地建設はあり得ないとしています。元々自衛隊誘致を目的とした滑走路計画ですから、管理維持費を捻出するために、自衛隊を誘致して「特定防衛施設周辺整備調整交付金」を当てにしようとしているとしか考えられません。
 そこで危機管理監に伺います。陸上自衛隊駐屯地が誘致されれば、自衛隊の軍用機の飛行訓練に伴う騒音被害が心配です。実際に、航空自衛隊岐阜基地では「夜間や朝の訓練はやめて欲しい」「家の窓がビリビリ音を立てる」「子どもがおびえて大泣きする」などの声が寄せられ、体調不良や睡眠障害を訴えるなど基地周辺の騒音被害は深刻です。また、オスプレイの訓練場になり、演習のため、頻繁に離発着します。オスプレイは欠陥機で、最近南紀白浜空港にトラブルで緊急着陸しています。オスプレイはエンジンとローターを接続するクラッチの不具合がよく起こり、墜落も多く、橋本市上空を飛べば、騒音や墜落の危険があり、住民に甚大な被害をもたらすことが予想されます。
 県行政には市民、県民の命を守る責任があります。奈良県五條市の2,000m滑走路計画を推進するのではなく、中止するよう進言すべきではないでしょうか。お答えください。

《答弁》 危機管理監
 南海トラフ地震など大規模災害が発生した場合、県民の命を守るため、迅速に対応する必要があります。そのため全国から応援部隊や支援物資を受け入れ、あらゆる資源を総動員して災害対応を行うこととしております。
 本県に隣接する五條市に奈良県大規模広域防災拠点ができれば、捜索・救助などを行う消防、警察、自衛隊などが迅速に参集でき、食料や水、医療物資などの支援物資も早急かつ大量に受け入れられるなど、本県はもとより近畿地方全体にとって大きなメリットがあります。
 そのため、国が定めた「南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画」における「大規模な広域防災拠点」として位置づけることや、緊急防災・減災事業債の適用について、紀伊半島知事会議、近畿ブロック知事会において連携して要望してきたところです。
 議員ご指摘の滑走路使用による騒音や安全への対策については、奈良県から、周辺地域で必要な影響調査等を進めていくと聞いておりますが、和歌山県も含めた地域の調査等を行うよう申し入れております。
 今後も、奈良県大規模広域防災拠点の施設整備や平時を含めた運用計画について、本県への影響を注視しながら、引き続き奈良県と協議を行ってまいります。

《要望》杉山俊雄 県議
 ヘリ等の騒音や安全対策は奈良県が進めている。また、広域防災拠点の活用方法や施設整備については奈良県と協議していくとの答弁でした。
 一番大事なのは、騒音や安全対策について、周辺住民や自治体に十分説明をし、理解を求めることだと思います。
 埼玉県では、県と基地周辺の4つの市等で、基地対策協議会を立ち上げ、国へ住宅の防音対策の拡充や安全飛行の徹底等を求める要望活動を行っています。
 奈良県任せにするのではなく、県として積極的にこのことに関わっていかなければなりません。是非、奈良県や五条市をはじめ、橋本市、高野町など周辺自治体を含めた協議会を立ち上げて頂きたいと思います。そのことを切に要望しておきます。



                    危機管理監の答弁を聞く、杉山俊雄県議(右)


  2022年12月議会   杉山俊雄プロフィール、質問一覧
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