2024年2月県議会 議案に対する反対討論 奥村規子
録画中継(27:50~)
2024年3月19日
日本共産党の奥村規子から、議案第1号、第3号、第7号、第8号、第16号、第39号、第40号、第43号、第44号、第61号、第92号及び第93号に対する反対討論を行います。
最初に、議案第1号は「令和6年度和歌山県一般会計予算」です。
前年度比2.3%増の6280億円となった当初予算案は、後ほど申し上げますコスモパーク加太に関する予算を含んでいることもあり、過去最大規模となりました。その関連予算を除いても3番目の規模です。
岸本知事が知事選挙で公約されました「学校給食費の無償化」は、私ども日本共産党や住民運動団体などが繰り返し求めてきたものです。当初予算案で学校給食費無償化に7.3億円が計上されたことは大変うれしく思います。実施する市町村に2分の1を補助するものですが、全ての市町村が実施できるよう支援を求めます。
また、災害により住宅が全壊や半壊した場合の再建を支援する、国の被災者生活再建支援法の対象とならない市町村に、県独自の支援制度がつくられ、全壊で300万円、大規模半壊で250万円、中規模半壊で100万円が支援されることになりました。私ども日本共産党は、国の制度から外れる被災者への県独自の支援を求めてきました。
これらの政策については評価し、さらなる充実を求めるものです。しかし、当初予算案に対し以下のことについて指摘申し上げます。
2024年度予算では、岸本知事が昨年2月に発出した「財政危機警報」に基づき、政策的経費の約83億円について15%の12.5億円を削減しました。その影響で縮小や終了した事業には、県民から喜ばれていた事業や、継続が必要な事業もあると考えます。県は財政危機の要因として物価高騰や金利上昇を強調していますが、国直轄事業負担金など投資的経費の増額に伴う県債借入金の増加が影響しているのではないかと指摘しておきます。
医療・福祉の分野では、後期高齢者医療保険料が大幅値上げとなりました。現行で6万4,718円の1人当たり年間平均保険料が、2024年度、25年度では7万5,263円に上がります。医療給付費見込の増加や、保険料の高齢者負担割合が12.67%に引き上げられたことが要因と考えられます。後期高齢者医療広域連合の剰余金約20億1000万円を投入しましたが、広域連合と県との協議で取り崩しができる財政安定化基金は取り崩しませんでした。財政リスクに備えた上で一部を特例として保険料抑制に活用できるとされている財政安定化基金の取り崩しで、保険料引き下げに努めるよう求めます。
介護保険制度でも保険料の値上がりが止まりません。制度開始時には県平均月額2,910円で始まった介護保険料が、現在の第8期では6,541円、2025年度では7,408円を推計、35年度には9,000円を突破し、その後も上がり続ける見込みです。国に国庫負担の増額と県の財政安定化基金を活用できる仕組みにすることを求めるなど、緊急に保険料軽減に取り組むよう求めます。
新型コロナウイルス感染症対策では、患者負担や医療提供体制に対する公費支援が廃止されます。患者の3割負担となった場合、経口治療薬ラゲブリオが約2万8,000円、パキロビッドが約3万円に跳ね上がり、入院費補助も廃止されます。医療機関では、1日1床当たり2万9,000円から17万4,000円が支給されてきた病床確保料も廃止されます。日本感染症学会など関係3学会は、流行の再燃が懸念されるなか、負担増加で多くの患者が処方を拒否すれば「結果的に医療ひっ迫につながる可能性がある」と警鐘を鳴らしています。国に公費支援の再開を求めるよう要望します。
病床機能の分化・連携の名で病床を削減する地域医療構想を進めるための経費が2023年度の7.7億円から24年度は9億円に増えています。1万2,540床あった病床が22年度の公表値で1,044床減らされました。コロナ感染拡大は、かねてからゆとりのない医療体制に甚大なひっ迫をもたらしました。地域医療構想は即刻中止するよう求めます。
大型公共事業では、新たな計画として南紀白浜空港を「熊野白浜リゾート空港」とし、滑走路の2,500メートルへの延伸に向けた調査・分析に2840万円が計上されました。羽田との4往復化や国際チャーター便を誘致するとしていますが、他県では2,000メートル滑走路で国際チャーター便に対応する地方空港もあり、その必要性に疑問が出されています。仁坂前知事も滑走路延長には「何百億円からの事業費を要するおそれもあり難しい」と述べていました。
財政危機警報を発出し予算を圧縮しながら、将来の莫大な負担につながる大型公共事業を計画することは、矛盾していると言わざるを得ません。
教育では、学力テストをやめるべきという声が、保護者や教員からたくさんよせられてきた中で、小学校・中学校で全国学力テストが年1回実施されることに加え、県独自の学力テストを年に1回、中学1・2年生については年2回実施されています。国連こどもの権利委員会から、日本の教育は過度に競争的でストレスが多いと指摘されています。学力テストは中止するべきです。
5年間で約500人の定数内講師を半減し、正規教員に置き換える計画は投げ出されました。2023年度の教員定数6,920人のうち、定数内講師がいまだに448人も置かれています。再度計画を立て直し取り組むとともに、教員の長時間労働の是正のためにも、少人数学級を進めていくためにも、県独自で教員を増やしていくよう求めます。
次に、その他の議案について申し上げます。
議案第3号は「中小企業振興資金特別会計予算」です。ゆがんだ同和行政のもとで行われた中小企業高度化資金貸付では、ずさんな融資審査と債権管理により、57億円近くが未償還となっています。それとは別に、これまで11件、約45億円を債権放棄してきたことに加え、今議会でも議案第92号「権利の放棄」で、4億2567万円の債権を放棄します。償還にむけ懸命に取り組まれていることは理解していますが、とても県民理解を得られるものではないと指摘します。
議案第7号は「国民健康保険特別会計予算」です。県は市町村の保険料を統一するとしていた2027年度までに納付金を統一することに修正し、30年度までに完全統一保険料を目指す目標にシフトし直しました。所得水準や医療費水準に格差がある市町村の納付金や保険料を統一することは、市町村独自の施策を後退させるとともに、保険料の引き上げにつながることから反対です。
24年度の国保料・税について、日本共産党政策委員会による調査では、回答を得た自治体の8割強で値上げとなることが判りしました。県内においても値上がりが予想されます。現状でさえ高すぎる国保料・税は加入世帯の生活の限界を超えています。国庫負担の大幅増額や均等割の全面廃止などを国に強く要望するとともに、県としても国保料・税の引き下げに取り組むよう求めます。
議案第8号は「県営競輪事業特別会計予算」です。県が公営ギャンブルを運営することには反対です。
議案第16号は「土地造成事業会計予算」です。呼び込み型開発失敗の反省なしに、県民の税金から毎年補てんすることには賛成できません。
議案第39号は「土地開発基金条例の廃止」、第40号は「土地開発公社債務保証対策基金条例の廃止」です。
これらは、県土地開発公社によるコスモパーク加太開発の失敗でできた借金のうち、231億円を県が債務保証するための基金の取り崩しと廃止です。土地開発基金から167億円、コロナ禍のさなかにあった2022年2月議会で新たに積み立てられた土地開発公社債務保証対策基金から63億円を取り崩して代位弁済するものです。これら基金の財源はいずれも地方交付税です。県民生活のために使われるべき一般財源が、過去の大型開発失敗の穴埋めに使われることは許せません。
議案第43号は「本人確認情報の利用及び提供に関する条例の改正」、第44号は「個人番号の利用及び特定個人情報の提供に関する条例の改正」であり、いずれもマイナンバーカード及びマイナンバーの利用拡大です。マイナンバーによる個人情報漏えい問題が国内のみならず海外にまで発展し、医療機関では様々なトラブルが頻発しています。国民の所得、資産、社会保障給付を把握し、徴税強化と給付削減を押しつけるマイナンバー制度の廃止を求め、その利用を拡大する議案には反対します。
議案第61号「2025年日本国際博覧会基金条例の改正」は、小中学生の万博体験学習に当基金を使えるようにするためのものです。万博会場である夢洲は廃棄物を埋め立てた人工島であり、地震などの災害時に汚染物質が染み出すおそれや、アクセスルートがトンネルと橋の2つしかなく避難が困難となるなど、多くの問題を抱えています。膨れ上がる建設費や工事の大幅遅れなど、開催が危ぶまれている大阪・関西万博に、こどもたちの命を危険にさらしてまで動員することに、強く反対します。
最後に、議案第93号「権利の放棄」は、中小企業設備近代化資金貸付金824万円の債権を放棄するものです。元金が返済されない以上、賛成できません。
以上で、反対討論を終わります。
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