2024年2月和歌山県議会 予算特別委員会
  奥村規子委員の質問概要記録
     2024313
1.大阪・関西万博の開催について
(1)万博に対する知事の考え方について
(2)児童生徒の万博見学について

2.コスモパーク加太に係る県債務保証相当額を代位弁済することについて

3.熊野白浜リゾート空港滑走路の延伸について

4.農地・農業用施設の災害復旧事業について

5.紀北支援が校舎改築問題について
(1)実施設計の見直しについて
(2)教育現場・保護者からの要望と説明会のとりくみについて


1.大阪・関西万博の開催について
《質問》奥村規子 委員
 通告に従い5点について質疑を行います。
 いうまでもありませんが、地方自治体の一番の仕事は、住民の暮らしと福祉を良くすることです。コロナ禍と物価高騰で、多くの県民のみなさんは、暮らしも営業も大きな打撃を受けています。
 ある学生さんは「学費が高くて親に申し訳ない」「奨学金返済があるから、結婚も出産もできない」という声を上げています。親世代の実質賃金は下がり続け、学生はアルバイトや奨学金に頼らざる得ない状況になっています。日本学生支援機構の奨学金返済総額が、2021年度末で約10兆円だそうです。知り合いの若者たちが食糧支援プロジェクトをつくり、食糧支援を行っていると聞きました。せっかく入学したのに、退学した学生もいます。今こそ、希望を届ける県政、希望をつくる地域経済の再生が求められていると感じています。
 そのことを申し上げて、以下5点について質問いたします。
(1)万博に対する知事の考え方について
 1つ目は、大阪・関西万博の開催についてお尋ねします。
 2025年4月から10月の半年間にわたって開催予定の大阪・関西万博の工事が大幅に遅れています。予定では150余りの国と地域が集まり、円周2キロの大屋根の下に100を超えるパビリオンが並ぶことになっていました。現在、参加国・地域は約160か国とお聞きしています。しかし、タイプAのパビリオンの着工は6か国に過ぎない状況です。
 政府が昨年の12月、大阪・関西万博費用の「全体像」を公表しました。開催の準備などに直接かかる国費の総額で1647億円、会場周辺のインフラ整備費やアクセス向上のために8390億円かかると試算しています。当初、1250億円だった会場建設費は1.9倍の2350億円に膨れ上がっています。支出増に歯止めがかかる保証もないなか、国民負担がさらに増えるのではという疑念が広がっています。
 そのような中で開催される万博について、知事の考えをお聞かせください。

《答弁》 岸本知事
 前回の万博は、日本が平和で豊かな産業立国の姿を世界に見せるんだという思いで、日本人全体が一致団結できていたのではないかと思う。
 今回の大阪・関西万博にも日本人全体が一致団結できるようなものが必要なのではないかと思っているので、関西広域連合に提案をしていきたい。
 資材の高騰や建設の遅れなどは指摘のとおりだが、日本には現場力があるので、ある程度予定どおりの開催には結びつくだろう。
 経済効果については、アジア太平洋研究所が約2兆7000億円と試算しているので、費用対効果のバランスはとれるのではないかと考えている。

(2)児童生徒の万博見学について
《質問》奥村規子 委員
 児童生徒の万博見学についてお尋ねします。
 今議会では、県内の児童生徒の万博体験学習の招待費用に充てられるようにするための、万博基金条例の改正が提案されています。こどもたちを無料で入場できるようにするものです。
 将来を担うこどもたちに体験させる取り組みは素晴らしいと思いますが、万博会場は地震などの災害時、避難が困難な場所だと考えます。万博会場の災害時の対応などを踏まえ、こどもたちに万博を体験させることに対する、知事の考えをお答えください。

《答弁》 岸本知事
 和歌山のこどもたちに海外にも目を向けてほしいという思いがあるので、今回こどもたちを万博に招待する提案をしている。
 日本国際博覧会協会で、防災基本計画を作っている。さらに詳細を詰めていくにあたり、博覧会協会にはより安全な場を提供してもらえるよう、関西広域連合を通じて、防災基本計画の充実について提案をしていきたい。

《要望》奥村規子 委員
 重大な問題は、万博費用として会場建設費の他にも、公金の支出が計画されていることです。大阪の交通インフラ整備、アクセス道路の整備費、地下鉄の延伸費用などで、総額7500億円以上もの負担が明らかになっています。
 その上、会場の夢洲は、産業廃棄物や浚渫土砂のための埋め立て地としてつくられたところです。PCBやダイオキシン、鉛、ヒ素などの発がん・有害物質が多く存在しています。もともと強固な地盤を想定していないため地盤沈下の懸念があり、地震・台風・水害などに備えた防災対策が脆弱です。島へのアクセスはともに片側2車線の夢舞大橋と夢咲トンネルだけで、限られたアクセスの中で想定する多くの人々の安全が守られるのか、とても心配です。現地には、電気・下水道設備もまだありません。
 私は、夢洲で万博を開催すること自体に問題があると思います。様々な問題点のある夢洲がなぜ会場になったのか、大変疑問に感じるところです。2018年、万博の大阪開催が決定した翌日に、アメリカ大手カジノ事業者ラスベガス・サンズが発表した祝福メッセージでは、万博とIR計画とは「密接な関係がある」「公共施設やインフラを必然的に共有することになる」と狙いを語っています。国家プロジェクトとして万博を誘致すれば、税金でインフラを整備できることになると思います。
 万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。建設労働者の働き方や健康を害する万博計画、カジノと一体化した大阪・関西万博への巨額の税金投入は中止するべきです。


2.コスモパーク加太に係る県債務保証相当額を代位弁済することについて
《質問》奥村規子 委員
 2つ目は、コスモパーク加太に係る、県債務保証相当額を代位弁済することについてです。
 代位弁済をすることによって、返済の負担を軽くすることは理解できますが、そもそも私ども日本共産党は、行政の失敗を県民に転嫁することになる「調停に代わる決定」の受け入れには反対の立場をとってきました。
 これまで「調停に代わる決定」以降、県土地開発公社の土地賃借料約112億円余、土地造成費約20億円に、県民の税金が使われてきました。
 今回、さらに代位弁済することとなった経緯と、県民に多額の負担を強いることへの思い、また今後、大型の開発型・呼び込み型の政策を進めていく場合、この経験をどのように生かしていくか、知事のお考えをお聞かせください。

《答弁》 岸本知事
 「コスモパーク加太構想」は、関西国際空港建設にかかる土砂採取跡地を活用して複合的なまちづくりを進めようとしたものである。
 構想を発表した1985年は、バブル経済の様相を呈し始めていた時期で、土砂採取事業単独で採算が取れなくても跡地の利活用によりカバーできるとの判断があったものと思われる。
 しかしながら、地価は、関空一期工事の土砂搬出が終了した1991年頃をピークに急激に下落し、跡地の利活用は進まず、県からの依頼により事業主体となった和歌山県土地開発公社には金融機関に対する債務438億1530万円が残った。
 2003年に、この債務のうち265億円を県の債務保証額とすることなどを定めた和歌山地方裁判所による「調停に代わる決定」を、事業の経緯などに基づき妥当なものとして、当時の議会の議決を経て受け入れ、現在返済を進めているところである。
 債務は、本年3月末現在で約262億円まで減る見込みであるものの、今なお相当額の利払いが発生している。仮に公社が利息を支払えなくなった場合、調停に代わる決定に基づき県に債務保証履行義務が発生するとともに、公社は事実上破綻し、公社所有の土地は競売にかけられ、議会から要請のあった「県主導によるコスモパーク加太の秩序ある整備」ができなくなるおそれがある。
 県主導による整備を進めるためには、県が土地開発公社の全ての債務を代位弁済し、土地を取得するという方法もあるが、債務保証している金額以上の県民負担が発生する。
 これらのことを踏まえ、債務保証履行に備えて基金に積み立てていた資金を活用し、債務保証額に相当する約231億円を代位弁済することで、公社の利払いを圧縮して破綻を回避し、県民負担を最小化したいと考え、所要額を来年度予算に計上した。
 バブル経済の崩壊という経済情勢の大きな変化があったとはいえ、県民に多額の負担をお願いする事態を招いたことを重く受け止めている。コスモパーク加太事業への見通しが十分でなかったこと、処理に時間を要したことなどは今後の県政運営において、大いに反省勉強すべき点と考える。
 今後、県主導で大規模な土地開発事業を行う場合には、中長期的な経済動向を踏まえた十分な需要予測を行うことが必要と考える。

《要望》奥村規子 委員
 経済的見通しというのは、世界情勢や社会情勢の影響を大きく受けると思うので、今後はそれらも含めよろしくお願いします。
 「土地開発基金」に加え、2021年度に借金返済のために積み立てた「土地開発公社債務保証対策基金」で24年度予算に231億円を代位弁済するのは、県民のために使うべき一般財源を、過去の大型開発失敗の穴埋めに使うことであり、反省すべきことだと思います。
 今後は、大型開発から住民本位のまちづくりに転換し、防災・老朽化対策や若者が希望をもって学べる環境づくりに力を注いでいただけますようお願いします。


3.熊野白浜リゾート空港滑走路の延伸について
《質問》奥村規子 委員
 当初予算では、熊野白浜リゾート空港の滑走路延伸に係る検討を実施するということで、2840万円が計上されています。
 平成30年6月定例会で議員の質問に対して、仁坂前知事も「何度か検討したことがある」ことや、「南側への延長については工事施工等の観点から、滑走路をどれだけ延長するかにもよるが、何百億円からの事業費を要する恐れもあり難しい。2,000メートノレの滑走路でも、中国からの定期便が就航している空港もある」と答えられています。
 今年の元旦に発生した能登半島地震では、半島北岸の広い範囲で地盤の隆起が確認されています。海岸線が海まで広がったことが専門家の調査で明らかになり、海水がほとんどなくなってしまった港湾も複数あると聞いています。
 国土地理院の観測によれば、南海トラフの陸側斜面では、海底の活断層が90年から150年間隔で、繰り返し巨大地震・津波を発生させてきました。東牟婁郡から和歌山市まで、海岸部を中心に震度6強以上の揺れが発生、特に田辺市・白浜町などで震度7となるといわれているなか、滑走路の延伸についての安全面についてはどうお考えですか。

《答弁》 県土整備部長
 熊野白浜リゾート空港については、南海トラフ地震等の大規模災害時には、緊急物資・人員の輸送や救急・救命活動における空路の輸送拠点としての役割が求められている。
 そのため、空港施設については、大規模災害時に、必要となる輸送機能に支障を来たしたり、空港周辺の住宅等に影響を及ぼさないように、安全な構造とする必要がある。
 滑走路延伸の安全面については、地形や地質の調査を行い、国基準や指針に基づき、大規模地震等に対し安全な構造として設計の上、整備することになる。
 また、本年1月に発生した能登半島地震に関して、現在、国において、空港施設の被害の状況や要因などの検証が行われている。
 その結果、新たに必要な基準や効果的な対策等が示されれば、それらを取り入れ、大規模地震等に対して、より安全な構造とし、災害時の空路の輸送拠点としての機能を確保していく。


4.農地・農業用施設の災害復旧事業について
《質問》奥村規子 委員
 昨年6月2日の、台風2号豪雨などの甚大な被害があった災害について、国において激甚災害の指定が決定されました。
 果樹園を営んでいる方が被害を受けて困っていると聞き、現地に行きました。園地内が崩れ、受粉の作業が困難になっていました。自身で改修する方もいらっしゃいましたが、その方は体力・費用面でも限界がありました。脱サラ後、居住地から通っているということでした。何とか復旧支援ができないか市にも相談し、やっと支援を受けることができ、農業を継続することができました。
 そこで、農地と農業施設における、国の激甚災害の指定を受けた場合の支援状況についてお尋ねします。

《答弁》 農林水産部長
 国において激甚災害に指定された場合、国庫補助率のかさ上げなどの特別措置が適用される。
 昨年の災害で被災した18市町が特別措置の適用を受け、農地の復旧に係る補助率については、通常50%のところ90.2%から98.2%に、農業用施設については、通常65%のところ95.8%から99.8%にかさ上げされた。
 今後も、市町村と連携を密にして、国の支援を活用しながら、災害復旧事業に取り組んでいきたい。

《要望》奥村規子 委員
 国の災害復旧事業の対象となる災害については、激甚災害の指定により高率補助での支援がありますが、全ての被災者に支援の拡充が行き届くように、県独自の支援策を講じるよう考えていただきたいと思います。


5.紀北支援が校舎改築問題について
《質問》奥村規子 委員
 県立紀北支援学校は、1973年4月1日に小学部60名、中学部17名で、寄宿舎をもって開校されました。校長と職員45名の編成から始まりました。2023年5月1日現在では、小学部140名、中学部67名、高等部89名、愛徳分教室を含め全校296名、約4倍の児童生徒数になっています。児童生徒数の増加でこの間、教室や機能訓練室、作業訓練室、屋内体育館、プールなどが設置され、校舎の改築工事も繰り返し行われてきました。
 今年度は創立50周年を迎え、校舎の改築が控えているということです。教室数を増やすよう保護者から要望があり、今回の計画では教室数は増えるとお聞きしています。
 紀北支援学校の目指すこども像は「優しく 明るく たくましく」、教育方針は「一人一人の障害・発達・生活の実態を正しくとらえるとともに、教育的ニーズを把握し、すべてのこどものもつ発達の可能性を最大限に伸ばし、こどもを中心とし、将来を見据えた教育を創造する。よって、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服し、社会の一員としての自立をめざし、明るくたくましくより豊かに『生きる力』を育む」とあります。教育目標は「(1)基本的生活習慣を身に付け、社会参加できる力を育む【生活】、(2)基礎的な体力を身に付け、健康でたくましく、豊かな情操を育む【からだ:心と体】、(3)基礎的・基本的な知識・技能を身に付け、自ら学び、自ら考え行動する力を育む【学力:資質・能力】、(4)コミュニケーションの力を身に付け、自分を知り、自分を信じる力や他者を思いやる気持ちを育む【人との関わり】」の4つの柱で「すべてのこどもたちが、自らの生活の主体者として豊かな人間性を育めるよう支援を行います」としています。
 教育方針・目標の達成に向けた環境整備が図られることを切に願う立揚から質問をします。
(1)実施設計の見直しについて
 基本設計では、水泳プールや寄宿舎が校内にありましたが、実施設計を進めるにおいて見直しを行った内容と、その理由についてお答えください。

《答弁》 宮﨑教育長
 紀北支援学校については施設の老朽化への対応はもとより、児童生徒数の増加に伴う教室の確保、肢体不自由児童生徒への教育環境の整備が喫緊の課題である。実施設計においては、学校の要望を踏まえ、児童生徒の安心安全の観点から、工期を可能な限り短縮することを最優先としている。
 学校との協議により、プールについては、これまでの活用実績を含め、敷地内に屋外プールを設置せずに、公営の屋内プール施設を活用することで水泳指導の充実を図ることができると判断した。なお、水治訓練用の屋内プールについては設置する方向で進めている。
 寄宿舎については、新校舎建設工事の工期を可能な限り短縮するために、早期に解体することとする。また、十分な広さの運動場の確保や新校舎建設を進める上で、敷地内での建設は断念するが、寄宿舎機能を保持できるよう、校外既存施設の活用を含め検討を進めているところである。

(2)教育現場・保護者からの要望と説明会のとりくみについて
《質問》奥村規子 委員
 教育現場や保護者から要望があった場合の対応と、説明会の取り組みをどう考えていますか。

《答弁》 宮峙教育長
 障害特性によるニーズの多様化や児童生徒の増加に対応する教育環境の充実を図るため、教室数の拡充等も踏まえた校舎改修計画を進めている。
 これまでにおいても、こどもたちの教育環境の充実を第一に、学校とやり取りをしながら、計画を作成してきた。保護者と全体構想を共有することは大切と考え、本年度9月にも、学校は保護者説明会を行い、早期実現に向けた本計画についても理解してもらっていると認識している。
 今後も、説明の機会を大切にしていきたいと考えている。

《再質問》奥村規子 委員
 文部科学省の発表によれば、屋外プール設置率が減っています。水泳の実技授業を取りやめたところもありますが、学校外の民営・公営プールを活用して授業は継続しているところもあります。小学校、中学校では水泳が教育課程上位置づけられています。
 公教育として行うべき水泳授業をより豊かに取り組むためにも、また寄宿舎についても同様に、隣接地域への設置などを考えてもらいたいと思います。
 再度お聞きしますが、プールを敷地外にと判断した根拠はどのようなことですか。

《再答弁》 宮崎教育長
 敷地外の屋内プールで十分計画どおりの水泳の授業が進めることができる。どちらかといえば、屋外の場合は、紫外線の影響を受けたり雨天の場合利用できないことが多い。また、紀北支援学校の全体敷地面積との関係もあり、これら2つの観点より、屋外プールではなく、敷地外の屋内プール、和歌山県こども・女性・障害者相談センターや秋葉山公園県民水泳場等の貸出しを受け活用したい。

《要望》奥村規子 委員
 水泳には、様々な教育的効果があると思います。水泳の授業を重視し、学校内でしっかり利活用できるようにすることや、プールの水は災害時の地域の水としても活用できることから、多角的に考えていただきたいと思います。
 また、敷地の問題も含め、特別支援学校の新設もぜひ考えていただけるよう要望します。


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